(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098432
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】シリーズ電源
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
G05F1/56 320Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001959
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】蘭 明文
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430EE04
5H430EE08
5H430EE12
5H430GG02
5H430LB02
(57)【要約】
【課題】本開示は、各トランジスタのうち最も低電位側のトランジスタのショート故障が発生した場合であっても、出力電圧の大きな上昇を抑制できるシリーズ電源を提供する。
【解決手段】シリーズ電源としての非常用電源50は、高圧電源10の正極側と制御回路Drとを接続する第1,第2スイッチ51,52の直列接続体と、各スイッチ51,52のソース電圧が制御回路Drの耐電圧以下となるように、各スイッチ51,52を駆動する駆動回路と、を備えている。駆動回路は、抵抗体61及び第1,第2ツェナーダイオード71,72を備えている。各スイッチ51,52は、高圧電源10の出力電圧以上の耐電圧を有している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源(10)の出力電圧を降圧して給電対象部(Dr)に供給するシリーズ電源(50,55~57)において、
前記直流電源の正極側と前記給電対象部とを接続する複数のトランジスタ(51,52)の直列接続体と、
前記各トランジスタの低電位側端子の電圧が前記給電対象部の耐電圧以下となるように、前記各トランジスタを駆動する駆動回路(61,62,71~73,80,81,91,92,101,102)と、
を備え、
前記各トランジスタは、前記直流電源の出力電圧以上の耐電圧を有している、シリーズ電源。
【請求項2】
前記駆動回路は、
抵抗体(61)と、
前記各トランジスタに対応して個別に設けられたツェナーダイオード(71,72)と、
を備え、
前記各ツェナーダイオードは、カソードが前記トランジスタのゲートに電気的に接続され、
前記各ツェナーダイオードは、隣り合うツェナーダイオードのうち、高電位側のツェナーダイオードのアノードと低電位側のツェナーダイオードのカソードとが電気的に接続されるように直列接続され、
前記各ツェナーダイオードのうち最も低電位側のツェナーダイオード(72)のアノードはグランドに電気的に接続され、
前記抵抗体の第1端は、前記直流電源の正極側に電気的に接続され、
前記抵抗体の第2端は、前記各ツェナーダイオードのうち最も高電位側のツェナーダイオードである最高電位ダイオード(71)のカソードに電気的に接続されている、請求項1に記載のシリーズ電源(50,56)。
【請求項3】
前記各トランジスタのうち最も高電位側のトランジスタである最高電位トランジスタ(51)のゲート、及び前記最高電位ダイオードのカソードを電気的に接続する経路に設けられた整流ダイオード(80)を備え、
前記整流ダイオードのカソードが前記最高電位トランジスタのゲートに電気的に接続されている、請求項2に記載のシリーズ電源(56)。
【請求項4】
前記駆動回路は、前記各トランジスタに対応して個別に設けられた基準電圧生成回路(61,62,71~73)を有し、
前記各基準電圧生成回路は、自身に対応する前記トランジスタの低電位側端子の電圧を、前記給電対象部の耐電圧以下の電圧に制御するための電圧を生成し、生成した電圧を前記トランジスタのゲートに供給する、請求項1に記載のシリーズ電源(55)。
【請求項5】
前記各基準電圧生成回路は、
ツェナーダイオード(71~73)と、
抵抗体(61,62)と、
を有し、
前記各基準電圧生成回路において、前記抵抗体の第1端は、前記直流電源の正極側に電気的に接続され、
前記各基準電圧生成回路において、前記抵抗体の第2端は、前記ツェナーダイオードのカソードに電気的に接続され、
前記各基準電圧生成回路において、前記ツェナーダイオードのアノードは、グランドに電気的に接続されている、請求項4に記載のシリーズ電源。
【請求項6】
前記駆動回路は、
抵抗体(61)と、
前記各トランジスタに対応して個別に設けられた個別電気経路(71,72,91,92,101,102)と、
を有し、
前記抵抗体の第1端は、前記直流電源の正極側に電気的に接続され、
前記各個別電気経路は、前記抵抗体の第2端とグランドとを電気的に接続し、
前記各個別電気経路には、
整流ダイオード(101,102)と、
前記トランジスタの低電位側端子の電圧を、前記給電対象部の耐電圧以下の電圧に制御するための電圧を生成し、生成した電圧を前記トランジスタのゲートに供給するツェナーダイオード(71,72,92)と、
が設けられ、
前記各個別電気経路において、前記整流ダイオードのアノードが前記抵抗体の第2端側を向くように前記整流ダイオードが設けられ、
前記各個別電気経路において、前記整流ダイオードよりも前記グランド側に前記ツェナーダイオードが設けられている、請求項1に記載のシリーズ電源(57)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、シリーズ電源に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、直流電源の出力電圧を降圧して給電対象部に供給するシリーズ電源が知られている。シリーズ電源は、複数のトランジスタの直列接続体と、各トランジスタに対応する抵抗体と、ツェナーダイオードとを備えている。ツェナーダイオードは、各トランジスタのうち最も低電位側のトランジスタに対応して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
各トランジスタのうち最も低電位側のトランジスタのショート故障が発生し得る。この場合、シリーズ電源の出力電圧が大きく上昇し、シリーズ電源の出力電圧が給電対象部の耐電圧を超えてしまう懸念がある。出力電圧が給電対象部の耐電圧を超えてしまうと、給電対象部の従属故障が発生する懸念がある。
【0005】
本開示は、各トランジスタのうち最も低電位側のトランジスタのショート故障が発生した場合であっても、出力電圧の大きな上昇を抑制できるシリーズ電源を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、直流電源の出力電圧を降圧して給電対象部に供給するシリーズ電源において、
前記直流電源の正極側と前記給電対象部とを接続する複数のトランジスタの直列接続体と、
前記各トランジスタの低電位側端子の電圧が前記給電対象部の耐電圧以下となるように、前記各トランジスタを駆動する駆動回路と、
を備え、
前記各トランジスタは、前記直流電源の出力電圧以上の耐電圧を有している。
【0007】
各トランジスタの低電位側端子の電圧が給電対象部の耐電圧以下となるように、各トランジスタが駆動回路により駆動される。このため、各トランジスタのうち最も低電位側のトランジスタである最低電位トランジスタのショート故障が発生した場合であっても、最低電位トランジスタの高電位側に隣接するトランジスタにおいて、低電位側端子の電圧を給電対象部の耐電圧以下にでき、シリーズ電源の出力電圧の大きな上昇を抑制できる。これにより、給電対象部の従属故障の発生を抑制できる。
【0008】
最低電位トランジスタ等、一部のトランジスタのショート故障が発生すると、ショート故障が発生していない残りのトランジスタで直流電源の出力電圧を受け持つ必要がある。つまり、ショート故障が発生していないトランジスタの高電位側端子及び低電位側端子間の電圧が上昇する。
【0009】
ここで、本開示の各トランジスタは、直流電源の出力電圧以上の耐電圧を有している。このため、一部のトランジスタのショート故障が発生した場合であっても、ショート故障が発生していない残りのトランジスタの高電位側端子及び低電位側端子間の電圧が、残りのトランジスタの耐電圧を超えることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態に係る制御システムの全体構成図。
【
図6】第1スイッチにおいて、ドレイン及びソース間のショート故障と、ソース及びゲート間のショート故障とが発生した場合の電流流通経路を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0012】
<第1実施形態>
以下、本開示に係るシリーズ電源を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のシリーズ電源は、インバータ制御システムに適用される。
【0013】
図1に示すように、制御システムは、直流電源としての高圧電源10、インバータ20及び回転電機30を備えている。高圧電源10は、充放電可能な蓄電池であり、例えば、リチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。回転電機30は、インバータ20を介して高圧電源10に接続されている。なお、高圧電源10及びインバータ20の間には、平滑コンデンサ11が設けられている。また、回転電機30は、例えば、永久磁石界磁型又は巻線界磁型の同期機である。
【0014】
インバータ20は、3相分の上,下アームスイッチSWを備えている。各相の上,下アームスイッチSWの接続点には、回転電機30の巻線31の第1端が接続されている。各相の巻線31の第2端は、中性点で接続されている。本実施形態のスイッチSWは、NチャネルMOSFETである。スイッチSWは、ボディダイオードを有している。なお、インバータ20が有するスイッチSWは、MOSFETに代えて、例えばIGBTであってもよい。この場合、IGBTにフリーホイールダイオードが逆並列接続されていればよい。また、巻線31の接続態様としては、星形結線に限らず、Δ結線であってもよい。
【0015】
インバータ20は、制御回路Drを備えている。制御回路Drは、各スイッチSWに対応して個別に設けられている。制御回路Drによって各スイッチSWが駆動される。これにより、インバータ20の各相において、上アームスイッチSWと下アームスイッチSWとが交互にオン状態とされる。
【0016】
制御システムは、低圧電源12、絶縁電源40及び非常用電源50を備えている。低圧電源12は、高圧電源10よりも低い出力電圧(具体的には定格電圧)を有する充放電可能な蓄電池であり、例えば鉛蓄電池である。低圧電源12の出力電圧は、例えば、高圧電源10の出力電圧の1/10以下の電圧である。
【0017】
制御システムには、低圧領域と、低圧領域とは電気的に絶縁された高圧領域とが設けられている。低圧領域には、低圧電源12が設けられている。高圧領域には、高圧電源10、インバータ20、回転電機30及び非常用電源50が設けられている。絶縁電源40は、低圧領域と高圧領域とに跨って設けられている。
【0018】
絶縁電源40は、低圧電源12を電力供給源として生成した電力を各制御回路Drに供給する。
図1には、絶縁電源40から各下アームスイッチSWに対応する制御回路Drに給電される例が示されている。各制御回路Drは、給電されることにより動作可能になっている。
【0019】
各制御回路Drへの給電は、通常、絶縁電源40によって行われる。一方、絶縁電源40による給電が不可能になった場合、各制御回路Drへの給電は、絶縁電源40に代えて非常用電源50によって行われる。例えば、制御システムが車両に搭載される場合、絶縁電源40による給電が不可能になる状況は、車両の衝突時である。絶縁電源40による給電が不可能になる場合であっても、非常用電源50がバックアップ電源として機能し、各制御回路Drの動作を継続できる。
【0020】
非常用電源50は、高圧電源10の出力電圧を降圧し、降圧した直流電圧を各制御回路Drに供給するシリーズ電源である。非常用電源50は、
図2に示すように、第1スイッチ51、第2スイッチ52、抵抗体61、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72を備えている。抵抗体61、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72は、第1,第2スイッチ51,52の駆動回路を構成する。本実施形態において、第1スイッチ51及び第2スイッチ52は、電圧制御型の半導体スイッチング素子であり、具体的にはNチャネルMOSFETである。第1スイッチ51、第2スイッチ52、抵抗体61、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72は、例えば、制御基板に設けられている。
【0021】
第1スイッチ51の高電位側端子であるドレインには、高圧電源10の正極側が接続されている。第1スイッチ51の低電位側端子であるソースには、第2スイッチ52のドレインが接続されている。第2スイッチ52のソースは、各制御回路Drに接続されている。第2スイッチ52のソース電圧が、非常用電源50の出力電圧として各制御回路Drに供給される。
【0022】
本実施形態において、抵抗体61は、複数(例えば十数個)の抵抗体の直列接続体である。抵抗体61は、例えばチップ抵抗体である。抵抗体61が複数設けられているのは、抵抗体61の両端における絶縁距離を確保し、制御基板における沿面放電を防止するためである。
【0023】
複数の抵抗体61の直列接続体の第1端には、第1スイッチ51のドレイン及び高圧電源10の正極側が接続されている。複数の抵抗体61の直列接続体の第2端には、第1ツェナーダイオード71のカソードと、第1スイッチ51の制御端子であるゲートとが接続されている。第1ツェナーダイオード71のアノードには、第2スイッチ52の制御端子であるゲートと、第2ツェナーダイオード72のカソードとが接続されている。第2ツェナーダイオード72のアノードには、高圧領域のグランドが接続されている。なお、高圧電源10の負極側にも、高圧領域のグランドが接続されている。
【0024】
第2スイッチ52のソース電圧が、非常用電源50の出力電圧となる。第2スイッチ52のソース電圧Vs2は、「VD2-Vth2」の目標電圧に制御される。VD2は、第2ツェナーダイオード72のブレークダウン電圧である。Vth2は、第2スイッチ52の閾値電圧である。第2スイッチ52のゲート電圧が閾値電圧Vth2以上となることにより、第2スイッチ52はオン状態となり、第2スイッチ52のゲート電圧が閾値電圧Vth2未満となることにより、第2スイッチ52はオフ状態となる。
【0025】
第1スイッチ51のソース電圧Vs1は、「VD1+VD2-Vth1」の目標電圧に制御される。VD1は、第1ツェナーダイオード71のブレークダウン電圧である。Vth1は、第1スイッチ51の閾値電圧である。
【0026】
本実施形態において、第1スイッチ51のソース電圧Vs1が、「給電対象部」である制御回路Drの耐電圧以下の電圧になるように、各ツェナーダイオード71,72のブレークダウン電圧VD1,VD2及び第1スイッチ51の閾値電圧Vth1が設定されている。また、第2スイッチ52のソース電圧Vs2が制御回路Drの耐電圧以下の電圧になるように、第2ツェナーダイオード72のブレークダウン電圧VD2及び第2スイッチ52の閾値電圧Vth2が設定されている。各ソース電圧Vs1,Vs2が制御回路Drの耐電圧以下の電圧に制御されるのは、第2スイッチ52のショート故障が発生した場合における制御回路Drの従属故障の発生を抑制するためである。
【0027】
第2スイッチ52がショート故障した場合、非常用電源50の出力電圧は、第1スイッチ51のソース電圧Vs1となる。ソース電圧Vs1は、制御回路Drの耐電圧以下の電圧である。このため、第2スイッチ52のショート故障が発生した場合であっても、制御回路Drの従属故障の発生を抑制できる。
【0028】
本実施形態において、第1スイッチ51及び第2スイッチ52は、高圧電源10の出力電圧(具体的には定格電圧)と同じ耐電圧、又は高圧電源10の出力電圧(具体的には定格電圧)よりも高い耐電圧を有している。これは、各スイッチ51,52のいずれかのショート故障が発生した場合において、ショート故障が発生していない残りのスイッチが、高圧電源10の出力電圧によって故障しないようにするためである。
【0029】
これに対し、以下に説明する比較例1,2の場合では、ショート故障が発生した場合に非常用電源の信頼性が低下してしまう。
【0030】
図3には、比較例1の非常用電源を示す。比較例1の非常用電源は、スイッチ151、抵抗体161及びツェナーダイオード171を備えている。なお、
図3では、便宜上、抵抗体161を1つの抵抗体の回路記号で示している。
【0031】
比較例1において、スイッチ151のソース電圧Vsは、「Vs≒VD-Vth」となるように制御される。VDは、ツェナーダイオード171のブレークダウン電圧である。Vthは、スイッチ151の閾値電圧である。
【0032】
比較例1では、スイッチ151のショート故障が発生した場合、高圧電源10の出力電圧が制御回路Drに直接印可される。その結果、制御回路Drの従属故障が発生する。
【0033】
図4には、比較例2の非常用電源を示す。比較例2の非常用電源は、第1スイッチ151、第2スイッチ152、第1抵抗体161、第2抵抗体162及びツェナーダイオード171を備えている。なお、
図4では、便宜上、各抵抗体161,162を1つの抵抗体の回路記号で示している。
【0034】
第1スイッチ151のソース電圧Vs1は、「Vs1≒VD+R2/(R1+R2)×VH」となるように制御される。R1は第1抵抗体161の抵抗値であり、R2は第2抵抗体162の抵抗値である。VHは高圧電源10の出力電圧である。
【0035】
比較例2において、第1スイッチ151のショート故障が発生した場合、第2スイッチ152のソース電圧Vs2が「VD-Vth2」に制御される。なお、Vth2は第2スイッチ152の閾値電圧である。ソース電圧Vs2が制御回路Drの耐電圧以下であるため、制御回路Drの従属故障は発生しない。
【0036】
一方、第2スイッチ152のショート故障が発生した場合、第1スイッチ151のソース電圧Vs1が高圧電源10の1/2程度の電圧となる。この場合、ソース電圧Vs1が制御回路Drの耐電圧を超えてしまい、制御回路Drの従属故障が発生する。
【0037】
以上説明したように、本実施形態では、各スイッチ51,52のソース電圧が制御回路Drの耐電圧以下となるように、各スイッチ51,52が駆動される。このため、各スイッチ51,52のうち最も低電位側の第2スイッチ52(「最低電位トランジスタ」に相当)のショート故障が発生した場合であっても、第2スイッチ52の高電位側に隣接する第1スイッチ51において、ソース電圧を制御回路Drの耐電圧以下にでき、非常用電源50の出力電圧の大きな上昇を抑制できる。これにより、制御回路Drの従属故障の発生を抑制できる。
【0038】
また、各スイッチ51,52は、高圧電源10の出力電圧以上の耐電圧を有している。このため、各スイッチ51,52のうち例えば第2スイッチ52のショート故障が発生した場合であっても、ショート故障が発生していない残りの第1スイッチ51のドレイン及びソース間電圧が、第1スイッチ51のドレイン及びソース間電圧の耐電圧を超えることを防止できる。
【0039】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図5に示すように、本実施形態の非常用電源55では、第1スイッチ51及び第2スイッチ52それぞれのゲートが個別の基準電圧生成回路に接続されている。
【0040】
非常用電源55は、第1スイッチ51のゲートに接続される基準電圧生成回路として、第1抵抗体61、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72を備えている。また、非常用電源55は、第2スイッチ52のゲートに接続される基準電圧生成回路として、第2抵抗体62、第3ツェナーダイオード73を備えている。本実施形態では、各ツェナーダイオード71~73のブレークダウン電圧が同じである。第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72のブレークダウン電圧の合計値は、第3ツェナーダイオード73のブレークダウン電圧よりも高い。
【0041】
第1ツェナーダイオード71のカソードには、第1スイッチ51のゲートが接続されている。第1ツェナーダイオード71のアノードには、第2ツェナーダイオード72のカソードが接続されている。第2ツェナーダイオード72のアノードには、高圧領域のグランドが接続されている。
【0042】
第3ツェナーダイオード73のカソードには、第2スイッチ52のゲートが接続されている。第3ツェナーダイオード73のアノードには、高圧領域のグランドが接続されている。
【0043】
本実施形態において、第1抵抗体61及び第2抵抗体62は、第1実施形態と同様に、複数(例えば十数個)の抵抗体の直列接続体である。各抵抗体は、例えばチップ抵抗体である。
【0044】
複数の第1,第2抵抗体61,62の直列接続体の第1端には、第1スイッチ51のドレイン及び高圧電源10の正極側が接続されている。複数の第1抵抗体61の直列接続体の第2端には、第1ツェナーダイオード71のカソードと、第1スイッチ51のゲートとが接続されている。複数の第2抵抗体62の直列接続体の第2端には、第3ツェナーダイオード73のカソードと、第2スイッチ52のゲートとが接続されている。
【0045】
第2スイッチ52のソース電圧Vs2は、「VD3-Vth2」の目標電圧に制御される。VD3は、第3ツェナーダイオード73のブレークダウン電圧である。各ツェナーダイオード71~73のブレークダウン電圧は、例えば同じ値に設定されている。
【0046】
本実施形態の構成は、第1スイッチ51において、ドレイン及びソース間のショート故障の発生に伴ってゲート及びソース間もショート故障した場合における従属故障の発生を抑制するための構成である。以下、
図6を用いて説明する。
【0047】
図6は、第1実施形態の構成である。
図6の構成において、第1スイッチ51のドレイン及びソース間のショート故障が発生すると、第1スイッチ51のゲート及びソース間に高圧電源10の高電圧が印加され、ゲート及びソース間のショート故障が発生し得る。この場合、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72のショート故障が発生し得る。第1ツェナーダイオード71のショート故障が発生すると、高圧電源10から第1スイッチ51、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72を介してグランドへと大電流が流れる。その後、第2ツェナーダイオード72の故障モードがオープン故障に移行すると、第2スイッチ52のソース電圧Vs2が大きく上昇してしまい、ソース電圧Vs2が制御回路Drの耐電圧を超え、制御回路Drの従属故障が発生する。
【0048】
これに対し、
図5に示す本実施形態によれば、例えば第1スイッチ51のドレイン及びソース間のショート故障が発生し、その後ゲート及びソース間のショート故障が発生し、第1ツェナーダイオード71又は第2ツェナーダイオード72のオープン故障が発生したとしても、第2スイッチ52の動作に影響を与えない。このため、第2スイッチ52のソース電圧Vs2を制御回路Drの耐電圧以下にできる。なお、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72の双方のショート故障が発生した場合、非常用電源55の出力電圧は0になる。
【0049】
<第2実施形態の変形例>
・第1スイッチ51のゲートに接続されるツェナーダイオードは、2つのツェナーダイオードに限らず、例えば1つのツェナーダイオードであってもよい。この場合、第1スイッチ51のゲートに接続されるツェナーダイオードのブレークダウン電圧は、第3ツェナーダイオード73のブレークダウン電圧よりも高い値に設定されていればよい。
【0050】
・各スイッチ51,52のゲートに接続される基準電圧生成回路としては、
図5に示すものに限らず、例えば、コンパレータ、バイポーラトランジスタ及び抵抗体を有するシャントレギュレータであってもよい。この場合、シャントレギュレータが各スイッチ51,52に対応して個別に設けられ、シャントレギュレータの出力部がスイッチのゲートに接続されればよい。
【0051】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図7に示すように、本実施形態の非常用電源56は、整流ダイオード80及び放電抵抗体81を備えている。整流ダイオード80は、高圧電源10の出力電圧(具体的には定格電圧)と同じ耐電圧、又は高圧電源10の出力電圧(具体的には定格電圧)よりも高い耐電圧を有している。整流ダイオード80は、第1スイッチ51(「最高電位トランジスタ」に相当)のゲートと、第1ツェナーダイオード71(「最高電位ダイオード」に相当)のカソードとを接続する電気経路に設けられている。整流ダイオード80のカソードには、第1スイッチ51のゲートが接続されている。
【0052】
第1スイッチ51のゲートには、放電抵抗体81を介して第1スイッチ51のソースが接続されている。放電抵抗体81は、第1スイッチ51の正常時において、第1スイッチ51のゲート電荷の放電経路を確保するための部品である。
【0053】
本実施形態によれば、第1スイッチ51のドレイン及びソース間のショート故障の発生に伴いゲート及びソース間のショート故障が発生したとしても、整流ダイオード80により大電流の流通を阻止できる。このため、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72に大電流が流れることを防止し、各ツェナーダイオード71,72を保護できる。その結果、第2スイッチ52の動作を継続でき、第2スイッチ52のソース電圧Vs2が制御回路Drの耐電圧を超える事態の発生を抑制できる。
【0054】
また、本実施形態によれば、第2実施形態よりも抵抗体61の数及び抵抗体61の制御基板における実装面積を削減できる。
【0055】
<第3実施形態の変形例>
図7に示す構成において、第1スイッチ51に対応する整流ダイオード80及び放電抵抗体81に加えて、第2スイッチ52に対応する整流ダイオード80及び放電抵抗体81が更に備えられていてもよい。
【0056】
<第4実施形態>
以下、第4実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。
図8に示すように、本実施形態の非常用電源57は、第3ツェナーダイオード91、第4ツェナーダイオード92、第1整流ダイオード101及び第2整流ダイオード102を備えている。各整流ダイオード101,102は、高圧電源10の出力電圧(具体的には定格電圧)と同じ耐電圧、又は高圧電源10の出力電圧(具体的には定格電圧)よりも高い耐電圧を有している。
【0057】
第1スイッチ51のゲートには、第1整流ダイオード101のアノードが接続されている。第1整流ダイオード101のカソードには、複数の抵抗体61の直列接続体の第2端と、第2整流ダイオード102のアノードとが接続されている。第2整流ダイオード102のカソードには、第3ツェナーダイオード91のカソードが接続されている。第3ツェナーダイオード91のカソードには、第2スイッチ52のゲートと、第4ツェナーダイオード92のカソードとが接続されている。第4ツェナーダイオード92のアノードには、高圧領域のグランドが接続されている。
【0058】
本実施形態において、抵抗体61の直列接続体の第2端から第1整流ダイオード101を介してグランドに至るまでの電気経路が、第1スイッチ51に対応する「第1個別電気経路」に相当する。また、抵抗体61の直列接続体の第2端から第2整流ダイオード102を介してグランドに至るまでの電気経路が、第2スイッチ52に対応する「第2個別電気経路」に相当する。第1個別電気経路の抵抗値と、第2個別電気経路の抵抗値とが同じ値になるように非常用電源57が構成されている。これは、高圧電源10から抵抗体61を介して第1,第2個別電気経路の双方に電流が流れるようにし、各スイッチ51,52のソース電圧を目標電圧に制御できるようにするためである。本実施形態では、第1個別電気経路の抵抗値と、第2個別電気経路の抵抗値とが同じ値になるように、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72のブレークダウン電圧の合計値と、第3ツェナーダイオード91及び第4ツェナーダイオード92の合計値とが同じ値に設定され、第1整流ダイオード101の順方向電圧降下量と、第2整流ダイオード102の順方向電圧降下量とが同じ値に設定されている。本実施形態において、各ツェナーダイオード71,72,91,92のブレークダウン電圧は同じである。
【0059】
本実施形態の構成は、第1スイッチ51又は第2スイッチ52において、ドレイン及びソース間のショート故障の発生に伴ってゲート及びソース間もショート故障した場合における従属故障の発生を抑制するための構成である。
【0060】
第1スイッチ51のドレイン及びソース間のショート故障が発生し、その後ゲート及びソース間のショート故障が発生し、第1ツェナーダイオード71又は第2ツェナーダイオード72のオープン故障が発生したとしても、大電流は第1整流ダイオード101によって阻止される。このため、第3ツェナーダイオード91及び第4ツェナーダイオード92に大電流が流れることを防止でき、第2スイッチ52の動作に影響を与えない。その結果、第2スイッチ52のソース電圧Vs2を制御回路Drの耐電圧以下にできる。
【0061】
一方、第2スイッチ52のドレイン及びソース間のショート故障が発生し、その後ゲート及びソース間のショート故障が発生し、第3ツェナーダイオード93のオープン故障が発生したとしても、大電流は第2整流ダイオード102によって阻止される。このため、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72に大電流が流れることを防止でき、第1スイッチ51の動作に影響を与えない。その結果、第1スイッチ51のソース電圧Vs1を制御回路Drの耐電圧以下にできる。
【0062】
なお、第1ツェナーダイオード71及び第2ツェナーダイオード72の双方のショート故障が発生した場合、又は第4ツェナーダイオード92のショート故障が発生した場合、非常用電源57の出力電圧は0になる。
【0063】
以上説明した本実施形態によれば、抵抗体の数及び抵抗体の制御基板における実装面積を削減しつつ、各スイッチ51,52のいずれかのショート故障の発生に伴う非常用電源57の信頼性の低下を抑制できる。
【0064】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0065】
・第4実施形態において、第3ツェナーダイオード91が設けられていなくてもよい。この場合、第1整流ダイオード101を含む第1個別電気経路の抵抗値と、第2整流ダイオード102を含む第2個別電気経路の抵抗値とが同じになるように、例えば、第2整流ダイオード102の順方向電圧降下量が第1整流ダイオード101の順方向電圧降下量よりも大きく設定されていればよい。
【0066】
・非常用電源を構成するスイッチとしては、NチャネルMOSFETに限らず、例えば、高電位側端子であるコレクタ、低電位側端子であるエミッタ及び制御端子であるベースを有するNPN型のバイポーラトランジスタであってもよい。
【0067】
・非常用電源を構成するスイッチの直列接続数としては、2つに限らず、3つ以上であってもよい。この場合、各スイッチのソース電圧が、高電位側のスイッチから低電位側のスイッチになるにつれて低くなるように、非常用電源の駆動回路が構成されていればよい。
【0068】
・本開示のシリーズ電源は、非常用電源として具体化されるものに限らず、例えば、一次側が高圧電源であるフライバック電源の起動回路として具体化されてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10…高圧電源、50…非常用電源、51…第1スイッチ、52…第2スイッチ、61…抵抗体、71…第1ツェナーダイオード、72…第2ツェナーダイオード、Dr…制御回路。