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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098491
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】回転ノズル付き巻線装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/095 20060101AFI20240716BHJP
   H01F 41/064 20160101ALI20240716BHJP
【FI】
H02K15/095
H01F41/064
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023200026
(22)【出願日】2023-11-27
(31)【優先権主張番号】202310031391.2
(32)【優先日】2023-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】502330713
【氏名又は名称】台達電子工業股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】DELTA ELECTRONICS, INC.
【住所又は居所原語表記】No.252,ShanYing Rd.,Guishan Dist.,Taoyuan City 333,Taiwan
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】彭博文
(72)【発明者】
【氏名】簡宇祥
(72)【発明者】
【氏名】郭修銘
(72)【発明者】
【氏名】紀博文
【テーマコード(参考)】
5E002
5H615
【Fターム(参考)】
5E002AB02
5E002AB04
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB07
5H615BB14
5H615BB16
5H615PP13
5H615QQ02
5H615QQ19
5H615SS10
5H615SS11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ノズルが巻線中に破損したり、ダウンタイムや障害を引き起こしたりすることを回避することができる、回転ノズル付き巻線装置を提供する。
【解決手段】複数の電極91と複数のスロット92を有するコア90に線材8を巻き付けるための巻線装置1を提供する。複数の電極のうち、巻線対象になる電極91aは、互いに反対側に配置された2つの頂端と、頂端を通過する中央軸線とを備える。巻線装置はノズル10と回転モジュールを備え、ノズルは中心軸、半長軸及び半短軸を有し、半長軸の長さは半短軸の長さよりも大きく、回転モジュールはノズルに接続される。ノズルが巻線対象になる電極に対して巻線経路に沿って移動し、かつ巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つのスロットの外に位置するとき、回転モジュールは、中心軸を中心としてノズルを回転させ、半長軸は中央軸線と平行にならないようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極と各電極間に形成されるスロットを有するコアに線材を巻き付けるための巻線装置であって、
中心軸、半長軸、及び前記半長軸の長さより短い半短軸を有し、巻線対象になる電極に巻線経路に沿って移動するノズルと、
前記ノズルに接続する回転モジュールと、
を備え、
前記ノズルが前記スロットの外に移動している際に、前記回転モジュールは、前記中心軸を中心として前記ノズルを回転させ、前記半長軸が前記巻線対象になる電極の両端を通過する中央軸線と平行にならないようにする、巻線装置。
【請求項2】
前記線材は、前記ノズルの先端部を通過するときに前記半長軸の方向に沿って繰り出される、請求項1に記載の巻線装置。
【請求項3】
各前記スロットの幅は、前記ノズルの前記半短軸の長さの2倍よりも大きい、請求項1に記載の巻線装置。
【請求項4】
前記巻線経路は、前記巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つの前記スロットの外に位置する円弧経路を含み、前記ノズルが前記円弧経路に沿って移動するとき、前記回転モジュールは、前記中心軸を中心として前記ノズルを回転させ、前記半長軸は前記中央軸線に平行にならない状態にする、請求項1に記載の巻線装置。
【請求項5】
前記ノズルは前記円弧経路に沿って移動し、前記円弧経路は、始点から中点を経て終点までを含み、前記始点と前記終点は、それぞれ前記巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つの前記スロットの中心線の同じ水平高さを有する頂端に位置し、前記中点は、前記中央軸線上に位置し、前記始点及び前記終点にオフセット距離を有する、請求項4に記載の巻線装置。
【請求項6】
前記ノズルが前記始点にあるとき、前記半長軸は前記中央軸線に平行であり、前記ノズルが前記終点にあるとき、前記半長軸は一定の回転角度で回転される、請求項5に記載の巻線装置。
【請求項7】
前記ノズルは、前記中央軸線を通過するとき、前記回転角度の半分で回転され、前記頂端の高さとの間に安全隙間があり、前記オフセット距離=前記半長軸の長さ×cos(前記回転角度/2)+前記安全隙間である、請求項6に記載の巻線装置。
【請求項8】
前記巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つの前記スロットの中心線間に中心距離があり、前記オフセット距離=[前記中心距離×tan(前記回転角度-90°)]/2である、請求項6に記載の巻線装置。
【請求項9】
前記巻線経路は、前記巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つの前記スロット内に位置する2つの直線経路を含み、前記ノズルが前記直線経路に沿って移動するとき、前記ノズルの前記半長軸は前記中央軸線に平行であり、前記回転モジュールは前記ノズルを回転させない、請求項1に記載の巻線装置。
【請求項10】
複数の電極と各電極間に形成されるスロットを有するコアに線材を巻き付けるための巻線装置であって、
先端部、半長軸、及び前記半長軸の長さより短い半短軸を有するノズルと、
前記ノズルに接続する回転モジュールと、
を備え、
前記巻線装置が巻線対象になる電極に対して移動する際に、前記回転モジュールは前記中心軸を中心として前記ノズルを選択的に回転させ、前記線材は前記先端部を通って前記半長軸に沿って繰り出され、
前記巻線対象になる電極は中央軸線を備え、前記中央軸線は前記巻線対象になる電極を通通過する、巻線装置。
【請求項11】
前記ノズルは前記巻線対象になる電極に対して巻線経路に沿って移動し、前記巻線経路は2つの直線経路と2つの円弧経路を含み、前記直線経路と前記円弧経路は交互に接続され、前記2つの直線経路は、空間的にそれぞれ前記巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つのスロットと対応しており、前記2つの円弧経路は、空間的にそれぞれ前記巻線対象になる電極の上、下方に位置する、請求項10に記載の巻線装置。
【請求項12】
前記ノズルが前記直線経路に沿って移動して対応する2つの前記スロットを通過するとき、前記ノズルの前記半長軸は前記中央軸線に平行であり、前記回転モジュールは前記ノズルを回転させない、請求項11に記載の巻線装置。
【請求項13】
前記ノズルが前記円弧経路に沿って移動し、かつ前記巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つのスロットの外に位置するとき、前記回転モジュールは、前記中心軸を中心として前記ノズルを回転させ、前記半長軸は前記中央軸線と平行にならないようにする、請求項11に記載の巻線装置。
【請求項14】
前記回転モジュールは、モータと、伝達ベルトと、回転部とを備え、前記ノズルは前記回転部に挿設され、前記回転部は前記伝達ベルトを介して前記モータに接続され、前記モータが前記伝達ベルトを駆動して前記回転部を回転させるとき、前記ノズルは前記中心軸を中心に自転する、請求項10に記載の巻線装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル付き巻線装置に関し、特に、ノズルが経路走行時に適切に角度を切り替えて、ノズルが巻線中に破損したり、ダウンタイムや障害を引き起こしたりすることを回避することができる、回転ノズル付き巻線装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、電気機械製品は、性能要求に応じて、製品設計がますます精密になり、既存の設計の電極スペースに、より高密度の線材を配置して単位電力を向上させることを目標としているが、このような要求の下では、通常、巻線手法として引っ掛け方式が使用されている。
【0003】
引っ掛け方式では、電極外形寸法に合わせてノズルを移動させ、できるだけ電極に近づけることで、線材の配置時に高低差による不安定現象を軽減する。
【0004】
ノズルの構造的な剛性を維持しながら、ノズルが狭いスロットをスムーズに通過できるようにするために、ノズルは通常、楕円形で長辺と短辺を備えるように設計されており、ノズルの短辺はスロットを効果的に通過し、ノズルの長辺はノズルの強度と寿命を向上させることができる。しかし、ノズルが水平移動して巻線する過程で、線材はノズルの左右側(すなわち、短辺)から繰り出しなければならず、左右側の短辺はスロットのスペースによって制限され、設計の厚さが薄く、曲率半径も小さいため、高張力巻線で長時間使用されると、ノズルの破損や線材のエナメル被覆層の損傷が起こりやすい。
【0005】
そこで、従来技術の不足を解決するために、ノズルと回転機構を組み合わせることで、ノズルが経路走行時に適切に角度を切り替え、ノズルが巻線中に破損したり、ダウンタイムや障害を引き起こしたりすることを回避することができる、回転ノズル付き巻線装置を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ノズルと回転機構を組み合わせることで、ノズルが経路走行時に適切に角度を切り替え、ノズルが巻線中に破損したり、ダウンタイムや障害を引き起こしたりすることを回避することができる、回転ノズル付き巻線装置を提供することである。
【0007】
本発明の別の目的は、回転ノズル付き巻線装置を提供することである。巻線装置のノズルが巻線経路に沿って移動して線材を巻線対象になる電極に巻き付けるとき、ノズルは回転モジュールと組み合わせてノズルを選択的に自転させる。ノズルがスロット外で円弧経路に沿って前進すると、回転モジュールはノズルを自転駆動することができ、それによって、ノズルの半長軸は巻線対象になる電極の中央軸線に平行ではなく、線材はノズル内の先端部を通って半長軸に沿って繰り出され、ノズルの半短軸の使用を効果的に減らし、ノズルが安定して線材の繰り出す方向に向くように維持し、線材の繰り出す方向の違いによる張力変動の問題を低減し、さらに巻線品質を安定させる。一方、ノズルがスロット内を直線経路に沿って前進するとき、回転モジュールはノズルを自転駆動せず、ノズルの半長軸は巻線対象になる電極の中央軸線に平行であるため、線材はノズル内の先端部を通って半長軸に沿って繰り出され、ノズルの半短軸に沿って繰り出されるのを回避することができる。これにより、本発明の回転ノズル付き巻線装置は、ノズルの半短軸の使用を減らし、ノズルの構造設計を再計画するのに役立つ。十分な剛性を維持する条件下で、ノズルの半長軸をさらに小さくすることができ、さらに、ノズルと巻き付けられた線材との接触の問題を低減するとともに、プロセスの最適化の余地を広げる。一方、ノズルが水平移動している場合、ノズルを水平状態で移動するように回転させて、垂直方向の走行距離を短縮することができ、プロセス時間を短縮するだけでなく、線材の落下距離を短縮して配線の乱れを低減することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、複数の電極と各電極間に形成されるスロットを有するコアに線材を巻き付けるための巻線装置であって、中心軸、半長軸、及び半長軸の長さより短い半短軸を有し、巻線対象になる電極に巻線経路に沿って移動するノズルと、ノズルに接続する回転モジュールと、を備え、ノズルがスロットの外に移動している際に、回転モジュールは、中心軸を中心としてノズルを回転させ、半長軸が巻線対象になる電極の両端を通過する中央軸線と平行にならないようにする、巻線装置を提供する。
【0009】
一実施形態では、線材は、ノズルの先端部を通過するときに半長軸に沿って繰り出される。
【0010】
一実施形態では、各スロットの幅は、ノズルの半短軸の長さの2倍よりも大きい。
【0011】
一実施形態では、巻線経路は、巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つのスロットの外に位置する円弧経路を含み、ノズルが円弧経路に沿って移動するとき、回転モジュールは中心軸を中心としてノズルを回転させ、半長軸は中央軸線に平行にならない状態にする。
【0012】
一実施形態では、ノズルは前記円弧経路に沿って移動し、円弧経路は、始点から中点を経て終点までを含み、始点と終点は、それぞれ巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つのスロットの中心線の同じ水平高さを有する頂端に位置し、中点は、中央軸線上に位置し、始点及び終点に対応する頂端に対してオフセット距離を有する。
【0013】
一実施形態では、ノズルが始点にあるとき、半長軸は中央軸線に平行であり、ノズルが終点にあるとき、半長軸は一定の回転角度で回転される。
【0014】
一実施形態では、ノズルは、中央軸線を通過するとき、回転角度の半分で回転され、ノズルと対応する頂端の高さとの間に安全隙間があり、オフセット距離S=半長軸の長さ×cos(回転角度/2)+安全隙間である。
【0015】
一実施形態では、巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つのスロットの中心線間に中心距離があり、オフセット距離=[中心距離×tan(回転角度-90°)]/2である。
【0016】
一実施形態では、巻線経路は、それぞれ巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つのスロット内に位置する2つの直線経路を含み、ノズルが直線経路に沿って移動して対応する2つのスロットを通過するとき、ノズルの半長軸は中央軸線に平行であり、回転モジュールはノズルを回転させない。
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明はまた、複数の電極と各電極間に形成されるスロットを有するコアに線材を巻き付けるための巻線装置であって、先端部、半長軸、及び半長軸の長さより短い半短軸を有するノズルと、ノズルに接続する回転モジュールと、を備え、巻線装置が巻線対象になる電極に対して移動する際に、回転モジュールは中心軸を中心としてノズルを選択的に回転させ、線材が先端部を通って半長軸に沿って繰り出される、巻線装置を提供する。
【0018】
一実施形態では、ノズルは巻線対象になる電極に対して巻線経路に沿って移動し、巻線経路は2つの直線経路と2つの円弧経路を含み、直線経路と円弧経路は交互に接続され、2つの直線経路は、空間的にそれぞれ巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つのスロットと対応しており、2つの円弧経路は、空間的にそれぞれ巻線対象になる電極の上、下方に位置する。
【0019】
一実施形態では、ノズルが直線経路に沿って移動して対応する2つのスロットを通過するとき、ノズルの半長軸は中央軸線に平行であり、回転モジュールはノズルを回転させない。
【0020】
一実施形態では、ノズルが円弧経路に沿って移動し、かつ巻線対象になる電極の対向する両横側に対応する2つのスロットの外に位置するとき、回転モジュールは、中心軸を中心としてノズルを回転させ、半長軸は中央軸線と平行にならないようにする。
【0021】
一実施形態では、回転モジュールは、モータと、伝達ベルトと、回転部とを備え、ノズルは回転部に挿設され、回転部は伝達ベルトを介してモータに接続され、モータが伝達ベルトを駆動して回転部を回転させるとき、ノズルは中心軸を中心に自転する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の好ましい実施形態の巻線装置及びそれに対応する線材が巻き付けられる固定子構造を示す。
図2】本発明の好ましい実施形態のノズルと回転モジュールを備える巻線装置の構造を示す斜視図である。
図3】本発明の好ましい実施形態の巻線装置のノズルの巻線対象になる電極に対する巻線経路を示す概略図である。
図4】本発明の好ましい実施形態のノズルの楕円形断面を示す概略図である。
図5A】本発明の好ましい実施形態の巻線装置のノズルが巻線経路に沿って線材を巻線対象になる電極に巻き付けるプロセスを示す。
図5B】本発明の好ましい実施形態の巻線装置のノズルが巻線経路に沿って線材を巻線対象になる電極に巻き付けるプロセスを示す。
図5C】本発明の好ましい実施形態の巻線装置のノズルが巻線経路に沿って線材を巻線対象になる電極に巻き付けるプロセスを示す。
図5D】本発明の好ましい実施形態の巻線装置のノズルが巻線経路に沿って線材を巻線対象になる電極に巻き付けるプロセスを示す。
図5E】本発明の好ましい実施形態の巻線装置のノズルが巻線経路に沿って線材を巻線対象になる電極に巻き付けるプロセスを示す。
図5F】本発明の好ましい実施形態の巻線装置のノズルが巻線経路に沿って線材を巻線対象になる電極に巻き付けるプロセスを示す。
図5G】本発明の好ましい実施形態の巻線装置のノズルが巻線経路に沿って線材を巻線対象になる電極に巻き付けるプロセスを示す。
図5H】本発明の好ましい実施形態の巻線装置のノズルが巻線経路に沿って線材を巻線対象になる電極に巻き付けるプロセスを示す。
図6】本発明の好ましい実施形態のノズルの巻線経路の巻線対象になる電極に対するサイズ対応関係を示す。
図7】本発明の好ましい実施形態のノズルが円弧経路の中点にあるときの、ノズルと巻線対象になる電極の頂端とのサイズ対応関係を示す。
図8】本発明の好ましい実施形態のノズルが円弧経路の始点、中点、及び終点にあるときの、ノズルと巻線対象になる電極の頂端とのサイズ対応関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の特徴と利点を示すいくつかの典型的な実施形態について、後述の説明において詳細に記述する。本発明は異なる態様において様々な変更を加えることができ、いずれも本発明の範囲から逸脱することなく、かつその説明及び図面は本質的に説明するために用いられものであり、本発明を限定する意図はないことを理解されたい。例えば、本開示の以下の内容において、第1特徴を第2特徴の上または上方に設置することが記述される場合、設置された上記第1特徴が上記第2特徴と直接接触している実施形態を含み、追加の特徴を上記第1特徴と上記第2特徴との間に設置することで、上記第1特徴が上記第2特徴と直接接触していない実施形態も含むことを示す。さらに、本開示の異なる実施形態において、重複する参照符号及び/または記号を使用可能である。これらの重複は簡潔化と明確化の目的で、各実施形態及び/または前記外観構造間の関係を制限するために使用されるものではない。また、図面における構成要素または特徴要素と他の(複数の)構成要素または(複数の)特徴要素との関係を簡易に記述するために、例えば、「頂」、「上」、「下」、「内」、「外」、及び類似する用語などの空間関連の用語を用いることができる。図面に示される方位に加えて、空間関連の用語は、使用中または作動中の装置の異なる方位を含むために用いられる。前記装置は、別途に位置決めされ(例えば、90度回転または他の方位に位置し)てもよく、それに応じて使用される空間関連の用語の記述を解釈する。さらに、一つの構成要素が他の構成要素に「接続」または「結合」すると称する場合、他の構成要素に直接的に接続または結合することができ、または介在構成要素が存在しうる。本開示の広範な範囲の数値範囲とパラメータは近似値であるが、具体的な例においてできる限り正確に数値を記述する。さらに、「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、特許請求の範囲において異なる構成要素を記述するために用いられることができるが、これらの構成要素はこれらの用語によって限定されるべきではなく、実施形態において記述されたこれらの構成要素は異なる構成要素記号によって示されることを理解されたい。これらの用語は、異なる構成要素を区別するためのものである。例えば、第1構成要素は第2構成要素と称されることができ、同様に、第2構成要素も第1構成要素と称されることができ、実施形態の範囲から逸脱することがない。
【0024】
図1図4を参照する。本発明は、固定子9などのコア(core)90に線材8を巻き付けるための巻線装置1を提供する。本実施形態では、コア90は、複数の電極(poles)91と各電極間に形成されるスロット(slot)92とを備え、電極91とスロット92とは互いに交互に配置されている。線材8の巻き付け作業時には、巻線装置1とコア90とが相対的に移動することで、線材8は複数の電極91のうちの巻線対象になる電極91aに巻き付けられる。なお、巻線装置1とコア90との相対移動は、例えば、巻線装置1が上下左右に移動し、コア90が回転移動するものであってもよいが、本発明はこれに限定されない。本実施形態では、巻線装置1に対応する巻線対象になる電極91aは、互いに反対側に配置された2つの頂端93a、93bと、中央軸線Aとを備え、中央軸線Aは、互いに反対側に配置された2つの頂端93a、93bを通過する。巻線装置1は、少なくともノズル(nozzle)10と回転モジュール20を備える。ノズル10は、ノズル10の中心軸Cに沿ってノズル10を貫通する先端部12を備え、本実施形態では、ノズル10は楕円形断面を有し、半長軸(semi-major)a及び半短軸(semi-minor axes)bを有し、半長軸aの長さは半短軸bの長さよりも大きい。他の実施形態では、ノズル10は長尺状であってもよい。
【0025】
本実施形態では、回転モジュール20はノズル10に接続され、モータ21と、伝達ベルト22と、回転部23とを備える。ノズル10は回転部23に設置され、回転部23は伝達ベルト22を介してモータ21に接続され、モータ21が伝達ベルト22を駆動して回転部23を回転させるとき、ノズル10は中心軸Cを中心に自転する。言い換えると、巻線装置1は、巻線経路Pに沿って線材8を巻線対象になる電極91aに巻き付け、回転モジュール20はノズル10を選択的に駆動して中心軸Cを中心に、例えば時計回りの自転方向rに沿って角度を切り替えることができ、それによって、線材8がノズル10の先端部12を通って先端11から導出されるときに、線材8は半長軸aに沿って繰り出され、すなわち、線材8はノズル10の比較的厚い内壁に当接し、ノズル10の半短軸bの使用を減らす(すなわち、線材8はノズル10の比較的薄い内壁に当接しない)。これにより、ノズル10が安定して繰り出す方向に向くように維持し、線材8の繰り出す方向の違いによる張力変動の問題を低減し、さらに巻線品質を安定させる。
【0026】
図1図4及び図5A図5Hを参照する。本実施形態では、巻線装置1のノズル10(回転モジュール20を含む)は、巻線対象になる電極91aに対して巻線経路Pに沿って移動し、巻線経路Pは、2つの直線経路p2、p4と2つの円弧経路p1、p3を含み、円弧経路p1、直線経路p2、円弧経路p3、及び直線経路p4は、時計回り方向に完全な(一周)の巻線経路Pを構成する。2つの直線経路p2、p4は、空間的にそれぞれ巻線対象になる電極91aの対向する両横側に対応する2つのスロット92a、92bと対応しており、2つの円弧経路p1、p3は、空間的にそれぞれ巻線対象になる電極91aの上、下方に位置する。図5A図5Cに示すように、ノズル10が巻線対象になる電極91aに対して巻線経路P内の円弧経路p1に沿って移動し、かつ巻線対象になる電極91aの対向する両横側に対応する2つのスロット92a、92bの外(すなわち、巻線対象になる電極91aの上方)に位置するとき、巻線対象になる電極91aに対するノズル10(回転モジュール20を含む)の移動に加えて、回転モジュール20は、ノズル10を駆動して中心軸Cを中心に自転させることで、ノズル10が円弧経路p1に沿って前進するとき、半長軸aが中央軸線Aに平行でない状態を維持するとともに、ノズル10が巻線対象になる電極91aの頂端93aに衝突するのを回避する。このとき、円弧経路p1上でのノズル10による巻線プロセスでは、ノズル10の自転につれて、線材8は依然としてノズル10の比較的厚い内壁に当接している。
【0027】
さらに、図5D図5Eに示すように、ノズル10が巻線対象になる電極91aに対して巻線経路P内の直線経路p2に沿って移動し、かつ巻線対象になる電極91aの横側のスロット92bを通過するとき、ノズル10の半長軸aは中央軸線Aに平行である。このとき、回転モジュール20はノズル10を回転させない。これにより、線材8は、ノズル10内の先端部12を通って半長軸aに沿って繰り出され、線材8が先端部12を通過した後ノズル10の半短軸bに沿って繰り出されることによる損傷を回避することもできる。同様に、図5E図5Gに示すように、ノズル10が巻線対象になる電極91aに対して巻線経路P内の別の円弧経路p3に沿って移動し、かつ巻線対象になる電極91aの対向する両横側に対応する2つのスロット92a、92bの外(すなわち、巻線対象になる電極91aの下方)に位置するとき、巻線対象になる電極91aに対するノズル10(回転モジュール20を含む)の移動に加えて、回転モジュール20は、ノズル10を駆動して中心軸Cを中心に自転させることで、ノズル10が円弧経路p3に沿って前進するとき、ノズル10の自転につれて、線材8は依然としてノズル10の比較的厚い内壁に当接し、半長軸aが中央軸線Aに平行にならない状態にするとともに、ノズル10が巻線対象になる電極91aの頂端93bに衝突するのを回避する。また、図5G図5Hに示すように、ノズル10が巻線対象になる電極91aに対して巻線経路P内の別の直線経路p4に沿って移動し、かつ巻線対象になる電極91aの横側のスロット92aを通過するとき、ノズル10の半長軸aは中央軸線Aに平行である。このとき、回転モジュール20はノズル10を回転させない。線材8は、ノズル10内の先端部12を通って半長軸aに沿って繰り出され、ノズル10の半短軸bに沿って繰り出されるのを回避することもできる。
【0028】
本実施形態では、ノズル10の半短軸bは、例えば、半短軸の長さKを有し、スロット92a、92bの幅Dは、ノズル10の半短軸の長さKの2倍よりも大きい。スロット92a、92bの幅Dが小さいほど、半短軸の長さKの小さいノズル10により線材8を巻き付ける必要がある。このように、ノズル10が巻線対象になる電極91aに対して巻線経路P内の直線経路p2、p4に沿って移動するとき、ノズル10は、巻線対象になる電極91aまたは他の電極91と衝突することなく、スロット92a、92bの中央線を安定して通過することができる。本発明の巻線装置1では、上記のプロセスで線材8を巻き付けるため、ノズル10の半短軸bの使用を減らすことができ、ノズル10の構造設計を再計画するのに役立つ。十分な剛性を維持する条件下で、ノズル10の半長軸aをさらに小さくすることができ、さらに、ノズル10と巻線対象になる電極91aに巻き付けられた線材との接触の問題を低減するとともに、プロセスの最適化の余地を広げる。
【0029】
一方、ノズル10が巻線経路P内の円弧経路p1、p3に沿って前進するとき、回転モジュール20はノズル10を自転駆動し、先端部12と巻線対象になる電極91a及び頂端93a、93bとの距離を衝突することなく減少することができる。一実施形態では、ノズル10が水平移動している場合、回転モジュール20は、ノズル10を水平状態で移動するように回転させて、垂直方向の走行距離を短縮することができ、プロセス時間を短縮するだけでなく、線材の落下距離を短縮して配線の乱れを低減することができる。もちろん、本発明はこれに限定されない。
【0030】
なお、ノズル10の半短軸の長さKとスロット92a、92bの幅Dとの対応関係に加えて、ノズル10の巻線経路Pは、巻線対象になる電極91a及びスロット92a、92bのサイズ変化に応じて最適に調整することができる。図6図8に示すように、本実施形態では、ノズル10が巻線経路P内の円弧経路p1に沿って前進移動するとき、始点Bから中点Mを経て終点Eに至り、始点Bと終点Eは、それぞれ巻線対象になる電極91aの対向する両横側に対応する2つのスロット92a、92bの中心線上に位置し、対応する頂端93aと同じ水平高さを有し、中点Mは、中央軸線A上に位置し、始点B及び終点Eに対応する頂端93aに対してオフセット距離Sを持つ。本実施形態では、ノズル10が円弧経路p1の始点Bにあるとき、ノズル10の半長軸aは中央軸線Aに平行である。円弧経路p1の始点Bは直線経路p4の終点に接続され、回転モジュール20はノズル10を回転させていない。円弧経路p1の始点Bから開始して、回転モジュール20はノズル10を駆動して中心軸Cを中心に自転させる。本実施形態では、ノズル10が円弧経路p1の終点まで移動するとき、ノズル10の半長軸aは回転角度θで回転する。ノズル10が前記中央軸線Aを通過するとき、円弧経路p1の中点Mに位置する。このとき、ノズル10は回転角度θの半分、すなわち、θ/2で回転する。
【0031】
本実施形態では、ノズル10が中央軸線Aを通過するとき、円弧経路p1の中点Mに位置し、ノズル10と対応する頂端93aとの高さとの間に安全隙間Gがあり、ノズル10と頂端93aとの衝突を回避する。オフセット距離S、半長軸の長さL、回転角度θ、及び安全隙間Gの間に以下の関係式(1)がある。
オフセット距離S=半長軸の長さL*cos(回転角度θ/2)+安全隙間G (1)
【0032】
また、本実施形態では、巻線対象になる電極91aの対向する両横側に対応する2つのスロット92a、92bの中心線の間、すなわち、2つの直線経路p2、p4の間に、中心距離Wがある。始点B、終点Eは、対応する頂端93aと同じ水平高さを有し、中点Mは、始点Bと終点Eを結ぶ水平線に対して夾角αを形成する。ここで、夾角α=回転角度θ-90°である。オフセット距離S、中心距離W、及び回転角度θにも、以下の関係式(2)がある。
オフセット距離S=[中心距離W*tan(回転角度θ-90°)]/2 (2)
【0033】
関係式(1)及び関係式(2)において、中心距離W、安全隙間G、半長軸の長さLは、いずれも所定のプロセスパラメータであり、オフセット距離Sと回転角度θとの対応関係は、関係式(1)及び関係式(2)から求めることができる。これにより、ノズル10が回転モジュール20と組み合わせてノズル10を選択的に自転させると、先端部12を通過した線材8がノズル10の半短軸bに沿って繰り出されるのを回避し、ノズル10の半短軸bの使用を減らすことができる。また、ノズル10がスロット92a、92bの外で円弧経路p1、p3に沿って前進するとき、ノズル10と巻線対象になる電極91aまたは頂端93a、93bとの衝突を回避した状態で、ノズル10の先端部12を対象電極91aまたは頂端93a、93bに近接させて移動させ、ノズル10の巻線時の走行距離を短縮し、プロセス時間を短縮し、線材8の落下距離を短縮して配線の乱れを低減するなどの目的を達成することができる。
【0034】
上記のように、本発明の巻線装置1では、ノズル10と回転機構20とを組み合わせることで、ノズル10が巻線経路P内の円弧経路p1、p3上に移動するときに、選択的に自転し、適切に角度を切り替え、ノズル10が巻線中に破損したり、ダウンタイムや障害を引き起こしたりすることを回避することができる。ノズル10が巻線経路P内の直線経路p2、p4に沿って移動して対応するスロット92a、92bを通過するとき、回転モジュール20は、ノズル10のスロット92a、92bに対する角度を固定し、巻線プロセスの最適化の余地をさらに広げることができる。なお、回転モジュール20がノズル10を駆動して中心軸Cを中心に自転させる方法は、実際の応用要求に応じて調整でき、本発明はこれに限定されない。もちろん、本発明の巻線装置1は、実際の応用要求に応じて前述の技術的特徴を組み合わせて変更することができ、これに限定されない。
【0035】
上記のように、本発明は、ノズルと回転機構を組み合わせることで、ノズルが経路走行時に適切に角度を切り替え、ノズルが巻線中に破損したり、ダウンタイムや障害を引き起こしたりすることを回避することができる、回転ノズル付き巻線装置を提供する。巻線装置のノズルが巻線経路に沿って移動して線材を巻線対象になる電極に巻き付けるとき、ノズルは回転モジュールと組み合わせてノズルを選択的に自転させる。ノズルがスロット外で円弧経路に沿って前進するとき、回転モジュールはノズルを自転駆動することができ、それによって、ノズルの半長軸は巻線対象になる電極の中央軸線に平行ではなく、線材はノズル内の先端部を通って半長軸に沿って繰り出され、ノズルの半短軸の使用を効果的に減らし、ノズルが安定して線材の繰り出す方向に向くように維持し、線材の繰り出す方向の違いによる張力変動の問題を低減し、さらに巻線品質を安定させる。一方、ノズルがスロット内を直線経路に沿って前進するとき、回転モジュールはノズルを自転駆動せず、ノズルの半長軸は巻線対象になる電極の中央軸線に平行であるため、線材はノズル内の先端部を通って半長軸に沿って繰り出され、ノズルの半短軸に沿って繰り出されるのを回避することができる。これにより、本発明の回転ノズル付き巻線装置は、ノズルの半短軸の使用を減らし、ノズルの構造設計を再計画するのに役立つ。十分な剛性を維持する条件下で、ノズルの半長軸をさらに小さくすることができ、さらに、ノズルと巻き付けられた線材との接触の問題を低減するとともに、プロセスの最適化の余地を広げる。一方、ノズルが水平移動している場合、ノズルを水平状態で移動するように回転させて、垂直方向の走行距離を短縮することができ、プロセス時間を短縮するだけでなく、線材の落下距離を短縮して配線の乱れを低減することができる。
【0036】
本発明は、当業者なら様々な修正を加えることができるが、特許請求の範囲によって定義される範囲から逸脱することはない。
【符号の説明】
【0037】
1:巻線装置
10:ノズル
11:先端
12:先端部
20:回転モジュール
21:モータ
22:伝達ベルト
23:回転部
8:線材
9:固定子
90:コア
91:電極
91a:巻線対象になる電極
92、92a、92b:スロット
93a、93b:頂端
a:半長軸
b:半短軸
p1、p3:円弧経路
p2、p4:直線経路
r:自転方向
A:中央軸線
B:始点
C:中心軸
D:幅
E:終点
G:安全隙間
K:半短軸の長さ
L:半長軸の長さ
M:中点
P:巻線経路
W:中心距離
α:夾角
θ:回転角度
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H
図6
図7
図8