(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098492
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】養蜂巣箱
(51)【国際特許分類】
A01K 47/02 20060101AFI20240716BHJP
A01K 47/06 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
A01K47/02
A01K47/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023202946
(22)【出願日】2023-11-30
(31)【優先権主張番号】P 2022192923
(32)【優先日】2022-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591045471
【氏名又は名称】アピ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 彩
(57)【要約】
【課題】巣門及び通気口の開閉状態の視認性を向上できる養蜂巣箱を提供する。
【解決手段】本発明の養蜂巣箱10は、蜂を収容し、側壁に蜂が出入りする箇所となる巣門部17及び通気口21が設けられた巣箱本体11と、該巣箱本体11に挿通され、上下方向へのスライド移動により巣門部17及び通気口21の少なくともいずれか一方を閉塞できる筒状閉塞板13とを備える。巣門部17には、その開口を封鎖できる巣門蓋19がヒンジ構造により取り付けられる。巣門蓋19は、折罫線を回動軸として筒状閉塞板13のスライド移動方向に回動可能に取り付けられ、巣門蓋19の開放時、巣門蓋19の開放端部19aが筒状閉塞板13の内周面と巣箱本体11の外周面の間に差し込まれ、筒状閉塞板13が巣門部17を開放する位置で固定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蜂を収容し、側壁に蜂が出入りする巣門及び通気口が設けられた巣箱本体と、
前記巣箱本体に挿通され、スライド移動により巣門及び通気口の少なくともいずれか一方を閉塞できる筒状閉塞板とを備えることを特徴とする養蜂巣箱。
【請求項2】
前記筒状閉塞板は、該筒状閉塞板の内周面と前記巣箱本体の外周面との摩擦力を含む手段により位置決めされる請求項1に記載の養蜂巣箱。
【請求項3】
前記巣箱本体及び筒状閉塞板は、紙又は合成樹脂製である請求項1に記載の養蜂巣箱。
【請求項4】
巣門には、さらに巣門の開口を封鎖できる巣門蓋がヒンジ構造により取り付けられ、該巣門蓋は、前記筒状閉塞板のスライド移動方向に回動できるように取り付けられ、前記巣門蓋の開放時、前記巣門蓋の開放端部が前記筒状閉塞板の内周面と前記巣箱本体の外周面の間に差し込まれ、前記筒状閉塞板が巣門の開放位置で固定される請求項1に記載の養蜂巣箱。
【請求項5】
前記筒状閉塞板の内周面には、前記巣門蓋の開放端部が前記筒状閉塞板の内周面と前記巣箱本体の外周面の間に差し込まれた際、該巣門蓋の開放端部と当接する当接部が設けられ、該当接部と前記巣門蓋の開放端部との当接により前記筒状閉塞板の巣門を閉塞する方向への移動が規制される請求項4に記載の養蜂巣箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巣門又は通気口の開閉状態の視認性を向上できる養蜂巣箱に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蜂蜜、花粉を得るために蜜蜂を利用する養蜂が知られている。近年、果物、野菜等のハウス栽培において、植物の交配のために蜜蜂を利用して行われることが多くなってきている。蜜蜂の飼育は、上方が開放された有底の矩形箱状に形成された巣箱本体と、この巣箱本体の上方を覆う蓋体を有し、内部に巣礎枠又は巣脾枠を有する巣箱を用いて行われる。蜜蜂は、女王蜂を中心とする数千~数万匹の一群をなし、巣箱内の巣礎又は巣脾に営巣を行う。
【0003】
従来より、特許文献1~3の養蜂巣箱が知られている。特許文献1は、蜜蜂巣箱の側板に設けられる通気窓及び巣門の開閉構造について開示する。通気窓及び巣門の開閉構造は、複数の通気窓と1つの巣門をそれぞれ同じ位置に設けた表板及び裏板と、表板と裏板との間に挟まれて一定方向に往復移動可能に設けられたスライド部材と、通気窓の開口を通気可能に封止する網体とを備える。通気窓を開く位置にスライド部材を移動したときにスライド部材の一部が巣門を塞ぎ、通気窓を閉じる位置にスライド部材を移動したときに巣門が開くように構成される。
【0004】
特許文献2は、養蜂箱に巣門と通気口とを備えた養蜂箱本体と、巣門と通気口との開閉に上下摺動自在となる可動扉を設け、可動扉の作動にL字状に形成してなる折曲弾材を取り付けた養蜂箱について開示する。可動扉は、養蜂箱本体と可動扉に形成された止め金具孔と止め金具により位置決め操作される。
【0005】
特許文献3は、上面に給餌用の開口を有し、側面下部に蜜蜂出入り用の巣門を備え、この巣門の上部に網の張設された通気口を有する巣箱本体と、この巣箱本体の上記給餌用の開口を閉止する巣箱蓋とからなる蜂巣箱について開示する。巣箱本体には、下降した状態で上記巣門を閉止し、上昇した状態で上記通気口を閉止する巣門蓋が昇降可能に設けられ、巣門蓋が上昇した状態を係止するための係止釘及び針金により形成される係止手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-143743号公報
【特許文献2】特開2001-136860号公報
【特許文献3】実用新案登録第3010516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1の通気窓及び巣門の開閉構造は、スライド部材が巣門を塞ぎ、通気窓を開く位置にあるのか、巣門が開き、通気窓を閉じる位置にあるのか、一見して分かりにくいという問題があった。また、特許文献2,3は、巣門と通気口を有する面にのみ可動扉又は巣門蓋が設けられているため、巣箱を見る方向によって可動扉又は巣門蓋の開閉状態が一見して分かりにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する各態様を記載する。
態様1の養蜂巣箱は、蜂を収容し、側壁に蜂が出入りする巣門及び通気口が設けられた巣箱本体と、前記巣箱本体に挿通され、スライド移動により巣門及び通気口の少なくともいずれか一方を閉塞できる筒状閉塞板とを備えることを特徴とする。
【0009】
態様2は、態様1の養蜂巣箱において、前記筒状閉塞板は、該筒状閉塞板の内周面と前記巣箱本体の外周面との摩擦力を含む手段により位置決めされる。
態様3は、態様1又は2の養蜂巣箱において、巣箱本体及び筒状閉塞板は、紙又は合成樹脂製である。
【0010】
態様4は、態様1~3のいずれか一態様に記載の養蜂巣箱において、巣門には、さらに巣門の開口を封鎖できる巣門蓋がヒンジ構造により取り付けられ、該巣門蓋は、前記筒状閉塞板のスライド移動方向に回動できるように取り付けられ、前記巣門蓋の開放時、前記巣門蓋の開放端部が前記筒状閉塞板の内周面と前記巣箱本体の外周面の間に差し込まれ、前記筒状閉塞板が巣門の開放位置で固定される。
【0011】
態様5は、態様4の養蜂巣箱において、前記筒状閉塞板の内周面には、前記巣門蓋の開放端部が前記筒状閉塞板の内周面と前記巣箱本体の外周面の間に差し込まれた際、該巣門蓋の開放端部と当接する当接部が設けられ、該当接部と前記巣門蓋の開放端部との当接により前記筒状閉塞板の巣門を閉塞する方向への移動が規制される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の養蜂巣箱によると巣門及び通気口の開閉状態の視認性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本実施形態の花粉交配の使用時の養蜂巣箱の斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の花粉交配の使用時の養蜂巣箱の正面図である。
【
図5】
図5は、巣箱本体、並びに巣箱本体内に収容される内枠、仕切り板、及び底上げ台の斜視図である。
【
図6】
図6は、巣箱本体、筒状閉塞板、及び蓋体、並びに巣箱本体内に収容される巣碑枠及び蜜蜂用飼料の斜視図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の筒状閉塞板により巣門閉塞時且つ通気口開放時の養蜂巣箱の正面図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の筒状閉塞板により通気口閉塞時且つ巣門蓋により巣門部が封鎖された状態の養蜂巣箱の正面図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の巣門蓋を開放している際の養蜂巣箱の斜視図である。
【
図13】
図13は、別例としての支持部材を養蜂巣箱に取り付けた際の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を具体化した一実施形態の養蜂巣箱10について説明する。
図1,2に示されるように、本実施形態の養蜂巣箱10は、上方が開放された有底の矩形箱状に形成された巣箱本体11と、この巣箱本体11の開放された上方を覆う蓋体12を有する。さらに、養蜂巣箱10は、上下方向にスライド移動可能に巣箱本体11の側壁外周に沿って挿通される筒状閉塞板13を備える。養蜂巣箱10は、紙、合成樹脂等の素材の段ボールにより成形されている。なお、
図1,2は、養蜂巣箱10の花粉交配の使用時の状態を示す。
【0015】
(巣箱本体11及び蓋体12)
図1,3,4に示されるように、巣箱本体11は、前後に一対の相対向する短壁11a,11bと左右に一対の相対向する長壁11c,11dとからなる側壁と、それらの下端部を閉塞する底板11eとにより四角箱状に形成される。一対の短壁11a,11b及び長壁11c,11dの上端縁により上面開口部11fが構成されている。長壁11c,11dの上端縁には、それぞれ長方形状のフラップ14,15が連接され、巣箱本体11の外側に織り込まれている。
【0016】
底板11eには、左右の端縁のそれぞれに連接され、該端縁の一部から左右方向に突出する一組の筒状閉塞板13の抜け止め16が形成されている。抜け止め16は、平面長方形状となるように、長壁11c,11dの下端縁を同形状に切り込むことにより形成される。抜け止め16は、底板11eの前後方向に対して略等間隔の位置にそれぞれ2つずつ形成されている。
【0017】
図2に示されるように、前方の短壁11aの下端部には、蜂としての蜜蜂が養蜂巣箱10内外に出入りする場所が形成される巣門部17が四角形状に切り抜かれている。巣門部17の上端縁には、左右水平方向に平行な折罫線18を介して、短壁11aの切り抜きにより形成された巣門部17と同形状の巣門蓋19が連接されている。巣門蓋19は、折罫線18を回動軸として、ヒンジ構造により筒状閉塞板13のスライド移動方向に回動できるように取り付けられている。より具体的には、巣門蓋19は、巣門部17の開口を封鎖する0°の位置から折罫線18を回動軸として、巣門部17の開口を開放し、短壁11aの外面に接触する180°の位置まで回動できるように取り付けられている。
図2,5に示されるように、折罫線18は、折り曲げしやすいように、一部に波状に切り込み20が形成されてもよい。
【0018】
図2,4に示されるように、前後の短壁11a,11bの中央部には、巣箱本体11内に外気を取り入れるための四角形状に切り込まれた通気口21,22がそれぞれ形成されている。底板11eの短壁11aとの接縁中央には、巣門部17が封鎖された状態にある巣門蓋19の下端部を指で引っかけるための半月状に切り落とされた引っかけ溝23が切り込まれている。
【0019】
図1,3,4に示されるように、蓋体12は、前後に一対の相対向する短壁12a,12bと左右に一対の相対向する長壁12c,12dとそれらの上端部を閉塞する上板12eとにより四角箱状に形成される。一対の短壁12a,12b及び長壁12c,12dの下端縁により下面開口部が構成されている。長壁12c,12dの下端部には、それぞれ長方形状のフラップ24,25が連接され、蓋体12の内側に織り込まれている。
【0020】
(筒状閉塞板13)
図3,4,6に示されるように、筒状閉塞板13は、前後に一対の相対向する短壁13a,13bと左右に一対の相対向する長壁13c,13dとからなる側壁とにより、四角筒状に成形される。筒状閉塞板13の開口端縁である短壁13a,13bの上端縁には、それぞれ長方形状のフラップ26,27が連接され、筒状閉塞板13の内側に織り込まれている。フラップ26,27は、それぞれ短壁13a,13bの上下方向の長さよりやや短く成形される。筒状閉塞板13の内側に織り込まれたフラップ26,27の表面は、それぞれ巣箱本体11の短壁11a,11bの外面と接触している。なお、図中、接触部分は、見やすくするためにやや離間して作図する(以下、接触部分同様)。筒状閉塞板13の長壁13c,13dの内面は、それぞれ巣箱本体11の長壁11c,11dの外面と接触している。前方に位置する短壁13aから連接されるフラップ26は、内側に織り込まれた際、開放端部に当接部26aが形成される。巣門蓋19が巣門部17の開口を開放し、短壁11aの外面に接触する180°の位置に回動すると、巣門蓋19の開放端部19aも短壁11aの外面に接触する位置まで回動する。その後、筒状閉塞板13が下方へスライド移動し、巣門蓋19の開放端部19aが筒状閉塞板13の短壁13aの内面と巣箱本体11の短壁11aの外面との間に差し込まれた際、巣門蓋19の開放端部19aとフラップ26の当接部26aとが当接する。
【0021】
(内枠28)
図4,5に示されるように巣箱本体11の内部には、短壁11a,11bの内面及び底板11eの上面に沿うように内枠28が収められている。内枠28は、前後に一対の相対向する側壁28a,28bと、それらの下端縁と連接される底板28cとにより前後方向に対して断面U字状に成形される。前方の側壁28aには、短壁11aの通気口21と対向する位置において、内枠通気口29が形成され、巣箱本体11内に収容されている蜜蜂が巣箱本体11から外へ逃げ出せない程度の大きさの網が張られている。同様に、後方の側壁28bには、短壁11bの通気口22と対向する位置において、内枠通気口30が形成され、内枠通気口29と同様に網が張られている。前方の側壁28aには、短壁11aの巣門部17と対向する位置において、蜜蜂が数匹同時に出入り可能な大きさであって左右方向に長い楕円形状の巣門としての巣門口31が形成されている。
【0022】
図3,5に示されるように、側壁28a,28bの上端縁には、それぞれ巣碑溝32,33が切り込まれている。巣碑溝32,33は、内枠28の正面左側において互いに対向する位置に形成されている。
【0023】
(内部構造)
図3~5に示されるように、巣箱本体11の内部には、左右を仕切る略長方形状の仕切り板34が前後方向に対して平行に取り付けられている。巣箱本体11の内部は、仕切り板34により正面右側に飼料部屋35、正面左側に巣碑部屋36が形成されている。仕切り板34の左右の端縁の中央には、それぞれ蜜蜂が飼料部屋35と巣碑部屋36とを互いに行き来しやすくするための略台形状に切り取られた切り欠き部34aが形成されている。仕切り板34の両側上端には、それぞれ突部34bが形成され、内枠28の側壁28a,28bの左右方向の略中央の上端から切り込まれたスリット37と係合し、位置決め固定される。飼料部屋35には、長椅子状の底上げ台38が配され、公知の蜜蜂用飼料として蜜蜂用飴39が載置される。
【0024】
図3,6に示されるように、巣碑部屋36には、巣脾枠40が1枚収められている。巣脾枠40は、公知のものを適用することができる。例えば、巣脾枠40は四角枠状の木製の巣枠41に、蜜蜂の巣穴の元となるハニカム構造が薄く圧印された蜜蝋を主原料とするシート状の巣礎を張り付けた巣礎枠に、蜜蜂が自ら分泌する蜜蝋でハニカム構造の巣穴を盛り上げていった巣房42で構成されている。巣脾枠40の巣枠41の上端部両側に一対の係止片43,44が突出形成される。
図5,6に示されるように、係止片43,44が内枠28に形成された一対の巣碑溝32,33にそれぞれ係合して、巣脾枠40を巣箱本体11内の巣碑部屋36内に位置決めされる。なお、巣脾枠40の枚数は、特に限定されず、巣箱本体11の大きさ及び蜜蜂の群の大きさにより適宜決定できる。
【0025】
(養蜂巣箱10の組付け)
図5に示されるように、組み立てられた巣箱本体11内に内枠28が所定の位置にはめ込まれる。巣箱本体11に形成される巣門蓋19は、使用開始前の保存時、輸送時等において、巣門部17を封鎖している。また、巣門蓋19は、切り込み線19bに形成されるミシン目により使用開始前に容易に巣門口31を開放しないように巣門部17を封鎖するとともに、花粉交配の使用時には切り込み線19bの破断により巣門部17を開放するよう構成されている。次に、仕切り板34の両側端縁を側壁28a,28bの内面にそれぞれ当接させるとともに、仕切り板34の両側上端に形成されている突部34bを内枠28のスリット37と係合させて、位置決め固定することにより、飼料部屋35と巣碑部屋36を形成する。作製された飼料部屋35に底上げ台38を載置する。
【0026】
図6に示されるように、底上げ台38上に蜜蜂用飴39を必要量充填する。内枠28の巣碑溝32,33に、巣脾枠40の係止片43,44がそれぞれ掛けられることにより巣脾枠40が巣碑部屋36内に収められる。
【0027】
筒状閉塞板13は、フラップ26,27が内側に織り込まれた状態で巣箱本体11に挿通される。最後に、巣箱本体11の上面開口部11fを覆うように蓋体12がはめ込まれる。
図3に示されるように、巣箱本体11のフラップ14,15と、蓋体12のフラップ24,25がそれぞれ互いに返し構造により当接するため、蓋体12が巣箱本体11から抜け止めされる。
【0028】
(本実施形態の作用)
次に、本実施形態の養蜂巣箱10の作用について説明する。
図7に示されるように、養蜂使用前、例えば保存時、輸送時、又は養蜂巣箱10の移動の際、筒状閉塞板13は、巣箱本体11の抜け止め16に当接し、巣門部17が閉塞され、前後の通気口21,22が同時に解放されている位置に保持される。そのため、養蜂巣箱10をいずれの方向から確認しても、筒状閉塞板13の巣門部17の閉塞位置及び通気口21,22の解放位置を容易に視認できる。
【0029】
筒状閉塞板13は、該筒状閉塞板13の内周面と巣箱本体11の外周面との摩擦力により位置決めされている。筒状閉塞板13は、その内側に織り込まれフラップ26,27の戻り圧により、フラップ26,27の表面と短壁11a,11bの外面との間に摩擦力が生じている。また、筒状閉塞板13の長壁13c,13dの内面と、巣箱本体11の長壁11c,11dの外面とが接触しているため、その間に摩擦力が生じている。それにより、筒状閉塞板13は、巣箱本体11の外周面上において所定の場所に位置決めされる。養蜂巣箱10の輸送、移動等の際に、筒状閉塞板13は、巣門部17が閉塞され、通気口21,22が解放される位置に保持されるため、蜜蜂が養蜂巣箱10の外へ逃げ出すことはない。また、養蜂巣箱10の輸送、移動等の際に、通気口21,22が解放される位置に保持されるため、養蜂巣箱10の内部の温度上昇を和らげる。特に、蜜蜂が自ら体温上昇をする暴走等により高温で死んでしまう蒸殺を防止できる。
【0030】
図8,9に示されるように、花粉交配の使用時に、例えば両手で前後の短壁13a,13b又は左右の長壁13c,13dが把持されて、筒状閉塞板13が、上方へスライド移動される。それにより、巣門部17を開放可能な位置、且つ通気口21,22が閉塞される位置に移動する。そのため、養蜂巣箱10をいずれの方向から確認しても、筒状閉塞板13の巣門部17の開放位置及び通気口21,22の閉塞位置を容易に視認できる。
【0031】
外部に露出した巣門部17に形成された巣門蓋19は、底板11eに形成された引っかけ溝23に指を引っかけて、切り込み線19bに形成されるミシン目を破断させることにより、巣門部17を開放させる。巣門部17の開放により、巣門口31が露出し、蜜蜂が巣門口31から養蜂巣箱10外へ飛び出すことができる。なお、切り込み線19bに形成されるミシン目は、養蜂使用前、例えば輸送時に巣門口31の露出をより確実に防ぐために形成されてもよく、省略してもよい。
【0032】
巣門蓋19は、折罫線18を回動軸として、巣門部17を封鎖する0°の位置から短壁11aの外面に接触する180°の位置まで回動される。次に、筒状閉塞板13を下方へスライド移動させることにより、巣門蓋19の開放端部19aが筒状閉塞板13の短壁13aと巣箱本体11の短壁11aの間に差し込まれる。
図1,2に示されるように、さらに、筒状閉塞板13が下方へスライド移動することにより、筒状閉塞板13の短壁13aの内面と巣箱本体11の短壁11aの外面との間に差し込まれた巣門蓋19の開放端部19aと、当接部26aとが当接する。当接部26aと巣門蓋19の開放端部19aとが当接することにより筒状閉塞板13の下方へのスライド移動、つまり巣門部17を閉塞する方向への移動が規制される。そして、筒状閉塞板13は、巣門部17が開放される位置で固定される。巣門部17を閉塞し、通気口21,22を開放する場合は、上記操作の逆を行うことにより実施できる。
【0033】
(本実施形態の効果)
本実施形態の養蜂巣箱10の効果について説明する。
(1)筒状閉塞板13により、養蜂巣箱10をいずれの方向から確認しても、巣門部17の開放又は閉塞位置、通気口21,22の閉塞又は開放位置を容易に視認できる。それにより、巣門及び通気口の開閉状態の視認性を向上できる。したがって、例えば巣門及び通気口の開閉状態に誤り等があった場合において、いち早く気付くことができる。
【0034】
(2)養蜂巣箱10は、巣門部17及び通気口21,22が側面に形成された巣箱本体11と、該巣箱本体11に挿通され、上下方向へのスライド移動により巣門部17及び通気口21,22の少なくともいずれか一方を閉塞できる筒状閉塞板13とを備える。したがって、筒状閉塞板13をスライド移動させるのみで、巣門部17及び通気口21,22の閉塞又は開放を同時に行うことができるため、操作性を向上できる。例えば、特許文献2は、可動扉を位置決めするために止め金具孔と止め金具の操作が必要なため、操作性が劣っていた。特許文献3は、巣門蓋を位置決めするために係止釘及び針金等の係止手段の操作が必要なため、操作性が劣っていた。
【0035】
(3)養蜂巣箱10の通気口21,22は、前方側面と後方側面の両面に形成されており、養蜂巣箱10内の通気性を向上できる。また、筒状閉塞板13のスライド移動により2つの通気口21,22を同時に閉塞又は開放できるため、操作性を向上できる。
【0036】
(4)養蜂巣箱10は、巣門部17及び通気口21,22を閉塞又は開放する手段として巣箱本体11を周回する筒状閉塞板13として構成した。そのため、例えば開閉手段として平面状の平板手段を用いた場合に必要なスライド移動させるための溝、枠体等の保持手段を必須構成として形成する必要がなく、巣門部17及び通気口21,22を閉塞又は開放する構造を簡易にできる。例えば、特許文献1の通気窓及び巣門の開閉構造は、表板及び裏板の間にスライド部材等を挟み込む構成が必要となり構造が複雑であった。
【0037】
(5)筒状閉塞板13は、巣箱本体11に対して両手でスライド操作される。そのため、巣門部17及び通気口21,22を閉塞又は開放状態が確実に維持されるため、例えば運搬時、場所の移動時等において、容易に筒状閉塞板13がスライド移動してしまうことがない。つまり、筒状閉塞板13の閉塞状態は、自身の重力方向により確実に維持され、振動等で容易にもう一方の開放状態へ移動することはない。
【0038】
(6)筒状閉塞板13は、その内周面と巣箱本体11の外周面との摩擦力を含む手段により位置決めされる。そのため、筒状閉塞板13を必要な場所に上下方向へスライド移動させるのみで巣門部17及び通気口21,22を閉塞又は開放状態を維持できるため、操作性を向上できる。また、開閉手段の位置を固定するための釘、ピン、孔、係合手段等を必須構成とする必要がなく、巣門部17及び通気口21,22の閉塞又は開放する構造を簡易にできる。
【0039】
また、筒状閉塞板13の内径、巣箱本体11の外径、筒状閉塞板13の内側に織り込まれるフラップ26,27の戻り圧、フラップ26,27の大きさ、厚み等を調節することにより容易にスライド移動の摩擦力を調節できる。
【0040】
(7)養蜂巣箱10は、紙、合成樹脂等の素材の段ボール、発泡スチロール等により成形される。したがって、耐久性に優れた養蜂巣箱10を容易に製造できる。また、養蜂巣箱10を軽量化できるため、輸送、場所の移動等を容易に行うことができる。また、適度な摩擦力が生ずるため、巣箱本体11に対する筒状閉塞板13の位置決めを確実にできるとともに、スライド移動も容易である。また、廃棄の際の解体も容易であり、素材の種類を考慮することによりリサイクルも可能である。
【0041】
(8)巣門蓋19が巣門部17を開放し、短壁11aの外面に接触する180°の位置において、筒状閉塞板13の下方への移動により、巣門蓋19の開放端部19aが筒状閉塞板13の短壁13aの内面と巣箱本体11の短壁11aの外面との間に差し込まれる。それにより、筒状閉塞板13の内周面における巣箱本体11の外周面に対する締め付け圧が高くなる。そのため、筒状閉塞板13が巣箱本体11に対して容易に下方へスライド移動することはない。つまり、筒状閉塞板13が巣門部17を開放する位置で確実に位置決め固定できる。
【0042】
(9)巣門蓋19が巣門部17を開放し、短壁11aの外面に接触する180°の位置において、筒状閉塞板13の下方向への移動により、巣門蓋19の開放端部19aが筒状閉塞板13の短壁13aの内面と巣箱本体11の短壁11aの外面との間に差し込まれる。その際、巣門蓋19の開放端部19aと当接部26aとが当接する。そのため、筒状閉塞板13が巣箱本体11に対して容易に下方へスライド移動することがない。つまり、筒状閉塞板13が巣門部17を閉塞する方向へのスライド移動が規制され、筒状閉塞板13が巣門部17を開放する位置でより確実に位置決め固定できる。
【0043】
(10)養蜂巣箱10は、軽量且つ操作性に優れるため、巣脾枠40の大きさを小さくし、枚数を1枚程度に調整すれば、果物、野菜等のハウス栽培における例えば1月以内程度の短期交配において、特に有用に適用できる。
【0044】
(11)養蜂巣箱10は、巣箱本体11の内部は、仕切り板34により正面右側に飼料部屋35、正面左側に巣碑部屋36が形成されている。部屋が仕切られているため、商品作成の作業性を向上できる。また、養蜂巣箱10内の環境を良好に保つことができる。また、仕切り板34に切り欠き部34aにより蜂が部屋を自由に往来できるため、蜂の生育を阻害することがない。
【0045】
(変更例)
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0046】
・上記実施形態において、筒状閉塞板13のフラップ26の開放端部に設けられる当接部26aは、省略してもよい。筒状閉塞板13のスライド移動により、巣門蓋19の開放端部19aが筒状閉塞板13の短壁13aの内面と巣箱本体11の短壁11aの外面との間に差し込まれることにより、筒状閉塞板13の内周面における巣箱本体11の外周面に対する締め付け圧が高くなる。そのため、かかる構成においても、筒状閉塞板13が巣箱本体11に対して容易に移動することはない。
【0047】
・
図10に示されるように、巣門蓋19の構成を省略し、もとの折罫線18の軸線上の一部に一端が固定され、筒状閉塞板13のスライド移動方向に回動できる係合片45が設けられてもよい。係合片45の開放端部45aは、筒状閉塞板13の短壁13aの内面と巣箱本体11の短壁11aの外面の間に差し込まれ、当接部26aとが当接するように構成される。かかる構成においても、筒状閉塞板13が巣箱本体11に対して容易に下方へスライド移動することがない。つまり、筒状閉塞板13の巣門部17を閉塞する方向へのスライド移動が規制され、確実に筒状閉塞板13が巣門部17を開放する位置で位置決め固定される。
【0048】
・上記実施形態において、構造を簡略化するために巣門蓋19は省略してもよい。かかる構成においても筒状閉塞板13により巣門部17又は通気口21,22を閉塞できる。また、筒状閉塞板13は、その内側に織り込まれフラップ26,27の戻り圧により、フラップ26,27の内面と短壁11a,11bの外面との間に発生する摩擦力により、巣箱本体11の所定位置に位置決めされる。そのため、かかる構成においても、筒状閉塞板13が巣箱本体11に対して容易に移動することはない。
【0049】
・上記実施形態において、当接部26aの構成は、筒状閉塞板13の上端部から連接されるフラップ26の端縁部として構成した。しかしながら、当接部26aは、筒状閉塞板13とともに移動し、巣門蓋19の開放端部19aと当接することにより、筒状閉塞板13の巣門部17を閉塞する方向へのスライド移動が規制される構成であれば特に限定されない。
【0050】
・上記実施形態において、巣箱本体11を上方又は下方にテーパ状に拡径する断面凹レンズ状に成型してもよい。かかる構成により、巣箱本体11に対して筒状閉塞板13が巣門部17を閉塞する下方の位置又は通気口21,22を閉塞する上方の位置において、巣箱本体11が筒状閉塞板13に対して締め付けられる。それにより、筒状閉塞板13が巣箱本体11に対して容易にスライド移動することがない。
【0051】
・上記実施形態の巣箱本体11に設けられる巣門口31、通気口21,22の形状、大きさ、数、及び位置は、特に限定されない。
・上記実施形態の養蜂巣箱10を構成する各部材の素材は、特に限定されず、例えば紙製、合成樹脂製の他、養蜂巣箱10の一部、例えば巣箱本体11及び蓋体12が木製であってもよい。また、素材の一部にアルミニウム等の金属層が積層されてもよい。かかる構成により、養蜂巣箱10の保温性又は耐久性をより向上できる。
【0052】
・上記実施形態において、筒状閉塞板13は、スライド移動により巣門部17及び通気口21,22の少なくともいずれか一方を閉塞できればよい。つまり、筒状閉塞板13がスライド移動する途中において、巣門部17及び通気口21,22の両方が解放される状態、又は巣門部17及び通気口21,22の両方が閉塞される状態があることを妨げるものではない。
【0053】
・筒状閉塞板13の内周面の一部のみ、例えば長壁13c,13dの内面のみ、又はフラップ26,27の表面のみが、巣箱本体11の外面と接触する構成であってもよい。かかる構成においても、筒状閉塞板13を巣箱本体11に対してスライド移動させることが可能である。また、筒状閉塞板13を巣箱本体11の表面上の所定の位置で摩擦力により位置決めすることができる。
【0054】
・巣箱本体11は、筒状閉塞板13の内周面と巣箱本体11の外周面との摩擦力に加えて、若しくはかかる摩擦力に代えて筒状閉塞板13の位置を保持するための保持部材、又はかかる摩擦力を高めるための保持部材を別途使用してもよい。筒状閉塞板13の内周面と巣箱本体11の外周面との間に挟み込まれることにより、摩擦力を高めるための保持部材としては、巣門蓋19以外の構成として、例えば板状、棒状の差し込み部材等が挙げられる。また、筒状閉塞板13の位置を保持するための保持部材としては、例えば筒状閉塞板13を巣箱本体11に連結固定するための紐、連結板等の連結部材等が挙げられる。また、その他の保持部材としては、例えば筒状閉塞板13の外周面と巣箱本体11の外周面とを貫通する位置決めピン、位置決め板等の貫通部材等が挙げられる。また、その他の保持部材としては、例えば筒状閉塞板13の下端部を支持して位置決めする支持部を有する柱状の支持部材が挙げられる。これらの手段により、筒状閉塞板13の位置をより確実に保持することができる。
【0055】
例えば、
図11,12に示されるような支持部材47が挙げられる。支持部材47は、長方形状の支持板48に例えば三角柱等の支持柱49が2本取り付けられている。支持板48の横方向の長さは、巣箱本体11の長壁11dの横方向の長さと略同一である。2本の支持柱49は、支持板48の一方の面に且つ該面の両側端から等間隔の位置に取り付けられている。2本の支持柱49の縦方向の長さは、支持板48の縦方向の長さよりもやや短く形成され、その下端位置は、支持板48の下端位置とそれぞれ同じなるように配されている。支持柱49の上端部には、それぞれ支持板48側に向かうに従い斜め下方に切り込まれた切り込み部49aが形成され、切り込み部49aと支持板48の表面との間において略V字状の支持溝50が形成されている。支持溝50の下端部において、使用時に筒状閉塞板13の下端部を支持する支持部50aが形成されている。支持部材47は、支持柱49及び支持溝50の形状により、側面形状が略Y字状に構成されている。
【0056】
図13に示されるように、支持部材47は、支持板48が取り付けられた面が外側に向けられ、支持部材47の下端が巣箱本体11の長壁11dの下端に沿うように配される。支持板48の上端が筒状閉塞板13の内周面と長壁11dの表面の間に差し込まれることにより、筒状閉塞板13の巣箱本体11に対する締め付け圧を高くすることができる。また、筒状閉塞板13の下端部が支持溝50の支持部50aと当接することにより、筒状閉塞板13が、支持部材47により支持されて筒状閉塞板13の下方への移動が規制される。
【0057】
・筒状閉塞板13は、その内周面と巣箱本体11の外周面との間に摩擦力がない又は摩擦力は弱くてもよい。かかる構成においても筒状閉塞板13の短壁13aと巣箱本体11の短壁11aの間に差し込まれる巣門蓋19の構成又は上述した保持部材の構成により、筒状閉塞板13が巣門部17を開放する位置で位置決め固定できる。または、巣門蓋19の開放端部19aと当接する当接部26aの構成により、筒状閉塞板13が巣門部17を開放する位置で位置決め固定できる。また、底板11eに形成された抜け止め16により、筒状閉塞板13は、巣箱本体11から外れることはなく、自身の重力により抜け止め16に当接し、巣門部17が閉塞され、前後の通気口21,22が同時に解放される位置に保持できる。
【0058】
・筒状閉塞板13の形状は、巣箱本体11に挿通され、巣門部17及び通気口21,22を閉塞可能な筒状であれば、特に限定されない。
図10に示されるように、例えば、筒状閉塞板13の外周の一部がゴムバンド46、紐、棒、細板等により連結されてもよい。かかる構成においても、依然として巣門及び通気口の開閉状態の視認性を向上できる。また、スライド移動により巣門部17及び通気口21,22の少なくともいずれか一方を閉塞できるため、操作性を向上できる。
【0059】
・筒状閉塞板13の個数は、特に限定されず、複数個が巣箱本体11に挿通されてもよい。かかる構成においても依然として、巣門及び通気口の開閉状態の視認性を向上できる。また、巣門部17及び通気口21,22の開閉操作手段の構造を簡易にできるとともに、操作性を向上できる。
【0060】
・蓋体12は、蜜蜂用飴39の補充、内部の清掃、蜂蜜の採取のために、巣箱本体11を開封できるように構成されてもよい。
(付記)
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
【0061】
(イ)前記当接部は、筒状閉塞板の開口端縁から連接され、筒状閉塞板の内側に織り込まれるフラップの端縁部である前記養蜂巣箱。
(ロ)筒状閉塞板の内周面と巣箱本体の外周面との摩擦力に加えて、若しくは該摩擦力に代えて筒状閉塞板の位置を保持するための保持部材、又は該摩擦力を高めるための保持部材を有する前記養蜂巣箱。
【符号の説明】
【0062】
10…養蜂巣箱
11…巣箱本体
12…蓋体
13…筒状閉塞板
17…巣門部
18…折罫線
19…巣門蓋
19a…開放端部
21,22…通気口
26,27…フラップ
26a…当接部
28…内枠
29,30…内枠通気口
31…巣門口
34…仕切り板
45…係合片
45a…開放端部
47…支持部材