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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098485
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】高熱安定性隔離膜及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/457 20210101AFI20240716BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/489 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/403 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/42 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/411 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/417 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/423 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/451 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/426 20210101ALI20240716BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20240716BHJP
【FI】
H01M50/457
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/489
H01M50/403 D
H01M50/446
H01M50/42
H01M50/411
H01M50/417
H01M50/423
H01M50/451
H01M50/426
H01M50/414
【審査請求】未請求
【請求項の数】40
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023176125
(22)【出願日】2023-10-11
(31)【優先権主張番号】112101053
(32)【優先日】2023-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(31)【優先権主張番号】112126740
(32)【優先日】2023-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】518076148
【氏名又は名称】ベンキュー マテリアルズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ-ティン イェ
(72)【発明者】
【氏名】ワン-ティン ロ
(72)【発明者】
【氏名】イ-ティン ロ
(72)【発明者】
【氏名】カイ-ウェイ チェン
(72)【発明者】
【氏名】イ-ファン フアン
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE01
5H021EE02
5H021EE03
5H021EE04
5H021EE05
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE10
5H021EE15
5H021EE17
5H021EE21
5H021EE22
5H021EE23
5H021EE29
5H021EE31
5H021EE32
5H021HH01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】強化された耐圧収縮性及び高温での溶融完全性を有するとともに、圧縮後にも一定の通気性を維持する高熱安定性隔離膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る高熱安定性隔離膜は、多孔質膜及びチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を含む。多孔質膜は、多孔質基材及び無機層を含む。無機層は、複数の無機粒子及び接着剤を含む。無機層は、多孔質基材の少なくとも一方の表面上に形成される。多孔質基材及び無機層は、互いに連通する複数の多孔質構造を有する。チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁に形成される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高熱安定性隔離膜であって、
多孔質基材及び無機層を含む多孔質膜と、
前記無機層は複数の無機粒子及び接着剤を含み、前記無機層は前記多孔質基材の少なくとも一方の表面上に形成され、前記多孔質基材及び無機層は互いに連通する複数の多孔質構造を有し、
前記多孔質膜の表面及び前記多孔質構造の内壁に形成されるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜と、
を含む、高熱安定性隔離膜。
【請求項2】
88Kgf/cmの荷重で30秒間保持した後の圧縮抵抗性は90%を超える、請求項1に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項3】
88Kgf/cmの荷重で30秒間保持した後の通気性(Gurley)の低下は35%未満である、請求項1に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項4】
前記高熱安定性隔離膜の高温破裂温度は、170°Cより大きい、請求項1に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項5】
前記チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、化学溶液堆積法により形成される、請求項1~4のいずれか1項に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項6】
前記チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、前記多孔質膜に前駆体溶液を塗布して反応溶液を塗布し、前記前駆体溶液と前記反応溶液とを反応させることによって、形成される、請求項5に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項7】
前記前駆体溶液は、0.25wt%~3wt%のチタンアルコキシド溶液である、請求項6に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項8】
前記チタンアルコキシドは、メタノールチタン、エタノールチタン、チタンイソプロパノール、チタン(IV)t-ブトキシド又はそれらの組み合わせである、請求項7に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項9】
前記チタンアルコキシド溶液の溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はそれらの組み合わせである、請求項7に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項10】
前記反応溶液は、30~70重量%のアルコール水溶液である、請求項6に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項11】
前記チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜はさらに、粘着付与剤、安定剤又は金属塩類を含む、請求項1に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項12】
前記粘着付与剤は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ―N―ビニルアセトアミド、架橋性の(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル―アクリレート共重合体、アクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体、又はそれらの組み合わせである、請求項11に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項13】
前記安定剤は、ヘキサメチルジシラザンである、請求項11に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項14】
前記金属塩類は、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、臭化ストロンチウム、塩化銅、又はそれらの組み合わせである、請求項11に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項15】
前記多孔質基材は、ポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドの単層又は多層の多孔質基材である、請求項1に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項16】
前記無機層は、80wt%~99wt%の無機粒子及び1wt%~20wt%の接着剤を含む、請求項1に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項17】
前記無機粒子は、Mg(OH)、BaSO、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-y(Zr,TiyO)(PLZT,0<x<1且つ0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、HfO、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、SiO、Y、Al(OH)、Al、ベーマイト(AlOOH)、SiC、TiO又はそれらの組み合わせである、請求項16に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項18】
前記接着剤は、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ(メタ)アクリレート、架橋性の(メタ)アクリル樹脂、フッ素系ゴム、スチレン―ブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ―N―ビニルアセトアミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリウレタン、又はそれらの組み合わせである、請求項16に記載の高熱安定性隔離膜。
【請求項19】
高熱安定性隔離膜の製造方法であって、
多孔質基材と無機層を含む多孔質膜を提供し、前記無機層は複数の無機粒子と接着剤を含み、前記無機層は前記多孔質基材の少なくとも一方の表面上に形成され、前記多孔質基材と前記無機層は互いに連通する複数の多孔質構造を有するステップと、
チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を前記多孔質膜の表面及び前記多孔質構造の内壁上に形成するステップと、
を含む高熱安定性隔離膜の製造方法。
【請求項20】
前記チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を前記多孔質膜の表面及び前記多孔質構造の内壁上に形成するステップは、
0.25wt%~3wt%のチタンアルコキシド溶液を含む第1前駆体溶液と、30~70wt%のアルコール水溶液である第1反応溶液と、を含む第1化学堆積溶液群を調製するステップと、
前記第1前駆体溶液及び前記第1反応溶液を前記多孔質膜上に順次塗布し、前記第1前駆体溶液と前記第1反応溶液とを反応させて、前記多孔質膜の表面及び前記多孔質膜の多孔質構造の内壁上にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を形成するステップと、
を含む、請求項19に記載の製造方法。
【請求項21】
前記第1前駆体溶液のチタンアルコキシドは、メタノールチタン、エタノールチタン、チタンイソプロパノール、及びチタン(IV)t-ブトキシド又はそれらの組み合わせであり、前記第1前駆体溶液に用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はそれらの組み合わせである、請求項20に記載の製造方法。
【請求項22】
前記第1前駆体溶液は、0.25重量%(wt%)~2.5重量%のチタンアルコキシド溶液である、請求項20に記載の製造方法。
【請求項23】
前記第1反応溶液のアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エトキシエタノール、アリルアルコール、エチレングリコール、又はそれらの組み合わせである、請求項20に記載の製造方法。
【請求項24】
前記第1反応溶液は、40~60wt%のアルコール水溶液である、請求項20に記載の製造方法。
【請求項25】
前記第1前駆体溶液は、安定剤をさらに含み、前記安定剤は、前記第1前駆体溶液での使用量が0.5wt%~7wt%であり、前記安定剤はヘキサメチルジシラザンである、請求項20に記載の製造方法。
【請求項26】
前記第1反応溶液は、粘着付与剤をさらに含み、前記粘着付与剤は、前記第1反応溶液での使用量が0.05wt%~5wt%である、請求項20に記載の製造方法。
【請求項27】
前記粘着付与剤は、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、架橋性(メタ)アクリル樹脂、ポリ―N―ビニルアセトアミド、アクリロニトリル―アクリレート共重合体、アクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体、又はそれらの組み合わせである、請求項26に記載の製造方法。
【請求項28】
前記第1化学堆積溶液群を調製するステップの後に、第2化学堆積溶液群を調製するステップをさらに含み、前記第2化学堆積溶液群は、0.25wt%~3wt%のチタンアルコキシド溶液を含む第2前駆体溶液と、30~70wt%のアルコール水溶液である第2反応溶液とを含み、前記第1前駆体溶液及び前記第1反応溶液を前記多孔質膜に順次塗布した後、前記第2前駆体溶液と前記第2反応溶液を前記多孔質膜に順次塗布する、請求項20に記載の製造方法。
【請求項29】
前記第2前駆体溶液のチタンアルコキシドは、メタノールチタン、エタノールチタン、チタンイソプロパノール、及びチタン(IV)t-ブトキシド又はそれらの組み合わせであり、前記第2前駆体溶液に用いられる溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はそれらの組み合わせであり、前記第2反応溶液中のアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エトキシエタノール、アリルアルコール、エチレングリコール、又はそれらの組み合わせである、請求項28に記載の製造方法。
【請求項30】
前記第2前駆体溶液は、0.25wt%~2.5wt%のチタンアルコキシド溶液を含む、請求項28に記載の製造方法。
【請求項31】
前記第2前駆体溶液は、安定剤をさらに含み、前記安定剤は、前記第2前駆体溶液での使用量が0.5wt%~7wt%であり、前記安定剤はヘキサメチルジシラザンである、請求項28に記載の製造方法。
【請求項32】
前記第2反応溶液は、粘着付与剤をさらに含み、前記粘着付与剤は、前記第2反応溶液での使用量が0.05wt%~5wt%である、請求項28に記載の製造方法。
【請求項33】
前記粘着付与剤は、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、架橋性(メタ)アクリル樹脂、ポリ―N―ビニルアセトアミド、アクリロニトリル―アクリレート共重合体、アクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体、又はそれらの組み合わせである、請求項32に記載の製造方法。
【請求項34】
前記第2反応溶液は、金属塩類をさらに含み、前記金属塩類は、前記第2反応溶液での使用量が5wt%~20wt%である、請求項28に記載の製造方法。
【請求項35】
前記金属塩類は、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、臭化ストロンチウム、塩化銅、又はそれらの組み合わせである、請求項34に記載の製造方法。
【請求項36】
複数の多孔質構造を有する多孔質膜を含み、前記多孔質膜の表面及び前記多孔質構造の内壁上には、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物―酸化ケイ素薄膜を有する、高熱安定性隔離膜。
【請求項37】
高熱安定性隔離膜の製造方法であって、
複数の多孔質構造を有する多孔質膜を提供し、前記多孔質膜の表面及び前記多孔質構造上に第1チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を有するステップと、
1wt%~10wt%のアルコキシシラン溶液と、90wt%~99.5wt%のアルコール水溶液である第3反応溶液と、を含む第3化学堆積溶液群を調製するステップと、
前記アルコキシシラン溶液を前記多孔質膜に塗布した後、前記第3反応溶液を前記多孔質膜に塗布して、前記多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁に第2チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物―酸化ケイ素薄膜を形成するステップと、
を含む、高熱安定性隔離膜の製造方法。
【請求項38】
前記アルコキシシラン溶液は、テトラエトキシシランであり、前記アルコキシシラン溶液中の溶媒は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール又はそれらの組み合わせである、請求項37に記載の製造方法。
【請求項39】
前記アルコキシシラン溶液は、触媒をさらに含み、前記触媒は、アンモニア水であり、使用量として溶媒100重量部当たり5重量部~15重量部を添加する、請求項37に記載の製造方法。
【請求項40】
前記第3反応溶液は、アルコール水溶液であり、前記アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エトキシエタノール、アリルアルコール、エチレングリコール、又はそれらの組み合わせである、請求項38に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高熱安定性隔離膜に関し、特にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を含む高熱安定性隔離膜及び該高熱安定性隔離膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池の応用過程において、隔離膜は、電池内外の様々な力、特に圧縮応力に耐えるように、十分な機械的性能要件を満たさなければならない。実際には、リチウムイオン電池は、すべてのコンポーネント間の密接な接触を維持するように、組み立ての過程において、電池にスタック圧力を加える必要がある。また、バッテリの日常的な使用中の印加荷重と衝突は、内部圧力の変動を引き起こすこともある。最も重要なのは、リチウムイオン電池の充電と放電のサイクルごとに、リチウムイオンの埋め込みと脱埋め込みは、電気化学プロセスだけでなく、電極材料の体積膨張を引き起こすことがある。膨張した電極は、電池内部の限られた空間を必然的に減少させるとともに、隔離膜を圧縮して、隔離膜の微孔変形を引き起こす。これにより、厚さ方向に沿ったイオン伝導率が低下する。そのため、電池隔離膜の耐圧収縮性の強化及び圧縮後にも一定の通気性を維持することが重要な課題である。
【0003】
さらに、高温での電池隔離膜の溶融完全性(melt integrity)は、電池の安全を確保するための重要な特性である。外部の高温、過充電、内部短絡、又はそれらの他の異常な電気化学反応による温度上昇により電池内部の熱蓄積が発生した場合、高温での溶融完全性は、追加の安全性を提供することができる。隔離膜は高温でも完全性を維持しているので、電極が高温で接触して熱が暴走するのを防ぐことができる。リチウムイオン電池用隔離膜は、ポリオレフィン材料を基材としたポリエチレン(PE)及び/又はポリプロピレン(PP)を用いたものである。これらは、高温での溶融完全性が不足するため、高温での溶融完全性を有する隔離膜が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、強化された耐圧収縮性及び高温での溶融完全性を有するとともに、圧縮後にも一定の通気性を維持する高熱安定性隔離膜を開示する。
【0005】
本発明に係る高熱安定性隔離膜は、多孔質膜及びチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を含む。そのうち、多孔質膜は、多孔質基材と無機層を含む。無機層は、複数の無機粒子及び接着剤を含む。無機層は、多孔質基材の少なくとも一方の表面に形成される。多孔質基材及び無機層は、互いに連通する複数の多孔質構造を有する。チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁に形成される。
【0006】
本発明に係る高熱安定性隔離膜は、88Kgf/cmの荷重で30秒間保持した後の圧縮抵抗性が90%を超え、圧縮後の通気度(Gurley)の低下が35%未満である。
【0007】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の高温破裂温度は、170°Cより大きい。
【0008】
本発明に係る高熱安定性隔離膜において、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、化学溶液堆積法により形成され、多孔質膜上に前駆体溶液を塗布して、続いて反応溶液を塗布し、前駆体溶液と反応溶液とを反応させることにより形成される。本発明に係る高熱安定性隔離膜の実施形態において、前駆体溶液は、0.25wt%~3wt%のチタンアルコキシド溶液である。チタンアルコキシド溶液の溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はそれらの組み合わせである。反応溶液は、30~70重量%のアルコール水溶液である。
【0009】
本発明に係る高熱安定性隔離膜において、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、さらに、粘着付与剤、安定剤又は金属塩類を含む。
【0010】
本発明に係る高熱安定性隔離膜における粘着付与剤は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ―N―ビニルアセトアミド、架橋性の(メタ)アクリル樹脂、アクリロニトリル―アクリレート共重合体、アクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体、又はそれらの組み合わせである。
【0011】
本発明に係る高熱安定性隔離膜における安定剤は、ヘキサメチルジシラザンである。
【0012】
本発明に係る高熱安定性隔離膜における金属塩類は、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、臭化ストロンチウム、塩化銅、又はそれらの組み合わせである。
【0013】
本発明に係る高熱安定性隔離膜における多孔質膜の多孔質基材は、ポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドの単層又は多層の多孔質構造基材であってよい。
【0014】
本発明に係る高熱安定性隔離膜における多孔質膜の無機層は、複数の無機粒子及び接着剤を含む。無機層は、多孔質基材と相互に連通する多孔質構造を形成する。本発明の実施形態における無機層は、1~20重量%の接着剤および80~99重量%の無機粒子を含んでよい。本発明の好ましい実施形態における多孔質膜は、その1つの表面又は2つの表面に無機層を含んでよい。
【0015】
本発明に係る高熱安定性隔離膜における多孔質膜の無機層に含まれる無機粒子は、Mg(OH)、BaSO、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-y(Zr,TiyO) (PLZT,0<x<1且0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、HfO、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、SiO、Y、Al(OH)、Al、ベーマイト(AlOOH)、SiC、TiO及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0016】
本発明に係る高熱安定性隔離膜における多孔質膜の無機層に含まれる接着剤は、エチレン―酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ(メタ)アクリレート、架橋性の(メタ)アクリル樹脂、フッ素系ゴム、スチレン―ブタジエンゴム(SBR)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリ―N―ビニルアセトアミド、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリウレタン又はそれらの組み合わせである。
【0017】
本発明の別の実施形態に係る高熱安定性隔離膜の製造方法は、以下のステップを含む:多孔質基材及び無機層を含む多孔質膜を提供し、無機層は、複数の無機粒子及び接着剤を含み、無機層は、多孔質基材の少なくとも一方の表面に形成され、多孔質基材及び無機層は、互いに連通する複数の多孔質構造を有し;多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁上にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を形成する。
【0018】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法において、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を多孔質膜の多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁上に形成するステップは、以下を含む:0.25重量%(wt%)~3重量%のチタンアルコキシド溶液を含む第1前駆体溶液と、30重量%~70重量%のアルコール水溶液である第1反応溶液と、を含む第1化学堆積溶液群を調製し;第1前駆体溶液及び第1反応溶液を多孔質膜に順次塗布し、第1前駆体溶液と第1反応溶液とを反応させて、多孔質膜の多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成される。
【0019】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法において、第1前駆体溶液のチタンアルコキシドは、メタノールチタン、エタノールチタン、チタンイソプロパノール、及びチタン(IV)t-ブトキシド又はそれらの組み合わせであり、好ましくは、チタンイソプロパノールである。チタンアルコキシド溶液の溶媒は、メタノール、エタノール又はイソプロパノール又はそれらの組み合わせである。本発明の好ましい実施形態における第1前駆体溶液は、0.25重量%(wt%)~2.5重量%のチタンアルコキシド溶液である。
【0020】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第1反応溶液のアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エトキシエタノール、アリルアルコール、エチレングリコール、又はそれらの組み合わせである。本発明の好ましい実施形態における第1反応溶液は、好ましくは40~60wt%のアルコール水溶液である。本発明の好ましい実施形態における第1反応溶液は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール、又はそれらの組み合わせのアルコール水溶液である。
【0021】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第1前駆体溶液はさらに安定剤を含む。安定剤は、第1前駆体溶液での使用量が0.5wt%~7wt%である。
【0022】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第1反応溶液はさらに粘着付与剤を含む。粘着付与剤は、反応溶液での使用量が0.05wt%~5wt%である。
【0023】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法において、第1化学堆積溶液群を調製した後、以下のステップをさらに含む:0.25wt%~3wt%のチタンアルコキシド溶液を含む第2前駆体溶液と、30~70wt%のアルコール水溶液の第2反応溶液と、を含む第2化学堆積溶液群を調製し;第1前駆体溶液及び第1反応溶液を多孔質膜に順次塗布した後、第2前駆体溶液と第2反応溶液を多孔質膜に順次塗布する。
【0024】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第2前駆体溶液に用いられるフタレインアルコキシドの種類又は濃度は、第1前駆体溶液のチタンアルコキシド溶液と同じであっても異なっていてもよい。第2前駆体溶液のチタンアルコキシドは、メタノールチタン、エタノールチタン、チタンイソプロパノール、及びチタン(IV)t-ブトキシド又はそれらの組み合わせである。使用される溶媒は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール、又はそれらの組み合わせである。本発明の好ましい実施形態における第2前駆体溶液は、0.25重量%(wt%)~2.5重量%のチタンアルコキシド溶液である。
【0025】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第2反応溶液に用いられるアルコールの種類又は濃度は、第1反応溶液と同じであっても異なっていてもよい。第2反応溶液中のアルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エトキシエタノール、アリルアルコール、エチレングリコール、又はそれらの組み合わせである。本発明の好ましい実施形態における第2反応溶液は、好ましくは40~60重量%のアルコール水溶液である。本発明の好ましい実施形態における第2反応溶液は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール、又はそれらの組み合わせの水溶液である。
【0026】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第2前駆体溶液は安定剤をさらに含む。安定剤は、第2前駆体溶液での使用量が0.5wt%~7wt%である。
【0027】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第2反応溶液はさらに粘着付与剤を含む。粘着付与剤は、反応溶液での使用量が0.05wt%~5wt%である。
【0028】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第2反応溶液はさらに金属塩類を含む。金属塩類は、反応溶液での使用量が5wt%~20wt%である。
【0029】
本発明の別の実施形態は、複数の多孔質構造を有する多孔質膜を含む高熱安定性隔離膜である。多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁には、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物―酸化ケイ素薄膜を備える。
【0030】
本発明の別の実施形態に係る高熱安定性隔離膜の製造方法において、以下のステップを含む:複数の多孔質構造を有する多孔質膜を提供し、多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁には第1チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を有し;1wt%~10wt%のアルコキシシラン溶液と、90wt%~99.5wt%のアルコール水溶液である第3反応溶液と、を含む第3化学堆積溶液群を調製し;アルコキシシラン溶液及び第3反応溶液を多孔質膜上に順次塗布し、アルコキシシラン溶液と第3反応溶液とを反応させて、多孔質膜の表面および多孔質構造の内壁上に第2チタン酸化物又は/およびチタン水酸化物―酸化ケイ素薄膜を形成する。
【0031】
本発明の別の実施形態に係る高熱安定性隔離膜の製造方法におけるアルコキシシラン溶液は、テトラエトキシシラン溶液である。アルコキシシラン溶液中の溶媒は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール又はそれらの組み合わせである。
【0032】
本発明の別の実施形態に係る高熱安定性隔離膜の製造方法におけるアルコキシシラン溶液はさらに触媒を含み、好ましくはアンモニア水である。好ましい実施形態において、触媒の使用量は、溶媒100重量部当たり5重量部~15重量部を添加する。
【0033】
本発明の別の実施形態に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第3反応溶液はアルコール水溶液である。アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エトキシエタノール、アリルアルコール、エチレングリコール、又はそれらの組み合わせである。
【0034】
上述の発明の概要は、閲覧者が本開示に対して基本的な理解を有するように、本開示の簡略化された要約を提供することを目的とする。ここの発明の概要は、本開示の完全な概要ではなく、本発明の実施形態の重要な/肝心な要素を提示したり、本発明の範囲を定義したりすることを意図しているわけではない。以下の実施形態を参照した後、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の基本精神及び本発明が採用する技術手段と実施形態を容易に理解することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の開示内容をより詳細かつ完全にするために、以下に本発明の実施形態と具体的な実施例について説明する。しかし、これは本発明の具体的な実施形態を実施又は運用する唯一の形態ではない。以下に開示される各実施形態は、有益な場合に互いに組み合わされてもよいし、代替されてもよいし、実施例に他の実施例を付加してもよい。さらなる記載や説明を必要としない。
【0036】
本発明の利点、特徴、および達成された技術的方法は、例示的な実施形態を参照してより詳細に説明されるので、より理解しやすくなる。本発明は、異なる形式で実現されることができるので、本明細書に記載された実施形態に限定されると理解されるべきではない。又は対照的に、提供される実施形態は、通常の知識を有する当業者にとって、本発明の範疇をより徹底的に、完全的に、全面的に伝えることになる。本発明は添付された特許出願の範囲にのみ定義される。
【0037】
特に定義がない限り、後の文に用いられるすべての用語(科学技術及び科学用語を含む)と固有名詞は、実質的には本発明が属する分野の技術者が一般的に理解する意味と同じである。例えば、一般に使用される辞書によって定義される用語は、関連する分野の内容と一致する意味を有するものと理解されるべきである。後の文に明確に定義されない限り、過度に理想的な、過度に正式な意味で理解すべきではない。
【0038】
なお、本文において、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレート及びアクリレートを指す。
【0039】
本発明では、多孔質膜を含む高熱安定性隔離膜を開示する。多孔質膜は多孔質基材と無機層を含む。無機層は、複数の無機粒子及び接着剤を含む。無機層は、多孔質基材の少なくとも一方の表面に形成される。多孔質基材及び無機層は、互いに連通する複数の多孔質構造を有する。チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁に形成される。
【0040】
本発明に係る高熱安定性隔離膜は、88Kgf/cmの荷重で30秒間保持した後の圧縮抵抗性が90%より大きいので、強化された耐圧収縮性を提供して、隔離膜のホールの応力に対する歪みを抑制し、厚さ方向のイオン伝導率を維持する。
【0041】
なお、本発明に係る高熱安定性隔離膜は、88Kgf/cmの荷重で30秒間で圧縮した後、隔離膜のホールは、応力により過度の歪みが発生せず、依然として一定の通気度を維持することができる。つまり、通気度(Gurley)の低下は35%未満である。これによって、使用時の応力による電池内抵抗又は内圧の上昇を回避することができる。
【0042】
本文において、「圧縮後の通気度(Gurley,sec/100 c.c.)の低下」とは、88Kgf/cmの荷重で30秒間保持した後に隔離膜の物理構造が破壊されて通気度が低下したことを意味する。計算方法は、圧縮前の通気度がG1で、圧縮後の通気度がG2であれば、圧縮後の通気度の低下(%)=(1-G1/G2)×100%。
【0043】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の好ましい実施形態における通気度(Gurley)の低下は30%未満である。
【0044】
本発明に係る高熱安定性隔離膜は、高温破裂温度が170°Cより大きい。高温での溶融完全性は、電極相互接触を防止し、電池の安全性を高めることができる。
【0045】
本発明に係る高熱安定性隔離膜におけるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、化学溶液堆積法により形成され、多孔質膜に前駆体溶液を塗布して、続いて反応溶液を塗布し、前駆体溶液と反応溶液とを反応させることによって形成される。本発明に係る高熱安定性隔離膜の実施形態における前駆体溶液は、0.25wt%~3wt%のチタンアルコキシド溶液である。チタンアルコキシド溶液の溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、又はそれらの組み合わせである。反応溶液は、30~70重量%のアルコール水溶液である。
【0046】
本発明に係る高熱安定性隔離膜におけるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜はさらに、粘着付与剤、安定剤又は金属塩類を含む。
【0047】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の好ましい実施形態におけるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物と多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁との接着性を強化するための粘着付与剤をさらに含んでよい。好適な粘着付与剤としては、例えば、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、架橋性(メタ)アクリル樹脂、ポリ―N―ビニルアセトアミド、アクリロニトリル―アクリレート共重合体、アクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体、又はそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
本発明に係る高熱安定性隔離膜におけるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜に適用される粘着付与剤は、市販製品を使用することができる。例えば、日本ゼオン株式会社製のBM-950B、日本の昭和電工株式会社製のPNVA GE191シリーズ(例えばGE191-103、GE191-104、GE191-107又はGE191-108)、米国のアシュランド社製「SoterasTM CCS-V Binder」、中国珠海辰玉新材料科技有限公司製の「CYJ-01」などがある。
【0049】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の好ましい実施形態におけるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物を安定化するための安定剤をさらに含んでよい。好適な安定剤は、ヘキサメチルジシラザンであってよい。
【0050】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の好ましい実施形態におけるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜の水分率を低減させるために、金属塩類をさらに含んでよい。好適な金属塩類は、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、臭化ストロンチウム、塩化銅、又はそれらの組み合わせであってよい。
【0051】
本発明に係る高熱安定性隔離膜におけるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、必要に応じて、難燃剤、酸化防止剤、表面改質剤又は静電気防止剤などの添加剤をさらに含んでよい。
【0052】
本発明の別の実施形態は、多孔質基材及び無機層を含む多孔質膜を含む高熱安定性隔離膜である。多孔質基材及び無機層は、互いに連通する複数の多孔質構造を有する。無機層の表面及び多孔質構造上には、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物―酸化ケイ素薄膜を備える。
【0053】
本発明に係る高熱安定性隔離膜における多孔質膜の多孔質基材は、ポリオレフィン、ポリエステル又はポリアミドの単層又は多層の多孔質構造基材であってよく、特に限定されない。本発明の実施形態における多孔質基材は、例えば、単層ポリエチレン、単層ポリプロピレン、二層ポリエチレン/ポリプロピレン、三層ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリエステル又はポリアミドであってよく、これに限定されない。本発明の実施形態おける多孔質基材の厚さは、約5マイクロメートル(μm)~30μm、好ましくは7μm~25μm、その多孔率は、約30%~50%であってよい。
【0054】
本発明に係る高熱安定性隔離膜における多孔質基材は、その一方又は両方の表面に無機層を含む。無機層は、複数の無機粒子及び接着剤を含む。無機層は、多孔質基材と互いに連通する複数の多孔質構造を形成する。本発明の実施形態における無機層は、80~99重量%の無機粒子及び1~20重量%の接着剤を含んでよい。
【0055】
本発明に係る高熱安定性隔離膜において、多孔質膜の無機層に好適な無機粒子は、Mg(OH)、BaSO、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-y(Zr,TiyO)(PLZT,0<x<1且0<y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、HfO、SrTiO、SnO、CeO、MgO、NiO、CaO、ZnO、ZrO、SiO、Y、Al、ベーマイト(AlOOH)、SiC、TiO及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。本発明に係る高熱安定性隔離膜において、多孔質膜の無機層に適用される接着剤は特に限定されない。隔離膜の分野に適している既知のもの(例えば、高い電気化学的安定性、及び電解液に対する濡れ性と耐化性に優れた等の特性を有する接着剤)を使用することができる。本発明の実施形態において、使用可能な接着剤は、エチレン―酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリレート、架橋性の(メタ)アクリル樹脂、フッ素系ゴム、スチレン―ブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリ―N―ビニルアセトアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、又はそれらの組み合わせであるが、これに限定されない。本発明に係る高熱安定性隔離膜における多孔質膜の無機層は、この技術分野で知られている方法で塗布することができるが、特に制限されない。例えば、ロール塗布法、ドクター塗布法、ディップ塗布法、ローラー塗布法、回転塗布法、スリット塗布法などの本技術分野で一般的に用いられる塗布方法を使用してよい。
【0056】
本発明の別の実施形態において、高熱安定性隔離膜の製造方法を開示し、以下のステップを含む:多孔質基材及び無機層を含む多孔質膜を提供し、無機層は、複数の無機粒子及び接着剤を含み、無機層は、多孔質基材の少なくとも一方の表面に形成され、多孔質基材及び無機層は、互いに連通する複数の多孔質構造を有し;多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁上に、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を形成する。本発明に係る高熱安定性隔離膜におけるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜は、例えば、化学溶液堆積法などを用いて、多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁上に形成することができる。その他の薄膜形成方法、例えば、化学蒸着法、原子層堆積法なども本発明に適用することができるが、これらに限定されない。
【0057】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法の実施形態において、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁上に形成するステップは以下を含み、0.25wt%~3wt%のチタンアルコキシド溶液を含む第1前駆体溶液と、30wt%~70wt%のアルコール水溶液である第1反応溶液と、を含む第1化学堆積溶液群を調製し;第1前駆体溶液及び第1反応溶液を多孔質膜に順次塗布し、第1前駆体溶液と第1反応溶液とを反応させて、多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成される。
【0058】
本発明に係る製造方法における第1前駆体溶液のチタンアルコキシドは、メタノールチタン、エタノールチタン、チタンイソプロパノール、及びチタン(IV)t-ブトキシド又はそれらの組み合わせであり、好ましくはチタンイソプロパノールである。チタンアルコキシド溶液の溶媒は、メタノール、エタノール又はイソプロパノール又はそれらの組み合わせである。本発明の好ましい実施形態における第1前駆体溶液は、0.25重量%(wt%)~2.5重量%のチタンアルコキシド溶液である。
【0059】
本発明に係る製造方法における第1反応溶液はアルコール水溶液である。好適なアルコール類は、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エトキシエタノール、アリルアルコール、エチレングリコール、又はそれらの組み合わせであってよい。本発明の好ましい実施形態における第1反応溶液は、好ましくは40~60wt%のアルコール水溶液である。本発明の好ましい実施形態における第1反応溶液は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール、又はそれらの組み合わせの水溶液である。
【0060】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第1前駆体溶液は、チタン酸化物又は/およびチタン水酸化物を安定化するための安定剤をさらに含む。安定剤は、第1前駆体溶液中での使用量が0.5wt%~7wt%、特に1wt%~5wt%であることが好ましい。好適な安定剤は、ヘキサメチルジシラザンであってよい。
【0061】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法における第1反応溶液は、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物と多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁との接着性を強化するための粘着付与剤をさらに含む。第1反応溶液における粘着付与剤の使用量は、0.05wt%~5wt%、好ましくは0.05wt%~3wt%である。好適な粘着付与剤は、例えば、ポリ(メタ)アクリレート樹脂、架橋性(メタ)アクリル樹脂、ポリ―N―ビニルアセトアミド、アクリロニトリル―アクリレート共重合体、アクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体、又はそれらの組み合わせであってよいが、これらに限定されない。
【0062】
本発明に係る製造方法において、第1化学堆積溶液群を多孔質膜に塗布する塗布方法は、溶液浴法又はスプレー法であってよい。
【0063】
本発明に係る製造方法の別の実施形態において、第1化学堆積溶液群を調製した後、0.25wt%~3wt%のチタンアルコキシド溶液を含む第2前駆体溶液と、30~70wt%のアルコール水溶液である第2反応溶液と、を含む第2化学堆積溶液群をさらに調製する。多孔質膜には、第1前駆体溶液及び第1反応溶液を塗布した後、第2前駆体溶液と第2反応溶液を順次塗布する。
【0064】
本発明に係る製造方法における第2前駆体溶液は、チタンアルコキシド溶液に用いられるチタンアルコキシドである。種類又は濃度は、第1前駆体溶液のチタンアルコキシド溶液と同じであっても異なっていてもよい。第2前駆体溶液のチタンアルコキシドは、メタノールチタン、エタノールチタン、チタンイソプロパノール、及びチタン(IV)t-ブトキシド又はそれらの組み合わせである。使用される溶媒は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール、又はそれらの組み合わせである。本発明の好ましい実施形態における第2前駆体溶液は、0.25重量%(wt%)~2.5重量%のチタンアルコキシド溶液である。
【0065】
本発明に係る製造方法の他の好ましい実施形態において、第2反応溶液に使用されるアルコールの種類又は濃度は、第1反応溶液と同じであっても異なっていてもよい。アルコールは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エトキシエタノール、アリルアルコール、エチレングリコール、又はそれらの組み合わせである。本発明の好ましい実施形態における第2反応溶液は、好ましくは40~60wt%のアルコール水溶液である。本発明の好ましい実施形態における第2反応溶液は、メタノール、エタノール、又はイソプロパノール、又はそれらの組み合わせの水溶液である。
【0066】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法の他の好ましい実施形態において、第2前駆体溶液はさらに安定剤を含んでよい。本発明において好適な安定剤は、ヘキサメチルジシラザンである。安定剤は、第1前駆体溶液と第2前駆体溶液での使用量が同じであっても異なっていてもよく、好ましくは0.5wt%~7wt%、特に1wt%~5wt%の間が好ましい。
【0067】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法の他の好ましい実施形態における第2反応溶液はさらに粘着付与剤を含んでよい。本発明における好適な粘着付与剤は、ポリ(メタ)アクリレート、架橋性の(メタ)アクリル樹脂、ポリ―N―ビニルアセトアミド、アクリロニトリル―アクリレート共重合体、アクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体、又はそれらの組み合わせである。本発明に係る製造方法の好ましい実施形態における粘着付与剤は、第1反応溶液又は第2反応溶液での使用量が同じであっても異なっていてもよい。本発明に係る製造方法の好ましい実施形態における粘着付与剤は、第2反応溶液での使用量が0.05wt%~5wt%、好ましくは0.05~3wt%である。
【0068】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法の他の好ましい実施形態における第2反応溶液は金属塩類をさらに含んでよい。好適な金属塩類は、臭化ナトリウム、ヨウ化カリウム、塩化マグネシウム、塩化ストロンチウム、塩化カルシウム、臭化ストロンチウム、塩化銅、又はそれらの組み合わせである。本発明に係る製造方法の好ましい実施形態における金属塩類は、第2反応溶液での使用量が5wt%~20wt%である。
【0069】
本発明に係る製造方法における第1反応溶液又は第2反応溶液は、需要に応じて、静電気防止剤、難燃剤、酸化防止剤、又は表面改質剤などの添加剤をさらに含んでよい。
【0070】
本発明に係る製造方法において、第2化学堆積溶液群を多孔質膜に塗布する塗布方法は、溶液浴法又はスプレー法であってよい。
【0071】
本発明のさらに別の実施形態における高熱安定性隔離膜の製造方法は以下のステップを含む:複数の多孔質構造を有する多孔質膜を提供し、多孔質膜の表面及び多孔質構造上にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を有し;チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物―酸化ケイ素薄膜を多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁上に形成する。
【0072】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法におけるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物―酸化ケイ素薄膜は、例えば化学溶液堆積法を用いて多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁に形成することができるが、これらに限定されない。他の薄膜形成方法、例えば、化学蒸着法、原子層堆積法なども本発明に適用できるが、これらに限定されない。
【0073】
本発明の別の実施形態において、チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物―酸化ケイ素薄膜を、化学溶液堆積法を用いて多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁上に形成するステップは、次を含む:複数の多孔質構造を有する多孔質膜を提供し、多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造上に第1チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を有し;1wt%~10wt%のアルコキシシラン溶液と、90wt%~99.5wt%のアルコール水溶液である第3反応溶液と、を含む第3化学堆積溶液群を調製し;アルコキシシラン溶液を多孔質膜に塗布した後、第3反応溶液を多孔質膜に塗布し、アルコキシシラン溶液と第3反応溶液とを反応させて、第2チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物―酸化ケイ素薄膜を多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁上に形成する。
【0074】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法におけるアルコキシシラン溶液はテトラエトキシシランである。アルコキシシラン溶液中の溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はそれらの組み合わせである。
【0075】
本発明に係る高熱安定性隔離膜の製造方法におけるアルコキシシラン溶液は更に触媒を含み、好ましくはアンモニア水である。好ましい実施形態における触媒の使用量は、溶媒100重量部当たり5重量部~15重量部を添加する。
【0076】
本発明に係る製造方法において、第3化学堆積溶液群を多孔質膜に塗布する塗布方法は、溶液浴法又はスプレー法であってよい。
【0077】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するためのものであるが、本発明の内容はこれに限定されるものではない。
【0078】
実施例
【0079】
調製実施例:無機粒子塗布液の調製
【0080】
酸化アルミニウム38g(CQ-030EN、中国の山東国磁器機能材料株式有限公司から購入)、分散剤0.68g(BYK-154、ドイツのBYK会社から購入)及び脱イオン水52.9gを混合して均一に攪拌する。次いで、ポリアクリレート3.4g及びポリエーテル改質シリコーン界面活性剤0.13g(BYK-349、ドイツのBYK社から購入)を加えて混合して均一に攪拌し、無機粒子塗布液を得る。
【0081】
無機粒子塗布液を厚さ9μmのポリエチレン多孔質基材(空隙率48%)に塗布して乾燥させて、多孔質基材の片面に厚さ2μmの無機層を形成する。単コーティング多孔質膜の総厚は11μmである。あるいは、多孔質基材の両側面にそれぞれ厚さが2μmの無機層を形成した二重コーティング多孔質膜の総厚さは13μmである。
【0082】
実施例1:隔離膜の作製
【0083】
99.5%の無水エタノール196gにチタンイソプロパノール(TTIP)4gを加え、常温で均一に攪拌して第1前駆体溶液を得る。脱イオン水100g及びエタノール95%の100gを均一に混合して攪拌し、第1反応溶液を得る。
【0084】
99.5%の無水エタノール198gにチタンイソプロパノール2gを加え、常温で攪拌して第2前駆体溶液を得る。脱イオン水100g及び95%のエタノールを均一に混合して常温で攪拌し、第2反応溶液を得る。
【0085】
調製実施例で得られた二重コーティング多孔質膜を第1前駆体溶液に浸漬し、取り出した後、表面の余分な液体を除去し、続いて第1反応溶液に浸漬し、取り出した後、表面の余分な液体を除去し、80℃で5分間乾燥させ、続いて第2前駆体溶液に浸漬し、取り出した後、表面の余分な液体を除去し、さらに第2反応溶液に浸漬し、取り出した後、表面の余分な液体を除去し、80℃で5分間乾燥させる。よって、多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁上にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成されて、高熱安定性隔離膜を得る。
【0086】
得られた高熱安定性隔離膜を後述する試験方法で試験し、試験結果を表1に示す。
【0087】
厚さ試験:GB/T6672-2001の試験基準に従って、膜厚計(VL-50-B、日本のミツトヨから購入)を用いて試験を行う。直径3mm、下圧プローブ荷重0.01Nの平面プローブを用いて試験を行う。
【0088】
通気度(Gurley)試験:ASTMD-726規格に従って、試験すべき隔離膜を1平方インチの大きさに切断し、Gurley通気計を用いて必要な時間で100c.c.空気を試験すべき隔離膜に通して、通気度を得る。
【0089】
熱収縮試験:10×10cmの試料を作成し、測定前に試料の中心位置にそれぞれ縦方向(MD)及び横方向(TD)の初期長さM0及びT0をマーキングし、マーキング後、試料を2枚のA4用紙に挟んでオーブンに入れ、150℃で1時間加熱し、加熱終了後、試料を測定器と同じ環境下で30分間放置し、試料の中心位置の縦方向(MD)長さM1及び横方向(TD)長さT1を測定する。
縦方向(MD)熱収縮率(SMD)=(M0-M1)/M0×100%
横方向(TD)熱収縮率(STD)=(T0-T1)/T0×100%
【0090】
機械的強度試験:ASTM D882-09規格に従って、試験すべき隔離膜をそれぞれ縦方向(MD)と横方向(TD)に幅10mm、長さ≧150mmの大きさに切断し、万能引張機を用いて500mm/minの速度で延伸を行い、試料の破断時の最大荷重値を取得した後、これを隔離膜の断面積(試料の幅×基材の厚さ)で割って、隔離膜の縦方向(MD)及び横方向(TD)の引張強度をそれぞれ算出する。
【0091】
耐穿刺性(gf):張力機(MSG-5、日本のカトーテック株式会社から購入)で穿刺強度を測定し、針径1mm、R角0.5mmの丸頭ステンレス鋼針を使用して測定速度100±10mm/minで測定すべき試料を穿刺し、測定すべき隔離膜を穿刺するために必要な最大の力(gf)を記録する。
【0092】
吸液速度試験:試験すべき隔離膜を80mm×10mmの大きさで切断し、密閉空間内で試料を垂直懸垂浸潤溶媒(プロピレンカーボネート(PC)、ジエチルカーボネート(DEC)を重量比1:1の割合で混合)に浸漬し、試料に開始液面高度を標記し、1分後に開始液面高度を起点として隔離膜の毛細管吸液の高さ(mm)を記録する。
【0093】
接触角測定:接触角測定器(Phoenix150、台湾の精志科技から購入)で接触角を測定し、針径2mmの注射針筒を用いてプロピレンカーボネート(PC、純度99%)を吸い込んで測定器に設置し、隔離膜の測定対象試料を試料載置台に固定し、注射針筒から体積液を押し出して測定対象試料に滴下し、光学系CCDで測定して、コンピュータソフトウェアでその接触角を算出する。
【0094】
クラックテスト:3cm×20cm隔離膜試料を作成し、200℃オーブン内に1時間置き、取り出した後、目視でクラックがあるかどうかを観察する。「X」はクラック有り;「△」は隔離膜収縮により判断不能;「・」はクラック無しである。
【0095】
溶融完全性:長さ8mm、幅4.5mの隔離膜試料を作成し、熱機械分析器(TMA 450、米国のTA機器会社から購入)の試料槽に入れ、0.01Nの荷重で昇温速度5°C/minで200°Cまで昇温し、試験終了後に破膜温度を記録する。ここで、0.01Nの固定荷重下で、隔離膜が温度の上昇に伴って受熱限界に達し、形変量が最大値に達したときに破断と判定する。破断温度点は破膜温度と定義される。
【0096】
圧縮抵抗性:50枚の4cm×4cm隔離膜を取得して、積み重ねて試料に作成し、前述のように初期厚さ(T1)を測定し、治具に入れ、88Kgf/cmの荷重を加え、30秒間保持圧をかけると停止し、終了後の試料の圧縮厚さ(T2)を測定する。
試料圧縮率(%)=(T1-T2)/T1×100;
圧縮抵抗性=100%―試料圧縮率%
【0097】
圧縮後の通気度:上記の通気性測定方法に従って通気度(G1)を測定し、続いて上記の圧縮抵抗性の測定方法を用いて試料を圧縮し、上記の通気性を測定する試験方法に従って通気度(G2)を測定する。G2は圧縮後の通気度である。
圧縮後の通気度低下率(%)=(1-G1/G2)×100%。
【0098】
実施例2:隔離膜の作製
【0099】
99.5%の無水エタノール198.4gにチタンイソプロパノール1.6gを加え、常温で均一に攪拌して第1前駆体溶液を得る。脱イオン水98.4g及び95%のエタノール98.4gを均一に混合し、ポリ―N―ビニルアセトアミド(PNVA GE191―107、日本の昭和電工株式会社から購入)3gを添加し、常温で均一に攪拌し、さらにアクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体(BM―950B、日本ゼオン株式会社製から購入)0.13gを加え、常温で攪拌して、第1反応溶液を得る。
【0100】
作製実施例で作製した二重コーティング多孔質膜を第1前駆体溶液に浸漬し、取り出した後、表面の余分な液体を除去し、続いて第1反応溶液に浸漬し、取り出した後、表面の余分な液体を除去し、80℃で5分間乾燥させて、チタン酸化物又は/およびチタン水酸化物薄膜が多孔質膜の表面および多孔質構造の内壁に形成されて、高熱安定性隔離膜を得る。
【0101】
得られた高熱安定性隔離膜を、実施例1で説明した試験方法で試験して、試験結果を表1に示す。
【0102】
実施例3:隔離膜の作製
【0103】
実施例1に従って、第1前駆体溶液、第1反応溶液及び第2前駆体溶液を調製する。第2反応溶液の調製は、脱イオン水98.4g、95%エタノール98.4g、ポリ―N―ビニルアセトアミド(PNVA GE191―107)3g及びアクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体(BM―950B)0.13gを均一に混合し、常温で攪拌して第2反応溶液を得る。
【0104】
作製実施例で作製した二重コーティング多孔質膜を本実施例3の第1前駆体溶液、第1反応溶液、第2前駆体溶液、第2反応溶液に順次浸漬し、多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成されて、高熱安定性隔離膜を得る。
【0105】
得られた高熱安定性隔離膜を、実施例1で説明した試験方法で試験して、試験結果を表1に示す。
【0106】
実施例4:隔離膜の作製
【0107】
実施例1に従って、第1前駆体溶液、第1反応溶液及び第2前駆体溶液を調製する。第二反応溶液の調製は、脱イオン水98.3g、95%のエタノール98.3g及びポリ-N-ビニルアセトアミド(PNVA GE191-103、日本の昭和電工株式会社から購入)3gを均一に混合し、続いてポリアクリル酸(PAA)(CYJ-01 Binder A、固形分48%、中国の珠海辰玉新材料株式有限公司から購入)0.417gを加えて常温で攪拌し、続いてエポキシ樹脂(CYJ-01 Binder B、固形分100%、中国の珠海辰玉新材料株式会社から購入)0.042gを加えて常温で攪拌して、第2反応溶液を得る。
【0108】
作製実施例で作製した二重コーティング多孔質膜を本実施例4の第一前駆体溶液、第一反応溶液、第二前駆体溶液、第二反応溶液に順次浸漬し、多孔質膜の表面及び多孔質構造の内壁にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成されて、高熱安定性隔離膜を得る。
【0109】
得られた高熱安定性隔離膜を、実施例1で説明した試験方法で試験して、試験結果を表1に示す。
【0110】
実施例5:隔離膜の作製
【0111】
99.5%の無水エタノール196.4gにチタンイソプロパノール1.6gとヘキサメチルジシラザン2gを加えて均一に混合し、常温で攪拌して第1前駆体反応溶液を得る。脱イオン水98.4gと95%のエタノール98.4gを均一に混合し、ポリ―N―ビニルアセトアミド(PNVA GE191―107)3gを加えて常温で均一に攪拌し、続いてアクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体(BM―950B)0.13gを加えて常温で攪拌して、第1反応溶液を得る。
【0112】
作製実施例で作製した二重コーティング多孔質膜を本実施例5の第1前駆体溶液、第1反応溶液に順次浸漬し、多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁上にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成されて、高熱安定性隔離膜を得る。
【0113】
得られた高熱安定性隔離膜を、実施例1で説明した試験方法で試験して、試験結果を表1に示す。
【0114】
実施例6:隔離膜の作製
【0115】
99.5%の無水エタノール194gにチタンイソプロパノール4gとヘキサメチルジシラザン2gを加えて均一に混合し、常温で攪拌して第1前駆体反応溶液を得る。脱イオン水100g及び95%エタノール100gを均一に混合し、攪拌して第1反応溶液を得る。
【0116】
99.5%の無水エタノール196gにチタンイソプロパノール2gとヘキサメチルジシラザン2gを加えて均一に混合し、常温で攪拌して第2前駆体反応溶液を得る。脱イオン水98.4gと95%のエタノール98.4gを均一に混合し、ポリ―N―ビニルアセトアミド(PNVA GE191―107)3gを加えて常温で均一に攪拌し、続いてアクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体(BM―950B)0.13gを加えて常温で攪拌して、第2反応溶液を得る。
【0117】
作製実施例で作製した二重コーティング多孔質膜を本実施例6の第一前駆体溶液、第一反応溶液、第二前駆体溶液、第二反応溶液に順次浸漬し、多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成されて、高熱安定性隔離膜を得る。
【0118】
得られた高熱安定性隔離膜を、実施例1で説明した試験方法で試験して、試験結果を表1に示す。
【0119】
実施例7:隔離膜の作製
【0120】
99.5%の無水エタノール189gにチタンイソプロパノール1gとヘキサメチルジシラザン10gを加えて均一に混合し、常温で攪拌して第1前駆体反応溶液を得る。脱イオン水100g及び95%のエタノール100gを均一に混合し、攪拌して第1反応溶液を得る。
【0121】
99.5%の無水エタノール189gにチタンイソプロパノール1gとヘキサメチルジシラザン10gを加えて均一に混合し、常温で攪拌して第2前駆体反応溶液を得る。脱イオン水98.4g及び95%のエタノール98.4gを均一に混合し、ポリ―N―ビニルアセトアミド(PNVA GE191―107)3gを加えて常温で均一に攪拌し、続いてアクリロニトリル―アクリルアミド―アクリレート共重合体(BM―950B)0.13gを加えて常温で攪拌して、第2反応溶液を得る。
【0122】
作製実施例で作製した二重コーティング多孔質膜を本実施例7の第一前駆体溶液、第一反応溶液、第二前駆体溶液、第二反応溶液に順次浸漬して、多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成されて、高熱安定性隔離膜を得る。
【0123】
得られた高熱安定性隔離膜を、実施例1で説明した試験方法で試験して、試験結果を表1に示す。
【0124】
実施例8:隔離膜の作製
【0125】
実施例1に従って第1前駆体溶液、第1反応溶液及び第2前駆体溶液を調製する。第2反応溶液の調製は、脱イオン水90g、95%のエタノール90g及び塩化ストロンチウム(SrCl・6HO、米国のThermo Scientific Co.LLCから購入)20gを常温で攪拌して第2反応溶液を得る。
【0126】
作製実施例で作製した二重コーティング多孔質膜を本実施例8の第一前駆体溶液、第一反応溶液、第二前駆体溶液、第二反応溶液に順次浸漬して、多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成されて、高熱安定性隔離膜を得る。
【0127】
得られた高熱安定性隔離膜を、実施例1で説明した試験方法で試験して、試験結果を表1に示す。
【0128】
実施例9:隔離膜の作製
【0129】
実施例3に従って、第1前駆体溶液、第1反応溶液、第2前駆体溶液及び第2反応溶液を調製する。
【0130】
さらに、テトラエトキシシラン(TEOS、米国のThermo Scientific社から購入)16.25gを95%のエタノール500gに添加し、50℃で均一に攪拌し、続いてアンモニア水55gを添加し、50℃で15分間攪拌してアルコキシシラン溶液を得る。95%濃度のエタノール200gを第3反応溶液とする。
【0131】
作製実施例で作製した二重コーティング多孔質膜を実施例1の手順に従って本実施例9の第1前駆体溶液、第1反応溶液、第2前駆体溶液、第2反応溶液に順次浸漬して、多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁に第1チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成され、続いてアルコキシシラン溶液及び第3反応溶液に順次浸漬し、アルコキシシラン溶液と第3反応溶液とを反応させて、第2チタン酸化物又は/及びチタン水酸化物―酸化ケイ素薄膜が形成されて、高熱安定性隔離膜を得る。
【0132】
得られた高熱安定性隔離膜を、実施例1で説明した試験方法で試験して、試験結果を表1に示す。
【0133】
実施例10:隔離膜の作製
【0134】
実施例3に従って、第1前駆体溶液、第1反応溶液、第2前駆体溶液及び第2反応溶液を調製する。
【0135】
作製実施例で作製した単コーティング多孔質膜を本実施例10の第1前駆体溶液、第1反応溶液、第2前駆体溶液及び第2反応溶液に順次浸漬し、多孔質膜の表面及び多孔質膜の多孔質構造の内壁にチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜が形成されて、高熱安定性隔離膜を得る。
【0136】
得られた高熱安定性隔離膜を、実施例1で説明した試験方法で試験して、試験結果を表1に示す。
【0137】
比較例1及び2
【0138】
比較例1及び2は、それぞれ作製実施例で作製された二重コーティング多孔質膜及び単コーティング多孔質膜である。比較例では、使用した多孔質膜は、前駆体溶液及び反応溶液による処理を受けずに、実施例1で説明した試験方法に従って試験を行い、試験結果を表1に示す。
[表1]
実施例1~9及び比較例1~2における隔離膜の特性測定結果
実施例1~9及び比較例1~2における隔離膜の特性測定結果(続き)
【0139】
表1に示す特性表現から分かるように、比較例1~2におけるチタン酸化物又は/及びチタン水酸化物薄膜を含まない隔離膜と比べて、本発明の実施例1~9に係る高熱安定性隔離膜は、圧縮後の圧縮抵抗性が90%より大きく、通気度の低下が34.5%未満であり、破膜温度が170°Cより大きいので、クラックテスト時の表面に高温によるクラックが発生せず、熱収縮率が低いので、高温での溶融完全性と強化された耐圧収縮性を備える。これとともに、電解液に対する濡れ性が比較的に良いので、電池応用上の電気性表現が向上することもできる。
【0140】
本発明は実施形態で上述したように開示されているが、本発明を限定するために使用されるものではない。この技術に精通しているいかなる者も、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、種々の変更及び修正を行うことができる。そのため、本発明の保護範囲は、後に添付する特許請求の範囲に係るものに準じる。
【外国語明細書】