IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-電子部品の製造方法 図1
  • 特開-電子部品の製造方法 図2
  • 特開-電子部品の製造方法 図3
  • 特開-電子部品の製造方法 図4
  • 特開-電子部品の製造方法 図5
  • 特開-電子部品の製造方法 図6
  • 特開-電子部品の製造方法 図7
  • 特開-電子部品の製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098399
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
H01G4/30 311E
H01G4/30 517
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001895
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】大坂 文哉
(72)【発明者】
【氏名】東度 達哉
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF06
5E001AH01
5E001AH07
5E001AJ03
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
5E082LL01
(57)【要約】
【課題】電子部品素体を整列し、外部電極を効率的に形成することができる電子部品の製造方法を提供すること。
【解決手段】複数の凹部12を備えた振り込み治具11を準備する工程と、
前記凹部12に電子部品素体2を振り込む工程と、
前記凹部12から前記電子部品素体2をピックアップする工程と、
ピックアップされた前記電子部品素体2を粘着保持部材14で保持する工程と、
を備える電子部品の製造方法。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の凹部を備えた振り込み治具を準備する工程と、
前記凹部に電子部品素体を振り込む工程と、
前記凹部から前記電子部品素体をピックアップする工程と、
ピックアップされた前記電子部品素体を粘着保持部材で保持する工程と、
を備えた、電子部品の製造方法。
【請求項2】
前記粘着保持部材で保持した複数の前記電子部品素体を、塗布治具の表面に一定の間隔を空けて複数配置された吐出口にそれぞれ当接させる工程と、
前記吐出口から吐出される導電性ペーストを前記電子部品素体に塗布する工程と、
を備えた、請求項1記載の電子部品の製造方法。
【請求項3】
前記吐出口は、それぞれ複数の小穴からなる、請求項2記載の電子部品の製造方法。
【請求項4】
電子部品素体が振り込まれた振り込み治具をセットする振り込みエリアと、
前記電子部品素体の位置を把握するための第1のカメラと、
前記電子部品素体を保持する粘着保持部材がセットされたセットエリアと、
前記粘着保持部材の位置を把握するための第2のカメラと、
前記第1のカメラによる情報をもとに前記振り込み治具から前記電子部品素体をピックアップし、前記第2のカメラによる情報をもとに前記粘着保持部材の所定位置に前記電子部品素体をセットする吸着ノズルと、
を備えた、電子部品素体の整列装置。
【請求項5】
請求項4に記載する整列装置と、
塗布装置と、
を備える電子部品の製造装置であって、
前記塗布装置は、表面に一定の間隔を空けて複数配置された吐出口を有する塗布治具と、
前記吐出口に導電性ペーストを供給する供給機構部と、
を備え、前記吐出口から吐出される導電性ペーストを前記粘着保持部材の所定位置にセットした前記電子部品素体に塗布する、電子部品の製造装置。
【請求項6】
前記整列装置の前記粘着保持部材の表面に第2の位置決めマークを付し、
前記塗布装置の前記塗布治具の表面に第1の位置決めマークを付し、
前記第1の位置決めマークと前記第2の位置決めマークを捉えるカメラを備えることにより、前記カメラからの前記第1の位置決めマークと前記第2の位置決めマークの位置情報をもとに前記塗布治具と前記粘着保持部材を所定位置に配置する、請求項5記載の電子部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、携帯電話機や携帯音楽プレーヤーなどの電子機器には、セラミックコンデンサ等に代表されるチップ型の電子部品が使用されている。このような電子部品は、一般的に、内部電極を有する直方体状の電子部品素体と、電子部品素体の表面に引き出された内部電極に接続される外部電極とを備えている。
【0003】
外部電極は、電子部品素体の表面に導電性ペーストを塗布し、焼成することにより形成されるが、導電性ペーストを効率的に塗布するため、例えば、振り込み治具を用いて、電子部品素体を整列する(例えば、特許文献1)。
【0004】
振り込み治具は、その表面に電子部品素体が入り得る所定の大きさの凹部が規則的に複数配列しており、電子部品素体がすべての凹部に挿入されると、電子部品素体の配列が完成する。そして、電子部品素体より凹部が大きいほど、電子部品素体は凹部に入り易く、電子部品素体の配列に要する時間を短くすることができる。
【0005】
しかしながら、凹部が大きいと、凹部の中で電子部品素体の位置が定まらないことから、電子部品素体の配列にばらつきが生じ、導電性ペーストを塗布する位置の誤差が大きくなる。一方、凹部を小さくすると、電子部品素体の配列のばらつきを小さくすることができるが、電子部品素体の取り出しに時間を要することとなり、電子部品の効率的な製造が難しくなる。
【0006】
このため、電子部品素体を整列し、外部電極を効率的に形成することができる電子部品の製造方法が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-253077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、電子部品素体を整列し、外部電極を効率的に形成することができる電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、振り込み治具に振り込まれた電子部品素体をピックアップし、これを粘着保持部材に保持することにより、電子部品素体を効率的かつ正確に整列できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、複数の凹部を備えた振り込み治具を準備する工程と、
前記凹部に電子部品素体を振り込む工程と、
前記凹部から前記電子部品素体をピックアップする工程と、
ピックアップされた前記電子部品素体を粘着保持部材で保持する工程と、
を備えた、電子部品の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電子部品素体を効率的かつ正確に整列して外部電極を形成することができる電子部品の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】積層セラミックコンデンサ(第1の実施形態)の外観図である。
図2】積層セラミックコンデンサ(第1の実施形態)の積層体の構造を示す分解図である。
図3】積層セラミックコンデンサ(第2の実施形態)の外観図である。
図4】積層セラミックコンデンサ(第2の実施形態)の断面図である。
図5】積層セラミックコンデンサ(第2の実施形態)の内層部の構造を示す分解図である。
図6】整列装置による整列工程を示す模式図である。
図7】塗布装置による塗布工程を示す模式図である。
図8】塗布装置の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の電子部品の製造方法に関する実施形態について説明する。
【0014】
なお、実施形態は、本発明の実施の形態を例示的に示したものであり、本発明が実施形態の内容に限定されることはない。また、異なる実施形態に記載された内容を組み合わせて実施することも可能であり、その場合の実施内容も本発明に含まれる。また、図面は、明細書の理解を助けるためのものであって、模式的に描画されている場合があり、描画された構成要素又は構成要素間の寸法の比率が、明細書に記載されたそれらの寸法の比率と一致していない場合がある。また、明細書に記載されている構成要素が、図面において省略されている場合や、個数を省略して描画されている場合などがある。
【0015】
(電子部品)
電子部品について、積層セラミックコンデンサを例に挙げ説明するが、これをもって本発明により製造する電子部品が積層セラミックコンデンサに限定されるものではない。
【0016】
(積層セラミックコンデンサ1)
積層セラミックコンデンサ1(第1の実施形態)を図1及び図1に示す。図1は、積層セラミックコンデンサ1の外観図である。図2は、積層体2の構造を示す模式図である。積層セラミックコンデンサ1は、以下で説明するように、内部電極層の形状及び外部電極の形状と配置において、後述の積層セラミックコンデンサ10(第2の実施形態)と異なる。
【0017】
誘電体層5と内部電極層6を積層する方向を積層方向Tとし、積層方向Tに直交する長さ方向L、さらに積層方向Tと長さ方向Lに直交する幅方向Wを用いて、積層セラミックコンデンサ1の構造について言及する。なお、実施形態においては、幅方向W、長さ方向L及び積層方向Tは、互いに直交しているが、必ずしも互いに直交する関係になるとは限らず、互いに交差する関係であってもよい。
【0018】
積層セラミックコンデンサ1は、互いに対向する第1側面WS1と第2側面WS2と、これらの端面と隣り合う第1主面TS1と第2主面TS2を有している。第1外部電極4aは、断面略コの字状に形成され、第1側面WS1を覆う第1電極部分4a1と、第1主面TS1上に回りこむ第2電極部分4a2と、第2主面TS2上に回りこむ第3電極部分4a3とから構成されている。第2外部電極4bは、断面略コの字状に形成され、第2側面WS2を覆う第1電極部分4b1と、第1主面TS1上に回りこむ第2電極部分と、第2主面TS2上に回りこむ第3電極部分4b3とから構成されている。なお、第1主面TS1において、第1外部電極4aの第2電極部分4a2と、第2外部電極4bの第2電極部分4b2とは、連結されていない。また、第2主面TS2において、第1外部電極4aの第3電極部分4a3と、第2外部電極4bの第3電極部分4b3とは、連結されていない。
【0019】
積層セラミックコンデンサ1の積層体2は、図2に示されるように、積層された複数の誘電体層5と、複数の内部電極層6とを有している。各誘電体層5は、第1主面TS1及び第2主面TS2に平行な方向に伸びている。積層体2では、第1主面TS1と第2主面TS2とが対向する方向は、複数の誘電体層5の積層方向とされる。複数の内部電極層6は、互いに誘電体層5を挟んで対向するように配されている。
【0020】
各誘電体層5は、例えば、誘電体セラミックを含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。実際の積層セラミックコンデンサでは、各誘電体層5は、誘電体層5の間の境界が視認できない程度に一体化されている。各内部電極層6は、導電性ペーストの焼結体から構成される。
【0021】
各内部電極層6は、第1導体部分6mと、複数の第2導体部分6sを備えている。本実施形態においては、1つの第1導体部分6mに対して、4つの第2導体部分6sが設定されている。隣り合う内部電極層6の第1導体部分6mは、誘電体層5を挟んで互いに対向している。各第2導体部分6sは、第1導体部分6mから第1側面WS1あるいは第2側面WS2まで引き出されるが、内部電極層6ごとに配置される第2導体部分6sの位置は、一層おきに同一とし、隣り合う内部電極層6の第2導体部分6sの位置が積層方向Tから見て重ならないように構成している。これにより、隣り合う内部電極層6は、第1外部電極4aと第2外部電極4bのいずれか、互いに異なる電極に電気的且つ物理的に接続され、隣り合う内部電極層6間で容量が形成される。
【0022】
誘電体層5、内部電極層6、外部電極4を構成する材料等は、後述の積層セラミックコンデンサ10と同様であるため、積層セラミックコンデンサ10の説明の中で記載する。
【0023】
(積層セラミックコンデンサ10)
図3図5に、積層セラミックコンデンサ10(第2の実施形態)の形状及び構造を示す。図3は、積層セラミックコンデンサ10の外観図である。図4は、図3に示す幅方向W中央部のA-A線で切断した積層セラミックコンデンサ10の断面図(LT断面図)である。図5は、内層部3の構造を示す模式図である。なお、誘電体層5と内部電極層6を積層する方向を積層方向Tとし、積層方向Tに直交する長さ方向L、さらに積層方向Tと長さ方向Lに直交する幅方向Wを用いて、積層セラミックコンデンサ10の構造について言及する。なお、実施形態においては、幅方向W、長さ方向L及び積層方向Tは、互いに直交しているが、必ずしも互いに直交する関係になるとは限らず、互いに交差する関係であってもよい。
【0024】
積層セラミックコンデンサ10は、直方体形状からなる積層体2を備えている。積層体2は、内層部3を含み、積層方向Tにおいて相互に対向する1対の第1主面TS1、第2主面TS2と、積層方向Tに直交する長さ方向Lにおいて相互に対向する1対の第1端面LS1、第2端面LS2と、積層方向T及び長さ方向Lの両方に直交する幅方向Wにおいて相互に対向する1対の第1側面WS1、第2側面WS2を有している。
【0025】
積層セラミックコンデンサ10の寸法は、特に限定されるべきものではないが、例えば、高さ方向Tの寸法を0.1mm~2.5mm程度とし、長さ方向Lの寸法を0.1mm~3.2mm程度とし、幅方向Wの寸法を0.1mm~2.5mm程度とすることができる。
【0026】
積層体2の表面に、第1外部電極4aと第2外部電極4bが形成されている。
【0027】
第1外部電極4aは、積層体2の第1端面LS1に形成されている。第1外部電極4aは、キャップ形状に形成されており、縁の部分が、積層体2の第1端面LS1から、第1主面TS1、第2主面TS2、第1側面WS1、第2側面WS2に延出して形成されている。
【0028】
第2外部電極4bは、積層体2の第2端面LS2に形成されている。第2外部電極4bは、キャップ形状に形成されており、縁の部分が、積層体2の第2端面LS2から、第1主面TS1、第2主面TS2、第1側面WS1、第2側面WS2に延出して形成されている。
【0029】
積層セラミックコンデンサ10においては、積層体2の第1端面LS1に引き出された第1内部電極層6aが、第1外部電極4aに接続されている。また、積層体2の第2端面LS2に引き出された第2内部電極層6bが、第2外部電極4bに接続されている。
【0030】
外部電極4は、例えば、下地電極層と、下地電極層上に配置されためっき層を備えた構造とすることができる。
【0031】
下地電極層は、以下に説明するような、焼付け電極層あるいは樹脂電極層を1つの層として含む。下地電極層は、焼付け電極及び焼付け電極を覆う樹脂電極層で構成された層であってもよい。
【0032】
焼付け電極層は、ガラスと金属とを含む層であり、1層であってもよいし、複数層であってもよい。焼付け電極層は、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、及びAuなどの金属、又はAgとPdの合金などを含む。
【0033】
焼付け電極層は、ガラス及び金属を含む導電性ペーストを積層体に塗布して焼き付けることによって形成される。焼き付けは、積層体の焼成と同時に行ってもよいし、積層体の焼成後に行ってもよい。
【0034】
樹脂電極層は、例えば、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む層として形成することができる。樹脂電極層を形成する場合には、焼付け電極層を形成せずに、積層体上に直接形成するようにしてもよい。樹脂電極層は、1層であってもよいし、複数層であってもよい。
【0035】
下地電極層上に配置されるめっき層は、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、及びAuなどの金属、又はAgとPdの合金などのうちの少なくとも1つを含む。めっき層は、1層であってもよいし、複数層であってもよい。めっき層は、例えば、Niめっき層とSnめっき層の2層構造とすることができる。
【0036】
内層部3は、複数の誘電体層5と複数の内部電極層6が積層されたものからなる。内部電極層6は、第1内部電極層6aと第2内部電極層6bで構成される。第1内部電極層6aと第2内部電極層6bは、それぞれ誘電体層5a、5bの上に配置されている。
【0037】
内部電極層6は、長さ方向Lに伸び、平面視において矩形形状をしている。そして、第1内部電極層6aが積層体2の第1端面LS1に引き出され、第2内部電極層6bが積層体2の第2端面LS2に引き出されている。
【0038】
誘電体層5の材質は任意であるが、例えば、BaTiOを主成分とするセラミック粉末を使用することができる。また、BaTiOに代えて、CaTiO、SrTiOなど、他の材質を主成分とするセラミック粉末を使用してもよい。各誘電体層5は、例えば、誘電体セラミックを含むセラミックグリーンシートの焼結体から構成される。
【0039】
誘電体層5の厚さは、特に限定されるべきものではないが、例えば、第1内部電極層6aと第2内部電極層6bにより形成された容量形成の実効領域において、0.3μm~2.0μm程度とすることができる。
【0040】
誘電体層5の層数は、特に限定されるべきものではないが、例えば、第1内部電極層6aと第2内部電極層6bにより形成された容量形成の実効領域において、1層~6000層とすることができる。
【0041】
内層部3の上下両側に、内部電極層6が形成されず、誘電体層5のみで構成された外層部7が設けられている。外層部7の厚さは限定されるものではないが、例えば、15μm~150μmとすることができる。なお、外層部7における誘電体層の厚さは、内部電極層6が形成されている容量形成の実効領域の誘電体層の厚さよりも大きくしてもよい。また、外層部における誘電体層の材質は、内層部における誘電体層の材質と異なっていてもよい。
【0042】
図3は、内層部3を積層方向Tに誘電体層5ごとに分解して示したものである。実際の積層セラミックコンデンサでは、各誘電体層5は、誘電体層5の間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0043】
内部電極層6は、導電体となる金属粉末と、有機溶剤と、バインダーと、分散剤と、を含む導電性ペーストを誘電体層上で焼結することにより形成される。内部電極層6と誘電体層5は交互に積層され内層部3を形成する。内部電極層6は、第1内部電極層6aと第2内部電極層6bにより構成され、第1内部電極層6aと第2内部電極層6bは、それぞれ誘電体層5a、5bの上に配置されている。
【0044】
内部電極層6は、Cu、Ni、Ag、Au、及びPtなどの金属を使用することができる。また、これらの金属は、これら金属元素を含む化合物や他の金属との合金であってもよい。
【0045】
内部電極層6の厚さは特に限定されるものではないが、例えば、0.3μm~1.5μm程度とすることができる。
【0046】
(電子部品の製造装置)
次に、整列装置と塗布装置を備えた電子部品の製造装置とこれを用いた電子部品の製造方法について説明する。電子部品として、上述の積層セラミックコンデンサ1を例に挙げ説明するが、本発明は、積層セラミックコンデンサ1など、あらゆる積層セラミックコンデンサを含む、電子部品の製造において広く利用することができる。また、電子部品の製造において、電子部品素体とは、積層セラミックコンデンサ1における外部電極を形成するための導電性ペーストを塗布する前の積層体2に相当する。
【0047】
(整列装置)
以下、整列装置を構成する部材及び整列装置おける工程について説明する。
【0048】
(振り込み治具)
整列装置15の振り込みエリア15aに振り込み治具11が配置されている。
図6(a)~(c)は、振り込みエリア15aにおける振り込み治具11による工程を模式的に示している。
【0049】
振り込み治具11は、電子部品素体2が振り込まれる複数の凹部12を備えた平板形状であり、凹部12には、上方から電子部品素体2を受け入れるように開口12aが形成されている。振り込み治具11は、通常、必要な剛性を有する金属材料や、樹脂材料などから構成することができるが、本発明の振り込み治具11において具体的な構成材料の種類に特別の制約はない。
【0050】
複数の凹部12は、振り込み治具11の主面11aに規則的に配列している。凹部12は、直方体の電子部品素体2を受け入れることができる大きさであり、特に限定されるものではないが、開口12aの縦横の寸法は、電子部品素体2の長さ方向Lと幅方向Wの寸法に対し、それぞれ10%から20%大きくすることが好ましい。また、開口12aの周縁に、傾斜あるいは丸みをつけると、電子部品素体2が凹部12に入り込み易くなり、作業時間を短縮することができるため好適である。
【0051】
図6(a)に示すように、振り込み冶具11の凹部12に電子部品素体2を振り込む。振り込み工程では、振り込み治具11を特に図示しないシェーカにセットして、所定の振動を加えながら電子部品素体2の振り込みを行う。なお、シェーカは、振り込み治具11を振動させながら、その主面11aの水平方向に対する角度、すなわち傾斜を所定の大きさ、所定の周期で変化させることができるように構成することができる。
【0052】
振り込まれた電子部品素体2の上端が、振り込み治具11の主面11aよりも上方に突出していると、その突出部分により、電子部品素体2が振り込み治具11の主面11a上を移動することが妨げられ、効率よく凹部12に振り込むことができなくなる。また、振り込まれた電子部品素体2の突出している部分に衝突することにより、電子部品素体2が損傷する場合がある。このように、振り込み治具11の主面11aでの電子部品素体2の流れが悪くなると、振り込みに時間を要し、タクト時間が長くなって生産性の低下を招くおそれがある。このため、凹部12の深さ寸法は、電子部品素体2の高さ寸法と略同一とするか、若干大きくすることが好ましい。
【0053】
(吸着ノズル)
次に、振り込み治具11に振り込まれた電子部品素体2を吸着ノズル13を用いてピックアップする。
【0054】
図6(b)に示すように、振り込み治具11の開口12aの上方には、電子部品素体2を真空吸引に基づき吸着する吸着ノズル13が配置される。図6(c)に示すように、振り込み治具11の凹部12に振り込まれた電子部品素体2は、吸着ノズル13により凹部12の開口12aからピックアップされ、セットエリア15bの粘着保持部材14へ移送される。なお、吸着ノズル13は、真空吸引による吸着に限られず、例えば、電子部品素体2を構成する内部電極層6には金属を含有することから、磁力を利用して電子部品素体2をピックアップするなど、電子部品素体2を引き付けることができる手段であれば幅広く採用することができる。
【0055】
吸着ノズル13は、整列装置15において振り込みエリア15aの振り込み治具11の開口12a近傍とセットエリア15bの粘着保持部材14との間を往復移動している。
【0056】
図6は、吸着ノズル13の動作を模式的に示すため、1本の吸着ノズル13を図示しているが、吸着ノズル13を複数配置すれば、振り込み治具11の凹部12に振り込まれた複数の電子部品素体2を一度に取り出し、粘着保持部材14へ移送することができるため、作業を効率的に進めることができる。
【0057】
(第1のカメラ)
振り込み治具11の凹部12に振り込まれた電子部品素体2を吸着ノズル13との位置関係を補正しながら取り出すため、電子部品素体2の位置を把握するための第1のカメラC1を設置すれば、第1のカメラC1による情報をもとに電子部品素体2の位置をモニタC11で正確に把握することができ、吸着ノズル13が電子部品素体2のどの部分を吸着してピックアップするかが確実に把握できる。電子部品素体2の中央部を吸着ノズル13で吸着することが好ましい。
【0058】
(粘着保持部材)
粘着保持部材14は、基台14aの上に電子部品素体2を保持するための粘着層14bが配置された構造である。吸着ノズル13により振り込み治具11の開口12aから取り出された電子部品素体2は、振り込みエリア15aからセットエリア15bへ移動し、図6(d)に示すように、吸着ノズル13の移動により粘着保持部材の上方まで運ばれ、その後、下降して粘着保持部材14の粘着層14bの所定位置に吸着ノズル13と電子部品素体2との位置関係が考慮され、粘着保持される。
【0059】
粘着層14bは、シリコーン系樹脂層(例えば、シリコーン系ポリマー層)やアクリル系樹脂層(例えば、アクリル系ポリマー層)等が挙げられるが、多孔性のシリコーン系樹脂の孔内に粘着性の物資を抱合して成形したシートを用いることができる。また、粘着層14bは、電子部品素体2を載置するときの衝撃を吸収するため、弾性体であることが好ましい。また、一般的な樹脂テープの粘着層を利用することもできる。
【0060】
(第2のカメラ)
また、粘着層14bの所定位置を把握するための第2のカメラC2を設置すれば、第2のカメラによる情報をもとに、粘着保持部材14の位置をモニタC21で正確に把握することができ、吸着ノズル13に保持された電子部品素体2を粘着層14b上の所望の位置に精度よくセットすることができる。
【0061】
次に、外部電極4を形成するため、電子部品素体2の表面に下地電極層用の導電性ペーストを塗布する。導電性ペーストの塗布は、例えば、スクリーン印刷やグラビア印刷などの印刷方法により行うことができるが、以下の塗布装置を用いることにより、電子部品素体2の表面に効率的に導電性ペーストを塗布することができる。
【0062】
(塗布装置)
塗布装置を構成する部材及び塗布装置おける工程について説明する。図7は、本発明の実施形態にかかる導電性ペーストを塗布するための塗布装置20の構造と同装置による工程を模式的に示した透視図である。
【0063】
(塗布治具)
塗布装置20は、塗布治具21を備えている。塗布治具21には、導電性ペースト22が流通するための垂直方向に貫通した貫通孔23が設けられている。
導電性ペースト22は、下方に配置された供給機構部24から塗布治具21の貫通孔23に供給され、導電性ペースト22は上方の吐出口23aから吐出される。図7に示す実施形態は、貫通孔23の内径が、下方より上方が小径となるように段階的に変化しているが、これに限定されず、テーパ状でもよい。また、内径を変えず、直線状でもよい。
【0064】
図7(a)に示すように、粘着層14bにより電子部品素体2を保持した粘着保持部材14は、電子部品素体2が下方になるように反転し、電子部品素体2の外部電極4を形成する表面を塗布治具21の吐出口23aに向けた状態で下降する。そして、図7(b)に示すように、電子部品素体2が、塗布治具21の吐出口23aに当接する。その後、供給機構部24を上昇させ、貫通孔23から導電性ペースト22を吐出し、電子部品素体2に導電性ペーストを塗布する。
【0065】
(位置決めマークとカメラ)
塗布治具21の表面に、塗布治具21の正確な位置を把握するための第1の位置決めマークを付し(図示せず)、粘着保持部材14の表面に、粘着保持部材14の正確な位置を把握するための第2の位置決めマークを付し(図示せず)、第1の位置決めマークと第2の位置決めマークの位置を確認するためのカメラを設置することにより(図示せず)、カメラからの第1の位置決めマークと第2の位置決めマークの位置情報をもとに粘着保持部材14を塗布治具21の上方の所定位置に円滑に移動することができるとともに、電子部品素体2の塗布治具の21の吐出口23aの所定位置に確実に当接することが可能となる。例えば、第2の位置決めマークは、実態のあるマークである必要はなく、
粘着保持部材14の余剰部分に貫通孔を設けておき、貫通孔を通してカメラで第1のマークを撮像することで、塗布治具21と粘着保持部材14との位置関係を調整することが可能となる。したがって、ピックアップされて粘着保持部材14上に精度よく配置された電子部品素体2と吐出口23aとの位置関係が精度よく決定される。
【0066】
加圧された導電性ペースト22が、供給機構部24から供給管24aを通して貫通孔23内に供給されると、貫通孔23内の導電性ペーストは、塗布治具21の吐出口23aから吐出され、吐出口23aに当接している電子部品素体2の表面に塗布される(図7(b))。
【0067】
電子部品素体2への導電性ペースト22の塗布が完了すると、粘着保持部材14は上昇し、供給機構部24は貫通孔23への導電性ペースト22の供給を終了して下降する(図7(c))。
【0068】
以上の工程を経ることにより、電子部品素体2の一方の側面には導電性ペースト22が塗布されるが、反対側の側面にも導電性ペースト22を塗布する必要があることから、導電性ペースト22が乾燥した後、反対側の側面が塗布治具21の吐出口23aに当接するよう電子部品素体2を再び粘着保持部材14にセットし、塗布装置20を用いて導電性ペースト22を塗布する。
【0069】
図7は、電子部品素体2へ導電性ペースト22を塗布する工程を模式的に示したものであるが、積層セラミックコンデンサ1のように、一方の側面に複数の外部電極4を備えた電子部品である場合には、図8に示すように、塗布装置20の塗布治具21の吐出口23aに複数のスリット25を配置し、複数の小穴を形成する。
【0070】
図8(a)に示す4つのスリット25は、図1に示す積層セラミックコンデンサ1の一方の側面に配列される外部電極4に対応するように、相互に平行に並べられている。
【0071】
4つのスリット25は、共通の貫通孔23に連通しており、貫通孔23を通して供給される導電性ペースト22は、4つのスリット25で形成された4つの小穴から同時に吐出される。
【0072】
電子部品素体2の外部電極4を形成する一方の側面、例えば、第1側面WS1を塗布治具21に対向させ、4つのスリット25に当接すると、図8(b)に示すように、スリット25の長さは、電子部品素体2の第1側面WS1の高さ寸法より長いため、スリット25には電子部品素体2が当接していない開口部分が形成される。このような電子部品素体2が当接していないスリット25の開口部分からは、導電性ペースト22が、電子部品素体2の第2主面TS2に沿って吐出されるため、電子部品素体2の第1側面WS1と第2主面TS2に、それぞれ第1電極部分4a1と第2電極部分4a2を形成するように導電性ペースト22を塗布することができる。
【0073】
第1側面WS1に導電性ペースト22を塗布した電子部品素体2は、第2側面WS2にも導電性ペースト22を塗布するため、導電性ペースト22が乾燥した後、第2側面WS2が塗布治具21の吐出口23aに当接するよう粘着保持部材14に再び固定して、塗布装置20により導電性ペースト22を塗布する。
【0074】
なお、図8では、4つの小穴を形成するために、長方形のスリット25を4つ配列した例を示したが、外部電極4の形状や数に応じて、小穴の形状や数は、適宜、変更することができる。
【0075】
塗布した導電性ペースト22は、焼成することにより下地電極層を形成し、さらに下地電極層の表面にめっき層を形成することにより外部電極が形成される。めっき層は、必要に応じて、複数の層で構成してもよい。また、形成されためっき層の表面に、導電性ペースト22を塗布することにより、配線基板と接合するための接合部を形成してもよい(図示せず)。
【0076】
このような接合部は、例えば、下地電極層の表面にSnめっき層が形成されている場合には、Sn-Sb系、Sn-Ag-Cu系、Sn-Cu系あるいはSn-Bi系のはんだ材を導電性ペーストとし、これをSnめっき層の表面に塗布し加熱することにより形成することができる。
【0077】
接合部を形成する導電性ペーストは、従来の方法で電子部品を整列した後、スクリーン印刷法、ディスペンス法等の手法によって、めっき層表面の所定箇所に塗布することもできるが、本発明の電子部品の製造方法によれば、電子部品を効率的に整列し、めっき層表面に確実に接合部を形成することが可能となる。
【0078】
以上、電子部品の製造方法について説明したが、本発明は上述の内容に限定されることはなく、発明の趣旨に沿って種々の変更をなすことができる。
【符号の説明】
【0079】
1 積層セラミックコンデンサ(電子部品)
2 積層体(電子部品素体)
3 内層部
4 外部電極
4a 第1外部電極
4b 第2外部電極
5 誘電体層
5a 誘電体層
5b 誘電体層
6 内部電極層
6a 第1内部電極層
6b 第2内部電極層
7 外層部
10 積層セラミックコンデンサ(電子部品)
11 振り込み治具
11a 主面
12 凹部
12a 開口
13 吸着ノズル
14 粘着保持部材
14a 基台
14b 粘着層
15 整列装置
15a 振り込みエリア
15b セットエリア
20 塗布装置
21 塗布治具
22 導電性ペースト
23 貫通孔
23a 吐出口
24 供給機構部
24a 供給管
25 スリット
C1 第1のカメラ
C2 第2のカメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8