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特開2024-9846オレフィン化合物、硬化性樹脂組成物およびその硬化物
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  • 特開-オレフィン化合物、硬化性樹脂組成物およびその硬化物 図1
  • 特開-オレフィン化合物、硬化性樹脂組成物およびその硬化物 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009846
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】オレフィン化合物、硬化性樹脂組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/02 20060101AFI20240116BHJP
   C07C 13/567 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C08G61/02
C07C13/567 CSP
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171021
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2020062128の分割
【原出願日】2020-03-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠島 隆行
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌典
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、優れた耐熱性と電気特性を示し、良好な硬化性を有するオレフィン化合物、硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供する。
【解決手段】下記式(3)で表されるオレフィン化合物。

(式(3)中、Xは特定の有機基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1~12の炭化水素基、またはハロゲン化アルキル基を表す。mはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、nは、1≦n≦20を表す。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(3)で表される化合物。
【化1】
(式(3)中、Xは下記式(2)に記載の(a)~(j)のいずれか1種以上を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1~12の炭化水素基、またはハロゲン化アルキル基を表す。mはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、nは、1≦n≦20を表す。)
【化2】
(式(2)中、*は骨格構造との結合位置を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィン化合物、硬化性樹脂組成物、及びその硬化物に関するものであり、半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ積層板などの電気・電子部品や、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックなどの軽量高強度材料に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品を搭載する積層板はその利用分野の拡大により、要求特性が広範かつ高度化している。従来の半導体チップは金属製のリードフレームに搭載することが主流であったが、中央処理装置(以下、CPUと表す。)などの処理能力の高い半導体チップは高分子材料で作られる積層板に搭載されることが多くなってきている。
【0003】
特にスマートフォンなどに使用されている半導体パッケージ(以下、PKGと表す。)では小型化、薄型化および高密度化の要求に応えるために、PKG基板の薄型化が求められているが、PKG基板が薄くなると、剛性が低下するため、PKGをマザーボード(PCB)に半田実装する際の加熱によって、大きな反りが発生するなど不具合が発生する。これを低減するために半田実装温度以上の高TgのPKG基板材料が求められている。
【0004】
加えて、現在開発が加速している第5世代通信システム「5G」では、さらなる大容量化と高速通信が進むことが予想されている。低誘電正接材料のニーズがますます高まってきており、少なくとも1GHzで0.005以下の誘電正接が求められている。
【0005】
更に、自動車分野においては電子化が進み、エンジン駆動部付近に精密電子機器が配置されることもあるため、より高水準での耐熱・耐湿性が求められる。電車やエアコン等にはSiC半導体が使用され始めており、半導体素子の封止材には極めて高い耐熱性が要求されるため、従来のエポキシ樹脂封止材では対応できなくなっている。
【0006】
このような背景を受けて、耐熱性と低誘電正接特性を両立できる高分子材料が検討されている。例えば、特許文献1ではマレイミド樹脂とプロペニル基含有フェノール樹脂を含む組成物が提案されている。しかしながら、一方で硬化反応時に反応に関与しないフェノール性水酸基が残存するため、電気特性が十分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平04-359911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、優れた耐熱性と電気特性を示し、良好な硬化性を有するオレフィン化合物、硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究した結果、新規なオレフィン化合物を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物が耐熱性、低誘電特性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、下記[1]~[10]に関する。
[1]
下記式(1)で表されるオレフィン化合物。
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)中、Xは任意の有機基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1~12の炭化水素基、またはハロゲン化アルキル基を表す。mはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、nは、1≦n≦20を表す。Yはそれぞれ独立して存在し、(A)~(D)のいずれか1種以上であり、全てが(D)であるものを除く。*は骨格構造との結合位置を示す。)
[2]
前記式(1)中、Xが下記式(2)に記載の(a)~(j)のいずれか1種以上である前項[1]に記載のオレフィン化合物。
【0013】
【化2】
【0014】
(式(2)中、*は骨格構造との結合位置を示す。)
[3]
前記式(2)中、Xが(b)又は(d)で表される前項[2]に記載のオレフィン化合物。
[4]
前記式(1)中、Yが(A)のみで表される前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のオレフィン化合物。
[5]
前記式(1)中、Yが(C)のみで表される前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のオレフィン化合物。
[6]
前記式(1)中、Yが一分子中に(A)と(C)の両方を有するものである前項[1]乃至[3]のいずれか一項に記載のオレフィン化合物。
[7]
下記式(3)で表される化合物から誘導される前項[1]乃至[6]のいずれか一項に記載のオレフィン化合物。
【0015】
【化3】
【0016】
(式(3)中、Xは任意の有機基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1~12の炭化水素基、またはハロゲン化アルキル基を表す。mはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、nは、1≦n≦20を表す。)
[8]
前項[1]乃至[7]のいずれか一項に記載のオレフィン化合物を含有する硬化性樹脂組成物。
[9]
前項[8]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
[10]
下記式(3)で表される化合物。
【0017】
【化4】
【0018】
(式(3)中、Xは任意の有機基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1~12の炭化水素基、またはハロゲン化アルキル基を表す。mはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、nは、1≦n≦20を表す。)
【発明の効果】
【0019】
本発明のオレフィン化合物の硬化物は、高耐熱性、低誘電特性に優れた特性を有する。このため、電気電子部品の封止や回路基板、炭素繊維複合材などに有用である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1:実施例1のGPCチャートを示す。
図2:実施例1のH-NMRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のオレフィン化合物は下記式(1)で表される。
【0022】
【化5】
【0023】
(式(1)中、Xは任意の有機基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1~12の炭化水素基、またはハロゲン化アルキル基を表す。mはそれぞれ独立して0~3の整数を表し、nは、1≦n≦20を表す。Yはそれぞれ独立して存在し、(A)~(D)のいずれか1種以上であり、全てが(D)であるものを除く。*は骨格構造との結合位置を示す。)
【0024】
前記式(1)中、Yは通常(A)~(D)のいずれか1種以上であり、硬化性の観点から(A)~(C)のいずれか1種以上であることが好ましく、は硬化性をさらに高めるためには(A)または(C)であることがさらに好ましい。
【0025】
前記式(1)中、mは0~2であることが好ましく、0であるときがさらに好ましい。nは1≦n≦10であることが好ましく、1≦n≦5であることがさらに好ましい。Rは炭素数1~3の炭化水素基であることが好ましく、炭素数1~2であることがさらに好ましく、炭素数1であることが特に好ましい。Rが炭素数3以下の炭化水素である場合は高周波に晒された際に分子振動をしにくいため、電気特性に優れる。
【0026】
また、前記式(1)中、Xは下記式(2)に記載の(a)~(j)のいずれか1種以上であるときが好ましく、(b)~(i)のいずれか1種以上であるときがさらに好ましく、(b)又は(d)であるときが特に好ましい。
【0027】
【化6】
【0028】
(式(2)中、*は骨格構造との結合位置を示す。)
【0029】
本発明の前記式(1)で表されるオレフィン化合物は、下記式(3)で表される化合物から誘導される。
【0030】
【化7】
【0031】
(式(3)中、Xは任意の有機基を表し、Rはそれぞれ独立して炭素数1~12の炭化水素基、またはハロゲン化アルキル基を表す。mは0~3の整数を表し、nは、1≦n≦20を表す。)
【0032】
前記式(3)のm、n、Rの好ましい範囲は、前記式(1)と同様である。
【0033】
本発明の前記式(1)で表されるオレフィン化合物は、前記式(3)で表される化合物から誘導されるものであり、具体的には前記式(3)で表される化合物と不飽和二重結合を有するハロゲン化合物を触媒存在下反応させて得られる。例えば、前記式(3)で表される化合物を塩基性触媒存在下、溶剤中でアリルクロリド、メタリルクロライド、クロロメチルスチレン等と反応させることで得ることができる。使用する溶剤としては、例えば、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドンなどの非プロトン性極性溶剤が挙げられる。また、前記非プロトン性極性溶剤に加えて非水溶性溶剤を併用することもできる。例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶剤、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの脂肪族溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤などが挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種以上を併用しても良い。触媒は特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の塩基性触媒が挙げられる。また、水共存下、非水溶性溶剤中で反応を行う場合、相間移動触媒を共存させることもできる。例えば第四級アンモニウム塩が挙げられ、テトラメチルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、トリプロピルメチルアンモニウム、トリブチルメチルアンモニウム、トリオクチルメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルフェニルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリエチルアンモニウム、ジアリルジメチルアンモニウム、n-オクチルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、セチルジメチルエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトラ-n-ブチルアンモニウム、β-メチルコリンおよびフェニルトリメチルアンモニウム等の臭化塩、塩化塩、ヨウ化塩、硫酸水素塩および水酸化物等を挙げることが出来る。使用量としては、前記式(3)で表される化合物総量100質量部に対して0.001~400質量部、好ましくは0.005~300質量部である。
【0034】
前記式(3)で表される化合物の製法は特に限定されない。例えば、フルオレン系化合物とビスハロゲン化メチルアリール化合物を塩酸や活性白土等の酸触媒下反応させても良いし、フルオレン系化合物とビスヒドロキシメチルアリール化合物を塩酸や活性白土等の酸触媒下反応させても良い。塩酸を触媒とした場合、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ金属で中和を行い、トルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶媒で抽出後、排水が中性になるまで水洗し、エバポレータ等を用いて溶剤を留去することで目的の分子内に少なくとも2つ以上、フルオレン構造を有するオレフィン化合物を得ることができる。
【0035】
フルオレン系化合物としては、フルオレン、1-メチルフルオレン、2-メチルフルオレン、3-メチルフルオレン、4-メチルフルオレン、1,6-ジメチルフルオレン、1,7-ジメチルフルオレン、1,8-ジメチルフルオレン、2,3-ジメチルフルオレン、2,5-ジメチルフルオレン、2,6-ジメチルフルオレン、2,7-ジメチルフルオレン、3,6-ジメチルフルオレン、4,5-ジメチルフルオレン、1-エチルフルオレン、2-エチルフルオレン、3-エチルフルオレン、4-エチルフルオレン1,6-ジエチルフルオレン、1,7-ジエチルフルオレン、1,8-ジエチルフルオレン、2,3-ジエチルフルオレン、2,5-ジエチルフルオレン、2,6-ジエチルフルオレン、2,7-ジエチルフルオレン、3,6-ジエチルフルオレン、4,5-ジエチルフルオレン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。炭素数が多いと溶剤溶解性は向上するが、耐熱性が低下するため、無置換または炭素数1~3のアルキル基で置換されていることが好ましく、無置換または炭素数1~2のアルキル基で置換されていることがより好ましく、無置換またはメチル基で置換されていることが最も好ましい。
【0036】
ビスハロゲン化メチルアリール化合物としては、о-キシリレンジフルオライド、m-キシリレンジフルオライド、p-キシリレンジフルオライド、о-キシリレンジクロリド、m-キシリレンジクロリド、p-キシリレンジクロリド、о-キシリレンジブロミド、m-キシリレンジブロミド、p-キシリレンジブロミド、о-キシリレンジアイオダイド、m-キシリレンジアイオダイド、p-キシリレンジアイオダイド、4,4’-ビスフルオロメチレンビフェニル、4,4’-ビスクロロメチレンビフェニル、4,4’-ビスブロモメチレンビフェニル、4,4’-ビスヨードメチレンビフェニル、2,4-ビスフルオロメチレンビフェニル、2,4-ビスクロロメチレンビフェニル、2,4-ビスブロモメチレンビフェニル、2,4-ビスヨードメチレンビフェニル、2,2’-ビスフルオロメチレンビフェニル、2,2’-ビスクロロメチレンビフェニル、2,2’-ビスブロモメチレンビフェニル、2,2’-ビスヨードメチレンビフェニルが挙げられ、合成時の原料の反応性の観点から、クロライド系化合物、ブロマイド系化合物、アイオダイド系化合物が好ましく、より好ましくはクロライド系化合物、ブロマイド系化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、前記ビスヒドロキシメチルアリール化合物としては、о-ベンゼンジメタノール、m-ベンゼンジメタノール、p-ベンゼンジメタノール、4,4’-ビスヒドロキシメチルビフェニル、2,4-ビスヒドロキシメチルビフェニル、2,2’- ビスヒドロキシメチルビフェニル、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,4-ベンゼンジメタノール、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,3-ベンゼンジメタノール、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,2-ベンゼンジメタノール等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。これらの使用量は、使用されるフルオレン系化合物1重量%に対して通常0.05~0.8重量%であり、好ましくは0.1~0.6重量%である。
【0037】
フルオレン構造を有する化合物とハロゲン化メチルアリール化合物等の反応の際、必要により、触媒として塩酸、燐酸、硫酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸のほか、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸、活性白土、酸性白土、ホワイトカーボン、ゼオライト、シリカアルミナ等の固体酸、酸性イオン交換樹脂等が挙げられる。これらは単独でも二種以上併用しても良い。触媒の使用量は、使用されるフルオレン系化合物1モルに対して通常0.1~0.8モルであり、好ましくは0.2~0.7モルである。触媒の使用量が多すぎると反応溶液の粘度が高すぎて攪拌が困難になる恐れがあり、少なすぎると反応の進行が遅くなる恐れがある。反応は必要によりヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレンなどの有機溶剤を使用して行っても、無溶剤で行っても良い。例えば、フルオレン系化合物、ハロゲン化メチルアリール化合物、および溶剤の混合溶液に酸性触媒を添加した後、触媒が水を含む場合は共沸により水を系内から除く。しかる後に、40~180℃、好ましくは50~170℃で0.5~20時間反応を行う。その後、系内で発生する水や低分子量成分等を共沸脱水により除去しながら昇温して80~300℃、好ましくは80~250℃、より好ましくは、80℃~200℃で5~50時間、好ましくは5~30時間反応を行う。反応終了後、アルカリ水溶液で酸性触媒を中和後、油層に非水溶性有機溶剤を加えて廃水が中性になるまで水洗を繰り返す。
【0038】
前記式(3)で表される化合物の軟化点は150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。軟化点が150℃より高いとオレフィン樹脂とした際の粘度が高くなって、炭素繊維やガラス繊維へ含浸し難くなる。希釈溶剤を増やして粘度を下げた場合、含浸工程において樹脂が繊維状材料に対して十分に付着しない可能性がある。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物は前記式(1)で表されるオレフィン化合物以外の硬化性樹脂として、公知のいかなる材料を用いても良い。具体的には、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミン樹脂、活性アルケン含有樹脂、イソシアネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、プロペニル樹脂、メタリル樹脂、活性エステル樹脂などが挙げられ、耐熱性、密着性、誘電特性のバランスから、エポキシ樹脂、活性アルケン含有樹脂、シアネートエステル樹脂を含有することが好ましい。これらの硬化性樹脂を含有することによって、硬化物の脆さの改善および金属への密着性を向上でき、はんだリフロー時や冷熱サイクルなどの信頼性試験におけるパッケージのクラックを抑制できる。本発明のマレイミド樹脂以外の硬化性樹脂は1種類で用いても、複数併用してもよい。
上記硬化性樹脂の使用量は、前記式(1)で表されるオレフィン化合物に対して、通常10質量倍以下、好ましくは5質量倍以下、さらに好ましくは3質量倍以下の質量範囲である。また、好ましい下限値は0.5質量倍以上、更に好ましくは1質量倍以上である。10質量倍以上の場合、前記式(1)で表されるオレフィン化合物の濃度が低くなり、十分な耐熱性や誘電特性が得られなくなる可能性がある。
【0040】
フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミン樹脂、活性アルケン含有樹脂、イソシアネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シアネートエステル樹脂、活性エステル樹脂としては、以下に例示するものを使用することができる。
【0041】
フェノール樹脂:フェノール類(フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等)と各種アルデヒド(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、フルフラール等)との重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物(ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等)との重合物、フェノール類とケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等)との重縮合物、フェノール類と置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)等との重縮合により得られるフェノール樹脂、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物、ポリフェニレンエーテル。
【0042】
エポキシ樹脂:前記のフェノール樹脂、アルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシドや3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなどを代表とする脂環式エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)やトリグリシジル-p-アミノフェノールなどを代表とするグリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂。
【0043】
アミン樹脂:ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ナフタレンジアミン、アニリンノボラック、オルソエチルアニリンノボラック、アニリンとキシリレンクロライドとの反応により得られるアニリン樹脂、特許第6429862号公報に記載のアニリンと置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロルメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)、若しくは置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)。
【0044】
活性アルケン含有樹脂:前記のフェノール樹脂と活性アルケン含有のハロゲン系化合物(クロロメチルスチレン、アリルクロライド、メタリルクロライド、アクリル酸クロリド、アリルクロライド等)の重縮合物、活性アルケン含有フェノール類(2-アリルフェノール、2-プロペニルフェノール、4-アリルフェノール、4-プロペニルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール等)とハロゲン系化合物(4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル、1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジブロモベンゾフェノン、塩化シアヌル等)の重縮合物、エポキシ樹脂若しくはアルコール類と置換若しくは非置換のアクリレート類(アクリレート、メタクリレート等)の重縮合物、マレイミド樹脂(4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2’-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン)。
【0045】
イソシアネート樹脂:p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環構造のジイソシアネート類;イソシアネートモノマーの一種類以上のビュレット体又は、上記ジイソシアネート化合物を3量化したイソシアネート体等のポリイソシアネート;上記イソシアネート化合物とポリオール化合物とのウレタン化反応によって得られるポリイソシアネート。
【0046】
ポリアミド樹脂:アミノ酸(6-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸等)、ラクタム(ε-カプロラクタム、ω-ウンデカンラクタム、ω-ラウロラクタム)および「ジアミン(エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン;キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミン等とジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;これらジカルボン酸のジアルキルエステル、およびジクロリド)との混合物から選ばれた1種以上を主たる原料とした重合物。
【0047】
ポリイミド樹脂:前記のジアミンとテトラカルボン酸二無水物(4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2’-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物 、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物)、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、rel-[1S,5R,6R]-3-オキサビシクロ[3,2,1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3’-(テトラヒドロフラン-2’,5’-ジオン)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、エチレングリコール-ビス-(3,4-ジカルボン酸無水物フェニル)エーテル、4,4’-ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物)との重縮合物。
【0048】
シアネートエステル樹脂:フェノール樹脂をハロゲン化シアンと反応させることにより得られるシアネートエステル化合物であり、具体例としては、ジシアナートベンゼン、トリシアナートベンゼン、ジシアナートナフタレン、ジシアナートビフェニル、2、2’-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン、ビス(4-シアナートフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)メタン、2,2’-ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-シアナートフェニル)エタン、2,2’-ビス(4-シアナートフェニル)ヘキサフロロプロパン、ビス(4-シアナートフェニル)スルホン、ビス(4-シアナートフェニル)チオエーテル、フェノールノボラックシアナート、フェノール・ジシクロペンタジエン共縮合物の水酸基をシアネート基に変換したもの等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
また、特開2005-264154号公報に合成方法が記載されているシアネートエステル化合物は、低吸湿性、難燃性、誘電特性に優れているためシアネートエステル化合物として特に好ましい。
シアネート樹脂は、必要に応じてシアネート基を三量化させてsym-トリアジン環を形成するために、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、鉛アセチルアセトナート、ジブチル錫マレエート等の触媒を含有させることもできる。触媒は、硬化性樹脂組成物の合計質量100質量部に対して通常0.0001~0.10質量部、好ましくは0.00015~0.0015質量部使用する。
【0049】
活性エステル化合物:エポキシ樹脂等、前記式(1)で表される化合物以外の硬化性樹脂の硬化剤として1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を必要に応じて用いることができる。活性エステル系硬化剤としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。当該活性エステル系硬化剤は、カルボン酸化合物及びチオカルボン酸化合物の少なくともいずれかの化合物と、ヒドロキシ化合物及びチオール化合物の少なくともいずれかの化合物との縮合反応によって得られるものが好ましい。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物とヒドロキシ化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましく、カルボン酸化合物とフェノール化合物及びナフトール化合物の少なくともいずれかの化合物とから得られる活性エステル系硬化剤が好ましい。
カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
フェノール化合物又はナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
活性エステル系硬化剤の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
活性エステル系硬化剤の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」、「EXB-8150-65T」(DIC社製);ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC社製);フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学社製);フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱化学社製);フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学社製);リン原子含有活性エステル系硬化剤としてDIC社製の「EXB-9050L-62M」;等が挙げられる。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物において、オレフィン樹脂やマレイミド樹脂等のラジカル重合可能な硬化性樹脂の自己重合やその他の成分とのラジカル重合を促進する目的でラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。用い得るラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)-ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネート類、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクトエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物の公知の硬化促進剤が挙げられるが、これらに特に限定されるものではない。ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーカーボネート類等が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類がより好ましい。ラジカル重合開始剤の添加量としては、硬化性樹脂組成物の質量100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が特に好ましい。用いるラジカル重合開始剤の量が多いと重合反応時に分子量が十分に伸長しない。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤(硬化触媒)を併用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール及び2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、2-(ジメチルアミノメチル)フェノールや1,8-ジアザ-ビシクロ[5,4,0]ウンデセン-7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ、カルボン酸亜鉛(2-エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ミスチリン酸亜鉛)やリン酸エステル亜鉛(オクチルリン酸亜鉛、ステアリルリン酸亜鉛等)等の亜鉛化合物等の遷移金属化合物(遷移金属塩) 等が挙げられる。硬化促進剤の配合量は、硬化性樹脂組成物の質量100に対して0.001~5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物には、リン含有化合物を難燃性付与成分として含有させることもできる。リン含有化合物としては反応型のものでも添加型のものでもよい。リン含有化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル-2,6-ジキシリレニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のホスファン類;エポキシ樹脂と前記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。リン含有化合物の含有量は(リン含有化合物)/(全硬化性樹脂)が0.1~0.6(重量比)の範囲であることが好ましい。0.1以下では難燃性が不十分であり、0.6以上では硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす懸念がある。
【0053】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて酸化防止剤を添加しても構わない。使用できる酸化防止剤としては、フェノール系、イオウ系、リン系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤は単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物中の樹脂成分に対して100重量部に対して、通常0.008~1重量部、好ましくは0.01~0.5重量部である。これら酸化防止剤はそれぞれ単独で使用できるが、2種以上を組み合わせて併用しても構わない。特に本発明においてはリン系の酸化防止剤が好ましい。
【0054】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-p-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール、等のモノフェノール類;2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類;1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、トコフェノール等の高分子型フェノール類が例示される。
【0055】
イオウ系酸化防止剤の具体例としては、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリルル-3,3’-チオジプロピオネート等が例示される。
【0056】
リン系酸化防止剤の具体例としては、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビ(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2-t-ブチル-6-メチル-4-{2-(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類;9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類などが例示される。
【0057】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて光安定剤を添加しても構わない。光安定剤としては、ヒンダートアミン系の光安定剤、特にHALS等が好適である。HALSとしては特に限定されるものではないが、代表的なものとしては、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’―ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物、ポリ〔{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドリキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、等が挙げられる。HALSは1種のみが用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。
【0058】
さらに本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じてバインダー樹脂を配合することも出来る。バインダー樹脂としてはブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ-ナイロン系樹脂、NBR-フェノール系樹脂、エポキシ-NBR系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、硬化性樹脂成分100質量部に対して通常0.05~50質量部、好ましくは0.05~20質量部が必要に応じて用いられる。
【0059】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて溶融シリカ、結晶シリカ、多孔質シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、石英粉、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、グラファイト、フォルステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、酸化鉄アスベスト、ガラス粉末等の粉体、またはこれらを球形状あるいは破砕状にした無機充填材を添加することができる。また、特に半導体封止用の硬化性樹脂組成物を得る場合、上記の無機充填材の使用量は硬化性樹脂組成物中、通常80~92質量%、好ましくは83~90質量%の範囲である。
【0060】
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いうる添加剤の具体例としては、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。これら添加剤の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは700質量部以下の範囲である。
【0061】
本発明の硬化性樹脂組成物は、上記各成分を所定の割合で均一に混合することにより得られ、通常130~180℃で30~500秒の範囲で予備硬化し、更に、150~200℃で2~15時間、後硬化することにより充分な硬化反応が進行し、本発明の硬化物が得られる。又、硬化性樹脂組成物の成分を溶剤等に均一に分散または溶解させ、溶媒を除去した後硬化させることもできる。
【0062】
こうして得られる本発明の硬化性樹脂組成物は、耐湿性、耐熱性、高接着性を有する。従って、本発明の硬化性樹脂組成物は、耐湿性、耐熱性、高接着性の要求される広範な分野で用いることが出来る。具体的には、絶縁材料、積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)、封止材料、レジスト等あらゆる電気・電子部品用材料として有用である。又、成形材料、複合材料の他、塗料材料、接着剤等の分野にも用いることが出来る。特に半導体封止においては、耐ハンダリフロー性が有益なものとなる。
【0063】
半導体装置は本発明の硬化性樹脂組成物で封止されたものを有する。半導体装置としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。
【0064】
本発明の硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、各成分を均一に混合するだけでも、あるいはプレポリマー化してもよい。例えば本発明の硬化性樹脂を触媒の存在下または非存在下、溶剤の存在下または非存在下において加熱することによりプレポリマー化する。同様に、本発明の硬化性樹脂の他、エポキシ樹脂、アミン化合物、マレイミド系化合物、シアネートエステル化合物、フェノール樹脂、酸無水物化合物などの硬化剤及びその他添加剤を追加してプレポリマー化してもよい。各成分の混合またはプレポリマー化は溶剤の非存在下では例えば押出機、ニーダ、ロールなどを用い、溶剤の存在下では攪拌装置つきの反応釜などを使用する。
【0065】
均一に混合する手法としては50~100℃の範囲内の温度でニーダ、ロール、プラネタリーミキサー等の装置を用いて練りこむように混合し、均一な樹脂組成物とする。得られた樹脂組成物は粉砕後、タブレットマシーン等の成型機で円柱のタブレット状に成型、もしくは顆粒状の紛体、もしくは粉状の成型体とする、もしくはこれら組成物を表面支持体の上で溶融し0.05mm~10mmの厚みのシート状に成型し、硬化性樹脂組成物成型体とすることもできる。得られた成型体は0~20℃でべたつきのない成型体となり、-25~0℃で1週間以上保管しても流動性、硬化性をほとんど低下させない。
得られた成型体についてトランスファー成型機、コンプレッション成型機にて硬化物に成型することができる。
【0066】
本発明の硬化性樹脂組成物に有機溶剤を添加してワニス状の組成物(以下、単にワニスという。)とすることもできる。本発明の硬化性樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の溶剤に溶解させてワニスとし、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本発明の硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本発明の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10~70重量%、好ましくは15~70重量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有する硬化性樹脂硬化物を得ることもできる。
【0067】
また、本発明の硬化性組成物をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB-ステージにおけるフレキ性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本発明の硬化性樹脂組成物を前記硬化性樹脂組成物ワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することが出来る。
【0068】
本発明の硬化性樹脂組成物は、加熱溶融し、低粘度化してガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維などの強化繊維に含浸させることによりプリプレグを得ることができる。その具体例としては、例えば、Eガラスクロス、Dガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、球状ガラスクロス、NEガラスクロス、及びTガラスクロス等のガラス繊維、更にガラス以外の無機物の繊維やポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン株式会社製)、全芳香族ポリアミド、ポリエステル;並びに、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリイミド及び炭素繊維などの有機繊維が挙げられるが、これらに特に限定されない。基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマットなどが挙げられる。また、織布の織り方としては、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、織布を開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01~0.4mm程度である。また、前記ワニスを、強化繊維に含浸させて加熱乾燥させることによりプリプレグを得ることもできる。
【0069】
本実施形態の積層板は、上記プリプレグを1枚以上備える。積層板はプリプレグを1枚以上備えるものであれば特に限定されず、他のいかなる層を有していてもよい。積層板の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができ、上記プリプレグ同士を積層し、加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。このとき、加熱する温度は、特に限定されないが、65~300℃が好ましく、120~270℃がより好ましい。また、加圧する圧力は、特に限定されないが、加圧が大きすぎると積層板の樹脂の固形分調整が難しく品質が安定せず、また、圧力が小さすぎると、気泡や積層間の密着性が悪くなってしまうため2.0~5.0MPaが好ましく、2.5~4.0MPaがより好ましい。本実施形態の積層板は、金属箔からなる層を備えることにより、後述する金属箔張積層板として好適に用いることができる。
上記プリプレグを所望の形に裁断、必要により銅箔などと積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながら硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることにより電気電子用積層板(プリント配線板)や、炭素繊維強化材を得ることができる。
【0070】
本発明の硬化物は成型材料、接着剤、複合材料、塗料など各種用途に使用できる。本発明記載の硬化性樹脂組成物の硬化物は優れた耐熱性と誘電特性を示すため、半導体素子用封止材、液晶表示素子用封止材、有機EL素子用封止材、プリント配線基板、ビルドアップ積層板等の電気・電子部品や炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等の軽量高強度構造材用複合材料に好適に使用される。
【実施例0071】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明する。以下、特に断わりのない限り、部は重量部である。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
<数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)>
ポリスチレン標準液を用いてポリスチレン換算により算出した。
GPC:DGU-20A3R,LC-20AD,SIL-20AHT,RID-20A,SPD-20A,CTO-20A,CBM-20A(いずれも島津製作所製)
カラム:Shodex KF-603、KF-602x2、KF-601x2)
連結溶離液:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/min.
カラム温度:40℃
検出:RI(示差屈折検出器)
【0072】
[実施例1]
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコにトルエン100部、フルオレン(東京化成社製)41.6部、4,4’-ベンゼンジメタノール(東京化成社製)17.3部、メタンスルホン酸(東京化成社製)2.9部を仕込み、110℃で3時間反応させた。放冷後、30wt%水酸化ナトリウム水溶液6.0部加え、室温で30分攪拌し、中和を行った。続いて、ジメチルスルホキシド100部、水5.0部、水酸化ナトリウム30部を加え、アリルクロリド57.4部を内温が30℃を超えないように1時間かけて滴下していき、40℃で8時間反応を行った。放冷後、トルエン300部、メタノール25部を加え、有機層を水100部で5回洗浄し、加熱減圧下溶剤と過剰のアリルクロリドを留去することにより、オレフィン化合物(O-1)をオレンジ色液状樹脂として68.9部得た。得られたオレフィン樹脂の反応完結時のGPCチャートを図1に示す。GPC分析による分子量は、Mn:506、Mw:958であった。また、得られた化合物のH-NMRチャート(CDCl)を図2に示す。H-NMRチャートの4.50-6.20ppmにアリル基由来のシグナルが観測された。
【0073】
[実施例2]
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコにトルエン100部、フルオレン(東京化成社製)41.6部、α,α,α’,α’-テトラメチルベンゼンジメタノール(富士フィルム和光純薬社製)24.3部、メタンスルホン酸(東京化成社製)2.9部を仕込み、110℃で1時間反応させた。放冷後、30wt%水酸化ナトリウム水溶液6.0部加え、室温で30分攪拌し、中和を行った。続いて、ジメチルスルホキシド100部、水5.0部、水酸化ナトリウム30部を加え、アリルクロリド57.4部を内温が30℃を超えないように1時間かけて滴下していき、40℃で8時間反応を行った。放冷後、トルエン300部、メタノール25部を加え、有機層を水100部で5回洗浄し、加熱減圧下溶剤と過剰のアリルクロリドを留去することにより、オレフィン化合物(O-2)を黄色液状樹脂として70.6部得た。
【0074】
[実施例3]
実施例1で得られたオレフィン化合物(O-1)、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂SA-9000-111(SABIC社製)、ジクミルパーオキサイドをトルエンに加え、樹脂溶液(S-1)を調製した。S-1をアプリケータを用いて市販のイミドフィルム(東レデュポン製「カプトン(登録商標)100H」)へ流延塗布(WET膜厚200μm)し、窒素雰囲気下、塗布された樹脂膜を120℃の熱風にて10分間、220℃の熱風にて1時間時間、加熱・乾燥させることにより溶媒を除去することで、フィルム状の硬化物を得た(膜厚105μm)。得られたフィルムを長さ4mm、幅3mmにカットし、硬化物性評価に用いた。測定結果を表1に示す。
【0075】
[比較例1]
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC-3000L 日本化薬株式会社製)、およびビフェニルアラルキル型フェノール樹脂(GPH-65 日本化薬社製)、硬化促進剤として2-エチル-4-メチルイミダゾール(略称:2E-4MZ 東京化成社製)を使用し、表1の割合(重量部)で配合し、ミキシングロールを用いて均一に混合・混練し、更に脱型後、160℃で2時間、180℃で6時間の条件で硬化し、評価用試験片を得た。
【0076】
<耐熱性試験>
・ガラス転移温度:動的粘弾性試験機により測定し、tanδが最大値のときの温度。
動的粘弾性測定器:TA-instruments製DMA-2980
昇温速度:2℃/分
<誘電率試験・誘電正接試験>
・(株)AET開発製の1GHz空洞共振器を用いて、空洞共振器摂動法にてテストを行った。
【0077】
【表1】
【0078】
表1の結果より、実施例3は、耐熱性が高く、誘電特性にも優れることが確認された。特に、実施例3の誘電正接は比較例1より1オーダー低く、極めて優れた特性を有する。


図1
図2