(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098475
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】積層型電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
H01G4/30 512
H01G4/30 515
H01G4/30 513
H01G4/30 201C
H01G4/30 201K
H01G4/30 201L
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023075754
(22)【出願日】2023-05-01
(31)【優先権主張番号】10-2023-0003409
(32)【優先日】2023-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ-メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】具 本亨
(72)【発明者】
【氏名】尹 碩▲ヒュン▼
(72)【発明者】
【氏名】田 仁浩
(72)【発明者】
【氏名】尹 秉吉
(72)【発明者】
【氏名】金 世容
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲ミン▼禎
(72)【発明者】
【氏名】金 建會
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AD00
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082BC23
5E082BC35
5E082EE04
5E082FF05
5E082FG04
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG28
5E082PP03
5E082PP09
5E082PP10
(57)【要約】
【課題】誘電体に面欠陥である双晶を形成させることにより、DC-bias特性、高温特性、耐電圧特性及び信頼性が向上した積層型電子部品を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つは双晶界面を含み、上記誘電体層は2μm×2μmの領域に含まれた双晶界面の長さの和が1.49μm以上である領域を含むことができる。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体層及び内部電極を含む本体と、
前記本体上に配置される外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、複数の誘電体結晶粒を含み、
前記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つは双晶界面を含み、
前記誘電体層は、2μm×2μmの領域に含まれた双晶界面の長さの和が1.49μm以上である領域を含む、積層型電子部品。
【請求項2】
前記誘電体層は、2μm×2μmの領域に含まれた双晶界面の長さの和が1.49μm以上3.63μm以下である領域を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項3】
前記誘電体層は、2μm×2μmの領域に含まれた双晶界面の数の和が10個以上である領域を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項4】
前記誘電体層は、2μm×2μmの領域に含まれた双晶界面の数の和が10個以上27個以下の領域を含む、請求項3に記載の積層型電子部品。
【請求項5】
前記双晶界面の面方向は{111}である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項6】
前記双晶界面は、単一双晶界面及び多重双晶界面のうち少なくとも一つを含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項7】
前記誘電体層は誘電体組成物を含み、
前記誘電体組成物は、BaTiO3系主成分を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項8】
前記誘電体組成物は、原子価可変アクセプタ元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第1副成分をさらに含み、
前記原子価可変アクセプタ元素は、Mn、V、Cr、Fe、Co、Ni、Cu、及びZnのうち一つ以上を含み、
前記第1副成分の含量は、主成分100モルに対して0.2モル以上0.8モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項9】
前記誘電体組成物は、Mgの酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第2副成分をさらに含み、
前記第2副成分の含量は、主成分100モルに対して0.3モル以上1.2モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項10】
前記誘電体層は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第3副成分をさらに含み、
前記希土類元素は、Y、Dy、Tb、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tm、La及びYbのうち少なくとも一つを含み、
前記第3副成分の含量は、主成分100モルに対して1.6モル以上3.2モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項11】
前記誘電体組成物は、Siの酸化物、炭酸塩及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含む第4副成分をさらに含み、
前記第4副成分の含量は、主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下である、請求項7に記載の積層型電子部品。
【請求項12】
前記誘電体層は複数の誘電体層を含み、
前記複数の誘電体層のうち少なくとも一つの平均厚さは3.0μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項13】
前記内部電極は複数の内部電極を含み、
前記複数の内部電極のうち少なくとも一つの平均厚さは1.0μm以下である、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項14】
前記誘電体層は複数の誘電体層を含み、前記複数の誘電体層のうち少なくとも一つの平均厚さをtdと定義し、
前記内部電極は複数の内部電極を含み、前記複数の内部電極のうち少なくとも一つの平均厚さをteと定義するとき、
2×te<tdを満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項15】
前記外部電極は、前記本体上に配置され、第1導電性金属とガラスを含む第1電極層、及び前記第1電極層上に配置され、第2導電性金属と樹脂を含む第2電極層を含む、請求項1に記載の積層型電子部品。
【請求項16】
誘電率≧2500、DC-biasの容量変化率≧-70%、温度150℃で電界45V/μmを印加する加速試験条件において、平均故障寿命が125時間以上、絶縁抵抗(IR)≧1.0E+07Ω、及び-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%のうち少なくとも一つ以上の特性を満たす、請求項1に記載の積層型電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層型電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
積層型電子部品の一つである積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi-Layered Ceramic Capacitor)は、液晶表示装置(LCD:Liquid Crystal Display)及びプラズマ表示装置パネル(PDP:Plasma Display Panel)等の映像機器、コンピュータ、スマートフォン、及び携帯電話等の様々な電子製品の印刷回路基板に装着され、電気を充電又は放電させる役割を果たすチップ型のコンデンサである。
【0003】
このような積層セラミックキャパシタは、小型でありながらも高容量が保障され、実装が容易であるという利点により、様々な電子装置の部品として使用されることができる。コンピュータ、モバイル機器等、各種の電子機器が小型化、高出力化するにつれて、積層セラミックキャパシタに対する小型化及び高容量化への要求が増大している。
【0004】
近年、高信頼性が要求される電装用MLCC市場の拡大に伴い、これに対する需要が急増している。このような電装用MLCCは微細電流の制御が重要であり、温度、湿度、外部からの衝撃や振動などの過酷な環境における駆動が必要なだけに、同一容量に比べて高い定格電圧及び高信頼性が要求される。
【0005】
このようなMLCCを実現するためには、誘電体結晶粒のサイズが小さく、結晶粒界(grain boundary)が多くなければならないことが知られている。また、添加剤元素の中で原子価固定アクセプタ、原子価可変アクセプタ、希土類元素が、信頼性に大きな影響を及ぼすことが知られており、これらの元素の組成比を最適化して信頼性に優れたチップ(chip)を作製することがMLCC分野の課題と言える。さらに、同じ誘電体組成であっても、微細構造、元素の固溶程度及び分布、並びに工程条件に応じて特性のばらつきが非常に大きいことが知られており、最適な組成設計に対する重要度は高いと言える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開第2021-177512号公報
【特許文献2】特開第2021-009993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとするいくつかの課題の一つは、誘電体に面欠陥である双晶を形成させることにより、DC-bias特性、高温特性、耐電圧特性及び信頼性が向上した積層型電子部品を提供することである。
【0008】
但し、本発明が解決しようとするいくつかの課題は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品は、誘電体層及び内部電極を含む本体と、上記本体上に配置される外部電極と、を含み、上記誘電体層は複数の誘電体結晶粒を含み、上記複数の誘電体結晶粒のうち少なくとも一つは双晶界面を含み、上記誘電体層は2μm×2μmの領域に含まれた双晶界面の長さの和が1.49μm以上である領域を含むことができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のいくつかの効果の一つは、常温誘電率、DC-bias特性、高温絶縁抵抗特性、高温TCC特性、耐電圧特性及び信頼性が向上したことである。
【0011】
但し、本発明の多様かつ有益な利点及び効果は、上述した内容に限定されず、本発明の具体的な実施形態を説明する過程でより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものである。
【
図2】内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものである。
【
図3】
図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【
図4】
図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示すものである。
【
図5】
図3のP領域による拡大図を概略的に示すものである。
【
図6】(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の誘電体層を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影した画像イメージである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施形態及び添付の図面を参照して本発明の実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲が以下に説明する実施形態に限定されるものではない。また、本発明の実施形態は、通常の技術者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。したがって、図面における要素の形状及び大きさ等は、より明確な説明のために誇張されることがあり、図面上の同じ符号で示される要素は同じ要素である。
【0014】
そして、図面において本発明を明確に説明するために、説明と関係のない部分は省略し、図面に示した各構成の大きさ及び厚さは説明の便宜上、任意に示しているため、本発明は必ずしも図示したものに限定されるものではない。なお、同一思想の範囲内の機能が同一である構成要素に対しては、同一の参照符号を用いて説明する。さらに、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0015】
図面において、第1方向は積層方向又は厚さT方向、第2方向は長さL方向、第3方向は幅W方向と定義することができる。
【0016】
積層型電子部品
図1は、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品の斜視図を概略的に示すものであり、
図2は、内部電極の積層構造を示す分離斜視図を概略的に示すものであり、
図3は、
図1のI-I’線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図4は、
図1のII-II’線に沿った断面図を概略的に示すものであり、
図5は、
図3のP領域による拡大図を概略的に示すものであり、
図6の(a)及び(b)は、本発明の一実施形態の誘電体層を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影した画像イメージである。
【0017】
以下、
図1~
図6を参照して、本発明の一実施形態に係る積層型電子部品について詳細に説明する。但し、積層型電子部品の一例として積層セラミックキャパシタについて説明するが、本発明は、誘電体組成物を用いる様々な電子製品、例えば、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、又はサーミスタなどにも適用することができる。
【0018】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、誘電体層111及び内部電極121、122を含む本体110と、上記本体110上に配置される外部電極131、132と、を含み、上記誘電体層111は複数の誘電体結晶粒Gを含み、上記複数の誘電体結晶粒Gのうち少なくとも一つは双晶界面tを含み、上記誘電体層111は2μm×2μmの領域に含まれた双晶界面tの長さの和が1.49μm以上である領域を含むことができる。
【0019】
本体110は、誘電体層111及び内部電極121、122が交互に積層されている。
【0020】
より具体的に、本体110は、本体110の内部に配置され、誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置される第1内部電極121及び第2内部電極122を含んで容量を形成する容量形成部Acを含むことができる。
【0021】
本体110の具体的な形状に特に限定はないが、図示のように、本体110は六面体形状又はこれと類似の形状からなってもよい。焼成過程で本体110に含まれたセラミック粉末の収縮により、本体110は完全な直線を有する六面体形状ではないが、実質的に六面体形状を有することができる。
【0022】
本体110は、第1方向に互いに対向する第1及び第2面1、2、第1及び第2面1、2と連結され、第2方向に互いに対向する第3及び第4面3、4、第1~第4面1、2、3、4と連結され、第3方向に互いに対向する第5及び第6面5、6を有することができる。
【0023】
本体110を形成する複数の誘電体層111は焼成された状態であって、隣接する誘電体層111間の境界は走査電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)を利用せずには確認しにくいほど一体化することができる。
【0024】
誘電体層111を形成する原料は、十分な静電容量が得られる限り限定されない。一般的に、ペロブスカイト(ABO3)系材料を使用することができ、例えば、チタン酸バリウム系材料、鉛複合ペロブスカイト系材料又はチタン酸ストロンチウム系材料などを使用することができる。チタン酸バリウム系材料は、BaTiO3系セラミック粉末を含むことができ、セラミック粉末の例示として、BaTiO3、BaTiO3にCa(カルシウム)、Zr(ジルコニウム)等が一部固溶した(Ba1-xCax)TiO3(0<x<1)、Ba(Ti1-yCay)O3(0<y<1)、(Ba1-xCax)(Ti1-yZry)O3(0<x<1、0<y<1)又はBa(Ti1-yZry)O3(0<y<1)などが挙げられる。
【0025】
また、誘電体層111を形成する原料は、チタン酸バリウム(BaTiO3)などの粉末に、本発明の目的に応じて様々なセラミック添加剤、有機溶剤、結合剤、分散剤などが添加されることができる。
【0026】
誘電体層111は後述する誘電体組成物を含んでもよく、より具体的に、誘電体層111は誘電体組成物を用いて形成されたものであってもよい。このとき、誘電体組成物は様々な元素を含むことができるが、誘電体組成物に含まれた元素の含量は、特別な事情がない限り、焼成前後で含量が大きく変わらないことができる。言い換えれば、焼成前の誘電体組成物に投入した添加剤元素の含量は、焼成後の誘電体結晶粒Gに含まれた元素の含量と同一であるか、又は数値範囲を満たす範囲内で少量の変化があり得るだけで、数値範囲から外れるものではない。
【0027】
誘電体組成物に含まれた副成分は、酸化物又は炭酸塩の形態の添加剤として添加されることができるが、誘電体組成物を焼成した後には、酸化物又は炭酸塩の形態ではない誘電体物質、例えば、BaTiO3に固溶するか、又は元素サイト(site)を置換した形態で存在することができる。
【0028】
誘電体層111に含まれた各元素の含量を測定する方法の一例について説明する。
【0029】
破壊工法の場合、(S)TEM-EDSを用いてチップの中央部で誘電体結晶粒内部の成分を分析することができる。まず、焼結が完了した本体の断面のうち、誘電体層を含む領域において集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置を用いて薄片化された分析試料を準備する。そして、薄片化された試料をArイオンミリングを用いて表面のダメージ層を除去し、その後(S)TEM-EDSを用いて得られたイメージで各成分のマッピング(mapping)と定量分析を行う。この場合、各成分の定量分析グラフは、各元素の質量分率(wt%)で得られることができるが、これをモル分率(mol%)に換算して表すこともできる。
【0030】
さらに他の方法としては、チップを粉砕して内部電極を除去した後、誘電体層部分を選別し、このように選別された誘電体層を誘導結合プラズマ分光分析器(ICP-OES)、誘導結合プラズマ質量分析器(ICP-MS)などの装置を用いて誘電体層の成分を分析することができる。
【0031】
一方、IT用MLCCだけでなく、自動車電装用MLCCの市場が拡大するにつれて、同一容量帯で定格電圧が高く信頼性に優れた製品の需要が増加している。一般的に結晶粒のサイズが小さくて粒界が多いほど、誘電体の信頼性が向上することが知られている。MLCC誘電体組成物の添加剤元素の中で、原子価固定アクセプタ(fixed valence acceptor)、原子価可変アクセプタ(variable valence acceptor)である遷移金属元素、そして希土類元素(rare earth elements)が信頼性に与える影響は既に広く知られており、一般的に、これらを含む誘電体添加元素組成比の最適化によって信頼性が良好な条件を選定することになる。BME(Base Metal Electrode)MLCCが産業化される間、信頼性を向上させるための組成の最適化作業が持続的に進められてきた。しかし、同じ誘電体組成であっても、微細構造、添加剤元素の分布及び固溶程度、並びに工程条件によって信頼性に大きな差があり、組成的因子以外に誘電体の微細構造において特定の形態を実現すると、信頼性が画期的に向上することができる。
【0032】
現在のX5R、X7R、X8R、Y5Vなどの高容量BME MLCCの誘電体は、BaTiO3母材、或いはCa、Zrなどが一部固溶した(Ba,Ca)(Ti,Ca)O3、(Ba,Ca)(Ti,Zr)O3及びBa(Ti,Zr)O3などの母材に、Mg、Alなどのような原子価固定アクセプタとY、Dy、Ho、Erなどのようなドナー(donor)としての役割を果たす希土類元素とを共にドーピング(co-doping)し、Mn、V、Crのような原子価可変アクセプタ、及び余分なBa、並びにSiO2或いはこれを含む焼結助剤などの添加剤をさらに添加して焼結された材料に基づいている。還元雰囲気で焼成する場合に高容量MLCCの正常な容量及び絶縁特性を実現するためには、粒成長の抑制及び耐還元性を実現しなければならず、Mgのような原子価固定アクセプタを適正量添加することにより、この2つの効果を実現できると知られている。しかし、Mgのような原子価固定アクセプタのみを添加する場合には、誘電体の耐電圧特性と信頼性が良くなく、Mn及びVのような原子価可変アクセプタである遷移金属元素と希土類元素とを共に添加することで、耐電圧及び信頼性の向上効果が得られるようになる。これらの元素のほとんどは共にドーピング(co-doping)されており、BaTiO3母材結晶粒のシェル(shell)領域に固溶してコアシェル(core-shell)構造を形成し、MLCCの温度による安定した容量特性及び信頼性を実現することができる。したがって、これらの添加剤元素が二次相に含まれたまま偏析(segregation)せずにシェル(shell)領域のBaTiO3結晶格子によく固溶した場合にのみ信頼性が良好であると予想できる。
【0033】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品100は、優れたDC-bias特性及び高信頼性を要求する電装用MLCCの開発において、副効果を引き起こし得る添加剤の固溶を最小化しながら優れた特性を有する誘電体組成物を提供することができる。
【0034】
従来広く知られている方法としては、誘電体の粒成長を抑制するとともに、様々な添加剤元素の固溶を誘導してコアシェル構造を形成することで、目標とする特性を達成する方法を使用してきた。しかし、様々な元素が追加されても十分に解砕/混合されないと、偏析や二次相が形成され、添加剤の分布が不均一になる副効果を起こす可能性があり、最近、急激に上昇している原材料コストの上昇により生産コストが増加するという逆効果をもたらす可能性がある。本発明は、BaTiO3母材、或いはBaTiO3と添加剤を含む誘電体組成物にミリング(milling)を強化して強解砕/混合を誘導することにより、BaTiO3粒子に応力(stress)による双晶(twin)の生成を誘導し、優れたDC-bias特性及び高信頼性を達成しようとする。
【0035】
本発明の一実施形態において、誘電体層111は複数の誘電体結晶粒Gを含み、複数の誘電体結晶粒Gのうち少なくとも一つは双晶界面tを含むことができる。このとき、誘電体層111内の任意の2μm×2μmの領域に含まれた双晶界面tの長さの和は1.49μm以上であり得る。
【0036】
双晶(twin)は面欠陥(plane defect)であって、BaTiO3粒子内に生成された双晶界面(twin boundary)を基準として粒子内の結晶配向(crystal orientation)が異なるBaTiO3を含むことを特徴とする。粒子内で電界(electric field)により移動できる酸素空孔(oxygen vacancy)は、双晶界面を基準として異なる配向を有するBaTiO3に接し、移動力(migration)が減少してBaTiO3の半導体化を抑制することにより、積層型電子部品の信頼性向上を図ることができる。
【0037】
双晶は、高温、高圧又は力学的なストレスが加えられた環境でよく発見又は生成されることができる。双晶は、その形態に応じて、双晶をなす結晶が接合面により二つの結晶が完璧に分離される接触双晶(contact twin)と、双晶界面が平行に発達する集片双晶(polysynthetic twin)などの構造が、電子顕微鏡などを用いた微細構造でよく観察されることがある。ここで、接触双晶は単一双晶界面によるもの、集片双晶は二重双晶界面によるものであり得る。
【0038】
すなわち、双晶は、双晶界面の数が1個である単一双晶界面を含むことができ、また、双晶界面の数が2個以上である多重双晶界面を含むことができる。このとき、双晶界面の数が2個である場合を二重双晶界面とすることができる。
【0039】
また、双晶界面は、反位相境界(anti-phase boundary)であって、単一のBaTiO3粒子内の結晶粒界(grain boundary)として作用することができるため、目標とするDC-bias特性の達成に有利であり得る。
【0040】
本発明で説明する双晶は、誘電体の結晶、より具体的には、結晶核の生成後に発現されるものを意味することができ、外部応力(stress)により結晶内の臨界剪断力(CRSS:Critical Resolved Shear Stress)値以上に変形率(strain)が蓄積されると、これを解消するために格子(lattice)の変形が起こることがあるが、このような変形が双晶として発現できる。
【0041】
双晶界面は様々な面方向を有することができるが、特に外部応力により形成された双晶界面の面方向は{111}方向を有することができる。すなわち、{111}面方向を有する双晶界面は、外部応力であるミリング(milling)によって形成されたものを意味することができる。
【0042】
言い換えれば、ミリングによりBaTiO3に外部応力を加えて双晶を形成することができ、双晶により粒子内に配向差が発生することで酸素空孔の移動抑制及び物理的境界を形成することにより、DC-bias特性を向上させることができる。また、既存の添加剤の濃度に比べて低い濃度においても、ミリング条件を制御すれば、同等又は優勢なチップ特性を達成することができるため、原材料の使用を最小化することによる生産コストの節減をもたらすことができる。
【0043】
双晶は、双晶界面tを基準として誘電体結晶粒G内でミラーイメージ(mirror image)を有する複数個の領域に区分することができる。すなわち、双晶界面tを基準として180°対称な誘電体結晶粒を有することができる。
【0044】
誘電体結晶粒G内の格子配列と双晶界面tは最大54.7°の角度を有するか、又は有することができ、双晶が生成されるためには1/3<121>方向に剪断変形(shear displacement)が印加されなければならない。CRSS以上の剪断力が結晶内に蓄積されると、誘電体結晶粒G内の転位移動(dislocation motion)と類似した特定粒子の特定地点で滑り(gliding)が発生して面全体に拡散するが、この際に面欠陥が発生するようになる。
【0045】
転位(dislocation)とは、線欠陥(line defect)の一つであり、誘電体結晶粒内に格子欠陥を有するという点では面欠陥と類似しているが、面欠陥とは異なり、欠陥の方向が一定ではなく、電子顕微鏡による観察時に、直線よりは屈曲のある線の形で観察されることがある。
【0046】
TEMイメージ上において、双晶界面tを確認するための方法としては、特定の単一誘電体結晶粒を基準として結晶粒の一側の端から反対側の端を横切る直線を確認した後に、その直線を基準として両側の粒子のコントラストが異なる場合に、この一直線を双晶界面tとすることができる。
【0047】
粒子内の一側の端から反対側の端を横切る直線が2つとなる場合に、2つの直線が平行であり、且つ2つの直線の間に存在する粒子が直線を基準として対向する両側の粒子とコントラストが異なる場合、これは一つの粒子内に2つの双晶界面が生成されたものと判断することができる。このとき、両端の粒子は同じコントラストを有することを特徴とする。
【0048】
本発明において、双晶界面tが形成された誘電体結晶粒Gを、双晶を含む誘電体結晶粒と定義することができ、誘電体結晶粒内の双晶界面tを基準として格子配列が異なる内部の結晶粒を相異に称するために、第1内部結晶粒又は第2内部結晶粒等に区分して説明することができる。但し、特にこれに限定されるものではなく、より具体的な説明が必要な場合、付加する説明に応じて定義されることができる。
【0049】
より具体的に、誘電体層内の微細構造である誘電体結晶粒を概略的に示す
図5を参照して説明すると、誘電体結晶粒内に単一双晶界面t1が発生する場合、第1内部結晶粒G1a及び第2内部結晶粒G1bを含む誘電体結晶粒G1が形成されることができる。このとき、第1内部結晶粒G1a及び第2内部結晶粒G1bは双晶界面t1を基準として180°の対称をなしている。
【0050】
また、誘電体結晶粒内に二重双晶界面t2が発生する場合、第1-1内部結晶粒G2a、第2内部結晶粒G2b及び第1-2内部結晶粒G2a’を含む誘電体結晶粒G2が形成されることができる。このとき、第1-1内部結晶粒G2a及び第2内部結晶粒G2bは、第1双晶界面t2aを基準として180°の対称をなしていてもよく、第2内部結晶粒G2b及び第1-2内部結晶粒G2a’は、第2双晶界面t2bを基準として180°の対称をなしていてもよい。言い換えれば、第1-1内部結晶粒G2a及び第1-2内部結晶粒G2a’は同じ格子配列を有するか、又は有することができる。
【0051】
誘電体結晶粒Gのうち、双晶界面tが形成されていない誘電体結晶粒G3が存在し得ることは当然であり、このとき、誘電体結晶粒G3内の格子配列は同一であり得る。
【0052】
図6は、本発明の一実施形態の誘電体層構造をTEMによって観察したイメージである。より具体的に、
図6の(a)は、誘電体層の任意の2μm×2μmの領域を低倍率で観察したTEMイメージであり、
図6の(b)は、誘電体層の任意の1μm×1μmの領域を高倍率で観察したTEMイメージである。
【0053】
図6を参照して説明すると、ある一つの誘電体結晶粒は、単一双晶界面t1を基準としてコントラストな明暗で観察される第1内部結晶粒G1a及び第2内部結晶粒G1bを含むことが確認できる。また、他のある一つの誘電体結晶粒は、二重双晶界面t2a、t2bを基準としてコントラストな明暗で観察される第1-1内部結晶粒G2a、第2内部結晶粒G2b及び第1-2内部結晶粒G2a’を含むことが確認できる。ちなみに、転位Dは誘電体結晶粒内で双晶界面tと同様に線で観察されるが、誘電体結晶粒を完全に横切る線ではなく、一直線よりは曲線のある線の形で観察されることが確認できる。
【0054】
双晶界面tの長さの測定は、積層型電子部品を分解した後、TEM(Transmission Electron Microscope)を用いて誘電体層111に含まれた誘電体結晶粒を観察し、誘電体結晶粒の内部に含まれた欠陥(defect)の長さはTEM装置で測定することで求めることができる。
【0055】
より具体的に、集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)で作製されたTEMサンプルに対して、明視野像(Bright Field)又は暗視野像(Dark Field)のイメージモードでスキャンした画像イメージから誘電体結晶粒内に配置された双晶界面tの長さを測定することにより求めることができ、複数個の双晶界面tがある場合、上述の方法で測定された全ての双晶界面tの長さを合わせて求めることができる。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、誘電体層111は、2μm×2μmの領域(単位領域)に含まれた双晶界面tの長さの和が1.49μm以上である領域を含むことができ、好ましい上限は5.31μm未満、より好ましい上限は3.63μm以下であることができる。
【0057】
ここで、誘電体層111内の単位領域に含まれた双晶界面tの長さの和が1.49μm以上であるとは、積層型電子部品100の第1及び第2方向の断面(cross-section)を基準として、誘電体層111の単位領域に含まれた双晶界面tの長さの和が1.49μm以上存在する領域が少なくとも一つ存在するということを意味することができる。好ましくは、誘電体層111内の任意の2μm×2μm領域の三つの領域を観察したとき、各領域に含まれた双晶界面tの長さの和を平均した値が1.49μm以上を満たすことを意味することができる。
【0058】
単位領域のサイズは、2μm×2μmの領域に限定されるものではなく、それ以内の領域、例えば1μm×1μmの領域を含むことができる。
【0059】
双晶界面tの長さの和が1.49μm以上を満たす場合、高い誘電容量と、X7R又はX7S特性を満たすことができ、高い高温信頼性を発現することができる。
【0060】
より具体的に、誘電率≧2500、DC-biasの容量変化率≧-70%、温度150℃で電界45V/μmを印加する加速試験条件において、平均故障寿命(MTTF:Mean Time to Failure)が125時間以上、絶縁抵抗(IR)≧1.0E+07Ω、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%のうち少なくとも一つ以上の特性を満たすことができ、より好ましくは、全ての特性を満たすことができる。
【0061】
双晶界面tの長さの和が1.49μm未満、又は5.31μm以上である場合、誘電率≧2500、DC-biasの容量変化率≧-70%、温度150℃で電界45V/μmを印加する加速試験条件において、平均故障寿命が125時間以上、絶縁抵抗(IR)≧1.0E+07Ω、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%のうち少なくとも一つ以上の特性を満たさないおそれがある。
【0062】
2μm×2μmの領域に含まれた双晶界面tの数の和は、特に制限されるものではないが、好ましい下限は10個以上であってもよく、好ましい上限値は34個未満、より好ましい上限値は27個以下であってもよい。
【0063】
双晶界面tの数の和が上述の範囲を満たす場合、より具体的に、誘電率≧2500、DC-biasの容量変化率≧-70%、温度150℃で電界45V/μmを印加する加速試験条件において、平均故障寿命が125時間以上、絶縁抵抗(IR)≧1.0E+07Ω、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%のうち少なくとも一つ以上の特性を満たすことができ、より好ましくは、全ての特性を満たすことができる。
【0064】
双晶界面tの数の和が10個未満、又は34個以上である場合、誘電率≧2500、DC-biasの容量変化率≧-70%、温度150℃で電界45V/μmを印加する加速試験条件において、平均故障寿命が125時間以上、絶縁抵抗(IR)≧1.0E+07Ω、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%のうち少なくとも一つ以上の特性を満たさないおそれがある。
【0065】
以下では、上述した誘電体組成物に含まれ得る副成分について具体的に説明する。ここで説明する副成分は、焼成前の添加剤の酸化物又は炭酸塩の投入含量を基準に説明するが、焼成前後の元素基準の含量は、特別な事情がない限り、大きな誤差値を有さないものであり、焼成後のチップ(chip)の状態でSEM-EDS又はTEM-EDSなどの様々な測定方法で元素の含量を測定することができることは、通常の技術者には自明であるといえる。
【0066】
a)第1副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体組成物は、原子価可変アクセプタ元素の酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第1副成分をさらに含み、上記原子価可変アクセプタ元素はMn、V、Cr、Fe、Ni、Co及びZnのうち一つ以上を含み、上記第1副成分の含量は、主成分100molに対して0.2モル以上0.8モル以下であり得る。
【0067】
第1副成分に含まれた原子価可変アクセプタ元素は、誘電体組成物が適用された積層型電子部品の焼成温度の低下及び高温耐電圧特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0068】
第1副成分の含量が0.2モル未満又は0.8モル超過である場合には、誘電率又は高温耐電圧特性が低下するおそれがある。
【0069】
b)第2副成分
本発明の一実施形態によれば、誘電体組成物は、Mgの酸化物又は炭酸塩のうち一つ以上を含む第2副成分をさらに含み、上記第2副成分の含量は主成分100モルに対して0.3モル以上1.2モル以下であり得る。
【0070】
第2副成分のMgは高温特性を高める役割を果たすことができる。
【0071】
但し、第2副成分の含量が0.3モル未満である場合、DF、絶縁抵抗、X7S温度特性、DC-bias特性及び高温信頼性が低下するおそれがある。第2副成分の含量が1.2モル超過である場合、X7Sの温度特性が低下するおそれがある。
【0072】
c)第3副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体組成物は、希土類元素の酸化物及び炭酸塩のうち一つ以上を含む第3副成分をさらに含み、上記希土類元素はY、Dy、Tb、Ho、Er、Gd、Ce、Nd、Sm、Tm、La及びYbのうち少なくとも一つを含み、上記第3副成分の含量は、主成分100モルに対して1.6モル以上3.2モル以下であり得る。
【0073】
第3副成分に含まれた希土類元素は、高温耐電圧特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0074】
第3副成分の含量が主成分100モルに対して1.6モル未満、又は3.2モル超過である場合には、常温誘電率又は絶縁抵抗特性が低下するおそれがある。
【0075】
e)第4副成分
本発明の一実施形態によれば、上記誘電体組成物は、Siの酸化物、Siの炭酸塩、及びSiを含むガラスのうち一つ以上を含む第4副成分をさらに含み、上記第4副成分の含量は主成分100モルに対して1.0モル以上2.0モル以下であり得る。
【0076】
第4副成分に含まれたSiは焼成緻密度を向上させ、誘電率とDC-bias特性を向上させる役割を果たすことができる。
【0077】
第4副成分の含量が主成分100モルに対して1.0モル未満、又は2.0モル超過である場合には、焼成緻密度が低いため、誘電率とDC-bias特性が低下するおそれがある。
【0078】
誘電体層111の厚さtdは特に限定する必要はない。
【0079】
但し、積層型電子部品の高容量化を達成するために、誘電体層111の厚さは3.0μm以下であってもよく、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、誘電体層111の厚さは1.0μm以下であってもよく、好ましくは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0080】
ここで、誘電体層111の厚さtdは、第1及び第2内部電極121、122の間に配置される誘電体層111の厚さtdを意味することができる。
【0081】
一方、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の第1方向のサイズを意味することができる。また、誘電体層111の厚さtdは、誘電体層111の平均厚さtdを意味することができ、誘電体層111の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0082】
誘電体層111の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの誘電体層111の第1方向の平均サイズは、スキャンされたイメージにおいて一つの誘電体層111を第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向のサイズを測定して計算した平均値を意味することができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の誘電体層111に拡張して平均値を測定すると、誘電体層111の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0083】
内部電極121、122は誘電体層111と交互に積層されてもよい。
【0084】
内部電極121、122は第1内部電極121及び第2内部電極122を含むことができ、第1及び第2内部電極121、122は本体110を構成する誘電体層111を間に挟んで互いに対向するように交互に配置され、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ露出することができる。
【0085】
より具体的に、第1内部電極121は第4面4と離隔し、第3面3を介して露出することができ、第2内部電極122は第3面3と離隔し、第4面4を介して露出することができる。本体110の第3面3には、第1外部電極131が配置されて第1内部電極121と連結され、本体110の第4面4には、第2外部電極132が配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0086】
すなわち、第1内部電極121は第2外部電極132とは連結されず、第1外部電極131と連結され、第2内部電極122は第1外部電極131とは連結されず、第2外部電極132と連結されることができる。このとき、第1及び第2内部電極121、122は、中間に配置された誘電体層111によって互いに電気的に分離されてもよい。
【0087】
一方、本体110は、第1内部電極121が印刷されたセラミックグリーンシートと、第2内部電極122が印刷されたセラミックグリーンシートとを交互に積層した後、焼成して形成することができる。
【0088】
内部電極121、122を形成する材料は特に限定されず、電気伝導性に優れた材料を使用することができる。例えば、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含むことができる。
【0089】
また、内部電極121、122は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む内部電極用導電性ペーストをセラミックグリーンシートに印刷して形成することができる。上記内部電極用導電性ペーストの印刷方法としては、スクリーン印刷法又はグラビア印刷法等を使用することができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
一方、内部電極121、122の厚さteは特に限定する必要はない。
【0091】
但し、積層型電子部品の高容量化を達成するために内部電極121、122の厚さは1.0μm以下であってもよく、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために内部電極121、122の厚さは0.6μm以下であってもよく、より好ましくは0.4μm以下であってもよい。
【0092】
ここで、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の第1方向のサイズを意味することができる。また、内部電極121、122の厚さteは、内部電極121、122の平均厚さteを意味することができ、内部電極121、122の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0093】
内部電極121、122の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つの内部電極121、122の第1方向の平均サイズは、スキャンされたイメージにおいて、一つの内部電極121、122を第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向のサイズを測定した平均値であることができる。上記等間隔である30個の地点は容量形成部Acで指定することができる。また、このような平均値の測定を10個の内部電極121、122に拡張して平均値を測定すると、内部電極121、122の第1方向の平均サイズをさらに一般化することができる。
【0094】
一方、本発明の一実施形態において、複数の誘電体層111のうち少なくとも一つの平均厚さtdと、複数の内部電極121、122のうち少なくとも一つの平均厚さteは、2×te<tdを満たすことができる。
【0095】
言い換えれば、一つの誘電体層111の平均厚さtdは、一つの内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりも大きくてもよい。好ましくは、複数の誘電体層111の平均厚さtdは、複数の内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりも大きくてもよい。
【0096】
一般的に、高電圧電装用電子部品は、高電圧環境下で絶縁破壊電圧(BDV:Breakdown Voltage)の低下による信頼性の問題が主要なイシューである。
【0097】
したがって、高電圧環境下で絶縁破壊電圧の低下を防止するために、誘電体層111の平均厚さtdを内部電極121、122の平均厚さteの2倍よりもさらに大きくすることにより、内部電極間の距離である誘電体層の厚さを増加させることができ、絶縁破壊電圧特性を向上させることができる。
【0098】
誘電体層111の平均厚さtdが内部電極121、122の平均厚さteの2倍以下である場合には、内部電極間の距離である誘電体層の平均厚さが薄いため、絶縁破壊電圧が低下することがあり、内部電極間の短絡が発生する可能性がある。
【0099】
高電圧電子部品において、内部電極の平均厚さteは1μm以下であってもよく、誘電体層の平均厚さtdは3.0μm以下であってもよいが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0100】
一方、本体110は、容量形成部Acの第1方向の両端面(end-surface)上に配置されるカバー部112、113を含むことができる。
【0101】
より具体的に、容量形成部Acの第1方向の上部に配置される上部カバー部112、及び容量形成部Acの第1方向の下部に配置される下部カバー部113を含むことができる。
【0102】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの上下面にそれぞれ第1方向に積層して形成することができ、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0103】
上部カバー部112及び下部カバー部113は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、上部カバー部112及び下部カバー部113はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0104】
一方、カバー部112、113の厚さtcは特に限定する必要はない。
【0105】
但し、積層型電子部品の小型化及び高容量化をより容易に達成するために、カバー部112、113の厚さtcは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品では、より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0106】
ここで、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の第1方向のサイズを意味することができる。また、カバー部112、113の厚さtcは、カバー部112、113の平均厚さtcを意味することができ、カバー部112、113の第1方向の平均サイズを意味することができる。
【0107】
カバー部112、113の第1方向の平均サイズは、本体110の第1及び第2方向の断面を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのカバー部をスキャンしたイメージにおいて、第2方向に等間隔である30個の地点で第1方向のサイズを測定した平均値を意味することができる。
【0108】
一方、積層型電子部品100は、本体110の第3方向の両端面(end-surface)上に配置されるサイドマージン部114、115を含むことができる。
【0109】
より具体的に、サイドマージン部114、115は、本体110の第5面5に配置された第1サイドマージン部114、及び本体110の第6面6に配置された第2サイドマージン部115を含むことができる。
【0110】
サイドマージン部114、115は、図示のように、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を基準に、第1及び第2内部電極121、122の第3方向の両端面(end-surface)と本体110の境界面との間の領域を意味することができる。
【0111】
サイドマージン部114、115は、容量形成部Acに適用されるセラミックグリーンシート上にサイドマージン部114、115が形成される箇所を除き、導電性ペーストを塗布して内部電極121、122を形成し、内部電極121、122による段差を抑制するために、積層後の内部電極121、122が本体110の第5及び第6面5、6に露出するように切断した後、単一の誘電体層111又は2つ以上の誘電体層111を容量形成部Acの第3方向の両端面(end-surface)上に第3方向に積層して形成することもできる。
【0112】
サイドマージン部114、115は、基本的に物理的又は化学的ストレスによる内部電極121、122の損傷を防止する役割を果たすことができる。
【0113】
第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115は、内部電極121、122を含まず、誘電体層111と同じ材料を含むことができる。すなわち、第1サイドマージン部114及び第2サイドマージン部115はセラミック材料を含むことができ、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO3)系セラミック材料を含むことができる。
【0114】
一方、第1及び第2サイドマージン部114、115の幅wmは特に限定する必要はない。
【0115】
但し、積層型電子部品100の小型化及び高容量化をより容易に達成するためにサイドマージン部114、115の幅wmは100μm以下であってもよく、好ましくは30μm以下であってもよく、超小型製品より好ましくは20μm以下であってもよい。
【0116】
ここで、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の第3方向のサイズを意味することができる。また、サイドマージン部114、115の幅wmは、サイドマージン部114、115の平均幅wmを意味することができ、サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズを意味することができる。
【0117】
サイドマージン部114、115の第3方向の平均サイズは、本体110の第1及び第3方向の断面(cross-section)を1万倍率の走査電子顕微鏡(SEM)でイメージをスキャンして測定することができる。より具体的に、一つのサイドマージン部をスキャンしたイメージにおいて、第1方向に等間隔である30個の地点で第3方向のサイズを測定した平均値を意味することができる。
【0118】
本発明の一実施形態では、セラミック電子部品100が2つの外部電極131、132を有する構造について説明しているが、外部電極131、132の個数や形状などは内部電極121、122の形態やその他の目的に応じて変更することができる。
【0119】
外部電極131、132は本体110上に配置され、内部電極121、122と連結されることができる。
【0120】
より具体的に、外部電極131、132は、本体110の第3及び第4面3、4にそれぞれ配置され、第1及び第2内部電極121、122とそれぞれ連結される第1及び第2外部電極131、132を含むことができる。すなわち、第1外部電極131は本体の第3面3に配置されて第1内部電極121と連結されることができ、第2外部電極132は本体の第4面4に配置されて第2内部電極122と連結されることができる。
【0121】
一方、外部電極131、132は、金属などのように電気伝導性を有するものであれば、如何なる物質を使用して形成されてもよく、電気的特性、構造的安定性などを考慮して具体的な物質が決定されてもよく、さらに、多層構造を有してもよい。
【0122】
例えば、外部電極131、132は、本体110に配置される電極層131a、132a、131b、132b及び電極層131a、132a、131b、132b上に配置されるめっき層131c、132cを含むことができる。
【0123】
電極層131a、132a、131b、132bに対するより具体的な例を挙げると、電極層131a、132a、131b、132bは、第1導電性金属及びガラスを含む焼成電極であってもよく、第2導電性金属及び樹脂を含む樹脂系電極であってもよい。
【0124】
ここで、第1導電性金属は第1電極層131a、132aに含まれた導電性金属を意味することができ、第2導電性金属は第2電極層131b、132bに含まれた導電性金属を意味することができる。このとき、第1導電性金属及び第2導電性金属は同一であるか又は異なることができ、同じ金属物質を含むことができるが、特にこれに限定されるものではない。
【0125】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に焼成電極及び樹脂系電極が順次に形成された形態であってもよい。
【0126】
また、電極層131a、132a、131b、132bは、本体上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されてもよく、焼成電極上に導電性金属を含むシートを転写する方式で形成されたものであってもよい。
【0127】
電極層131a、132a、131b、132bに含まれる導電性金属として、電気伝導性に優れた材料を使用することができ、例えば、導電性金属は、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができるが、特にこれらに限定されない。
【0128】
本発明の一実施形態において、電極層131a、132a、131b、132bは、第1電極層131a、132a及び第2電極層131b、132bを含む2層構造を有することができ、これにより、外部電極131、132は、第1導電性金属及びガラスを含む第1電極層131a、132a及び上記第1電極層131a、132a上に配置され、第2導電性金属及び樹脂を含む第2電極層131b、132bを含むことができる。
【0129】
第1電極層131a、132aは、ガラスを含むことにより本体110との接合性を向上させる役割を果たし、第2電極層131b、132bは樹脂を含むことにより曲げ強度を向上させる役割を果たすことができる。
【0130】
第1電極層131a、132aに使用される導電性金属は、静電容量の形成のために上記内部電極121、122と電気的に連結できる材質であれば、特に限定されず、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。第1電極層131a、132aは、上記導電性金属粉末にガラスフリットを添加して設けられた導電性ペーストを塗布した後、焼成することにより形成することができる。
【0131】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、第1電極層131a、132aと電気的に連結されるようにする役割を果たすことができる。
【0132】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、電極層131a、132aと電気的に連結できる材質であれば、特に限定されず、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、錫(Sn)、タングステン(W)、チタン(Ti)及びこれらの合金からなる群から選択された一つ以上を含むことができる。
【0133】
第2電極層131b、132bに含まれる導電性金属は、球状粒子及びフレーク状粒子のうち1以上を含むことができる。すなわち、導電性金属はフレーク状粒子のみからなるか、又は球状粒子のみからなることができ、フレーク状粒子と球状粒子とが混合された形態であってもよい。ここで、球状粒子は、完全な球状ではない形態も含むことができ、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.45以下の形態を含むことができる。フレーク状粒子とは、平たいかつ細長い形態を有する粒子を意味し、特に限定されるものではないが、例えば、長軸と短軸の長さ比率(長軸/短軸)が1.95以上であってもよい。上記球状粒子及びフレーク状粒子の長軸と短軸の長さは、セラミック電子部品の第3方向の中央部で切断した第1及び第2方向の断面(cross-section)を走査電子顕微鏡(SEM)でスキャンして得られたイメージから測定することができる。
【0134】
第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性の確保及び衝撃吸収の役割を果たす。第2電極層131b、132bに含まれる樹脂は、接合性及び衝撃吸収性を有し、導電性金属粉末と混合してペーストを作製できるものであれば、特に限定されず、例えば、エポキシ系樹脂を含むことができる。
【0135】
また、第2電極層131b、132bは、複数の金属粒子、金属間化合物及び樹脂を含むことができる。上記金属間化合物を含むことにより、第1電極層131a、132aとの電気的連結性をより向上させることができる。上記金属間化合物は、複数の金属粒子を連結して電気的連結性を向上させる役割を果たし、複数の金属粒子を囲んで互いに連結する役割を果たすことができる。
【0136】
このとき、上記金属間化合物は、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むことができる。すなわち、上記金属間化合物が樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属を含むため、樹脂の硬化温度より低い融点を有する金属が乾燥及び硬化工程を経る過程で溶融し、金属粒子の一部と金属間化合物を形成して金属粒子を囲むようになる。このとき、金属間化合物は、好ましくは300℃以下の低融点金属を含むことができる。
【0137】
例えば、213~220℃の融点を有するSnを含むことができる。乾燥及び硬化工程を経る過程でSnが溶融し、溶融したSnがAg、Ni又はCuのような高融点の金属粒子を毛細管現象により湿らせ、Ag、Ni又はCu金属粒子の一部と反応してAg3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5、Cu3Snなどの金属間化合物を形成するようになる。反応に関与しなかったAg、Ni又はCuは金属粒子の形態で残る。
【0138】
したがって、上記複数の金属粒子は、Ag、Ni及びCuのうち一つ以上を含み、上記金属間化合物は、Ag3Sn、Ni3Sn4、Cu6Sn5及びCu3Snのうち一つ以上を含むことができる。
【0139】
めっき層131c、132cは実装特性を向上させる役割を果たす。
【0140】
めっき層131c、132cの種類は特に限定されず、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、パラジウム(Pd)及びこれらの合金のうち一つ以上を含む単一層のめっき層131c、132cであってもよく、複数の層で形成されてもよい。
【0141】
めっき層131c、132cに対するより具体的な例を挙げると、めっき層131c、132cはNiめっき層又はSnめっき層であってもよく、電極層131a、132a、131b、132b上にNiめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよく、Snめっき層、Niめっき層及びSnめっき層が順次に形成された形態であってもよい。また、めっき層131c、132cは、複数のNiめっき層及び/又は複数のSnめっき層を含むこともできる。
【0142】
本発明の一実施形態に係る積層型電子部品のサイズは特に限定されない。
【0143】
但し、電装用MLCCの場合、十分な誘電容量を実現するために3216(長さ×幅、3.2mm×1.6mm)サイズ、又はこれと類似したサイズを有することができるが、これに限定されるものではなく、3216サイズ以下の小型又は超小型の積層型電子部品にも双晶を生成させて特性を向上させることを適用することができる。
【0144】
以上のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上述した実施形態及び添付の図面によって限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲によって限定されるものとする。したがって、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で、当技術分野における通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属すると言える。
【0145】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、これは本発明の具体的な理解を助けるためのものであり、本発明の範囲が実施例によって限定されるものではない。
【0146】
(実施例)
主成分の母材としては、平均粒子サイズが150nmであるBaTiO3粉末を使用した。ジルコニアビーズ(beads)を混合/分散媒介体(media)として用い、主成分のBaTiO3粉末と表1、3、及び5に明示された組成に該当する副成分が含まれた原料粉末をエタノール/トルエン溶媒、及び分散剤と共に混合してスラリーを製造した後、4、6、8、10、20、30時間ミリング(milling)し、バインダー(binder)を混合し、12時間追加ミリング(milling)した。このようにして製造されたスラリーは、シート製造用成形機を用いて5.0μmの厚さで成形シートを製造した。成形シートにNi内部電極を印刷した。上下部カバー部は25層の誘電体層で積層して作製し、21層の印刷された活性シートを加圧しながら積層してバー(bar)を作製した。圧着バーは、切断機を用いて3216(長さ×幅:3.2mm×1.6mm)サイズのチップ(chip)に切断した。作製が完了した3216サイズのMLCCチップは、仮焼を行った後、還元雰囲気0.1%H2/99.9%N2~0.5%H2/99.5%N2(H2O/H2/N2雰囲気)で1150~1200℃の温度で保持時間2時間の条件で焼成を行った後、1040℃のN2雰囲気で3時間の間再酸化を行った。ここで、0.1%のH2は酸素分圧測定器で起電力680mV、そして0.5%H2は起電力760mVの条件に該当する。焼成されたチップに対してCuペーストでターミネーション(termination)工程及び電極焼成を経て外部電極を完成した。これにより、焼成後の誘電体の厚さが約2.2μmであり、誘電体の層数が20層である3216サイズのMLCCチップを作製した。
【0147】
MLCCチップの常温誘電容量(C、capacitance)及び誘電損失(DF:Dissipation Factor)は、LCRメーターを用いて1kHz、AC0.5V/μmの条件で容量を測定した。静電容量とMLCCチップの誘電体の厚さ、内部電極の面積、積層数からMLCCチップ誘電体の誘電率を計算した。常温絶縁抵抗IRは10個ずつサンプルを取り、DC10V/μmを印加した状態で60秒(sec)経過後に測定した。温度による誘電容量の変化は、-55℃~125℃の温度範囲で測定された。加速寿命評価(HALT:Highly Accelerated Life Time Test)は、各種類あたり40個の試験片に対して150℃で電界42V/μmに該当する電圧を印加し、故障が発生する時間を測定して平均時間(MTTF:Mean Time to Failure)を算出した。表2、4及び6は、表1、3及び5に明示された実施例に該当するPrototypeチップの特性を示す。
【0148】
本実施例では、Ni内部電極を適用できる還元雰囲気の焼成条件において、高い容量とX7R或いはX7S容量-温度特性、そして高い高温信頼性など、これら全ての特性を実現できる誘電体及びこれを適用したMLCCチップを実現することを目標とする。
【0149】
このための特性判定基準として、誘電率≧2500、DC-biasの容量変化率≧-70%、温度150℃で電界45V/μmを印加する加速試験条件において、平均故障寿命が125時間以上、絶縁抵抗(IR)≧1.0E+07Ω、及び-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%である特性を目標とし、上記特性を全て満たす場合、特性評価において〇と表記し、特性の一つでも満たしていない場合には×と表記した。
【0150】
各副成分の添加含量はmol%で表し、BaTiO3母材100モルに対する添加含量のモル数を意味する。例えば、実施例1-1において、第1副成分であるMnO2、V2O5はそれぞれ0.2mol%と記載されているが、これはBaTiO3100モルに対してMnO2を0.2mol、BaTiO3100モルに対してV2O5を0.2mol添加したことを意味し、元素のモル数基準ではなく、添加剤のモル数基準に該当する。
【0151】
【0152】
【0153】
表1の実施例1-1~1-6は、主成分のBaTiO3母材100molに対して第1副成分の原子価可変元素MnO2、V2O5の和が0.4mol(MnO2は0.2mol)、第2副成分のMgCO3の含量が0.6mol、第3副成分のDy2O3、Tb4O7の和が0.8mol(Dy2O3は0.5mol)、第4副成分のSiO2の含量が1.65molであるとき、バッチ工程のミリング時間による実施例を示し、表2の1-1~1-6は、これらの実施例に該当するPrototype MLCCサンプルの特性を示す。バッチミリング時間が最も短い4hrsでは(実施例1-1)、内部電極領域を除く誘電体のみが観察される任意の領域(2μm×2μm)における全双晶の長さの和が0.36μmに過ぎず、温度150℃で電界45V/μmを印加する加速試験条件において、平均故障寿命が50時間と低い特性を示す。ミリング時間が6hrsに増加すると(実施例1-2)、全双晶の長さの和が0.97μmまで増加し、MTTFは94hrsに増加するが、prototype MLCCチップの特性決定には適合しない。
【0154】
バッチミリング時間が8hrsに増加すると(実施例1-3)、全双晶の長さの和が1.49μmである誘電体層が存在し、このとき、MTTFは134hrsと実施例1-2に比べてさらに高くなる。ミリング時間が10、20hrsにさらに増加すると(実施例1-4、1-5)、全双晶の長さの和が2.24μm、3.63μmまで増加し、MTTFは181hrs、208hrsとなり、さらに改善される結果を有する。バッチミリング時間が30hrsと極端に長くなると(実施例1-6)、全双晶の長さの和はさらに増加して5.31μmまで観察されるが、誘電率が2000未満に低下する副効果をもたらし、特性判定に適合しないことが分かる。本実施例において、ミリング時間が増加して透過電子顕微鏡イメージ上で観察される全双晶の長さの和が増加すると、双晶の個数の和も同様に増加することが分かり、双晶の個数の総和の増加もMTTFの増加に比例することが分かる。したがって、誘電率が2500以上実現される範囲内で双晶の長さの和が1.49μm以上となり、双晶の個数が10個以上である微細構造を実現すれば、本発明の全ての目標特性が実現可能であることが分かる。
【0155】
実施例2-1は、実施例1-4のバッチミリング時間と副成分が適用され、焼成雰囲気EMF760mV(水素濃度0.5%)より低いEMF680mV(水素濃度0.1%)の焼成雰囲気で焼成した例を示し、表2の2-1は、本実施例に該当するprototype MLCCサンプルの特性を示す。同じ組成とバッチミリング条件が適用されているが、水素濃度が低くなる場合、全双晶の長さの和は2.17μmと大きい変化がなく、本発明の目標特性であるMTTF125hrs以上は実現されるものの、131hrsに減少し、実施例1-4のMTTF181hrsよりは低いレベルを示す。
【0156】
実施例3-1~3-4は、実施例1-4と比較したとき、同じバッチミリング時間、水素濃度の条件で添加剤の含量のみを10%の間隔で減少させてprototype MLCCチップの特性を比較したものである。実施例3-1は、添加剤の含量を90%に減少させてチップ特性を調べたものであって、このとき全双晶の長さの和は2.38μmであり、双晶の個数の総和は17個と実施例1-4よりも増加した数値であることが分かる。全添加剤が減量されると、BaTiO3とコアシェル構造を形成する添加剤の量が減少するため、BaTiO3の粒成長分率が増加し、誘電率/DF上昇、TCC悪化、MTTF悪化を誘発することがある。実施例3-1は(実施例1-4に比べて)誘電率/DF上昇、TCC悪化の傾向を示しているが、DC-bias特性はむしろ改善され、TCC及びMTTFも減少していないことが分かる。添加剤の含量が減少したにもかかわらず、全双晶の長さ及び双晶の個数の総和は同等又は増加の傾向を有するため、より多いboundaryの形成によるDC-biasの変化率の改善及び同等のTCCとMTTF特性を有することが分かる。実施例3-2は添加剤の含量を80%まで減量したものであって、添加剤100%に対して全双晶の長さの和が2.53μm、そして双晶の個数の総和は21個と増加したことが分かる。当該実施例も誘電率/DFの増加を示し、添加剤の20%減量効果により高温IRの減少及びTCC悪化の傾向を示すが、MTTFは以前の実施例とほぼ類似した態様を有する。実施例3-3は、添加剤の総量70%に該当するものであって、実施例3-2と同様の傾向による特性悪化を示す。全双晶の長さの和及び個数は2.75μm及び24個と増加したが、添加剤減量の効果が大きいため、さらに粒成長を促進し、MTTFは152hrsまで減少したことが確認できる。実施例3-4は、添加剤の総量を60%まで減少させたものであって、誘電率の上昇、TCC悪化の傾向を示す。コアシェル構造の形成に必要な添加剤量の減量により、BaTiO3母材にさらに大きい衝撃量を伝達して双晶の生成を促進したが、コアシェル構造の分率が確実に減少したため、粒成長を引き起こし、MTTFも112hrsと、125hrsには満たないことが分かる。
【0157】
したがって、本発明の目標特性を実現するためには、全双晶の長さの和と個数が実施例1-4以上に到達しても、添加剤の総量70%以上を保持した場合にのみ高温IR及びMTTF特性を満たせることが分かる。実施例3-1~3-4は、本発明において、最も重要な実施例に該当するものであって、添加剤の総量を減少させたにもかかわらず、同じミリング条件内で増加した双晶界面の個数により同等のレベルのprototypeチップの特性を実現し、チップ製造コスト節減の競争力を確保できることが分かる。
【0158】
【0159】
【0160】
表3の実施例4-1~4-6と実施例5-1~5-4は、主成分150nmのBaTiO3母材100molに対して第1副成分と第2副成分の含量の変化による実施例を示し、表4は、これらの実施例に該当する試料の特性を示す。実施例4-1~4-6において、第1副成分であるMnO2とV2O5元素の和が1.6mol%以上添加される場合、DC-bias変化率及びMTTF特性を満たすことができない。2つの元素を0.1mol%ずつ添加する場合、目標特性の実現が可能であり(実施例4-3)、最初から添加していない場合は(実施例4-4)耐還元性の不足により高温IR及びMTTF特性を満たすことができなくなる。単独でMnO2(実施例4-5)とV2O5(実施例4-6)が0.4mol%添加されると、いずれの場合も特性を満たすことができない。したがって、本発明の目標特性を実現するための第1副成分の全含量は、モル比率で0.2mol%以上0.8mol%以下とすることができる。本実施例では、第1副成分の含量の変化に応じて双晶の長さの和と個数の変化が発生するが、その差は誤差範囲内に含まれるものと判断されるため、prototypeチップの特性は第1副成分の含量の変化によって主導されたものと判断することができる。
【0161】
実施例5-1~5-4において、第2副成分MgCO3が添加されると、粒成長の抑制及びRC(time constant)値を高める効果があるが、過度に過剰量である1.8mol%の場合には、粒成長の抑制による誘電率2500以下の達成及びMTTF特性が本発明の目標値である125hrs未満となり、特性が実現されない。MgCO3を添加しないと、粒成長の過剰によるDF上昇、高温IRの低下、X7S特性未達、82hrsのMTTFとなり、ほとんどの特性に達していないことが分かる。したがって、本発明の目標特性を実現するための第2副成分の含量は0.3mol%以上1.2mol%とすることができる。同様に、第2副成分の含量の変化により添加剤の総量の変化が発生し、これは、全双晶の長さと個数に変化を誘導することが分かる。双晶界面の長さと個数の変化程度が実施例4よりは増加したが、双晶から誘導される変化による影響よりは含量の変化による影響が大きいことが分かる。
【0162】
【0163】
【0164】
表5の実施例6-1~6-6は、第3副成分Dy2O3とTb4O7の含量の変化によるprototypeチップの特性であって、実施例6-1のように第3副成分が過剰量で含有される場合には、高温IRの未達及びMTTF特性が122hrsと、適正含量として添加された実施例6-2、6-3のMTTFと比べて大幅に減少し、基準値である125hrs未満に留まっていることが分かる。実施例6-4では、第3副成分の和が0.4mol%と小さすぎると、MTTFが105hrsとなり、基準値である125hrs以上を達成することができない。実施例6-5及び6-6は、Dy2O3のみ0.8mol%、Tb4O7のみ0.8mol%添加されたものであって、個別的に0.8mol%投入されても特性の達成には不足していることが分かる。2つの希土類のうち、Dy2O3のみが投入されると(実施例6-5)、MTTFは175hrsであって125hrs以上への達成が可能であるが、誘電率が低下するという問題を有するため、基準値が実現されない。Tb4O7のみが投入されると(実施例6-6)、MTTF及び高温IRの両項目に対して基準値未達となるため、特性の達成には適していないことが分かる。したがって、Dy2O3とTb4O7の複合系希土類の最適モル比は、1.6mol%以上3.2mol%以下の比率を有することが分かる。実施例6から導出された最小双晶の長さは2.03μmであり、これは添加剤100%基準で解砕/混合を8hrs以上実施したときに現れる双晶分布を有することが分かる。これは、変化した添加剤の総量による双晶の変化が特性判定には大きな影響を及ぼさないものと考えられ、第3副成分の含量の変化がprototypeチップの特性において主導的な役割を果たしているものと判断される。
【0165】
実施例7-1~7-4は、第4副成分SiO2の含量によるprototypeチップの特性であって、実施例7-1のように3.0mol%の過剰量が含有されると、二次相の形成及びSi凝集体の形成により、誘電率が2245と目標値を達成できず、DFも10以上に上昇する。DC-biasの変化率も悪化し、-71.2%の数値により目標達成に適合しなくなる。第4副成分の含量が2.0mol%及び1.0mol%の場合は、全ての特性に対して特性を満たしているのに対し、実施例7-4のように含量が0.5mol%投入されると、液相成分の不足により焼結過程時に添加剤の流動性が確保されず、粒成長を招いたものと予想される。特に、高温IRの不足、TCC悪化、及びMTTFの125hrs未達により、特性の実現が不可能であることが分かる。したがって、第4副成分の場合、1.0mol%以上2.0mol%以下の比率であるときに、本発明の特性が実現可能であることが分かる。実施例7-4の場合、双晶界面の長さの和が2.86μmまで増加したが、SiO2副成分の減量幅が最も大きかっただけに、双晶界面が増加しても特性の合格判定には及ばなかったことが分かる。
【0166】
本発明の実施例を評価する場合においては、誘電率≧2500、DC-biasの容量変化率≧-70%、温度150℃で電界45V/μmを印加する加速試験条件において、平均故障寿命が125時間以上、絶縁抵抗(IR)≧1.0E+07Ω、-55℃~125℃の温度範囲でのTCC≦±22%の全ての特性を満たす場合に、特性評価において〇と記載したが、双晶が存在することによって現れ得る効果は多様であることが確認できる。
【0167】
本発明の効果は、上述した全ての特性効果を満たす場合に限定されず、上述した特性のうち少なくとも一つを満たしても、本発明による効果と見なすことができる。
【0168】
また、本発明において使用された「一実施形態」という表現は、互いに同じ実施形態を意味するものではなく、それぞれ互いに異なる固有の特徴を強調して説明するために提供されたものである。しかし、上記提示された一実施形態は、他の一実施形態の特徴と結合して実現されることを排除しない。例えば、特定の一実施形態に説明された事項が他の一実施形態に説明されていなくても、他の一実施形態においてその事項と反対又は矛盾する説明がない限り、他の一実施形態に関連する説明と理解することができる。
【0169】
本発明において使用された用語は、単に一実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定しようとする意図ではない。このとき、単数の表現は、文脈上明らかに異なる意味ではない限り、複数の表現を含む。
【符号の説明】
【0170】
100:積層型電子部品
110:本体
111:誘電体層
112、113:カバー部
114、115:サイドマージン部
121、122:内部電極
131、132:外部電極
G:誘電体結晶粒
D:転位
gb:結晶粒界
t:双晶界面