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特開2024-98457建築限界測定方法、建築限界測定方法の表示方法、建築限界測定システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098457
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】建築限界測定方法、建築限界測定方法の表示方法、建築限界測定システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20240716BHJP
   G06T 19/00 20110101ALI20240716BHJP
   G01C 15/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
B61L23/00 A
G06T19/00 600
G01C15/00 103Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002006
(22)【出願日】2023-01-10
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】500510261
【氏名又は名称】JR東日本ビルテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】中野 淳子
(72)【発明者】
【氏名】小嶋(宮崎) 祐樹
【テーマコード(参考)】
5B050
5H161
【Fターム(参考)】
5B050AA03
5B050BA06
5B050BA09
5B050BA11
5B050CA01
5B050DA01
5B050EA19
5B050EA26
5B050FA02
5B050FA05
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM12
5H161MM15
5H161NN10
(57)【要約】
【課題】建物などを対象とする建築限界測定において、3次元点群データを利用しながら、オペレータに対して有効な測定結果を得るようにする。
【解決手段】3次元グラフィックモデルである車両型3DモデルM1をデータベースDBに作成、用意し、駅PFの上からレーザスキャナLSを用いて3次元計測を行う。3次元点群データから得られる3次元計測画像において、線路データRMを定め、車両型3DモデルM1を線路RMの上に配置する。線路RM上に配置された車両型3DモデルM1によって建築限界空間領域N1が規定され、建築限界空間領域N1と駅PF(特に、屋根PMの縁部分)との離隔距離が求められる。そして、建築限界空間領域N1(車両型3DモデルM1)全体を俯瞰できる視点からの3次元計測画像に対し、離隔距離の情報をイメージ化し、重ね合わせた可視化画像を表示する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路および前記線路に沿って設けられた建物または構造物(以下、建物等という)を3次元計測することによって得られる3次元点群データから、線路データを定め、
前記建物等全体または一部の長さに対応する長さをもつ車両型3次元建築限界モデルを、線路データに配置し、
前記線路データに配置された車両型3次元建築限界モデルに従って定められる建築限界空間領域と、前記建物との離隔距離を、3次元点群データに基づいて演算し、
3次元点群データに基づいて、前記建物等全体または一部を認識可能な視点からの3次元計測画像を生成し、
前記3次元計測画像に対し、演算された離隔距離の情報をイメージ化して重ね合わせた可視化画像を、表示する
ことを特徴とする建築限界測定方法。
【請求項2】
前記車両型3次元建築限界モデルが、面データを有し、
前記面データと、前記建物等の3次元点群データとに基づいて、離隔距離を求めることを特徴とする請求項1に記載の建築限界測定方法。
【請求項3】
オペレータによる線路に応じた点群データの画像部分に対する入力操作、駅の支柱の位置、または線路の直線部および曲線部の箇所に応じて、前記車両型3次元建築限界モデルを前記線路データに配置することを特徴とする請求項1に記載の建築限界測定方法。
【請求項4】
オペレータによる線路に応じた点群データの画像部分に対する入力操作に応じて、線路データを定めることを特徴とする請求項1に記載の建築限界測定方法。
【請求項5】
前記車両型3次元建築限界モデルが、前記線路データへの配置前において立体状3次元モデルとして構成されることを特徴とする請求項1に記載の建築限界測定方法。
【請求項6】
前記車両型3次元建築限界モデルが、前記線路データへの配置前において立体状3次元モデルを複数繋げた3次元モデルとして構成されることを特徴とする請求項1に記載の建築限界測定方法。
【請求項7】
前記線路の曲線半径、カントの少なくともいずれか一方に基づいて、前記立体状3次元モデルに対して拡大および回転の少なくともいずれか一方を施した状態で前記線路データへ配置することを特徴とする請求項5に記載の建築限界測定方法。
【請求項8】
前記車両型3次元建築限界モデルが、前記建物等全体の長さに対応する長さを有し、線路データに配置された複数の車両型2次元断面モデルを連続的な外表面で繋げた仮想3次元モデルとして、構成されることを特徴とする請求項1に記載の建築限界測定方法。
【請求項9】
前記線路の曲線半径、カントの少なくともいずれか一方に基づいて、前記複数の車両型2次元断面モデルに対して拡大および回転の少なくともいずれか一方を施した状態で前記線路データに配置し、連続的な外表面で繋げることによって、前記仮想3次元モデルを生成することを特徴とする請求項8に記載の建築限界測定方法。
【請求項10】
前記建物等の建物が、駅であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の建築限界測定方法。
【請求項11】
3次元点群データに基づいて、建物または構造物(以下、建物等という)全体または一部を認識可能な視点からの3次元計測画像を生成可能な点群画像生成部と、
線路および前記線路に沿って設けられた前記建物等を3次元計測することによって得られる3次元点群データから、線路データを定める線路設定部と、
前記建物等全体または一部の長さに対応する長さをもつ車両型3次元建築限界モデルを、線路データに配置する3次元モデル配置部と、
前記線路データに配置された車両型3次元建築限界モデルに従って定められる建築限界空間領域と、前記建物等との離隔距離を、3次元点群データに基づいて演算する建築限界測定部と、
前記3次元計測画像に対し、演算された離隔距離の情報をイメージ化して重ね合わせた可視化画像を、表示する表示処理部と
を備えたことを特徴とする建築限界測定システム。
【請求項12】
コンピュータにおいて、
線路および前記線路に沿って設けられた建物または構造物(以下、建物等という)を3次元計測することによって得られる3次元点群データから、線路データを設定するステップと、
前記建物等全体または一部の長さに対応する長さをもつ車両型3次元建築限界モデルを、線路データに配置するステップと、
前記線路データに配置された車両型3次元建築限界モデルに従って定められる建築限界空間領域と、前記建物等との離隔距離を、3次元点群データに基づいて演算するステップと、
3次元点群データに基づいて、前記建物等全体または一部を認識可能な視点からの3次元計測画像を生成するステップと、
前記3次元計測画像に対し、演算された離隔距離の情報をイメージ化して重ね合わせた可視化画像を、表示するステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項13】
車両外の場所から、線路および前記線路に沿って設けられた駅を3次元計測し、
前記3次元計測によって得られる3次元点群データから、線路データを定め、
前記駅全体または一部の長さに対応する長さをもつ車両型3次元建築限界モデルを、線路データに配置し、
前記線路データに配置された車両型3次元建築限界モデルに従って定められる建築限界空間領域と、前記駅との離隔距離を、3次元点群データに基づいて演算する
ことを特徴とする建築限界測定方法。
【請求項14】
前記車両型3次元建築限界モデルが、前記線路データへの配置前において立体状3次元モデルとして構成され、
前記線路のカントに基づいて、前記立体状3次元モデルに対して回転を施し、前記建築限界空間領域を形成することを特徴とする請求項13に記載の建築限界測定方法。
【請求項15】
前記車両型3次元建築限界モデルが、前記建物等全体の長さに対応する長さを有し、線路データに配置された複数の車両型2次元断面モデルを連続的な外表面で繋げた仮想3次元モデルとして、構成され、
前記線路のカントに基づいて、前記車両型2次元断面モデルに対して回転を施した状態で前記線路データに配置し、連続的な外表面で繋げた前記仮想3次元モデルを生成することを特徴とする請求項13に記載の建築限界測定方法。
【請求項16】
前記車両型2次元断面モデルを、駅の支柱の位置に配置する、あるいは駅の直線部および曲線部の位置に分けて配置することを特徴とする請求項15に記載の建築限界測定方法。
【請求項17】
請求項13乃至16のいずれかに記載の建築限界測定方法によって測定された駅と建築限界空間領域との離隔距離の情報をイメージ化し、3次元点群データから生成される前記駅全体または一部を認識可能な視点からの3次元計測画像に対して重ね合わせた可視化画像を、表示することを特徴とする建築限界測定の表示方法。
【請求項18】
線路または道路(以下、線路等という)および前記線路等に沿って設けられた建物または構造物(以下、建物等という)を3次元計測することによって得られる3次元点群データから、線路等のデータを定め、
前記建物等全体または一部の長さに対応する長さをもつ乗物の3次元建築限界モデルを、線路等のデータに配置し、
前記線路等のデータに配置された乗物の3次元建築限界モデルに従って定められる建築限界空間領域と、前記建物等との離隔距離を、3次元点群データに基づいて演算し、
3次元点群データに基づいて、前記建物等全体または一部を認識可能な視点からの3次元計測画像を生成し、
前記3次元計測画像に対し、演算された離隔距離の情報をイメージ化して重ね合わせた可視化画像を、表示する
ことを特徴とする建築限界測定方法。
【請求項19】
3次元点群データに基づいて、建物または構造物(以下、建物等という)全体または一部を認識可能な視点からの3次元計測画像を生成可能な点群画像生成部と、
線路または道路(以下、線路等という)および前記線路等に沿って設けられた前記建物等を3次元計測することによって得られる3次元点群データから、線路等のデータを定める線路等設定部と、
前記建物等全体または一部の長さに対応する長さをもつ乗物の3次元建築限界モデルを、線路等のデータに配置する3次元モデル配置部と、
前記線路等のデータに配置された乗物の3次元建築限界モデルに従って定められる建築限界空間領域と、前記建物等との離隔距離を、3次元点群データに基づいて演算する建築限界測定部と、
前記3次元計測画像に対し、演算された離隔距離の情報をイメージ化して重ね合わせた可視化画像を、表示する表示部と
を備えたことを特徴とする建築限界測定システム。
【請求項20】
コンピュータにおいて、
線路または道路(以下、線路等という)および前記線路等に沿って設けられた建物またはたは構造物(以下、建物等という)を3次元計測することによって得られる3次元点群データから、線路等のデータを定めるステップと、
前記建物全体または一部の長さに対応する長さをもつ乗物の3次元建築限界モデルを、線路等のデータに配置するステップと、
前記線路等のデータに配置された乗物の3次元建築限界モデルに従って定められる建築限界空間領域と、前記建物等との離隔距離を、3次元点群データに基づいて演算するステップと、
3次元点群データに基づいて、前記建物等全体または一部を認識可能な視点からの3次元計測画像を生成するステップと、
前記3次元計測画像に対し、演算された離隔距離の情報をイメージ化して重ね合わせた可視化画像を、表示するステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道などの乗物に対して定められる建築限界に関し、特に、建築限界とその周辺物との離隔測定(以下、建築限界測定という)に関する。
【背景技術】
【0002】
線路に沿って走行する鉄道、道路を走行する自動車等に対しては、通行の安全を確保するため、建物や構造物を設けてはならない空間範囲を示す「建築限界」が定められている。例えば鉄道の場合、線路に沿って設けられる駅などの建物、信号機、電柱などの鉄道設備、さらには線路周辺に存在する障害物(樹木など)と建築限界との距離を測定し、建築限界の内部に存在するか確認することが必要とされる。
【0003】
近年、線路周辺の建物、鉄道設備などの建築限界測定、あるいは樹木などの障害物検知のため、3次元点群データの活用が試みられている。3次元点群データは、対象物に対してステレオ法(アクティブステレオ方法、パッシブステレオ方法)、ToF(Time-of-Flight)方法などによる3次元計測によって取得される3次元情報であって、点群データ各々は、3次元座標値を有する。
【0004】
そして、3次元点群データの中で定められた測定点と、建築限界領域との最短距離を測定し、建築限界領域内に点群データが存在するか否かを判別する。これによって、鉄道設備などが建築限界領域外に存在することを確認する、あるいは、建築限界領域内に存在する樹木などの障害物を検知する。測定(演算)された建築限界との距離は、数値として表示するほか、色付けなどを施した可視化画像などによって視覚的に表現することもできる。
【0005】
以下に示す特許文献1~特許文献7には、3次元点群データを利用した建築限界測定、障害物の検知に関する手法が記載されている。
【0006】
特許文献1に記載されたデータ解析装置では、3次元計測装置を載せたデータ収集車両を線路(以下、軌道、レールともいう)に沿って走行させて3次元点群データを取得し、障害物が建築限界内に存在するか否かを判定する。具体的には、直線区間の走行によって得られた3次元点群データから、走行方向に直交する断面の2次元点群データを所定距離間隔ごとに抽出し、運行車両に基づいた建築限界領域を、上記断面の2次元点群データから特定される線路の点群データに合わせて設定し、建築限界領域内に点群データが存在するか否かを判定することによって、障害物を検知する。
【0007】
特許文献2に記載された建築限界測定図の作成装置においても、特許文献1と同様、3次元計測装置を載せたデータ収集車両を軌道に沿って走行させて3次元点群データを取得する。そして、線路に直交する2次元平面を定義し、測定点と建築限界との最短距離(最近接点との距離)を演算する。建築限界内に存在する測定点、あるいは近接する測定点に対しては、色付けを行う、あるいは距離の程度に応じて濃淡を変化させるなどの描画処理を行い、測定結果を可視化した画像を表示する。
【0008】
特許文献1、2に記載されているように、測定対象の3次元点群データは、鉄道車両や保守用車両にレーザスキャナ(LIDAR)などを搭載し、車両走行によって3次元点群データを取得する。このような走行車両を用いて取得された3次元点群データに対し、レールの点群データを抽出する様々な手法が提案されている。例えば、特許文献3に記載された車両同様補正装置では、レールの外側部分、枕木を含む道床部分の点群データを抽出する。
【0009】
また、特許文献4に記載された軌道輸送システムにおいても、運行車両に対して3次元LIDAR(Laser Imaging Detection and Ranging)を設け、車両周囲の3次元点群データを軌道上の複数の位置で取得する。そして、データベースに記憶されたレールの形状モデルとのマッチングを行い、3次元点群データの中でレールの点群データを識別、抽出する。
【0010】
特許文献1に開示された建築限界測定障害物の検知手法では、車両走行方向(線路)に直交する断面に基づいて障害物を検知するように構成されている。そのため、車両運行区間全体に渡って障害物を検知する場合、演算に膨大な時間がかかる。
【0011】
また、特許文献1では、線路が直線であることを前提とし、線路に直交する断面上の点群データに基づいて建築限界測定を行うように構成されている。しかしながら、走行車両の線路の多くは、直線部だけでなく、直線部と曲線部を含む複雑な軌跡となっている。また、曲線部において設定される建築限界領域は、直線部における建築限界領域と相違する領域となる。
【0012】
具体的に説明すると、線路に設けられた曲線部において車両が遠心力により外方に転倒することを防止するため、線路の外側レールを内側レールより高くし、カント(傾斜)を設定している。また、直線部から曲線部の間には、緩和曲線を設けており、その全長で曲率が逓減変化する複雑な線路の軌跡(経路)を採用している。このような複雑な線路の軌跡に応じてカントが定められており、建築限界領域に関しても、直線部とは異なる領域(具体的には回転させた領域)に定める必要がある。
【0013】
さらに、線路の曲線部では、走行車両に偏倚が生じるため、これに応じて建築限界領域を拡大し、走行車両に支障が生じないか確認している。このように線路の直線部と曲線部、あるいは曲線部の半径、カントに応じて建築限界領域が異なるため、3次元点群データを活用する建築限界測定においても、線路の軌跡(経路)に対処しなければならない。
【0014】
特許文献5に記載された建築限界内点群判定システムでは、直線区間、曲線区間に合わせて建築限界領域を定め、建築限界領域内の障害物を検知する。具体的に説明すると、曲線部の一定区間ごとに、カントおよび曲線半径に応じて建築限界枠を変動および拡大し、その一定区間を建築限界枠ボックスとして定義する。そして、各ボックスに対して2次元平面を定義し、変動建築限界枠を2次元平面に投影変換する。2次元平面に投影変換された変動建築限界枠内に存在する点群データが存在するか否かを判定することによって、建築限界枠内にある障害物を検知し、障害物の点群データに対して色分けなどを行い、画面に表示する。
【0015】
また、特許文献6に記載された建築限界測定装置では、2次元の建築限界領域を連結して3次元の建築限界領域を生成する手法が記載されている。具体的に説明すると、まず、軌道中心データに沿って複数の2次元の建築限界領域を配置する。そして、各建築限界領域を、その位置における曲線半径、カント量、さらには曲線部において車両走行安定のために設けたレール幅の拡大(スラック)に基づいて、各建築限界領域を変更する。変更した各建築限界領域に対して3次元ポリゴン領域として連結領域を生成し、3次元ポリゴン領域内に点群データが存在するか否か判断する。
【0016】
このように特許文献5、6では、3次元の建築限界領域内に障害物となる点群データを自動抽出するように構成されている。一方、建築限界測定によって障害物を自動検知するのではなく、オペレータによる入力操作に応じて定められた測定点に対して建築限界測定を行う方法も提案されている。
【0017】
特許文献7に記載された建築限界表示装置では、レール位置、左右レールの高低差、レール延伸方向などの情報に基づいて、建築限界枠の3次元座標変換を行い(具体的には回転)、オペレータによる指定点に合わせた2次元の建築限界枠を3次元的に表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特開2010-202017号公報
【特許文献2】国際公開第2015/198423号
【特許文献3】特開2020-132094号公報
【特許文献4】特開2022-71407号公報
【特許文献5】特開2017-19388号公報
【特許文献6】特開2021-11240号公報
【特許文献7】特開2017-165133号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
線路沿線に設けられる建築限界測定の対象物として、駅(プラットフォーム)などの建物がある。駅などの建物は、線路の直線部あるいは曲線部に沿うように建設され、その長さは、様々な編成(車両数)の列車に対して乗車、降車できるように設計されている。そのため、建築限界測定は、その建物に対し広範囲に渡って行う必要がある。
【0020】
そして、建物の建築限界測定に携わるオペレータ等にとっては、単に線路上(建築限界領域内)に障害物が存在するか否かを判断するのではなく、建物の位置に応じて走行車両との離隔距離がどの程度の距離であるか、変化するのか把握し、また、走行車両の最接近箇所がどの位置にあるか、そこでの離隔距離が確保されているか確認することが重要である。このことは、建物以外の構造物を対象とする建築限界測定、路面走行する自動車等の乗物を対象とする建築限界測定においても、同じである。
【0021】
したがって、建物などを対象とする建築限界測定において、3次元点群データを利用しながら、オペレータに対して有効な測定結果を得ることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の建築限界測定方法は、コンピュータ、信号処理回路、プロセッサなどによって実行されるものであり、3次元点群データという膨大なデータを取り扱うことが可能な物理的構成によって実現可能である。本発明の建築限界測定方法は、線路および線路に沿って設けられた建物または構造物を3次元計測することによって得られる3次元点群データから、線路データを定め、建物全体または一部の長さに対応する長さをもつ車両型3次元建築限界モデルを、線路データに配置する。
【0023】
ここで、「建物」とは、例えば駅など鉄道事業などに基づいて建てられたものであり、建築物や建造物を表す。ただし、建築基準法による定義によってその意味が限定されるものではなく、広い意味合いで使用される建物一般を意味する。「構造物」には、例えば信号設備や電力供給に関係する設備などが含まれ、建築基準法において定義される工作物は、「建物または構造物」に含まれる。線路データは、点群データ以外のデータで構成されるデータ上の線路を表し、例えば、線データとして構成される。また、車両型3次元建築限界モデルの線路データに対する「配置」とは、立体状の3次元モデルをあらかじめ作成して線路データに配置する構成が含まれ、また、車両型モデルの2次元断面モデルを線路データに所定位置に配置し、それらをサーフェス化処理によって線路データに配置する構成も含まれる。
【0024】
そして、本発明の建築限界測定方法は、線路データに配置された車両型3次元建築限界モデルに従って定められる建築限界空間領域と、建物との離隔距離を、3次元点群データに基づいて演算し、3次元点群データに基づいて、建物全体または一部を認識可能な視点からの3次元計測画像を生成し、3次元計測画像に対し、演算された離隔距離の情報をイメージ化して重ね合わせた可視化画像を、表示する。ここで、「イメージ化」とは、離隔距離をそのままキャラクタ(数字など)で表すのではなく、色付け、濃淡、図形を用いたシンボル描画など、視覚的に認識されるようにすることを意味する。このような建築限界測定方法は、プログラムによるソフトウェア処理によって実行可能であり、また、システムとして構成することもできる。
【0025】
本発明の他の態様における建築限界測定方法は、車両外の場所から、線路および線路に沿って設けられた駅を3次元計測し、3次元計測によって得られる3次元点群データから、線路データを定め、駅全体または一部の長さに対応する長さをもつ車両型3次元建築限界モデルを、線路データに配置し、線路データに配置された車両型3次元建築限界モデルに従って定められる建築限界空間領域と、駅との離隔距離を、3次元点群データに基づいて演算する。そして、建築限界測定方法によって測定された駅と建築限界空間領域との離隔距離の情報をイメージ化し、3次元点群データから生成される駅全体または一部を認識可能な視点からの3次元計測画像に対して重ね合わせた可視化画像を、表示する表示方法を提供することができる。
【0026】
さらに、本発明の他の態様である建築限界測定方法は、線路または道路(以下、線路等という)および線路等に沿って設けられた建物または構造物を3次元計測することによって得られる3次元点群データから、線路等のデータを定め、建物等全体または一部の長さに対応する長さをもつ乗物の3次元建築限界モデルを、線路等のデータに配置し、線路等のデータに配置された乗物の3次元建築限界モデルに従って定められる建築限界空間領域と、建物等との離隔距離を、3次元点群データに基づいて演算し、3次元点群データに基づいて、建物等全体または一部を認識可能な視点からの3次元計測画像を生成し、3次元計測画像に対し、演算された離隔距離の情報をイメージ化して重ね合わせた可視化画像を、表示する。これらの建築限界測定方法は、システムやプログラム実行により提供可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、建物などを対象とする建築限界測定において、3次元点群データを利用しながら、オペレータに対して有効な測定結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】第1の実施形態である建築限界測定システムの概略的ブロック図である。
図2】3次元点群データを取得するレーザスキャナを示した図である。
図3】レーザスキャナによって取得された3次元点群データから得られる駅の画像を例示した図である。
図4】レーザスキャナによって取得された3次元点群データから得られる別の駅の画像を例示した図である。
図5】表示処理を含めた建築限界測定処理のフロー図である。
図6】車両型3Dモデルの斜視図である。
図7】車両型3Dモデルの正面図である。
図8】車両型3Dモデルを線路データに配置する状態のマーキング時に表示される3次元計測画像を示した図である。
図9】車両型3次元モデルが線路データに搭載された状態を示した図である。
図10】建築限界測定結果をイメージ化し、3次元計測画像に重ねた可視化画像を示した図である。
図11】カントの生じている線路Rから得られる3次元計測画像に対して線路データRMを定めたときの断面を模式的に示した図である。
図12】カントを考慮した建築限界空間領域N1の位置を示した図である。
図13】複数の車両型3DモデルM1を、間隔を設けずに連結させた連結車両モデルを作成し、それに基づいて建築限界測定を行った結果の可視化画像を示した図である。
図14】第2の実施形態における車両型2次元断面モデルを示した図である。
図15】第1の実施形態におけるステップS103に相当するモデル配置のフローを示した図である。
図16】車両型2次元断面モデルを線路に所定間隔で配置した3次元計測画像を示した図である。
図17】線路に配置された仮想の車両型3Dモデルを示した斜視図である。
図18】線路に配置された仮想の車両型3Dモデルを上方から示した平面図である。
図19】第1の実施形態で示した1車両の車両型3Dモデルをベースとする建築限界空間領域と駅との建築限界測定を示した図である。
図20図18、19に示した仮想の車両型3Dモデルに基づいた建築限界測定による可視化画像を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下では、図面を参照して本実施形態である建築限界測定システムについて説明する。まず、図1図13を用いて、第1の実施形態である建築限界測定システムについて説明する。
【0030】
図1は、第1の実施形態である建築限界測定システムの概略的ブロック図である。建築限界測定システムは、データベースDB、モニタMT、入力操作部KYと接続し、線路設定部20、3次元(以下では、3Dとも表す)モデル配置部30、建築限界測定部40、表示処理部50、点群画像生成部60とを備える。
【0031】
建築限界測定システム10は、例えばサーバなどのコンピュータによって構成することが可能であり、線路設定部20、3Dモデル配置部30、建築限界測定部40、表示処理部50を、それぞれ信号処理回路として構成することが可能である。また、建築限界測定システム10は、図示しないメモリに格納されたプログラムによって、各処理回路を機能させることが可能であり、ソフトウェア、ファームウェアあるいはそれらの組み合わせによって建築限界測定を実行することができる。
【0032】
データベースDBには、線路モデルのデータ、3次元点群データ、建築限界モデルのデータが、それぞれ所定の記憶領域DB1、DB2、DB3に格納されている。建築限界測定システム10は、各データを必要に応じて取得し、図示しないデータ入力部に一時的に記憶させる。
【0033】
線路モデルのデータ、建築限界モデルのデータは、後述する建築限界測定処理(演算処理)において、線路設定処理およびモデル配置処理に利用される。一方、3次元点群データは、3次元計測によって取得された点群データとして格納されている。本実施形態では、建築限界測定において3次元計測対象となる駅(プラットフォーム)に対する3次元点群データが、建築限界測定処理前にあらかじめ取得されている。
【0034】
図2は、3次元点群データを取得するレーザスキャナを示した図である。
【0035】
レーザスキャナLSは、レーザを全方位に照射しながらカメラ撮影も同時に行うことによって3次元点群データを取得する3次元計測装置として構成されている。3次元計測では、取得する3次元点群データを利用して、計測対象の駅を俯瞰するように駅の略全体を捉えた3次元画像を生成、表示できるように、マルチスキャニングが行われる。
【0036】
図3図4は、レーザスキャナLSによって取得された3次元点群データから得られる駅の画像を例示した図である。
【0037】
3次元点群データは、各々3次元座標値をもつ点データの集合であり、任意と点と点との距離を求めることができる。また、3次元空間上において任意の回転、並進などの座標変換(座標系変換)を点群データに対して行うことが可能である。したがって、レーザスキャナLSの撮影場所に関わらず、任意の視点からの3次元画像を生成し、表示することが可能である。点群画像生成部60は、オペレータの指定する視点または定められた視点からの立体的視認可能な3次元画像(以下、3次元計測画像という)を、点群による画像として生成する。
【0038】
図2に示す設置場所でレーザスキャナLSによる3次元計測を行うことで、ホーム上家(図2では図示せず)を支持する支柱C、線路Rを含めたスキャニングおよびカメラ撮影により、3次元点群データが取得される。その結果、図3、4に示すように、駅の端側、駅の反対側から俯瞰するような3次元画像を、計測結果の画像として生成し、表示することができる。
【0039】
3次元計測画像に関しては、所定位置を原点する3次元座標系が規定される。例えば、水平面に沿って互いに直交する方向にX、Y軸、そしてX,Y平面に直交する方向にZ軸が規定される。各点群データは、現実の3次元空間と同じ単位(mmなど)に基づく座標値を有する。また、座標系変換によって所望する位置を原点とする座標値に変換することができる。
【0040】
レーザスキャナLSによって取得された3次元点群データは、図示しない端末などに送信され、端末などを通じてデータベースDBに記憶される。なお、データベースDBに記憶される3次元点群データに対しては、レーザスキャナLSあるいは端末などにおいて、レジストレーション処理(位置合わせ)が実行される。また、3次元計測とは別に、トータルステーションなどの3次元測定機器を利用した鉛直方向および/または水平面に関する情報を取得するための計測作業が事前に行われ、データベースDBに記憶されている。
【0041】
3次元計測後、オペレータは、モニタMTを見ながら入力操作部KYを操作し、建築限界測定作業を行う。建築限界測定システム10は、オペレータによる入力操作に応じて、モデル配置用線路の設定、車両型建築限界モデルの線路上への配置、建築限界測定処理、および建築限界と駅との離隔程度を可視化した可視化画像の表示処理を実行する。以下、これに関して詳述する。
【0042】
図5は、表示処理を含めた建築限界測定処理のフロー図である。
【0043】
オペレータがキーボードなどの入力操作部KYを操作することにより、建築限界測定システム10は、3次元点群データを、データベースDBから取得する(S101)。そして、3次元点群データに基づいて、データ上における線路(以下、線路データという)を設定する(S102)。
【0044】
線路Rは、直線部および曲線部によって構成されるが、そのレール幅および断面形状は、直線部および曲線部に応じて定められている。したがって、3次元点群データに含まれる線路Rに応じた点群情報に基づいて、線路データを定めることが可能である。データベースDBに記憶されている線路モデルは、直線部、曲線部にそれぞれ対応した線路情報に基づいて構成されたデータ上のモデルであり、ここでは、所定幅を有する線データとして表される。
【0045】
線路設定部20は、データベースDBに記憶された線路モデルとマッチングすることにより、3次元点群データに含まれる線路情報(点群データ)を抽出するとともに、線路データを定める。なお、線路データの設定に関しては、様々な演算手法を適用することが可能である。また、ディープラーニングなどNN(Neural Network)を利用して3次元画像における線路を自動認識させるようにしてもよい。
【0046】
線路データの設定後、グラフィックモデルとしての車両型3Dモデルを、線路データ上に配置する(S103)(なお、以下では、線路データを、単に「線路」と表す場合もある)。以下、図6~9を用いて、車両型3Dモデルの線路データへの配置について説明する。
【0047】
図6は、車両型3Dモデルの斜視図である。図7は、車両型3Dモデルの正面図である。
【0048】
車両型3Dモデルは、建築限界領域を定めるときのベースとなるグラフィックモデルであり、データベースDBから取得される。車両型3DモデルM1は、車両の外観枠に余裕を持たせた外観形状を有し、直状の立体状モデルとして構成されている。また、車両型3Dモデルは、駅PF全体よりも短い長さをもつモデルとして構成され、ここでは、1車両分の長さに応じた3次元グラフィックモデルとして構成されている。
【0049】
車両型3DモデルM1は、その外表面の情報である面データを有し、定められた3次元座標系において幾何学的に面を表す方程式によって、その外表面を規定することができる。車両型3DモデルM1は、車両型3Dモデルの縁(断面形状における端点)に合わせて規定される複数の平面あるいは曲面の情報を、面データとしてもつ。
【0050】
また、車両型3DモデルM1は、建築限界領域が車両型に合わせて規定されるため、その外表面は複数の面から構成される。図6、7では、それぞれ異なる面データ(方程式)をもつ外表面の一部を、符号S1、S2で示している。さらに、車両型3DモデルM1には、線路Rのレール幅に合わせて4つの車輪データWS1~WS4が定められている。
【0051】
図8は、車両型3DモデルM1を線路データに配置する状態のマーキング時に表示される3次元計測画像を示した図である。
【0052】
点群画像生成部60は、オペレータによる入力操作に応じて、駅PF上方側から見た3次元計測画像を生成する。表示処理部50は、図8に示すように、モニタMTにおいてその3次元計測画像を点群画像として表示する。3次元点群データで表される駅PFは、線路Rの直線区間に沿って建設された建物として表示され、線路データRMも、直線状の線データとして定められている。なお、図2に示す実際の駅、屋根、支柱と、3次元計測画像において表示される駅、屋根、支柱については、同符号を使用する。
【0053】
オペレータは、車両型3DモデルM1の車輪データWS1~WS4の位置を、線路データRMの位置、すなわち内側レールデータRM1、外側レールデータRM2の位置に合わせ、車両型3DモデルM1を線路に載せる。具体的には、線路RMに対するマーキング、車両型3Dモデルの移動操作がオペレータによって行われる。表示処理部50は、入力操作に応じた表示処理を実行し、マーキングの表示、車両型3Dモデルの表示箇所の変更などを行う。
【0054】
図8に示すように、線路データRM上には、車輪データW1~W4の位置に合わせて4つのマーカーM1~M4が重ねて表示されている。オペレータのマーキング入力操作によって描画されるマーカーM1~M4は、車両型3DモデルM1の搭載箇所への指標となる。ここでは、車輪データW1~W4が識別可能なように、車両型3DモデルM1が半透明で表示され、車輪データW1~W4が色付けされて表示される。ただし、図8では、車両型3DモデルM1本体の図示を省略している。
【0055】
図9は、車両型3次元モデルM1が線路データRMに搭載された状態を示した図である。
【0056】
オペレータが、車両型3次元モデルM1の車輪W1~W4の位置(中心ライン)を、線路RM上のマーカーM1~M4の位置(線路データRMの中心ライン)に合わせる操作(クリックを伴うマウス操作など)を行うことにより、車両型3DモデルM1が線路RM上に搭載される。このとき、駅PF全体または一部を俯瞰し、車両型3DモデルMを斜視する視点からの3次元計測画像をモニタMTに表示しながら、車両型3DモデルM1の配置を行ってもよい。
【0057】
3次元車両型モデルM1の線路RM上への配置が行われた後、建築限界測定が行われる(S104)。具体的には、車両型3DモデルM1に基づいて定められる建築限界領域と駅PFとの離隔距離を、駅PFの3次元点群データ各々に対して測定する。
【0058】
上述したように、線路データRMは直線状の線データとして表され、車両型3DモデルM1は、車両型外観形状をもつように構成されている。そのため、線路Rに関してカントがない(内側レールRM1と外側レールRM2との間で傾斜が生じてない)と仮定すれば、図9に示すように線路データRMに載せられた車両型3Dモデルを、そのまま建築限界領域N1として規定することができる。以下では、建築限界領域が線路RMに沿って延伸する空間領域であることを明確にするため、「建築限界空間領域」という。
【0059】
車両型3DモデルM1が面データを有しているため、線路RMに配置された建築限界空間領域(=車両型3Dモデル)N1の境界面(外表面)は、3次元計測画像において規定される3次元座標系の方程式で表すことができる。したがって、3次元点群データで表される駅(PF)の各点から建築限界空間領域N1の境界面における最近接点(最近点ともいう)との距離を、離隔距離として求めることができる。
【0060】
離隔距離の演算処理(建築限界測定)が行われると、測定結果をイメージ化した可視化画像を表示する処理が実行される(S105)。ここでは、離隔距離の程度に応じて色を変化させた色付けを、3次元計測画像に対して行う。例えば、建築限界の支障となる部分、および/または建築限界空間領域N1に近接している建物要素に対しては、赤色や黄色などで表示し、離隔距離が十分ある個所に対しては、青色や無色で表すことができる。なお、建築限界空間領域N1の境界面が面の方程式で表されることから、建築限界空間領域N1の内部に存在する点群データを測定結果から判別することが可能であり、これらを、建築限界の支障となる部分として識別化することができる。
【0061】
なお、塗りつぶし、丸や多角形状のマークを表示するといったシンボル描画など、他のイメージ化で建築限界の離隔の程度や支障などを認識させるようにしてもよい。さらに、離隔距離の数値に枠を付けて表示させるといったイメージ化を行ってもよい。なお、イメージ化せず、数値などのキャラクタを例えばテーブルなどによってそのまま表示することも可能である。
【0062】
図10は、離隔距離、すなわち建築限界測定結果をイメージ化し、3次元計測画像に重ねた可視化画像を示した図である。3次元計測画像は、駅PFの所定箇所に配置された建築限界空間領域N1全体を俯瞰できるように斜視する視点から見た画像であり、建築限界空間領域N1全体に対する駅PFとの離隔程度を全体的に認識することができる。
【0063】
建築限界空間領域N1全体ではなく、オペレータなどによって指定された部分だけを建築限界測定対象とし、その部分と対向、近接している駅PFの建物要素との離隔距離を、建築限界測定して演算してもよい。例えば、駅PFの屋根(ホーム上家)PMの縁部分を指定し、縁部分との離隔距離を可視化してもよい。
【0064】
上述した建築限界測定では、線路Rの直線区間に沿った駅PFを測定対象としているため、カントを考慮していない。しかしながら、微小な曲率の曲線部を含む線路区間において駅PFが設置される場合もある。その場合、3次元計測画像からカントを求め、カントを考慮した建築限界空間領域を規定することができる。
【0065】
図11は、カントの生じている線路Rから得られる3次元計測画像に対して線路データRMを定めたときの断面を模式的に示した図である。
【0066】
上述したように、レーザスキャナLSによる3次元計測とは別に、計測器によって鉛直方向が測定されている。そのため、取得される3次元点群データの各点は、水平方向、鉛直方向に合わせた3次元座標値を有する。内側レールRM1、外側レールRM2から成る線路データRMが線データとして設定されれば、その線データ上にある点群データの座標値(例えば線幅中心の位置)から、内側レールRM1、外側レールRM2の高低差を算出し、カントを求めることができる。
【0067】
なお、鉛直方向の測定を行っていない場合でも、駅PFの支柱Cに垂直な面を水平面と仮定することにより、カントを求めることが可能である。駅PFの支柱Cに垂直な面は、3次元計測画像から求められる。また、先行技術文献1~7のいずれかに示したような演算手法などによって、カントを求めてもよい。
【0068】
図12は、カントを考慮した建築限界空間領域N1の位置を示した図である。水平面に対して角度αだけ建築限界空間領域を回転させ、位置で建築限界測定を行う。ここでは、建築限界空間領域N1の底面中央ラインを基準にして軸回転させる。ただし、図12では、便宜上、建築限界空間領域N1を2次元断面モデルとして表している。
【0069】
第1の実施形態では、1車両分の長さを有する車両型3DモデルM1を適用しているが、複数の車両を連結させた列車の全体の長さに合わせて、駅PFは建設されている。そこで、車両型3DモデルM1を複数繋げた3Dモデルを用いて、建築限界測定を行い、可視化画像を表示してもよい。
【0070】
図13は、複数の車両型3DモデルM1を、間隔を設けずに連結させた連結車両モデルを作成し、それに基づいて建築限界測定を行った結果の可視化画像を示した図である。このような連結車両モデルに基づく建築限界空間領域N1を規定することにより、駅PF全体に渡る離隔距離や建築限界の支障を視覚的に認識することができる。
【0071】
以上説明したように、第1の実施形態によれば、駅PFの上からレーザスキャナLSを用いて3次元計測を行う。そして、3次元点群データから得られる3次元計測画像に基づいて線路データRMを設定し、データベースDBに作成、用意された車両型3DモデルM1を、線路データRMの上に配置する。
【0072】
線路RM上に配置された車両型3DモデルM1に従って規定される建築限界空間領域N1と駅PFとの離隔距離を演算し、建築限界空間領域N1(車両型3DモデルM1)全体を俯瞰可能な視点の3次元計測画像に対し、離隔距離の情報をイメージ化して重ね合わせた可視化画像を、表示する。
【0073】
本実施形態では、従来のように、走行車両の進行方向視点から2次元断面モデルである建築限界領域枠内に存在する点群データを抽出し、障害物検知することを行わず、建築限界測定対象となる駅PM全体を俯瞰、斜視する3次元計測画像をベースとして、建築限界空間領域N1の外表面と駅PMとの間の離隔を認識可能な可視化画像を表示する。
【0074】
これにより、駅PMの特定箇所と車両の離隔、支障だけでなく、車両の外表面と、線路Rに沿って延伸するホーム上家全体の離隔状態を把握することが可能となる。すなわち、建築限界領域側と、測定対象側との間の離隔程度を、「面」と「面」で認識することが可能となる。
【0075】
一方、本実施形態による建築限界測定では、面データをもつ車両型3DモデルM1を作成し、線路データRM上に配置することにより、建築限界空間領域N1を規定する。3次元点群データで表される駅PFとの離隔距離を、建築限界空間領域N1(車両型3DモデルM1)の面と点群データの各点との距離として求めるため、精度よく離隔距離を測定することができる。
【0076】
さらに、車両型3DモデルM1の配置箇所をオペレータの所望する線路上に配置することが可能であるため、離隔程度を認識したい箇所を定めて車両型3DモデルM1を配置することができ、また、車両型3DモデルM1の配置箇所を間欠的、あるいは微小距離ずつ移動させながら、建築限界測定を行うことも可能となる。
【0077】
本実施形態では、従来のように、走行車両に3次元計測装置を搭載し、3次元点群データを取得する代わりに、車両外の箇所(ここでは駅のホーム上)で3次元計測を行う。このような3次元計測でも、建築限界測定対象となる駅PM全体に対する離隔や支障を認識することが可能である。
【0078】
また、線路は、工事などによる道床部分の移動や陥没などに起因して、その位置が変動することがある。それに対し、駅は、長年取り壊さずに使用することを前提とした耐久性のある安定した構造であるため、駅側から3次元計測を定期的に行うことにより、線路位置の変化も踏まえた建築限界測定を行い、離隔や支障を認識することができる。
【0079】
さらに、走行車両を利用しないため、車両の走行中の揺動を考慮した3次元点群データの補正処理などを行う必要がなく、天候の良好な時間帯に合わせて3次元計測をホーム上で行うことができ、夜間作業で3次元計測を行わなくて済む。そして、レール上に3次元計測器を配置する必要性がないため、線路閉鎖手続きが不要となる。
【0080】
なお、建築限界測定対象となる駅PM全体に対する離隔、支障を認識することが可能な視点からの3次元点群データを取得できる場所であれば、ホーム以外の場所で3次元計測を行ってもよい。
【0081】
本実施形態では、オペレータの入力操作を通じて、車両型3DモデルM1を線路RM上に配置するが、自動処理でモデル配置を行ってもよい。例えば、データベースDBに記憶された線路モデルに対して車両型3DモデルM1の配置場所をあらかじめ定めてもよい。また、3次元計測画像に対して駅PFの点群データを自動的に抽出し、設定された線路データRMに対する車両型3DモデルM1の配置場所を、駅PFの位置に合わせて決定してもよい。
【0082】
また、半自動化処理によって車両型3DモデルM1を線路データRMに配置してもよい。例えば、オペレータが、マウスやペンなどを用いて3次元計測画像の線路をなぞるといった入力操作を行うことによって、線路Rを表す点群情報を自動的に抽出し、線路データRMを設定する。そして、車両型3DモデルM1を線路データRMに配置させればよい。
【0083】
次に、図14~20を用いて、第2の実施形態である建築限界測定システムについて説明する。第2の実施形態では、第1の実施形態とは異なり、2次元の建築限界型モデルをベースとし、実際の車両とは相違する外観形状をもつ仮想の車両型3Dモデルを生成する。
【0084】
図14は、第2の実施形態における車両型2次元断面モデルを示した図である。車両型2次元断面モデルm2は、従来の建築限界測定領域に相当する輪郭をもつ2次元モデルとして構成される。ここでの輪郭形状は、第1の実施形態の車両型3Dモデルの2次元断面形状と同じである。データベースDBには、車両型2次元断面モデルm2が、建築限界モデルのデータとして格納されている。
【0085】
第2の実施形態では、駅PFが、曲線部を含む軌跡をもつ線路Rに沿って建設されており、屋根PMも、線路Rの経路に沿って形成されている。このような曲線部を含む線路Rに対して車両型3Dモデルを生成するため、車両型2次元断面モデルm2を線路Rに複数配置し、これらを繋ぐように連続的な外表面を形成して仮想の車両型3Dモデルを生成する。これについて以下、詳述する。
【0086】
図15は、第1の実施形態におけるステップS103に相当するモデル配置のフローを示した図である。図16は、車両型2次元断面モデルm2を線路RMに所定間隔で配置した3次元計測画像を示した図である。ただし、ここでは点群画像を模式的に示している。
【0087】
車両型2次元断面モデルm2をデータベースDBから取得後(S201)、車両型2次元断面モデルm2を、配置箇所に合わせて変更する(S202)。第2の実施形態では、複数の車両型2次元断面モデルm2が、線路データMRに対して所定間隔で配置される。ここでは、駅PF全体に渡って設けられている支柱Cの位置に合わせて、オペレータの入力操作、あるいは自動的に車両型2次元断面モデルm2を配置する。
【0088】
線路Rは、駅PFに沿った部分で曲線部をもつことから、線路のイメージRMも同様に曲線部を有する。したがって、第1の実施形態で説明したようにカント(内側レールRM1、外側レールRM2間の傾斜)が生じている。また、曲線部には緩和曲線が設けられており、曲線半径が逓減変化する複雑な線路の軌跡(経路)を採用している。さらに、線路の曲線部では、走行車両に偏倚が生じる。これに対処するため、建築限界領域を拡大する必要がある。
【0089】
第2の実施形態では、カント、緩和曲線、偏倚を考慮して、車両型2次元断面モデルm2の輪郭形状を変更、拡大する。カントに関しては、第1の実施形態と同様に算出すればよい。そして、算出されたカントに基づき、車両型2次元断面モデルm2を回転させる。
【0090】
また、緩和曲線、偏倚を考慮した車両型2次元断面モデルm2については、あらかじめデータベースなどに曲線半径(円弧部分の半径)などの情報を記憶し、それらを読み出して車両型2次元断面モデルm2の輪郭形状を変更、拡大すればよい。例えば、図7に示した高さ、横幅方向に関して拡大する方向へ伸ばし、あるいはスケール変換する(例えば、特開2005-271717号公報の図6参照)。なお、カント、緩和曲線や車両偏倚に基づく車両型2次元断面モデルm2の領域変更、拡大に関しては、先行技術文献1~7いずれかに記載された演算手法を用いてもよい。さらに、スラックを考慮し、特許文献1~7のいずれかに記載された演算手法によって、車両型2次元断面モデルm2の輪郭形状を変更してもよい。
【0091】
複数の車両型2次元断面モデルm2を定められた配置箇所に配置した後(S203)、輪郭形状を変更した車両型2次元断面モデルm2に対し、グラフィック処理によってそれらを繋ぐ連続的な外表面を形成し、仮想の車両型3Dモデルを生成する(S204)。
【0092】
グラフィック処理としては、3次元座標空間において面の方程式でその外表面を表すことが(近似も含めて)可能であって、連続的な表面形状を形成する手法であればよい。特に滑らかに形状変化する外表面を形成可能なサーフェス処理を行う構成にすればよい。ここでは、ブレンド(ロフト)フィーチャーによるサーフェス処理が採用されている。
【0093】
図17は、線路RMに配置された仮想の車両型3DモデルM2を示した斜視図である。図18は、線路RMに配置された仮想の車両型3DモデルM2を上方から示した平面図である。いずれも、点群画像である3次元計測画像において表示されている。なお、図17、18では符号M2を表示していない。
【0094】
図18に示すように、駅PFは、線路の複雑な軌跡に沿って設置されている。そのため、各支柱の位置に合わせて配置された車両型2次元断面モデルm2は、その輪郭形状は一致しない。このような複数の車両型2次元断面モデルm2を繋ぐ連続的な外表面形状をサーフェス化処理によって形成し、仮想の車両型3DモデルM2を生成する。仮想の車両型3DモデルM2は、駅PFの略全体に渡り線路RMに沿う長さを有する3Dモデルとして構成される。
【0095】
このように生成された仮想の車両型3DモデルM2は、すでに線路RMに設置された状態で生成された3Dモデルであることから、そのまま建築限界空間領域として規定される。そして、第1の実施形態と同様、建築限界測定処理が実行され、可視化画像が表示される。
【0096】
仮想の車両型3DモデルM2は、実際の列車とは異なり、2次元断面形状が一定ではなく、列方向に沿って輪郭が複雑に膨張、収縮するような外表面形状を有する。一方で、仮想の車両型3DモデルM2は、カント、緩和曲線、車両偏倚を考慮して輪郭形状が変更された車両型2次元断面モデルm2をベースにした3Dモデルであるため、実際よりも離隔が厳しい建築限界測定が生じる3Dモデルとして構成される。
【0097】
図19は、第1の実施形態で示した1車両の車両型3Dモデルをベースとする建築限界空間領域と駅との建築限界測定を示した図である。
【0098】
図19では、駅PFが、一定の曲率による曲線部で構成される線路RMに沿って設置されている。この場合、建築限界空間領域N1(車両型3Dモデル)の位置によって、その離隔距離が相違する(符号A、B参照)。
【0099】
しかしながら、第2の実施形態で生成される仮想の車両型3DモデルM2は、線路Rの軌跡に関わらず、線路Rの曲がり具合に合わせて曲線的(蛇状)外表面を有するため、モデル配置状況に起因する離隔差が生じることが抑制される。また、仮想の車両型3DモデルM2は、駅PFの略全体に渡る長さを有するため、駅PFの屋根PM全体に渡り、車両との離隔を可視化画像によって捉えることができる。
【0100】
図20は、図18、19に示した仮想の車両型3DモデルM2に基づいた建築限界測定による可視化画像を示した図である。曲線部を含む線路Rに沿って建設される駅PFに対しても、適切な離隔測定および支障の検知を行うことができる。特に、仮想の車両型3DモデルM2が、測定場所によっては実際よりもより厳しく離隔が生じる(より接近した値となる)3Dモデルとして構成されるため、確実な安全対策をとることができる。
【0101】
第2の実施形態では、車両型2次元断面モデルm2が駅PFの支柱Cの位置に合わせて配置されているが、上述したように鉛直方向を測定器によって測定した上で3次元点群データの座標値を得ていることを考慮すれば、車両型2次元断面モデルm2を、線路RMの直線部、曲線部(特に円弧部分)の位置に合わせて(分けて)配置するのがよい。この場合、配置箇所に合わせたカント、曲線部分(円弧部分)の曲線半径などを、データベースDBに記憶させればよい。これによって、カントなどに基づく車両型2次元断面モデルm2の領域変更度合がその前後で急激に変化せず、仮想の車両型3Dモデルの外表面をより滑らかな曲面とすることができる。
【0102】
第1、第2実施形態では、点群画像である3次元計測画像に対し、車両型3Dモデルあるいは2次元車両モデルをベースとする仮想の3次元車両モデルを、線路に配置し、また、可視化画像に関しても、3次元計測画像に基づいた画像を表示しているが、3次元点群データを、ボクセルデータ、メッシュデータ等に変換し、点群データとは異なるデータによって3次元画像を生成、表示してもよく、その一方で、建築限界測定に対しては、3次元点群データに基づいて離隔を演算すればよい。これにより、精度よく離隔を求めることができるとともに、オペレータの視認しやすい3次元画像を提供することができる。
【0103】
第1、第2の実施形態では、線路沿線に設置される駅を対象と下建築限界測定を行っているが、架線などの鉄道関連設備、信号設備などの構造物に対しても、適用することが可能である。
【0104】
さらに、線路を走行する車両だけでなく、道路を走行する車両に対しても、上述した建築限界測定を適用することが可能である。この場合、3次元計測画像から、線路中央ラインを特定し、3次元建築限界モデルとして、道路横断面の両端縁までの幅をもち、車両高さ(例えば、最高限度となる3、8m)に応じた高さを有する立体状の車両型3Dモデルを作成すればよい。
【0105】
これにより、分離帯との離隔等を測定し、建築限界空間領域との離隔を「面」と「面」で視覚的に認識することができる。特に、レベル4の自動運転走行を考慮した高速道路等において、建築限界測定を行うことは有効である。また、鉄道車両と違い、様々な車両形態が存在することから、複数の立体状の車両型3Dモデルを用意し、選択して建築限界測定を行ってもよい。なお、走行面が傾斜している場合、特許第7162779号公報に示す手法などにより、傾斜面に応じて3次元建築限界モデルを修正すればよい。
【0106】
そして、道路を走行する車両だけでなく、市街を走行する路面電車、線路と道路両方を走行するDMV(Dual Mode Vehicle)など、様々な乗物に対しても適用することが可能である。
【符号の説明】
【0107】
10 建築限界測定システム
20 線路設定部
30 3Dモデル配置部
40 建築限界測定部
50 表示処理部
60 点群画像生成部
C 支柱
DB データベース
LS レーザスキャナ
M1 車両型3Dモデル(3次元建築限界モデル)
M2 仮想の車両型3Dモデル(3次元建築限界モデル)
m2 車両型2次元断面モデル
N1 建築限界空間領域
PF 駅
PM 屋根(ホーム上家)
R 線路
RM 線路データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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図18
図19
図20