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特開2024-98461光偏向装置、ホログラム画像再生装置及び光照射装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098461
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】光偏向装置、ホログラム画像再生装置及び光照射装置
(51)【国際特許分類】
   G03H 1/22 20060101AFI20240716BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240716BHJP
   F21Y 115/30 20160101ALN20240716BHJP
【FI】
G03H1/22
F21S2/00 330
F21Y115:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002019
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】513143537
【氏名又は名称】株式会社アーティエンス・ラボ
(74)【代理人】
【識別番号】100111659
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 聡
(72)【発明者】
【氏名】白倉 明
(72)【発明者】
【氏名】西川 博
【テーマコード(参考)】
2K008
【Fターム(参考)】
2K008AA00
2K008CC03
2K008EE01
2K008HH03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光源の発光面積が大きく、第1ホログラフィック光学素子の特定の位置に入射する光の角度が光源の中心部分からの光と端部からの光で異なる場合であっても、光の利用効率を高め、明るい偏向光を得る。
【解決手段】基板の前面側に取り付けられた第1ホログラフィック光学素子3eと、LED5Reとを備え、LED5Reからの光が、第1ホログラフィック光学素子3eで偏向されて基板内を伝搬するようにした光偏向装置であって、第1ホログラフィック光学素子3eは、複数の単位ホログラフィック光学素子の層からなる構造であり、複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は、各LED5Reの発光領域を分割した分割発光領域の各々と対向する位置にあり、前記分割発光領域からの光を前記特定方向の平行光に回折するようにした光偏向装置。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が透明で厚さ方向に直交する第1の面と第2の面を有する基板と、
前記基板の第1の面側に取り付けられた一又は複数のホログラフィック光学素子と、
前記基板の前記ホログラフィック光学素子と対向する位置に取り付けられ、前記ホログラフィック光学素子を照射する光源と
を備え、
前記ホログラフィック光学素子は、前記光源から出射して前記ホログラフィック光学素子に入射した光を特定方向の光に偏向し、この偏向された偏向光が前記基板内を伝搬するようにした光偏向装置であって、
前記光源は発光する又は発光する可能性のある一定の面積の発光領域を有し、該発光領域から出射して前記光源に対向する面の同じ位置に入射する光の入射角度は、前記発光領域から出射する光の位置によって異なり、
前記ホログラフィック光学素子は、形状・大きさが同じ又は近似した複数の単位ホログラフィック光学素子が一層又は複数の層からなる構造であり、
前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は、前記発光領域を前記単位ホログラフィック光学素子の数に分割した分割発光領域の各々と対向する位置にあり、
前記分割発光領域の各々から出射して対向する位置にある前記単位ホログラフィック光学素子に入射する光の入射角度は、一の前記単位ホログラフィッ光学素子と他の前記単位ホログラフィック光学素子で同じであり、
前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は該単位ホログラフィック光学素子と対向する前記分割発光領域からの光を前記特定方向の平行光に回折するようにしたことを特徴とする光偏向装置。
【請求項2】
前記光源は、前記基板の前記第1のホログラフィック光学素子の各々と対向する位置に取り付けられ、前記複数のホログラフィック光学素子を照射する複数のLEDからなることを特徴とする請求項1記載の光偏向装置。
【請求項3】
前記光源は面発光レーザであり、前記発光領域は前記面発光レーザの設定位置の範囲であることを特徴とする請求項1記載の光偏向装置。
【請求項4】
内部が透明で厚さ方向に直交する第1の面と第2の面を有する基板と、
前記基板の第1の面側に取り付けられた一又は複数の第1ホログラフィック光学素子と、
前記基板の第1の面又は第2の面の前記第1ホログラフィック光学素子とは異なる位置に取り付けられ、ホログラム画像を再生する第2ホログラフィック光学素子と、
前記基板の前記第1ホログラフィック光学素子と対向する位置に取り付けられ、前記第1ホログラフィック光学素子を照射する光源と
を備え、
前記第1ホログラフィック光学素子は、前記光源から出射して前記第1ホログラフィック光学素子に入射した光を特定方向の光に偏向し、この偏向された偏向光が前記第2ホログラフィック光学素子を照射してホログラム画像を再生するようにしたホログラム画像再生装置であって、
前記光源は発光する又は発光する可能性のある一定の面積の発光領域を有し、該発光領域から出射して前記光源に対向する面の同じ位置に入射する光の入射角度は、前記発光領域から出射する光の位置によって異なり、
前記第1ホログラフィック光学素子は、形状・大きさが同じ又は近似した複数の単位ホログラフィック光学素子が一層又は複数の層からなる構造であり、
前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は、前記発光領域を前記単位ホログラフィック光学素子の数に分割した分割発光領域の各々と対向する位置にあり、
前記分割発光領域の各々から出射して対向する位置にある前記単位ホログラフィック光学素子に入射する光の入射角度は、一の前記単位ホログラフィック光学素子と他の前記単位ホログラフィック光学素子で同じであり、
前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は該単位ホログラフィック光学素子と対向する前記分割発光領域からの光を前記特定方向の平行光に回折するようにしたことを特徴とするホログラム画像再生装置。
【請求項5】
内部が透明で厚さ方向に直交する第1の面と第2の面を有する基板と、
前記基板の第1の面側に取り付けられた一又は複数の第1ホログラフィック光学素子と、
前記基板の第1の面又は第2の面の前記第1ホログラフィック光学素子とは異なる位置に取り付けられ、照射光を出射する第2ホログラフィック光学素子と、
前記基板の前記第1ホログラフィック光学素子と対向する位置に取り付けられ、前記第1ホログラフィック光学素子を照射する光源と
を備え、
前記第1ホログラフィック光学素子は、前記光源から出射して前記第1ホログラフィック光学素子に入射した光を特定方向の光に偏向し、この偏向された偏向光が前記第2ホログラフィック光学素子を照射し、前記第2ホログラフィック光学素子から出射した光が対象物を照射する光照射装置であって、
前記光源は発光する又は発光する可能性のある一定の面積の発光領域を有し、該発光領域から出射して前記光源に対向する面の同じ位置に入射する光の入射角度は、前記発光領域から出射する光の位置によって異なり、
前記第1ホログラフィック光学素子は、形状・大きさが同じ又は近似した複数の単位ホログラフィック光学素子が一層又は複数の層からなる構造であり、
前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は、前記発光領域を前記単位ホログラフィック光学素子の数に分割した分割発光領域の各々と対向する位置にあり、
前記分割発光領域の各々から出射して対向する位置にある前記単位ホログラフィック光学素子に入射する光の入射角度は、一の前記単位ホログラフィック光学素子と他の前記単位ホログラフィック光学素子で同じであり、
前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は該単位ホログラフィック光学素子と対向する前記分割発光領域からの光を前記特定方向の平行光に回折するようにしたことを特徴とする光照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明基板に取り付けた第1ホログラフィック光学素子に光源からの光を照射し、第1ホログラフィック光学素子で特定の方向に偏向した光が透明基板内を伝搬するようにした光偏向装置、透明基板に第のホログラフィック光学素子を取り付けて透明基板内を伝搬する光を第2ホログラフィック光学素子に照射し、ホログラム画像を再生するホログラム画像再生装置、及び、透明基板内を伝搬する光を第2ホログラフィック光学素子に照射し、対象物を照射するための光を出射する光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
広告宣伝用の立体的な画像等を表示するホログラムは、物体を表す物体光と参照光を干渉させて生じる干渉縞を感光材料に記録したものであり、ホログラムによる画像を再生して視認するためには、原則としてホログラムを記録する際に用いた参照光の照射方向と同じ方向、またはその共役の方向から照明光をホログラムに照射する必要がある。
このホログラムを再生するための照明光を照射する照明装置には、各種光源を使用した光学系が用いられるが、ホログラムが大きくなると照明装置も大型となることから、大サイズのホログラム用の照明装置をコンパクトにするため、光学系にLED光源と導光板を使用した照明装置の提案がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1(国際公開WO2018/221091号公報)には、透明基板の一方の面に多数の反射型のホログラフィック回折格子が光の伝搬方向と直交方向に隙間なく配置され、透明基板の他方の面側の各ホログラフィック回折格子に対向する位置には、所定の距離を保って近接するようにLEDが配置され、各LEDからの拡散光を対向するホログラフィック回折格子で所定角度の平行光として透明基板内を全反射させながら伝搬させ、この平行光を透明基板に貼り付けられた体積型ホログラフィック記録材料に照射して立体画像ホログラムを表示(再生)させる画像表示装置が開示されている。
この特許文献1の画像表示装置では、LEDを点光源とみなして、点光源からの拡散光をホログラフィック回折格子で所定角度の平行光に回折している。
【0004】
しかしながら、実際のLEDは点光源ではなく、一定の発光面積をもった光源であり、LEDから対向する位置にあるホログラフィック回折格子に拡散光を照射すると、LEDの中心部分からの光が、ホログラフィック回折格子の特定の位置に入射する角度(以下「回折格子入射角度」という。)と、LEDの中心から離れた端部等からの光の回折格子入射角度が異なる。
LEDの発光面積が小さい場合は、LEDの発光する部分の位置の違いによる回折格子入射角度の違いは小さく、LEDからの光の大部分はホログラフィック回折格子で平行光に回折されるが、LEDの発光面積が大きくなると回折格子入射角度の違いも大きくなり、LEDの中心部分からの入射光をホログラフィック回折格子で平行光に回折するようにした場合、LEDの端部等の中心から離れた部分からの入射光は、回折格子入射角度が設定された角度と大きく異なり、波長選択性の高いホログラフィック回折格子であれば、平行光に回折せずに透過し、波長選択性の低いホログラフィック回折格子であれば、設定された波長とは異なる色の光が設定された角度とは異なる方向に回折されることとなる。
これより、ホログラフィック回折格子を照射する光源に発光面積の大きいLED等の光源を使用した場合、光源からの光のうち中心部分とその近傍からの光しかホログラフィック回折格子で設定された平行光に回折されず、光の利用効率が低下し、ホログラフィック回折格子で回折された平行光を照明用やホログラム像再生用に使用しても、波長選択性の高いホログラフィック回折格子であれば、明るい照明光や明るいホログラム像が得られず、波長選択性の低いホログラフィック回折格子であれば、コントラストの劣化やホログラム像再生の品質劣化が生じるという問題がある。
【0005】
ところで、特許文献2(特開2010-72148号公報)には、基板21の回転軸Bに対して偏心した位置にホログラムエレメント51を形成する工程と、回転軸Bを中心にして基板21を所定角度だけ回転させる工程とを繰り返すことにより、基板21上に複数のホログラムエレメント51を形成するホログラム光学素子の製造方法及びそのような製造方法により製造されたホログラム光学素子であって、各ホログラムエレメント51は、基板21上に形成されるホログラム感光材料22aを光束L1・L2で露光することによって形成され、光束L1は、基板21の回転軸B上またはその近傍の点から発散してホログラム感光材料22aに入射する光束であり、一方、光束L2は、ホログラム感光材料22aに対する照射スポットR2が光束L1の露光領域R1と重なる領域を有し、かつ、回転軸Bに対して偏心する位置に形成される光束であるホログラム光学素子の製造方法及びホログラム光学素子が開示されている。
また、特許文献2には、光源モジュール10とホログラム基板20とを有し、光源モジュール10は、筐体11内にLEDの光源12を有し、ホログラム基板20は、透明な基板21上に上記の製法で作製される体積位相型の透過型ホログラム光学素子で構成されるホログラム光学素子22を有し、光源12から出射された光(発散光)は、ホログラム光学素子22にて回折、偏向され、基板21を透過して外部に出射されるようにした光源ユニット1も開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献2において、光源12は、放射角度が一定の点光源であり、ホログラム光学素子22は、放射角度が一定の点光源から発散光が照射された場合に、高NAのレンズと同等の機能を有するホログラム光学素子を容易に実現することができるホログラム光学素子を得るために、基板21上に複数のホログラムエレメント51を形成するのであって、光源12のLEDの発光面積が大きくなり、光源12の中心部分からの発散光がホログラム光学素子22の特定の位置へ入射する角度と、光源12の中心から離れた端部等からの発散光がホログラム光学素子22の特定の位置へ入射する角度が大きく異なると、特許文献1の画像表示装置と同様に、光源12からの光のうち中心部分からの光しかホログラム光学素子22で回折、偏向され、外部に出射されず、光の利用効率が低下し、明るい光を出射できないという問題点がある。
【0007】
ここで、特許文献1の画像表示装置において、垂直共振器型面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)のような発光面積が微小で点光源に近い面発光レーザを光源として使用することも考えられる。
しかしながら、発光面積が微小の光源からホログラフィック回折格子に拡散光を照射するようにすると、光源の位置が設定位置からずれた場合、光源からの拡散光の回折格子入射角度が設定された角度と大きく異なり、光源にLEDを使用した特許文献1の画像表示装置と同様に、ホログラフィック回折格子への入射光が平行光に回折されずに透過する等の問題が生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開WO2018/221091号公報
【特許文献2】特開2010-72148号公報公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、光源からの拡散光を第1ホログラフィック光学素子により特定の方向の光に偏向して、偏向光を伝搬させる光偏向装置、伝搬した偏向光を第2ホログラフィック光学素子に照射する装置において、光源の発光面積が大きく、第1ホログラフィック光学素子の特定の位置に入射する光の角度が光源の中心部分からの光と端部からの光で異なる場合、あるいは、光源の発光面積が微小で第1ホログラフィック光学素子の特定の位置に入射する光の角度が、設定位置にある光源からの光と設定位置からずれた位置にある光源からの光で異なる場合であっても、光源からの光のうち第1ホログラフィック光学素子で偏向される光の割合を高くして、光の利用効率を高め、明るい偏向光を得るようにすることである。
【0010】
請求項1の発明は、内部が透明で厚さ方向に直交する第1の面と第2の面を有する基板と、前記基板の第1の面側に取り付けられた一又は複数のホログラフィック光学素子と、前記基板の前記ホログラフィック光学素子と対向する位置に取り付けられ、前記ホログラフィック光学素子を照射する光源とを備え、前記ホログラフィック光学素子は、前記光源から出射して前記ホログラフィック光学素子に入射した光を特定方向の光に偏向し、この偏向された偏向光が前記基板内を伝搬するようにした光偏向装置であって、前記光源は発光する又は発光する可能性のある一定の面積の発光領域を有し、該発光領域から出射して前記光源に対向する面の同じ位置に入射する光の入射角度は、前記発光領域から出射する光の位置によって異なり、前記ホログラフィック光学素子は、形状・大きさが同じ又は近似した複数の単位ホログラフィック光学素子が一層又は複数の層からなる構造であり、前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は、前記発光領域を前記単位ホログラフィック光学素子の数に分割した分割発光領域の各々と対向する位置にあり、前記分割発光領域の各々から出射して対向する位置にある前記単位ホログラフィック光学素子に入射する光の入射角度は、一の前記単位ホログラフィッ光学素子と他の前記単位ホログラフィック光学素子で同じであり、前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は該単位ホログラフィック光学素子と対向する前記分割発光領域からの光を前記特定方向の平行光に回折するようにした光偏向装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0011】
請求項2の発明は、前記光源は、前記基板の前記第1のホログラフィック光学素子の各々と対向する位置に取り付けられ、前記複数のホログラフィック光学素子を照射する複数のLEDからなる光偏向装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0012】
請求項3の発明は、前記光源は面発光レーザであり、前記発光領域は前記面発光レーザの設定位置の範囲である光偏向装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0013】
請求項4の発明は、内部が透明で厚さ方向に直交する第1の面と第2の面を有する基板と、前記基板の第1の面側に取り付けられた一又は複数の第1ホログラフィック光学素子と、前記基板の第1の面又は第2の面の前記第1ホログラフィック光学素子とは異なる位置に取り付けられ、ホログラム画像を再生する第2ホログラフィック光学素子と、前記基板の前記第1ホログラフィック光学素子と対向する位置に取り付けられ、前記第1ホログラフィック光学素子を照射する光源とを備え、前記第1ホログラフィック光学素子は、前記光源から出射して前記第1ホログラフィック光学素子に入射した光を特定方向の光に偏向し、この偏向された偏向光が前記第2ホログラフィック光学素子を照射してホログラム画像を再生するようにしたホログラム画像再生装置であって、前記光源は発光する又は発光する可能性のある一定の面積の発光領域を有し、該発光領域から出射して前記光源に対向する面の同じ位置に入射する光の入射角度は、前記発光領域から出射する光の位置によって異なり、前記第1ホログラフィック光学素子は、形状・大きさが同じ又は近似した複数の単位ホログラフィック光学素子が一層又は複数の層からなる構造であり、前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は、前記発光領域を前記単位ホログラフィック光学素子の数に分割した分割発光領域の各々と対向する位置にあり、前記分割発光領域の各々から出射して対向する位置にある前記単位ホログラフィック光学素子に入射する光の入射角度は、一の前記単位ホログラフィック光学素子と他の前記単位ホログラフィック光学素子で同じであり、前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は該単位ホログラフィック光学素子と対向する前記分割発光領域からの光を前記特定方向の平行光に回折するようにしたホログラム画像再生装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【0014】
請求項5の発明は、内部が透明で厚さ方向に直交する第1の面と第2の面を有する基板と、前記基板の第1の面側に取り付けられた一又は複数の第1ホログラフィック光学素子と、前記基板の第1の面又は第2の面の前記第1ホログラフィック光学素子とは異なる位置に取り付けられ、照射光を出射する第2ホログラフィック光学素子と、前記基板の前記第1ホログラフィック光学素子と対向する位置に取り付けられ、前記第1ホログラフィック光学素子を照射する光源とを備え、前記第1ホログラフィック光学素子は、前記光源から出射して前記第1ホログラフィック光学素子に入射した光を特定方向の光に偏向し、この偏向された偏向光が前記第2ホログラフィック光学素子を照射し、前記第2ホログラフィック光学素子から出射した光が対象物を照射する光照射装置であって、前記光源は発光する又は発光する可能性のある一定の面積の発光領域を有し、該発光領域から出射して前記光源に対向する面の同じ位置に入射する光の入射角度は、前記発光領域から出射する光の位置によって異なり、前記第1ホログラフィック光学素子は、形状・大きさが同じ又は近似した複数の単位ホログラフィック光学素子が一層又は複数の層からなる構造であり、前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は、前記発光領域を前記単位ホログラフィック光学素子の数に分割した分割発光領域の各々と対向する位置にあり、前記分割発光領域の各々から出射して対向する位置にある前記単位ホログラフィック光学素子に入射する光の入射角度は、一の前記単位ホログラフィック光学素子と他の前記単位ホログラフィック光学素子で同じであり、前記複数の単位ホログラフィック光学素子の各々は該単位ホログラフィック光学素子と対向する前記分割発光領域からの光を前記特定方向の平行光に回折するようにした光照射装置を提供して、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明の光偏向装置においては、光源が発光する又は発光する可能性のある一定の面積の発光領域を分割した分割発光領域と対向する位置にある単位ホログラフィック光学素子が、分割発光領域の拡散光を平行光に回折してすることから、ホログラフィック光学素子は、発光領域のどの位置からの拡散光も平行光に回折し、光源からの光のうちホログラフィック光学素子で偏向される光の割合を高くして、光の利用効率を高め、明るい偏向光を得ることができるという効果を奏する。
【0016】
請求項2に記載の発明の光偏向装置においては、さらに、偏向光が伝搬する方向と直角方向に長い明るい偏向光を得ることができるという効果を奏する。
【0017】
請求項3に記載の発明の光偏向装置においては、さらに、面発光レーザが設定位置からずれた位置に設定されても、ホログラフィック光学素子が面発光レーザからの拡散光も平行光に回折し、面発光レーザからの光のうちホログラフィック光学素子で偏向される光の割合を高くして、光の利用効率を高め、明るい偏向光を得ることができるという効果を奏する。
【0018】
請求項4に記載の発明のホログラム画像再生装置においては、光源が発光する又は発光する可能性のある一定の面積の発光領域を分割した分割発光領域と対向する位置にある単位ホログラフィック光学素子が、分割発光領域の拡散光を平行光に回折してすることから、第1ホログラフィック光学素子は、発光領域のどの位置からの拡散光も平行光に回折し、光源からの光のうち第1ホログラフィック光学素子で偏向される光の割合を高くして、光の利用効率を高め、第2ホログラフィック光学素子から明るいホログラム像を再生するという効果を奏する。
【0019】
請求項5に記載の発明の光照射装置においては、光源が発光する又は発光する可能性のある一定の面積の発光領域を分割した分割発光領域と対向する位置にある単位ホログラフィック光学素子が、分割発光領域の拡散光を平行光に回折してすることから、第1ホログラフィック光学素子は、光源の発光領域のどの位置からの拡散光も平行光に回折し、光源からの光のうち第1ホログラフィック光学素子で偏向される光の割合を高くして、光の利用効率を高め、第2ホログラフィック光学素子から明るい照明光を出射するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の光偏向装置を備えたホログラム画像再生装置の正面側からの斜視図と背面側からの斜視図である。
図2図1に示すホログラム画像再生装置の左側面図と正面図である。
図3図1に示すホログラム画像再生装置の背面図である。
図4図1に示すホログラム画像再生装置の分解斜視図である。
図5】面発光レーザの斜視図である。
図6】ホログラフィック光学素子(ホログラフィック回折格子)で拡散光が平行光に回折される状態を説明する説明図である。
図7】LED5eの発光領域またはレーザ発光部5e’の設定位置の範囲を4個の発光分割領域に分割した状態の斜視図である。
図8図7に示す分割発光領域から対向する位置にある単位ホログラフィック光学素子に拡散光を照射した状態の斜視図である。
図9図8に示す状態の平面図と左側面図である。
図10図9に示す状態を各分割発光領域とそれに対向する単位ホログラフィック光学素子に分解した分解斜視図である。
図11】LED素子5eから出射した拡散光が基板2内を伝搬する状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[光偏向装置、ホログラム画像再生装置の構成]
図1(a)は、本発明の光偏向装置を備えたホログラム画像再生装置の正面側からの斜視図、図1(b)は、本発明のホログラム画像再生装置の背面側からの斜視図、図2(a)は、図1に示すホログラム画像再生装置の左側面図、図2(b)は、図1に示すホログラム画像再生装置の正面図、図3(a)は、図1に示すホログラム画像再生装置の背面図、図3(a)は、図1に示すホログラム画像再生装置の底面図、図4は、図1に示すホログラム画像再生装置の分解斜視図である。
図中、1はホログラム画像再生装置、1Aは光偏向装置、2は基板、2Fは前面、2Rは後面、3は第1ホログラフィック光学素子列、3a~3iは第1ホログラフィック光学素子、4は第2ホログラフィック光学素子、5は光源シート、5a~5iはLED、6はスペーサであり、図において、Xは基板2を前面2Fが正面を向くように置いた場合の前面2Fにおける水平方向(左右方向)、Yは前面2FにおけるX方向と垂直な方向(上下方向)、Zは前面2F(XY面)と垂直な方向(上下方向、基板2の厚み方向)である。
図に示すように、光偏向装置1Aは、基板2、第1ホログラフィック光学素子列3、光源シート5、スペーサ6を備え、ホログラム画像再生装置1は、光偏向装置1Aと第2ホログラフィック光学素子4を備えている。
基板2は、光学的屈折率が1.3~1.7の平板状の無色透明な板であり、第1の面となる前面2F、第2の面となる後面2Rを備え、アクリル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリアミド、トリアセチルセルロース(TAC)等のプラスチック材料、あるいは、ガラス等からなる。
【0022】
第1ホログラフィック光学素子列3は、X方向(左右方向)に配置された9個の第1ホログラフィック光学素子3a~3iからなり、基板2の前面2Fの下部に空気を介さずに取り付けられている。
第1ホログラフィック光学素子3a~3iは、それぞれ体積型ホログラフィック記録材料からなる複数の単位ホログラフィック光学素子(後述する)からなり、反射型であり、前面2Fに対して後面2R側から法線方向(Z方向)に所定の拡散角をもった所定の波長の拡散光が照射されたとき、拡散光をYZ方向にXY面(前面2F)に対して所定の角度の平行光に偏向するように回折する。
各第1ホログラフィック光学素子3a~3iで回折される平行光は、基板2の前面2Fと後面2Rに当たって全反射しながら基板2内を伝搬し、第2ホログラフィック光学素子4(後述する)を照射してホログラム画像を再生させる。
第1ホログラフィック光学素子3a~3iは、X方向(左右方向)に隙間なく配置されることがぼやけのないホログラム画像を再生させる上で望ましいが、ホログラム画像に目立たないぼやけ等を生じさせる程度の隙間や重なりが第1ホログラフィック光学素子3a~3iにあってもよい。
【0023】
第2ホログラフィック光学素子4は、体積型ホログラム素子であり、感光性材料である体積型ホログラフィック記録材料からなり、基板2の後面2Rに空気を介さずに取り付けられている。
この第2ホログラフィック光学素子4には、その前面(後面2R)に対して所定の方向・角度から、所定の波長の平行光が照射されたとき、所定の視野角をもつホログラム画像が再生される干渉縞が記録されている。
本実施形態の第2ホログラフィック光学素子4は、反射型であり、光学的屈折率が約1.5の体積型ホログラフィック記録材料からなり、この第2ホログラフィック光学素子4には、YZ方向前面2F側からXY面(後面2R)の法線に対して約60度の角度で、532nmを中心とした緑色の平行光が照射されたときXY面(後面2R)の法線に対してY方向(上下方向)に±20度、X方向(左右方向)に±45度の視野角をもつホログラム画像が前面2F側に再生される干渉縞が記録されている。
なお、第2ホログラフィック光学素子4は、透過型でもよく、その場合は、基板2の前面2Fに透過型のホログラフィック光学素子4が貼り付けられ、YZ方向後面2R側からXY面の法線に対して所定角度で所定波長の平行光が照射され、前面2F側にホログラム画像が再生される。
また、第2ホログラフィック光学素子4は、干渉縞を微細な凹凸で記録したエンボス型ホログラフィック光学素子や回折光学素子等であってもよい。
【0024】
光源シート5は、シート基材5kとその上に等間隔で取り付けられたLED5a~5iからなる。
LED5a~5iの各LEDは、LED素子とそれを覆う封入樹脂、土台となるパッケージ基板、電極、ボンディングワイヤー(いずれも図示せず)等を備えたLEDパッケージである。
LED5a~5iの各LED素子は、大きさが例えば0.3mm~5mm角の発光ダイオード(LED)チップであり、発光して拡散光を出射し、本発明の一定の面積の発光領域を形成する。
スペーサ6は、LED5a~5iからの拡散光が第1ホログラフィック光学素子3a~3iで平行光に回折されるようにLED5a~5iと第1ホログラフィック光学素子3a~3iの距離の設定(位置決め)を行う枠体である。
そして、光源シート5は、各LED5a~5iが各第1ホログラフィック光学素子3a~3iと対向するように、基板2の後面2Rの下部にスペーサ6を介して取り付けられる。
図5は、面発光レーザの斜視図であり、図中、5’ は面発光レーザ、5a’~5i’はレーザ発光部、5k’はシート基板である。
面発光レーザ5’は、シート基板にレーザ発光部5a’~5i’が取り付けられたもので、各レーザ発光部5a’~5i’の発光面積は数ミクロン角程度と微小である。
面発光レーザ5’は、光源シート5に代わるものであり、基板2の後面2Rの下部にスペーサ6を介して取り付けられる。
この場合、面発光レーザ5’のレーザ発光部5a’~5i’の設置位置の範囲(設置位置の精度、レーザ発光部が発光する可能性のある発光領域)は1mm角(±0.5mm)程度となる。
なお、本発明の基板は、基板2のような平板状のものに限定されず、円筒状の基板であってもよく、円筒状の基板の場合は、円筒に外周面と内周面が第1の面と第2の面となり、円筒の外周面または内周面の円周方向に第1ホログラフィック光学素子3a~3iが配置されて取り付けられ、それと対向する位置にLED5a~5iが配置されて取り付けられ、円筒の外周面または内周面の第1ホログラフィック光学素子3a~3iとは異なる位置に第2ホログラフィック光学素子4が取り付けられる。
【0025】
[第1ホログラフィック光学素子]
最初に、特許文献1の反射型のホログラフィック光学素子(ホログラフィック回折格子)に拡散光を照射して平行光に回折させる原理について説明する。
図6は、ホログラフィック光学素子(ホログラフィック回折格子)で拡散光が平行光に回折される状態を説明する説明図であり、図中、5ReはLED5eの発光領域、5Re’はレーザ発光部5e’の設定位置の範囲、HOEはホログラフィック光学素子(ホログラフィック回折格子)、P0は発光領域5Reまたは設定位置の範囲5Re’の中心部、P1は発光領域5Reまたは設定位置の範囲5Re’の上端部、Qyはホログラフィック光学素子HOE上の任意の点、LP0、LP1は拡散光、L1は平行光であり、図において拡散光LP0、LP1と平行光L1を灰色で表す。
点光源からの拡散光と入射角θの平行光を干渉させて生ずる干渉縞を体積型ホログラフィック記録材料に記録することにより、拡散光を出射角θの平行光に回折するホログラフィック光学素子HOEを作成することができる。
発光領域5Reまたは設定位置の範囲5Re’の面積がある程度大きい(例えば1mm角以上)場合、LED5eまたはレーザ発光部5e’からの拡散光をホログラフィック光学素子HOEに照射すると、図5に示すようにホログラフィック光学素子HOEは、中心部P0から出射する拡散光LP0を出射角(反射角)θの平行光L1に回折する。
しかしながら、ホログラフィック光学素子HOE上の任意の点Qyにおいて、上端部P1から出射する光の入射角φ1は、中心部P0から出射する光の入射角φ0と大きく異なることから、上端部P1から出射する拡散光LP1は、ホログラフィック光学素子HOEで平行光L1に回折されずホログラフィック光学素子HOEを透過することとなる。
すなわち、発光領域(設定位置の範囲)の面積がある程度大きいLED5e(レーザ発光部5e’)からの拡散光をホログラフィック光学素子HOEに照射すると、発光領域5Re(設定位置の範囲5Re’)の中心部から離れた端部からの拡散光は設定どおりの平行光L1に回折されず、平行光L1を明るくすることができない。
【0026】
図7は、LED5eの発光領域またはレーザ発光部5e’の設定位置の範囲を4個の発光分割領域に分割した状態の斜視図、図8は、図7に示す分割発光領域から対向する位置にある単位ホログラフィック光学素子に拡散光を照射した状態の斜視図、図8(a)は、図7に示す状態の平面図、図8(b)は図7に示す状態の左側面図、図9は、図7に示す状態を各分割発光領域とそれに対向する単位ホログラフィック光学素子に分解した分解斜視図である。
図中、3e1~3e4は単位ホログラフィック光学素子、5e1~5e4は分割発光領域、Le1~Le4は拡散光、RS1~RS4は屈折面であり、拡散光Le1~Le4を灰色で表し、屈折面RS1~RS4を破線で表し、図7図8では基板2を省略する。
以下図に基づいてLED5eと対向する位置にある第1ホログラフィック光学素子3eの構成について説明する。
上述のようにLED5e(レーザ発光部5e’)の発光領域5Re(設定位置の範囲5Re’)の面積がある程度大きい場合(例えば1.5mm角)、発光領域5Re(設定位置の範囲5Re’)の端部からの拡散光もホログラフィック光学素子で回折されるような大きさの分割発光領域に分割する。
図6では、LED5eの発光領域5Re(設定位置の範囲5Re’)が1.5mm角であるとして、X方向、Y方向それぞれ2分割した4個の分割発光領域5e1~5e4に分割し、各分割発光領域の大きさを1mm角以下の0.75mm角としている。
これよりLED5eの発光領域5Re(設定位置の範囲5Re’)の面積が大きくなると発光領域の分割数も多くなり、LED5eの発光領域5Re(設定位置の範囲5Re’)が2mm角の場合は、例えば、X方向、Y方向それぞれ3分割した9個の分割発光領域に分割し、各分割発光領域の大きさを1mm角以下の0.67mm角とすればよい。
【0027】
そして、図8図9に示すように、分割発光領域5e1に対向する位置に単位ホログラフィック光学素子3e1が、分割発光領域5e2に対向する位置に単位ホログラフィック光学素子3e2が、分割発光領域5e3に対向する位置に単位ホログラフィック光学素子3e3が、分割発光領域5e4に対向する位置に単位ホログラフィック光学素子3e4がZ方向の位置を変えて4層に配置される。
すなわち、単位ホログラフィック光学素子3e1に対して、その裏側にX方向の位置をずらして単位ホログラフィック光学素子3e2が配置され、さらにその裏側にY方向の位置をずらして単位ホログラフィック光学素子3e3が配置され、さらにその裏側にX方向とY方向の位置をずらして単位ホログラフィック光学素子3e4が配置される。
このような単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4の集合が第1ホログラフィック光学素子3eとなる。
【0028】
ここで、単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4は、各分割発光領域5e1~5e4の中心位置にある点光源からの拡散光と入射角θの平行光を干渉させた干渉縞を記録したものである(図6のP0が各分割発光領域5e1~5e4の中心位置にあり、体積型ホログラフィック記録材料HRMに干渉縞を記録したものが単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4となる。)
これより、図10等に示すように、分割発光領域5e1から出射した拡散光Le1は、後面2Rの屈折面RS1で屈折して基板2内に入射し、前面2Fに取り付けられた単位ホログラフィック光学素子3e1を照射し、分割発光領域5e2から出射した拡散光Le2は、後面2Rの屈折面RS2で屈折して基板2内に入射し、前面2Fに取り付けられた単位ホログラフィック光学素子3e2を照射し、分割発光領域5e3から出射した拡散光Le3は、後面2Rの屈折面RS3で屈折して基板2内に入射し、前面2Fに取り付けられた単位ホログラフィック光学素子3e3を照射し、分割発光領域5e4から出射した拡散光Le4は、後面2Rの屈折面RS4で屈折して基板2内に入射し、前面2Fに取り付けられた単位ホログラフィック光学素子3e4を照射する。
そして、単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4に入射した拡散光は、出射角(反射角θ)の平行光に回折される。
よって、各単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4は、各分割発光領域5e1~5e4の端部からの拡散光も平行光に回折し、回折される平行光は同じ出射角(反射角)θの平行光となることから、単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4が集合した第1ホログラフィック光学素子3eは、LED5eの発光領域の端部からの拡散光も平行光に回折して、LED5e(レーザ発光部5e’)からの拡散光を出射角(反射角)θの明るい平行光に偏向する。
【0029】
この場合、各単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4の中心は、各分割発光領域5e1~5e4の中心と対向する位置(両者の中心を結ぶ線がXY面と垂直になる位置)にあり、各単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4の形状・大きさは同じとなるが、 本発明においては、単位ホログラフィック光学素子の位置は、分割発光領域の中心と対向しなくてもよく、各単位ホログラフィック光学素子の形状・大きさは近似していてもよい。
具体的には、例えばLED5eの発光領域を9分割し、第1ホログラフィック光学素子3eを9個の単位ホログラフィック光学素子から構成し、第1ホログラフィック光学素子3eと隣り合う第1ホログラフィック光学素子3d、3fと接する単位ホログラフィック光学素子の端部を切り取り、第1ホログラフィック光学素子3eで回折される平行光が隣り合う第1ホログラフィック光学素子3d、3fで回折される平行光と重畳しないようにした場合、端部を切り取った単位ホログラフィック光学素子の位置は、分割発光領域の中心と対向する位置から少しずれ、端部を切り取った単位ホログラフィック光学素子の形状・大きさは、端部を切り取らない単位ホログラフィック光学素子の形状・大きさは近似する。
また、第1ホログラフィック光学素子3eは、各単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4毎に層を変えた4層構成とする必要はなく、単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4の干渉縞すべてを同一の層に記録した1層構成、あるいは、単位ホログラフィック光学素子3e1、3e2の干渉縞を第1層目に記録し、単位ホログラフィック光学素子3e3、3e4の干渉縞を第2層目に記録した2層構成としてもよい。
【0030】
他の第1ホログラフィック光学素子3a~3d、3f~3iも、第1ホログラフィック光学素子3eの単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4と同様の単位ホログラフィック光学素子から構成され、第1ホログラフィック光学素子3eと同様に、LED5a~5d、5f~5i(レーザ発光部5a’~5d’、5f’~5i’)からの拡散光を出射角(反射角)θの明るい平行光に偏向する。
なお、図8図9では、第1ホログラフィック光学素子3eを構成する単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4に段差が生じているように表わされているが、単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4の周囲には体積型ホログラフィック記録材料が存在し、上記のような段差はない。
【0031】
[第2ホログラフィック光学素子によるホログラム画像の再生表示]
ホログラム画像再生装置1おいては、LED素子5a~5i(レーザ発光部5a’~5i’)から出射した拡散光が、ホログラフィック回折格子3a~3iを照射し、ホログラフィック回折格子3a~3iで平行光に偏向するように回折され、この平行光が基板2内を伝搬し、ホログラフィック光学素子4を照射してホログラム画像を再生表示させる。
図11は、中央のLED素子5e(レーザ発光部5e’)から出射した拡散光が基板2内を伝搬する状態を説明する説明図であり、同図(a)は、基板2の左側面から見た図、同図(b)は、基板2の正面から見た図であり、図中、4Sはホログラフィック光学素子の後面である。
図10(a)において、LED素子5e(レーザ発光部5e’)から出射される拡散光abを一点鎖線で表し、LED素子5eと対向するホログラフィック回折格子3eで回折されて基板2の前面2F、後面2Rで全反射しながら伝搬する平行光a1~a6、b1~b5を二点鎖線で表し、図10(b)において、ホログラフィック回折格子3eで回折された平行光が伝搬する部分(領域)を灰色で表す。
【0032】
LED素子5eの発光領域から出射される拡散光abは、後面2Rで屈折して基板2内に入射し、第1ホログラフィック光学素子3eの単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4で伝搬角θの平行光a1に回折され、平行光a1は、基板2の後面2Rの領域A1に当たって全反射して平行光b1となり、平行光b1は、前面2Fの領域B1に当たって全反射して平行光a2となり、平行光a2は、第2ホログラフィック光学素子4に入って一部の光が透過して後面4Sの領域A2に当たって全反射して平行光b2となり、平行光b2は、基板2内に入って前面2Fの領域B2に当たって全反射して平行光a3となり、平行光a3は、第2ホログラフィック光学素子4に入って一部の光が透過して後面4Sの領域A3に当たって全反射して平行光b3となり、平行光b3は、基板2内に入って前面2Fの領域B3に当たって全反射し、これを繰り返して基板2内を平行光a4、b4、a5、b5、a6が伝搬して行く。
この場合、第1ホログラフィック光学素子3eで回折され、後面2R、後面4S、前面3Fで全反射される平行光(a1、b1、a2、b2、a3、b3・・・)は、図10(b)に示すように伝搬方向に直交し基板2の厚み方向に直交する方向に拡散せず平行であり(図10(b)に示されている灰色の帯状領域)、その伝搬方向の長さyは、基板2の厚さをtとすると、y=2t×tanθとなり、平行光(a1、b1、a2、b2、a3、b3・・・)が、後面3R、後面4S、前面3Fに伝搬方向に隙間なく当たるためには、第1ホログラフィック光学素子3eの光の伝搬方向の長さMyと長さyを等しくする必要がある。例えば、θ=60度、t=5mmの場合、My=y=2×5×tan60°=17.3mmとなる。
また、他のLED5a~5d、5f~5i(レーザ発光部5a’~5d’、5f’~5i’)の発光領域から出射される拡散光も、同様にして対向する位置にある第1ホログラフィック光学素子の単位ホログラフィック光学素子で伝搬角θの平行光に回折され、基板2内を伝搬していく。
【0033】
ここで、第2ホログラフィック光学素子4には、第1ホログラフィック光学素子3a~3iからの平行光(Z方向のXY面に対して角度θの平行光)が照射されたとき、ホログラム画像が再生される干渉縞が記録されている。
よって、第1ホログラフィック光学素子3a~3iの単位ホログラフィック光学素で回折され、基板2の前面2Fで全反射し第2ホログラフィック光学素子4に入った平行光の一部は、第2ホログラフィック光学素子4の干渉縞により回折して、基板2から外側(正面側)に出て、これによってホログラム画像が再生され、正面側のホログラフィック光学素子4と対向する位置にいる観察者は、再生されたホログラム画像を視認することができる。
すなわち、基板2の前面2Fで全反射し第2ホログラフィック光学素子4に入った平行光のうち、一部はホログラム画像を表す画像光として基板2の外側(正面側)に出て、残りは平行光のまま第2ホログラフィック光学素子4の後面4Sで全反射することとなる。
この場合、第2ホログラフィック光学素子4が貼り付けられた基板2内において、ホログラフィック光学素子4の後面4S又は基板2の前面2Fに当たった平行光が前面2F又は後面4Sに当たるまでに進む距離S’は、ホログラフィック光学素子4の厚みをδとすると、S’=(d+δ)tanθとなり、第2ホログラフィック光学素子4が貼り付けられていない基板2内を平行光が進む距離S(=dtanθ)より大きくなる。 δが基板2の厚みdに比べて小さい場合(例えば、δはdの5%以下)は、S’とSはほぼ等しく、δは無視してよいが、δがdに比べて無視できないほど大きい場合(例えば、δはdの10%以上)は、LyとS’が同じになるに、すなわち、Ly=(d+δ)tanθとなるように設定し、基板2内を伝搬する平行光が第2ホログラフィック光学素子4を照射するようにするのが望ましい。
【0034】
[光照射装置]
本発明の光照射装置は、ホログラム画像再生装置1において、ホログラム画像が再生される干渉縞が記録されている第2ホログラフィック光学素子4に代えて、照明光としての拡散光、平行光、発散光を出射する干渉縞が記録された第2ホログラフィック光学素子(以下「照明用第2ホログラフィック光学素子」という)が使用される。
すなわち、光照射装置は、基板2、第1ホログラフィック光学素子列3、光源シート5(面発光レーザ5’)、スペーサ6を有する光偏向装置1Aと照明用第2ホログラフィック光学素子を備えている。
そして、照明用第2ホログラフィック光学素子は、反射型であり、光学的屈折率が約1.5の体積型ホログラフィック記録材料からなり、この照明用第2ホログラフィック光学素子には、後面2R側から前面2Fの法線に対して約60度の角度で、白色の平行光が照射されたとき、平行光を前面2Fの法線に対して前後方向に±15度、左右方向に±15度の拡散光として後面2R側に回折する干渉縞が記録されている。
なお、照明用第2ホログラフィック光学素子は、透過型でもよく、その場合は、基板2の後面2Rに透過型の照明用第2ホログラフィック光学素子が貼り付けられ、前面2F側から後面2Rの法線に対して所定角度で所定波長の平行光が照射され、後面2R側に照明光が出射される。
【0035】
以上のように光偏向装置1Aは、基板2、第1ホログラフィック光学素子列3、光源シート5(面発光レーザ5’)、スペーサ6を備え、第1ホログラフィック光学素子列3は第1ホログラフィック光学素子3a~3iからなり、光源シート5(面発光レーザ5’)はLED5a~5i(レーザ発光部5a’~5i’)を有し、第1ホログラフィック光学素子3eは単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4から構成され、他の第1ホログラフィック光学素子3同様の単位ホログラフィック光学素子から構成され、LED5e(レーザ発光部5e’)の発光領域(設定位置の範囲)は分割発光領域5e1~5e4に分割され、他のLEDの発光領域(設定位置の範囲)も同様の分割発光領域に分割され、各単位ホログラフィック光学素子3e1~3e4は、各分割発光領域5e1~5e4と対向する位置に配置され、各分割発光領域5e1~5e4からの拡散光を端部から拡散光まで平行光に回折することから、第1ホログラフィック光学素子3eは、LED5e(レーザ発光部5e’)の発光領域(設定位置の範囲)の端部からの拡散光も平行光に回折して、LED5e(レーザ発光部5e’)からの拡散光を同一方向の明るい平行光に偏向し、他の第1ホログラフィック光学素子も、同様に他のLED(レーザ発光部)の発光領域(設定位置の範囲)の端部からの拡散光も平行光に回折して、他のLED(レーザ発光部)からの拡散光を同一方向の明るい平行光に偏向する。
また、ホログラム画像再生装置1は、光偏向装置1Aと第2ホログラフィック光学素子4を備え、光偏向装置1Aの第1ホログラフィック光学素子3a~3iで偏向された明るい平行光は、基板2内を全反射しながら伝搬し第2ホログラフィック光学素子4を照射することから、明るいホログラム像を再生する。
さらに、光照射装置は、光偏向装置1Aと照明用第2ホログラフィック光学素子を備え、光偏向装置1Aの第1ホログラフィック光学素子3a~3iで偏向された明るい平行光は、基板2内を全反射しながら伝搬し照明用第2ホログラフィック光学素子を照射することから、明るい照明光を出射する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の光偏向装置、ホログラム画像再生装置及び光照射装置は、光源の発光面積が大きく、第1ホログラフィック光学素子の特定の位置に入射する光の角度が光源の中心部分からの光と端部からの光で異なる場合、あるいは、光源の発光面積が微小で第1ホログラフィック光学素子の特定の位置に入射する光の角度が、設定位置にある光源からの光と設定位置からずれた位置にある光源からの光で異なる場合であっても、光源からの光のうち第1ホログラフィック光学素子で偏向される光の割合を高くして、光の利用効率を高め、明るい偏向光、明るいホログラム画像、明るい照明光を得ることができ、第1ホログラフィック光学素子で拡散光を平行光に偏向する光偏向装置、第1ホログラフィック光学素子で偏向された平行光を透明基板内で伝搬させて透明基板の一方の面からホログラム像を再生するホログラム画像再生装置、第1ホログラフィック光学素子で偏向された平行光を透明基板内で伝搬させて透明基板の一方の面から照明光を出射させる光照射装置に利用できる。
【符号の説明】
【0037】
1 ホログラム画像再生装置
1A 光偏向装置
2 基板
2F 前面
2R 後面
3 第1ホログラフィック光学素子列
3a~3i 第1ホログラフィック光学素子
3e1~3e4 単位ホログラフィック光学素子
3LE LEDチップ(発光領域)
4 第2ホログラフィック光学素子
5 光源シート
5a~5i LED
5e1~5e4 分割発光領域
5Re 発光領域
5’ 面発光レーザ
5a’~5i’ レーザ発光部
5k’ シート基板
5Re’ 設定位置の範囲
6 スペーサ
HOE ホログラフィック光学素子(ホログラフィック回折格子)
LP0、LP1 拡散光
L1 平行光
Le1~Le4 拡散光
P0 中心部
P1 上端部
Qy ホログラフィック光学素子HOE上の任意の点、
RS1~RS4 屈折面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11