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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098415
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20240716BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240716BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240716BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240716BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
H02J7/35 K
H02J7/00 P
H02J3/38 130
H02J3/32
H02J3/46
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001926
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】野木 雅之
(72)【発明者】
【氏名】森 学人
【テーマコード(参考)】
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G066HA15
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA07
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA08
5G503FA06
(57)【要約】
【課題】安価に二酸化炭素の排出量削減に寄与可能な電源装置を提供すること。
【解決手段】実施形態に係る交流を直流にして出力する変電所および負荷となる電気車に接続されるき電回路に接続される電源装置であって、き電回路に接続され、き電回路の電圧を任意の電圧に変換する第1の電力変換器と、第1の電力変換器に接続され、太陽光パネルと、電気自動車用充電器のうちの1つまたは両方と接続される第1の蓄電池と、太陽光パネルが発電した電力を電気自動車用充電器または第1の蓄電池に供給されるように第1の電力変換器および第1の蓄電池を制御する制御部と、を備え、電気自動車用充電器は、太陽光パネルが発電した電力および第1の蓄電池から放電される電力のうちの少なくとも1つを用いて、電気自動車用充電器に接続される電気自動車を充電する。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流を直流にして出力する変電所および負荷となる電気車に接続されるき電回路に接続される電源装置であって、
前記き電回路に接続され、前記き電回路の電圧を任意の電圧に変換する第1の電力変換器と、
前記第1の電力変換器に接続され、太陽光パネルと、電気自動車用充電器のうちの1つまたは両方と接続される第1の蓄電池と、
前記太陽光パネルが発電した電力を前記電気自動車用充電器または前記第1の蓄電池に供給されるように前記第1の電力変換器および前記第1の蓄電池を制御する制御部と、
を備え、
前記電気自動車用充電器は、前記太陽光パネルが発電した電力および前記第1の蓄電池から放電される電力のうちの少なくとも1つを用いて、前記電気自動車用充電器に接続される電気自動車を充電する、
電源装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の蓄電池の充電率が高い程、前記き電回路に対する充電閾値電圧および電閾値電圧の少なくとも一方が上昇するように前記電力変換器および前記第1の蓄電池を制御する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の蓄電池の充電率が低い程、前記き電回路に対する充電閾値電圧および電閾値電圧の少なくとも一方が下降するように前記電力変換器および前記第1の蓄電池を制御する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項4】
前記第1の蓄電池に接続され、前記第1の蓄電池の放電電圧を任意の直流電圧に変換する第2の電力変換器をさらに備える、請求項1に記載の電源装置。
【請求項5】
前記第1の蓄電池に接続され、前記第1の蓄電池の放電電圧を任意の交流電圧に変換するインバータをさらに備え、
前記太陽光パネルおよび電気自動車用充電器のうちの1つまたは両方は、前記インバータを介して前記第1の蓄電池と接続される、請求項1に記載の電源装置。
【請求項6】
前記第1の蓄電池に接続され、前記第1の蓄電池の放電電圧を任意の交流電圧に変換するインバータと、
前記インバータの交流出力側に接続される第1の変圧器と、
前記第1の変圧器に接続され、前記第1の変圧器から出力される交流電圧を直流電圧に変換し、前記第1の電力変換器および前記第1の蓄電池を監視制御するための制御電源を供給する直流電源装置と、
をさらに備える、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項7】
前記直流電源装置は、前記太陽光パネルが発電した電力から電力供給される、請求項6に記載の電源装置。
【請求項8】
前記変電所が前記き電回路に電力供給ができない場合、前記制御部は、前記太陽光パネルが発電した電力を前記第1の蓄電池に充電し、前記蓄電池に充電された電力を前記第1の電力変換器を介して前記き電回路に供給する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項9】
前記第1の蓄電池に接続され、前記第1の蓄電池の放電電圧を任意の交流電圧に変換し、前記制御部により制御されるインバータと、
前記インバータの交流出力側および交流電力が供給される商用交流電路と接続される第1の変圧器と、
前記制御部は、前記第1の蓄電池の充電率が高くなるにつれて、前記電気車によって発生した回生電力を前記商用交流電路に供給し、前記第1の蓄電池の充電率が低くなるにつれて前記商用交流電路から前記第1の蓄電池への電力供給を増加するように前記第1の電力変換器、前記第1の蓄電池、および前記インバータを制御する、請求項1に記載の電源装置。
【請求項10】
前記第1の蓄電池、前記太陽光パネル、前記電気自動車用充電器に接続され、第2の電力変換器を備える第2の蓄電池をさらに備え、前記第2の蓄電池は、前記制御部により制御される、請求項1に記載の電源装置。
【請求項11】
前記制御部は、前記第2の蓄電池の蓄電率が増加するにつれて前記第2の電力変換器が前記第1の蓄電池への電力供給を増大させるように制御し、前記第2の蓄電池の蓄電率が低下するにつれて前記第2の電力変換器が前記第2の蓄電池への電力供給を増大させるように制御する、請求項10に記載の電源装置。
【請求項12】
前記第1の蓄電池は、中性点接地である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
台風などの風水害、地震やエネルギー安全保障の観点から社会インフラ設備のレジリエンス(強靭化)が求められるようになった。また、世界的な脱二酸化炭素の指向は、交通システムにおける化石燃料からの脱却や、より一層の省エネルギー化を求めている。電気鉄道においては、蓄電池技術を応用して、余剰回生電力として機械ブレーキで熱として消費されてきたエネルギーを蓄電池に貯蔵し、加速時に再利用する技術が用いられるようになってきた。
【0003】
また、自動車については急速な電気自動車化が進んでいる。ディーゼルエンジンで駆動していたバスを、電気自動車化されたEVバスとして運用されるようにもなってきた。さらに、クリーンな発電電源とされる太陽光や風力発電などの自然エネルギーを用いて、EVバスに車載された蓄電池を充電し、走行時にエネルギーを使用するように運用される。
【0004】
例えば、特許文献1では、電気自動車を充電するための変換器と、蓄電池、太陽光発電システムおよび交流系統連系用のインバータが直流母線を通じて接続され、不安定な自然エネルギーである太陽光発電を蓄電池や系統連系用インバータが補完することが示されている。
【0005】
特許文献2では、駅に蓄電池を設置することで非常用電源を確保し、鉄道システムのインフラレジリエンスに資する内容が記載されている。
【0006】
非特許文献1では、変電所が接続される交流系統に大規模な太陽光発電を接続し、直流変電所の整流器と直流き電線を経由して、鉄道システムで使用することが述べられている。
【0007】
さらに、非特許文献2では、駅に蓄電池を設置することで非常用電源を確保し、鉄道システムのインフラレジリエンス(強靭化)に資する内容が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開2022/004611号
【特許文献2】特開2022-112553号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】2022年電気学会産業応用部門大会 直流き電回路に接続する大規模蓄電装置を活用した鉄道デマンドのPV出力特性追従
【非特許文献2】2022年電気学会産業応用部門大会 直流電気鉄道に接続されたEV充電システムの有用回生エネルギーの評価
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1に開示される技術では、多数の電気自動車の充電、大出力の電気自動車の充電をする場合、大規模な充電用電源システムを構築する必要があるという問題がある。
【0011】
特許文献2に開示される技術では、駅のような広大な施設をバックアップしたり、緊急時の避難所として運用したりする場合に、要求される蓄電池容量も増大し、且つコストの増大につながるという問題がある。
【0012】
非特許文献1に開示される技術では、1つの大規模な太陽光発電の発電電力を、受電系統を通じて各直流変電所から注入することは、受電系統を新設したり維持したりする必要があり、高コストになりやすいという問題がある。また、整流器経由で太陽光発電の電力をき電系に注入する場合、列車の回生が発生した場合は、架線電圧が上昇し、整流器の無負荷送り出し電圧よりも高くなれば整流器のダイオードが逆阻止されてき電系にエネルギーを注入できなくなるという問題もある。
【0013】
非特許文献2に開示される技術では、設置場所またはき電機器の状態により架線電圧変動が大きく変移する。そのため、EV充電を架線電圧に応じて実施した場合、所望の時間内にEVの目標とする充電を達成することができなくなるという問題がある。
【0014】
この発明は、上記事情に着目してなされたもので、その目的とするところは安価に二酸化炭素の排出量削減に寄与可能な電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
実施形態に係る、交流を直流にして出力する変電所および負荷となる電気車に接続されるき電回路に接続される電源装置は、前記き電回路に接続され、前記き電回路の電圧を任意の電圧に変換する第1の電力変換器と、前記第1の電力変換器に接続され、太陽光パネルと、電気自動車用充電器のうちの1つまたは両方と接続される第1の蓄電池と、前記太陽光パネルが発電した電力を前記電気自動車用充電器または前記第1の蓄電池に供給されるように前記第1の電力変換器および前記第1の蓄電池を制御する制御部と、を備え、前記電気自動車用充電器は、前記太陽光パネルが発電した電力および前記第1の蓄電池から放電される電力のうちの少なくとも1つを用いて、前記電気自動車用充電器に接続される電気自動車を充電するものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、第1の実施形態に係る電源装置の回路図を含む電源システムの概略構成図である。
図2図2は、制御部による充放電用変換器および第1の蓄電池に対する制御の一例を示した図である。
図3図3は、第2の実施形態に係る電源装置の回路図を含む電源システムの概略構成図である。
図4図4は、第3の実施形態に係る電源装置の回路図を含む電源システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら電源システムについて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、同一の番号を付した部分については同様の動作を行うものとして、重ねての説明を省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
(構成)
図1は、第1の実施形態に係る電源装置の回路図を含む電源システムの概略構成図である。
図1に示すように、第1の実施形態に係る電源システムは、変電所2と、き電線・架線・サードレール3と、レール4と、電車30と、第3の接触器22と、第2の変圧器24と、建屋5内または外に配置された電源装置7と、建屋5内に配置された空調を含む負荷25および直流電源装置26と、電気自動車16と、を備える。
【0019】
変電所2は、一方が交流系統1-1に接続され、他方が、き電線・架線・サードレール3およびレール4に接続される。ここで、交流系統1-1は、図1に示されていない他の変電所2または一般的な電力会社に接続される。変電所2は、き電回路に電力を供給する変電所2である。き電方式が直流の場合、変電所2は、交流を直流に変換し、交流の場合、変電所2は、任意電圧の単相交流に変換する。また、き電線・架線・サードレール3およびレール4により、き電回路が構成される。
【0020】
き電線・架線・サードレール3およびレール4は、電源装置7および電車30に接続される。電車30は、き電回路に対しては負荷として機能する。ここで、電車30は、一般的な電気車であって良い。
【0021】
第3の接触器22は、一方が交流系統1-2に接続され、他方が第2の変圧器24に接続される。ここで、交流系統1-2は、一般的な電力会社に接続される。すなわち、交流系統1-2は、商用交流電力路を形成する。また、第2の変圧器24は、電源装置7に接続される。
【0022】
建屋5は、例えば、鉄道沿線、駅舎等に配置される。そして、建屋5は、コンテナまたはキュービクルであっても良い。
【0023】
電源装置7は、き電用接触器6と、充放電用変換器8と、第1の蓄電池9と、インバータ11と、太陽光パネル13と、第1のDC/DC変換器14と、電気自動車用充電器15と、第1の変圧器18と、第1の交流接触器20と、第2の交流接触器21と、第4の交流接触器23と、直流接触器28と、を備える。なお、太陽光パネル13および電気自動車用充電器15は、建屋5外に設置され、これら以外は、建屋5内に設置される。
【0024】
き電用接触器6は、き電線・架線・サードレール3および充放電用変換器8との間に配置される。そして、き電用接触器6は、投入すると、電源装置7とき電回路の接続を確保し、解放すると、電源装置7とき電力回路との接続を分離する。
【0025】
充放電用変換器8は、き電力回路からの電力を第1の蓄電池9に充電する、または第1の蓄電池9の電力をき電力回路に放電するために用いられる第1の変換器として動作する。例えば、き電回路が交流の場合、第1の変換器である充放電用変換器8は、AC/DCインバータであり、直流の場合、第1の変換器である充放電用変換器8は、DC/DC変換器である。
【0026】
第1の蓄電池9は、例えば、直列に接続されたセルを備える。ここで、各セルは、例えば、負極にチタン酸リチウムを用いた一般的なリチウムイオン電池であって良い。また、第1の蓄電池9は、1つに限られず、複数の第1の蓄電池9が直列または並列に接続されて構成されたものでも良い。また、第1の蓄電池9は、第1の蓄電池9の温度、電圧、電流を監視する制御機器、第1の蓄電池9に対して直列にヒューズおよび接触器が挿入された蓄電池ユニットであって良い。また、第1の蓄電池9は、中性点接地である。
【0027】
第1の実施形態において、第1の蓄電池9は、インバータ11、第1のDC/DC変換器14、および電気自動車用充電器15それぞれと接続される。
【0028】
インバータ11は、第1の蓄電池9から放電された直流電圧を任意の交流電圧に変換し、第1の変圧器18との間のインバータ交流出力系統17に交流電圧を出力する。
【0029】
インバータ交流出力系統17は、第1の変圧器18を介して変圧器二次側交流系統19に接続される。変圧器二次側交流系統19は、第1の交流接触器20および第2の交流接触器21を介して空調を含む負荷25および直流電源装置26と接続される。すなわち、第1の蓄電池9の電力は、インバータ11、第1の変圧器18、第1の交流接触器20、および第2の交流接触器21を介して空調を含む負荷25および直流電源装置26に電力を供給する。さらにインバータ交流出力系統17は、第1の交流接触器20、第4の交流接触器23、第2の変圧器24、および第3の接触器22を介して交流系統1-2である商用交流電路と接続される。
【0030】
第1の交流接触器20および第2の交流接触器21の両方が投入されると、空調を含む負荷25および直流電源装置26と電源装置7との接続を確保する。一方、第1の交流接触器20および第2の交流接触器21の少なくとも一方が解放されると、空調を含む負荷25および直流電源装置26と電源装置7との接続を分離する。
【0031】
また、第1の交流接触器20および第4の交流接触器23の両方が投入されると、交流系統1-2との接続を確保する。一方、第1の交流接触器20および第4の交流接触器23の少なくとも一方が解放されると、交流系統1-2と電源装置7との接続を分離する。
【0032】
空調を含む負荷25は、電源装置7によって生じる熱を建屋5内で冷却する機能を有している。
【0033】
直流電源装置26は、第1の変圧器18からの交流電圧を直流電圧に変換し、直流電源路27を介して、制御電源に必要な制御電圧(例えば、100V)を充放電用変換器8および第1の蓄電池9に供給する。
【0034】
第1のDC/DC変換器14は、太陽光パネル13に接続される。第1のDC/DC変換器14は、太陽光パネル13によって発電された電力(電圧)を第1の蓄電池9で用いる電圧に変換するために用いられる。
【0035】
電気自動車用充電器15は、電気自動車16と接続される。電気自動車用充電器15は、第1の蓄電池9で用いる電圧および太陽光パネル13によって発電された電力を第1のDC/DC変換器14により変換された電圧を電気自動車16に充電可能な電圧に変換するために用いられる。ここで、電気自動車16は、電池のエネルギーのみで走行する純粋な電気自動車16のみに限られず、例えばプラグインハイブリッド自動車のような車両の駆動用の蓄電池を搭載した自動車であっても良い。
【0036】
直流接触器28は、第1の蓄電池9とインバータ11、第1のDC/DC変換器14、および電気自動車用充電器15との間に接続され、第1の蓄電池9とインバータ11、第1のDC/DC変換器14、および電気自動車用充電器15とを分離するために用いられる。
【0037】
制御部29は、き電用接触器6、第1の交流接触器20、第4の交流接触器23、および直流接触器28の開閉操作、開閉状態の検出等を行う。また、制御部29は、充放電用変換器8の充放電制御、第1の蓄電池9の充電率(SOC:State of Charge)、温度、電圧等の検出、第1の蓄電池9が蓄電ユニットである場合、内蔵される接触器の開閉操作を行う。さらに、制御部29は、インバータ11、第1のDC/DC変換器14、電気自動車用充電器15の制御を行う。なお、制御部29は、一つの制御部に集約する必要はなく、例えば、充放電用変換器8、インバータ11、第1のDC/DC変換器14、電気自動車用充電器15それぞれに制御部29が実装され、それぞれの制御部29が通信により連携することで実現しても良い。
【0038】
ここで、図1の例では、太陽光パネル13および電気自動車用充電器15が第1の蓄電池に接続される例を示しているが、いずれか1つのみを有する電源装置7であっても良いのは勿論である。
【0039】
(制御動作)
次に、図1を参照して、電源装置7の制御動作の例を説明する。例えば、第4の交流接触器23を解放し、き電用接触器6、第1の交流接触器20、第2の交流接触器21、および直流接触器28は、投入された状態であるとする。この際、制御部29は、インバータ11に接続されたインバータ交流出力系統17または変圧器二次側交流系統19の電圧を一定の交流電圧に保つようにインバータ11に対して定電圧で制御する。
【0040】
また、第1のDC/DC変換器14は、太陽光パネル13の発電電力を最大出力するように、最大電力点追従制御(MPPT:Maximum Power Point Tracking制御)を行う。電気自動車用充電器15は、電気自動車16の充電に必要な電力を電気自動車16に供給する。充放電用変換器8は、架線電圧に応じてき電回路に対する放電または充電動作を行う。例えば、き電電圧が上昇した場合、第1の蓄電池9に対して充電し、き電電圧が下降した場合、第1の蓄電池9から放電する制御である。また、充放電用変換器8は、第1の蓄電池9のSOCが高いほどき電回路から第1の蓄電池9に充電を開始するき電電圧、および第1の蓄電池9からき電回路に放電を開始するき電電圧が上がるように制御する。
【0041】
図2は、制御部29による充放電用変換器8および第1の蓄電池9に対する制御の一例を示した図である。
【0042】
図2に示すように、制御部29は、SOCが高くなると、第1の蓄電池9に充電を開始する充電閾値電圧を高くするように、充放電用変換器8を制御する。同様に、制御部29は、SOCが高くなると、第1の蓄電池9からき電回路に放電を開始する放電閾値電圧を高くするように、充放電用変換器8を制御する。
【0043】
逆に、制御部29は、SOCが低くなるにつれて、第1の蓄電池9に充電を開始する充電閾値電圧を低くするように、充放電用変換器8を制御する。同様に、制御部29は、SOCが低くなるにつれて、第1の蓄電池9からき電回路に放電を開始する放電閾値電圧を低くするように、充放電用変換器8を制御する。
【0044】
次に、第4の交流接触器23が投入された状態の制御について説明する。
この時、インバータ11は、インバータ交流出力系統17に対して電流制御を行う。この電流制御は、制御部29内で演算され、目標とする有効電力が出力されるように電流が制御される。目標とする有効電力は、例えば制御部29内にテーブルとして与えられ、制御部29は、第1の蓄電池9のSOCが上昇するほど有効電力指令値が増えるように制御する。これにより、制御部29は、第1の蓄電池9のSOCが満充電または過充電になることを抑制することができる。また逆に、制御部29は、第1の蓄電池9のSOCが下降するほど有効電力指令値が減るように制御する。これにより、制御部29は、第1の蓄電池9の過放電を抑制することが可能となる。
【0045】
次に、太陽光パネル13が発電し、電気自動車16が充電する際の制御について説明する。
太陽光パネル13の発電量が電気自動車16の充電に必要な電力を上回る場合、制御部29は、電気自動車16の充電に必要な電力を太陽光パネル13が発電した電力から供給し、残りの電力を第1の蓄電池9に充電するように制御する。
【0046】
一方、太陽光パネル13の発電量が電気自動車16の充電に必要な電力を下回る場合、制御部29は、太陽光パネル13が発電した電力を電気自動車16に供給し、さらに、電気自動車16の充電に必要な電力から太陽光パネル13の発電量の電力量を引いた分の電力を、電気自動車用充電器15を介して第1の蓄電池9から電気自動車16に供給するように制御する。このように充電することで、交流系統1-1および交流系統1-2に対して大きな負荷をかけることなく電気自動車16を充電することができる。また、このように、第1の蓄電池9を設けることにより、新規の受電系統および受電設備の構築が不要となるため、低コスト化に寄与することができる。さらに、第1の実施形態では、電気自動車16が太陽光パネル13の発電量を上回る場合、き電回路によって充電された第1の蓄電池9から電力が供給されることになる。これにより、架線電圧の範囲の制約を受けることなく電気自動車16に対して充電することが可能となる。これは、第1の蓄電池9の充電率に応じて、充放電用変換器8が充電を開始する架線電圧の閾値および放電を開始する架線電圧の閾値が変化することにより実現可能である。例えば、第1の蓄電池9の充電率の低下、すなわちSOCが低下した状態で電気自動車16に対しての充電が継続したとしても、充電を開始する電圧および放電を開始する電圧が低下するため、第1の蓄電池9が過放電になることを防ぐことが可能となる。
【0047】
また、太陽光パネル13が発電した電力が電気自動車16の充電に必要な電力を上回る、または電気自動車16が電気自動車用充電器15に接続されていない場合、太陽光パネル13が発電した電力は、第1の蓄電池9に充電されることになる。そして、き電回路に対して放電が必要な場合、第1の蓄電池9からき電回路に放電される。
【0048】
なお、太陽光パネル13が発電した電力は、インバータ11および第1の変圧器18を介して、空調を含む負荷25および直流電源装置26に供給しても良いのは勿論である。
【0049】
次に、太陽光パネルが発電した電力をき電回路で用いる際の動作について説明する。
【0050】
一般的に、き電回路は、電車30の加速または減速に伴った付加電力の変動が激しい。そして、き電回路は、電車30の加速を行う短期間に高出力の負荷が発生する。そのような場合、き電回路の電流が増大することになり、き電回路中の抵抗によるき電損失も発生しやすくなる。
【0051】
例えば、き電回路に通常の2倍の電流が流れた場合、抵抗損失は、通常の抵抗損失の4倍となり、4倍の電流が流れた場合、抵抗損失は、通常の抵抗損失の16倍になる。そのため、第1の蓄電池9から充放電用変換器8を介したき電回路への放電は、き電回路が高負荷な時に高出力となるように制御されることが望ましい。上述したように、太陽光パネル13が発電した電力は、一旦、第1の蓄電池9に充電される。そして、き電回路が高負荷となる際、第1の蓄電池9からき電回路に対して高出力で放電することになる。これにより、き電損失の低減に寄与することができる。また、太陽光パネル13により発電した電力を、第1の蓄電池9を介して直接的にき電回路に放電することが可能となるため、鉄道システムの二酸化炭素排出量削減に寄与することができる。
【0052】
また、交流系統1-2が停電となった場合、第1の蓄電池9がインバータ11を介して交流側の空調を含む負荷25および直流電源装置26に電力を供給することが可能である。この場合、第1の蓄電池9がき電回路、すなわち交流系統1-1から電力を受け取ることが可能な状態であれば、交流系統1-1側からの電力を第1の蓄電池9で受け取る。そして、第1の蓄電池9は、インバータ11を介して、受け取った電力を空調を含む負荷25および直流電源装置26に供給することが可能である。
【0053】
また、交流系統1-1および交流系統1-2への電力会社からの電力(交流電力)が途絶え、且つ交流系統1-1が遠方の変電所2からの給電を受けることが可能な場合、第1の蓄電池9を介さずに直接き電回路から電気自動車16に充電すると電圧が低下する。そこで、小さい電力で第1の蓄電池9に対して充電しつつ、充電された第1の蓄電池9から電気自動車用充電器15を介して、大電力で電気自動車16に放電することが可能となる。例えば、電気自動車16が充電に大電力を必要とする電気自動車化された路線バスである場合、交流系統1-1および交流系統1-2への電力会社からの電力が途絶した場合でも、電気自動車化された路線バスは、公共交通システムの一部として運航を維持することが可能になる。そのため、電源装置7は、インフラレジリエンスの向上にも寄与する。
【0054】
(第1の実施形態の作用効果)
以上説明した第1の実施形態によれば、き電回路、太陽光パネル13に接続された、充放電用変換器8および第1の蓄電池9を備える電源装置7を設けることにより、き電回路が高負荷となる際に太陽光パネル13が発電した電力をき電回路に供給することができる。これにより、鉄道システムの二酸化炭素の排出量削減に寄与することができる。
【0055】
また、第1の実施形態によれば、制御部29は、第1の蓄電池9のSOCに応じて充放電用変換器8を介したき電回路による第1の蓄電池9に対して充放電を開始する閾値を変化させる。これにより、第1の蓄電池9のSOCが低下した状態で電気自動車16に対して充電したとしても、第1の蓄電池9が過放電になることが防止できる。また、第1の蓄電池9を用いることにより、電気自動車16に対して充電している際に交流系統1-1および交流系統1-2に対して大きな負荷をかけることがない。そのため、新しい受電系統および受電設備の構築が不要となり、低コスト化に寄与する。
【0056】
さらに、交流系統1-1および交流系統1-2に対して電力会社からの電力が途絶したとしても電源装置7は、交流系統1-1に接続された遠方の変電所2から電力を受け取ることができる。そして、遠方の変電所2からの電力を第1の蓄電池9が蓄電し、蓄電した電力を用いて電気自動車16に対して充電することが可能となる。これにより、電源装置7は、公共交通システムにおけるインフラレジリエンスの向上に寄与することができる。
【0057】
[第2の実施形態]
図3は、第2の実施形態に係る電源装置7の回路図を含む電源システムの概略構成図である。
第2の実施形態では、第1の蓄電池9は、直流接触器28を介して、第2のDC/DC変換器10が接続されおり、且つ、第2のDC/DC変換器10とインバータ11との間に第2の蓄電池12が接続されている点で第1の実施形態と異なる。また、第2のDC/DC変換器10および第2の蓄電池12は、制御部29によって制御される。
【0058】
第2のDC/DC変換器10は、変圧器を内蔵する絶縁型の変圧器であって良い。例えば、第2のDC/DC変換器10は、Dual Active Bridge回路、チョッパと共振型の高周波絶縁回路を組み合わせた回路等であって良い。
【0059】
第2の蓄電池12は、直接、第2のDC/DC変換器10に接続されるように配置されても良い。第2の蓄電池12は、蓄電池ユニットであり、その中に第2の電力変換器であるDC/DC変換器を内蔵し、第2のDC/DC変換器10に接続される構成であっても良い。
【0060】
第2の蓄電池12の充電率に応じて、制御部29は、上述した第2の電力変換器を制御する。例えば、第2の蓄電池12の充電率を増大させる場合、制御部29は、第1の蓄電池9が設置されている回路からの電力を第2の蓄電池12側へ第2の電力変換器を介して給電するように制御する。逆に前記第2の蓄電池12の充電率が高い場合、制御部29は、第2の蓄電池12の電力を、第1の蓄電池9が設置される直流回路側に給電する。
【0061】
第2のDC/DC変換器10を設置することにより、第1の蓄電池9から他の機器へ電力を供給する際の電圧変動を抑制することができる。また、第2のDC/DC変換器10は、例えば、第1の蓄電池9からの電圧を、インバータ11、第2の蓄電池12、第1のDC/DC変換器14、電気自動車用充電器15に対して適切な直流電圧に降圧することができる。例えば、第1の蓄電池9から第2のDC/DC変換器10に入力された電圧が1500Vであった場合、第2のDC/DC変換器10は、第2のDC/DC変換器10の出力を200Vにすることができる。このようにすることにより、電源装置7におけるこれらの機器を別途開発せずに、安価な変換器(例えば、既存の変換器)を組み合わせて構成することが可能となる。これにより、電源装置7の製造コストを低減することができる。
【0062】
第2の実施形態では、上述した第1の実施形態と同様の動作を実施可能である。しかしながらこれらの説明は、重複するため、ここでは省略する。
【0063】
(第2の実施形態の作用効果)
以上説明した第2の実施形態によれば、第2のDC/DC変換器10を設置することにより、第1の蓄電池9からの直流電圧をインバータ11、第2の蓄電池12、第1のDC/DC変換器14、電気自動車用充電器15に対して適切な直流電圧に変換することができる。これにより、これらの機器を安価な機器の組み合わせにより電源装置7を構成することが可能となる。これにより、電源装置7の製造コストを低減することができる。
【0064】
[第3の実施形態]
図4は、第3の実施形態に係る電源装置7の回路図を含む電源システムの概略構成図である。
第3の実施形態では、インバータ11の交流出力に第5の交流接触器31が接続されている。そして、第5の交流接触器31は、第1の変圧器18を介して、第1の交流接触器20に接続される。そして、第1の交流接触器20は、第2の蓄電池12と、電気自動車用充電器15とに接続される。さらに、第1の交流接触器20は、パワーコンディショナ32を介して太陽光パネル13と接続される。
【0065】
そのため、第3の実施形態において、インバータ11の交流出力に第5の交流接触器31が配置され、交流側に第2の蓄電池12、パワーコンディショナ32、および電気自動車用充電器15が接続されている点で第1の実施形態と異なる。
【0066】
パワーコンディショナ32は、インバータのみで構成されても良いし、インバータとDC/DC変換器を組み合わせて太陽光パネル13と接続される構成であっても良い。
【0067】
このように、第3の実施形態では、交流経路側で、太陽光パネル13の発電した電力を受け取って、直流系統側の第1の蓄電池9に充電する。さらに、第3の実施形態では、交流経路側で電気自動車16の充電を行う。このようにすることにより、電気自動車16は、交流系統1-2からの電力を受け取ることが可能となり、電気自動車化された路線バス等の公共交通インフラにおいて電源装置7を使用することにより、充電電源の冗長化に寄与する。
【0068】
また、交流側に第2の蓄電池12、パワーコンディショナ32、電気自動車用充電器15を配置することにより、これらの機器を一般の民生品で構成することが可能である。これにより、これらの機器を専用で開発する必要がなくなり、電源装置7の製造コストを低減することが可能となる。
【0069】
また、第2の蓄電池12は、交流側でインバータ11と接続される。このため、第4の交流接触器23を解放した場合、インバータ11を介した第1の蓄電池9の電力に加えて、第2の蓄電池12の電力により、変圧器二次側交流系統19で必要な電圧を生成して良い。この場合、インバータ11は、第2の蓄電池12とインバータ11が作り出す交流側において連系運転することになる。この時、インバータ11の有効電力の動作は、第2の蓄電池12のSOCが増加するにつれてき電系統へ放電するように動き、SOCが低下するにつれてき電系統から変圧器二次側交流系統19へ回生するように動作する。
【0070】
第3の実施形態では、上述した第1の実施形態と同様の動作を実施可能である。しかしながらこれらの説明は、重複するため、ここでは省略する。
【0071】
(第3の実施形態の作用効果)
以上説明した第3の実施形態によれば、交流側に第2の蓄電池12、パワーコンディショナ32、電気自動車用充電器15を配置する。その結果、これらの機器を一般の民生品で構成することが可能となるため、これらの機器を専用で開発する必要がなくなる。そのため、電源装置7の製造コストを低減することが可能となる。
【0072】
[他の実施形態]
なお、この発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、第2の実施形態と第3の実施形態は、組み合わせることが可能である。例えば、第3の実施形態における第1の蓄電池9は、直流接触器28を介して第2のDC/DC変換器10と接続するように構成されて良い。
【0073】
要するに、この発明は上記実施形態に限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に変形することが可能である。また、各実施形態は可能な限り適宜組み合わせて実施してもよく、その場合組み合わせた効果が得られる。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適当な組み合わせにより種々の発明が抽出され得る。
【符号の説明】
【0074】
1-1…交流系統
1-2…交流系統
2…変電所
3…電線・架線・サードレール
4…レール
5…建屋
6…電用接触器
7…電源装置
8…充放電用変換器
9…第1の蓄電池
10…第2のDC/DC変換器
11…インバータ
12…第2の蓄電池
13…太陽光パネル
14…第1のDC/DC変換器
15…電気自動車用充電器
16…電気自動車
17…インバータ交流出力系統
18…第1の変圧器
19…変圧器二次側交流系統
20…第1の交流接触器
21…第2の交流接触器
22…第3の接触器
23…第4の交流接触器
24…第2の変圧器
25…負荷
26…直流電源装置
27…直流電源路
28…直流接触器
29…制御部
30…電車
31…第5の交流接触器
32…パワーコンディショナ
図1
図2
図3
図4