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特開2024-9843ベルトバンデージを有する乗物用タイヤ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009843
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ベルトバンデージを有する乗物用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/00 20060101AFI20240116BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20240116BHJP
   D02G 3/48 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B60C9/00 B
B60C9/00 C
B60C9/00 G
B60C9/22 D
D02G3/48
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023169975
(22)【出願日】2023-09-29
(62)【分割の表示】P 2021569419の分割
【原出願日】2020-06-12
(31)【優先権主張番号】102019208984.4
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510156561
【氏名又は名称】コンチネンタル・ライフェン・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【住所又は居所原語表記】Continental-Plaza 1,30175 Hannover,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】レーゼ・ヴォルフガング
(57)【要約】      (修正有)
【課題】収縮挙動の更なる向上、ゆえに、特に高速挙動の向上を示すベルトバンデージを含む、乗物用タイヤを提供する。
【解決手段】本発明は、ベルトバンデージを有する乗物用タイヤであって、ベルトバンデージは強度部材を含み、強度部材は、プライ内に平行に配置されたハイブリッドコードを有し、ハイブリッドコードは、いずれの場合においても、ポリエチレンテレフタレート(PET)の少なくとも1本のヤーンとポリアミドの少なくとも1本のヤーンとを内包する乗物用タイヤに関する。本発明によれば、ベルトバンデージのハイブリッドコードのヤーンのPETは、再生PET(rPET)である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトバンデージを含む乗物用タイヤであって、前記ベルトバンデージは強度部材を含み、前記強度部材は、前記プライ内に互いに平行に配置されたハイブリッドコードを含み、前記ハイブリッドコードはそれぞれ、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の少なくとも1本のヤーンとポリアミド製の少なくとも1本のヤーンとを内包する、乗物用タイヤにおいて、前記PETは、再生PET(rPET)であることを特徴とする、
乗物用タイヤ。
【請求項2】
再生PET製の前記ヤーンは、200~1670dtex、好ましくは200~1350dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1に記載の乗物用タイヤ。
【請求項3】
ポリアミド製の前記ヤーンは、200~1400dtex、好ましくは200~1000dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の乗物用タイヤ。
【請求項4】
前記ハイブリッドコードは全体として、400~3100dtex、好ましくは400~2900dtex、特に好ましくは400~2200dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【請求項5】
再生PET製の前記ヤーンとポリアミド製の前記ヤーンは、端部で撚り合わされて、200~700t/m、好ましくは300~600t/mの前記ハイブリッドコードを形成することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【請求項6】
再生PET製の前記ヤーンは、1000~1200dtexの繊度を有し、ポリアミド製の前記ヤーンは、900~1000dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【請求項7】
再生PET製の前記ヤーンとポリアミド製の前記ヤーンは、端部で撚り合わされて、300~380t/mの前記ハイブリッドコードを形成することを特徴とする、請求項6に記載の乗物用タイヤ。
【請求項8】
再生PET製の前記ヤーンは、200~360dtexの繊度を有し、ポリアミド製の前記ヤーンは、200~360dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【請求項9】
前記ポリアミドは、ポリアミド66(PA 66)であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【請求項10】
前記ハイブリッドコード中の前記再生PETの重量分率は、40~60%であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルトバンデージを有する乗物用タイヤであって、ベルトバンデージは強度部材を含み、強度部材は、プライ内に互いに平行に配置されたハイブリッドコードを有し、ハイブリッドコードは、いずれの場合においても、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の少なくとも1本のヤーンとポリアミド製の少なくとも1本のヤーンとをそれぞれ内包する乗物用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
様々なエラストマー製品を補強するための強度部材は周知である。したがって、空気入り乗物用タイヤにベルトバンデージを用いることができることは周知であり、ベルトバンデージは、1つ以上の層を備えて構成され、ベルトエッジを覆い、実質的に周方向に延びる、ゴムに組み込まれたコードの形態の強度部材を含む。このベルトバンデージは、特に高速用途において、動作時に生じる遠心力によるタイヤの膨らみを防止するという目的を有する。
【0003】
タイヤの生産時、バンデージは、バンデージ上に巻き付けられる又は巻かれる、未加硫ゴム混合物に組み込まれた強度部材を備えるプライ、ストリップ、又は個々のコードの形態で適用される。強度部材は、スレッド形態の本質的に平行な強度部材のシートでゴムに埋め込まれる。強度部材は、概して、当業者に周知の手法で埋め込むゴムにより良好に接着させるために熱的に及び/又は含浸により前処理され、ゴム混合物で覆うために、カレンダー又は押出機に長手方向に通過させる。既存の装置による成形及びタイヤの加硫の過程において、タイヤは、概して、グリーンタイヤがフラットドラムに巻かれたときの未加硫グリーンタイヤと比較して、膨らみにより肩部領域が最大2%、中央領域が最大4%膨張する。より最近の成形ドラムでは、タイヤ生産時のひずみを約2%以下に更に低下させることが必要である。より最新のデバイスでは膨らみは更に減少している。更なる課題は、高温における特定のコード材料の収縮挙動である。比較的低い収縮には、乗物用タイヤの比較的高い寸法安定性、ゆえに、より良好なフラットスポット挙動が必要である。フラットスポット挙動(=駐車時に地面と接する領域の可逆的なプラスチックの平坦化)は、当業者に周知の表現である。
【0004】
バンデージのコードは、成形プロセス時に十分な膨らみを可能にし、且つタイヤ生産時の加硫モールドにおいて、タイヤを正確に成形することを可能にするように意図され、タイヤの完成後、動作中に良好な高速性能を保証するように意図される。これらの要件を満たすために、コードは、中程度の力下で約3%~4%のひずみまで、非常に強い力下でのみより高いひずみまで伸長可能であるべきである。
【0005】
米国特許第7,252,129 B2号明細書は、アラミド繊維と、ポリエステル、ナイロン、及びレーヨンからなる群から選択される更なる繊維とからなるハイブリッドコードを開示している。このハイブリッドコードでは、強度部材層の個々のスレッドの分離が比較的小さくなるようにする。
【0006】
韓国特許第100829260 B1号公報及びKR100829261号明細書は、270~330t/m(1メートルあたり330回転)にて端部で撚り合わされ、2度浸漬させた、PET(ポリエチレンテレフタレート)及びナイロン製のハイブリッドコードについて記載している。ナイロン製の1度浸漬させたコードと比較すると、これにより、45Nにおけるひずみが低減し、180℃における収縮が小さくなる。これらの文書からは、収縮力に対する影響は明らかではない。
【0007】
ポリエステル及びポリアミド製のハイブリッドコードは、国際公開第2014/001039 A1号パンフレット、国際公開第2015/137901 A1号パンフレット、及び国際公開第2017/048208 A1号パンフレットにも記載されている。
【0008】
国際公開第2011/147635 A1号パンフレットは、特に、乗物用タイヤのカーカスプライにおける再生PETの使用を開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が対処する課題は、収縮挙動の更なる向上、ゆえに、特に高速挙動の向上を示すベルトバンデージを含む、最初に明記したタイプの乗物用タイヤを提供するというものである。同時に、タイヤは、可能な限り持続可能に生産され、転がり抵抗特性の向上を示すものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、PETが再生PET(rPET)である場合に解決される。
【0011】
驚くべきことに、強度部材として再生PETを用いることにより、原油から元来生産されるPET即ち非再生PETと比較して、収縮挙動の更なる向上(より大きな収縮)が達成され、本発明による乗物用タイヤのベルトバンデージの特性の向上が達成される、即ち、本発明による乗物用タイヤの高速性能が向上することが判明した。ベルトエッジにおけるコード圧縮の可能性は、発生したとしても著しく減少した程度でのみ発生するため、コードの破断が少なくなる。
【0012】
更に、再生PETを使用すると、生態学的且つ経済的な利点をもたらす。再生PETを使用すると、新たな(非再生)石油系材料の生産が避けられるため、限りある原油資源の過度の利用が避けられる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の文脈においては、「再生PET」は、特に、PETボトル又は他のPET物品などの使用済みPET製品から再溶解によって得られたPETを意味するものと理解される。これには、ポリマーの顕著な分解及び再構成を伴わない。再生PETの直接の出発材料は原油ではなく、PET製のボトル又は他の物品である。
【0014】
本発明の文脈においては、コードは、撚り合わされた2本以上のヤーンからなる線状構築物である。ハイブリッドコードは、2本以上の異なるヤーンが撚り合わされたコードである。本発明の文脈においては、ヤーンは、DIN 60900に準拠する個別のフィラメント又は繊維からなる線状構築物である。
【0015】
単位「dtex」は、当業者には周知であり、単位長さあたりの重量の測度である。
【0016】
繊度dtexが低くなるほど、対応するヤーン又はコードは軽くなる。
【0017】
本発明の有利な実施形態では、再生PET製のヤーンは、200~1670dtex、好ましくは200~1350dtexの繊度を有する。
【0018】
本発明によるタイヤのベルトバンデージ内のハイブリッドコード内の再生PET製のヤーンのそのような繊度は、特に良好な高速性能を達成すると同時に重量を低減し、ゆえに、転がり抵抗を向上させる。
【0019】
本発明の有利な実施形態では、ポリアミド製のヤーンは、200~1400dtex、好ましくは200~1000dtexの繊度を有する。
【0020】
本発明によるタイヤのベルトバンデージ内のハイブリッドコード内のポリアミドヤーンのそのような繊度は、また、とりわけ100重量%ナイロン製のコードと比較して、特に良好な高速性能を達成すると同時に重量を低減し、ゆえに、転がり抵抗を向上させる。
【0021】
本発明の有利な実施形態では、ベルトバンデージのハイブリッドコードは全体として、400~3100dtex、好ましくは400~2900dtex、特に好ましくは400~2200dtexの繊度(全体的な繊度)を有する。
【0022】
本発明によるタイヤのベルトバンデージ内のハイブリッドコードのそのような全体的な繊度は、特に良好な高速性能を達成すると同時に重量を低減し、ゆえに、転がり抵抗を向上させる。
【0023】
本発明の有利な実施形態では、再生PET製のヤーンとポリアミド製のヤーンは、端部で撚り合わされて、200~700t/m、好ましくは300~600t/mのハイブリッドコードを形成する。このことは非常に良好な耐疲労性をもたらし、それゆえ、タイヤに非常に良好な耐久性を与える。
【0024】
好ましい実施形態において、ベルトバンデージのコードのスレッド密度(thread density)は、50~150epdm、特に好ましくは50~120epdmである。この密度は、空気入りタイヤに使用される場合に十分な強度を確保する。
【0025】
本発明によれば、ベルトバンデージ中にrPET及びポリアミドを使用すると、タイヤ幅(epdm(ends per decimeter)=デシメートルあたりの端部)及び/又はプライ厚さに基づくコードの数を低減することを可能にし、これは更に、転がり抵抗の利点を伴う。同時に、これにより、より高い寸法安定性を達成し、それゆえ、フラットスポット挙動が向上する。
【0026】
本発明の特に有利な実施形態では、再生PET製のヤーンは、1000~1200dtexの繊度を有し、ポリアミド製のヤーンは、900~1000dtexの繊度を有する。これにより、以下の表1からも明らかなように、本発明が対処する課題を解決するための特に良好な特性が達成される。
【0027】
本明細書では、再生PET製のヤーンとポリアミド製のヤーンは、好ましくは端部で撚り合わされて、300~380t/mのハイブリッドコードを形成する。これにより、非常に良好な耐疲労性が達成される。
【0028】
本明細書では、ベルトバンデージ中のコードのスレッド密度は、好ましくは50~150epdm、特に好ましくは70~120epdmである。
【0029】
コードのスレッド密度を繊度に適応させると、技術的課題、特に、高速性能、寸法安定性、ゆえに、フラットスポット挙動、及び転がり抵抗挙動の観点における最適な特性が達成される。
【0030】
本発明の更に特に有利な実施形態において、再生PET製のヤーンは、200~360dtexの繊度を有し、ポリアミド製のヤーンは、200~360dtexの繊度を有する。これにより、以下の表2からも明らかなように、本発明が対処する課題を解決するための特に良好な特性が達成される。これらの繊度は、本発明による乗物用タイヤのベルトバンデージ中の特に非常に薄いプライを同時に達成する。これにより更に、転がり抵抗挙動を最適化する。
【0031】
本明細書では、再生PET製のヤーンとポリアミド製のヤーンは、好ましくは端部で撚り合わされて、500~600t/mのハイブリッドコードを形成する。これにより、非常に良好な耐疲労性が達成される。
【0032】
本明細書では、ベルトバンデージ中のコードのスレッド密度は、好ましくは100~150epdm、特に好ましくは110~130epdmである。
【0033】
コードのスレッド密度を繊度に適応させると、技術的課題、特に、高速性能、寸法安定性、ゆえに、フラットスポット挙動、及び転がり抵抗挙動の観点における最適な特性が達成される。
【0034】
本発明の更に特に有利な実施形態において、再生PET製のヤーンは、700~800dtexの繊度を有し、ポリアミド製のヤーンは、680~780dtexの繊度を有する。これにより、本発明が対処する課題を解決するための特に良好な特性が達成される。これらの繊度も、とりわけ100重量%ナイロン製のコードと比較すると、本発明による乗物用タイヤのベルトバンデージ中のプライをより薄くすることを可能にする。これにより更に、転がり抵抗挙動を最適化する。
【0035】
本明細書では、再生PET製のヤーンとポリアミド製のヤーンは、好ましくは端部で撚り合わされて、350~450t/mのハイブリッドコードを形成する。これにより、非常に良好な耐疲労性が達成される。
【0036】
本明細書では、ベルトバンデージ中のコードのスレッド密度は、好ましくは50~80epdmである。
【0037】
コードのスレッド密度を繊度に適応させると、技術的課題、特に、高速性能、寸法安定性、ゆえに、フラットスポット挙動、及び転がり抵抗挙動の観点における最適な特性を達成する。
【0038】
本発明の更に特に有利な実施形態において、再生PET製のヤーンは、500~600dtexの繊度を有し、ポリアミド製のヤーンは、430~530dtexの繊度を有する。これにより、本発明が対処する課題を解決するための特に良好な特性が達成される。これらの繊度も、とりわけ100重量%ナイロン製のコードと比較すると、本発明による乗物用タイヤのベルトバンデージ中のプライをより薄くすることを可能にする。これにより更に、転がり抵抗挙動を最適化し、高い寸法安定性が達成される。
【0039】
本明細書では、再生PET製のヤーンとポリアミド製のヤーンは、好ましくは端部で撚り合わされて、400~500t/mのハイブリッドコードを形成する。これにより、非常に良好な耐疲労性が達成される。
【0040】
本明細書では、ベルトバンデージ中のコードのスレッド密度は、好ましくは70~100epdmである。
【0041】
コードのスレッド密度を繊度に適応させると、技術的課題、特に、高速性能、寸法安定性、ゆえに、フラットスポット挙動、及び転がり抵抗挙動の観点における最適な特性が達成される。
【0042】
ポリアミドヤーンのポリアミドは、ポリアミド6(PA 6)、ポリアミド66(PA 66)、ポリアミド12(PA 12)、ポリアミド11(PA 11)、ポリアミド1313(PA 1313)、ポリアミド4(PA 4)、ポリアミド7(PA 7)、ポリアミド8(PA 8)、ポリアミド9(PA 9)、ポリアミド46(PA 46)、ポリアミド610(PA 610)、ポリアミド612(PA 612)、ポリアミド69(PA 69)及びポリアミド66/6(PA 66/6)からなる群から選択される。
【0043】
PA 6及び/又はPA 66の使用が好ましく、PA 66(ナイロン)の使用が特に好ましい。
【0044】
PA 66をポリアミドヤーンの材料として使用すると、対処する課題に関して特に良好な特性がもたらされる。
【0045】
本発明の有利な実施形態では、ハイブリッドコード中の再生PETの重量分率は、40%~60%である。これにより、本発明が対処する課題に対する最適な解決策を提供し、ハイブリッドコードは、再生PETの形態の持続可能な材料を顕著な割合で含む。
【0046】
ゴムに対するテキスタイル強度部材の信頼性の高い接着を確実にするために、ゴムに対する強度部材の接着を確実にするために、ハイブリッドコードに接着剤を含浸させると有利である。この接着剤の含浸は、例えば、RFL浸漬(レソルシノール-ホルムアルデヒド-ラテックス)を用いて1浴法又は2浴法で実施してもよい。しかしながら、含浸に関して当業者に周知の更に別のあらゆるプロセス及び接着剤、例えば、特に、レソルシノール及びホルムアルデヒドを含まない浸漬も考えられる。
【0047】
これに加えて、特に、コードの高温延伸などの、当業者に周知の更に別の及び慣習的な前処理プロセスも実施してよい。
【0048】
ベルトバンデージは、周方向に対して0°~5°の角度の単一プライ又は複数プライバンデージとして構成されていることが好ましく、単一プライバンデージが特に好ましい。この点に関して、「構成されている(configured)」とは、前記バンデージが単一プライ又は複数プライ形式、好ましくは単一プライ形式で周方向に巻かれるという意味として理解される。
【0049】
再生PETのヤーンは、S方向又はZ方向に撚られてもよい。
【0050】
ポリアミドヤーンは、S方向又はZ方向に撚られてもよい。
【0051】
ヤーンは、有利には、同じ撚り方向を有する。したがって、両者がS方向又はZ方向のいずれかに撚られると好ましい。
【0052】
ハイブリッドコードを形成するための撚り方向は、有利には、ヤーンの撚り方向と反対である。これは、コード、ゆえに、ベルトバンデージの強度の観点における向上した且つより一定の品質の生産の結果として生じる。
【実施例0053】
以下の表1及び表2を参照して、本発明の実施例及び更なる利点をより具体的に説明する。
【0054】
本発明の実施例には「E」の印が付され、本発明による乗物用タイヤのベルトバンデージのハイブリッドコードの例示的且つ特に有利な構造である。
【0055】
対照として用いられているのは、乗物用タイヤのベルトバンデージに典型的に用いられているナイロン製のコード、並びにバージンPET及びPA 6.6製のハイブリッドコードである。
【0056】
測定は、以下の方法に従って実施した。
・ASTM D 855に準拠する、破断力及び破断点伸度、力及び引張強度(ひずみ4%及び6%)、45Nにおけるひずみ、180℃における収縮、及び収縮力。
【0057】
単位N/dmで報告される特性はそれぞれ、同様に表に明記されている単位タイヤ幅あたりのベルトバンデージ内の可能なコード数(epdm=デシメートルあたりの端部)をそれぞれ外挿した、コードにて測定された特性に関連する。
【0058】
【表1】
【0059】
表1は、本発明により示される、ベルトバンデージ内の再生PET及びポリアミド製のハイブリッドコード(E1)が、驚くべきことに、PA 66及び非再生PET製のコード(対照2)に比べて大きな収縮を呈することを示す。驚くべきことに、ベルトバンデージ内のハイブリッドコードの収縮挙動の著しい向上は、乗物用タイヤの高速性能の向上をもたらす。ベルトエッジにおけるコード圧縮の可能性は、発生したとしても著しく減少した程度でのみ発生するため、コードの破断が少なくなる。
【0060】
従来技術のベルトバンデージのナイロン製の標準的なコード(対照1)と比較すると、ひずみ4%及び6%にてより大きな力及び引張強度が見られる。
【0061】
したがって、ベルトバンデージ内に、(タイヤ幅に対して)より小さな直径及びより少数の強度部材を用いてもよい。表1に示されるように、ナイロン製の標準的なコードの110epdmから始まり、PET及びナイロン製のハイブリッドコードは、数を低減すること、及び例えば80epdmにおいて、epdmが減少したにもかかわらず、上述の特性の向上を達成することを可能にする。
【0062】
コードの数の減少により、ベルトバンデージ内で個々のコードを互いにより離して配置することができる。これにより、周囲のゴムマトリックスの剪断応力が低下し、更には、耐久性が向上する。
【0063】
同時に、これにより、全体的に、タイヤ内に配置される収縮材料が少なくなるため、フラットスポット挙動の改良、ゆえに、寸法安定性の向上につながる。
【0064】
対照1に比べて小さな直径のコードは、ベルトバンデージを全体的により薄く作製することを可能にし、また、必要なゴム混合物が少なくなる。これにより、本発明によるタイヤの転がり抵抗挙動が向上する。
【0065】
繊度、ゆえに、ハイブリッドコードの単位長さあたりの重量も低減される。対照1は2800dtexの合計繊度を有するが、前記繊度は、PET及びナイロンによる例示的な構築物では2040dtexである。重量の節減により、本発明によるタイヤの転がり抵抗挙動が向上する。
【0066】
重量の低下、数の減少、及び直径の減少からもたらされる利点は、非再生PET及び再生PETに当てはまる。しかしながら、前述の収縮の向上とそれに関連する利点は、再生PET(本発明)によってのみ達成される。
【0067】
E2は、同じく著しく低い繊度とそれに更に関連する転がり抵抗の観点における利点とを有する本発明の更なる実施例である。表2から明らかなように、E2もまた、各対照との比較でE1に関して記載したような利点を達成する。
【0068】
したがって、この構築物もまた、ベルトバンデージにとって重要な収縮及び引張強度の特性を向上させる。
【0069】
したがって、再生PETの使用は、環境に優しく且つ資源効率的である。更に、再生PETは、化石原料から直接得られるPETと同様に均一な品質を有する。したがって、一定した製品品質が保証され得る。
【0070】
更なる例示的実施形態では、本発明により示される、ベルトバンデージ内の再生PET及びポリアミド製のハイブリッドコードは、以下の構造を有する。
E3:ハイブリッドコード rPET 720x1/PA 66 700x1、400t/m端部撚り合わせ、60epdm
E4:ハイブリッドコード rPET 550x1/PA 66 470x1、470t/m端部撚り合わせ、80epdm。
【0071】
E3とE4の両者において、それぞれ個々のヤーンはZ方向に撚られており、2本のハイブリッドコードはそれぞれS方向に撚られている。
【0072】
【表2】
【手続補正書】
【提出日】2023-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベルトバンデージを含む乗物用タイヤであって、前記ベルトバンデージは強度部材を含み、前記強度部材は、前記プライ内に互いに平行に配置されたハイブリッドコードを含み、前記ハイブリッドコードはそれぞれ、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の少なくとも1本のヤーンとポリアミド製の少なくとも1本のヤーンとを内包する、乗物用タイヤにおいて、前記PETは、再生PET(rPET)であり、
再生PET製の前記ヤーンは、200~1670dtexの繊度を有し、
ポリアミド製の前記ヤーンは、200~1400dtexの繊度を有し、
前記ハイブリッドコードは全体として、400~2900dtexの繊度を有し、
前記ベルトバンデージのコードのスレッド密度が50~120epdmであることを特徴とする乗物用タイヤ。
【請求項2】
再生PET製の前記ヤーンは、200~1350dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1に記載の乗物用タイヤ。
【請求項3】
ポリアミド製の前記ヤーンは、200~1000dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の乗物用タイヤ。
【請求項4】
前記ハイブリッドコードは全体として、400~2200dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【請求項5】
再生PET製の前記ヤーンとポリアミド製の前記ヤーンは、端部で撚り合わされて、200~700t/m、好ましくは300~600t/mの前記ハイブリッドコードを形成することを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【請求項6】
再生PET製の前記ヤーンは、1000~1200dtexの繊度を有し、ポリアミド製の前記ヤーンは、900~1000dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【請求項7】
再生PET製の前記ヤーンとポリアミド製の前記ヤーンは、端部で撚り合わされて、300~380t/mの前記ハイブリッドコードを形成することを特徴とする、請求項6に記載の乗物用タイヤ。
【請求項8】
再生PET製の前記ヤーンは、200~360dtexの繊度を有し、ポリアミド製の前記ヤーンは、200~360dtexの繊度を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【請求項9】
前記ポリアミドは、ポリアミド66(PA 66)であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【請求項10】
前記ハイブリッドコード中の前記再生PETの重量分率は、40~60%であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
ハイブリッドコードを形成するための撚り方向は、有利には、ヤーンの撚り方向と反対である。これは、コード、ゆえに、ベルトバンデージの強度の観点における向上した且つより一定の品質の生産の結果として生じる。
また、本発明は以下の項目を含む。
[項目1]
ベルトバンデージを含む乗物用タイヤであって、前記ベルトバンデージは強度部材を含み、前記強度部材は、前記プライ内に互いに平行に配置されたハイブリッドコードを含み、前記ハイブリッドコードはそれぞれ、ポリエチレンテレフタレート(PET)製の少なくとも1本のヤーンとポリアミド製の少なくとも1本のヤーンとを内包する、乗物用タイヤにおいて、前記PETは、再生PET(rPET)であることを特徴とする、
乗物用タイヤ。
[項目2]
再生PET製の前記ヤーンは、200~1670dtex、好ましくは200~1350dtexの繊度を有することを特徴とする、項目1に記載の乗物用タイヤ。
[項目3]
ポリアミド製の前記ヤーンは、200~1400dtex、好ましくは200~1000dtexの繊度を有することを特徴とする、項目1又は2に記載の乗物用タイヤ。
[項目4]
前記ハイブリッドコードは全体として、400~3100dtex、好ましくは400~2900dtex、特に好ましくは400~2200dtexの繊度を有することを特徴とする、項目1~3のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
[項目5]
再生PET製の前記ヤーンとポリアミド製の前記ヤーンは、端部で撚り合わされて、200~700t/m、好ましくは300~600t/mの前記ハイブリッドコードを形成することを特徴とする、項目1~4のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
[項目6]
再生PET製の前記ヤーンは、1000~1200dtexの繊度を有し、ポリアミド製の前記ヤーンは、900~1000dtexの繊度を有することを特徴とする、項目1~5のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
[項目7]
再生PET製の前記ヤーンとポリアミド製の前記ヤーンは、端部で撚り合わされて、300~380t/mの前記ハイブリッドコードを形成することを特徴とする、項目6に記載の乗物用タイヤ。
[項目8]
再生PET製の前記ヤーンは、200~360dtexの繊度を有し、ポリアミド製の前記ヤーンは、200~360dtexの繊度を有することを特徴とする、項目1~5のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
[項目9]
前記ポリアミドは、ポリアミド66(PA 66)であることを特徴とする、項目1~8のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
[項目10]
前記ハイブリッドコード中の前記再生PETの重量分率は、40~60%であることを特徴とする、項目1~9のいずれか一項に記載の乗物用タイヤ。
【外国語明細書】