(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098422
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】トレーラー用左右側面後方カメラ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 1/28 20220101AFI20240716BHJP
B60R 1/04 20060101ALI20240716BHJP
H04N 7/18 20060101ALI20240716BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B60R1/28 200
B60R1/04 G
H04N7/18 J
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001941
(22)【出願日】2023-01-10
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】502012026
【氏名又は名称】加藤 隆
(71)【出願人】
【識別番号】523010535
【氏名又は名称】加藤 妃絵
(74)【代理人】
【識別番号】100161355
【弁理士】
【氏名又は名称】野崎 俊剛
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 妃絵
【テーマコード(参考)】
5C054
5H181
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054FE02
5C054FE23
5C054HA30
5H181AA07
5H181CC04
5H181LL02
(57)【要約】
【課題】トラクターに揺動可能に牽引されるトレーラーの左右両方の後方を確認できるとともに、通常走行時にはトレーラーの車幅方向端部より内側に収納させ、突出量を抑えて小型化できるトレーラー用左右側面後方カメラ装置を提供すること。
【解決手段】トレーラー用左右側面後方カメラ装置50は、トラクター10に揺動可能に牽引されるトレーラー30の後方を撮影するものである。トレーラー用左右側面後方カメラ装置50は、左のカメラ機構と、右のカメラ機構と、モニターとを備えている。カメラ機構は、撮影用のカメラ51L、51Rと、トレーラー30の後方確認時にカメラ51L、51Rをトレーラー30の車幅方向端部より内側の収納位置からトレーラー30の車幅方向端部より外側の撮影位置に移動させる収納移動機構60L、60Rと、を備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラクターに揺動可能に牽引されるトレーラーの後方を撮影するトレーラー用左右側面後方カメラ装置であって、
前記トレーラーの車幅方向左側部に設けられ前記トレーラーの左後方を撮影可能な左のカメラ機構と、前記トレーラーの車幅方向右側部に設けられ前記トレーラーの右後方を撮影可能な右のカメラ機構と、車内に設けられ前記右のカメラ機構が撮影する画像と前記左のカメラ機構が撮影する画像の少なくとも一方を表示可能なモニターとを備え、
前記カメラ機構は、撮影用のカメラと、前記トレーラーの後方確認時に前記カメラを前記トレーラーの車幅方向端部より内側の収納位置から前記トレーラーの車幅方向端部より外側の撮影位置に移動させる収納移動機構とを備えていることを特徴とするトレーラー用左右側面後方カメラ装置。
【請求項2】
請求項1記載のトレーラー用左右側面後方カメラ装置であって、
前記収納移動機構は、前記トレーラーに設けられたブラケットと、前記ブラケットに設けられ所定の角度に回転可能なモータ部と、前記モータ部に回転可能に設けられ前記カメラを保持する回転バーとを備えていることを特徴とするトレーラー用左右側面後方カメラ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のトレーラー用左右側面後方カメラ装置であって、
前記トレーラーは、車輪の上方に設けられた荷台と、前記荷台の車幅方向端部から下方に延びて設けられたステーと、前記ステーに車両前後方向に延びて設けられ前記トレーラーを保護するサイドバンパーとを備え、
前記収納移動機構は、前記サイドバンパーの前部に設けられていることを特徴とするトレーラー用左右側面後方カメラ装置。
【請求項4】
請求項3記載のトレーラー用左右側面後方カメラ装置であって、
前記サイドバンパーは、車両前後方向に延びる棒状のサイドバーが上下方向に所定の間隔で複数設けられており、
前記収納移動機構は、上から2番目以下の前記サイドバーに設けられており、前記収納移動機構が設けられた前記サイドバーの上方を前記カメラが収納位置から撮影位置に移動することを特徴とするトレーラー用左右側面後方カメラ装置。
【請求項5】
請求項1又は請求項2記載のトレーラー用左右側面後方カメラ装置であって、
前記トラクターの運転席の車内には、前記トラクターの停止時又は後進時に前記カメラを収納位置から撮影位置に移動させるとともに、前記モニターの画像を前記右のカメラ機構が撮影する画像と前記左のカメラ機構が撮影する画像のいずれか一方又は両方に切り換え可能な切り替えスイッチが設けられていることを特徴とするトレーラー用左右側面後方カメラ装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2記載のトレーラー用左右側面後方カメラ装置であって、
前記収納移動機構は、前記トラクターの後進時に自動的に前記右のカメラ及び前記左のカメラを収納位置から撮影位置に移動させ、前記モニターに前記右のカメラ機構が撮影する画像と前記左のカメラ機構が撮影する画像を表示することを特徴とするトレーラー用左右側面後方カメラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクターに揺動可能に牽引されるトレーラーの後方を撮影するトレーラー用左右側面後方カメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トラックやバスが後進する際、運転手がサイドミラーで見て車両自体や荷台の陰になる車両後方の死角を確認するために、車両後端部にバックカメラが備えられたものがある。このような、バスの車両後端部にバックカメラを備えた後方カメラ装置として、特許文献1に示す後方カメラ装置が知られている。
【0003】
特許文献1の技術は、バスの屋根後部上に設けたリヤスポイラの一部を可動部分とし、その下側にバックカメラを取付け、ギヤドモータの作動により可動部分とバックカメラとが一緒に上下回動するようにし、可動部分が固定部分と面一に連なった下方へ回動した位置ではバックカメラはリヤスポイラ内に格納され、可動部分とバックカメラが上方へ回動すると後方の広い範囲を写し出す使用位置となるものである。
【0004】
ところで、トラックのような貨物自動車の中には、運転席が設けられたトラクターと、このトラクターに揺動可能に牽引され荷台が設けられたトレーラーとから構成されるものがある。トラクターに対してトレーラーを真っ直ぐな位置にあるときは、運転手は左右のサイドミラーでトレーラーの左右の側方を確認し、トレーラーの屋根の後端部上にバックカメラを設けていればこのバックカメラが撮影する画像でトレーラーの後方を確認する。
【0005】
しかし、トレーラーを移動させているときにハンドルを切ると、トレーラーに対してトラクターが折れ曲がるように動く。このため、特許文献1のトレーラーの屋根の後端部上に設けたバックカメラやサイドミラーでは確認できない死角が生じる。例えば、交差点でトレーラーが左折する際、歩行者などを巻き込まないようにするために運転手は左のサイドミラーでトレーラーの左側方を確認するが、トレーラーに対してトラクターが大きく角度が付いた状態になると、左のサイドミラーの視野範囲(視野方向)がトレーラーの左側方ではなくトレーラーの荷台側面のみとなる。
【0006】
このように交差点で左折時にハンドルを大きく左に切ると、通常は運転席が車幅方向右側にあるため特に左側が見え難くなり、左のサイドミラーからはトレーラーの荷台の側面しか見えず、トレーラーの左側方及び左後方が見えなくなる場合がある。この対策として、特許文献2に示す後方カメラ装置が知られている。
【0007】
特許文献2の技術は、牽引されるトレーラーの左側前方に、左後方障害物を確認するカメラを取り付けて、運転台内左方に設置したモニターの画像で、トレーラーの左側方及び左後方の障害物と車体との接近間隔を正確に把握し、確認しながら接触事故等を防止するものである。交差点で前進時にトレーラーに対してトラクターが大きく角度が付いた状態になったときは、左のサイドミラーで見えない死角を、カメラからの画像で確認する。
【0008】
しかし、特許文献2の技術は、トレーラーの左側前方にのみカメラを設けているため、トレーラーの右側方及び右後方の確認がカメラではできない。さらに、法規上、トレーラーの車幅は所定の値に制限されており、トレーラーの車幅(荷台の幅)は制限値ぎりぎりに設定されていることなどから通常走行時にカメラをトレーラーの車幅を越えて側方に飛び出すように配置できない。しかし、特許文献2の技術は交差点のおける左折時にカメラがトレーラーの車幅よりも側方に飛び出している。また、トレーラーは荷物を積むコンテナ部分自体を入れ替えることがあるためコンテナの左右前後の側面にカメラを設けることができない場合があるうえ、大きく突出していると荷物の積み下ろしやコンテナ部分自体の入れ替えの妨げとなる。しかし、特許文献2の技術は、トレーラーのコンテナ部分の左側前面にブラケットを介して上方に大きく突出するポールを設け、ポールの上端部にカメラを設けているため、大きく突出している部分があり邪魔になるうえ、コンテナ部分自体の入れ替えに対応できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】実開平5-019078号公報
【特許文献2】実用新案登録第3093837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、以上の点に鑑み、トラクターに揺動可能に牽引されるトレーラーの左右両方の側面(側方)及び後方を確認できるとともに、通常走行時にはトレーラーの車幅方向端部より内側に収納させ、突出量を抑えて小型化できるトレーラー用左右側面後方カメラ装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施例によれば、トラクターに揺動可能に牽引されるトレーラーの後方を撮影するトレーラー用左右側面後方カメラ装置であって、
前記トレーラーの車幅方向左側部に設けられ前記トレーラーの左後方を撮影可能な左のカメラ機構と、前記トレーラーの車幅方向右側部に設けられ前記トレーラーの右後方を撮影可能な右のカメラ機構と、車内に設けられ前記右のカメラ機構が撮影する画像と前記左のカメラ機構が撮影する画像の少なくとも一方を表示可能なモニターとを備え、
前記カメラ機構は、撮影用のカメラと、前記トレーラーの後方確認時に前記カメラを前記トレーラーの車幅方向端部より内側の収納位置から前記トレーラーの車幅方向端部より外側の撮影位置に移動させる収納移動機構とを備えていることを特徴とする。
【0012】
かかる構成によれば、トレーラーの車幅方向左側部に設けられトレーラーの左後方を撮影可能な左のカメラ機構と、トレーラーの車幅方向右側部に設けられトレーラーの右後方を撮影可能な右のカメラ機構とを備えているので、トラクターに揺動可能に牽引されるトレーラーの左右両方の側面(側方)及び後方を確認できる。さらに、カメラ機構は、撮影用のカメラと、トレーラーの後方確認時にカメラをトレーラーの車幅方向端部より内側の収納位置からトレーラーの車幅方向端部より外側の撮影位置に移動させる収納移動機構とを備えているので、通常走行時にはトレーラーの車幅方向端部より内側にカメラを収納させ、カメラ機構の突出量を抑えて小型化することできる。
【0013】
好ましくは、前記収納移動機構は、前記トレーラーに設けられたブラケットと、前記ブラケットに設けられ所定の角度に回転可能なモータ部と、前記モータ部に回転可能に設けられ前記カメラを保持する回転バーとを備えている。
【0014】
かかる構成によれば、収納移動機構は、トレーラーに取り付けたブラケットに設けられ所定の角度に回転可能なモータ部と、モータ部に回転可能に設けられカメラを保持する回転バーとからなるので、簡単な構成で部品それぞれを小型化し、カメラ機構全体の突出量を抑えて小型化することできる。
【0015】
好ましくは、前記トレーラーは、車輪の上方に設けられた荷台と、前記荷台の車幅方向端部から下方に延びて設けられたステーと、前記ステーに車両前後方向に延びて設けられ前記トレーラーを保護するサイドバンパーとを備え、
前記収納移動機構は、前記サイドバンパーの前部に設けられている。
【0016】
かかる構成によれば、収納移動機構は、トレーラーの荷台に設けられたサイドバンパーに取り付けられているので、カメラが荷台よりも下方に位置して荷物の積み下ろし等の邪魔にならない。さらに、収納移動機構はサイドバンパーを利用して取り付けるので、ブラケットをサイドバンパーに沿わせる程度の大きさに抑えてカメラ機構全体をより小型化することができる。
【0017】
好ましくは、前記サイドバンパーは、車両前後方向に延びる棒状のサイドバーが上下方向に所定の間隔で複数設けられており、
前記収納移動機構は、上から2番目以下の前記サイドバーに設けられており、前記収納移動機構が設けられた前記サイドバーの上方を前記カメラが収納位置から撮影位置に移動する。
【0018】
かかる構成によれば、サイドバンパーは、車両前後方向に延びる棒状のサイドバーが上下方向に所定の間隔で複数設けられている。収納移動機構は、上から2番目以下のサイドバーに設けられており、収納移動機構が設けられたサイドバーの上方をカメラが収納位置から撮影位置に移動するので、カメラの上方及び下方を上下のサイドバンパーで保護し、カメラを障害物との衝突から保護することができる。
【0019】
好ましくは、前記トラクターの運転席の車内には、前記トラクターの停止時又は後進時に前記カメラを収納位置から撮影位置に移動させるとともに、前記モニターの画像を前記右のカメラ機構が撮影する画像と前記左のカメラ機構が撮影する画像のいずれか一方又は両方に切り換え可能な切り替えスイッチが設けられている。
【0020】
かかる構成によれば、切り替えスイッチによりトラクターの停止時又は後進時にカメラを収納位置から撮影位置に移動させるので、従来技術のような交差点のおける左折の通常走行時にカメラがトレーラーの車幅よりも側方に飛び出すことを防止することができる。さらに、切り替えスイッチにより、モニターの画像を右のカメラ機構が撮影する画像と左のカメラ機構が撮影する画像のいずれか一方又は両方に切り換え可能であるので、状況に合わせて運転手が望む画像を見て作業性を向上させることができる。
【0021】
好ましくは、前記収納移動機構は、前記トラクターの後進時に自動的に前記右のカメラ及び前記左のカメラを収納位置から撮影位置に移動させ、前記モニターに前記右のカメラ機構が撮影する画像と前記左のカメラ機構が撮影する画像を表示する。
【0022】
かかる構成によれば、収納移動機構は、トラクターの後進時に自動的に右のカメラ及び左のカメラを収納位置から撮影位置に移動させ、モニターに右のカメラ機構が撮影する画像と左のカメラ機構が撮影する画像を表示するので、運転手の操作の手間を簡略にしてトラクターの後進の操作性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
トラクターに揺動可能に牽引されるトレーラーの左右両方の後方を確認できるとともに、通常走行時にはトレーラーの車幅方向端部より内側に収納させ、突出量を抑えて小型化できるトレーラー用左右側面後方カメラ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1(A)は実施例に係るトレーラー用左右側面後方カメラ装置が取り付けられるセミトレーラーのトラクターとトレーラーの分離状態を説明する図である。
図1(B)は(A)のセミトレーラーのトラクターとトレーラーの接続状態を説明する図である。
図1(C)はカメラ機構が取り付けられたセミトレーラーの要部拡大図である。
【
図2】
図2(A)は実施例に係るトレーラー用左右側面後方カメラ装置が取り付けられるフルトレーラーのトラクターとトレーラーの接続状態を説明する図である。
図1(B)はカメラ機構が取り付けられたフルトレーラーの要部拡大図である。
【
図3】
図3(A)は実施例に係るトレーラー用左右側面後方カメラ装置が使用位置にある状態の車両要部の斜視図である。
図3(B)は実施例に係るトレーラー用左右側面後方カメラ装置が収納位置にある状態の車両要部の斜視図である。
【
図4】実施例に係るカメラ機構の収納位置から撮影位置に移動する作用図である。
【
図5】
図5(A)実施例に係るモニター及び切り替えスイッチが取り付けられた車内を説明する図である。
図5(B)は(A)の切り替えスイッチの正面図である。
【
図6】実施例に係るトレーラー用左右側面後方カメラ装置の作用図である。
【
図7】
図7(A)は比較例に係るトレーラー用左右側面後方カメラ装置の確認可能範囲を説明する図である。
図7(B)は実施例に係るトレーラーの左後進時のトレーラー用左右側面後方カメラ装置の確認可能範囲を説明する図である。
図7(C)は実施例に係るトレーラーの右後進時のトレーラー用左右側面後方カメラ装置の確認可能範囲を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施の形態を添付図に基づいて以下に説明する。なお、図面は、トレーラー用左右側面後方カメラ装置を概念的(模式的)に示すものとする。
【実施例0026】
図1(A)は、トラクター10と、トレーラー30とが分離した状態のいわゆるセミトレーラーである。
図1(B)は、トラクター10にトレーラー30が接続された状態のセミトレーラーである。
【0027】
図1(A)~
図1(C)に示されるように、牽引車両であるトラクター10は、車体フレーム11と、車体フレーム11の前側がに回転可能に設けられた前輪12と、車体フレーム11の後側に回転可能に設けられた後輪13と、車体フレーム11の前上側に設けられた運転席14と、車体フレーム11の後上側に設けられたカプラ15と、運転席14の後部に配置された給電及び制御用のケーブル16とを備えている。
【0028】
被牽引車両であるトレーラー30は、車体フレーム31と、車体フレーム31の後側に回転可能に設けられた車輪32と、車輪32の上方で車体フレーム11に設けられた荷台33と、車体フレーム11又は荷台33の前下側に突出して設けられカプラ15に接続可能なピン34と、荷台33に設けられケーブル16を支持するフック35と、ケーブル16が接続されるコネクタ36と、トレーラーの非接続時に自立するための補助脚37とを備えている。トラクター10にトレーラー30が接続された状態では、ピン34がカプラ15に接続され、トレーラー30はピン34を支点にしてトラクター10に対して揺動する。
【0029】
また、トレーラー30は、荷台33の車幅方向端部から下方に延びて設けられた複数のステー41と、ステー41に車両前後方向に延びて設けられトレーラー30を保護するサイドバンパー42とを備えている。サイドバンパー42は、車両前後方向に延びる棒状のサイドバー42a、42b、42cが上下方向に所定の間隔で複数設けられている。
【0030】
なお、実施例では、サイドバンパー42は、サイドバー42a、42b、42cを3本備えているが、これに限定されず、サイドバー42a、42bを2本や4本以上備えていてもよく、さらには、サイドバンパー42を1枚の板状、波板状、凹凸状等にしても差し支えない。
【0031】
トレーラー用左右側面後方カメラ装置50は、トラクター10に揺動可能に牽引されるトレーラー30の後方を撮影するものである。トレーラー用左右側面後方カメラ装置50は、トレーラー30の車幅方向左側部に設けられトレーラー30の左後方を撮影可能な左のカメラ機構50L(以降、Lは車両左側を示し、Rは車両右側を示すものとする)と、トレーラー30の車幅方向右側部に設けられトレーラー30の右後方を撮影可能な右のカメラ機構50R(不図示)と、荷台33の屋根後端部に設けられ車両後方を撮影可能なバックカメラ52と、を備えている。
【0032】
さらに、トレーラー用左右側面後方カメラ装置50は、運転席14の車内に設けられ右のカメラ機構50Rが撮影する画像と左のカメラ機構50Lが撮影する画像とバックカメラ52が撮影する画像の少なくとも一方を表示可能なモニター20(
図5(A)参照)と、左のカメラ機構50L、右のカメラ機構50R及びバックカメラ52に、給電、制御及び画像上方を送信するためのケーブル16とを備えている。
【0033】
なお、左のカメラ機構50Lと、右のカメラ機構50Rとは構造が同様であるため、以降は左のカメラ機構50Lを代表して説明する。また、実施例ではケーブル16を用いた有線送信としたが、画像情報等を無線送信としてもよい。
【0034】
トレーラー用左右側面後方カメラ装置50のカメラ機構50Lは、撮影用のカメラ51Lと、トレーラー50の後方確認時にカメラ51Lをトレーラー30の車幅方向端部より内側の収納位置からトレーラー30の車幅方向端部より外側の撮影位置に移動させる収納移動機構60Lとを備えている。
【0035】
次にフルトレーラーについて説明する。
図2(A)は、トラクター10にトレーラー30が接続された状態のいわゆるフルトレーラーである。セミトレーラーと同様の部材は、構造が同様であるため、符号を振って説明を省略する。フルトレーラーでは、トラクター10に荷台10aが設けられており、トレーラー30の前部にトラクター10の後端部に接続されるジョイント部材40が設けられている。ジョイント部材40の先端部がトラクター10の接続部分を支点に揺動する。
【0036】
図2(b)は、
図1(C)と同様の構成であり、トレーラー用左右側面後方カメラ装置50は、トレーラー30の車幅方向左側部に設けられトレーラー30の左後方を撮影可能な左のカメラ機構50Lと、トレーラー30の車幅方向右側部に設けられトレーラー30の右後方を撮影可能な右のカメラ機構50R(不図示)と、荷台33の屋根後端部に設けられ車両後方を撮影可能なバックカメラ52と、を備えている。
【0037】
次にトレーラー用左右側面後方カメラ装置50について説明する。
図3(A)、
図3(B)に示されるように、トレーラー用左右側面後方カメラ装置50の左のカメラ機構50Lは、撮影用のカメラ51Lと、トレーラー30の後方確認時にカメラ51Lをトレーラー30の車幅方向端部より内側の収納位置からトレーラー30の車幅方向端部より外側の撮影位置に移動させる収納移動機構60Lとを備えている。
【0038】
収納移動機構60Lは、トレーラー30に設けられたブラケット61と、ブラケット61に設けられ所定の角度に回転可能なモータ部62と、モータ部62の軸63に締結部材により回転可能に設けられカメラ51Lを保持する板状の回転バー64とを備えている。なお、モータ部62は軸63の回転角度を調整可能なステッピングモータを使用してもよい。
【0039】
収納移動機構60Lは、サイドバンパー42の前部に設けられている。詳細には、サイドバンパー42は車両前後方向に延びる棒状のサイドバー42a、42b、42cが上下方向に所定の間隔で複数設けられており、収納移動機構60Lは上から2番目のサイドバー42bに設けられている。収納移動機構60Lが設けられた上から2番目のサイドバー42bの上方を、カメラ51L及び回転バー64が収納位置から撮影位置に移動する。
図3(A)はカメラ51Lが撮影位置にある状態であり、
図3(B)はカメラ51Lが収納位置にある状態である。
【0040】
次に、カメラ機構50Lの収納位置から撮影位置に移動する作用について説明する。
図4(A)に示されるように、カメラ51Lは収納位置にある。カメラ51Lが収納位置にある状態では、収納移動機構60Lは、トレーラー30の荷台33(
図3(A)参照)に設けられたサイドバンパー42に取り付けられているので、カメラ51Lが荷台33よりも下方に位置して荷物の積み下ろし等の邪魔にならない。さらに、収納移動機構60Lはサイドバンパー42を利用して取り付けるので、ブラケット61をサイドバンパー42のサイドバー42aに沿わせる程度の大きさに抑えてカメラ機構50L全体をより小型化することができる。
【0041】
サイドバンパー42は、車両前後方向に延びる棒状のサイドバー42a、42b、42cが上下方向に所定の間隔で複数設けられている。収納移動機構60Lは、上から2番目以下のサイドバー42bに設けられており、収納移動機構60Lが設けられたサイドバー42bの上方をカメラ51L及び回転バー64が収納位置から撮影位置に移動するので、カメラ51Lの上方をサイドバー42a及び荷台33の下面で保護し、カメラ51Lの下方をサイドバンパー42bで保護し、カメラ51Lを障害物との衝突から保護することができる。
【0042】
収納移動機構60Lを稼働させ、カメラ51L及び回転バー64を矢印(1)のように移動させると、
図4(B)に示すカメラ51Lの撮影位置まで移動して停止する。カメラ51Lを撮影位置に移動させることができる条件は、トラクター10及びトレーラー30が停止しているとき又は後進しているときである。トラクター10及びトレーラー30が前進(通常走行)しているときは、カメラ51Lを撮影位置に移動させることができない。また、トラクター10及びトレーラー30が停止又は後進のときにカメラ51Lを撮影位置に移動させていた場合は、トラクター10及びトレーラー30が前進(通常走行)するとカメラ51Lが収納位置に自動的に移動される。
【0043】
次にモニター20及び切り替えスイッチ21について説明する。
図5(A)、
図5(B)に示されるように、トラクター10の運転席14の車内14aには、トラクター10の停止時又は後進時にカメラ51L、51R(
図6参照)を収納位置から撮影位置に移動させるとともに、モニター20の画像を右のカメラ機構50Rが撮影する画像、左のカメラ機構50L又はバックカメラ52が撮影する画像のいずれか一方、2つまたは3つに切り換え可能な切り替えスイッチ21が設けられている。
【0044】
モニター20は、車内14aの上部にアーム20aを介して設けられている。トラクター10の車幅方向左側にはサイドミラー18Lが設けられ、トラクター10の車幅方向右側にはサイドミラー18R(不図示)が設けられている。切り替えスイッチ21は、インストルメントパネル17に設けられており、左のカメラ51Lを収納位置から撮影位置に移動させてトレーラー30の左側方から左後方の撮影した画像をモニター20に映す左ボタン22と、バックカメラ52のトレーラー30の後方を撮影した画像をモニター20に映す後ボタン23と、右のカメラ51Rを収納位置から撮影位置に移動させてトレーラー30の右側方から右後方の撮影した画像をモニター20映す右ボタン24とを備えている。左のカメラ51Lが撮影位置で撮影状態にあること、バックカメラ52が撮影状態にあること、右のカメラ51Rが撮影位置で撮影状態にあることを示すランプ25が、左ボタン22、後ボタン23及び右ボタン24の上方に設けられている。
【0045】
次に以上に述べた実施例のトレーラー用左右側面後方カメラ装置50の作用を説明する。
図6(A)、
図6(B)に示されるように、トラクター10及びトレーラー30の通常走行時(前進時)には、左のカメラ51L及び右のカメラ51Rが収納位置にある。
【0046】
図6(C)に示されるように、トラクター10及びトレーラー30の後進開始時には収納移動機構60L、60Rを稼働させ、右のカメラ51Rを矢印(2)のように撮影位置へ移動させ、左のカメラ51Lを矢印(3)のように撮影位置へ移動させる。
【0047】
図6(D)に示されるように、トラクター10及びトレーラー30の後進時には右のカメラ51R及び左のカメラ51Lが撮影位置にある状態で、トレーラー30の左右の側方及び左右の後方を撮影する。
【0048】
また、収納移動機構60L、60Rは、トラクター30の後進時に自動的に右のカメラ51R及び左のカメラ51Lを収納位置から撮影位置に移動させ、モニター20(
図5参照)に右のカメラ機構50Rが撮影する画像と左のカメラ機構50Lが撮影する画像を表示するものとしてもよい。
【0049】
次に比較例に示すトレーラー用後方カメラ装置と、実施例に示すトレーラー用左右側面後方カメラ装置50の視野の確認可能範囲について説明する。
図7(A)は比較例に示すトレーラー用後方カメラ装置であり、フルトレーラーのトラクター10の荷台の後端部に第1のバックカメラ52aが設けられ、トレーラー30の荷台の後端部に第2のバックカメラ52bが設けられている。比較例のトレーラー用後方カメラ装置において、ハンドルを左に切った状態で後進する際の視野の確認可能範囲は、右のサイドミラー18Rから領域S1が確認でき、左のサイドミラー18Lから領域S2が確認でき、第1のバックカメラ52aから領域S3が確認でき、第2のバックカメラ52bからトレーラー30の後方が確認できる。比較例のトレーラー用後方カメラ装置ではトレーラー30の右側方及び右後方の領域Dが死角となる。
【0050】
図7(B)は実施例に示すトレーラー用左右側面後方カメラ装置50であり、フルトレーラーがハンドルを左に切った状態で後進する際の視野の確認可能範囲は、右のサイドミラー18Rから領域S1が確認でき、左のサイドミラー18Lから領域S2が確認でき、右のカメラ51Rから領域S3が確認でき、左のカメラ51Lから領域S4が確認でき、バックカメラ52からトレーラー30の後方が確認できる。実施例に示すトレーラー用左右側面後方カメラ装置50では、トレーラー30の左右側方、左右後方及び後方に死角がなく、全ての領域を画像で確認することができる。
【0051】
図7(C)は実施例に示すトレーラー用左右側面後方カメラ装置50であり、フルトレーラーがハンドルを右に切った状態で後進する際の視野の確認可能範囲は、右のサイドミラー18Rから領域S1が確認でき、左のサイドミラー18Lから領域S2が確認でき、右のカメラ51Rから領域S3が確認でき、左のカメラ51Lから領域S4が確認でき、バックカメラ52からトレーラー30の後方が確認できる。実施例に示すトレーラー用左右側面後方カメラ装置50では、トレーラー30の左右側方、左右後方及び後方に死角がなく、全ての領域を画像で確認することができる。このように、実施例に示すトレーラー用左右側面後方カメラ装置50では、ハンドルを左右いずれに大きく切っても、トレーラー30の左右側方、左右後方及び後方の全ての領域を画像で確認することができる。
【0052】
以上に述べたトレーラー用左右側面後方カメラ装置50の効果を説明する。
本発明の実施例は、トレーラー30の車幅方向左側部に設けられトレーラー30の左後方を撮影可能な左のカメラ機構50Lと、トレーラー30の車幅方向右側部に設けられトレーラー30の右後方を撮影可能な右のカメラ機構50Rとを備えているので、トラクター10に揺動可能に牽引されるトレーラー30の左右両方の側面(側方)及び後方を確認できる。さらに、カメラ機構50L、50Rは、撮影用のカメラ51L、51Rと、トレーラー30の後方確認時にカメラ51L、51Rをトレーラー30の車幅方向端部より内側の収納位置からトレーラー30の車幅方向端部より外側の撮影位置に移動させる収納移動機構60L、60Rとを備えているので、通常走行時にはトレーラー30の車幅方向端部より内側にカメラ51L、51Rを収納させ、カメラ機構50L、50Rの突出量を抑えて小型化することできる。
【0053】
さらに、収納移動機構60L、60Rは、トレーラー30に取り付けたブラケット61に設けられ所定の角度に回転可能なモータ部62と、モータ部62に回転可能に設けられカメラ51L、51Rを保持する回転バー64とからなるので、簡単な構成で部品それぞれを小型化し、カメラ機構50L、50R全体の突出量を抑えて小型化することできる。
【0054】
さらに、切り替えスイッチ21によりトラクター30の停止時又は後進時にカメラ51L、51Rを収納位置から撮影位置に移動させるので、従来技術のような交差点のおける左折の通常走行時にカメラがトレーラーの車幅よりも側方に飛び出すことを防止することができる。さらに、実施例では切り替えスイッチ21により、モニター20の画像を右のカメラ機構50Rが撮影する画像と左のカメラ機構50Lが撮影する画像のいずれか一方又は両方に切り換え可能であるので、状況に合わせて運転手が望む画像を見て作業性を向上させることができる。
【0055】
さらに、収納移動機構60L、60Rは、トラクター30の後進時に自動的に右のカメラ51R及び左のカメラ51Lを収納位置から撮影位置に移動させ、モニター20に右のカメラ機構50Rが撮影する画像と左のカメラ機構50Lが撮影する画像を表示するので、運転手の操作の手間を簡略にしてトラクター30の後進の操作性を向上させることができる。
【0056】
尚、実施例では、カメラ機構50Lをサイドバー42bに設けたが、これに限定されず、カメラ機構50Lをサイドバー42c、ステー41、車体フレーム11、荷台33等に設けてもよい。また、実施例では、左のカメラ51L及び右のカメラ51Rを回転バー64に設けモータ部62で所定の角度に回転させることで収納位置から撮影位置に移動させたが、これに限定されず、モータ部62の回転角度を任意の角度に調整する角度調整部を運転席14内の切り替えスイッチ21に設け、左のカメラ51L及び右のカメラ51Rの角度を調整可能としてもよい。また、実施例では、収納移動機構60L、60Rは、左のカメラ51L及び右のカメラ51Rを回転バー64に設けモータ部62で所定の角度に回転させることで収納位置から撮影位置に移動させたが、これに限定されず、左のカメラ51L及び右のカメラ51Rを車両側方に進退可能な進退部材に設けて、モータ部62で身体部材を進退させるスライド構造としてもよい。
【0057】
また、実施例では、収納移動機構60L、60Rは、トラクター30の後進時に自動的に右のカメラ51R及び左のカメラ51Lを収納位置から撮影位置に移動させ、モニター20に右のカメラ機構50Rが撮影する画像と左のカメラ機構50Lが撮影する画像を自動的に表示するものとしたが、これに限定されず、後進時にハンドルを左に切った場合に左のカメラ機構50Lが撮影する画像を自動的に表示し、後進時にハンドルを右に切った場合に右のカメラ機構50Rが撮影する画像を自動的に表示するように、ハンドルを切った方向に自動的に連動して画像を表示してもよい。また、前進時であっても切り返して直ぐに後進する場合もあるので、後進から前進に切り替えた場合であっても、数秒間の所定の時間や、時速10km以下等の所定の低速時、カメラ51L、51Rを撮影位置に保持するように自動制御してもよい。また、緊急時(あおり運転等、後ろから危険を感じた時)等には手動(切り替えスイッチ21の操作)で撮影位置にカメラ51L、51Rを移動して撮影できるようにしてもよい。なお、法規を遵守する範囲で使用するものとする。
【0058】
即ち、本発明の作用及び効果を奏する限りにおいて、本発明は、実施例に限定されるものではない。