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  • 特開-車両 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098429
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20240716BHJP
   F02B 43/10 20060101ALI20240716BHJP
   F02M 25/00 20060101ALI20240716BHJP
   B60H 1/32 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
F02M21/02 F
F02B43/10 Z
F02M25/00 F
B60H1/32 613Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001952
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 基暉
(72)【発明者】
【氏名】大谷 元希
(72)【発明者】
【氏名】洞江 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】中川 周
(72)【発明者】
【氏名】塚本 将太
(72)【発明者】
【氏名】増子 京佑
(72)【発明者】
【氏名】大見 正宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓行
【テーマコード(参考)】
3L211
【Fターム(参考)】
3L211BA53
(57)【要約】
【課題】 車両において、複数の用途にアンモニアを利用することで、従来よりもコストを低減し得る技術を提案する。
【解決手段】 車両は、アンモニアを貯留するアンモニアタンクと、アンモニアタンクから供給されるアンモニアを圧縮する圧縮器と、アンモニアを冷媒として利用する空調システムと、アンモニアを燃料として利用するエンジンと、を備えている。空調システムは、アンモニアを凝縮する凝縮器と、アンモニアを減圧する減圧器と、アンモニアを蒸発させる蒸発器とを有している。エンジンは、アンモニアを燃焼させる燃焼室を有している。圧縮器により圧縮されたアンモニアが、凝縮器と、燃焼室とに供給可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
アンモニアを貯留するアンモニアタンクと、
前記アンモニアタンクから供給される前記アンモニアを圧縮する圧縮器と、
前記アンモニアを冷媒として利用する空調システムと、
前記アンモニアを燃料として利用するエンジンと、
を備えており、
前記空調システムは、前記アンモニアを凝縮する凝縮器と、前記アンモニアを減圧する減圧器と、前記アンモニアを蒸発させる蒸発器とを有しており、
前記エンジンは、前記アンモニアを燃焼させる燃焼室を有しており、
前記圧縮器により圧縮された前記アンモニアが、前記凝縮器と、前記燃焼室とに供給可能に構成されている、車両。
【請求項2】
請求項1に記載の車両であって、
前記蒸発器を通過した前記アンモニアが、前記圧縮器に供給されるように構成されている、車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示する技術は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アンモニアを冷媒として利用する種々のシステムの開発が進んでいる。特許文献1には、アンモニアを冷媒として利用する冷凍空調システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-146327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、車両において、複数の用途にアンモニアを利用することで、従来よりもコストを低減し得る技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書は、第1の態様として、車両を開示する。前記車両は、アンモニアを貯留するアンモニアタンクと、前記アンモニアタンクから供給される前記アンモニアを圧縮する圧縮器と、前記アンモニアを冷媒として利用する空調システムと、前記アンモニアを燃料として利用するエンジンと、を備えている。前記空調システムは、前記アンモニアを凝縮する凝縮器と、前記アンモニアを減圧する減圧器と、前記アンモニアを蒸発させる蒸発器とを有している。前記エンジンは、前記アンモニアを燃焼させる燃焼室を有している。前記圧縮器により圧縮された前記アンモニアが、前記凝縮器と、前記燃焼室とに供給可能に構成されている。
【0006】
上記の車両では、圧縮器により圧縮されたアンモニアが、空調システムの凝縮器に供給可能に構成されている。凝縮器に供給されたアンモニアが、凝縮器、減圧器、及び蒸発器を介して空気と熱交換されることにより、車両の室内に冷風が供給される。このように、圧縮器から空調システムに供給されるアンモニアは、冷媒として利用される。また、上記の車両では、圧縮器により圧縮されたアンモニアが、エンジンの燃焼室にも供給可能に構成されている。燃焼室に供給されたアンモニアの燃焼により、エンジンが駆動する。このように、圧縮器からエンジンに供給されるアンモニアは、燃料として利用される。すなわち、上記の車両では、圧縮器を、空調システムとエンジンとで共用することができるため、部品点数を低減することができる。また、燃焼室に供給されるアンモニアは、圧縮器により高圧状態になっている。このため、燃焼室にアンモニアを供給するための専用の燃料ポンプを要さない。このように、上記の車両では、従来と比較してコストを低減することができる。
【0007】
第2の態様では、上記第1の態様において、前記蒸発器を通過した前記アンモニアが、前記圧縮器に供給されるように構成されていてもよい。このような構成では、圧縮器、凝縮器、減圧器、及び蒸発器により冷凍サイクルが構成されるため、効率良くアンモニアを循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施例の車両の構成を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施例)
以下、図面を参照して、実施例の車両10について説明する。図1では、車両10を楕円により示している。車両10は、アンモニアタンク20と、圧縮器22と、空調システム30と、エンジン40を備えている。
【0010】
アンモニアタンク20は、車両10に搭載されている。アンモニアタンク20の内部には、空調システム30及びエンジン40に供給するためのアンモニアが貯蔵されている。アンモニアは、空調システム30では冷媒として利用され、エンジン40では燃料として利用される。
【0011】
圧縮器22は、アンモニアタンク20に接続されている。圧縮器22は、アンモニアタンク20から供給されるアンモニアを圧縮する。圧縮器22は、アンモニアを圧縮することにより、気体のアンモニアを低温低圧から高温高圧へ変化させる。ただし、圧縮器22によりアンモニアの一部が液体に変化されてもよい。後述するように、圧縮器22は、高温高圧に圧縮したアンモニアを空調システム30の凝縮器32及びエンジン40の燃焼室41aに供給可能に構成されている。
【0012】
空調システム30は、凝縮器32と、貯留槽34と、減圧器36と、蒸発器38を有している。
【0013】
凝縮器32は、圧縮器22に接続されている。凝縮器32は、圧縮器22から供給された高温高圧のアンモニアを、例えば冷却水や大気との熱交換により冷却して凝縮し、低温高圧の液体へ変化させる。
【0014】
貯留槽34は、凝縮器32に接続されている。貯留槽34は、凝縮器32により凝縮された低温高圧の液体のアンモニアを貯留する。貯留槽34は、アンモニア内の余剰な水分や不純物を除去する機能を有している。
【0015】
減圧器36は、貯留槽34に接続されている。減圧器36は、本実施例では、膨張弁である。減圧器36は、貯留槽34から供給されたアンモニアを膨張させ、低圧の霧状にして噴霧する。アンモニアは、減圧器36が開状態になると、膨張して熱が奪われ、温度がさらに低下する。
【0016】
蒸発器38は、減圧器36に接続されている。蒸発器38は、減圧器36から噴霧されたアンモニアを、ファンにより車両10内(室内)へ送風される空気との熱交換により蒸発、気化させる。その結果、アンモニアにより冷やされた空気が、室内に供給される。
【0017】
蒸発器38を通過した低温低圧のアンモニアは、圧縮器22に再び供給される。このように、空調システム30は、圧縮器22から供給されたアンモニアを、凝縮器32、減圧器36、蒸発器38を循環させることにより、冷凍サイクルを構成している。
【0018】
エンジン40は、内部に燃焼室41aを有するシリンダ41と、燃焼室41a内にアンモニアを供給するアンモニア供給装置42と、燃焼室41a内に空気を供給する吸気装置44と、燃焼室41a内で火花を発生させる点火装置45と、燃焼室41a内から燃焼後の排気ガスを排出する排気装置46を備えている。
【0019】
シリンダ41は、筒状のシリンダライナ41bと、シリンダライナ41bの上部開口を覆うシリンダヘッド41cと、シリンダライナ41b内に往復動可能に設けられたピストン41dと、ピストン41dに連結されたクランク41eを有している。シリンダライナ41bとシリンダヘッド41cとピストン41dとによって囲まれた空間が燃焼室41aである。したがって、燃焼室41aは、ピストン41dが図中上側に移動することで、高圧状態に圧縮される。また、この燃焼室41aでアンモニアを燃焼させてピストン41dを往復動させることで、クランク41eを回転運動させる駆動力が伝達される。
【0020】
吸気装置44は、一端がシリンダヘッド41cに固定された吸気管44aと、吸気管44a内に設けられた吸気弁44bを備えている。吸気弁44bは、図示しない駆動手段により開閉されるように構成されており、吸気弁44bを開放することで吸気管44a内と燃焼室41aとが連通し、吸気管44aから燃焼室41a内に空気が供給される。
【0021】
排気装置46は、一端がシリンダヘッド41cに固定された排気管46aと、排気管46a内に設けられた排気弁46bを備えている。排気弁46bは、図示しない駆動手段により開閉されるように構成されており、排気弁46bを開放することで排気弁46b内と燃焼室41aとが連通し、燃焼室41a内の燃焼後の排気ガスが排気弁46bから排出される。
【0022】
点火装置45は、例えば点火プラグからなり、シリンダヘッド41cの略中央部において先端部を燃焼室41a内に配置させた状態で固定されている。点火装置45の先端部には、燃焼室41a内の上側中央部で火花を発生させる点火部45aが設けられている。
【0023】
アンモニア供給装置42は、例えば、インジェクタであり、圧縮器22に接続されている。アンモニア供給装置42は、シリンダヘッド41cにおいて、先端部を燃焼室41a内に配置させた状態で固定されている。アンモニア供給装置42の先端部には、燃焼室41a内にアンモニアを噴射する噴射部42aが設けられている。なお、アンモニア供給装置42は、噴射部42aを燃焼室41a内に配置させた状態でシリンダヘッド41cに固定されているが、これに代えて、又はこれに加えて、噴射部42aを吸気管44a内に配置させた状態で当該吸気管44aに固定されていてもよい。
【0024】
上記した構成のエンジン40では、圧縮器22から供給された高圧のアンモニアが噴射部42aから噴射され、点火部45aで発生した火花により、燃焼室41a内で空気とともに燃焼することで、クランク41eを回転運動させることができる。
【0025】
なお、圧縮器22から凝縮器32への配管60には、バルブ50が設けられている。また、圧縮器22からアンモニア供給装置42への配管62には、バルブ52が設けられている。車両10のコントローラ(不図示)は、バルブ50、52を制御することで、空調システム30及びエンジン40に供給するアンモニアの量を調整する。
【0026】
以上に説明したように、本実施例の車両10では、圧縮器22により圧縮されたアンモニアが、空調システム30の凝縮器32に供給可能に構成されている。凝縮器32に供給されたアンモニアが、凝縮器32、減圧器36、及び蒸発器38を介して空気と熱交換されることにより、車両10の室内に冷風が供給される。このように、圧縮器22から空調システム30に供給されるアンモニアを、冷媒として利用することができる。また、本実施例の車両10では、圧縮器22により圧縮されたアンモニアが、エンジン40の燃焼室41aにも供給可能に構成されている。燃焼室41aに供給されたアンモニアの燃焼により、エンジン40が駆動する。このように、圧縮器22からエンジン40に供給されるアンモニアを、燃料として利用することができる。すなわち、本実施例の車両10では、圧縮器22を、空調システム30とエンジン40とで共用することができるため、部品点数を低減することができる。また、燃焼室41aに供給されるアンモニアは、圧縮器22により高圧状態になっている。このため、燃焼室41aにアンモニアを供給するための専用の燃料ポンプを要さない。このように、本実施例の車両10では、従来と比較してコストを低減することができる。
【0027】
また、アンモニアは、気化熱が比較的大きいので、空調システム30の蒸発器38により蒸発するときに周りの熱を奪い易い。このため、高い冷却効率を実現することができる。
【0028】
また、本実施例では、蒸発器38を通過したアンモニアが、圧縮器22に供給される。したがって、圧縮器22、凝縮器32、減圧器36、及び蒸発器38により冷凍サイクルを構成することができるため、効率良くアンモニアを循環させることができる。
【0029】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。以下、上述した実施例の変形例を以下に列挙する。
【0030】
上述した実施例では、蒸発器38を通過したアンモニアが、圧縮器22に戻るように構成されていた。しかしながら、例えば、蒸発器38を通過したアンモニアが、アンモニアタンク20に戻るように構成してもよいし、別途設けられた貯留槽に貯留されてもよい。
【0031】
本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0032】
10:車両、20:アンモニアタンク、22:圧縮器、30:空調システム、32:凝縮器、34:貯留槽、36:減圧器、38:蒸発器、40:エンジン、41a:燃焼室
図1