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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098437
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】画像解像度確認方法及び検査装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/42 20240101AFI20240716BHJP
   G01T 1/00 20060101ALI20240716BHJP
   G01T 1/20 20060101ALI20240716BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20240716BHJP
   H04N 1/04 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A61B6/00 300T
G01T1/00 B
G01T1/20 E
G01T1/20 G
G01T1/20 Z
G06T1/00 400B
H04N1/04 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001969
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000141598
【氏名又は名称】株式会社吉田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】関根 庸隆
(72)【発明者】
【氏名】斎木 淑子
(72)【発明者】
【氏名】冨樫 由里
【テーマコード(参考)】
2G188
4C093
5B047
5C072
【Fターム(参考)】
2G188AA03
2G188AA25
2G188BB02
2G188CC21
2G188CC22
2G188DD04
2G188EE29
2G188EE36
2G188GG09
4C093CA02
4C093CA36
4C093EB05
4C093FA22
4C093FB11
4C093FB12
4C093FC11
4C093GA05
5B047AA17
5B047AB02
5B047BA01
5B047BB02
5B047BC11
5B047BC15
5B047BC18
5B047CA07
5B047CB10
5B047DB01
5B047DC09
5C072AA01
5C072BA04
5C072CA06
5C072CA11
5C072DA02
5C072DA04
5C072DA23
5C072EA04
5C072HA02
5C072HA13
5C072NA02
5C072NA04
5C072UA11
5C072UA13
5C072UA20
5C072VA01
(57)【要約】
【課題】エッジ法において容易に画像の解像度を確認することができる解像度確認方法を提供すること。
【解決手段】
画像解像度確認方法は、イメージングプレートIPに、一様にX線XRを照射するX線照射ステップS1と、イメージングプレートIPを搬送させながら所定方向におけるある一定幅以上の範囲の露光処理を行うことで、イメージングプレートIP上にX線XRによって蓄積されたエネルギーをイメージングプレートIPから放出させ、イメージングプレートIP上にエッジEを形成するエッジ形成ステップS2と、イメージングプレートIPの画像形成面の全体に対し光学スキャン処理を行ってX線画像内のエッジ像を取得するエッジ像取得ステップS3と、エッジ像から線広がり関数LSFを算出する線広がり関数算出ステップS4と、変調伝達関数MTFを算出する変調伝達関数算出ステップS5と、イメージングプレートスキャナの解像度を算出する解像度算出ステップS6と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージングプレートの画像形成面の全体に対して、一様にX線を照射するX線照射ステップと、
前記イメージングプレートを搬送させながら所定方向におけるある一定幅以上の範囲の露光処理を行うことで、前記イメージングプレート上にX線によって蓄積されたエネルギーを当該イメージングプレートから放出させ、前記イメージングプレート上に蓄積されたエネルギーの異なる部位であるエッジを形成するエッジ形成ステップと、
前記イメージングプレートの画像形成面の全体に対し光学スキャン処理を行ってX線画像内の前記エッジを含むエッジ像を取得するエッジ像取得ステップと、
前記エッジ像に基づいて、変調伝達関数を算出する変調伝達関数算出ステップと、
当該変調伝達関数に基づいて、イメージングプレートスキャナの解像度を算出する解像度算出ステップと、
を含む、
画像解像度確認方法。
【請求項2】
前記変調伝達関数算出ステップは、
前記エッジ像の、画素値のグラフを作成し、当該画素値のグラフの横軸を1/2に補正したグラフに基づいて、線広がり関数を算出すること、
及び、
当該線広がり関数に基づいて、変調伝達関数を算出すること、
を含む、
請求項1に記載の画像解像度確認方法。
【請求項3】
前記解像度算出ステップは、モニタに前記イメージングプレートスキャナの解像度を表示する処理を含む、
請求項1または請求項2に記載の画像解像度確認方法。
【請求項4】
イメージングプレートに記録されているX線画像を読み取って、変調伝達関数を算出し、当該変調伝達関数から解像度を算出することで、画像解像能力を自己診断する検査装置であって、
X線が一様に照射された前記イメージングプレートの画像形成面にX線画像を形成するためのレーザ光の照射と、前記イメージングプレートに形成されたX線画像を読み取るためのレーザ光の照射と、を行う光走査系と、
前記イメージングプレートを所定方向に搬送する搬送系と、
前記イメージングプレートに形成されたX線画像を光学的に読み取って、前記X線画像を検出するための画像処理系と、
前記光走査系、前記搬送系及び前記画像処理系を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記搬送系によって前記X線が一様に照射された前記イメージングプレートを搬送しながら、
前記光走査系によって所定方向におけるある一定幅以上の範囲の露光処理を行うことで、前記イメージングプレート上にX線によって蓄積されたエネルギーを当該イメージングプレートから放出させ、前記イメージングプレート上にエネルギーの異なる部位であるエッジを形成し、
前記搬送系によって再度前記イメージングプレートを搬送しながら、前記光走査系及び前記画像処理系によって前記イメージングプレートの画像形成面の全体に対し光学スキャン処理を行って前記X線画像内の前記エッジを含むエッジ像を取得し、
前記画像処理系によって前記エッジ像に基づいて前記変調伝達関数を算出すると共に、
当該変調伝達関数に基づいてイメージングプレートスキャナの解像度を算出する、
検査装置。
【請求項5】
前記光走査系の走査開始を検出する走査開始検出センサと、
前記光走査系の走査終了を検出する走査終了検出センサと、を備え、
前記制御装置は、前記イメージングプレートを所定方向に一定速度で搬送しながら、レーザ光像を所定距離だけ離して複数形成したときに、
前記走査開始検出センサと前記走査終了検出センサとの間でのレーザ光の検出間隔を検知し、
前記レーザ光の検出間隔にブレが生じたときは、前記光走査系に異常があると判断し、
前記レーザ光像間の距離を検出し、距離にムラがあるときは、前記搬送系に異常があると判断する
請求項4に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像解像度確認方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、X線を用いて記録されたX線画像の解像度(Resolution)を確認するために、金属製プレートに形成したスリットを撮影して得られた線広がり関数(LSF:Line Spread Function、以下適宜「LSF」という。)をフーリエ変換して変調伝達関数(MTF:Modulation Transfer Function、以下適宜「MTF」という。)を測定するスリット法や、金属製プレートのエッジを撮影して得られたエッジ像を微分しLSFを求め、これからMTFを測定するエッジ法という手法が用いられている。スリット法では、一般に、スリット幅が10μm程度のタングステンやアルミニウム等の金属製のスリット(治具)を用いてイメージングプレート上にスリット状のX線画像を形成し、スリット像からX線画像がどの程度鮮鋭であるかを判断する。スリット状のX線画像は、X線の照射範囲に金属製プレートに形成したスリットを配置し、X線を照射することで形成される。エッジ法では、一般に、タングステンやアルミニウム等の金属製のプレート(治具)を用いてイメージングプレート上にX線画像を形成し、そのX線画像に含まれるエッジ(金属製プレートの外形に対応する画像)の解像度を確認することで、X線画像がどの程度鮮鋭であるかを判断する(例えば、特許文献1参照)。エッジが含まれるX線画像は、X線の照射範囲の一部に金属製のプレートを配置し、X線を照射することで形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平06-130519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、X線画像の解像度を求める場合には、金属製プレートを用いなければならないので、手間がかかるという問題点があった。
【0005】
本発明は、前記問題点に鑑み、エッジ法において容易にX線画像の解像度を確認することができる解像度確認方法及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明に係る画像解像度確認方法は、イメージングプレートの画像形成面の全体に対して、一様にX線を照射するX線照射ステップと、前記イメージングプレートを搬送させながら所定方向におけるある一定幅以上の範囲の露光処理を行うことで、前記イメージングプレート上にX線によって蓄積されたエネルギーを当該イメージングプレートから放出させ、前記イメージングプレート上に蓄積されたエネルギーの異なる部位であるエッジを形成するエッジ形成ステップと、前記イメージングプレートの画像形成面の全体に対し光学スキャン処理を行ってX線画像内の前記エッジを含むエッジ像を取得するエッジ像取得ステップと、前記エッジ像に基づいて、変調伝達関数を算出する変調伝達関数算出ステップと、当該変調伝達関数に基づいて、イメージングプレートスキャナの解像度を算出する解像度算出ステップと、を含む。
【0007】
また、本発明に係る検査装置は、イメージングプレートに記録されているX線画像を読み取って、変調伝達関数を算出し、当該変調伝達関数から解像度を算出することで、画像解像能力を自己診断する検査装置であって、X線が一様に照射された前記イメージングプレートの画像形成面にX線画像を形成するためのレーザ光の照射と、前記イメージングプレートに形成されたX線画像を読み取るためのレーザ光の照射と、を行う光走査系と、前記イメージングプレートを所定方向に搬送する搬送系と、前記イメージングプレートに形成されたX線画像を光学的に読み取って、前記X線画像を検出するための画像処理系と、前記光走査系、前記搬送系及び前記画像処理系を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記搬送系によって前記X線が一様に照射された前記イメージングプレートを搬送しながら、前記光走査系によって所定方向におけるある一定幅以上の範囲の露光処理を行うことで、前記イメージングプレート上にX線によって蓄積されたエネルギーを当該イメージングプレートから放出させ、前記イメージングプレート上にエネルギーの異なる部位であるエッジを形成し、前記搬送系によって再度前記イメージングプレートを搬送しながら、前記光走査系及び前記画像処理系によって前記イメージングプレートの画像形成面の全体に対し光学スキャン処理を行って前記X線画像内の前記エッジを含むエッジ像を取得し、前記画像処理系によって前記エッジ像に基づいて前記変調伝達関数を算出すると共に、当該変調伝達関数に基づいてイメージングプレートスキャナの解像度を算出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、エッジ法において容易にX線画像の解像度を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る検査装置の概略図(一部ブロック図)である。
図2】本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法を示すフローチャートである。
図3】イメージングプレートの画像形成面の全体にX線を照射したときの状態を示す説明図である。
図4】イメージングプレートを搬送しながらイメージングプレートにレーザ光の照射を行って、帯状のレーザ光像を形成するときの状態を示す説明図である。
図5】本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法を示す説明図であり、(a)は、レーザ光像が形成されたイメージングプレートの説明図、(b)は、イメージングプレートのレーザ光像に合わせて、画像形成面に理想的な像を形成した場合のエネルギーレベルを示す波形の説明図である。
図6】本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法を示す説明図であり、(a)レーザ光強度のガウス分布を示すグラフ、(b)はレーザ光によって形成されたレーザ光像を示すグラフ、(c)は理想的なエッジ像の波形を示すグラフである。
図7】本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法を示す図であり、(a)は帯状のレーザ光像が形成されたイメージングプレートの説明図、(b)は画像スキャン用のレーザ光強度のガウス分布を示すグラフ、(c)はレーザ光によって形成されたエッジ像を示すグラフ、(d)はレーザ光によって形成されたエッジ像のエッジ検出位置を示すグラフ、(e)は金属製のプレートを使用した場合の理想的なエッジ像のエッジ検出位置を示すグラフ、(f)はエッジを示す関数の式である。
図8】本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法と、従来の方法との比較図であり、(a)-1は従来の方法で金属製プレートを投影したX線エッジ像の説明図と(a)-2は金属製プレートを用いた場合のエッジ付近の画素値(グレイレベル)を横軸10ピクセル単位で示したグラフ、(b)-1は本発明の実施形態のレーザ光の走査で形成したエッジ像の説明図と(b)-2はレーザ光の走査で形成したエッジ像のエッジ付近の画素値(グレイレベル)を横軸20ピクセル単位で示したグラフである。
図9】本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法と、従来の方法との比較グラフで、従来の金属製プレートを用いた場合のエッジ像に基づいて得られたMTFと、本発明の実施形態のレーザ光の走査で形成したエッジ像に基づいて得られたMTFを示す。
図10】本発明の実施形態に係る検査装置の変形例の概略図(一部ブロック図)である。
図11】イメージングプレートに帯状のレーザ光像を複数形成したときの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
まず、図1図9を参照して、本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法及び検査装置1について説明する。
なお、本実施形態では、図1に示す検査装置1において、イメージングプレートIPとラインセンサ31とが対向する方向を上下方向とし、イメージングプレートIP側を下方向、ラインセンサ31側を上方向として説明する。検査装置1を説明する前に、イメージングプレートIP、X線画像の解像度の測定の必要性、X線画像の解像度の具合(程度)を把握する方法、光輝尽性発光体の作動原理について説明する。
【0011】
≪イメージングプレート≫
図1に示すイメージングプレートIPは、X線検査装置等でレントゲン撮影された画像データが記録される記録媒体である。イメージングプレートIPは、例えば、ベース材に、X線XRの線量に応じて光を蓄えることが可能な輝尽性蛍光体(蓄積性蛍光体)を塗布するなどして形成され、その厚さ方向(上下方向)から見て、略矩形状のフィルムから成る。
輝尽性蛍光体は、基底状態にあるときにX線XRが照射されると、X線XRを吸収し、1次励起状態となり、その後、X線XRよりも波長の長い可視光(例えば、レーザ光LB。以下、レーザ光LBを例に挙げて説明する。)が照射されると、2次励起状態となって発光(1次励起に応じて発光)し、基底状態に戻るという性質を有する。このため、イメージングプレートIPは、繰り返し利用することが可能である。
【0012】
このようなイメージングプレートIPは、コンピュータX線撮影(CR:Computed Radiography)システムに用いられる。コンピュータX線撮影システムでは、1次励起状態の2次元情報がデジタル画像として読み取られ、蓄積されて出力される。
【0013】
<X線画像の解像度の測定の必要性について>
一般に、医療機関において、医療機器は、機器の機能、機器の品質、有効性及び安全性を保ち、故障、事故等を未然に防ぐため、保守点検(日常点検、定期点検)を行うことが義務付けられている。コンピュータX線撮影システムにおいても、正常に検査が行われるようにするために、定期点検の一項目としてX線画像の解像度を測定して、機器が想定通りに作動しているか否かを確認する必要がある。
【0014】
<X線画像の解像度の具合を把握する方法>
X線画像の解像度の具合を把握する方法として、前記したように、エッジ法という手法がある。エッジ法では、予め一様にX線XRが照射されたイメージングプレートIPの画像形成面内に、露光された部位(形成領域)と、露光されていない部位(非形成領域)との双方を形成する。すなわち、エッジ法では、形成領域と非形成領域との双方を含むX線画像を形成する。
【0015】
そして、このようなX線画像が形成されたイメージングプレートIPの画像形成面をスキャンして得られたスキャン画像の、形成領域と非形成領域との境界部分であるエッジ像から求めたMTFに基づいて解像度を算出する。
【0016】
このようにして、形成領域と非形成領域との境界付近での解像度を把握することで、X線画像(X線画像全体)の解像度を把握することができる。
【0017】
<光輝尽性発光体の作動原理>
光輝尽性発光体は、自身に照射されたX線XRのエネルギーを一旦蓄積し、X線XRの吸収量に応じて発光する。X線XRの照射を停止すると光輝尽生発光体の発光も止むが、時間経過後であっても特定の波長のレーザ光LBを当てると励起し、X線XRの照射量に応じた発光をする。
X線撮影は、光輝尽性発光体を塗布した樹脂薄板(イメージングプレートIP)を用いて行う。レーザ光LBをイメージングプレートIPに照射し、イメージングプレートIPから放出された光を光電子増倍管またはラインセンサ18で検出することでX線画像を得る。この得られたX線画像の情報をアナログ信号からデジタル信号に変換してパーソナルコンピュータ等に出力すると、モニタ34上でX線画像を見ることができる。
このように、光輝尽性蛍光板上の蓄像であるX線画像は、レーザ光LBによる走査で取り出し、コンピュータ処理を施し、デジタル情報として出力することができる。
【0018】
≪検査装置≫
図1に示す検査装置1は、イメージングプレートIPに記録されているX線画像を読み取って、変調伝達関数(MTF)を算出する装置である。検査装置1は、イメージングプレートIP上にエッジ像を形成する機能と、形成された像をイメージングプレートIP上から読み取るイメージングプレートスキャナの機能との双方を備えている。
ここで、エッジ像とは、対象物と対象物以外(背景)との境界線(輪郭)を含んだ前記対象物を表す画像をいう。
【0019】
さらに詳述すると、検査装置1は、X線XRが照射されたイメージングプレートIPを所定方向(上下方向と直交する搬送方向である副走査方向:矢印b方向)に搬送しながらその画像形成面に対し、画像スキャン用のレーザ光LBを照射(露光)することによってエッジ像(後述のレーザ光像LBI)を形成し、さらに、このイメージングプレートIPを初期位置に戻して再度搬送しながらレーザ光LBによりエッジ像をスキャンし、このエッジ像が形成されている形成領域と、エッジ像が形成されていない非形成領域と、の境界部分付近でのエッジ像からMTFを算出する装置である。
検査装置1は、光走査系10と、搬送系20と、画像処理系30と、制御装置40と、を主に備えている。
【0020】
≪光走査系≫
図1に示すように、光走査系10は、イメージングプレートIP上に画像(エッジ像)を形成するためのレーザ光LBを照射する機能と、形成された画像(エッジ像)をイメージングプレートIP上から読み取るためのレーザ光LBを照射する機能と、を有する装置である。光走査系10は、半導体レーザ11と、ポリゴンミラー12と、モータ12Aと、走査レンズ13と、ミラー14と、を有して構成されている。
【0021】
半導体レーザ11は、レーザ光LBを出射するレーザ光源である。
ポリゴンミラー12は、半導体レーザ11から出射されたレーザ光LBを、イメージングプレートIPに対して、上下方向と副走査方向との双方と直交する主走査方向(矢印a方向)に走査(主走査)するための回転多面鏡である。
モータ12Aは、ポリゴンミラー12を回転させる回転駆動力源である。
走査レンズ13は、ポリゴンミラー12により反射されたレーザ光LBの焦点を所定の位置に合わせるためのレンズである。
ミラー14は、走査レンズ13を通過したレーザ光LBをイメージングプレートIP上へと反射させるための反射鏡である。このミラー14は、長尺の板状に形成されており、その長手方向が主走査方向(矢印a方向)に沿うように設置されている。
【0022】
≪搬送系≫
搬送系20は、イメージングプレートIPを所定方向に搬送する搬送装置である。搬送系20は、イメージングプレートIPを搬送方向(副走査方向:矢印b方向)に搬送するための複数の搬送ローラ21と、これらの複数の搬送ローラ21を回転させる回転駆動力源としてのモータ22と、を有して構成されている。
【0023】
≪画像処理系≫
画像処理系30は、イメージングプレートIP上に形成されたX線画像(エッジ像を含んでいるX線画像)を光学的に読み取る、すなわち、イメージングプレートIP上に形成されたX線画像を検出するための装置である。画像処理系30は、ラインセンサ31と、A/D変換器32と、画像処理装置33と、モニタ34と、を有して構成されている。
【0024】
ラインセンサ31は、長尺の略直方体状に形成されており、その長手方向が主走査方向に平行とされて配置されている。ラインセンサ31は、受光面が下方に向くように設けられ、なおかつ、受光面に入射した光を電気信号に変換する複数の光検出素子が主走査方向に沿って配列されたイメージセンサである。ラインセンサ31は、光走査系10によってレーザ光LBが主走査方向に走査されるとともに、搬送系20によってイメージングプレートIPが副走査方向に動かされている状態で、イメージングプレートIPの画像形成面からの光を検出することで、二次元的な画像(イメージングプレートIP上のX線画像)を得ることができる。
A/D変換器32は、自身に入力した画像信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換して出力する装置である。
【0025】
図1に示すように、画像処理装置33は、例えば、画像処理用のソフトウェアや、MTFを計算する演算処理ソフトウェアを搭載した装置である。画像処理装置33は、X線画像に対する画像処理だけでなく、MTFの取得(演算)も行う。画像処理装置33は、MTFを取得(演算)すると、その空間周波数[cycles/mm]の値をさらに求め、モニタ34に出力して表示させる。
【0026】
モニタ34は、画像処理装置33から出力された画像データに対応する画像や、前記空間周波数の値や、画像に関する情報等を表示部(例えば、液晶画面の表示領域)に表示する。ユーザは、この表示された値からX線画像のぼけ具合(解像度の具合)を判断する。
なお、本実施形態では、A/D変換器32、画像処理装置33及びモニタ34は、検査装置1内に設けられているが、これに限らず、A/D変換器32、画像処理装置33及びモニタ34のうち、少なくとも1つが例えば外部のパーソナルコンピュータ等に設けられていてもよい。
【0027】
≪制御装置≫
図1に示すように、制御装置40は、検査装置1を構成する光走査系10、搬送系20及び画像処理系30の様々な制御を行うための装置である。制御装置40は、例えば、光走査系10の半導体レーザ11及びモータ12A、搬送系20のモータ22、画像処理系30のラインセンサ31及び画像処理装置33等の動作を制御する。
【0028】
制御装置40は、本実施形態では、搬送系20によってX線XRが一様に照射されたイメージングプレートIPを搬送しながら、光走査系10によってある一定幅(副走査方向における幅)以上の範囲の露光処理を行うことで、イメージングプレートIP上にX線XRによって蓄積されたエネルギー(レーザ光LBが照射された箇所のエネルギー)をイメージングプレートIPから放出させ、これにより、イメージングプレートIP上にエネルギーの異なる部位(互いに異なるエネルギーどうしの境界部分)であるエッジEを形成する。
また、制御装置40は、搬送系20によって再度イメージングプレートIPを搬送しながら、光走査系10及び画像処理系30によってイメージングプレートIPの画像形成面の全体に対し光学スキャン(レーザスキャン)処理を行ってX線画像内のエッジEを含むエッジ像を取得し、画像処理系30によってエッジ像に基づいて変調伝達関数MTFを算出すると共に、当該変調伝達関数MTFに基づいてイメージングプレートスキャナ(検査装置1)の解像度を算出する。
【0029】
≪レーザ光LBによりエッジ像を形成してMTFの空間周波数を表示するまでの手順≫
次に、図2を主に図1図5を参照して、イメージングプレートIP上にX線XRを照射してから、レーザ光LBによりエッジ像を形成し、MTFの空間周波数をモニタ34上に表示するまでの手順を説明する。図3は、イメージングプレートIPの画像形成面の全体にX線XRを照射したときの状態を示す説明図である。図4は、イメージングプレートIPを搬送しながらレーザ光LBの照射を行って、帯状のレーザ光像LBIを形成するときの状態を示す説明図である。図5は、本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法を示す説明図であり、(a)は、レーザ光像LBIが形成されたイメージングプレートIPの説明図、(b)は、イメージングプレートIPのレーザ光像LBIに合わせて、画像形成面に理想的な像を形成した場合のエネルギーレベルを示す波形dの説明図である。
【0030】
<ステップS1>
まず、図3に示すように、外部のX線照射装置(図示省略)によって、イメージングプレートIPの全面(画像形成面の全体)にX線XRを一様に照射する(X線照射ステップ。以下、「ステップS1」という。)。
【0031】
なお、本実施形態では、図1に示すように、X線照射装置(図示省略)は、検査装置1と別体とされているが、これに限らず、検査装置1に組み込まれていてもよい。つまり、検査装置1は、X線画像を形成する装置と、X画像を読み取る装置と、を一体にした一つの装置とされていてもよい。
【0032】
<ステップS2>
次に、図4に示すように、イメージングプレートIPを搬送(第1回目の搬送)しながらイメージングプレートIPにレーザ光LBを照射して、帯状のレーザ光像LBIを形成する(エッジ形成ステップ。以下、「ステップS2」という。)。
【0033】
ステップS2では、ステップS1で用いたX線照射装置(図示省略)からイメージングプレートIPを取り出して、図1に示す検査装置1にセットする。検査装置1内では、搬送系20によってX線XRが照射されたイメージングプレートIPを所定方向(副走査方向:矢印b方向)に搬送させながら、光走査系10(画像を読み取るための画像スキャン用のレーザ光LB)により、主走査方向(矢印a方向)に全範囲(全幅)、なおかつ、副走査方向(矢印b方向)にある一定幅以上の範囲でレーザスキャン(正確には、レーザ光LBによるエッジ像の形成)を行う。
【0034】
図4に示すように、イメージングプレートIPの画像形成面のうち、レーザ光LBが照射された箇所では、照射されたX線XRによって蓄積されたX線XRのエネルギー(励起エネルギー)が放出されて失われる。この結果、イメージングプレートIP上には、主走査方向(矢印a方向)に沿って延在し、なおかつ、副走査方向(矢印b方向)には所定幅で形成された帯状のレーザ光像LBIが形成される。
【0035】
<ステップS3>
続いて、イメージングプレートIPを再搬送(第2回目の搬送)しながらイメージングプレートIPに対してレーザ光LBの照射を行い、イメージングプレートIPの画像形成面全体をスキャンして画像化する(エッジ像取得ステップ。以下、「ステップS3」という。)。
ステップS3では、レーザ光像LBIが形成されたイメージングプレートIPをステップS2での搬送開始位置に戻し、再度、所定方向(副走査方向:矢印b方向)に搬送する。そして、イメージングプレートIPの画像形成面全体をスキャンして画像化する。
【0036】
このとき、イメージングプレートIP上に形成されている帯状のレーザ光像LBIでは、前述したようにX線XRの照射によって蓄積されたエネルギー(励起エネルギー)が失われている。このため、X線画像には、エッジEが含まれることになる。スキャンして得られた画像(エッジ像を含んでいるX線画像)では、帯状のレーザ光像LBIが形成されている形成領域と、レーザ光像LBIが形成されていない非形成領域と、を識別することができる。つまり、スキャン画像上では、形成領域と、それ以外の領域である非形成領域との境界部分で、帯状のレーザ光像LBIのエッジEを検出することが可能となる。
【0037】
<ステップS4>
次に、ステップS3で取得したスキャン画像上で、帯状のレーザ光像LBIのエッジE付近(副走査方向(矢印b方向)におけるエッジEを含めたエッジEの前後)の画素値(グレイレベル)のグラフを作成し、グラフの横軸(副走査方向の距離)を1/2に補正して、LSF(線広がり関数)を算出する(線広がり関数算出ステップ。以下、「ステップS4」という。)。
グラフの横軸を1/2に補正して、LSFを算出すると、従来の方法(金属製のプレートを用いた方法)で形成したエッジ像から算出した場合と比較して、同等のLSFを得ることができる。
【0038】
<ステップS5>
続いて、LSFをフーリエ変換して、MTF(変調伝達関数)を算出する(変調伝達関数算出ステップ。以下、「ステップS5」という。)。
【0039】
<ステップS6>
次に、MTFの空間周波数(イメージングプレートスキャナ(検査装置1)の解像度)を求め、モニタ34(図1参照)上に空間周波数を表示する(解像度算出ステップ。以下、「ステップS6」という。)。
ステップS6では、ステップS5で算出したMTFの空間周波数の値を算出して、モニタ34に出力する。このため、モニタ34には、表示部に空間周波数の値が表示される。ユーザは、モニタ34に表示された空間周波数の値から、検査装置1の解像度が低いか、高いか、つまり、検査装置1の解像度がどの程度なのかを把握することが可能となる。
【0040】
≪MTFの求め方の説明≫
次に、図6図9を参照して本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法によるMTFの求め方を説明する。
【0041】
図6は、本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法を示す説明図であり、(a)レーザ光LB強度のガウス分布を示すグラフ、(b)はレーザ光LBによって形成されたエッジ像(レーザ光像LBI)を示すグラフ、(c)は理想的なエッジ像の波形eを示すグラフである。
【0042】
従来のエッジ像の形成方法では、金属製のプレートが画像形成面上に配置されたイメージングプレートIPに対してX線XRを照射するので、図6(c)に示すように、エッジ像のエッジE付近でのX線画像の形状(エネルギーレベルのグラフ形状)は、90度立ち上がった形状となる。
図6(a)に示すレーザ光LBをイメージングプレートIPに対して主走査方向に走査しながら副走査方向に少しずつずらして行くと、エッジE付近では、全体に、図6(b)に示すようなエッジ像がレーザ光LBによって形成される。イメージングプレートIPに形成されたエッジ像が理想的なものであれば、図6(c)に示すように、エネルギー分布がエッジEの形成位置で90度立ち上がって行くような形状になる。図6(b)のエッジ像についてのレーザ光LBによるエネルギー分布形状のピーク部分の幅(副走査方向の幅)は、図6(c)のエネルギー分布形状の幅(副走査方向の幅)と一致したものとなる。
【0043】
図7は、本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法を示す図であり、(a)は帯状のレーザ光像LBIが形成されたイメージングプレートIPの説明図、(b)は画像スキャン用のレーザ光LB強度のガウス分布を示すグラフ、(c)はレーザ光LBによって形成されたエッジ像(レーザ光像LBI)を示すグラフ、(d)はレーザ光LBによって形成されたエッジ像におけるエッジ検出位置を示すグラフ、(e)は金属製のプレートを使用した場合の理想的なエッジ像におけるエッジ検出位置を示すグラフ、(f)はエッジEを示す関数f(x)の式である。なお、図7(c)に示す矩形状の波形e(太線部分)は、金属製のプレートを使用した場合の理想的なエッジ像の波形(エネルギーレベルのグラフ形状)を示す。
【0044】
本実施形態のように、画像スキャン用のレーザ光LBを用いてエッジ像(帯状のレーザ光像LBI)を形成する方法では、レーザ光LBの形状(ビーム強度分布)がガウス分布に従う。このため、レーザ光像LBIのエッジE付近でのX線画像の形状(エネルギーレベルのグラフ形状。より詳しくは、搬送方向(副走査方向)におけるレーザ光像LBIのエッジEでのエネルギーレベルのグラフ形状。)は、図7(c)に示すように、レーザ光LBのガウス分布形状の右半分あるいは左半分の形状となる。
【0045】
図7(b)~(d)に示すように、レーザ光像LBIの左側のエッジE(分布関数fの中心:x=0)に対して、画像スキャン用のレーザ光LB(分布関数fの中心:x=-a)をこのエッジEの左側から近付けて行くと、レーザ光LBは、その分布関数f(x+a)の中心位置がx=-tになったとき(レーザ光像LBIの左側のエッジEとの距離がtになったとき)、はじめて帯状のレーザ光像LBIの左側のエッジEを検出する。
【0046】
レーザ光LBとレーザ光像LBIの左側のエッジEとは、もともと分布関数f(x)の形状と分布関数f(x+a)の形状とが同じであるから(レーザ光像LBIも同じレーザ光LBによって形成されたものであるから)、レーザ光LBは、これらの中心位置x=-t/2(このときの画像スキャン用のレーザ光LBの位置(中心位置)x=-tよりもt/2だけ前記左側のエッジE側へずれた位置)で左側のエッジEを検出することになる。
【0047】
ところで、従来のエッジ像の形成方法では、金属製のプレートをイメージングプレートIPの画像形成面に当ててX線XRを照射することでエッジ像を形成していた。このため、この方法で形成されたエッジ像(エネルギーレベルのグラフ形状がx=0でステップ関数のように90度立ち上がったもの)をレーザ光LBにより走査すると、レーザ光LBの中心位置よりもt/2だけエッジ像側の位置で前記左側のエッジE(x=0)を検出することになる。すなわち、レーザ光LBは、中心位置がx=-t/2ではじめて、左側のエッジEを検出することになる(図7(e)参照)。
左側のエッジEを検出するレーザ光LBの中心位置が、レーザ光LBによって形成されたエッジ像のエッジの場合に比べて、左側のエッジEにt/2近づいている。
つまり、レーザ光LBによって形成されたエッジ像のエッジはガウス分布形状であるため、金属製のプレートを使用して形成されたエッジ像のエッジに比べで、エッジの検知位置までの距離が2倍になると考えることができる。
【0048】
そこで、本実施形態では、以下のように処理することにした。まず、レーザ光像LBIの左側のエッジE付近(副走査方向におけるエッジEを含めたエッジEの前後)の画素値(グレイレベル)のグラフを作成し、グラフの横軸(副走査方向の距離)を1/2に補正して、LSF算出する。続いて、LSFをフーリエ変換して、MTFを計算する。このように処理すれば、従来の方法で作成したエッジE(金属製のプレートを用いて作成したエッジE)をレーザ光LBで検出した場合と同等のMTFを、簡易的かつ高精度で求めることができる。
【0049】
図8は、本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法と、従来の方法との比較図であり、(a)-1は従来の方法で金属製プレートを投影したイメージングプレートIPの画像形成面をスキャンして得られたスキャン画像で、(a)-2は、スキャン画像(a)-1のエッジE付近(前後方向)の画素値(グレイレベル)を横軸10ピクセル単位で示した画素値(グレイレベル)のグラフ、(b)-1は本発明の実施形態のイメージングプレートIPの画像形成面をスキャンして得られたスキャン画像で、(b)-2は、スキャン画像(b)-1のエッジE付近(前後方向)の画素値(グレイレベル)を横軸20ピクセル単位で示した画素値(グレイレベル)のグラフである。
【0050】
ここで、イメージングプレートIP上に形成されたX線画像をスキャンする場合、レーザ光LBの強度はガウス分布を示すため、従来の金属製プレートを用いた方法(図8(a)-1参照)では、実際のエッジ位置とレーザ検出位置(レーザ光LBによりエッジEが検出されたときのレーザ光LBのガウス分布中心位置)との間に、「レーザ光LBの強度分布の半値幅(「半値幅」は一例。ここでは、半値幅を取るようなxの値(2つのx方向の位置のうち右側)でエッジEを検出するように感度が設定されている場合を例に説明する。以下、同様。)の1/2」だけ距離(以下、「検出時基準間隔」という。)を有することになるが、本実施形態の方法(図8(b)-1参照)では、レーザ光LBによって形成されたエッジ像のエッジEもレーザ光LBの強度分布と同様にガウス分布形状であるため、実際のエッジ位置とレーザ検出位置との間に「検出時基準間隔の2倍」の距離を有することとなる。図8(a)-2に示すエッジEを示すグラフの形状と、図8(b)-2に示すエッジEを示すグラフ形状は、横軸を同じ単位に補正(横軸補正)すれば、略同じ形状となることがわかる。
【0051】
図9は、本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法と、従来の方法との比較グラフで、従来の金属製プレートを用いた場合のエッジEに基づいて得られたMTFと、本発明の実施形態のレーザ光LBの走査で形成したエッジ像を用いた場合のエッジEに基づいて得られたMTFを示す。
【0052】
本発明の実施形態の方法を採用する場合には、レーザ光LBの走査で形成されたエッジ像のエッジE付近の画素値(グレイレベル)のグラフの横軸(副走査方向の距離)を1/2倍したグラフを用いて、従来と同様のMTFの算出を行えるようにした。これにより、本発明の実施形態の方法を採用した場合であっても、従来と同等の精度のMTFを簡易的かつ高精度で求めることができる(図9参照)。
【0053】
前記したように、本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法では、金属製のプレート(治具)を用いなくても、エッジ像を含んだX線画像をイメージングプレートIP上に形成できる。つまり、本発明は、金属製のプレートを用いなくても、スキャナ装置(検査装置1)内で画像スキャン用のレーザ光LBをイメージングプレートIPの画像形成面に照射するだけでエッジ像を形成することができる。
また、本発明は、レーザ光LBにより形成されたエッジ像のエッジEを検出し、エッジ法によりX線画像の解像度を求める場合に、従来のエッジ像の形成方法による場合と同等の精度のMTFを、簡易的かつ高精度で求めることができる。
なお、MTF取得後の処理は、従来技術と同様であるため、その説明は省略する。
【0054】
このように、本発明の実施形態に係る画像解像度確認方法は、図1または図2に示すように、イメージングプレートIPの画像形成面の全面に対して、一様にX線XRを照射するX線照射ステップS1と、イメージングプレートIPを搬送させながら所定方向(副走査方向)におけるある一定幅以上の範囲の露光処理を行うことで、イメージングプレートIP上にX線XRによって蓄積されたエネルギーを当該イメージングプレートIPから放出させ、イメージングプレートIP上に蓄積されたエネルギーの異なる部位(エネルギーが変化する部位)であるエッジEを形成するエッジ形成ステップS2と、イメージングプレートIPの画像形成面の全体に対し光学スキャン処理を行ってX線画像内のエッジEを含むエッジ像を取得するエッジ像取得ステップS3と、エッジ像のエッジE付近の画素値(グレイレベル)のグラフを作成し、線広がり関数LSFを算出する線広がり関数算出ステップS4と、線広がり関数LSFに基づいて、変調伝達関数MTFを算出する変調伝達関数算出ステップS5と、当該変調伝達関数MTFに基づいて、イメージングプレートスキャナ(検査装置1)の解像度(空間周波数)を算出する解像度算出ステップS6と、を含む。
【0055】
また、変調伝達関数算出ステップS5は、エッジ像の、画素値のグラフを作成し、当該画素値のグラフの横軸を1/2に補正したグラフに基づいて、線広がり関数LSFを算出すること、及び、当該線広がり関数LSFに基づいて、変調伝達関数MTFを算出することを含む。
【0056】
本発明の画像解像度確認方法によれば、このようにすることで、特別な治具を使用しなくても、検査装置1自身の解像度を簡易的かつ容易に測定して自己診断することができる。また、この画像解像度確認方法によれば、エッジEのボケ具合が大きい場合には、検査装置1のどこかに異常があるということを知ることができる。また、本発明は、金属製プレートを使用しなくても、金属製プレートを使用した場合と同等の解像度算出をすることができる。
これにより、本発明は、検査装置1の出荷時、設置時、修理時や定期メンテナンス時等の調整、及び、日常点検において、画像品質の担保ができる。また、本発明は、検査装置1の機器調整時に、日々の診断に使われるX線画像が十分な性能を発揮できているか否かを確認することができる。
【0057】
また、解像度算出ステップS6は、モニタ34にイメージングプレートスキャナ(検査装置1)の解像度(空間周波数)を表示する処理を含む。
【0058】
かかる構成によれば、モニタ34に検査装置1の解像度を表示することで、例えば、修理やメンテナンス、点検等を行う専門業者でなくても(ユーザであっても)、検査装置1の機能の状態を容易に確認することができる。
【0059】
また、本発明は、図1または図2に示すように、イメージングプレートIPに記録されているX線画像を読み取って、変調伝達関数MTFを算出し、当該変調伝達関数MTFから解像度を算出することで、画像解像能力を自己診断する検査装置1であって、X線XRが一様に照射されたイメージングプレートIPの画像形成面にX線画像を形成するためのレーザ光LBの照射と、イメージングプレートIP上に形成されたX線画像を読み取るためのレーザ光LBの照射と、を行う光走査系10と、イメージングプレートIPを所定方向に搬送する搬送系20と、イメージングプレートIPに形成されたX線画像を光学的に読み取って、X線画像を検出するための画像処理系30と、光走査系10、搬送系20及び画像処理系30を制御する制御装置40と、を備え、制御装置40は、搬送系20によってX線XRが一様に照射されたイメージングプレートIPを搬送しながら、光走査系10によって副走査方向におけるある一定幅以上の範囲の露光処理を行うことで、イメージングプレートIP上にX線XRによって蓄積されたエネルギーを当該イメージングプレートIPから放出させ、イメージングプレートIP上にエネルギーの異なる部位であるエッジEを形成し、搬送系20によって再度イメージングプレートIPを搬送しながら、光走査系10及び画像処理系30によってイメージングプレートIPの画像形成面の全体に対し光学スキャン処理を行ってX線画像内のエッジEを含むエッジ像を取得し、画像処理系30によってエッジ像に基づいて変調伝達関数MTFを算出すると共に、当該変調伝達関数MTFに基づいてイメージングプレートスキャナ(検査装置1)の解像度を算出する。
【0060】
本発明の検査装置1によれば、制御装置40は、イメージングプレートIPのエッジ像に基づいて算出した変調伝達関数MTFからイメージングプレートスキャナ(検査装置1)の解像度を算出することで、検査装置1自身の解像度を容易に測定して自己診断することができる。また、本発明は、金属製プレートを使用しなくても解像度を把握することができるので、検査装置1の出荷時、設置時、修理時や定期メンテナンス時等の調整、及び、日常点検において、日々の診断に使われるX線画像が十分な性能を発揮できているか否かを容易に確認することができる。このため、ユーザは、修理やメンテナンス、点検等を行う専門業者に依頼しなくても、検査装置1の機能状況を、検査装置1自体で容易に確認することができる。
【0061】
[変形例]
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものでは無く、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。なお、既に説明した構成は、同じ符号を付してその説明を省略する。
【0062】
図10は、本発明の実施形態に係る検査装置1の変形例である検査装置1Aの概略図(一部ブロック図)である。図11は、イメージングプレートIPに帯状のレーザ光像LBIを複数形成したときの概略図である。
【0063】
図10及び図11に示すように、本発明の変形例の検査装置1Aは、実施形態で説明した検査装置1(図1参照)に、光走査系10及び搬送系20に何かしらの不具合が生じたことを検出することができる機能を加えたものである。検査装置1Aは、前述の検査装置1に対して、光走査系10の走査開始を検出する走査開始検出センサ15と、光走査系10の走査終了を検出する走査終了検出センサ16と、をさらに備え、制御装置40は、イメージングプレートIPを所定方向に一定速度で搬送しながら、レーザ光像LBIを所定距離だけ離して複数形成したときに、走査開始検出センサ15と走査終了検出センサ16との間でのレーザ光LBの検出間隔を検知し、レーザ光LBの検出間隔にブレが生じたときは、光走査系10に異常があると判断し、レーザ光像LBI間の距離Lを検出し、距離Lにムラがあるときは、搬送系20に異常があると判断する。
【0064】
走査開始検出センサ15と、走査終了検出センサ16とは、それぞれ、例えば、ミラー14の長手方向(主走査方向)の一端部の傍らと、他端部の傍らとに設けられる。このようにすることで、検査装置1Aは、レーザ光LBの走査開始と、レーザ光LBの走査終了とを確実に検出できるので、レーザ光像LBIを読み取るタイミングが分かる。
【0065】
本変形例では、例えば、図11に示すように、所定方向(副走査方向:矢印b方向)において、イメージングプレートIPに対し複数の帯状のレーザ光像LBIを、距離Lずつ間を置いて形成する構成(互いに隣り合う帯状のレーザ光像LBIを距離Lだけ離して形成する構成)にすると、X線画像の読み取り時にレーザ光像LBI間の距離Lにブレが生じた場合(例えば、エッジ像形成時に設定した距離Lに対してエッジ像読み取り時の距離Lが一致しなかった場合や、エッジ像読み取り時に読み取った複数の距離Lにバラツキがあった場合など)には、制御装置40は、光走査系10が正常に動作していれば(走査開始検出センサ15と走査終了検出センサ16との間で、レーザ光LBの検出間隔(時間間隔)が一定であれば)、搬送系20のどこかに異常が起きていると判断することができる。
また、走査開始検出センサ15と走査終了検出センサ16との間でのレーザ光LBの検出間隔にブレが生じた場合には、制御装置40は、光走査系10に異常があると判断することができる。
【0066】
さらに詳述すると、検査装置1Aでは、図11に示すように、所定方向(副走査方向:矢印b方向)にレーザ光像LBI間に一定の距離Lを置いて、帯状のレーザ光像LBIを複数形成する。
検査装置1Aでは、イメージングプレートIPを所定方向(副走査方向:矢印b方向)に一定速度で搬送しながら、最初にスキャンするレーザ光像LBIを用いて、ユーザが検査装置1Aの解像度を把握できるようにしたため、前述の検査装置1と同様に、MTFの空間周波数を求めてモニタ34に表示することができる。
また、検査装置1Aでは、レーザ光LBの走査(主走査方向全幅:矢印a方向)に要する時間を監視しつつ、副走査方向において、互いに隣り合うレーザ光像LBIのエッジE(各レーザ光像LBIにおいては、右側のエッジEと左側のエッジE)を検出し、検出した複数のエッジEの検出時刻(あるいは、検出タイミングの差)および単位時間あたりの搬送ローラ21によるイメージングプレートIPの送り量に基づいて、互いに隣り合うレーザ光像LBI間の距離L(搬送ローラ21によるイメージングプレートIPの副走査方向への送り量)を計測する。なお、互いに隣り合うレーザ光像LBI間の物理的な距離Lに代えて、上記互いに隣り合うレーザ光像LBIどうしの間で互いに対向する2つのエッジEをラインセンサ31により検出する時間間隔を計測するようにしてもよい。
【0067】
ここで、もし、副走査方向においてレーザ光像LBI間の距離Lにムラがあった場合には、イメージングプレートIPの送り速度(副走査方向の送り速度)にムラ(搬送ムラ)があることがわかる。
【0068】
すなわち、検査装置1Aの場合には、自身(検査装置1A)のどこかに異常がある、といった漠然としたものではなく、「搬送系20に何かしらの問題がある」というように、前述の検査装置1と比較して、より具体的に、自身(検査装置1A)の不具合箇所を把握する(不具合箇所を絞り込む)ことができる。
【0069】
以上説明したように、検査装置1Aは、主走査方向に沿って延びる帯状のレーザ光像LBIを形成して、副走査方向に一定間隔(互いに隣り合うレーザ光像LBI間の距離L)おきにレーザ光像LBIを形成するものであるため、各レーザ光像LBIのスキャン処理時には、レーザ光像LBIのエッジEのぼけ具合のチェックに加え、走査開始検出センサ15と走査終了検出センサ16との間でのレーザ光LBの検出間隔が一定であれば、搬送系20での例えば搬送ムラ等のチェックをすることができる。
【0070】
すなわち、検査装置1Aは、前述の検査装置1の構成を含んでいるので(主要部の構成が検査装置1と同じなので)、前述の実施形態と同様の作用・効果も有する。さらに、検査装置1Aは、形成された複数のレーザ光像LBIの読み取り時に、レーザ光像LBI同士の読み取り間隔(時間)にムラ(ばらつき)があると、搬送系20に何かしらの問題がある、というように問題点(検査装置1内の問題箇所)をより具体的に把握することができる。これにより、検査装置1は、上記のように搬送系20の不具合を検出できるので、搬送系20に不具合が発生したときには、タイムリーに搬送系20の修理や調整等を行って正常な状態に復帰させ、正常な状態を維持することができる。
【0071】
なお、検査装置1Aでは、レーザ光LBによる主走査方向(矢印a方向)の走査を繰り返す場合には、もし、「走査開始検出センサ15」によりレーザ光LBが検出されてから、「走査終了検出センサ16」によりレーザ光LBが検出されるまでの時間間隔にムラ(ばらつき)があれば、「光走査系10」に何かしらの問題がある、ということもわかる。ただし、これはレーザ光像LBIとは無関係に検出できるものである。
【0072】
[その他の変形例]
また、図1及び図10に示すモニタ34には、検査装置1、1Aに不具合が生じた場合に、不具合が発生したことを報知する報知手段を設けてもよい。報知手段は、例えば、モニタ34のスピーカから音声やブザー音などによって報知する装置であればよい。また、報知手段は、検査装置1に不具合が生じていることをユーザに対して視覚的に示すものであってもよい。
かかる構成によれば、検査装置1、1Aは、報知手段を備えることで、検査装置1、1Aに不具合(故障を含む)が生じた場合に、検査装置1、1Aに不具合が生じたことをユーザにタイムリーに知らせることができる。
【0073】
また、搬送系20は、イメージングプレートIPを副走査方向(矢印b方向)に搬送可能な装置であればよく、図1図10に示すような構成に限らず、例えば、イメージングプレートIPを搬送するベルトコンベア装置等であってもよい。
【0074】
また、検査装置1、1Aでは、イメージングプレートIPの搬送経路が循環経路となっていてもよい。
ここで、イメージングプレートIPは、例えば、搬送経路を循環する無端状ベルト上に固定配置されていたり、自身の中心位置周りに回転する円盤上に固定配置されていたりしてもよく、これらのように配置された状態で循環搬送されてもよい。
これらのように、イメージングプレートIPは、画像形成時と画像読み取り時に同じ搬送経路を繰り返し循環搬送されることで、同じ位置を繰り返し通過することができる。このため、イメージングプレートIPを往復移動させる搬送処理を行う必要が無くなり、イメージングプレートIPを一方向に搬送(例えば、1.5周分とするなど、最大でも2周分だけ搬送)させるだけで、イメージングプレートIPについてのエッジ像形成時の搬送とエッジ像読み取り時の搬送との双方を実現することができる。また、これに伴って、搬送系20の動作の制御もより単純にすることができる。
【0075】
また、スリット法でMTFを算出することができる。ステップS2において、副走査方向に10μm程度の幅でレーザスキャンし、スリット状の像を形成する。ステップS3で、スリット像を取得し、スリット像から求めたLSF(線広がり関数)をフーリエ変換してMTFを算出する。
【符号の説明】
【0076】
1,1A 検査装置(イメージングプレートスキャナ)
10 光走査系
15 走査開始検出センサ
16 走査終了検出センサ
20 搬送系
30 画像処理系
40 制御装置
E エッジ
IP イメージングプレート
L レーザ光像間の距離
LB レーザ光
LBI レーザ光像
MTF 変調伝達関数
S1 X線照射ステップ
S2 エッジ形成ステップ
S3 エッジ像取得ステップ
S4 線広がり関数算出ステップ
S5 変調伝達関数算出ステップ
S6 解像度算出ステップ
XR X線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11