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特開2024-98463水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤及びこれを含有する水性エマルション塗料
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  • 特開-水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤及びこれを含有する水性エマルション塗料 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098463
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤及びこれを含有する水性エマルション塗料
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240716BHJP
   C09D 7/65 20180101ALI20240716BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240716BHJP
   C09D 171/00 20060101ALI20240716BHJP
   C09D 177/00 20060101ALI20240716BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/65
C09D5/02
C09D171/00
C09D177/00
C09K3/00 103G
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002025
(22)【出願日】2023-01-10
(71)【出願人】
【識別番号】000106438
【氏名又は名称】サンノプコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112438
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 健一
(72)【発明者】
【氏名】土井 麻里江
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG131
4J038DF012
4J038DH002
4J038MA10
4J038NA24
4J038PB05
4J038PB06
4J038PC02
4J038PC08
(57)【要約】
【課題】ローラー塗装性に優れたローラー塗装性向上剤を提供することである。
【解決手段】式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(X)を含有してなることを特徴とする水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤を用いる。
R-N{-(AO)―H} (1)
Rは炭素数8~22のアルキル基又はアルケニル基、Nは窒素原子、Hは水素原子、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基、nは2~20の整数を表す。
水、エマルション樹脂及び上記のローラー塗装性向上剤を含んでなる水性エマルション塗料であって、このローラー塗装性向上剤の含有量が水、エマルション樹脂及びローラー塗装性向上剤の重量に基づいて0.5~5重量%であることを特徴とする水性エマルション塗料を用いる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(X)を含有してなることを特徴とする水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤。

R-N{-(AO)―H} (1)

Rは炭素数8~22のアルキル基又はアルケニル基、Nは窒素原子、Hは水素原子、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基、nは2~20の整数を表す。
【請求項2】
さらに、式(2)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y)を含有する請求項1に記載のローラー塗装性向上剤。
Q{-(AO)-H} (2)
ただし、Qは非還元性の二又は三糖類のt個の1級水酸基から水素原子を除いた残基、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基、mは5~30の整数、tは2~4の整数、Hは水素原子を表し、AOの総数は残基(Q)1個当たり20~80個であり、t個の(AO)は同じでも異なっていてもよい。
【請求項3】
非還元性の二又は三糖類の反応残基(Q)が蔗糖の反応残基である請求項2に記載するローラー塗装性向上剤。
【請求項4】
ポリオキシアルキレン化合物(X)と、ポリオキシアルキレン化合物(Y)の含有重量比{(X):(Y)}が50~95:50~5である請求項2に記載のローラー塗装性向上剤。
【請求項5】
水、エマルション樹脂及び請求項1~4のいずれかに記載されたローラー塗装性向上剤を含んでなる水性エマルション塗料であって、このローラー塗装性向上剤の含有量が水、エマルション樹脂及びローラー塗装性向上剤の重量に基づいて0.5~5重量%であることを特徴とする水性エマルション塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤及びこれを含有する水性エマルション塗料に関する。
【背景技術】
【0002】
水性エマルション塗料のローラー塗装性を向上させるための薬剤として、「下記の一般式(1)で表される粘性調整剤。
【化1】

(式中、R~Rはそれぞれ炭素数1~13の直鎖アルキル基を表し、R及びRは下記の式(2)又は(3)で表されるいずれかの基を表し、m及びnはそれぞれ3~15の数を表し、xは40~800の数を表し、yは1以上の数を表す。ただし、RとRの炭素数の和及びRとRの炭素数の和はいずれも10~14でなければならない。)
【化2】
【化3】
」が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-122011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の粘性調整剤では、水性エマルション塗料のローラー塗装性が劣るという問題がある。すなわち、従来の粘性調整剤を水性エマルション塗料に適用してローラー塗装する際、塗料の飛散を防止するために粘性調整剤を添加して塗料を高粘度にすると塗料が塗り広がりにくくなり、一方、粘性調整剤の添加量を減らしたり、希釈溶媒を添加したりして塗料を低粘度にするとローラーへの含浸量が少ないことに加え、塗料が飛散するという問題がある。
本発明の目的は、ローラー塗装性に優れたローラー塗装性向上剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤の特徴は、式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(X)を含有してなる点を要旨とする。
【0006】
R-N{-(AO)―H} (1)
【0007】
Rは炭素数8~22のアルキル基又はアルケニル基、Nは窒素原子、Hは水素原子、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基、nは2~20の整数を表す。
【0008】
本発明の水性エマルション塗料の特徴は、水、エマルション樹脂及び上記のローラー塗装性向上剤を含んでなる水性エマルション塗料であって、
このローラー塗装性向上剤の含有量が水、エマルション樹脂及びローラー塗装性向上剤の重量に基づいて0.5~5重量%である点を要旨とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤は、優れたローラー塗装適性を発揮する。したがって、優れたローラー塗装適性を発揮する水性エマルション塗料を容易に調製できる。すなわち、本発明の水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤を水性エマルション塗料に適用してローラー塗装する際、塗料の飛散防止性、塗料の塗り広がり性及びローラー含浸性に優れている。
【0010】
本発明の水性エマルション塗料は、上記のローラー塗装性向上剤を含むので、優れたローラー塗装性を発揮し、この水性エマルション塗料をローラー塗装する際、塗料の飛散防止性、塗料の塗り広がり性及びローラー含浸性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤(1)を用いて調製した評価用エマルション塗料(1)について、3.塗料塗り広がり性、(1)スレートボードへの転移量及びかすれの有無を評価した直後の塗装面の状態を撮影した写真である。
図2】比較例1の比較用の粘性調整剤(H1)を用いて調製した評価用エマルション塗料(H1)について、3.塗料塗り広がり性、(1)スレートボードへの転移量及びかすれの有無を評価した直後の塗装面の状態を撮影した写真である。
図3】実施例の欄において、評価用エマルション塗料(ブランク)について、3.塗料塗り広がり性、(1)スレートボードへの転移量及びかすれの有無を評価した直後の塗装面の状態を撮影した写真である。
図4】実施例の欄において、3.塗料塗り広がり性、(2)膜厚の平均値及び標準偏差値を算出するための膜厚を測定した箇所(○印部分)を示す概略図である(数値は各○印の間隔(単位cm)を示すものである。)。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<ポリオキシアルキレン化合物(X)>
炭素数8~22(10~20が好ましく、さらに好ましくは12~18)のアルキル基又はアルケニル基(R)としては、n-オクチル、2-エチルヘキシル、n-ノニル、n-デシル、イソデシル、n-ウンデシル、n-ドデシル、n-トリデシル、イソトリデシル、n-テトラデシル、n-ペンタデシル、n-ヘキサデシル、n-ヘプタデシル、n-オクタデシル、イソオクタデシル、n-ドコシル、n-デセニル、2-ドデセニル、イソトリデセニル及びn-オクタデセニル等が挙げられる。
【0013】
炭素数2~4のオキシアルキレン基(AO)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレンが含まれる。
(AO)として、複数種類のオキシアルキレン基を含む場合、結合様式はブロック状、ランダム状及びこれらの混合のいずれでもよい。
【0014】
式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(X)としては、炭素数8~22のアルキルアミン(a1)又はアルケニルアミン(a2)とエチレンオキシド、プロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシド(a3)との化学反応により製造される構造を有するポリオキシアルキレン化合物が含まれる{(a1)又は(a2)1モルに対して(a3)4~40モルの量が好ましい。}。
【0015】
炭素数8~22のアルキルアミン(a1)又はアルケニルアミン(a2)としては、n-オクチルアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-ノニルアミン、n-デシルアミン、イソデシルアミン、n-ウンデシルアミン、n-ドデシルアミン、n-トリデシルアミン、イソトリデシルアミン、n-テトラデシルアミン、n-ペンタデシルアミン、n-ヘキサデシルアミン、n-ヘプタデシルアミン、n-オクタデシルアミン、イソオクタデシルアミン、n-ドコシルアミン、n-デセニルアミン、2-ドデセニルアミン、イソトリデセニルアミン及びn-オクタデセニルアミン等が挙げられる。
【0016】
<ポリオキシアルキレン化合物Y>
本発明の水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤には、式(2)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y)を含有することが好ましい。
【0017】
Q{-(AO)-H} (2)
【0018】
ただし、Qは非還元性の二又は三糖類のt個の1級水酸基から水素原子を除いた残基、AOは炭素数2~4のオキシアルキレン基、mは5~30の整数、tは2~4の整数、Hは水素原子を表し、AOの総数は残基(Q)1個当たり20~80個であり、t個の(AO)は同じでも異なっていてもよい。
【0019】
非還元性の二又は三糖類のt個の1級水酸基から水素原子を除いた残基(Q)を構成することができる非還元性の二又は三糖類としては、蔗糖(サッカロース)、トレハロース、イソトレハロース、イソサッカロース、ゲンチアノース、ラフィノース、メレチトース及びプランテオース等が挙げられる。これらのうち、ローラー塗装性の観点から、蔗糖、トレハロース、ゲンチアノース、ラフィノース及びプランテオースが好ましく、さらに好ましくは蔗糖、トレハロース及びラフィノースであり、供給性及びコスト等の観点から特に好ましくは蔗糖である。
【0020】
炭素数2~4のオキシアルキレン基(AO)としては、オキシエチレン、オキシプロピレン及びオキシブチレン等が挙げられる。これらのうち、ローラー塗装性の観点から、残基(Q)1個当たりのオキシアルキレン基(AO)の総数が25~59個の場合、オキシプロピレン単独が好ましく、この総数が15~24個の場合、オキシブチレンとオキシプロピレンの混合が好ましく、この総数が60~80個の場合、オキシエチレンとオキシプロピレンの混合が好ましい。
【0021】
オキシプロピレン及び/又はオキシブチレンとオキシエチレンとの混合を含む場合、オキシエチレンの含有割合(モル%)は、オキシアルキレン基の全モル数に基づいて、2~10が好ましく、さらに好ましくは2~8、特に好ましくは4~6である。また、この場合、反応残基(Q)から離れた端部にオキシプロピレン及び/又はオキシブチレンが位置することが好ましい。すなわち、この場合、反応残基(Q)にオキシエチレン基が直接的に結合していることが好ましい。また、複数種類のオキシアルキレン基(AO)を含む場合、結合様式はブロック状、ランダム状及びこれらの混合のいずれでもよいが、少なくともブロック状を含むことが好ましい。
【0022】
mは、5~30の整数が好ましく、さらに好ましくは7~28の整数、特に好ましくは10~25の整数である。この範囲であると、ローラー塗装性がさらに良好となる。
【0023】
tは、2~4の整数が好ましく、さらに好ましくは3である。この範囲であると、ローラー塗装性がさらに良好となる。
【0024】
ポリオキシアルキレン化合物(Y)を含有する場合、ポリオキシアルキレン化合物(X)と、ポリオキシアルキレン化合物(Y)の含有重量比{(X):(Y)}は、ローラー塗装性の観点から、50~95:50~5が好ましく、さらに好ましくは55~90:45~10である。
【0025】
本発明の水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤には、必要により公知の添加剤(消泡剤、湿潤剤等)等を含有できる。
【0026】
消泡剤としてはSNデフォーマー180及び同184(サンノプコ株式会社製)等が挙げられ、湿潤剤としてはSNウエット125及び同126(サンノプコ株式会社製)等が挙げられる。なお、公知の添加剤を含有する場合、これらの含有量は、ポリオキシアルキレン化合物(X)の重量に基づいて、0.01~10重量%程度が好ましい。
【0027】
本発明の水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤の製造方法は、特に制限は無く公知の方法が適用でき、公知のアルキレンオキシド付加反応等により、ポリオキシアルキレン化合物(X)を調製でき、ポリオキシアルキレン化合物(Y)を含有する場合、公知のアルキレンオキシド付加反応等により、ポリオキシアルキレン化合物(Y)を調製でき、ポリオキシアルキレン化合物(X)及びはポリオキシアルキレン化合物(Y)を均一混合することにより得ることができる。均一混合温度に制限はないが、混合効率の観点から、10~70℃程度が好ましい。
【0028】
本発明の水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤は、特に水性エマルション塗料に好適であるが、水を含む塗料にも広く適用できる。
【0029】
<水性エマルション塗料>
本発明の水性エマルション塗料としては、水、エマルション樹脂及び上記の水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤を含んでなり、必要により、顔料、分散剤、湿潤剤、粘弾性調整剤、消泡剤、防腐剤及び/又は造膜助剤を含むことができる。
【0030】
水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤の使用量(重量%)は、水、エマルション樹脂及び水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤の重量に基づいて0.5~5が好ましく、さらに好ましくは1~4である。この範囲であると、ローラー塗装性がさらに良好となる。
【0031】
本発明の水性エマルション塗料は、公知の方法等により得られ、水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤はいずれの工程で混合できるが、溶解工程(レットダウン工程)で混合することが好ましい。
【0032】
本発明の水性エマルション塗料は、各種用途に用いることができ、建築塗料又はタンク・橋梁等の構造物用塗料等の塗料、塗工紙用コーティング液、電磁気・光学部材等の電子材料用塗料、セラミックスを使用した構造材料用塗料及び各種成型体へ塗布する機能性スラリー用塗料等のコーティング組成物等に適用できる。
【実施例0033】
<実施例1~7>
式(1)で表されるポリオキシアルキレン化合物(X)として、n-オクタデシルアミン・エチレンオキシド20モル付加体(X1)、イソデシルアミン・エチレンオキシド7モル付加体(X2)、n-デセニルアミン・エチレンオキシド4モル付加体(X3)及び2-ドデセニルアミン・エチレンオキシド40モル付加体(X4)を用い、式(2)で表されるポリオキシアルキレン化合物(Y)として、蔗糖・エチレンオキシド3モル・プロピレンオキシド72モルブロック付加体(Y1)、トレハロース・プロピレンオキシド12モル・ブチレンオキシド8モルランダム付加体(Y2)、蔗糖・エチレンオキシド4モル・プロピレンオキシド63モルブロック付加体(Y3)及び蔗糖・プロピレンオキシド59モル付加体(Y4)を用いて、それぞれ、表1に記載した量(重量部)を均一混合して、実施例1~7の水性エマルション塗料用ローラー塗装性向上剤(1)~(7)を調製した。
【0034】
【表1】
【0035】
<比較例1>
特許文献1の実施例の欄に記載された本発明品3を、同実施例の欄の記載に準じて、重量平均分子量8000のポリオキシエチレングリコール800g(0.1モル)、炭素数12~14の2級アルコール12EO{1モルのアルコール1(炭素数12~14の2級アルコール3EO(ソフタノールM30、株式会社日本触媒、「ソフタノール」は同社の登録商標である)にエチレンオキサイド9モル付加して得られる。}(アルコール3)40.2g(0.2モル)及びヘキサメチレンジイソシアネート34g(0.2モル)から調製し、これを比較用の粘性調整剤(H1)とした。
【0036】
<評価1>
1.評価用エマルション塗料の調製
表2に記載した原料組成にて、円盤型羽根を装着した卓上サンドミル(カンペ家庭塗料株式会社、カンペサンドミル)でグラインディングし、ついでアンカー型羽根を装着した撹拌機(東京理化器械株式会社、MAZELLA ZZ-1100、「MAZELLA」は同社の登録商標である。)でレットダウンして、エマルションベース塗料を調製した。このエマルションベース塗料98重量部並びに実施例で得たローラー塗装性向上剤(1)~(7)のいずれか又は比較用の粘性調整剤(H1)のいずれか2重量部をコーレス型羽根を装着したエクセルオートホモジナイザー(日本精器株式会社、モデルED)にて25℃、2000rpm、5分間攪拌混合して評価用エマルション塗料(1)~(7)及び(H1)を得た。また、エマルションベース塗料98重量部及び水2重量部を上記と同様に攪拌混合して評価用エマルション塗料(ブランク)を得た。
【0037】
【表2】
【0038】
※1 分散剤、サンノプコ株式会社、「ノプコール」は同社の登録商標である。
※2 増粘剤、ダイセルファインケム株式会社
※3 湿潤剤、サンノプコ株式会社
※4 湿潤剤、サンノプコ株式会社
※5 硫酸バリウム、堺化学工業株式会社、「バリエース」は同社の登録商標である。
※6 二酸化チタン、石原産業株式会社、「タイペーク」は同社の登録商標である。
※7 アクリルエマルション、DIC株式会社、「ボンコート」は同社の登録商標である。
※8 造膜調整剤、JNC株式会社
【0039】
2.ローラー含浸性
各評価用エマルション塗料を140mlガラス瓶に100gずつ入れ、密閉し、25℃で18時間放置後、25℃に温度調整した部屋で評価用エマルション塗料80gをローラー受け皿(幅240mm×奥76mm×高さ385mm、商品名:ローラ皿4インチ、大塚刷毛製造株式会社)へ移し、重量測定した4インチスモールローラー(毛長13mm、商品名:マロン内外装用、大塚刷毛製造株式会社)で10往復させて塗料を含浸させた後、4インチスモールローラーの重量を計測し、塗料の含浸前後の重量から塗料の含浸量(g)を算出し、下表に示した。この含浸量が多い程、ローラー含浸性に優れている。
【0040】
3.塗料塗り広がり性
(1)スレートボードへの転移量及びかすれの有無
各評価用エマルション塗料を140mlガラス瓶に100gずつ入れ、密閉し、25℃で18時間放置後、25℃に温度調整した部屋で、シーラー(商品名:水性シリコン下塗りシーラー、ニッペホームプロダクツ株式会社)で表面処理した20cm×13.5cmのスレートボードの塗装範囲外をマスキングテープで養生してからスレートボードを垂直壁に短辺が上下、長辺が左右になるようにして保持した。ついで、評価用エマルション塗料80gをローラー受け皿(幅240mm×奥76mm×高さ385mm、商品名:ローラ皿4インチ、大塚刷毛製造株式会社)へ移し、重量測定した4インチスモールローラー(毛長13mm、商品名:マロン内外装用、大塚刷毛製造株式会社)で10往復塗料を含浸させた後、塗料含浸量が40gになるようにローラーを往復すること、またはしごくことにより調整し、垂直壁に保持したスレートボードに3往復して塗装し、塗装直後のスモールローラーの重量を測定し、40gの塗料うちスレートボードに転移した転移量(g)を算出した。さらに、スレートボードからマスキングテープを剥がして、塗装面のかすれの有無を目視で確認し、これらを下表に示した。「スレートボードに転移した転移量(g)」が多い程、塗料塗り広がり性が良好であり、さらに「かすれ」がないと塗料塗り広がり性が良好であるといえる。
【0041】
(2)膜厚の平均値及び標準偏差値
「シーラー(商品名:水性シリコン下塗りシーラー、ニッペホームプロダクツ株式会社)で表面処理した20cm×13.5cmのスレートボード」を「ブリキ板(縦30cm×横20cm×厚さ0.3mm、JIS G3303、TP技研株式会社)を2分割した1枚(縦15cm×横10cm)」に変更したこと以外、「(1)スレートボードへの転移量及びかすれの有無」と同様にして、ブリキ板に塗装し、ブリキ板からマスキングテープを剥がして、25℃で24時間乾燥した後、電磁式膜厚計(DELTASCOPE FMP-10、株式会社フィッシャー・インストルメンツ、「DELTASCOPE」はHelmut Fischer GmbH Institut fur Elektronik und Messtechnikの登録商標である。)を用いてJIS K 5600-1-7:2014、5.5.6 測定法7C 磁気誘導膜厚計に準拠して、図4の丸印で示される箇所について合計10ヵ所の膜厚(μm)を測定し、算術平均値(μm)及び標準偏差を算出し、これらを下表に示した。「膜厚の平均値」が22μm以上であると塗料塗り広がり性が良好であり、さらに「標準偏差値」が小さい程、塗料塗り広がり性が良好であるといえる。
【0042】
4.塗料の飛散防止性
各評価用エマルション塗料を25℃で18時間放置後、25℃に温度調整した部屋で、各評価用エマルション塗料にザーンカップ(No.3、オリフィス径:3.85mm、容量44mL、オールグッド株式会社、ASTM D4212-16)のカップ部分の全てを浸してから、ザーンカップを持ち上げてオリフィスから評価用エマルション塗料を落下させて、全量が落下し終わるまでの時間(秒:粘度)を計測し、この落下が完了した時間から15秒間に評価用エマルション塗料が滴り落ちる回数を計測した。この操作を5回繰り返して、5回の平均値を算出し、滴り落ちる回数の平均値(回)を飛散防止性とし、下表に示した。この回数が少ないほど、曳糸性があり、塗料が飛散しにくいといえる。
【0043】
【表3】
【0044】
以上の通り、本発明のローラー塗装性向上剤を用いた水性エマルション塗料は、比較用の粘性調整剤を用いた水性エマルション塗料やブランクに比較して、塗料の飛散防止性、塗料の塗り広がり性及びローラー含侵性に優れていた。
【0045】
なお、図1~3に示したとおり、比較用の粘性調整剤を用いた水性エマルション塗料を塗装したもの(図2)では「かすれ」が認められ、この「かすれ」が膜厚の標準偏差にも影響している。また、評価用水性エマルション塗料(ブランク)を塗装したもの(図3)では「かすれ」が認めらないが、ローラーマーク(ローラー塗装跡)がないことに加えて、上辺付近の塗膜厚が薄く、下辺付近の塗膜厚が厚く、下辺付近(マスキングテープを剥がした付近)でタレが認められ、この塗膜厚差が膜厚の標準偏差にも影響している。
図1
図2
図3
図4