(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098456
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】ご遺体安置装置
(51)【国際特許分類】
A61G 17/00 20060101AFI20240716BHJP
A61G 17/04 20060101ALI20240716BHJP
F25D 17/06 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A61G17/00 Z
A61G17/04 C
F25D17/06 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002004
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】391054187
【氏名又は名称】株式会社三洋
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池本 徹
(72)【発明者】
【氏名】控井 勇貴
【テーマコード(参考)】
3L345
【Fターム(参考)】
3L345AA05
3L345AA18
3L345BB10
3L345KK04
(57)【要約】
【課題】ご遺体安置装置において、収容筐体内に形成され棺が収容された収容空間の温度分布のムラを抑えながら、その収容空間を冷却する。
【解決手段】吹出通風部22は棺12に対して棺長手方向Dnの一方側に配置され、冷却装置20から吹き出された空気を棺12に対する棺方向上側へ導く吹出空気通路22aを形成する。上側通風部26は棺12に対して棺方向上側に配置され、吹出空気通路22aから流出した空気を棺12に対する棺長手方向Dnの一方側から他方側へ導く上側空気通路26aを収容空間14aの一部として形成する。そして、下側通風部30は棺12に対して棺方向下側に配置され、棺12に対する棺長手方向Dnの他方側から一方側へ空気を導く下側空気通路30aを収容空間14aの一部として形成する。従って、冷却装置20が冷却した空気により、収容空間14aの温度分布のムラを抑えながら収容空間14aを冷却することが可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ご遺体安置装置であって、
棺(12)が収容される収容空間(14a)が内部に形成され、前記棺に対し該棺の長手方向(Dn)の一方側で前記収容空間に面し吸込孔(151a)が形成された一方側壁部(151)を有する収容筐体(14)と、
前記収容空間から前記吸込孔を介して吸い込んだ空気を冷却して吹き出す冷却装置(20)と、
前記棺に対して前記長手方向の前記一方側に配置され、前記冷却装置から吹き出された空気を前記棺に対する上側へ導く吹出空気通路(22a)を形成する吹出通風部(22)と、
前記棺に対して上側に配置され、前記吹出空気通路から流出した空気を前記棺に対する前記長手方向の前記一方側から該一方側とは反対側の他方側へ導く上側空気通路(26a)を前記収容空間の一部として形成する上側通風部(26)と、
前記棺に対して下側に配置され、前記棺に対する前記長手方向の前記他方側から前記一方側へ空気を導く下側空気通路(30a)を前記収容空間の一部として形成する下側通風部(30)とを備える、ご遺体安置装置。
【請求項2】
前記収容筐体は、前記収容空間が上側へ開口するように該収容空間が形成された筐体本体(15)と、前記筐体本体に対して上側に配置され前記収容空間の開口(14b)を塞ぐ筐体蓋(16)とを有し、
前記上側通風部は、前記筐体蓋に含まれ前記上側空気通路に対する上側から該上側空気通路に面する通路蓋側形成部(161)と、前記上側空気通路に対する下側から該上側空気通路に面する通路下側形成部(262)とから構成され、
前記通路下側形成部は、前記筐体蓋が前記筐体本体の上に載り前記収容空間の開口を塞いだ状態で前記筐体本体と前記筐体蓋との間に挟まれる被保持部(262c)を有し、前記筐体蓋が前記収容空間の開口を開放した状態では前記筐体本体から取外し可能になる、請求項1に記載のご遺体安置装置。
【請求項3】
前記通路下側形成部は、折畳み可能なシート状のシート状物で構成されている、請求項2に記載のご遺体安置装置。
【請求項4】
前記通路下側形成部は、前記収容空間の中では前記長手方向の前記一方側に偏って配置される、請求項2に記載のご遺体安置装置。
【請求項5】
前記収容筐体は、前記収容空間に対し下側から面する収容空間底面(15b)を有し、
前記下側通風部は、前記収容空間底面から上側へ突き出すと共に前記長手方向へ延伸し互いに離れて並列に設けられた複数の底面リブ(301)を有し、
複数の前記底面リブはそれぞれ、該底面リブのうち上側に設けられ前記棺が載る上端(301a)を有し、
前記下側空気通路は、前記棺の外側表面のうち下側を向いた下面(121)と前記収容空間底面とに挟まれるように形成される、請求項1に記載のご遺体安置装置。
【請求項6】
前記一方側壁部は、前記収容空間に面して上下方向(Dh)に延伸する一方側内壁面(152)を有し、
前記吸込孔は、前記収容空間に対し前記一方側内壁面にて開口し、
前記吹出通風部は、前記一方側内壁面に固定され且つ前記吹出空気通路を形成する吹出通路形成部(221)を有し、
前記吹出通路形成部は、前記吸込孔よりも上側で前記一方側内壁面から出っ張るように設けられる、請求項1に記載のご遺体安置装置。
【請求項7】
前記棺内には、ご遺体(78)の足(781)が該ご遺体の頭部(782)よりも前記長手方向の前記一方側に位置するように前記ご遺体が収容されている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のご遺体安置装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棺内のご遺体を保冷するご遺体安置装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のご遺体安置装置として、例えば特許文献1に記載されたご遺体安置器が従来から知られている。この特許文献1に記載されたご遺体安置器は、棺に相当する内容器と、その内容器が収容される外容器と、その外容器内を冷却する冷却装置とを備えている。
【0003】
その冷却装置は、外容器の長手方向の一方側に設けられた側壁を貫通した貫通孔を介して、外容器の内部に連通している。冷却装置で発生した冷風は、その側壁の貫通孔を介して冷却装置から外容器の内部へと導入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のご遺体安置器では、冷却装置からの冷風を外容器内へ導入するための貫通孔が、外容器の長手方向の一方側に設けられている。しかしながら、その冷風導入用の貫通孔から導入された冷風を外容器内の全体に行き渡らせる空気通路が確保されていない。
【0006】
そのため、例えば外容器内において、冷風導入用の貫通孔から導入された冷風がその貫通孔に対し内容器を挟んだ反対側にまで届かず、その導入された冷風は、冷風導入用の貫通孔の近傍に滞留することになる。そうなると、外容器内の温度分布のムラが拡大し、内容器内のご遺体の腐敗が部分的に進行しやすくなる可能性がある。発明者らの詳細な検討の結果、以上のようなことが見出された。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、収容筐体内の温度分布のムラを抑えながら収容筐体内を冷却することが可能なご遺体安置装置を提供することを目的とする。なお、上記収容筐体は上記外容器に対応する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のご遺体安置装置は、
棺(12)が収容される収容空間(14a)が内部に形成され、棺に対しその棺の長手方向(Dn)の一方側で収容空間に面し吸込孔(151a)が形成された一方側壁部(151)を有する収容筐体(14)と、
収容空間から吸込孔を介して吸い込んだ空気を冷却して吹き出す冷却装置(20)と、
棺に対して長手方向の一方側に配置され、冷却装置から吹き出された空気を棺に対する上側へ導く吹出空気通路(22a)を形成する吹出通風部(22)と、
棺に対して上側に配置され、吹出空気通路から流出した空気を棺に対する長手方向の一方側からその一方側とは反対側の他方側へ導く上側空気通路(26a)を収容空間の一部として形成する上側通風部(26)と、
棺に対して下側に配置され、棺に対する長手方向の他方側から一方側へ空気を導く下側空気通路(30a)を収容空間の一部として形成する下側通風部(30)とを備える。
【0009】
このようにすれば、収容筐体内に形成された収容空間に棺が収容された状態で、冷却装置が冷却した空気をその収容空間の略全体にわたって循環させることが可能である。そのため、収容空間の温度分布のムラを抑えながら収容空間を冷却することが可能である。
【0010】
なお、出願書類中の各欄において、各要素に括弧付きの参照符号が付されている場合がある。この場合、参照符号は、同要素と後述する実施形態に記載の具体的構成との対応関係の単なる一例を示すものであるにすぎない。よって、本発明は、参照符号の記載によって、何ら限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態におけるご遺体安置装置の概略構成を模式的に示した図であって、棺上下方向および棺長手方向に拡がる平面でご遺体安置装置を切断して得られる断面図である。
【
図2】
図1のII-II断面を模式的に示した断面図である。
【
図3】
図1のIII-III断面を模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら、実施形態を説明する。なお、後述の他の実施形態を含む以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0013】
(第1実施形態)
図1に示すように、本実施形態のご遺体安置装置10は、棺12内に収容されたご遺体78の腐敗を防止するために、棺12およびその棺12内のご遺体78を冷却し保冷する装置である。ご遺体安置装置10は、例えば上向きの水平面である載置面80上に置かれた状態で使用される。その載置面80は、例えば屋内の床面や祭壇の台の上面などである。本実施形態において、ご遺体安置装置10に保冷される棺12は、例えば木材など焼却可能な材料で構成された箱であり、一方向に延伸した直方体形状を成している。
【0014】
なお、本実施形態の説明では、棺12の上記一方向である長手方向Dnは棺長手方向Dnと称されることがあり、
図2に示す棺12の幅方向Dw(別言すると、棺12の短手方向Dw)は棺幅方向Dwと称されることがある。また、棺12の高さ方向Dh(別言すると、棺12の上下方向Dh)は棺上下方向Dhと称されることがある。それら三つの方向Dn、Dw、Dhは互いに垂直な方向である。
【0015】
また、本実施形態の説明では、棺上下方向Dhの上側は棺方向上側と称されることがあり、棺上下方向Dhの下側は棺方向下側と称されることがある。また、本実施形態において、棺12がご遺体安置装置10に収容されそのご遺体安置装置10が載置面80上に置かれた状態(すなわち、ご遺体安置装置10の設置状態)では、例えば、棺上下方向Dhは載置面80に対して垂直になる。それと共に、そのご遺体安置装置10の設置状態では、棺長手方向Dnと棺幅方向Dwはそれぞれ載置面80に対して平行になる。
【0016】
また、
図1~
図3は、ご遺体安置装置10の設置状態でそのご遺体安置装置10を表示している。本実施形態では、特に断りのない限り、ご遺体安置装置10がそのご遺体安置装置10の設置状態にあるものとして説明される。また、
図1~
図3では棺12は断面図示されておらず、
図1では冷却装置20も断面図示されていない。
【0017】
図1~
図3に示すように、ご遺体安置装置10は、収容筐体14と冷却装置20と吹出通風部22と上側通風部26と下側通風部30とを備えている。なお、
図1は
図2のI-I断面を示している。
【0018】
収容筐体14は、載置面80上に置かれて使用され棺12を収容する箱である。そのため、収容筐体14の内部には、棺12が収容される収容空間14aが形成されている。ご遺体安置装置10によって棺12が保冷されている保冷状態(言い換えると、ご遺体安置装置10の使用状態)では、例えば収容筐体14の収容空間14aは、密閉または略密閉された閉空間とされる。なお、棺12の内部空間には、ご遺体78の足781がそのご遺体78の頭部782よりも棺長手方向Dnの一方側に位置するようにご遺体78が収容されている。また、棺12内のご遺体78は、そのご遺体78の顔783が棺方向上側を向くように置かれている。
【0019】
収容筐体14は、その収容筐体14の内部を保冷するための保冷容器として機能するので、例えば発泡スチレンや発泡ウレタンなど、高断熱性を備えた断熱材で構成されている。
【0020】
収容筐体14は、棺12と同様に、長手方向Dnに延伸した直方体形状を成している。従って、収容筐体14の長手方向は棺長手方向Dnに一致し、収容筐体14の幅方向(別言すると、収容筐体14の短手方向)は棺幅方向Dwに一致し、収容筐体14の高さ方向(別言すると、収容筐体14の上下方向)は棺上下方向Dhに一致する。
【0021】
詳細には、収容筐体14は、筐体本体15と筐体蓋16とを有している。その筐体本体15と筐体蓋16はそれぞれ、上記した断熱材で構成されている。収容筐体14のうち、上記の収容空間14aは筐体本体15の内側に形成されている。
【0022】
例えば、筐体本体15は複数枚の板状の断熱板材を有し、その複数枚の断熱板材は収容空間14aを囲む底部や壁部を構成する。そして、筐体本体15は、その複数枚の断熱板材が箱形状を成すように互いに結合されることによって構成される。その互いに結合された複数枚の断熱板材は、それぞれに分解可能となっている。
【0023】
その筐体本体15の単体では、筐体本体15内の収容空間14aは棺方向上側へ開口している。すなわち、収容空間14aは、その収容空間14aのうち棺方向上側に位置する開口14bを有している。
【0024】
また、筐体本体15は、その筐体本体15のうち棺長手方向Dnの一方側に設けられた一方側壁部151を有している。その一方側壁部151は、棺長手方向Dnを厚み方向とした平板状を成し、例えば筐体本体15を構成する複数枚の断熱板材のうちの1枚によって構成される。
【0025】
一方側壁部151と収容空間14aとの位置関係について言うと、その一方側壁部151は、収容空間14aに対し棺長手方向Dnの一方側から面しており、棺12に対し棺長手方向Dnの一方側に配置されている。
【0026】
すなわち、その一方側壁部151は、収容空間14aに面して棺上下方向Dhに延伸する一方側内壁面152を有している。その一方側内壁面152は、棺長手方向Dnを法線方向として棺長手方向Dnの一方側とは反対側の他方側へ向いた平面状に形成されている。
【0027】
また、一方側壁部151には、その一方側壁部151を棺長手方向Dnに貫通した吸込孔151aと吹出孔151bとが形成されている。その吸込孔151aと吹出孔151bはそれぞれ、収容空間14aに対し一方側内壁面152にて開口し、吹出孔151bは吸込孔151aよりも棺方向上側に設けられている。
【0028】
また、筐体本体15は、筐体本体15の外側表面のうち棺方向下側を向いた収容筐体下面15aを有している。この収容筐体下面15aは、載置面80に対し対向して載置面80に接触する。
【0029】
また、筐体本体15は、収容空間14aの底を形成する収容空間底面15bを有している。従って、収容空間底面15bは、収容空間14aに対し棺方向下側から面する。例えば、収容空間底面15bは、棺上下方向Dhを法線方向として棺方向上側へ向いた平面状に形成されている。
【0030】
筐体蓋16は、収容空間14aを閉じるための蓋であり、筐体本体15に対して棺方向上側に配置される。筐体蓋16は、例えば棺上下方向Dhを厚み方向とした平板状を成している。筐体蓋16は、筐体本体15から取外し可能なものである。具体的に、筐体蓋16は筐体本体15上に載せられ、これにより収容空間14aの開口14bを塞ぐ。
【0031】
冷却装置20は収容筐体14の外側に設けられ、筐体本体15の一方側壁部151に対し棺長手方向Dnの一方側に配置されている。冷却装置20は筐体本体15の吸込孔151aと吹出孔151bとに接続されている。
【0032】
冷却装置20は、例えば電動の冷却装置である。冷却装置20は、矢印A1で示されるように収容空間14aから吸込孔151aを介して空気を吸い込み、その吸い込んだ空気を冷却する。そして、冷却装置20は、その冷却した空気(すなわち、冷気)を、矢印A2で示されるように吹出孔151bへ吹き出す。
【0033】
例えば、冷却装置20は、冷媒が循環する冷凍サイクルによって空気を冷却する。そして、冷却装置20は、吸込孔151aから流入した空気を冷媒によって冷却する熱交換器と、吸込孔151aからその熱交換器を介して吹出孔151bへ空気を流す送風機とを備えている。
【0034】
吹出通風部22は、収容筐体14内において、棺12に対し棺長手方向Dnの一方側に配置されている。そして、吹出通風部22は、その吹出通風部22内に吹出空気通路22aを形成している。その吹出空気通路22aは、矢印A2で示されるように、冷却装置20から吹出孔151bを介して吹き出された空気を棺12よりも棺方向上側へ導く。
【0035】
詳細には、吹出通風部22は、筐体本体15の一方側内壁面152に固定された吹出通路形成部221を有している。その吹出通路形成部221は収容空間14aの一部分を占めるように配置されている。
【0036】
その吹出通路形成部221は、棺長手方向Dnの他方側が開放された箱形状を成し、一方側内壁面152に取り付けられることでその一方側内壁面152と吹出通路形成部221との間に吹出空気通路22aを形成する。すなわち、吹出空気通路22aは収容空間14aの一部分である。
【0037】
また、吹出通路形成部221の下端は、筐体本体15の吸込孔151aよりも棺方向上側で且つ吹出孔151bよりも棺方向下側に位置している。そのため、吹出通路形成部221は、吸込孔151aよりも棺方向上側で一方側内壁面152から出っ張るように設けられている。
【0038】
また、吹出通路形成部221には、棺12よりも棺方向上側の位置に設けられた上側吹出孔221aが形成されている。その上側吹出孔221aは、吹出通路形成部221を棺長手方向Dnに貫通し、上側吹出孔221aにおける棺長手方向Dnの一方側で吹出空気通路22aへ接続している。従って、吹出孔151bから吹出空気通路22aを通って棺方向上側へ導かれた空気は、矢印A3で示されるように、上側吹出孔221aから棺長手方向Dnの他方側へ吹出される。
【0039】
上側通風部26は、収容筐体14内において、棺12に対し棺方向上側に配置されている。そして、上側通風部26は、棺長手方向Dnに延伸した上側空気通路26aを、その上側通風部26内に形成している。
【0040】
上側通風部26は、吹出通路形成部221に対し棺長手方向Dnの他方側に配置されている。そして、上側空気通路26aは、その上側空気通路26aの空気流れ上流端にて吹出通風部22の上側吹出孔221aに対し棺長手方向Dnに対向するように配置されている。そのため、その上側空気通路26aは、矢印A3で示されるように、吹出空気通路22aから上側吹出孔221aを通って流出した空気を棺12に対する棺長手方向Dnの一方側から他方側へ導く。
【0041】
詳細には、上側通風部26は通路蓋側形成部161と通路下側形成部262とから構成されている。その通路蓋側形成部161は、筐体蓋16に含まれる一部分でもあり、上側空気通路26aに対する棺方向上側からその上側空気通路26aに面する。これに対し、通路下側形成部262は、上側空気通路26aに対する棺方向下側からその上側空気通路26aに面する。すなわち、上側空気通路26aは通路蓋側形成部161と通路下側形成部262との間に形成されている。
【0042】
通路下側形成部262は、棺長手方向Dnの一方側に設けられた一端262aと、棺長手方向Dnの他方側に設けられた他端262bとを有している。この通路下側形成部262の一端262aは、上側空気通路26aのうち棺長手方向Dnの一方側に設けられた空気流れ上流端を形成する。一方、通路下側形成部262の他端262bは、上側空気通路26aのうち棺長手方向Dnの他方側に設けられた空気流れ下流端を形成する。
【0043】
通路下側形成部262は、筐体蓋16に含まれる通路蓋側形成部161と棺12との間で、収容空間14aの一部分を占めるように配置されている。そのため、上側空気通路26aは収容空間14aの一部分として形成されている。
【0044】
また、通路下側形成部262は、吹出通路形成部221に対し棺長手方向Dnの他方側に配置され、且つ、収容空間14aの中では棺長手方向Dnの一方側に偏って配置されている。例えば本実施形態では、通路下側形成部262の一端262aが吹出通路形成部221に対し棺長手方向Dnの他方側に隣接して位置している。そして、通路下側形成部262の他端262bが、ご遺体78の頭部782よりも棺長手方向Dnの一方側に位置すると共に、棺長手方向Dnにおける収容空間14aの中心位置よりも他方側に位置している。
【0045】
具体的に、通路下側形成部262は、折畳み可能なシート状のシート状物で構成されている。このシート状物は通気性のないものである。例えば、通路下側形成部262を構成するシート状物としては、布やビニルシートなどを挙げることができる。
【0046】
そして、通路下側形成部262は、その通路下側形成部262を収容筐体14に保持するための一対の被保持部262cを有している。この一対の被保持部262cは、通路下側形成部262のうち棺幅方向Dwの両側の端縁部にそれぞれ設けられ、棺長手方向Dnに延伸している。例えば、一対の被保持部262cはそれぞれ、棺長手方向Dnでは、通路下側形成部262の一端262aの位置から他端262bの位置まで通路下側形成部262の全長にわたって設けられている。
【0047】
その一対の被保持部262cは、筐体本体15のうち棺方向上側に設けられた上端15cに対し、例えば面ファスナー等によって取外し可能にそれぞれ固定されている。そして、一対の被保持部262cは、筐体蓋16が筐体本体15の上に載り収容空間14aの開口14bを塞いだ状態で、その筐体本体15と筐体蓋16との間にそれぞれ挟まれている。このようにして通路下側形成部262は収容筐体14に保持されているので、筐体蓋16が筐体本体15から取り外されて収容空間14aの開口14bを開放した状態では、通路下側形成部262は筐体本体15から取外し可能になる。
【0048】
また、一対の被保持部262cは、棺幅方向Dwにおける一対の被保持部262cの相互間隔によって通路下側形成部262を弛ませた状態にしつつ、収容筐体14に対して固定されている。要するに、一対の被保持部262cは、通路下側形成部262を棺幅方向Dwに弛ませた状態で収容筐体14に対して固定されている。
【0049】
従って、棺長手方向Dnに沿う方向視において、通路下側形成部262は、重力の作用により、通路下側形成部262の中央部分を最下点として棺方向下側へ膨らむように一対の被保持部262cの間で湾曲している。詳細に言うと、その通路下側形成部262の中央部分は、吹出通風部22の上側吹出孔221aよりも棺方向下側かつ棺12よりも棺方向上側の位置にまで、一対の被保持部262cに対し下がっている。
【0050】
下側通風部30は、収容筐体14内において、棺12に対し棺方向下側に配置されている。そして、下側通風部30は、棺長手方向Dnに延伸した下側空気通路30aを形成している。その下側空気通路30aは、矢印A5で示されるように、棺12に対する棺長手方向Dnの他方側から一方側へ空気を導く。
【0051】
詳細には、下側通風部30は、収容空間底面15bから棺方向上側へ突き出た複数の底面リブ301を有している。その複数の底面リブ301はそれぞれ、棺長手方向Dnへ延伸し、互いに離れて並列に設けられている。また、棺長手方向Dnにおいて複数の底面リブ301の長さはそれぞれ、棺12の全長よりも長くなっている。
【0052】
複数の底面リブ301はそれぞれ、その底面リブ301のうち棺方向上側に設けられた上端301aを有している。その底面リブ301の上端301aには棺12が載る。すなわち、その上端301aは、棺12の外側表面のうち棺方向下側に設けられ棺方向下側を向いた下面121に接触する。
【0053】
このように収容空間14aでは棺12が複数の底面リブ301上に載った状態になるので、下側空気通路30aは、棺12の下面121と収容空間底面15bとに挟まれるように形成されている。そのため、下側空気通路30aは収容空間14aの一部分として形成されている。本実施形態では、下側空気通路30aは複数の底面リブ301に仕切られているので、棺幅方向Dwに並んで複数形成されている。
【0054】
以上説明したご遺体安置装置10において棺12を収容筐体14内に入れる場合には、筐体本体15を載置面80上に置き、筐体蓋16と通路下側形成部262とを筐体本体15から取り外しておく。そして、棺12を収容空間14aの開口14bから収容空間14aへ入れ、底面リブ301上に載せる。このとき、ご遺体78の足781が棺長手方向Dnの一方側に位置しご遺体78の頭部782が棺長手方向Dnの他方側に位置する向きで棺12を収容空間14aに収容する。
【0055】
収容空間14aへの棺12の収容後、一対の被保持部262cを筐体本体15の上端15cに固定することにより通路下側形成部262を筐体本体15に取り付ける。そして、筐体蓋16を筐体本体15上に載せて、その筐体蓋16で収容空間14aの開口14bを塞ぐ。その後、冷却装置20を作動させる。
【0056】
冷却装置20が作動すると、冷却装置20で冷却された空気は、矢印A2で示されるように吹出空気通路22aを通って棺方向上側へ流れてから、上側吹出孔221aを介して上側空気通路26aへと流れる。そして、上側空気通路26aへ流入した空気は、矢印A3で示されるように、上側空気通路26aを通って棺長手方向Dnの一方側から他方側へ流れる。
【0057】
上側空気通路26aから流出した空気は、矢印A4で示されるように、筐体本体15のうち棺長手方向Dnの他方側に設けられ棺長手方向Dnの他方側から収容空間14aに面する他方側壁部153と棺12との間の隙間を通って棺方向下側へと流れ、下側空気通路30aへ流入する。
【0058】
下側空気通路30aへ流入した空気は、矢印A5で示されるように、下側空気通路30aを通って棺長手方向Dnの他方側から一方側へ流れる。下側空気通路30aから流出した空気は、矢印A1で示されるように冷却装置20へ吸い込まれる。このように収容空間14a内の空気は、冷却装置20で冷却されながら収容空間14a内で循環する。
【0059】
上述したように、本実施形態によれば、吹出通風部22は棺12に対して棺長手方向Dnの一方側に配置され、冷却装置20から吹き出された空気を棺12に対する棺方向上側へ導く吹出空気通路22aを形成する。上側通風部26は棺12に対して棺方向上側に配置され、吹出空気通路22aから流出した空気を棺12に対する棺長手方向Dnの一方側から他方側へ導く上側空気通路26aを収容空間14aの一部として形成する。そして、下側通風部30は棺12に対して棺方向下側に配置され、棺12に対する棺長手方向Dnの他方側から一方側へ空気を導く下側空気通路30aを収容空間14aの一部として形成する。
【0060】
従って、収容空間14aに棺が収容された状態で、冷却装置20が冷却した空気をその収容空間14aの略全体にわたって循環させることが可能である。そのため、収容空間14aの温度分布のムラを抑えながら満遍なく収容空間14aを冷却することが可能である。
【0061】
(1)また、本実施形態によれば、上側通風部26は、通路蓋側形成部161と通路下側形成部262とから構成されている。その通路蓋側形成部161は筐体蓋16に含まれ、上側空気通路26aに対する棺方向上側からその上側空気通路26aに面し、通路下側形成部262は上側空気通路26aに対する棺方向下側からその上側空気通路26aに面する。また、通路下側形成部262は、筐体蓋16が筐体本体15の上に載り収容空間14aの開口14bを塞いだ状態で筐体本体15と筐体蓋16との間に挟まれる一対の被保持部262cを有している。更に、通路下側形成部262は、筐体蓋16が収容空間14aの開口14bを開放した状態では筐体本体15から取外し可能になる。
【0062】
従って、収容空間14aの開口14bを介し棺12を収容空間14aに対して出し入れすることを可能としつつ、上側空気通路26aが棺12に対し棺方向上側に重なるようにその上側空気通路26aを設けることが可能である。
【0063】
(2)また、本実施形態によれば、通路下側形成部262は、折畳み可能なシート状のシート状物で構成されている。従って、通路下側形成部262が収容筐体14から取り外された場合に、その通路下側形成部262の体格を小さくして取り扱うことが可能である。
【0064】
(3)また、本実施形態によれば、通路下側形成部262は、収容空間14aの中では棺長手方向Dnの一方側に偏って配置される。従って、吹出空気通路22aから流出した空気を棺12に対し棺長手方向Dnの他方側へ導くことを実現しつつ、収容空間14aに収容されたご遺体78の顔783を棺方向上側から見ることを通路下側形成部262が妨げにくいというメリットがある。
【0065】
(4)また、本実施形態によれば、下側通風部30は、収容空間底面15bから棺方向上側へ突き出た複数の底面リブ301を有し、その複数の底面リブ301はそれぞれ棺長手方向Dnへ延伸し、互いに離れて並列に設けられている。その複数の底面リブ301の上端301aには棺12が載る。そして、下側空気通路30aは、棺12の下面121と収容空間底面15bとに挟まれるように形成されている。
【0066】
従って、棺12を利用して簡単な構造で下側空気通路30aを形成することが可能である。また、棺12の下面121は、下側空気通路30aに流通する空気に接触しているので、その下側空気通路30aに流通する空気と棺12とを熱交換させやすい。
【0067】
(5)また、本実施形態によれば、筐体本体15の一方側内壁面152に固定された吹出通路形成部221は、吸込孔151aよりも棺方向上側で一方側内壁面152から出っ張るように設けられている。従って、吹出通路形成部221によって吹出空気通路22aを形成すると共に、下側空気通路30aから流出した空気が吸込孔151aよりも棺方向上側へ流れることを吹出通路形成部221で妨げることが可能である。これにより、下側空気通路30aから流出した空気を吸込孔151aへ導きやすくなる。
【0068】
(6)また、本実施形態によれば、棺12内には、ご遺体78の足781がそのご遺体78の頭部782よりも棺長手方向Dnの一方側に位置するようにご遺体78が収容されている。そして、冷却装置20で冷却され冷却装置20から吹き出された空気は上側空気通路26aに導かれ、ご遺体78の頭部782付近の位置で上側空気通路26aから流出する。それと共に、冷却装置20は、収容空間14aのうち棺長手方向Dnの一方側の端辺りから収容空間14a内の空気を吸い込む。
【0069】
従って、上述した収容空間14aでの空気の循環により収容空間14aの温度分布ムラを抑えながら、ご遺体78の頭部782または胸部付近の方がご遺体78の足781付近よりも低温になる緩やかな温度勾配を付けることが可能である。そのため、ご遺体78の足781よりも腐敗が進行しやすい頭部782または胸部を低温にして、ご遺体78全体で満遍なく腐敗防止を図ることができる。
【0070】
また、本実施形態によれば、通路下側形成部262は、通気性のないシート状物で構成されているので、上側空気通路26aの空気が上側空気通路26aの途中で漏れ出る量を抑えることが可能である。そのため、上記シート状物に通気性がある場合と比較して、冷却装置20で冷却された冷気を上側空気通路26aに流通させて通路下側形成部262の他端262b付近まで、より多く運ぶことができる。
【0071】
(他の実施形態)
(1)上述の第1実施形態において、吹出空気通路22aは収容空間14aの一部分として形成されているが、これは一例である。例えば、その吹出空気通路22aは収容筐体14の外側に設けられても差し支えない。
【0072】
(2)上述の第1実施形態では、筐体本体15は、複数枚の断熱板材が箱形状を成すように互いに結合されることによって構成され、その互いに結合された複数枚の断熱板材は、それぞれに分解可能となっているが、これは一例である。例えば、その互いに結合された複数枚の断熱板材は一体に接合されていて、分解不可能であって差し支えない。
【0073】
(3)なお、本発明は、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施することができる。また、上記実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0074】
また、上記実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではない。また、上記実施形態において、構成要素等の材質、形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の材質、形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その材質、形状、位置関係等に限定されるものではない。
【0075】
(本発明の特徴)
[請求項1]
ご遺体安置装置であって、
棺(12)が収容される収容空間(14a)が内部に形成され、前記棺に対し該棺の長手方向(Dn)の一方側で前記収容空間に面し吸込孔(151a)が形成された一方側壁部(151)を有する収容筐体(14)と、
前記収容空間から前記吸込孔を介して吸い込んだ空気を冷却して吹き出す冷却装置(20)と、
前記棺に対して前記長手方向の前記一方側に配置され、前記冷却装置から吹き出された空気を前記棺に対する上側へ導く吹出空気通路(22a)を形成する吹出通風部(22)と、
前記棺に対して上側に配置され、前記吹出空気通路から流出した空気を前記棺に対する前記長手方向の前記一方側から該一方側とは反対側の他方側へ導く上側空気通路(26a)を前記収容空間の一部として形成する上側通風部(26)と、
前記棺に対して下側に配置され、前記棺に対する前記長手方向の前記他方側から前記一方側へ空気を導く下側空気通路(30a)を前記収容空間の一部として形成する下側通風部(30)とを備える、ご遺体安置装置。
[請求項2]
前記収容筐体は、前記収容空間が上側へ開口するように該収容空間が形成された筐体本体(15)と、前記筐体本体に対して上側に配置され前記収容空間の開口(14b)を塞ぐ筐体蓋(16)とを有し、
前記上側通風部は、前記筐体蓋に含まれ前記上側空気通路に対する上側から該上側空気通路に面する通路蓋側形成部(161)と、前記上側空気通路に対する下側から該上側空気通路に面する通路下側形成部(262)とから構成され、
前記通路下側形成部は、前記筐体蓋が前記筐体本体の上に載り前記収容空間の開口を塞いだ状態で前記筐体本体と前記筐体蓋との間に挟まれる被保持部(262c)を有し、前記筐体蓋が前記収容空間の開口を開放した状態では前記筐体本体から取外し可能になる、請求項1に記載のご遺体安置装置。
[請求項3]
前記通路下側形成部は、折畳み可能なシート状のシート状物で構成されている、請求項2に記載のご遺体安置装置。
[請求項4]
前記通路下側形成部は、前記収容空間の中では前記長手方向の前記一方側に偏って配置される、請求項2または3に記載のご遺体安置装置。
[請求項5]
前記収容筐体は、前記収容空間に対し下側から面する収容空間底面(15b)を有し、
前記下側通風部は、前記収容空間底面から上側へ突き出すと共に前記長手方向へ延伸し互いに離れて並列に設けられた複数の底面リブ(301)を有し、
複数の前記底面リブはそれぞれ、該底面リブのうち上側に設けられ前記棺が載る上端(301a)を有し、
前記下側空気通路は、前記棺の外側表面のうち下側を向いた下面(121)と前記収容空間底面とに挟まれるように形成される、請求項1ないし4のいずれか1つに記載のご遺体安置装置。
[請求項6]
前記一方側壁部は、前記収容空間に面して上下方向(Dh)に延伸する一方側内壁面(152)を有し、
前記吸込孔は、前記収容空間に対し前記一方側内壁面にて開口し、
前記吹出通風部は、前記一方側内壁面に固定され且つ前記吹出空気通路を形成する吹出通路形成部(221)を有し、
前記吹出通路形成部は、前記吸込孔よりも上側で前記一方側内壁面から出っ張るように設けられる、請求項1ないし5のいずれか1つに記載のご遺体安置装置。
[請求項7]
前記棺内には、ご遺体(78)の足(781)が該ご遺体の頭部(782)よりも前記長手方向の前記一方側に位置するように前記ご遺体が収容されている、請求項1ないし6のいずれか1つに記載のご遺体安置装置。
【符号の説明】
【0076】
12 棺
14 収容筐体
14a 収容空間
20 冷却装置
22 吹出通風部
22a 吹出空気通路
26 上側通風部
26a 上側空気通路
30 下側通風部
30a 下側空気通路