(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098424
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】食用油脂及び油性食品用の乳化剤製剤
(51)【国際特許分類】
A23D 9/013 20060101AFI20240716BHJP
A23L 29/10 20160101ALI20240716BHJP
A23G 1/32 20060101ALN20240716BHJP
【FI】
A23D9/013
A23L29/10
A23G1/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001945
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】390010674
【氏名又は名称】理研ビタミン株式会社
(72)【発明者】
【氏名】泉 雄斗
(72)【発明者】
【氏名】星野 菜摘
【テーマコード(参考)】
4B014
4B026
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GB02
4B014GG14
4B014GK07
4B014GL06
4B014GP02
4B026DC06
4B026DG04
4B026DK01
4B026DK10
4B026DX01
4B035LC04
4B035LG08
4B035LG09
4B035LG12
4B035LK13
(57)【要約】
【課題】ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルを含有していながら、食用油脂及び油性食品への分散性が高い乳化剤製剤を提供する。
【解決手段】(A)ポリグリセリン飽和脂肪酸エステル、(B)ジグリセリンモノ不飽和脂肪酸エステル及び(C)モノエステル体含有量が30~60質量%のグリセリン不飽和脂肪酸エステルを含有する、食用油脂及び油性食品用の乳化剤製剤。該乳化剤製剤は、例えば、食用油脂や油性食品を製造する際に、その原材料に対して直接添加して用いることができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記成分(A)~(C)を含有する、食用油脂及び油性食品用の乳化剤製剤。
(A)ポリグリセリン飽和脂肪酸エステル
(B)ジグリセリンモノ不飽和脂肪酸エステル
(C)モノエステル体含有量が30~60質量%のグリセリン不飽和脂肪酸エステル
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食用油脂及び油性食品用の乳化剤製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルは、乳化剤として食用油脂や油性食品へ添加して用いられている。しかし、ポリグリセリン飽和脂肪酸エステル単独では食用油脂や油性食品への分散性が低いため、添加の際に高温での処理や長時間の撹拌工程が必要になるだけでなく、乳化剤としての効果が十分に発揮されない問題がある。
【0003】
乳化剤の分散性を高めることに関する方法としては、(A)食用油脂40~90質量%、(B)リン脂質7~40質量%、(C)ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル、グリセリン有機酸不飽和脂肪酸エステル及びソルビタン不飽和脂肪酸エステルの群から選ばれる1種又は2種以上3~40質量%を含有する流動状のリン脂質組成物(特許文献1)、(A)グリセリン飽和脂肪酸エステルを7~12質量%、(B)ショ糖飽和脂肪酸エステルを3~13質量%、(C)グリセリン不飽和脂肪酸エステル、ポリグリセリン不飽和脂肪酸エステル、グリセリン有機酸不飽和脂肪酸エステル、ショ糖不飽和脂肪酸エステル及びソルビタン不飽和脂肪酸エステルからなる群から選択される1種又は2種以上を0.1~3.0質量%、並びに(D)ソルビタン飽和脂肪酸エステルを1~6質量%並びに水及び/又は多価アルコールを含有し、且つ油脂を実質的に含有しないペースト状又はゲル状の乳化組成物であることを特徴とするケーキ用乳化起泡剤(特許文献2)等が知られている。
【0004】
しかし、特許文献1の方法は、リン脂質を含有する組成物について水に対する分散性を高めるためのものである。また、特許文献2の方法は、ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルとは異なる複数種類の乳化剤を含むケーキ用乳化起泡剤についてケーキ生地に対する分散性を高めるためのものである。そして、ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルの食用油脂及び油性食品への分散性を高めるための実用上満足し得る方法は未だ知られていないのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-000007号公報
【特許文献2】特許第6727882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルを含有していながら、食用油脂及び油性食品への分散性が高い乳化剤製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を行った結果、ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルとともに特定の乳化剤を組み合わせた乳化剤製剤を調製することにより、上記課題が解決されることを見出し、この知見に基づいて本発明を成すに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記成分(A)~(C)を含有する、食用油脂及び油性食品用の乳化剤製剤、からなっている。
(A)ポリグリセリン飽和脂肪酸エステル
(B)ジグリセリンモノ不飽和脂肪酸エステル
(C)モノエステル体含有量が30~60質量%のグリセリン不飽和脂肪酸エステル
【発明の効果】
【0009】
本発明の食用油脂及び油性食品用の乳化剤製剤(以下、単に「本発明の乳化剤製剤」ともいう)は、ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルを含有していながら、食用油脂及び油性食品に対する分散性が良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明で成分(A)として用いられるポリグリセリン飽和脂肪酸エステルは、ポリグリセリンと飽和脂肪酸とのエステル化生成物であり、エステル化反応等自体公知の方法で製造できる。
【0011】
ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルのHLBに特に制限はないが、例えば、8~16であることが好ましい。該HLBは、グリフィン法やデイビス法等により計算されたものであることが好ましい。
【0012】
ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルを構成するポリグリセリンは、通常グリセリン又はグリシドールあるいはエピクロルヒドリン等を加熱し、重縮合反応させて得られる重合度の異なるポリグリセリンの混合物である。該ポリグリセリンとしては平均重合度が2~10程度のもの、例えば、ジグリセリン(平均重合度2)、トリグリセリン(平均重合度3)、テトラグリセリン(平均重合度4)、ヘキサグリセリン(平均重合度6)、オクタグリセリン(平均重合度8)又はデカグリセリン(平均重合度10)等が挙げられ、中でも、ジグリセリン、トリグリセリン、ヘキサグリセリン、デカグリセリンが好ましく、ジグリセリン、デカグリセリンがより好ましい。
【0013】
ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルを構成する飽和脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする脂肪酸であれば特に制限はなく、例えば炭素数6~24の直鎖状の飽和脂肪酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸等)が挙げられ、好ましくは炭素数8~18の直鎖状の飽和脂肪酸(例えば、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等)であり、より好ましくはミリスチン酸及びパルミチン酸である。これら飽和脂肪酸は、一種類のみを単独で用いてもよく、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0014】
ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルとしては、ジグリセリン飽和脂肪酸エステル、トリグリセリン飽和脂肪酸エステル、ペンタグリセリン飽和脂肪酸エステル、デカグリセリン飽和脂肪酸エステル等が挙げられ、中でも、ジグリセリン飽和脂肪酸エステル、デカグリセリン飽和脂肪酸エステルが好ましく用いられる。
【0015】
ポリグリセリン飽和脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムDM-100(商品名;ジグリセリンミリスチン酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムDP-95RF(商品名;ジグリセリンパルミチン酸エステル;理研ビタミン社製)、ポエムTRP-97RF(商品名;トリグリセリンパルミチン酸エステル;理研ビタミン社製)、SYグリスターMS-5S(商品名;ヘキサグリセリンステアリン酸エステル;阪本薬品工業社製)、SYグリスターMM-750(商品名;デカグリセリンミリスチン酸エステル;阪本薬品工業社製)、サンソフトQ-182S(商品名;デカグリセリンステアリン酸エステル;太陽化学社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0016】
本発明で成分(B)として用いられるジグリセリンモノ不飽和脂肪酸エステルは、平均重合度2のポリグリセリンであるジグリセリンと不飽和脂肪酸とのエステルであって、モノエステル体の含有量が50質量%以上、好ましくは60質量%以上のものをいう。該ジグリセリンモノ不飽和脂肪酸エステルは、例えば、エステル化反応等、自体公知の方法で製造されたジグリセリン不飽和脂肪酸エステルを、更に流下薄膜式分子蒸留装置又は遠心式分子蒸留装置等を用いて分子蒸留するか、又はカラムクロマトグラフィーもしくは液液抽出等自体公知の方法を用いて精製し、モノエステル体の含有量を高めることにより製造することができる。
【0017】
ジグリセリンモノ不飽和脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする不飽和脂肪酸であれば特に制限はないが、例えば、炭素数16~22の直鎖の不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リシノール酸、エルカ酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸等)が挙げられ、中でもオレイン酸が好ましい。これら脂肪酸は、一種類のみを単独で用いてもよく、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0018】
ジグリセリンモノ不飽和脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムDO-100V(商品名;ジグリセリンモノオレイン酸エステル;モノエステル体含有量約80%;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれを用いることができる。
【0019】
本発明で成分(C)として用いられるモノエステル体含有量が30~60質量%のグリセリン不飽和脂肪酸エステルは、グリセリンと不飽和脂肪酸とのエステルであって、エステル化反応、エステル交換反応等自体公知の方法で製造できる。該エステルは、モノエステル体(モノグリセリド)以外に、ジエステル体(ジグリセリド)及び/又はトリエステル体(トリグリセリド)を含む混合物である。
【0020】
グリセリン不飽和脂肪酸エステルを構成する脂肪酸としては、食用可能な動植物油脂を起源とする不飽和脂肪酸であれば特に制限はないが、例えば、炭素数16~22の直鎖の不飽和脂肪酸(例えば、パルミトオレイン酸、オレイン酸、エライジン酸、リシノール酸、エルカ酸、リノール酸、γ-リノレン酸、α-リノレン酸、アラキドン酸等)が挙げられ、中でもオレイン酸、リノール酸が好ましい。これら脂肪酸は、一種類のみを単独で用いてもよく、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0021】
グリセリン不飽和脂肪酸エステルとしては、例えば、ポエムOL-200VM(商品名;モノエステル体含有量約50%;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)、ポエムCS-200(商品名;モノエステル体含有量約39%;構成脂肪酸:リノール酸及びオレイン酸;理研ビタミン社製)等が商業的に製造及び販売されており、本発明ではこれらを用いることができる。
【0022】
ここで、本発明で用いられるジグリセリンモノ不飽和脂肪酸エステル及びグリセリン不飽和脂肪酸エステルについてのモノエステル体の含有量は、下記分析条件にてHPLCを用いて分析することにより求められる。具体的には、被検試料を下記HPLC分析条件で分析後、データ処理装置によりクロマトグラム上に記録された被検試料の各成分に対応するピークについて、積分計を用いてピーク面積を測定し、測定されたピーク面積に基づいて、面積百分率としてモノエステル体の含有量を求めることができる。
【0023】
[HPLC分析条件]
装置 高速液体クロマトグラフ(型式:LC-40D;島津製作所社製)
検出器 RI検出器(型式:RID-20A;島津製作所社製)
カラム GPCカラム(型式:SHODEX KF-802;昭和電工社製)2本連結
温度 40℃
移動相 テトラヒドロフラン
流量 1.0mL/min
検液注入量 10μL
【0024】
本発明の乳化剤製剤100質量%中の成分(A)~(C)の含有量に特に制限はないが、例えば、成分(A)の含有量が5~80質量%、好ましくは10~60質量%、成分(B)の含有量が10~85質量%、好ましくは20~70質量%、成分(C)の含有量が10~85質量%、好ましくは20~70質量%となるように調整することができる。
【0025】
本発明の乳化剤製剤の製造方法に特に制限はないが、例えば、成分(A)~(C)を成分(A)の融点以上(例えば、50~90℃)に加熱して均一に混合し、得られた混合物を冷却することにより、ペースト状又は液状の乳化剤製剤を得る方法等を実施することができる。
【0026】
本発明の乳化剤製剤の使用方法は特に限定されないが、例えば、食用油脂や油性食品を製造する際に、その原材料に対して直接添加して用いることができる。
【0027】
本発明の乳化剤製剤の添加対象である食用油脂とは、例えば大豆油、菜種油、コーン油、ゴマ油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、高オレイン酸紅花油、綿実油、ぶどう種子油、マカデミアナッツ油、ヘーゼルナッツ油、かぼちゃ種子油、クルミ油、椿油、茶実油、エゴマ油、オリーブ油、カラシ油、米油、米糠油、小麦麦芽油、サフラワー油、ひまわり油、パーム油、パーム核油、カカオ脂、ヤシ油、ラード、乳脂、鶏脂、牛脂及びこれらの油脂を分別処理したもの又はエステル交換処理したもの等が挙げられる。これらの油脂は、一種類で用いても良いし、二種類以上を任意に組み合わせて用いても良い。
【0028】
本発明の乳化剤製剤の添加対象である油性食品とは、脂質が連続相をなす食品であれば特に限定はされないが、一例を挙げると、チョコレート類が該当する。ここで言うチョコレート類とは、全国チョコレート業公正取引協議会、チョコレート利用食品公正取引協議会で規定されるチョコレート、準チョコレート、チョコレート利用食品(チョコレートコーチングを含む)の総称である。尚、チョコレート類を風味の面から分類すると、カカオ原料(カカオマス、ココア、ココアバター)、粉乳類及び糖類を主成分とし、カカオ原料の風味が主体のスィートチョコレート類、ミルクチョコレート類、ホワイトチョコレート類の他、種々の粉末類を使用した、コーヒー風味、抹茶風味、果実風味、塩味系風味等の風味バラエティー品等が挙げられ、これらは当然チョコレート類に含まれる。
【0029】
上記油性食品の脂質の含有量は特に限定されないが、好ましくは20~65質量%であり、より好ましくは20~60質量%であり、最も好ましくは30~45質量%である。
【0030】
本発明の乳化剤製剤の食用油脂又は油性食品への添加のタイミングに特に制限はないが、食用油脂又は油性食品を加熱及び混合し、撹拌しながら均質化する工程において添加することができる。より具体的には、食用油脂又は油性食品へ本発明の乳化剤製剤を加えて混合し、例えば40~60℃に加熱及び混合し、撹拌しながら均質化した後、室温まで冷却することにより添加することができる。
【0031】
本発明の乳化剤製剤の食用油脂又は油性食品への添加量は、添加目的や添加対象の食用油脂や油性食品の種類等により異なり一様ではなく、特に制限はないが、食用油脂又は油性食品100質量%中、成分(A)~(C)の含有量の合計量が0.01~5質量%、好ましくは0.1~2質量%となるように調整することができる。
【0032】
上記食用油脂又は油性食品は、本発明の乳化剤製剤以外に、本発明の目的・効果を阻害しない範囲で他の任意の成分〔例えば、成分(A)、成分(B)及び成分(C)以外の乳化剤、酸化防止剤等〕を添加したものであっても良い。
【0033】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例0034】
[乳化剤製剤の調製]
(1)原材料
1)成分(A):ポリグリセリン飽和脂肪酸エステル
1-1)ジグリセリンミリスチン酸エステル(商品名:ポエムDM-100;理研ビタミン社製)
1-2)ジグリセリンパルミチン酸エステル(商品名:ポエムDP-95RF;理研ビタミン社製)
1-3)トリグリセリンパルミチン酸エステル(商品名:ポエムTRP-97RF;理研ビタミン社製)
1-4)ヘキサグリセリンステアリン酸エステル(商品名:SYグリスターMS-5S;阪本薬品工業社製)
1-5)デカグリセリンミリスチン酸エステル(商品名:SYグリスターMM-750;阪本薬品工業社製)
1-6)デカグリセリンステアリン酸エステル(商品名:サンソフトQ-182S;太陽化学社製)
2)成分(B):ジグリセリンモノオレイン酸エステル(商品名:ポエムDO-100V;モノエステル体含量80重量%以上;理研ビタミン社製)
3)成分(C):モノエステル体含有量が30~60質量%のグリセリン不飽和脂肪酸エステル
3-1)グリセリン不飽和脂肪酸エステル1(商品名:ポエムCS-200;モノエステル体含有量約39質量%;構成脂肪酸:リノール酸及びオレイン酸;理研ビタミン社製)
3-2)グリセリン不飽和脂肪酸エステル2(商品名:ポエムOL-200VM;モノエステル体含有量約50質量%;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
4)成分(C)’:成分(C)以外のグリセリン脂肪酸エステル
4-1)グリセリン不飽和脂肪酸エステル3(商品名:エマルジーOL-100H;モノエステル体含有量90質量%以上;構成脂肪酸:オレイン酸;理研ビタミン社製)
4-2)グリセリン飽和脂肪酸エステル(商品名:ポエムV-200;モノエステル体含有量約51質量%;構成脂肪酸:ステアリン酸及びパルミチン酸;理研ビタミン社製)
【0035】
(2)乳化剤製剤の調製方法
表1及び2に示した原材料の配合割合に従って、全量が50gとなるよう各原材料を100mL容ビーカーに入れ、80℃で加熱し、均一となるようスパーテルを用いて撹拌した。その後、室温になるまで冷却して乳化剤製剤1~14を得た。乳化剤製剤15の原材料は一種類のみであるため、上述の調製は行わず、当該原材料そのものを乳化剤製剤15とした。これら乳化剤製剤のうち、乳化剤製剤1~8は本発明に係る実施例であり、乳化剤製剤9~15はそれらに対する比較例である。尚、乳化剤製剤1及び2の性状は、液状であり、乳化剤製剤3~15の性状は、ペースト状であった。
【0036】
【0037】
【0038】
[食用油脂への分散試験]
(1)食用油脂への分散試験方法
前記乳化剤製剤1~15のいずれかを2.0g入れた200mL容ビーカーに菜種油(商品名:ナタネサラダ油;ボーソー油脂社製)を100g加え、撹拌していない状態でスパーテルと共に40℃の恒温槽にて1時間静置した。静置後、これを恒温槽から出してスパーテルを用いて60秒間撹拌し、分散状態を目視で確認した。このビーカーとスパーテルを再度40℃の恒温槽に戻し、更に1時間静置した。静置後、再度これを恒温槽から出してスパーテルを用いて60秒間撹拌し、分散状態を目視で確認した。
【0039】
(2)食用油脂への分散性の評価
(1)の結果、1回目の静置(40℃で1時間静置)後の撹拌で均一に分散したものを良好「◎」、2回目の静置(40℃で合計2時間静置)後の撹拌で均一に分散したものを可「○」とし、2回目の静置後の撹拌で乳化剤製剤がほぼ分散しないものや部分的に分散するが不完全な分散のものを不可「×」とした。
【0040】
【0041】
表3の結果から明らかなように、実施例の乳化剤製剤1~8は、40℃の菜種油に対してスパーテルの撹拌によって均一に分散し、「◎」又は「○」の結果であった。これに対し、比較例の乳化剤製剤9~15はスパーテルの攪拌だけでは均一に分散せず、「×」の結果であった。
【0042】
[油性食品への分散試験]
(1)着色した乳化剤製剤の調製
後述の分散試験において分散状態を目視できるよう、乳化剤製剤を着色した。具体的には、前記乳化剤製剤4、6、9、10、12、14及び15のうちいずれかを10.0g取って50mL容ビーカーに入れ、80℃で加熱した。その後、赤色色素(試薬名:ズダンIII;和光一級;富士フイルム和光純薬社製)を5.0mg加えて乳化剤製剤全体が均一に着色されるまでスパーテルを用いて撹拌した。その後、室温になるまで冷却して着色した乳化剤製剤4、6、9、10、12、14及び15を得た。
【0043】
(2)油性食品への分散試験方法
前記にて着色した乳化剤製剤4、6、9、10、12、14及び15のうちいずれかを2.0g入れた100mL容ビーカーに40℃に調温したチョコレートコーチング(商品名:パータグラッセリュクブラン;脂質含有量約43.2質量%;大東カカオ社製)を100g加え、スパーテルを用いて60秒間撹拌した。その後、ビーカーの内容物を全てステンレスバット上に広げて薄く延ばし、分散状態を目視で確認した。
【0044】
(3)油性食品への分散性の評価
(2)の結果、均一に分散しチョコレートコーチング全体が均一な薄い赤色を呈したものを可「○」とし、ほぼ分散しないものや部分的に分散するが不完全な分散のものを不可「×」とした。
【0045】
【0046】
表4の結果から明らかなように、実施例の乳化剤製剤4及び6は、40℃のチョコレートコーチングに対してスパーテルの撹拌によって均一に分散し、「○」の結果であった。これに対し、比較例の乳化剤製剤9、10、12、14及び15はスパーテルの撹拌だけでは均一に分散せず、「×」の結果であった。