(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098426
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】鋼種判別装置
(51)【国際特許分類】
B21C 51/00 20060101AFI20240716BHJP
B21B 38/04 20060101ALI20240716BHJP
G01N 23/223 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B21C51/00 R
B21C51/00 Z
B21B38/04 Z
G01N23/223
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001947
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003713
【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100198247
【弁理士】
【氏名又は名称】並河 伊佐夫
(72)【発明者】
【氏名】橘 祥一
(72)【発明者】
【氏名】長縄 光博
(72)【発明者】
【氏名】井上 伸悟
(72)【発明者】
【氏名】宇野 聡
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA04
2G001CA01
2G001JA09
2G001KA01
2G001LA02
2G001MA06
2G001PA11
(57)【要約】
【課題】搬送コンベア上の鋼材に対し効率良く蛍光X線分析による鋼種判別を行なうことが可能な鋼種判別装置を提供する。
【解決手段】鋼種判別装置1は、鋼材Wを所定のピッチで保持し間欠駆動する搬送コンベア2と、搬送コンベア2の上方に設けられ、測定対象の鋼材Wに対するX線の照射および蛍光X線の検出を行なう測定部本体4と、を備え、蛍光X線分析により求められた各種元素の含有量に基づいて所定の鋼種であるか否かを判定する。鋼種判別装置1は、搬送コンベア2上に保持された鋼材WのピッチPに対応して複数の測定部本体4が設けられて、隣接する鋼材Wに対応する測定部本体4同士は鋼材の搬送方向に対して斜めに配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼材を所定のピッチで保持し間欠駆動する搬送コンベアと、
前記搬送コンベアの上方に設けられ、測定対象の前記鋼材に対するX線の照射および蛍光X線の検出を行なう測定部本体と、を備え、
蛍光X線分析により求められた各種元素の含有量に基づいて所定の鋼種であるか否かを判定する鋼種判別装置であって、
前記搬送コンベア上に保持された前記鋼材のピッチに対応して複数の前記測定部本体が設けられて、隣接する鋼材に対応する前記測定部本体同士は前記鋼材の搬送方向に対して斜めに配置されている、鋼種判別装置。
【請求項2】
前記搬送コンベアの上方に設けられた取付用フレーム同士が前記鋼材の搬送方向に対して斜めに配置されており、前記取付用フレームの搬送方向上流側と搬送方向下流側にそれぞれ前記測定部本体が取り付けられている、請求項1に記載の鋼種判別装置。
【請求項3】
前記測定部本体を昇降可能に保持する昇降ユニットを更に備え、
前記昇降ユニットは、前記鋼材の頂部から所定の距離に前記測定部本体の下降端の位置を規定するストッパ部を備えている、請求項1に記載の鋼種判別装置。
【請求項4】
前記ストッパ部は、
前記鋼材と対向して配置され、下降させた際に下端側の先端部を前記鋼材に当接させる当接ピンと、
前記測定部本体と一体に移動するとともに、前記当接ピンを上下方向に相対移動可能に保持する保持プレートと、
前記当接ピンの先端部と前記保持プレートとの間に介在して、前記鋼材と前記当接ピンの先端部とが当接した後、前記鋼材に下向きの付勢力を作用させ、前記保持プレートに上向きの付勢力を作用させるコイルばねと、を備えている、請求項3に記載の鋼種判別装置。
【請求項5】
前記コイルばねは縮みきった状態でメカニカルストッパとして作用して、前記測定部本体の下降端の位置を規定する、請求項4に記載の鋼種判別装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は鋼種判別装置に関し、特に鋼材から発生する蛍光X線の波長や強度に基づいて鋼種を判定する鋼種判別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
製造された鋼材が所定の合金組成のものであるか否かを確認する手段としては、火花検査、渦流探傷、発光分光分析などが用いられている。このなかで火花検査や渦流探傷は分析精度が低く、実施条件によって判定結果にバラつきが生じやすい。発光分光分析は放電させたときのスパッタ跡が製品に残存するため、磨き棒鋼用の分析法としては不向きである。
【0003】
上記以外の手段として、鋼材にX線を照射し、X線が照射された鋼材から発生する蛍光X線の波長や強度に基づいて鋼種を判定する蛍光X線分析も知られている(例えば下記特許文献1,2参照)。蛍光X線分析は非破壊で実施できる点も有用である。しかしながら蛍光X線分析は火花検査等に比べて測定に要する時間が長く、例えば製造ラインに組み込んでライン上を流れる鋼材全数について鋼種判別を行なおうとするとラインスピード(生産性)が低下してしまう問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-320746号公報
【特許文献2】特開2014-021098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は以上のような事情を背景とし、搬送コンベア上の鋼材に対し効率良く蛍光X線分析による鋼種判別を行なうことが可能な鋼種判別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
而してこの発明の第1の局面の鋼種判別装置は次のように規定される。即ち、
鋼材を所定のピッチで保持し間欠駆動する搬送コンベアと、
前記搬送コンベアの上方に設けられ、測定対象の前記鋼材に対するX線の照射および蛍光X線の検出を行なう測定部本体と、を備え、
蛍光X線分析により求められた各種元素の含有量に基づいて所定の鋼種であるか否かを判定する鋼種判別装置であって、
前記搬送コンベア上に保持された前記鋼材のピッチに対応して複数の前記測定部本体が設けられて、隣接する鋼材に対応する前記測定部本体同士は前記鋼材の搬送方向に対して斜めに配置されている。
【0007】
このように規定された第1の局面の鋼種判別装置によれば、搬送コンベアにより送られてきた複数の鋼材を同時に蛍光X線分析することで、効率良く蛍光X線分析による鋼種判別を行なうことができる。
【0008】
この場合、前記搬送コンベアの上方に設けられた取付用フレーム同士を前記鋼材の搬送方向に対して斜めに配置し、前記取付用フレームの搬送方向上流側と搬送方向下流側にそれぞれ前記測定部本体を取り付けることができる(第2の局面)。
【0009】
この発明の第3の局面は次のように規定される。即ち、
第1の局面で規定の鋼種判別装置において、前記測定部本体を昇降可能に保持する昇降ユニットを更に備え、
前記昇降ユニットは、前記鋼材の頂部から所定の距離に前記測定部本体の下降端の位置を規定するストッパ部を備えている。
【0010】
このように規定された第3の局面の鋼種判別装置によれば、測定部本体を昇降可能とした場合でも、測定時における鋼材と測定部本体との距離が略一定に保たれるため、測定値のばらつきを抑えることができる。また測定対象の鋼材のサイズが変化した場合でも、鋼材に対して所定の距離から測定部本体による測定を行なうことができる。また測定部本体による鋼材への過度な押し付けを防止し測定部本体の保護を図ることができる。
【0011】
ここで、前記ストッパ部は、
前記鋼材と対向して配置され、下降させた際に下端側の先端部を前記鋼材に当接させる当接ピンと、
前記測定部本体と一体に移動するとともに、前記当接ピンを上下方向に相対移動可能に保持する保持プレートと、
前記当接ピンの先端部と前記保持プレートとの間に介在して、前記鋼材と前記当接ピンの先端部とが当接した後、前記鋼材に下向きの付勢力を作用させ、前記保持プレートに上向きの付勢力を作用させるコイルばねと、を備えた構成とすることができる(第4の局面)。
【0012】
また第4の局面で規定の鋼種判別装置において、前記コイルばねを縮みきった状態でメカニカルストッパとして作用させて、前記測定部本体の下降端の位置を規定するように構成することができる(第5の局面)。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態の鋼種判別装置を示した図である。
【
図2】
図1の搬送ブロックを鋼材とともに示した図である。
【
図4】
図1の昇降ユニットの一部を切り欠いて示した側面図である。
【
図6】同鋼種判別装置における電気系統のブロック図である。
【
図8】
図7に続く同鋼種判別装置の動作説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1は、本発明の一実施形態の鋼種判別装置を示した図である。同図において、1は鋼種判別装置で、棒鋼等の鋼材WにX線を照射し、X線が照射された鋼材Wから発生する蛍光X線の波長や強度に基づいて鋼種を判定する。
鋼種判別装置1は、搬送コンベア2と、搬送コンベア2の上方に設けられた測定部本体4と、測定部本体4を昇降可能に保持する昇降ユニット6と、これらの動作を制御する制御部8(
図6参照)と、を備えている。
【0015】
搬送コンベア2は、駆動モータ11(
図6参照)、駆動モータ11に連結された駆動ギア12、駆動ギア12とは搬送方向反対側に配置された従動ギア13、更に駆動ギア12と従動ギア13との間に掛け渡された搬送チェーン15、を備えている。本例においては、駆動ギア12に連結された駆動モータ11の回転により搬送チェーン15が図中反時計方向に回転し、
図1において横長の長円形状をなした搬送チェーン15上側の搬送面15aは図中左方向に移動せしめられる。
【0016】
搬送チェーン15には、所定のピッチPで保持ブロック17が取り付けられている。
図2(A)で示すように、保持ブロック17の上部は、上向きに突出した突出部18に続いて、一方の側面19aから他方の側面19bに亘って上方が開口したV字溝20が形成されており、前工程から送られてきた棒状の鋼材Wは、2点鎖線で示すように、その下方側の外周面がV字溝20の斜面20a,20bに当接することで所定の位置に保持される。なお、
図2ではサイズの大きい鋼材をWA、サイズの小さい鋼材をWBとして示している。
【0017】
保持ブロック17が取り付けられた搬送チェーン15は、搬送方向と直交するコンベア幅方向に複数列配置されており(
図2(B)参照)、鋼材Wは長手方向をコンベア幅方向とする態様で、1本ずつ搬送コンベア2上に保持され搬送される。
【0018】
本例では6本の鋼材W(
図1で示すW1~W6)を同時に測定するため、搬送コンベア2では6ピッチ分に相当する距離、鋼材Wを搬送した後、一旦停止する間欠駆動が繰り返し実行される。
なお、搬送コンベア2には搬送チェーン15とともに移動する被検出片を検出するためのコンベア位置検出センサ65(
図6参照)が設けられており、コンベア位置検出センサ65からの検出信号に基づいて搬送コンベア2の停止位置が管理されている。
【0019】
図1,
図5で示すように、搬送コンベア2の上方には、複数(この例では6つ)の昇降ユニット6-1~6-6(一括して言及するときは、「昇降ユニット6」と表記する)が、測定対象の鋼材W1~W6のそれぞれの直上に設けられている。
【0020】
昇降ユニット6は、
図3,
図4で示すように、エアシリンダ装置38と、エアシリンダ装置38によって昇降せしめられる保持部材23と、を含んで構成されている。測定対象の鋼材Wに対し蛍光X線分析を行なう測定部本体4は、この保持部材23によって昇降可能に保持されている。
【0021】
保持部材23は、一対の側板24,24と上板26と背板27とを備えた略箱状を成しており、その内側に形成された凹状の収容部28に測定部本体4が取り付けられている。
【0022】
保持部材23の背板27は、架台30と一体に設けられた取付用フレーム31と対向する。
図4で示すように、取付用フレーム31の搬送方向上流側の取付面32および搬送方向下流側の取付面33には上下方向に延びるガイドレール34が取り付けられている。保持部材23の背板27には、このガイドレール34と係合する係合ブロック36が取り付けられている。これらガイドレール34および係合ブロック36でリニアガイドが構成され、保持部材23は取付用フレーム31に対して上下方向にスライド移動可能とされている。
【0023】
取付用フレーム31の取付面32,33の上方部分には、出力ロッド39を下に向けた昇降用のエアシリンダ装置38が取り付けられている。保持部材23の上板26はエアシリンダ装置38の出力ロッド39に連結されており、保持部材23および保持部材23に取り付けられた測定部本体4は、エアシリンダ装置38の出力ロッド39の進退に従って昇降する。
【0024】
測定部本体4は、
図6で示すように、X線を照射する照射部70と、蛍光X線を検出する検出部71と、検出した蛍光X線に応じた合金元素の含有量を算出する組成算出部72と、を備えており、測定対象の鋼材Wに向けてX線を照射し、X線が照射された鋼材Wから発生する蛍光X線の波長や強度に基づいて合金元素の含有量を算出する。本例では、上記機能部(照射部、検出部等)を備えたX線分析装置を測定部本体4として用いることができる。
図3で示すように、測定部本体4は、X線および蛍光X線が出入りする開口4aが直下の鋼材Wに向けられた状態で、保持部材23の収容部28に取り付けられている。
測定部本体4は後述する制御部8に接続されており、測定部本体4は制御部8からの測定開始信号に基づいて測定を開始し、検出した蛍光X線に応じて算出された各種元素の含有量の情報を制御部8に向けて出力する。
【0025】
次にストッパ部47について説明する。ストッパ部47は、
図3,
図5で示すように、保持部材23の一対の側板24,24の外向きの面にそれぞれ取り付けられている。換言すれば、一対のストッパ部47は測定部本体4を挟んだ鋼材長手方向のそれぞれ反対側に設けられている。
【0026】
ストッパ部47は、
図3で示すように、軸状の当接ピン48と、当接ピン48を上下方向に摺動可能に保持する保持プレート55と、当接ピン48に外装されたコイルばね61と、を含んで構成されている。
【0027】
当接ピン48は、軸部49と、軸部49の下端側に形成された軸部49よりも大径の先端部50と、軸部49の先端部50とは反対側に設けられた後端側係合部(ねじ部51に締結されたナット部材)52と、を備えている。
保持プレート55は、保持部材23に固定される基部側プレート56と、基部側プレート56の下端から水平方向に延び出した先端側プレート57とを含んでいる。先端側プレート57および先端側プレート57の上面に設けられたスリーブ58には、上下方向に貫通する貫通孔59が形成されており、この貫通孔59に当接ピン48の軸部49が挿通されている。そして、スリーブ58の上端は当接ピン48の後端側係合部52と係合可能とされている。なお、
図3における符号60は、測定対象の鋼材Wを検出するための材料検出センサである。
【0028】
コイルばね61は、組付状態でその上端が保持プレート55(詳しくは先端側プレート57の下面)に接し、下端が当接ピン48の先端部50に接している。
このように構成されたストッパ部47は、保持部材23が下降する過程で鋼材Wを下向きに押圧するとともに、保持部材23に対して上向きの付勢力を作用させる。そしてコイルばね61は、縮みきった状態でメカニカルストッパとして作用して、測定部本体4の下降端の位置を規定する。即ち、測定部本体4を昇降可能とした場合でも、測定時における鋼材Wと測定部本体4との距離を略一定に保つことができる。
【0029】
次に昇降ユニット全体の配置について説明する。6つの昇降ユニット6-1~6-6は、それぞれ鋼材W1~W6に対応すべく、平面視において各鋼材の直上に配置されている(
図5参照)。詳しくは、
図5で示すように、3つの取付用フレーム31-1,31-2,31-3を鋼材の搬送方向に対して斜め(図中斜め右上方向)に配置し、これら取付用フレーム31-1,31-2,31-3の搬送方向上流側の取付面32と搬送方向下流側の取付面33にそれぞれ昇降ユニットが取り付けられ、全体として、隣接する鋼材(例えばW1とW2)に対応する昇降ユニット同士(例えば6-1と6-2)は、鋼材の搬送方向に対して斜め(図中斜め右上方向)に配置されている。
【0030】
このような斜め配置を採用することで本実施形態では、隣接する昇降ユニット同士の干渉を回避しつつ搬送コンベア2により搬送されてきた所定ピッチの複数の鋼材W1~W6を同時に測定することができる。また
図5で示すように、昇降ユニットの一部(本例の場合、ストッパ部47)を搬送方向に重複させることで、6つの昇降ユニット6-1~6-6全体によって占有されるスペースの幅方向寸法(
図5のL寸法)を小さくすることができる。
【0031】
図6は鋼種判別装置1の制御系のブロック図である。搬送コンベア2及び昇降ユニット6の動作制御を行う制御部8には、ホストコンピュータ64、コンベア位置検出センサ65、材料検出センサ60、駆動モータ11、エアシリンダ装置38、測定部本体4、表示モニタ66が接続されており、制御部8は、情報取得部80、コンベア制御部81、測定制御部82、判定部83として機能する。
【0032】
情報取得部80は、鋼材の製造工程を管理しているホストコンピュータ64のデータベースから情報を取得する。詳しくは、該当レードル値に基づく各種元素の含有量の許容範囲に関する情報を取得する。
コンベア制御部81は、搬送コンベア2を駆動する駆動モータ11を制御し、搬送コンベア2に鋼材6本分の距離の移動とその後の停止の動作を繰り返し実行させる。停止位置はコンベア位置検出センサ65からの検出信号に基づいて規定される。停止後の移動再開は、測定部本体4からの測定完了信号に基づいて実行される。
【0033】
測定制御部82は、昇降ユニット6に昇降動作を実行させ、また測定部本体4に蛍光X線分析を実行させる。搬送コンベア2の移動が停止した後に、昇降ユニット6のエアシリンダ装置38に対し下降指令信号を出力する。また測定部本体4の下降に伴ない材料検出センサ60が鋼材Wを検出した場合には、測定部本体4に蛍光X線分析開始信号を出力する。また測定部本体4から蛍光X線分析完了信号を受信した後は、エアシリンダ装置38に対し上昇指令信号を出力する。
判定部83は、測定部本体4で算出された各元素の含有量が、上記レードル値に基づく各種元素の含有量の許容範囲内であるか比較し、範囲内である場合は指定された鋼種であると判断し、範囲外である場合は異材であると判断する。また判断結果については表示モニタ66に出力する。
【0034】
次に、鋼種判別装置1における測定動作について説明する。
図1で示すように、測定対象の鋼材W1~W6が所定の位置に到着し搬送コンベア2が停止した状態で、測定動作が開始されると各昇降ユニット6(詳しくは昇降ユニット6-1~6-6)が下降動作を開始する。
下降の過程で、
図7で示すように、ストッパ部47のピン先端部50が直下の鋼材Wの頂部Wtに当接すると、ストッパ部47のコイルばね61が圧縮され、エアシリンダ装置38の下向きの推力に抗する上向きの付勢力が昇降ユニット6に作用する。このため、測定部本体4は下降速度を抑えて鋼材Wに近接もしくは接触する。
そして、
図8で示すコイルばね61が縮みきった状態で、コイルばね61はメカニカルストッパとして作用し、鋼材Wの頂部Wtから所定の距離に測定部本体4の下降端の位置が規定される。
【0035】
一方で、下降動作により測定対象の鋼材Wに近づいた材料検出センサ60により鋼材Wが検出されると、測定部本体4からX線が照射され、蛍光X線分析が開始される。制御部8では、蛍光X線分析により求められた各種元素の含有量に基づいて所定の鋼種であるか否かを判定する。
蛍光X線分析が完了した各昇降ユニット6(詳しくは昇降ユニット6-1~6-6)は上昇して、ストッパ部47と鋼材Wとの当接も解除される。そして、測定(蛍光X線分析)が完了した6本の鋼材Wは搬送方向下流側に送られ、一連の測定動作が完了する。
【0036】
以上のように本実施形態の鋼種判別装置1では、搬送コンベア2により送られてきた複数(ここでは6本)の鋼材W1~W6を同時に蛍光X線分析することで、効率良く蛍光X線分析による鋼種判別を行なうことができる。
【0037】
ここで、隣接する鋼材Wに対応する測定部本体4同士を鋼材の搬送方向に対して斜めに配置するに際し、本実施形態では、搬送コンベア2の上方に設けられた取付用フレーム31同士を鋼材の搬送方向に対して斜めに配置し、取付用フレーム31の搬送方向上流側の取付面32と搬送方向下流側の取付面33にそれぞれ測定部本体4を取り付けている。
【0038】
本実施形態の鋼種判別装置1は、測定部本体4を昇降可能に保持する昇降ユニット6を備え、この昇降ユニット6がストッパ部47を備えている。ストッパ部47は鋼材Wの頂部Wtから所定の距離に測定部本体4の下降端の位置を規定する。
このため本実施形態によれば、測定部本体4を昇降可能とした場合でも、測定時における鋼材Wと測定部本体4との距離が略一定に保たれるため、測定値のばらつきを抑えることができる。また測定対象の鋼材Wのサイズが変化した場合でも、鋼材Wに対して所定の距離から測定部本体4による測定を行なうことができる。また測定部本体4による鋼材Wへの過度な押し付けを防止し測定部本体4の保護を図ることができる。
【0039】
本実施形態の鋼種判別装置1では、鋼材Wに当接させる当接ピン48と、測定部本体4と一体に移動するとともに当接ピン48を上下方向に相対移動可能に保持する保持プレート55と、当接ピン48の先端部50と保持プレート55との間に介在させたコイルばね61と、でストッパ部47を構成とする。
【0040】
このようにストッパ部47を構成することで、コイルばね61の上向きの付勢力により下降速度を抑えた状態で測定部本体4を鋼材Wに近接もしくは接触させることができる。またコイルばね61は、縮みきった状態でメカニカルストッパとして作用し、測定部本体4の下降端の位置を規定することができる。
【0041】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。例えば、鋼材に対応して設けられる測定本体部の数は必要に応じて適宜変更可能である。また隣接する鋼材に対応する測定部本体同士が鋼材の搬送方向に対して斜めに配置されているものであれば、測定本体部全体の配置は
図5の例に限定されず適宜変更可能である。また蛍光X線分析から鋼種判定を行なうまでの各種機能は、測定部本体側で実現されるものであっても良いし、その一部の機能を制御部側で実現させるものであっても良い等、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 鋼種判別装置
2 搬送コンベア
4 測定部本体
6 昇降ユニット
31 取付用フレーム
47 ストッパ部
48 当接ピン
55 保持プレート
61 コイルばね
P ピッチ
W 鋼材
Wt 頂部