(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098493
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】粘土状熱伝導性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/06 20060101AFI20240716BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20240716BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240716BHJP
C08K 3/38 20060101ALI20240716BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20240716BHJP
C08K 3/28 20060101ALI20240716BHJP
C09K 5/14 20060101ALI20240716BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20240716BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
C08L101/06
C08K3/013
C08K3/22
C08K3/38
C08K3/34
C08K3/28
C09K5/14 101E
H01L23/36 D
H01L23/36 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023205643
(22)【出願日】2023-12-05
(31)【優先権主張番号】P 2023001565
(32)【優先日】2023-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】飯田 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】芦田 桂子
【テーマコード(参考)】
4J002
5F136
【Fターム(参考)】
4J002AA051
4J002AC021
4J002BB001
4J002CF001
4J002GQ00
5F136BC07
5F136FA13
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5F136FA16
5F136FA17
5F136FA18
5F136FA51
5F136FA63
(57)【要約】
【課題】粘土状で形状追従性に特に優れるとともに、無機フィラーを十分に含有することで熱伝導性に特に優れた粘土状熱伝導性組成物を提供する。
【解決手段】液状ポリオールと無機フィラーとを含み、前記液状ポリオール100質量部に対する前記無機フィラーの量が1000質量部以上3300質量部以下の範囲内とされ、タック性試験機において、プローブ引き上げ時に引張荷重が負荷された領域の積分値で定義されるタック性指数が10g・s以上であることを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状ポリオールと無機フィラーとを含み、前記液状ポリオール100質量部に対する前記無機フィラーの量が1000質量部以上3300質量部以下の範囲内とされ、
タック性試験機において、プローブ引き上げ時に引張荷重が負荷された領域の積分値で定義されるタック性指数が10g・s以上であることを特徴とする粘土状熱伝導性組成物。
【請求項2】
前記液状ポリオールは、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオールから選択される一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1に記載の粘土状熱伝導性組成物。
【請求項3】
前記無機フィラーは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛から選択される一種又は二種以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粘土状熱伝導性組成物。
【請求項4】
前記無機フィラーの平均粒子径が0.1μm以上200μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粘土状熱伝導性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、発熱体と放熱部材との間に配設され、発熱体から発生する熱を放熱部材への効率的に伝達する粘土状熱伝導性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器の高性能化・集積化が進むにつれて、構成部品(発熱体)の動作に伴い発生する熱を、放熱部材を用いて外部に効率よく放熱できるように、放熱性を高めた構造が求められている。
そこで、発熱体と放熱部材との間の熱抵抗を小さくするために、発熱体と放熱部材との間に、伝熱性シートが配設されることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、ベース材料であるポリウレタンにセラミックス粉、金属粉、炭素類等の無機物を混合することにより、放熱性を向上させたポリウレタン樹脂組成物、および、このポリウレタン樹脂組成物からなる熱伝導性シートが提案されている。
また、特許文献2には、ベース材料である含フッ素エラストマーに、酸化アルミニウム等の絶縁性熱伝導フィラーを加えて放熱性を向上させた放熱材料用含フッ素エラストマー組成物、および、この放熱材料用含フッ素エラストマー組成物からなる伝熱性シートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-248350号公報
【特許文献2】特許第6493616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されたポリウレタン樹脂組成物および熱伝導性シートにおいては、ポリオールとイソシアネートをウレタン結合によって架橋するウレタン硬化反応によってポリウレタンが合成されることになる。ここで、ウレタン硬化反応に使用されるイソシアネートにおいては、毒性が懸念され、取り扱いが困難である。また、硬化反応によって作製されたシートにおいては、形状追従性に乏しく、発熱体および放熱部材との密着性を確保できず、発熱体または放熱部材のいずれか一方に凹凸がある場合などに発熱体と放熱部材との間の熱抵抗を十分に低減することができないおそれがあった。
【0006】
また、特許文献2に記載された放熱材料用含フッ素エラストマー組成物および伝熱性シートにおいては、硬化反応を伴わないことから柔軟であり、特許文献1の熱伝導性シートに比べて形状追従性に優れている。しかしながら、含フッ素エラストマーは比較的高価であり、作製コストが増加してしまうといった問題があった。また、含フッ素エラストマーは無機物との濡れ性が悪く、伝熱性シートの内部にボイドが発生し、熱伝導性が低下してしまうおそれがあった。
【0007】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、粘土状で形状追従性に特に優れるとともに、無機フィラーを十分に含有することで熱伝導性に特に優れた粘土状熱伝導性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らが鋭意検討した結果、液状ポリオールは親水性の水酸基を有していることから、無機フィラーとの濡れ性が良く、無機フィラーを多く含有しても粘土状となり、形状追従性を確保可能であるとの知見を得た。また、タック性試験機によってタック性指数を評価することにより、形状追従性を確保可能であるとの知見を得た。
【0009】
本発明は、上述の知見に基づいてなされたものであって、本発明の態様1の粘土状熱伝導性組成物は、液状ポリオールと無機フィラーとを含み、前記液状ポリオール100質量部に対する前記無機フィラーの量が1000質量部以上3300質量部以下の範囲内とされ、タック性試験機において、プローブ引き上げ時に引張荷重が負荷された領域の積分値で定義されるタック性指数が10g・s以上であることを特徴としている。
【0010】
本発明の態様1の粘土状熱伝導性組成物によれば、液状ポリオールと無機フィラーとを含み、前記液状ポリオール100質量部に対する前記無機フィラーの量が1000質量部以上3300質量部以下の範囲内とされているので、無機フィラーが高充填されており、熱伝導性に特に優れている。
また、タック性試験機において、プローブ引き上げ時に引張荷重が負荷された領域の積分値で定義されるタック性指数が10g・s以上であることから、形状追従性に優れており、発熱体および放熱部材との密着性を確保でき、発熱体と放熱部材との間の熱抵抗を十分に低減することが可能となる。
【0011】
本発明の態様2の粘土状熱伝導性組成物は、本発明の態様1の粘土状熱伝導性組成物において、前記液状ポリオールは、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオールから選択される一種又は二種以上であることを特徴としている。
本発明の態様2の粘土状熱伝導性組成物によれば、前記液状ポリオールは、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオールから選択される一種又は二種以上とされているので、無機フィラーとの濡れ性に優れており、無機フィラーを確実に多く含むことができ、熱伝導性に特に優れている。
【0012】
本発明の態様3の粘土状熱伝導性組成物は、本発明の態様1または態様2の粘土状熱伝導性組成物において、前記無機フィラーは、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛から選択される一種又は二種以上であることを特徴としている。
本発明の態様3の粘土状熱伝導性組成物によれば、前記無機フィラーが、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛から選択される一種又は二種以上とされているので、熱伝導性および絶縁性に優れており、絶縁性が要求される用途に特に適している。
【0013】
本発明の態様4の粘土状熱伝導性組成物は、本発明の態様1から態様3のいずれか一つの粘土状熱伝導性組成物において、前記無機フィラーの平均粒子径が0.1μm以上200μm以下の範囲内であることを特徴としている。
本発明の態様4の粘土状熱伝導性組成物によれば、前記無機フィラーの平均粒子径が0.1μm以上200μm以下の範囲内とされていることから、無機フィラーを比較的均一に分散させることが可能となるとともに、高充填した場合であっても組成物が硬くなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、粘土状で形状追従性に特に優れるとともに、無機フィラーを十分に含有することで熱伝導性に特に優れた粘土状熱伝導性組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態である粘土状熱伝導性組成物のタック性指数の評価方法を示す概略説明図である。
【
図2】本発明の実施形態である粘土状熱伝導性組成物の密着性の評価方法を示す概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態である粘土状熱伝導性組成物について、添付した図面を参照して説明する。なお、以下に示す各実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0017】
本発明の実施形態である粘土状熱伝導性組成物は、例えば、発熱体と放熱部材との間に配設され、発熱体から発生する熱を放熱部材へと伝達するものである。
本実施形態である粘土状熱伝導性組成物においては、液状ポリオールと無機フィラーとを含んだものとされており、液状ポリオール100質量部に対する無機フィラーの量が1000質量部以上3300質量部以下の範囲内とされている。
そして、本実施形態である粘土状熱伝導性組成物においては、タック性試験機において、プローブ引き上げ時に引張荷重が負荷された領域の積分値で定義されるタック性指数が10g・s以上とされている。
【0018】
ここで、液状ポリオール100質量部に対する無機フィラーの量が1000質量部未満の場合には、無機フィラーを十分に含有していないことから、熱伝導性を確保できないおそれがある。
一方、液状ポリオール100質量部に対する無機フィラーの量が3300質量部を超える場合には、粘土状熱伝導性組成物が硬くなってしまい、形状追従性が不十分となるおそれがある。
なお、液状ポリオール100質量部に対する無機フィラーの量の下限は1200質量部以上であることが好ましく、1500質量部以上であることがより好ましい。一方、液状ポリオール100質量部に対する無機フィラーの量の上限は3000質量部以下であることが好ましく、2800質量部以下であることがより好ましい。
また、粘土状熱伝導性組成物におけるフィラーの質量割合は、例えば、90質量%以上97質量%以下である。粘土状熱伝導性組成物の熱伝導率は、3.5~10W/(m・K)程度であってもよい。
【0019】
次に、本実施形態である粘土状熱伝導性組成物におけるタック性指数の評価方法について、添付した
図1を参照して説明する。
タック性指数を評価するタック性試験機は、粘土状熱伝導性組成物(PASTE)が載置されるステージと、このステージに対して上下動するプローブ(PROBE)と、プローブに負荷される荷重を測定する荷重測定手段とを備えている。
【0020】
まず、プローブを下降して、ステージ上に載置した粘土状熱伝導性組成物に対してプローブを近接・接触させる。
さらに、プローブを下降していき、粘土状熱伝導性組成物をつぶすように押し込む。この状態で一定時間保持する。このとき、
図1に示すように、プローブには圧縮荷重が負荷される。
【0021】
次に、プローブを上昇させて引き上げる。すると、
図1に示すように、粘土状熱伝導性組成物がプローブに付着した状態で引き上げられていく。これにより、プローブには、引張荷重が負荷させることになる。
そして、さらにプローブを上昇させると、プローブから粘土状熱伝導性組成物が離間し、プローブには荷重が負荷されなくなる。
【0022】
ここで、
図1に示すように、プローブ引き上げ時に引張荷重が負荷された領域の積分値を、「タック性指数」として定義した。このタック性指数が高いと、粘土状熱伝導性組成物がプローブに付着し易いことになり、形状追従性に優れていることになる。
本実施形態である粘土状熱伝導性組成物においては、上述のタック性指数を10g・s以上としていることから、形状追従性に十分に優れている。
なお、粘土状熱伝導性組成物のタック性指数は30g・s以上であることが好ましく、50g・s以上であることがより好ましい。一方、粘土状熱伝導性組成物のタック性指数の上限に特に制限はないが、べたつきを抑えて取り扱いを容易とするためには、1000g・s以下とすることが好ましく、500g・s以下とすることがより好ましい。
【0023】
液状ポリオールは、常温(25℃)において液状をなすポリオールであり、親水性の水酸基(-OH)を有している。このため、無機フィラーとの親和性に優れており、他の液状ポリマーに比べて、無機フィラーを高充填することが可能となる。このため、熱伝導性を大幅に向上させることが可能となる。また、無機フィラーの周囲にボイドが生じることを抑制できる。
ここで、本実施形態においては、液状ポリオールとして、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオールから選択される一種又は二種以上を用いることが好ましい。
【0024】
無機フィラーは、セラミックス、金属等の無機物からなり、液状ポリオールよりも熱伝導性に優れた材質で構成されている。
なお、本実施形態である粘土状熱伝導性組成物において、絶縁性が求められる場合には、無機フィラーとして、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛から選択される一種又は二種以上を用いることが好ましい。
一方、本実施形態である粘土状熱伝導性組成物において、絶縁性が求められない場合には、熱伝導性に優れた金属粉を用いることが好ましい。
【0025】
また、無機フィラーの平均粒子径は、0.1μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。
無機フィラーの平均粒子径を0.1μm以上とすることにより、無機フィラーを多く含んでも粘土状熱伝導性組成物が硬くなることを抑制でき、無機フィラーを確実に高充填することができ、熱伝導性をさらに向上させることが可能となる。
一方、無機フィラーの平均粒子径を200μm以下とすることにより、無機フィラーをさらに均一に分散させることができる。
なお、無機フィラーの平均粒子径の下限は0.5μm以上であることがより好ましく、1μm以上であることがさらに好ましい。一方、無機フィラーの平均粒子径の上限は150μm以下であることがより好ましく、100μm以下であることがさらに好ましい。
【0026】
なお、本実施形態において用いられる液状ポリオールは、イソシアネートとウレタン結合により架橋する(ウレタン硬化反応)ことによってポリウレタンが合成される。ポリウレタンが大量に合成された場合には、タック性指数が大きく低下し、10g・s未満となる。このため、イソシアネートを含む場合には、液状ポリオールとのウレタン硬化反応がわずかにしか起こらない量に制限する必要がある。つまり、本実施形態である粘土状熱伝導性組成物は、液状ポリオールと架橋反応を起こす物質を含まないことが好ましく、液状ポリオールと架橋反応を起こす物質を含む場合は、粘土状熱伝導性組成物のタック性指数が10g・s以上となる程度であることが好ましい。
【0027】
本実施形態である粘土状熱伝導性組成物は、上述の液状ポリオールと無機フィラーとを所定の割合となるようにそれぞれ秤量し、これらを混合して混練することで製造される。なお、混練手段に特に制限はなく、自公転ミキサー、二本ロール、ニーダー等の既存の手法を適宜選択して適用することができる。
ここで、無機フィラーを効率的に高充填するためには、混練する前の液状ポリオールの粘度を10Pa・s以下することが好ましく、6Pa・s以下とすることがより好ましい。なお、混練する前の液状ポリオールの粘度の下限に特に制限はないが、実質的に0.1Pa・s以上となる。
また、上述の液状ポリオールと無機フィラーとを混合して混練した後の粘土状熱伝導性組成物の粘度は、500Pa・s以上100000Pa・s以下程度が望ましく、1500Pa・s以上50000Pa・s以下が更に望ましい。
【0028】
以上のような構成とされた本実施形態である粘土状熱伝導性組成物によれば、水酸基を有する液状ポリオールと無機フィラーとを含んでおり、液状ポリオール100質量部に対する無機フィラーの量が1000質量部以上とされているので、無機フィラーが高充填されており、熱伝導性に特に優れている。また、液状ポリオール100質量部に対する無機フィラーの量が3300質量部以下とされているので、硬くならずに十分な形状追従性を有している。
【0029】
そして、本実施形態である粘土状熱伝導性組成物においては、タック性試験機において、プローブ引き上げ時に引張荷重が負荷された領域の積分値で定義されるタック性指数が10g・s以上であることから、形状追従性に十分に優れており、発熱体および放熱部材との密着性を確保でき、発熱体と放熱部材との間の熱抵抗を十分に低減することが可能となる。
【0030】
ここで、本実施形態である粘土状熱伝導性組成物において、液状ポリオールが、ポリブタジエンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリイソプレンポリオール、ポリオレフィンポリオールから選択される一種又は二種以上である場合には、無機フィラーとの濡れ性に十分に優れており、無機フィラーを確実に多く含むことができ、熱伝導性に特に優れている。また、無機フィラーの周囲にボイドが生じることを抑制できる。
【0031】
また、本実施形態である粘土状熱伝導性組成物において、無機フィラーが、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化亜鉛から選択される一種又は二種以上である場合には、熱伝導性および絶縁性に優れており、絶縁性が要求される用途に特に適している。
【0032】
さらに、本実施形態である粘土状熱伝導性組成物において、無機フィラーの平均粒子径が0.1μm以上200μm以下の範囲内とされている場合には、無機フィラーを比較的均一に分散させることが可能となるとともに、高充填した場合であっても組成物が硬くなることを抑制できる。
【0033】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本実施形態では、発熱体と放熱部材との間に配設される粘土状熱伝導性組成物として説明したが、これに限定されることはなく、他の用途で使用されるものであってもよい。
【実施例0034】
本発明の有効性を確認するために行った確認実験について説明する。
【0035】
表1に示すように、液状ポリオールと無機フィラーをそれぞれ秤量して混合した。混合物を混練したあと、厚さ2mmのシート状に成形し、評価用試料とした。
まず、評価用試料から20mm角×厚さ2mmのサンプルを採取し、テクスチャアナライザ(株式会社イマダ製)によって厚さ方向に50%圧縮し、100分経過後に圧縮を解除した後の厚さ復元率を測定し、厚さ復元率が50%未満を「粘土状」であると判断した。厚さ復元率は、(復元後の厚み-圧縮時の厚み)/(圧縮前の厚み―圧縮時の厚み)である。例えば、厚さ2mmのサンプルを1mmまで50%圧縮し、圧縮を解除した後に1.1mmまで復元した場合の厚さ復元率は、(1.1-1)/(2-1)=10%である。評価結果を表1に示す。
【0036】
次に、タック性試験機(株式会社レスカ製TAC1000)を用いて、タック性指数を評価した。まず、サンプルを20mm角×厚さ2mmに成形した。サンプルを試験機に設置し、5mmφのSUS製のプローブを用いて、2mm/sの押し付け速度で荷重が-3000gfとなるまでプローブを評価用試料に押しつけ、5秒間保持した。その後、保持した点から5mmの高さまで1mm/sの引き上げ速度でプローブを引き上げた。
このとき、プローブに負荷される荷重の変化を、縦軸を荷重、横軸を時間としてグラフ化し、引張荷重が負荷されている領域(すなわち、荷重が正となる領域)の積分値を求め、タック性指数とした。評価結果を表1に示す。
【0037】
密着性は、
図2に示すように、2本のアルミニウム棒を用意して、2本のアルミニウム棒で各サンプルを挟み押し付けた後、はみ出たサンプルを除去することで、成形されたサンプル(縦25mm×横19mm×厚み1m)が2本のアルミ棒で挟まれた試験片を作製した。そして、引張試験機(AGS-X:島津製作所株式会社製)を用いて、50mm/minの引張速度で試験片のアルミニウム棒を引張ることで、接着強度と伸びを測定し、これに基づいて、それぞれの試料の最大応力を密着性として算出した。
【0038】
熱伝導率は、サンプルを10mm角×厚み2mmに成形し、樹脂材料熱抵抗測定装置(PCMシリーズ:日立テクノロジーアンドサービス株式会社製)を用いて、測定した。厚さ一定モードで測定荷重が0.1―1Nの範囲内となるような条件で測定を実施した。
【0039】
【0040】
比較例1においては、液状ポリオール100質量部に対する無機フィラーの量が900質量部とされており、熱伝導率が3.0W/(m・K)と低くなった。
比較例2においては、液状ポリオール100質量部に対する無機フィラーの量が3400質量部とされており、タック性指数が4.5g・sとなり、形状追従性に劣っており、密着性が0.01MPaと劣っていた。また、一般的には無機フィラー含有量を増加すれば熱伝導率が高くなると想定されるが、比較例2においては、本発明例5よりも無機フィラー質量部数が多いにも関わらず、形状追従性と密着性が劣るため、熱伝導率が低くなっていた。
【0041】
これに対して、本発明例1~5においては、液状ポリオール100質量部に対する前記無機フィラーの量が1000質量部以上3300質量部以下の範囲内とされ、タック性指数が10g・s以上とされており、形状追従性に優れ、密着性が0.03MPa以上と優れていた。また、熱伝導率が3.5W/(m・K)以上であり、熱伝導性に優れていた。
【0042】
以上のように、本発明によれば、粘土状で形状追従性に特に優れるとともに、無機フィラーを十分に含有することで熱伝導性に特に優れた粘土状熱伝導性組成物を提供可能であることが確認された。