(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098442
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】垂直搬送機の蓄電制御装置
(51)【国際特許分類】
B66B 1/34 20060101AFI20240716BHJP
B66B 5/02 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B66B1/34 A
B66B5/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023001979
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】392024909
【氏名又は名称】ホクショー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高田 智治
(72)【発明者】
【氏名】堂田 貴裕
【テーマコード(参考)】
3F304
3F502
【Fターム(参考)】
3F304EC03
3F502HB06
3F502JA62
3F502JA64
3F502JA66
3F502JA67
3F502NA22
3F502NA33
(57)【要約】
【課題】搬送台の発進時に、一次側電源の使用電力を低減することができる垂直搬送機の蓄電制御装置を提供する。
【解決手段】搬送台92の停止前又は停止時に、蓄電装置14が所定の充電目安充電量V1を下回っているか否かを判定し、下回っている場合に一次側電源80により充電し、充電目安充電量V1を上回っている場合には、そのまま次の発進が可能となるように制御する。搬送台92の発進時に、所定の時間、蓄電装置14が放電することによって一次側電源80の使用電力が低減されるように制御し、所定の時間経過後は、力行運転の場合は、一次側電源80からの電力によって走行を続け、停止後に充電目安充電量V1を下回っている場合に一次側電源80により蓄電装置14の充電を行う。回生運転の場合は、蓄電装置14が回生電力により充電されるように制御しながら走行を続け、停止後に充電目安充電量V1を下回っている場合に蓄電装置の充電を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻上機に掛けられたロープの一方の側に搬送台が接続され、他方の側に錘が接続されている工業用の垂直搬送機に用いられる蓄電制御装置であって、
前記搬送台の停止前又は停止時に、蓄電装置が所定の充電目安充電量を下回っているか否かを判定し、前記所定の充電目安充電量を下回っている場合に一次側電力により充電し、前記所定の充電目安充電量を上回っている場合には、そのまま次の発進が可能となるように制御するとともに、
前記搬送台の発進時に、所定の時間、前記蓄電装置が放電することによって一次側電源の使用電力が低減されるように制御し、
前記所定の時間が経過した後は、前記垂直搬送機が力行運転であるか回生運転であるかの判別に基づいて、
力行運転であるときは、前記一次側電源からの電力によって走行を続け、停止後に前記所定の充電目安充電量を下回っている場合に前記一次側電源により前記蓄電装置の充電を行い、
回生運転であるときは、前記蓄電装置が回生電力により充電されるように制御しながら走行を続け、停止後に前記所定の充電目安充電量を下回っている場合に前記一次側電源により前記蓄電装置の充電を行うように制御することを特徴とする垂直搬送機の蓄電制御装置。
【請求項2】
前記一次側電源の使用電力が、前記搬送台の発進時に最大値とならないように制御することを特徴とする請求項1に記載の垂直搬送機の蓄電制御装置。
【請求項3】
前記所定の時間が、3~10秒であることを特徴とする請求項1又は2に記載の垂直搬送機の蓄電制御装置。
【請求項4】
前記蓄電装置が大容量キャパシタであることを特徴とする請求項1または2に記載の垂直搬送機の蓄電制御装置。
【請求項5】
前記回生運転であるときに、前記蓄電装置が回生電力により充電され上限充電量に達した場合には、回生電力を電気的負荷で消費するように制御することを特徴とする請求項1または2に記載の垂直搬送機の蓄電制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、垂直搬送機の蓄電制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
倉庫や工場において物品を搬送する垂直搬送機は、ビル等において人を輸送するエレベータとほぼ同じ構造を備えている。両者は、通常、巻上機に掛けられたロープの一方の側に乗りかご又は搬送台が接続され、他方の側に錘が接続されている。錘の重量は、乗りかご又は搬送台の重量よりも大きくして、巻上機を駆動する電動機の負荷変動が小さくなるようにしている。
【0003】
垂直搬送機において、荷物を下から上に持ち上げる場合には、搬送台の上昇工程では、搬送台と荷物とを合わせた重量が錘の重量よりも大きくなり、搬送台の下降工程では、錘の重量が空になった搬送台の重量よりも大きくなる。このため、通常、上昇工程及び下降工程ともに、巻上機を駆動する電動機に大きな負荷が掛ることになる。すなわち、荷物を下から上に持ち上げる作業を行う場合には、搬送台の上昇工程及び下降工程において、垂直搬送機は力行運転となる。
【0004】
垂直搬送機において、荷物を上から下に降ろす場合には、搬送台の下降工程では、搬送台と荷物とを合わせた重量が錘の重量よりも大きくなり、搬送台の上昇工程では、錘の重量が空になった搬送台の重量よりも大きくなる。このため、通常、上昇工程及び下降工程ともに、巻上機を駆動する電動機には殆ど負荷が掛らないことになり、電動機で発生する電力を回収することが可能となる。すなわち、荷物を上から下に降ろす作業を行う場合には、搬送台の上昇工程及び下降工程において、垂直搬送機は回生運転を行うことができる。
【0005】
エレベータにおいても同様に、大勢の人が乗った下降工程及び空かごの上昇工程において、回生運転を行うことが可能であり、電動機で発生する電力を回生することができる。特許文献1には、回生電力を有効に使用することによって省エネを図るとともに、停電時にもエレベータの運転を可能とする蓄電制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、倉庫や工場で荷物を搬送する垂直搬送機にあっては、力行運転又は回生運転の一方のみが継続することが多いため、エレベータにおけるような省エネの実現は難しく、一次側の電源設備における負荷軽減の方が重要であることがわかった。
【0008】
また、従来は、搬送台の停止時に、都度、一次側電力により蓄電装置を充電していたため、充電回数が多く、蓄電装置の寿命を縮めてしまうことがあった。さらには、回生電力を利用できる場面にも関わらず、一次側電力による充電が行われてしまうことがあり、回生電力を有効に活用できていなかった。
【0009】
本発明の目的は、工業的に用いる垂直搬送機の蓄電装置及び制御装置であって、一次側
電源設備の負荷を軽減する蓄電制御装置を提供することにある。また、搬送台の停止時に、都度、一次側電力により蓄電装置を充電しない蓄電制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、巻上機に掛けられたロープの一方の側に搬送台が接続され、他方の側に錘が接続されている工業用の垂直搬送機に用いられる蓄電制御装置に関するものである。前記目的を達成するために、本発明の垂直搬送機の蓄電制御装置は、前記搬送台の停止前又は停止時に、蓄電装置が所定の充電目安充電量を下回っているか否かを判定し、前記所定の充電目安充電量を下回っている場合に一次側電力により充電し、前記所定の充電目安充電量を上回っている場合には、そのまま次の発進が可能となるように制御するとともに、前記搬送台の発進時に、所定の時間、前記蓄電装置が放電することによって一次側電源の使用電力が低減されるように制御し、前記所定の時間が経過した後は、前記垂直搬送機が力行運転であるか回生運転であるかの判別に基づいて、力行運転であるときは、前記一次側電源からの電力によって走行を続け、停止後に前記所定の充電目安充電量を下回っている場合に前記一次側電源により前記蓄電装置の充電を行い、回生運転であるときは、前記蓄電装置が回生電力により充電されるように制御しながら走行を続け、停止後に前記所定の充電目安充電量を下回っている場合に前記一次側電源により前記蓄電装置の充電を行うように制御する。
【発明の効果】
【0011】
このように構成することで、本発明の垂直搬送機の蓄電制御装置は、搬送台の発進時に、一次側電源の使用電力を低減することができる。また、所定の充電目安充電量を下回っている場合に一次側電力により蓄電装置を充電するため、停止時に、都度、一次側電力により充電しない。結果として、充電回数を減らすことで蓄電装置の寿命を延ばすことができる。また、所定の充電目安充電量を下回らないと一次側電力により蓄電装置を充電しないため、回生電力を有効に活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の対象となる垂直搬送機の一例を示す概略斜視図である。
【
図2】本実施の形態の蓄電制御装置の概要を示すブロック図である。
【
図3】蓄電制御装置における、1サイクルの流れを簡単に示したフローチャートである。
【
図4】蓄電制御装置による力行運転時のステップST1~ST11の間の信号及び電流値のタイムチャートである。
【
図5】蓄電制御装置による回生運転時のステップST1~ST9の間の信号及び電流値のタイムチャートである。
【
図6】連続力行運転時の蓄電装置の電圧値のタイムチャートである。
【
図7】連続回生運転時の蓄電装置の電圧値のタイムチャートである。
【
図8】力行運転と回生運転が組み合わされて行われる場合の蓄電装置の電圧値のタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る垂直搬送機の蓄電制御装置の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
図1には、本発明の対象となる工業用の垂直搬送機の一例が示されている。この垂直搬送機90は、巻上機91に掛けられたロープ95の一方の側に搬送台92が接続され、他方の側に錘93が接続されている。巻上機91は、枠体94の最上部に設置されることが多く、ロープ95が掛けられる輪体と、これを駆動する電動機を備えている。
【0015】
ロープ95は、通常用いられているワイヤロープのほか、チェーン等、使用可能な他の条体を全て含む意味で用いることとする。搬送台92は、床面にローラコンベアやチェーンベルトコンベア等のコンベアを備えて、荷物の受入及び払出を自動的に行うことができるようになっている。また、搬送台92が停止する各階には、荷物の供給と排出を行う水平搬送機96が設置されている。搬送台92は、そのコンベア面と水平搬送機96のコンベア面とが、略同レベルとなるように停止する。
【0016】
工業用の垂直搬送機90は、一定時間同じ作業を繰り返し行うことが多いのが特徴である。例えば、1階から3階まで荷物を搬送する作業を何十回も繰り返すとともに、その荷物が同一形態の物であることが多い。このような場合、作業者は、操作盤にその内容を入力することにより、その作業を自動的に繰り返し行うことができる。そして、作業者が、作業終了の入力を行ったり、機械が、搬送する荷物がなくなったことを自動的に検知したりするまで、作業を継続することができる。
【0017】
本発明は、
図2にその概要を示すように、垂直搬送機90を駆動する電動機に供給する電力を制御する蓄電制御装置10に関する。一次側電源80からの電力は、インバータ部11を経由して垂直搬送機90に送られるようになっている。インバータ部11は、垂直搬送機90が要求する状態の交流電力を供給するとともに、補助電源装置13を介して蓄電装置14を充電する電力を供給したり、蓄電装置14の放電による電力を受給したりすることができる。さらに、垂直搬送機90からの回生電力を受給して、蓄電装置14を充電することもできる。これらの動作は昇降制御装置12によって制御されている。
【0018】
本発明の蓄電制御装置10は、インバータ部11、昇降制御装置12、補助電源装置13、蓄電装置14、及び制動抵抗器15を含むものである。そして、この蓄電制御装置10は、工業用の垂直搬送機90において最も有利と考えられる制御方法が実行されるものである。
【0019】
図2において、一次側電源80は、電力会社から購入した電力を、垂直搬送機90に供給するための設備である。インバータ部11では、一次側電源80からの交流電力を、一旦直流に変換した後、再度巻上機の要求に適した状態の交流に変換して出力する。これによって、垂直搬送機90の速度や加速度を任意に設定することができる。
【0020】
また、インバータ部11は、一次側電源80からの交流電力を直流に変換して蓄電装置14に供給し、蓄電装置14を充電することができる。或いは、蓄電装置14から放電された直流電力を受給して、これを巻上機の要求に適した状態の交流電力として出力することができる。さらに、垂直搬送機90の回生運転において発生した電力を直流に変換して
蓄電装置14に供給し、蓄電装置14を充電することができる。このとき、蓄電装置14が所定の充電量に達した場合には、余剰電力を制動抵抗器(電気的負荷)15で消費させることができる。
【0021】
蓄電装置14としては、大容量キャパシタや二次電池を使用することができる。大容量キャパシタは、例えば、電気二重層キャパシタや、リチウムイオンキャパシタ等である。二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池等である。蓄電装置14の容量としては、搬送台92の発進時に放電することによって、力行運転で電動機が消費する最大電力の半分以上を負担できることが好ましい。このときの放電量は、放電時間を3~10秒と考えれば十分である。
【0022】
蓄電装置14の充放電は、補助電源装置13を介して行われ、補助電源装置13は昇降制御装置12により制御されている。補助電源装置13は、昇降制御装置12からの指令により、インバータ部11から電力を受給して蓄電装置14を充電することができる。この指令には、垂直搬送機90の作業開始時に蓄電装置が所定の充電目安充電量を下回っている場合に行う初期充電と、作業サイクル後の停止時に蓄電装置が所定の充電目安充電量を下回っている場合に行う停止充電とがある。
【0023】
蓄電装置14の充電量は、補助電源装置13で検出される。本実施の形態では、蓄電装置が搬送台92の発進時に放電するのに必要な充電量より少し多い充電量を「充電目安充電量」と定義している。充電上限であり、さらなる充電が過充電となる充電量を「上限充電量」と定義している。上限充電量より少なく、且つ、充電目安充電量より多い所定の充電量を「充電完了充電量」と定義している。
【0024】
なお、本実施の形態では、蓄電装置14の充電量は、蓄電装置14の電圧値に比例しているため、蓄電装置14の電圧値に基づいて蓄電装置14の充電量を推測する。以下では、説明の便宜上、蓄電装置14の充電量は、蓄電装置14の電圧値を用いて説明する。そのため、上記定義した「充電目安充電量」は「充電目安電圧値」と言い換え、「上限充電量」は「上限電圧値」と言い換え、「充電完了充電量」を「充電完了電圧値」と言い換えて、説明する。
【0025】
補助電源装置13は、運転に必要な条件が揃っていることを示す準備完了信号を昇降制御装置12へ送る。そして、補助電源装置13は、昇降制御装置12からの指令により、蓄電装置14を放電させて、インバータ部11に供給することができる。本発明の蓄電制御装置10では、蓄電装置14の放電を、搬送台92の発進時に行われる起動放電のみとすることにより、設備を小型化することができる。
【0026】
昇降制御装置12は、作業者及び垂直搬送機からの指令(図示していない)や、プログラムされた手順に従って、インバータ部11及び補助電源装置13に指令を発することができる。例えば、昇降制御装置12は、インバータ部11に対して、電動機の起動、停止、速度などの指令(起動信号及び速度信号)を発信し、補助電源装置13に対して充電又は放電の指令(初期充電信号、停止充電信号及び起動放電信号)を発信する。このような構成によって、本発明の蓄電制御装置10は、垂直搬送機90の主電動機に供給する電力を制御するようになっている。
【0027】
<フローチャート>
図3は、蓄電制御装置10における、1サイクルの流れを簡単に示したフローチャートである。サイクルの最初に、昇降制御装置12から補助電源装置13に起動放電信号が送られる(ステップST1)。これにより蓄電装置14の放電(起動放電)が開始されるとともに(ステップST2)、垂直搬送機90の昇降が開始される(ステップST3)。昇降開始後、補助電源装置13において、この運転が力行運転であるか回生運転であるかを判別する(ステップST4)。
【0028】
回生運転である場合には、回生した電力を蓄電装置14に送って充電し(ステップST5)、上限電圧値V3に達するまで充電する(ステップST6)。上限電圧値V3に達した後、回生運転状態が継続している場合には、回生した電力を制動抵抗器15で消費させる(ステップST7)。搬送機の昇降が停止すると回生運転状態が終了し(ステップST8)、起動放電信号がOFFになる(ステップST9)。
【0029】
力行運転である場合には、所定時間(本実施の形態の場合は3~10秒)、蓄電装置14から放電後、起動放電信号がOFFとなり(ステップST10)、その後、垂直搬送機90が停止するのを待つことになる(ステップST11)。
【0030】
垂直搬送機90が停止した後、蓄電制御装置10は、蓄電装置14の電圧値を測定し、蓄電装置14の電圧値が、充電目安電圧値(充電目安充電量)V1を下回っているか否か判定する(ステップST12)。充電目安電圧値V1を下回っている場合には、昇降制御装置12から補助電源装置13に停止充電信号が送られ(ステップST13)、充電完了電圧値V2まで停止充電が行われる(ステップST14~ST16)。充電目安電圧値V1を下回っていない場合には、そのままサイクルを終了する。
【0031】
<力行運転時のタイムチャート>
図4は、蓄電制御装置10による力行運転時(荷物を上の階に持ち上げる運転をしている場合)の上記ステップST1~ST11の間の信号及び電流値のタイムチャートである。
【0032】
図4に示すように、運転信号(起動信号)がOFFからONに変わると、巻上機91の電動機が起動し、その回転数が加速され、所定の速度で一定に保持される。運転信号がONからOFFに変わると、電動機の回転数は減速して停止に至る。
【0033】
インバータ部11の出力電流は、起動時に急激に上昇して最大値となった後低下し、その後一定の値で推移する。これは、搬送台92が発進する際に、使用電力のピークが存在することを示している。そして、蓄電装置14を使用しない場合には、インバータ部11の入力電流となる一次側電源80の使用電流も、これと同じパターンとなる。
【0034】
本発明の蓄電制御装置10では、起動時に一定時間、蓄電装置14を放電させることにより、一次側電源80の電流を低減させる(すなわち、蓄電装置14によるアシストを行っている)。放電する時間は、図に示すように短時間(数秒間)である。これによって、一次側電源80の使用電流は、図に示すように緩やかに上昇し、ピークを備えることなく一定の電流値に到達することができる。
【0035】
運転信号がONからOFFに変わると、電動機の回転数は減速して停止に至り、インバータ部11の出力電流も0となる。
【0036】
<回生運転時のタイムチャート>
図5は、蓄電制御装置10による回生運転時(荷物を下の階に降ろす運転をしている場合)の上記ステップST1~ST9の間の信号及び電流値のタイムチャートである。
【0037】
図5に示すように、力行運転の場合と同様に、運転信号がOFFからONに変わると、巻上機91の電動機が起動し、その回転数が加速され、所定の速度で一定に保持される。運転信号がONからOFFに変わると、電動機の回転数は減速して停止に至る。
【0038】
インバータ部11の出力電流(すなわち、蓄電装置14によるアシスト)は、起動時に短時間のみ必要である。そして、流れる電流は、力行運転と比較して少ないので、蓄電装置14の放電のみによってこれを賄うことができる。インバータ部11の出力電流が0となった後、巻上機91の電動機は、発電機として機能することになる。この電力によって蓄電装置14を回生充電することが可能である。なお、
図5の蓄電装置充放電電流は、電動機の運転中、回生充電が継続するものとして図示してあり、上限電圧値V3に達して制動抵抗器15で消費する場合は図示していない。
【0039】
運転信号がONからOFFに変わると、電動機の回転数は減速して停止に至る。
【0040】
<連続力行運転時の電圧値>
図6は、連続力行運転時の蓄電装置14の電圧値のタイムチャートである。
図6に示す例では、力行運転を計6回([力行1~6])行っている。
図6に示す例では、[力行1,2,4,5]の後は、蓄電装置14の電圧値は充電目安電圧値V1を下回っていないため、そのまま次の発進を行っている。これに対して、[力行3]及び[力行6]の後は、蓄電装置14の電圧値が充電目安電圧値を下回っているため、停止時に一次側電力により、充電完了電圧値V2まで充電を行っている(停止充電)。
【0041】
<連続回生運転時の電圧値>
図7は、連続回生運転時の蓄電装置14の電圧値のタイムチャートである。
図7に示す例では、回生運転を計6回([回生1~6])行っている。
図7に示すように、連続回生運転時には、通常は、充電目安電圧値V1を下回ることはない。
図7に示す例では、回生充電により、[回生2]の停止時点で、蓄電装置14の電圧値は上限電圧値V3に達している。そして、[回生3~6]においては、アシストによって下がった電圧値分を回生充電した後は、余剰電力を制動抵抗器(電気的負荷)15で消費させる。
【0042】
<力行運転・回生運転時の電圧値>
図8は、力行運転と回生運転が組み合わされて行われる場合の蓄電装置14の電圧値のタイムチャートである。
図8に示す例では、力行運転([力行1~4])と回生運転([回生1~3])が交互に現れている。各運転後の停止時に、蓄電制御装置10は、蓄電装置14の電圧値を測定し、充電目安電圧値V1を下回っているか否か判定している。
図8に示す例では、[回生3]の途中で充電目安電圧値V1を下回っているが、回生充電により充電目安電圧値V1を上回っており、停止時に一次側電源80による充電は行われていない。これに対して、[力行4]の後は、蓄電装置14の電圧値は、充電目安電圧値V1を下回っているため、停止時に一次側電源80により充電完了電圧値V2まで充電をしている。
【0043】
<垂直搬送機の蓄電制御装置の作用>
以下、本実施の形態の垂直搬送機の蓄電制御装置の作用を説明する。
【0044】
本実施の形態の垂直搬送機の蓄電制御装置は、巻上機91に掛けられたロープ95の一方の側に搬送台92が接続され、他方の側に錘93が接続されている工業用垂直搬送機に用いられる蓄電制御装置10であって、搬送台92の停止前又は停止時に、蓄電装置14が所定の充電目安充電量V1を下回っているか否かを判定し、所定の充電目安充電量V1を下回っている場合に一次側電源80により充電し、所定の充電目安充電量V1を上回っている場合には、そのまま次の発進が可能となるように制御するとともに、搬送台92の発進時に、所定の時間、蓄電装置14が放電することによって一次側電源80の使用電力が低減されるように制御し、所定の時間が経過した後は、垂直搬送機90が力行運転であるか回生運転であるかの判別に基づいて、力行運転であるときは、一次側電源80からの電力によって走行を続け、停止後に所定の充電目安充電量V1を下回っている場合に一次側電源80により蓄電装置14の充電を行い、回生運転であるときは、蓄電装置14が回生電力により充電されるように制御しながら走行を続け、停止後に所定の充電目安充電量V1を下回っている場合に一次側電源80により蓄電装置の充電を行うように制御することを特徴とする。
【0045】
このようにすることで、本発明の垂直搬送機の蓄電制御装置は、搬送台92の発進時に、一次側電源80の使用電力を低減することができる。また、所定の充電目安充電量(充電目安電圧値)V1を下回っている場合に一次側電力により蓄電装置14を充電するため、停止時に、都度、一次側電源80により充電しない。結果として、充電回数を減らすことで蓄電装置14の寿命を延ばすことができる。また、所定の充電目安充電量V1を下回らないと一次側電源80により蓄電装置14を充電しないため、回生電力を有効に活用できる。
【0046】
一次側電源80の使用電力を低減するため、一次側電源80の使用電力が、搬送台92の発進時に最大値とならないように制御することが好ましい。また、蓄電装置14の放電時間である所定の時間は、3~10秒であることが好ましい。蓄電装置は、任意のものを使用することができるが、短時間での充放電に適した大容量キャパシタ(電気二重層キャパシタや、リチウムイオンキャパシタ等)が好ましい。
【0047】
回生運転であるときは、回生電力により蓄電装置が充電され上限充電量に達することがある。この場合には、回生電力を電気的負荷で消費するように制御すればよい。このようにすれば、回生電力を蓄電装置の充電に最大限に活用できる。
【0048】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で変更が可能であるのは勿論である。
【0049】
例えば、蓄電制御装置の故障を検知できるようにしてもよい。この場合は、例えば、サイクル開始後、蓄電制御装置の故障を検知したら、アラートを出し、電動機の速度を落として、一次側電源のピークを抑えて運転するようにしてもよい。
【0050】
また、一次側電源の停電対策として、別途、発電機を備えていてもよい。本発明は蓄電制御装置を備えているため、蓄電制御装置を備えていない場合に比べて、発電機の負荷を軽減でき、また、必要な発電機の容量を小さくすることができる。
【符号の説明】
【0051】
10 蓄電制御装置
11 インバータ部
12 昇降制御装置
13 補助電源装置
14 蓄電装置
15 制動抵抗器
80 一次側電源
90 垂直搬送機
91 巻上機
92 搬送台
93 錘
94 枠体
95 ロープ
96 水平搬送機