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<図1>
  • 特開-車両用ドア 図1
  • 特開-車両用ドア 図2
  • 特開-車両用ドア 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098414
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】車両用ドア
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20240716BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
B60J5/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001925
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】星野 司
(72)【発明者】
【氏名】山本 千尋
(72)【発明者】
【氏名】村山 健一
(72)【発明者】
【氏名】清水 優
(72)【発明者】
【氏名】宮田 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中山 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】岡 朋宏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮輔
(57)【要約】
【課題】車両の側面衝突時にドアが不用意に開く不具合の発生を防ぐとともに、車両走行時の風切り車内音を低減すること。
【解決手段】アウタパネルとインナパネル2の外周縁同士を接合して両者間に形成される空間に少なくともドアラッチ機構3を収容し、インナパネル2には、このインナパネル2に形成された作業孔を車室側から覆う樹脂カバー4を取り付け、この樹脂カバー4には、ドアラッチ機構3から延びるラッチケーブル6,7が挿通するケーブル挿通孔4aが形成された車両用ドア1の風切り車内音低減構造を、ケーブル挿通孔4aを覆って車内側から車外側へのエアの流出を阻止する非通気性のビニールシート(可撓性シート材)10を樹脂カバー4に取り付けるとともに、このビニールシート10に、ラッチケーブル6,7が摺動可能に挿通する挿通部10dを設ける。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アウタパネルとインナパネルの外周縁同士を接合して両者間に形成される空間に少なくともドアラッチ機構が収容され、前記インナパネルには、該インナパネルに形成された作業孔を車室側から覆う作業孔カバー部材が取り付けられ、前記作業孔カバーには、前記ドアラッチ機構から延びるラッチケーブルが挿通するケーブル挿通孔が形成された車両用ドアにおいて、
前記作業孔カバー部材には、前記ケーブル挿通孔を覆うように非通気性の可撓性シート材が取り付けられ、該可撓性シート材には、前記ラッチケーブルが伸長方向に摺動移動可能に挿通される挿通部が確保されていることを特徴とする車両用ドア。
【請求項2】
前記可撓性シート材の作業孔カバー部材への取り付けは、その少なくとも一辺が作業孔カバー部材に固着されていない非固着辺とされ、他の辺が前記作業孔カバーの外面に固着されて行われ、前記非取固着辺が前記挿通部を構成することを特徴とする請求項1に記載の車両用ドア。
【請求項3】
前記作業孔カバーのケーブル挿通孔から引き出された前記ラッチケーブルと前記作業孔カバーの外表面との間に緩衝部材が介設されていることを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載の車両用ドアの風切り車内音低減構造。
【請求項4】
前記可撓性シート材は独立発泡シートで構成され、その外周縁が前記樹脂カバーの外表面に取り付けられるとともに、前記挿通部は、前記独立発泡シートの一部に形成された前記ラッチケーブルが挿通されるスリットにて構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアの風切り車内音低減構造。
【請求項5】
前記可撓性シート材は、フィルム状シートで構成されたことを特徴とする請求項1に記載の車両用ドアの風切り車内音低減構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドア、特に側面衝突時にドアが不用意に開く不具合の発生を防ぎつつ、前方を走行する他車の後方に形成される乱流に起因して自車の車内に発生する風切り車内音を低減する構造を備える車両用ドアに関する。
【背景技術】
【0002】
走行する車両のサイドドアには、その外面に沿ってエアが流れるため、そのエアの流れに伴う動圧分だけ該サイドドアの外面付近の圧力(静圧)が低下して負圧になる。このため、この負圧に引かれて車内のエアがサイドドアの隙間を通って大気中に流出する。
【0003】
また、サイドドアは、アウタパネルとインナパネルの外周縁同士を接合して両者間に形成される空間に少なくともドアラッチ機構を収容しており、インナパネルには、このインナパネルに形成された作業孔(サービスホール)を車内側から覆う樹脂カバーが取り付けられている。そして、樹脂カバーには、ドアラッチ機構から延びるラッチケーブルが挿通するケーブル挿通孔が形成されている。このため、前述のように車両の走行に伴ってサイドドアの外面付近に負圧が発生すると、この負圧に引かれて車内のエアが樹脂カバーのケーブル挿通孔を通って車外へと排出される。
【0004】
上述のような車内のエアが車外へと規則正しく定常的に排出される場合には問題は発生しないが、自車の前方を他車が高速で走行する場合には、他車の後方にエアの乱流が発生し、この乱流によって自車のサイドドアの外面付近に発生する負圧が不連続的に変動する。このように負圧の不規則な変動が生じると、この負圧に引かれて樹脂カバーのケーブル挿通孔を通過する車内のエアの流れも不連続的に変動するため、このエアの流れの不連続的な変動によって車内に異音(以下、「風切り車内音」と称する)が発生し、乗員に不快感を与えるという問題がある。
【0005】
例えば、特許文献1には、ドアのインナパネルに形成されたサービスホール(作業孔)を覆うスクリーン(ビニールシート)をインナパネルの室内側に貼り付け、このスクリーンに穿設した開口のドア内部側にシート状の弁体を、その上部を溶着して垂下させて設ける構成が提案されている。ここで、弁体は、スクリーンに室内側からドア内部にエアを通す一方、ドア内部から室内側への水の浸入を阻止する機能を果たす。
【0006】
また、特許文献2には、作業孔(サービスホール)が形成されたドア(車体)の内側に装着される内装材に関する提案がなされている。すなわち、内装材に積層された緩衝材に、作業孔の周囲に適合するシーリング材を設け、このシーリング材を介して内装材の緩衝材によって作業孔をシールしてこれを閉塞する構成が提案されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、ドアラッチ機構を取り付けるためにドアインナパネルに形成された作業孔(サービスホール)の開口縁部にグロメット孔を設け、このグロメット孔を使用してホールカバーを固定し、このホールカバーによって作業孔をシールする構成が開示されている。ここで、ホールカバーの一部には、ドアラッチ機構部品に連結されるケーブル及びハーネスを収容するためのケーブルやハーネスの挿通部が設けられている。
【0008】
ところで、インナパネルに形成された作業孔を塞ぐ樹脂カバー(ホールカバー)にラッチケーブルを通すためのケーブル挿通孔が形成された車両用ドアにおいては、従来、ラッチケーブルにグロメットを通し、このグロメットを樹脂カバーに取り付けることによって、ケーブル挿通孔とラッチケーブルとの間の隙間を埋める構成が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開昭57-086819号公報
【特許文献2】特開2003-002130号公報
【特許文献3】特開2006-044635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、従来のように、ラッチケーブルにグロメットを通し、このグロメットを樹脂カバーに取り付けることによってケーブル挿通孔とラッチケーブルとの間の隙間を埋める構成を採用すると、例えば、車両が側面衝突を受けた場合に、ラッチケーブルがインナパネル内側から外側に引き出される動きがグロメットによって阻害され、ドアが不用意に開いてしまうという不具合が発生する。このような問題は、特許文献1~3において開示された構成によっても解決することができない。
【0011】
本発明は、車両の側面衝突時にドアが不用意に開く不具合の発生を防ぎつつ、車両走行時の風切り車内音を低減することのできる車両用ドアを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一実施の形態による車両用ドアは、アウタパネルとインナパネルの外周縁同士を接合して両者間に形成される空間に少なくともドアラッチ機構が収容され、前記インナパネルには、該インナパネルに形成された作業孔を車室側から覆う作業孔カバー部材が取り付けられ、前記作業孔カバーには、前記ドアラッチ機構から延びるラッチケーブルが挿通するケーブル挿通孔が形成された車両用ドアにおいて、前記作業孔カバー部材には、前記ケーブル挿通孔を覆うように非通気性の可撓性シート材が取り付けられ、該可撓性シート材には、前記ラッチケーブルが伸長方向に摺動移動可能に挿通される挿通部が確保されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る車両用ドアによれば、車両の側面衝突時における不用意なドアの開きの発生を防ぐことができるとともに、風切り車内音の発生を抑制することができ、乗員に不快感を与えることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施形態に係る風切り車内音低減構造を備える車両用ドアのインナパネルを車内側から見た正面図である。
図2図1のA部拡大詳細図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る風切り車内音低減構造を示す図2と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0016】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る風切り車内音低減構造を備える車両用ドアのインナパネルを車内側から見た正面図、図2図1のA部拡大詳細図であり、以下の説明においては、図1の右方を「車両前方」、左方を「車両後方」、上下を「車両の上下」とする。
【0017】
図1に示す車両用ドア(以下、単に「ドア」と称する。)1は、四輪車両(乗用車)の左側のフロントサイドドアである。このドア1は、図1の奥側に位置ずる不図示のアウタパネルとその内側(車内側)に位置するインナパネル2の外周縁同士を溶接によって接合して略矩形のフランジのついた中空構造として構成されている。ここで、アウタパネルとインナパネル2は、板金のプレス成形品であって、これらのアウタパネルとインナパネル2との間に形成される図示しない空間の後端部(図1に左端部)には、当該ドア1を開錠したり施錠(ロック)したりするためのラッチ機構3が収容されている。なお、アウタパネルとインナパネル2との間に形成される空間には、ラッチ機構3の他、図示しないウインドウガラスを昇降させる昇降機構やスピーカなどの各種機能部品(何れも図示していない)が収容されている。
【0018】
また、インナパネル2には、該インナパネル2とアウタパネルとの間に形成された空間に収容されたドアラッチ機構3などの各種機能部品に対して艤装作業や保守作業を行うための複数の図示しない作業孔(サービスホール)が形成されており、これらの作業孔の一部は、インナパネル2に内側から取り付けられた上下方向に細長い樹脂カバー4によって覆われている。具体的には、樹脂カバー4は、その外周縁の複数箇所(図示した例では、8箇所)がネジやタップなどの締結具5によってインナパネル2の外面(図1の手前側の面)に取り付けられており、インナパネル2に形成された図示しない作業孔を車内側から覆っている。なお、図示しないが、インナパネル2は、意匠部品であるドアトリムによって車内側(図1の手前側)から覆われている。
【0019】
ところで、樹脂カバー4の上部には、略矩形のケーブル挿通孔4aが形成されており、このケーブル挿通孔4aには、前記ドアラッチ機構3から延びる2本のラッチケーブル6,7が通されている。具体的には、アウタパネルとインナパネル2との間の空間に収容されたドアラッチ機構3から延びる2本のラッチケーブル6,7は、インナパネル2に形成された図示しない作業孔を上記空間側から通され、樹脂カバー4に形成されたケーブル挿通孔4aから樹脂カバー4の外へと引き出されている。そして、これらのラッチケーブル6,7は、インナパネル2の外側に配置されたレバーハンドル8に連結されている。
【0020】
次に、本発明に係る車両用ドアの詳細を図2に基づいて以下に説明する。
【0021】
図2に示すように、樹脂カバー4の上部に開口するケーブル挿通孔4aは、樹脂カバー4の外面に一部が取り付けられた非通気性の可撓性シート材である薄い矩形のビニールシート10によって車内側から開閉可能に覆われている。このビニールシート10は、樹脂カバー4に形成されたケーブル挿通孔4aの開口面積よりも大きな面積を有しており、その4辺のうちの下側の辺10a(図2にハッチングを付した辺)が接着剤による接着などによって樹脂カバー4の外面に取り付けられており、残りの3辺、すなわち、左右の辺10b,10cと上側の辺10dは、樹脂カバー4に取り付けられておらずフリーの状態にある。したがって、ビニールシート10は、下側の辺10aを中心として撓んで樹脂カバー4のケーブル挿通孔4aを開閉することができるが、ケーブル挿通孔4aを通過する車外側から車内側へのエアの通過(流入)を許容しつつ、ケーブル挿通孔4aを介して車内側から車外側へのエアの通過(流出)を阻止する逆止弁としての機能を果たす。
【0022】
また、本実施の形態では、ビニールシート10の上側の辺10dは、樹脂カバー4との間で挿通部を構成しており、この挿通部をラッチケーブル6,7が摺動可能に挿通している。つまり、2本のラッチケーブル6,7は、樹脂カバー4に開口するケーブル挿通孔4aとビニールシート10が接着されていない上側の辺10dとの間の隙間である挿通部から樹脂カバー4の外へと引き出されている。そして、本実施の形態においては、ビニールシート10は、樹脂カバー4との間で挿通部を構成する上側の辺10dとは反対側の下側の辺10aが樹脂カバー4の外面に接着などによって取り付けられている。
【0023】
そして、本実施の形態においては、図2に詳細に示すように、ビニールシート10の挿通部を構成する上側の辺10dの近傍における樹脂カバー4とラッチケーブル6,7との間に非通気性の緩衝材11(図2にハッチングを付して示す)が介設されている。なお、本実施の形態では、可撓性シート材としてビニールシート10を用いたが、非通気性の可撓性のフィルム状シートであれば、他の任意のものを使用することができる。また、本実施の形態においては、緩衝材11として、非通気性の弾性材である独立発泡シートを用いたが、緩衝効果を発揮するものであれば他の任意のものを使用することができる。
【0024】
以上のように、本実施の形態では、風切り車内音低減構造が、樹脂カバー4のケーブル挿通孔4aを車内側から覆う開閉可能なビニールシート10と、該ビニールシート10の一部に形成された挿通部(上側の辺10d)によって構成される。以下、この車両用ドアの作用効果について説明する。
【0025】
例えば、自車の前方を高速で走行する他車の後方に発生する乱流によって自車のドア1の外面付近に発生する負圧が変動しても、樹脂カバー4に開口するケーブル挿通孔4aの周縁にビニールシート10が負圧によって密着して該ケーブル挿通孔4aを塞ぐため、車内のエアがケーブル挿通孔4aを通過して車外へと流出する気流が的確に抑制される。このため、前方を走行する他車の後方にエアの乱流が発生したために自車のドア1の外面付近において負圧が不連続的に変動しても、樹脂カバー4に開口するケーブル挿通孔4aを不規則に通過するエアによる風切り車内音の発生が抑制され、乗員に不快感を与えることが防止される。
【0026】
また、ビニールシート10の少なくとも一辺が樹脂カバー4に固着されていない非固着辺とされ、他の辺が樹脂カバー4の外面に固着されており、上記非固着辺がケーブルの挿通部を構成している。この構成によれば、樹脂カバー4の外面に固着されない非固着辺を設けるだけでラッチケーブルを引き出すための挿通部を構成することができ、特別に挿通構造を形成する必要がない。また、少なくとも一辺を非固着としても、負圧の発生によりビニールシート10は樹脂カバー4の外面に引き付けられるので、風切り音の抑制作用は確保される。
【0027】
さらに、ラッチケーブル6,7の摺動(相対移動)を許容する挿通部をビニールシート10の上側の辺10dと樹脂カバー4との間に設けたため、車両の側面衝突時においてラッチケーブル6,7がインナパネル2の内側から外側に引き出される動きが阻害されず、ドア1が不用意に開いてしまうという不具合の発生が防がれる。なお、実際には、側面衝突時のラッチケーブル6,7が車外側に引き出される動作によって、ビニールシート10がラッチケーブル6,7によって引っ張られて引きちぎられ得る。
【0028】
また、本実施の形態では、ビニールシート10の挿通部を構成する上側の辺10dの近傍における樹脂カバー4とラッチケーブル6,7との間に、非通気性の緩衝材11を介設した。これにより、車両走行時の振動によってラッチケーブル6,7が樹脂カバー4に間欠的に接触することによって異音(打音)が発生することが防止される。すなわち、ラッチケーブル6,7に伝達される振動が緩衝材11によって吸収されるとともに、ラッチケーブル6,7が樹脂カバー4に直接接触せず、両者の間に緩衝材11が介在するため、ラッチケーブル6,7の樹脂カバー4への間欠的な接触による異音(打音)の発生が防がれる。
【0029】
以上のように、本実施の形態に係る車両用ドアによれば、車両の側面衝突時にドア1が不用意に開いてしまうという不具合の発生を防ぎつつ、車両走行時の風切り車内音を低減することができるという効果が得られる。
【0030】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態を図3に基づいて以下に説明する。
【0031】
図3は本発明の第2実施形態に係る車両用ドアを示す図2と同様の図であり、本図においては、図2に示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0032】
本実施の形態は、図3に示すように、可撓性シート材を独立発泡シート20で構成してその外周縁を樹脂カバー4の外面に取り付けるとともに、この独立発泡シート20の一部にスリット21を横方向(すなわち略車両前後方向)に一直線状に形成して挿通部としたことを特徴としている。ここで、可撓性シート材である独立発泡シート20は、その全周が接着剤などによって樹脂カバー4の外面に取り付けられており、この独立発泡シート20に横方向に直線状に形成されたスリット(挿通部)21から2本のラッチケーブル6,7が引き出されている。
【0033】
以上のように構成された車両用ドアにおいても、例えば、自車の前方を高速で走行する他車の後方に発生する乱流によって自車のドア1の外面付近に発生する負圧が変動した場合でも、樹脂カバー4に開口するケーブル挿通孔4aが可撓性シート材である独立発泡シート20によって塞がれており、該独立発泡シート20が負圧によって車外側に引かれるために該独立発泡シート20に形成されたスリット21の幅が狭くなり、車内のエアがケーブル挿通孔4aを通過することが防がれる。このため、前方を走行する他車の後方にエアの乱流が発生したために自車のドア1の外面付近において負圧が不連続的に変動しても、樹脂カバー4のケーブル挿通孔4aを不規則に通過するエアによる風切り車内音の発生が抑制され、乗員に不快感を与えることが防止される。
【0034】
また、ラッチケーブル6,7は、独立発泡シート20に形成されたスリット21を摺動可能(相対移動可能)に挿通されているため、車両の側面衝突時においてラッチケーブル6,7がインナパネル2の内側から外側に引き出される動きが阻害されず、ドア1が不用意に開いてしまうという不具合の発生が防がれる。なお、本実施の形態では、ラッチケーブル6,7が独立発泡シート20のスリット21から引き出された部分と樹脂カバー4との間に緩衝材として機能する独立発泡シート20が介在しているため、車両走行時の振動によってラッチケーブル6,7が樹脂カバー4に間欠的に接触することによる異音(打音)の発生が防がれる。
【0035】
なお、以上は乗用車の左側のフロントサイドドアについて説明したが、右側のフロントサイドドアや左右のリヤサイドドアに対しても本発明を同様に適用可能である。また、乗用車以外の任意の車両のドアに対しても本発明を同様に適用可能であることは言うまでもない。
【0036】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【0037】
例えば、上記実施の形態においては、可撓性シート材(ビニールシート材)をフィルム状シートで構成したが、非通気性の素材であれば特に限定はなく、柔軟性に優れた布材や紙材等から構成することも可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 車両用ドア
2 インナパネル
3 ドアラッチ機構
4 樹脂カバー
4a ケーブル挿通孔
5 締結具
6,7 ラッチケーブル
8 レバーハンドル
10 ビニールシート(可撓性シート材)
10a ビニールシートの下側の辺
10b,10c ビニールシートの左右の辺
10d ビニールシートの上側の辺(挿通部)
11 緩衝材
20 独立発泡シート(可撓性シート材)
21 スリット(挿通部)
図1
図2
図3