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特開2024-98441貴金属製装飾品の製造方法および当該製造方法により製造された貴金属製の装飾品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098441
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】貴金属製装飾品の製造方法および当該製造方法により製造された貴金属製の装飾品
(51)【国際特許分類】
   A44C 27/00 20060101AFI20240716BHJP
   A44C 1/00 20060101ALI20240716BHJP
   B22C 9/04 20060101ALI20240716BHJP
   B22C 1/00 20060101ALI20240716BHJP
   B22C 9/22 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A44C27/00
A44C1/00
B22C9/04 A
B22C1/00 A
B22C9/22 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001976
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】523010694
【氏名又は名称】株式会社アンプ
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】河野 良太
【テーマコード(参考)】
3B114
4E092
【Fターム(参考)】
3B114AA01
3B114AA02
3B114JA03
4E092AA08
(57)【要約】
【課題】1回の製造でできる複数の貴金属製の装飾品のそれぞれのデザインを異ならせることができ、かつ、購入者側のデザイン選択の自由度を高めることができる貴金属製の装飾品を製造する方法および当該製造方法により製造された貴金属製の装飾品を提供することである。
【解決手段】貴金属製の装飾品を製造する方法は、装飾品の基材と同一形状のワックス原型を、シーリングスタンプを用いて製造するワックス原型製造工程と、ワックス原型の周囲に石膏を流し込んで硬化した後焼成してワックス原型を蒸発させて石膏型を作成する工程と、基材となるべき材料を石膏型内の空洞に流し込んで硬化させる工程とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装飾品の基材と同一形状のワックス原型を、シーリングスタンプを用いて製造するワックス原型製造工程と、
前記ワックス原型の周囲に石膏を流し込んで硬化した後焼成してワックス原型を蒸発させて石膏型を作成する工程と、
前記基材となるべき材料を前記石膏型内の空洞に流し込んで硬化させる工程と、を有する
ことを特徴とする貴金属製品の製造方法。
【請求項2】
前記ワックス原型製造工程は、ワックスが挿入されたワックス射出装置でシート上にワックスを射出するワックス射出工程と、前記シート上の前記ワックスに前記シーリングスタンプを接触させて所定時間が経過した後に前記シーリングスタンプを外して前記ワックス原型を作成するワックス原型作成工程を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の貴金属製品の製造方法。
【請求項3】
前記ワックス射出工程において、前記ワックスは前記シート上に射出されたワックスの外径が前記シーリングスタンプのスタンプ部の外径よりも小さくなるように射出される、
ことを特徴とする請求項2に記載の貴金属製品の製造方法。
【請求項4】
ワックス原型の周囲に石膏を流し込んで硬化した後焼成してワックス原型を蒸発させて石膏型を作成する工程と、
装飾品の基材となるべき材料を前記石膏型内の空洞に流し込んで硬化させる工程とを有し、
前記ワックス原型は、基材と同一形状を有しシーリングスタンプを用いて製造される、
ことを特徴とする貴金属製品の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする貴金属製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装身具や室内装飾品等の広範囲に利用できる貴金属を基材とする貴金属製装飾品の製造方法および当該製造方法により製造された貴金属製の装飾品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、貴金属製の装飾品を製造する方法としては、いわゆるロストワックス製法が知られている(以下の先行技術文献1参照)。以下に、一般的なロストワックス製法について図7図9を参照して説明する。まず金、銀、プラチナ等の貴金属製の原型102を用意し(ステップS201)、これを所定形状のシリコンゴムの型(以下、「ゴム型」と称する。)103内に設置する(図8(a)参照)。そしてゴム型103を硬化させた後にこれを二つに裂いて(切割って)原型102を取り除くと、ゴム型103内には原型102に相当する空洞130が形成され、装飾品ワックス原型(蝋原型)を作成するためのゴム型103が作成される(ステップS202、図8(b)参照)。二つの切割れゴム型103、103を再度型合わせし、このゴム型103内の空洞130に溶かしたワックスを充填して装飾品ワックス原型104を作成する(ステップS203)。
【0003】
成型した装飾品ワックス原型104を蝋製の基幹部(基柱)106に対してツリー状に溶着して連結させ(ステップS204、図8(c)参照)、そのツリー状の連結体を所定の基材(例えば、台座の上に円筒、角筒状のパイプを設置した型)150の内部に挿入して起立させる(ステップS205)。この基材150内部に石膏材を充填・硬化させ(ステップS206)、これを火炉等で焼成して(ステップS207)ツリー状の連結体を溶解させツリー状の連結体に相当する空洞(鋳込間隙)140を有する石膏型(鋳型)を作成する(図9(a)参照)。この石膏型に目的とする金属を溶解させた溶解金属を鋳込み、充分に凝結した後に石膏型を破壊してツリー状の連結体に相当するツリー状の金属連結体155が取り出される(ステップS208、図9(b)参照)。ツリー状の金属連結体155より個々の装飾品160を切り離す。切り離された個々の装飾品160を適宜研磨等の表面処理を施して(ステップS209)最終製品(表面処理後の装飾品)を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-135714号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した貴金属製の装飾品を製造する方法は、貴金属製の原型を用意しそれをゴム型内に設置し原型を取り除いた後の空洞に溶かしたワックスを充填してワックス原型を作成し、この工程を繰り返して同一形状のワックス原型を複数作成してツリー状の石膏型を作成する工程を有する。したがって、1回の製造で複数できる貴金属製の装飾品の種類は一種類である。他の異なる種類の貴金属製の装飾品を製造する場合には異なる形状のワックス原型を用意し、上記工程にしたがってツリー状の石膏型を作成しなければならない。
【0006】
ところで、消費者の個性に応じた製品を、DIY感覚を製造プロセスの中に取り込んで消費者に販売するという販売形式も近年増加しているが、貴金属製装飾品の世界では、貴金属の原型は製造者側でデザイン設計されるのが一般的であるので、購入者側のデザインの選択肢は限りがあり、購入者側のデザイン選択の自由度は低い。
【0007】
したがって、本発明の課題は、1回の製造でできる複数の貴金属製の装飾品のそれぞれのデザインを異ならせることができ、かつ、購入者側のデザイン選択の自由度を高めることができる貴金属製の装飾品を製造する方法および当該製造方法により製造された貴金属製の装飾品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態に係る貴金属製の装飾品を製造する方法は、装飾品の基材と同一形状のワックス原型を、シーリングスタンプを用いて製造するワックス原型製造工程と、ワックス原型の周囲に石膏を流し込んで硬化した後焼成してワックス原型を蒸発させて石膏型を作成する工程と、基材となるべき材料を石膏型内の空洞に流し込んで硬化させる工程とを有することを特徴とする。
【0009】
前述の実施形態に係る貴金属製の装飾品を製造する方法において、ワックス原型製造工程は、ワックスが挿入されたワックス射出装置でシート上にワックスを射出するワックス射出工程と、シート上のワックスにシーリングスタンプを接触させて所定時間が経過した後にシーリングスタンプを外してワックス原型を作成するワックス原型作成工程を含むことが好ましい。
【0010】
前述の実施形態に係る貴金属製の装飾品を製造する方法において、ワックス射出工程において、ワックスは、シート上に射出されたワックスの外径がシーリングスタンプのスタンプ部の外径よりも小さくなるように射出されることが好ましい。
【0011】
他の実施形態に係る貴金属製の装飾品を製造する方法は、ワックス原型の周囲に石膏を流し込んで硬化した後焼成してワックス原型を蒸発させて石膏型を作成する工程と、装飾品の基材となるべき材料を石膏型内の空洞に流し込んで硬化させる工程とを有し、ワックス原型は、基材と同一形状を有しシーリングスタンプを用いて製造されることを特徴とする。
【0012】
一実施形態に係る貴金属製の装飾品は、前述の装飾品を製造する方法で製造されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
1回の製造でできる複数の貴金属製の装飾品のそれぞれのデザインを異ならせるができ、かつ、購入者側のデザイン選択の自由度を高めることができる貴金属製の装飾品を製造する方法および当該製造方法により製造された貴金属製の装飾品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る貴金属製の装飾品を製造する方法の一実施の形態を説明するためのフローチャートである。
図2】(a)はグルーガンへのワックス棒の挿入の様子を示した図であり、(b)はグルーガンからのグルー射出を説明するための図である。
図3】グルーガンからシート上にグルーを射出する様子を示した図である。
図4】シート上に射出されたワックスの外径がシーリングスタンプのスタンプ部分の外径よりも小さくなるようにする点を説明する図である。
図5】(a)はシーリングスタンプのワックスへの押圧前の状態を示した図であり、(b)はシーリングスタンプのワックスへの押圧時の状態を示した図であり、(c)は装飾品ワックス原型を示した図である。
図6】(a)はワックス製の基幹部に対してワックス原型をツリー状に溶着して連結させ状態を示した図であり、(b)はパイプの内部に石膏材を充填した状態を示した図であり、(c)はツリー状の金属連結体を示した図であり、(d)は後処理後の装飾品を示した図である。
図7】従来の貴金属製の装飾品を製造する方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図8】(a)は貴金属製の原型をゴム型内に設置した状態を示した図であり、(b)は内部に空洞が形成されゴム型を示した図であり、(c)はツリー状の連結体を示した図である。
図9】(a)は空洞を有する石膏型を示した図であり、(b)は後処理後の装飾品を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図1図6を参照して本発明に係る貴金属製の装飾品を製造する方法の一実施の形態について説明する。本実施の形態は装飾品を構成する材料として銀(Ag)を用いた装飾品の製造方法であるが、装飾品を構成する材料として銀(Ag)に限定されず、例えば金(Au)、プラチナ(Pt)等の貴金属や、アルミニウム(Al)等の金属であってもよい。
【0016】
グルーガン(ワックス射出装置)10に熱可塑性プラスチックの棒(以下、「ワックス棒」と称す。)14を挿入し、電源コード13を介して電力供給してグルーガン10のノズル(射出部)11の温度を上げる(ステップS101、図2(a)参照)。ワックス棒14が溶け始めたらグルーガン10のトリガー12を操作してノズル11をシート20上に向けて溶融されたワックス(樹脂)を押し出す(ステップS102、図2(b)参照)。なお、シート20は例えばシリコーン樹脂加工の耐油紙(クッキングシート)等が好ましいが、ワックスを剥がしやすい材質のものであればこれに限定されない。押し出されたワックス22がシート20上で円形になるように射出量および射出方向を調整する(ステップS103、図3参照)。なお、シート上に射出されたワックスの外径がシーリングスタンプのスタンプ部の外径よりも小さくなるようにする調整することが好ましい。この理由は、シーリングスタンプを押した後にスタンプ部の外径よりワックスがなるべくはみ出ないようにする必要があるからである。はみ出る量が少なければ少ないほど後述する後処理(表面加工処理、側面加工処理を含む)にかかる時間を短縮することができるからである。
【0017】
所定のデザインで刻印されたスタンプ部26とハンドル28を備えたシーリングスタンプ24をシート上のワックス22に垂直に下ろして押す(ステップS104、図5(a)、(b)参照)。なお、シーリングスタンプ24のワックス22に対する押す力(押圧)の大小によって装飾品ワックス原型(装飾品蝋原型)30の形状は微妙に異なってくる。ワックス22が少し固まったらシーリングスタンプ24をシート上のワックス22から外して、ワックス22に装飾品ワックス原型30が形成される(ステップS105、図5(c)参照)。
【0018】
なお、グルーガン(Glue-Gun)は、棒状の熱可塑性プラスチック(スティック)を溶かして接着する工具(ワックス射出装置)であるが、溶解したワックスを作成できるものであればグルーガンを用いなくてもよい。例えば、スプーンの上に熱可塑性プラスチックを載せてスプーンを熱してワックスを溶解したものをシートの上に垂らすようにしてもよい。
【0019】
また、シーリングスタンプ24を押すのは原則利用者(購入者)にしてもらうがこれに限定されない。例えば、シーリングスタンプを固定でき上下に手動もしくは自動で移動させて所定の押圧(プレス)ができる簡易なプレス装置を使用してシーリングスタンプ24を押すようにしてもよい。
【0020】
成型した装飾品ワックス原型30をワックス製の基幹部50に対してツリー状に蝋剤31を用いて溶着して連結させ(ステップS106、図6(a)参照)、ツリー状の連結体(ツリー状ワックス原型)45を得る。次に、例えば、台座60の上に例えば円筒状のパイプ70を設置して石膏型として機能させるための基材40を用意し、パイプ70の内部にツリー状の連結体45を挿入して起立させる(ステップS107、図6(a)参照)。次にパイプ70の内部に石膏材75を充填した後にその状態で所定時間をおいて硬化させ(ステップS108、図6(b)参照)、これを火炉等で焼成して(ステップS109)、ツリー状の連結体45を溶解させツリー状の連結体45に相当する空洞(鋳込間隙)を有する石膏型(鋳型)を作成する。
【0021】
この石膏型内部の空洞に銀を溶解させた溶解金属を鋳込み、充分に凝結した後に石膏型を破壊してツリー状の連結体に相当するツリー状の金属連結体95が取り出される(ステップS110、図6(c)参照)。ツリー状の金属連結体95より個々の後処理(表面加工処理、側面加工処理を含む処理)前の装飾品80を切り離す。切り離された個々の装飾品80を適宜研磨等の後処理を施して(ステップS111)最終製品(後処理後の装飾品85)を得る。
【0022】
[効果]
上記した実施の形態に係る貴金属製の装飾品を製造する方法によれば、シーリングスタンプ24のワックス22に対する押す力の大小によって装飾品ワックス原型30の形状は微妙に異なってくるので、蝋製の基幹部50に連結される装飾品ワックス原型30の形状は異なるものとなるため、1回の製造でできる複数の貴金属製の装飾品のそれぞれのデザインを異ならせるができ、かつ、購入者側のデザイン選択の自由度を高めることができる。また、従来のようにデザインの異なる複数の装飾品を得るためには複数回製造しなければならなかったのに対して本実施の形態によればデザインの異なる複数の装飾品を一回の製造で得ることができ、製造時間の短縮を図ることができる。
【0023】
以上に、この発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記実施形態に限られるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0024】
10 グルーガン(ワックス射出装置)
11 ノズル
12 トリガー(レバー)
13 電源コード
14 ワックス棒
20 シート
22 ワックス
24 シーリングスタンプ
26 スタンプ部
28 ハンドル
30 装飾品ワックス原型
31 蝋剤
40 基材
45 ツリー状の連結体(ツリー状ワックス原型)
50 基幹部
60 台座
70 パイプ
80 後処理前の装飾品
85 後処理後の装飾品
95 ツリー状の金属連結体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9