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特開2024-98495合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098495
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】合成繊維用処理剤、合成繊維及び合成繊維の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/224 20060101AFI20240716BHJP
   D06M 15/643 20060101ALI20240716BHJP
【FI】
D06M13/224
D06M15/643
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211229
(22)【出願日】2023-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2023001589
(32)【優先日】2023-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】前田 倫
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA07
4L033AB01
4L033AC15
4L033BA21
(57)【要約】
【課題】タールを除去しやすく、高温における繊維-金属間の摩擦低減効果に優れた合成繊維用処理剤を提供する。
【解決手段】エステル化合物(A)、エステル化合物(B)、界面活性剤(E)及び鉱物油(F)を含有し、エステル化合物(A)は脂肪族カルボン酸アルキルエステルであり、エステル化合物(B)は、脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)、脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのAO付加物(B2)、AO付加物(B2)と脂肪族モノカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とのエステル(B3)、脂肪族モノカルボン酸とアルコールのAO付加物とのエステル(B4)及び硫黄原子含有脂肪族カルボン酸と脂肪族モノアルコールのAO付加物とのエステル(B5)から選ばれ、強酸価が0.00~0.10mgKOH/g、動粘度(25℃)が60mm/s以下である合成繊維用処理剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)と、アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)と、界面活性剤(E)と、鉱物油(F)と、を含有する合成繊維用処理剤であって、
アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)は、脂肪族カルボン酸アルキルエステルであり、
アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)は、脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)、脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのアルキレンオキサイド付加物(B2)、前記アルキレンオキサイド付加物(B2)と脂肪族モノカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とのエステル(B3)、脂肪族モノカルボン酸とアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B4)及び硫黄原子含有脂肪族カルボン酸と脂肪族モノアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B5)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、鉱物油(F)は、ノルマルパラフィンであり、合成繊維用処理剤の強酸価が0.00~0.10mgKOH/gであり、合成繊維用処理剤の動粘度(25℃)が60mm/s以下である合成繊維用処理剤。
【請求項2】
さらに、シリコーン系化合物(C)を含む請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項3】
さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含む請求項1または2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項4】
さらに、外観調整剤(G)を含む請求項1または2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項5】
アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)の重量Waに対するアルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)の重量Wbの比(Wb/Wa)が80/20~20/80である請求項1または2に記載の合成繊維用処理剤。
【請求項6】
合成繊維本体を請求項1または2に記載の合成繊維用処理剤で処理してなる合成繊維であって、前記アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)及び前記アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)の合計含有量が、合成繊維の重量に基づき、0.1~3.0重量%である合成繊維。
【請求項7】
請求項6に記載の合成繊維の製造方法であって、
前記合成繊維本体を前記合成繊維用処理剤で処理する工程を含み、
前記工程において前記合成繊維用処理剤を非加熱かつ未希釈状態で用いる、合成繊維の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成繊維用処理剤(以下、処理剤と略記する場合がある)、合成繊維及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
合成繊維を製造するにあたり、紡糸、延伸および巻取り等の処理工程を円滑に行うため、処理前の繊維に油剤と呼ばれる処理剤を付与することが行われている。
例えば、合成繊維を製造する材料としてポリエステル及びポリカーボネート等を用いる場合、前記の紡糸、延伸および巻取り等の処理工程等を高温で行うことがある。前記処理工程を高温で行うと、繊維に付与された油剤の蒸発、熱分解および発煙等が生じやすくなり、延伸ローラー等の機器が汚染されることがあり、解決策が検討されている(例えば特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-263361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術によっても、高温(例えば200℃以上)における繊維-金属間の摩擦力低減効果が不充分であった。また、前記技術によっては、延伸ローラー上に蓄積するタールが硬く、処理剤の加熱劣化物の除去性が不充分であり、改善が求められている。
本発明の課題は、延伸ローラー上に蓄積するタールが軟らかいためタールを除去しやすく、高温における繊維-金属間の摩擦低減効果に優れた合成繊維用処理剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。
即ち本発明は、以下の通りである。
[1]アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)と、アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)と、界面活性剤(E)と、鉱物油(F)と、を含有する合成繊維用処理剤であって、アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)は、脂肪族カルボン酸アルキルエステルであり、アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)は、脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)、脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのアルキレンオキサイド付加物(B2)、前記アルキレンオキサイド付加物(B2)と脂肪族モノカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とのエステル(B3)、脂肪族モノカルボン酸とアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B4)及び硫黄原子含有脂肪族カルボン酸と脂肪族モノアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B5)からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、鉱物油(F)は、ノルマルパラフィンであり、合成繊維用処理剤の強酸価が0.00~0.10mgKOH/gであり、合成繊維用処理剤の動粘度(25℃)が60mm/s以下である合成繊維用処理剤。
[2]さらに、シリコーン系化合物(C)を含む[1]に記載の合成繊維用処理剤。
[3]さらに、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含む[1]または[2]に記載の合成繊維用処理剤。
[4]さらに、外観調整剤(G)を含む[1]~[3]のいずれか1項に記載の合成繊維用処理剤。
[5]アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)の重量Waに対するアルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)の重量Wbの比(Wb/Wa)が80/20~20/80である[1]~[4]のいずれか1項に記載の合成繊維用処理剤。
[6]合成繊維本体を[1]~[5]のいずれか1項に記載の合成繊維用処理剤で処理してなる合成繊維であって、アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)及びアルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)の合計含有量が、合成繊維の重量に基づき、0.1~3.0重量%である合成繊維。
[7][6]に記載の合成繊維の製造方法であって、前記合成繊維本体を前記合成繊維用処理剤で処理する工程を含み、前記工程において前記合成繊維用処理剤を非加熱かつ未希釈状態で用いる合成繊維の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の合成繊維用処理剤によれば、延伸ローラー上に蓄積するタールが軟らかいためタールを除去しやすく、高温における繊維-金属間の摩擦低減効果に優れた合成繊維用処理剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
<合成繊維用処理剤>
本発明における合成繊維用処理剤は、アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)と、アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)と、界面活性剤(E)と、鉱物油(F)と、を含有する。
【0008】
アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)は脂肪族カルボン酸アルキルエステルである。アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)は、繊維に平滑性を付与しうる。アルキレンオキシ基を有さない化合物(A)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。以下において「アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)」を「エステル化合物(A)」と呼ぶことがある。
【0009】
脂肪族カルボン酸アルキルエステルとしては、硫黄原子を含有しない脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A1)及び硫黄原子含有脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A2)等が挙げられる。
【0010】
硫黄原子を含有しない脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A1)としては、例えば、脂肪族モノカルボン酸(x1)とアルコール(y)とのエステルおよび脂肪族ポリカルボン酸(x2)とアルコール(y)とのエステル等が挙げられる。以下において「硫黄原子を含有しない脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A1)」を「硫黄原子非含有アルキルエステル(A1)」または「エステル(A1)」と呼ぶことがある。
【0011】
硫黄原子非含有アルキルエステル(A1)を構成する脂肪族モノカルボン酸(x1)としては、炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族飽和モノカルボン酸(x11)[直鎖脂肪族飽和モノカルボン酸(例えば、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸及びステアリン酸等)、分岐脂肪族飽和モノカルボン酸(例えば、イソステアリン酸及びイソアラキン酸等)等]、炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族不飽和モノカルボン酸(x12)[例えば、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸及びエルシン酸等]並びにこれらの脂肪族モノカルボン酸のアルキル基中の水素原子が水酸基で置換されたオキシカルボン酸(例えば、リシノール酸等)等が挙げられる。本明細書においてカルボン酸の炭素数には、カルボニル基の炭素は算入しない。
脂肪族モノカルボン酸(x1)としては、二種類以上の脂肪族モノカルボン酸の混合物である動植物油脂肪酸(ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸及び硬化牛脂脂肪酸等)を用いてもよい。
【0012】
硫黄原子非含有アルキルエステル(A1)を構成する脂肪族ポリカルボン酸(x2)としては、例えば炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族飽和ジカルボン酸(x21)[例えば、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸及びセバシン酸等]、炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族不飽和ジカルボン酸(x22)[例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸及びシトラコン酸等]、並びにカルボキシル基を3つ以上有する炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族ポリカルボン酸(x23)[例えば、1,2,3-プロパントリカルボン酸等]等が挙げられる。
【0013】
硫黄原子非含有アルキルエステル(A1)を構成するアルコール(y)としては、例えば、炭素数3~32の脂肪族アルコール等が挙げられる。
炭素数3~32の脂肪族アルコールとしては、炭素数8~32の脂肪族1価アルコール[脂肪族飽和1価アルコール{直鎖脂肪族飽和1価アルコール(例えば、ラウリルアルコール、パルミチルアルコール及びステアリルアルコール等)、分岐脂肪族飽和1価アルコール(例えば、2-エチルヘキシルアルコール、2-デシルテトラデカノール、2-オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、イソエイコシルアルコール及びイソテトラコシルアルコール等)等}、脂肪族不飽和1価アルコール{直鎖脂肪族不飽和1価アルコール(例えば、オレイルアルコール、エライジルアルコール、リノレイルアルコール、エライドリノレイルアルコール及びエルシルアルコール等)、分岐脂肪族不飽和1価アルコール(例えば、フィトール等)];炭素数3~24の脂肪族多価(2~6価)アルコール[脂肪族飽和2価アルコール(例えば、1,6-ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコール等)及び脂肪族飽和3~6価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン及びソルビトール等)等]等が挙げられる。
【0014】
本発明において、分子中にポリアルキレングリコールに由来する構造(ポリアルキレングリコールが有する2つの水酸基の一方又は両方から水素原子を除いた残基)を有するアルコールと、脂肪族(モノまたはポリ)カルボン酸とのエステルは、「アルキレンオキシ基を有するエステル化合物」に分類されるため、エステル化合物(A)には含まれない。
【0015】
硫黄原子非含有アルキルエステル(A1)としては、例えば炭素数4~24の脂肪族モノカルボン酸と炭素数8~32の脂肪族1価アルコールとのエステル及び炭素数4~24の脂肪族モノカルボン酸と炭素数3~24の脂肪族多価アルコールとのエステルが挙げられる。前記脂肪族多価アルコールは2価~6価のアルコールであることが好ましい。
硫黄原子非含有アルキルエステル(A1)を構成するアルコール(y)が2価以上の多価アルコールの場合、アルコール(y)とエステルを形成する脂肪族カルボン酸は1種であっても2種以上であってもよく、モノエステルであってもジエステル、トリエステル、テトラエステル及びペンタエステルなどであってもよい。
【0016】
硫黄原子を含有しない脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A1)としては、天然油脂(脂肪酸とグリセリンとのエステル化物)を用いてもよい。天然油脂としては、例えば、菜種油(主成分としてオレイン酸のトリグリセリドを含む混合物)、パーム油(主成分としてオレイン酸及びパルミチン酸のグリセリドを含む混合物)、ヒマシ油(主成分としてリシノール酸のグリセリドを含む混合物)、ひまわり油(主成分としてリノール酸及びオレイン酸のグリセリドとする混合物)、豚脂[主成分として脂肪酸(オレイン酸、パルミチン酸およびステアリン酸)のグリセリドを含む混合物]、豚脂硬化油、牛脂[主成分として脂肪酸(ステアリン酸およびオレイン酸)のグリセリドを含む混合物]及び牛脂硬化油等が挙げられる。天然油脂としては市販品(例えば日清オイリオグループ(株)の「菜種白絞油」等)を用いてもよい。
【0017】
硫黄原子非含有アルキルエステル(A1)としては、平滑性の観点から、好ましくは炭素数8~24の脂肪族不飽和モノカルボン酸と炭素数8~32の脂肪族(1価)アルコールとのエステル、炭素数8~24の脂肪族不飽和モノカルボン酸と炭素数3~8の脂肪族多価(2~6価)アルコールとのエステル、動植物油脂肪酸と炭素数3~8の脂肪族多価(2~6価)アルコールとのエステル及び天然油脂であり、より好ましくは、2-デシルテトラデシルオレート、ソルビタントリオレート、トリメチロールプロパンとヤシ油脂肪酸とのトリエステル、菜種油、豚脂硬化油及び牛脂硬化油等である。エステル(A1)は1種単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0018】
硫黄原子含有脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A2)としては、例えば炭素数4~24の硫黄原子含有脂肪族カルボン酸(x3)とアルコール(y)とのエステル等が挙げられる。以下において「硫黄原子含有脂肪族カルボン酸アルキルエステル(A2)」を「硫黄原子含有アルキルエステル(A2)」または「エステル(A2)」と呼ぶことがある。
【0019】
硫黄原子含有アルキルエステル(A2)を構成する炭素数4~24の硫黄原子含有脂肪族カルボン酸(x3)としては、チオジ酢酸、チオジプロピオン酸、チオジ酪酸、チオジ吉草酸及びチオジヘキサン酸等が挙げられる。
エステル(A2)を構成するアルコール(y)としては、エステル(A1)を構成するアルコール(y)と同じものが挙げられる。
【0020】
硫黄原子含有アルキルエステル(A2)としては、炭素数4~24の硫黄原子含有脂肪族カルボン酸と炭素数8~32の脂肪族1価アルコールとのエステルが挙げられる。硫黄原子含有アルキルエステル(A2)としては、好ましくはチオジプロピオン酸と炭素数8~32の脂肪族1価アルコールとのエステルであり、より好ましくは、ビス(2-デシルテトラデシル)チオジプロピオネートである。エステル(A2)は1種単独で用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。エステル化合物(A)は、エステル(A1)及びエステル(A2)のうちの一方を用いてもよいし双方を用いてもよい。
【0021】
エステル化合物(A)としては、平滑性の観点から、好ましくは、エステル(A1)であり、より好ましくは、炭素数8~24の脂肪族不飽和モノカルボン酸と炭素数8~32の脂肪族(1価)アルコールとのエステル、炭素数8~24の脂肪族不飽和モノカルボン酸と炭素数3~8の脂肪族多価(2~6価)アルコールとのエステル、動植物油脂肪酸と炭素数3~8の脂肪族多価(2~6価)アルコールとのエステル並びに天然油脂及び炭素数4~24の硫黄原子含有脂肪族カルボン酸と炭素数8~32の脂肪族1価アルコールとのエステルであり、さらに好ましくは、2-デシルテトラデシルオレート、2-オクチルドデシルステアレート、ソルビタントリオレート、トリメチロールプロパンとヤシ油脂肪酸とのトリエステル、天然油脂及びビス(2-デシルテトラデシル)チオジプロピオネートである。
【0022】
エステル化合物(A)の化学式量又は数平均分子量(以下、Mnと略記することがある。)は、好ましくは400~1,100であり、更に好ましくは500~800の範囲である。
化学式量又はMnが400以上である場合、耐熱性又は油膜強度が特に優れるため、十分な製糸性が得られやすく、一方、Mnが1,100以下であれば、繊維と金属間の動摩擦係数が低くなり製糸性が向上するため好ましい。
【0023】
なお、本発明において、数平均分子量Mnはゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)による測定値である。以下にGPCの測定条件として一例を挙げる。
<GPCの測定条件>
機種:HLC-8120[東ソー(株)製]
カラム:TSK gelSuperH4000、TSK gel SuperH3000、TSK gel SuperH2000[いずれも東ソー(株)製]
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/分
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μl
標準:ポリオキシエチレングリコール[東ソー(株)製;TSK STANDARD POLYETHYLENE OXIDE]
データ処理装置:SC-8020[東ソー(株)製]
【0024】
エステル化合物(A)は、公知の方法で得ることができ、酸[脂肪族モノカルボン酸(x1)、脂肪族ポリカルボン酸(x2)及び硫黄原子含有脂肪族カルボン酸(x3)からなる群より選ばれる少なくとも1種]とアルコール(y)とをエステル化反応する方法等により得ることができる。前記のエステル化反応において、酸に代えて、そのエステル形成性誘導体[酸ハロゲン化物、酸無水物又は低級(例えば、炭素数1~4)アルコールエステル]を用いてもよい。
【0025】
アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)は、脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)、脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのアルキレンオキサイド付加物(B2)、前記アルキレンオキサイド付加物(B2)と脂肪族モノカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とのエステル(B3)、脂肪族モノカルボン酸とアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B4)及び硫黄原子含有脂肪族カルボン酸と脂肪族モノアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B5)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。以下において「アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)」を「エステル化合物(B)」と呼ぶことがある。また、以下において、「アルキレンオキサイド付加物」を「AO付加物」と呼ぶことがある。
【0026】
脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)を構成する脂肪族モノカルボン酸としては、硫黄原子非含有アルキルエステル(A1)を構成する脂肪族モノカルボン酸(x1)として例示したものと同様のものが挙げられる。以下において、「脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)」を「エステル(B1)」と呼ぶことがある。
【0027】
脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)としては、例えば、炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族飽和モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(b11)、炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族不飽和モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(b12)等が挙げられる。
【0028】
炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族飽和モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(b11)としては、例えば炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族飽和モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステルが挙げられる。前記エステル(b11)はモノエステルであってもジエステルであってもよい。
【0029】
前記エステル(b11)を構成する炭素数4~24の直鎖または分岐の脂肪族飽和モノカルボン酸としては、上記炭素数4~24の直鎖または分岐の脂肪族飽和モノカルボン酸(x11)と同様のものが挙げられる。
【0030】
前記エステル(b11)を構成するポリオキシアルキレンジオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシブチレングリコール及びポリオキシプロピレンポリオキシブチレングリコール等が挙げられる。ポリオキシアルキレンジオールは1種を用いてもよいし2種以上を併用してもよい。ポリオキシアルキレンジオールはオキシエチレン基を含むジオール(例えばポリオキシエチレングリコール及びポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等)が好ましい。
脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)1分子あたりのアルキレンオキシ基のモル数は好ましくは2モル以上、より好ましくは3モル以上であり、好ましくは50モル以下、より好ましくは45モル以下である。
【0031】
炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族不飽和モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(b12)としては、例えば炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族不飽和モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステルが挙げられる。前記エステル(b12)はモノエステルであってもジエステルであってもよい。
【0032】
前記エステル(b12)を構成する炭素数4~24の直鎖または分岐の脂肪族不飽和モノカルボン酸としては上記炭素数4~24の直鎖または分岐の脂肪族不飽和モノカルボン酸(x12)と同様のものが挙げられる。前記エステル(b12)を構成するポリオキシアルキレンジオールとしては、前記エステル(b11)を構成するポリオキシアルキレンジオールと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0033】
脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)としては、炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族不飽和モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステルが好ましく、オレイン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステルがより好ましく、オレイン酸とポリオキシエチレンジオールとのエステル(オレイン酸のEO付加物)がさらに好ましい。
【0034】
脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)は、公知の方法で脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとを反応させることで得ることができる。ポリオキシアルキレンジオールとしては、前記エステル(b11)を構成するポリオキシアルキレンジオールとして例示したものと同様のものを用いることができる。
【0035】
脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのアルキレンオキサイド付加物(B2)を構成する脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルは、水酸基を有するエステルであり、アルキレンオキサイドを付加可能なエステルである。以下において「脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのアルキレンオキサイド付加物(B2)」を「脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのAO付加物(B2)」または「AO付加物(B2)」と呼ぶことがある。
【0036】
脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルを構成する脂肪族モノカルボン酸としては、上記脂肪族モノカルボン酸(x1)と同様のものが挙げられる。AO付加物(B2)を構成する多価アルコールとしては、炭素数3~24の脂肪族多価(2~6価)アルコール[脂肪族飽和2価アルコール(例えば、1,6-ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコール等)及び脂肪族飽和3~6価アルコール(例えば、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン及びソルビトール等)等]が挙げられる。
【0037】
AO付加物(B2)を構成する脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルとしては、例えば、炭素数4~24の脂肪族モノカルボン酸と炭素数3~24の脂肪族多価アルコールとのエステルであって水酸基を有するもの及び水酸基を有する天然油脂等が挙げられる。前記水酸基を有する天然油脂としては、ひまし油及び硬化ひまし油等が挙げられる。
【0038】
AO付加物(B2)を構成するアルキレンオキサイド(AO)としては、エチレンオキサイド(EO)、プロピレンオキサイド(PO)及びブチレンオキサイド(BO)等が挙げられる。プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドは直鎖であってもよいし分岐を有していてもよい。また、AOは1種であってもよいし2種以上の組み合わせであってもよい。AOはEOを含んでいることが好ましい。AO付加物(B2)1分子あたりのAO付加モル数は好ましくは2モル以上、より好ましくは3モル以上であり、好ましくは50モル以下、より好ましくは45モル以下である。
【0039】
脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのAO付加物(B2)としては、例えば、炭素数4~24の脂肪族モノカルボン酸と炭素数3~24の脂肪族多価アルコールとのエステルのAO付加物、及び水酸基を有する天然油脂のAO付加物等が挙げられる。
【0040】
脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのAO付加物(B2)としては、好ましくは、炭素数8~24の脂肪族不飽和モノカルボン酸と炭素数3~8の脂肪族多価(2~6価)アルコールとの部分エステルのAO付加物及び水酸基を有する天然油脂のAO付加物であり、さらに好ましくは、ソルビタントリオレートのAO付加物、ヒマシ油のAO付加物及び硬化ヒマシ油のAO付加物である。
【0041】
脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのAO付加物(B2)は、公知の方法で脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとのエステルにアルキレンオキサイドを付加することで得ることができる。アルキレンオキサイドとしては、AO付加物(B2)を構成するアルキレンオキサイド(AO)で説明したものと同様のものが挙げられ、好ましい態様も同様である。
【0042】
前記アルキレンオキサイド付加物(B2)と脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸とのエステル(B3)において、前記AO付加物(B2)とエステルを形成する脂肪族モノカルボン酸としては上記脂肪族モノカルボン酸(x1)と同様のものが挙げられる。また、前記エステル(B3)において、前記AO付加物(B2)とエステルを形成する脂肪族ジカルボン酸としては上記脂肪族飽和ジカルボン酸(x21)及び上記脂肪族不飽和ジカルボン酸(x22)と同様のものが挙げられる。前記AO化合物(B2)とエステルを形成する脂肪族モノカルボン酸および脂肪族ジカルボン酸はそれぞれ1種であってもよいし、いずれか一方または双方が2種以上であってもよい。前記エステル(B3)はポリエステル(ジエステル、トリエステル、テトラエステル等)である。
【0043】
前記エステル(B3)としては、好ましくは、硬化ヒマシ油AO付加物とセバシン酸・ステアリン酸の複合ポリエステルである。
【0044】
前記エステル(B3)は、脂肪族カルボン酸[例えば炭素数4~24の脂肪族モノカルボン酸(x1)と、脂肪族ジカルボン酸((x21)及び(x22))等]と、上記AO付加物(B2)と、を用いたエステル化反応により得ることができる。
【0045】
脂肪族モノカルボン酸とアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B4)としては、例えば、炭素数4~24の脂肪族モノカルボン酸(x1)と上記アルコール(y)のAO付加物とのエステル等が挙げられる。前記エステル(B4)を構成する脂肪族モノカルボン酸は硫黄原子非含有の脂肪族カルボン酸である。
【0046】
脂肪族モノカルボン酸とアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B4)を構成する脂肪族モノカルボン酸としては、上記脂肪族モノカルボン酸(x1)と同様のものが挙げられる。脂肪族モノカルボン酸は1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0047】
脂肪族モノカルボン酸とアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B4)を構成するアルコール(y)のAO付加物としては、上記アルコール(y)(炭素数3~32の脂肪族アルコール)にAOを付加して得られる化合物等が挙げられる。
【0048】
脂肪族カルボン酸とアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B4)としては、好ましくは、炭素数4~24の脂肪族モノカルボン酸と多価(2~6価)アルコールのAO付加物とのエステルであり、より好ましくは、ドデカン酸とトリメチロールプロパンのAO付加物とのエステル(トリメチロールプロパンAO付加物のラウレート)及びステアリン酸とトリメチロールプロパンのAO付加物とのエステル(トリメチロールプロパンのAO付加物のステアレート)である。エステル(B4)は、モノエステルであっても、ジエステル、トリエステル等であってもよい。
【0049】
脂肪族カルボン酸とアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B4)は、脂肪族カルボン酸とアルコールのAO付加物とを用いたエステル化反応により得ることができる。
【0050】
硫黄原子含有脂肪族カルボン酸と脂肪族モノアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B5)を構成する硫黄原子含有脂肪族カルボン酸としては、上記硫黄原子含有脂肪族カルボン酸(x3)と同様のものが挙げられる。硫黄原子含有脂肪族カルボン酸は1種を単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
【0051】
前記エステル(B5)を構成する脂肪族モノアルコールのAO付加物としては、上記アルコール(y)で説明した炭素数3~32の脂肪族1価アルコールにAOを付加して得られる化合物等が挙げられる。
【0052】
前記エステル(B5)としては、好ましくは、炭素数4~24の硫黄原子含有脂肪族カルボン酸と炭素数8~32の脂肪族1価アルコールのAO付加物とのエステルであり、より好ましくはチオジプロピオン酸とラウリルアルコールのAO付加物とのエステルである。
【0053】
前記エステル(B5)は、硫黄原子含有脂肪族カルボン酸とアルコールのAO付加物とを用いたエステル化反応により得ることができる。
【0054】
エステル化合物(B)としては、高温における繊維-金属間の摩擦力低減効果の観点から、脂肪族モノカルボン酸とポリオキシアルキレンジオールとのエステル(B1)、脂肪族モノカルボン酸と多価アルコールとの部分エステルのアルキレンオキサイド付加物(B2)、前記アルキレンオキサイド付加物(B2)と脂肪族モノカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とのエステル(B3)、脂肪族モノカルボン酸とアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B4)及び硫黄原子含有脂肪族カルボン酸と脂肪族モノアルコールのアルキレンオキサイド付加物とのエステル(B5)からなる群より選ばれる二種以上を含むことが好ましく、炭素数4~24の直鎖又は分岐の脂肪族不飽和モノカルボン酸のAO付加物、炭素数8~24の脂肪族不飽和モノカルボン酸と炭素数3~8の脂肪族多価(2~6価)アルコールとの部分エステルのAO付加物、天然油脂のAO付加物、天然油脂のAO付加物と炭素数8~24の脂肪族カルボン酸と炭素数8~24の脂肪族ジカルボン酸とのエステル、炭素数4~24の脂肪族モノカルボン酸と多価(2~6価)アルコールのAO付加物とのエステル及び炭素数4~24の硫黄原子含有脂肪族カルボン酸と炭素数8~32の脂肪族(1価)アルコールのAO付加物とのエステルからなる群より選ばれる二種以上を含むことがより好ましく、オレイン酸のAO付加物、ソルビタントリオレートのAO付加物、硬化ヒマシ油のAO付加物、硬化ヒマシ油AO付加物とセバシン酸・ステアリン酸の複合ポリエステル、トリメチロールプロパンAO付加物のラウレート、トリメチロールプロパンのAO付加物のステアレート及びチオジプロピオン酸とラウリルアルコールAO付加物とのエステルからなる群より選ばれる二種以上を含むことが特に好ましい。
【0055】
エステル化合物(B)の化学式量又は数平均分子量(以下、Mnと略記することがある。)は、耐熱性又は油膜強度が優れるという観点から、好ましくは400~10000であり、更に好ましくは500~7000の範囲である。
【0056】
本発明において、アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)の重量Waに対するアルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)の重量Wbの比(Wb/Wa)は、高温における繊維-金属間の摩擦力低減効果の観点から、好ましくは80/20以下、より好ましくは75/25以下である。前記Wb/Waは、好ましくは20/80以上であり、より好ましくは25/75以上である。
【0057】
本発明の合成繊維用処理剤中のエステル化合物(A)の重量割合は、高温における繊維-金属間の摩擦力低減効果の観点からの観点から、合成繊維用処理剤中の不揮発成分の重量に基づき、好ましくは20~80重量%であり、より好ましくは25~75重量%である。本明細書において、不揮発性成分とは、鉱物油及び水以外の成分をいう。
【0058】
本発明の合成繊維用処理剤中のエステル化合物(B)の重量割合は、高温における繊維-金属間の摩擦力低減効果の観点から、合成繊維用処理剤の不揮発性成分の重量に基づき、好ましくは5~80重量%であり、より好ましくは10~75重量%である。
【0059】
界面活性剤(E)としては、高級アルコールのAO付加物[炭素数8~32の高級アルコール(例えば、上記炭素数8~32の脂肪族1価アルコール等)のEO又はEO/PO2~100モル付加物(2-エチルヘキシルアルコールEO及びPOブロック付加物、トリデカノールのPO及びEOブロック付加物、オレイルアルコールEO5~25モル付加物並びにステアリルアルコールEO/POランダム付加物等)]、アルキルフェノールのAO付加物[アルキル基の炭素数6~24の1価のアルキルフェノール(例えば、オクチルフェノール、ノニルフェノール及びドデシルフェノール等)のEO4~100モル付加物等]、炭化水素基を有する第一級又は第二級アミンのAO付加物[炭素数8~24の炭化水素基を有する第一級又は第二級アミンのEO又はEO/PO2~100モル付加物(牛脂アルキルアミンのEO5~25モル付加物等)等]、並びにアニオン界面活性剤[ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸(塩)、炭素数8~32の脂肪族1価アルコールのリン酸モノまたはジエステル(塩)(2-オクチルデカノールのリン酸モノ又はジエステルのカリウム塩、オレイルアルコールのリン酸モノ又はジエステルのカリウム塩、2-デシルテトラデカノールのリン酸モノ又はジエステルのナトリウム塩)、炭素数8~32の脂肪族1価アルコールのAO付加物のリン酸モノまたはジエステル(塩)(ドデシルアルコールEO付加物のリン酸モノ又はジエステルのカリウム塩)ならびにアルキルイミダゾリルオキシアルキレンカルボン酸塩等]等が挙げられる。界面活性剤(E)としては市販の界面活性剤を用いてもよい。市販の界面活性剤としては、例えば、花王(株)製の「エレクトロスリッパーF」(アルキルリン酸エステルカリウム塩)、および花王(株)製の「T-240」(アルキルアミノイミダゾリルオキシアルキレンカルボン酸ナトリウム塩)等が挙げられる。界面活性剤(E)には、上記エステル化合物(A)および上記エステル化合物(B)として用いるものは含まれない。
【0060】
界面活性剤(E)としては、炭化水素基を有する第一級又は第二級アミンのAO付加物及び高級アルコールのAO付加物が好ましく、牛脂アルキルアミンのEO5~25モル付加物、ステアリルアルコールEO/POランダム付加物及びオレイルアルコールEO5~25モル付加物が好ましい。
【0061】
本発明の合成繊維用処理剤中の界面活性剤(E)の重量割合は、発煙抑制効果の観点から、合成繊維用処理剤の不揮発性成分の重量に基づき、好ましくは0.5~31.0重量%であり、より好ましくは1.0~30.5重量%である。
【0062】
鉱物油(F)は、ノルマルパラフィンである。鉱物油(F)の重量割合は、高温における繊維-金属間の摩擦力低減効果の観点から、合成繊維用処理剤の総重量に基づき、好ましくは10重量%~75重量%であり、より好ましくは15重量%~73重量%である。
【0063】
本発明の合成繊維用処理剤は、さらにシリコーン系化合物(C)を含んでいてもよい。シリコーン系化合物(C)を含んでいると、繊維繊維間摩擦力低減効果をより優れたものとしうる。
【0064】
シリコーン系化合物(C)としては、シリコーンオイル及びアルキル基及びポリエーテル基等により変性されたシリコーンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルとしては市販のシリコーンオイルを用いてもよい。市販のシリコーンオイルとしては、例えば、ジメチルポリシロキサン[信越化学工業(株)製、「KF-96L-5CS」、「KF-96A-20CS」]、変性シリコーン[信越化学工業(株)製、「KF-4917」]、ポリエーテル変性シリコーン(信越化学工業(株)製、「KF-945」、ジメチルシリコーン[東レダウコーニング(株)製、「SH200-20CS」]、アルキル及びポリエーテル変性シリコーン[ダウ・東レ(株)製、「SF8419」等]、等が挙げられる。
【0065】
本発明の合成繊維用処理剤がシリコーン系化合物(C)を含む場合、シリコーン系化合物(C)の重量割合は、繊維-繊維間摩擦力の低減効果の観点から、合成繊維用処理剤の不揮発性成分の重量に基づき、好ましくは0.1~5重量%であり、更に好ましくは0.5~4重量%である。
【0066】
本発明の合成繊維用処理剤は、さらにヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含んでいてもよい。ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含んでいると、繊維用処理剤の加熱劣化物の硬度を柔らかくすることが可能である。
【0067】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)としては、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン[BASF社製イルガノックス565]、トリエチレングリコール-ビス-3-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオネート[イルガノックス245]、ペンタエリスリトール-テトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオナート][BASF社製イルガノックス1010]等が挙げられる。
【0068】
本発明の合成繊維用処理剤がヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)を含む場合、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)の重量割合は、処理剤の加熱劣化物の硬度を軟らかくする観点から、合成繊維用処理剤の不揮発性成分の重量に基づき、好ましくは0.1~5重量%であり、より好ましくは0.5~4重量%である。
【0069】
本発明の合成繊維用処理剤は、さらに外観調整剤(G)を含んでいてもよい。外観調整剤は、当該外観調整剤(G)を添加する前の段階では白濁しているものを透明にする等の作用を有しうる。また、本発明者の検討により外観調整剤(G)を添加した合成繊維用処理剤では、当該外観調整剤(G)を添加しないものよりも摩擦力(例えば繊維-繊維間の摩擦力)を低減する効果が高いことを見出した。このような効果を奏するメカニズムは、外観調整剤(G)を添加することにより合成繊維用処理剤が均一になり紡糸の際に摩擦が低くなると推測される。
【0070】
外観調整剤(G)としては、水、オレイルアルコール等が挙げられる。
【0071】
本発明の合成繊維用処理剤が外観調整剤(G)を含む場合、外観調整剤(G)の重量割合は、摩擦力を低減するという観点から、合成繊維用処理剤の重量に基づき、好ましくは0.1~5重量%であり、より好ましくは0.5~4重量%である。
【0072】
本発明の繊維用処理剤は、エステル化合物(A)、エステル化合物(B)、シリコーン系化合物(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、界面活性剤(E)、鉱物油(F)及び外観調整剤(G)以外の他の成分(H)を含んでいてもよい。
【0073】
他の成分(H)としては、ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の酸化防止剤(H1){例えばイオウ系酸化防止剤(2-メルカプトベンズイミダゾール等)及びリン系酸化防止剤[ポリ(ジプロピレングリコール)フェニルホスファイト等]}、粘度調整剤(H2)(オレイン酸等)、制電剤(アルキル燐酸エステル塩及び脂肪酸石鹸など)、pH調整剤[アルカリ類(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルキルアミン及びアルキルアミンのアルキレンオキサイド付加物)、有機酸類等]及び紫外線吸収剤等が挙げられる。
本発明の合成繊維用処理剤中の他の成分(H)の重量割合は、合成繊維用処理剤の不揮発性成分の重量に基づき、好ましくは0~10重量%であり、より好ましくは0~8重量%である。
【0074】
本発明において、合成繊維用処理剤の強酸価は、タールを除去しやすく、高温における繊維-金属間の摩擦低減効果に優れるという観点から、0.00~0.10mgKOH/gである。合成繊維用処理剤の強酸価が0.10mgKOH/g超であると、高温における繊維-金属間の摩擦低減効果が不充分になることがある。合成繊維用処理剤の強酸価は、好ましくは0.09mgKOH/g以下、より好ましくは0.08mgKOH/g以下である。本発明において、強酸価はJIS K 2501(2003年)に規定する方法に準拠した方法により測定される値である。本発明における強酸価は、サンプルを後述の混合溶剤に溶解し、指示薬としてチモールブルーを用いて滴定を行う。滴定は、0.1モル/Lの水酸化カリウム標準溶液で黄色になるまで行い、水酸化カリウム標準溶液の滴定量を、下記式にあてはめて強酸価を算出する。サンプルを溶解する混合溶剤としては、変性アルコール及びキシロールを混合してなる溶剤にチモールブルーを添加し、0.1モル/Lの塩酸標準溶液で赤色にし、次いで0.1モル/Lの水酸化カリウム標準溶液で黄色にしたものを使用する。
強酸価=(5.61×A×f)/S (1)
[上記式(1)中、Aは0.1モル/Lの水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)、fは0.1モル/L水酸化カリウム溶液の力価、Sはサンプルのはかり採り量(g)]
【0075】
合成繊維用処理剤の強酸価は、処理剤に含まれるエステル化合物(A)の強酸価、エステル化合物(B)の強酸価及びこれらの配合割合を調整することにより調整することができる。エステル化合物(A)の強酸価は、エステル化合物(A)の製造工程においてエステル化後に残存する酸触媒の量を減らすこと等により小さくすることができる。エステル化合物(B)の強酸価はエステル化合物(B)の製造工程においてエステル化後に残存する酸触媒の量を減らすこと等により小さくすることができる。上記エステル化合物[(A)及び(B)]のエステル化後に残存する酸触媒の量を減らす方法としては、例えばエステル化反応後に処理剤を加えて濾過する方法が挙げられる。
【0076】
エステル化反応後に処理剤を加えて濾過する方法についてさらに説明する。当該方法においては、まず、エステル化反応後の反応槽の温度をエステル化の際の温度よりも低温(例えば80~100℃)に設定する。その後、処理剤(例えばケイ酸マグネシウム等)を、エステル化後に残存する触媒の量を考慮した量(例えば、エステル化の際に添加する触媒の重量の約3倍)添加し、30分~60分撹拌した後、濾過を行う。
【0077】
本発明の合成繊維用処理剤の25℃における動粘度は60mm/s以下である。合成繊維用処理剤の動粘度(25℃)を60mm/s以下とすることにより、処理剤の飛散を防ぎ、製糸工程の安定性に優れた合成繊維用処理剤を提供することができる。合成繊維用処理剤の動粘度(25℃)が60mm/s超であると、繊維に対する処理剤の均一付着性が低下し摩擦低減効果が不十分になることがある。合成繊維用処理剤の動粘度(25℃)は、処理剤飛散防止と、摩擦低減効果の両立の観点から好ましくは4mm/s以上、より好ましくは5mm/s以上、さらに好ましくは6mm/s以上であり、好ましくは55mm/s以下、より好ましくは50mm/s以下である。
25℃における動粘度は、合成繊維用処理剤を25℃の温度に温調した状態で、ウベローデ型粘度計などを用いて測定することができる。
【0078】
本発明の合成繊維用処理剤は、エステル化合物(A)、エステル化合物(B)、界面活性剤(E)及び鉱物油(F)と、必要により添加する成分[シリコーン系化合物(C)、ヒンダードフェノール系酸化防止剤(D)、外観調整剤(G)及び他の成分(H)]と、揮発性成分とを、常温又は必要により加熱(例えば30~90℃)して混合することにより得ることができる。各成分の配合順序、配合方法は特に限定されない。
【0079】
本発明の合成繊維は、合成繊維本体(処理前の合成繊維、未処理繊維)を、合成繊維用処理剤で処理して得ることができる。
本発明の合成繊維用処理剤は、非加熱かつ希釈しない状態で用いること(ストレート給油)ができる。
【0080】
<合成繊維>
本発明の合成繊維は、合成繊維本体を本発明の合成繊維用処理剤で処理してなる合成繊維である。
合成繊維用処理剤による処理方法としては、当該処理剤を合成繊維本体(未処理繊維)に付着させる方法等が挙げられる。
合成繊維用処理剤の合成繊維本体への付着方法としては、公知の方法が使用でき、ローラー又はガイド給油装置等を用いて、紡糸工程、延伸工程又は巻取り前に処理剤を付与することができる。
【0081】
本発明の合成繊維は、前記アルキレンオキシ基を有するエステル化合物(B)及び前記アルキレンオキシ基を有さないエステル化合物(A)の合計含有量が合成繊維用処理剤中の不揮発性成分の重量割合が、製糸性の観点から、処理後の合成繊維の重量に基づき、0.1~3.0重量%であることが好ましく、0.2~2.5重量%であることがより好ましい。
【0082】
本発明の合成繊維用処理剤は合成繊維に用いることができる。
合成繊維は、例えば、エアバッグ用ナイロン繊維、タイヤコード用ナイロン繊維、エアバッグ用ポリエステル繊維、タイヤコード用ポリエステル繊維及びシートベルト用ポリエステル繊維等の産業資材用繊維である。
本発明の合成繊維用処理剤で処理した合成繊維を用いて得た布は、気密性に優れるため、特にエアバッグ用の合成繊維(エアバッグ基布)に用いる処理剤として、有用である。
【0083】
<合成繊維の製造方法>
本発明の合成繊維の製造方法は、合成繊維本体を合成繊維用処理剤で処理する工程を含む。前記工程において、合成繊維用処理剤は非加熱かつ未希釈状態で用いることが好ましい。本発明の合成繊維用処理剤はそのままの状態で用いることができるので、加熱する工程及び希釈する工程が不要であり、製造工程を簡素化することが可能である。
【実施例0084】
以下本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0085】
[強酸価の測定]
各化合物及び合成繊維用処理剤の強酸価はJIS K 2501(2003年)に規定する方法に準拠する方法により測定した。
(混合溶液の調製)
変性アルコールとキシロールとを混合してなる溶剤200mLに対しチモールブルーを0.3mL加えて、0.1モル/Lの塩酸標準溶液を、液色が赤色を呈するまで加え、さらに、液色が赤色から黄色に変色し黄色が30秒間持続するまで0.1モル/Lの水酸化カリウム標準溶液を加えることにより混合溶液を調製した。混合溶液の調製に用いる変性アルコールとしては、エタノールとイソプロパノールとメチルエチルケトンとの混合物で、混合比率はエタノール/イソプロパノール/メチルエチルケトン=88/10/2であるものを用いる。変性アルコールとキシロールとを混合してなる溶剤としては、変性アルコールとキシロールとを、変性アルコール/キシロール=2/1(体積比)で混合したものを用いる。
(滴定)
500mLの三角フラスコにサンプルを50g精秤し、上記混合溶液200mLを加えて溶解した。
滴定は、0.1モル/Lの水酸化カリウム標準溶液で滴定し、赤色から黄色に変色し黄色が30秒間持続する点を終点とした。当該水酸化カリウム溶液の滴定量Aを下記式(1)にあてはめて、強酸価を算出した。混合溶剤に溶解した直後の溶液の液色が溶解前から変化がない場合、強酸価を0mgKOH/gと判断した。
強酸価=(5.61×A×f)/S (1)
[上記式(1)中、Aは0.1モル/Lの水酸化カリウム溶液の滴定量(mL)、fは0.1モル/L水酸化カリウム溶液の力価、Sはサンプルのはかり採り量(g)]
【0086】
<製造例1:(A-1)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ヤシ油脂肪酸338g(1.6モル)、トリメチロールプロパン80g(0.6モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)2.0gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い、トリメチロールプロパンヤシ油脂肪酸トリエステル(A-1)を得た。(A-1)の強酸価は0.1mKOH/gであった。
【0087】
<製造例2:(A’-1)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ヤシ油脂肪酸338g(1.6モル)、トリメチロールプロパン80g(0.6モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に65℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行い、(A’-1)を得た。(A’-1)はエステル化後の触媒除去処理を行っていないトリメチロールプロパンヤシ油脂肪酸トリエステルであり、強酸価は0.80mKOH/gであった。
【0088】
<製造例3:(A-3)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ステアリン酸284g(1.0モル)、2-オクチル-1-ドデカノール299g(1.0モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸アルミニウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード700SL」)1.5gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い2-オクチルドデシルステアレート(A-3)を得た。(A-3)の強酸価は0.05mKOH/gであった。
【0089】
<製造例4:(A-4)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、オレイン酸282g(1.0モル)、2-デシル-1-テトラデカノール367g(1.0モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸アルミニウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード700SL」)1.5gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い2-デシルテトラデシルオレート(A-4)を得た。(A-4)の強酸価は0.1mKOH/gであった。
【0090】
<製造例5:(A’-2)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、オレイン酸282g(1.0モル)、2-デシル-1-テトラデカノール367g(1.0モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行い(A’-2)を得た。(A’-2)はエステル化後の酸触媒除去処理を行っていない2-デシルテトラデシルオレートであり、強酸価は0.47mKOH/gであった。
【0091】
<製造例6:(A-5)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、チオジプロピオン酸89g(0.5モル)、2-デシル-1-テトラデカノール367g(1.0モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸アルミニウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード700SL」)1.5gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行いビス(2-デシルテトラデシル)チオジプロピオネート(A-5)を得た。強酸価は0.1mgKOH/gであった。
【0092】
<製造例7:(A’-3)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、チオジプロピオン酸89g(0.5モル)、2-デシル-1-テトラデカノール367g(1.0モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行い(A’-3)を得た。(A’-3)はエステル化後の酸触媒除去処理を行っていないビス(2-デシルテトラデシル)チオジプロピオネートであり、強酸価は0.35mKOH/gであった。
【0093】
<製造例8:(B-2)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ステアリン酸247.1g(0.87モル)、トリメチロールプロパンEO24モル付加物347g(0.29モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)1.5gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い、トリメチロールプロパンEO24モル付加物トリステアレート(B-2)を得た。(B-2)の強酸価は0.1mKOH/gであった。
【0094】
<製造例9:(B-3)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ラウリン酸174.3g(0.87モル)、トリメチロールプロパンEO24モル付加物347g(0.29モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)1.5gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い、トリメチロールプロパンEO24モル付加物トリラウレート(B-3)を得た。(B-3)の強酸価は0.1mKOH/gであった。
【0095】
<製造例10:(B-4)の製造>
乾燥したAOA反応槽に硬化ヒマシ油280g(0.3モル)、触媒である水酸化カリウム0.3gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、100℃まで昇温し、減圧度2.7kPaで90分間脱水を行った。脱水後160℃まで昇温し、エチレンオキサイド335g(7.6モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行った後、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)6.2g、水2.7gを加え80℃で30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い、硬化ヒマシ油EO25モル付加物(B-4)を得た。(B-4)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0096】
<製造例11:(B-5)の製造>
製造例10で製造した硬化ヒマシ油EO25モル付加物(B-4)73.8gと豚脂硬化油及び牛脂硬化油の混合物26.2gとを混合し、豚脂硬化油及び牛脂硬化油の混合物を26.2%含有する硬化ヒマシ油25モル付加物(B-5)を得た。(B-5)の強酸価は0mKOH/gであった。
実施例7で用いている(B-5)7.5重量部中の硬化ヒマシ油EO25モル付加物[AO付加物(B2)に相当]は5.5重量部、豚脂硬化油及び牛脂硬化油の混合物は2.0重量部[エステル(A1)に相当]である。つまり(B-5)はエステル化合物(B)とエステル化合物(A)との混合物であるが、表1~4においては(B)成分の欄に(B-5)の配合量そのものを記載し、同欄のカッコ内に(B-5)中の豚脂硬化油及び牛脂硬化油の混合物の配合量を記載した。
【0097】
<製造例12:(B-6)の製造>
乾燥したAOA反応槽に硬化ヒマシ油280g(0.3モル)、触媒である水酸化カリウム0.2gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、100℃まで昇温し、減圧度2.7kPaで90分間脱水を行った。脱水後160℃まで昇温し、エチレンオキサイド132.5g(3.0モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行った後、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)4.1g、水1.8gを加え80℃で30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い、硬化ヒマシ油EO10モル付加物(B-6)を得た。(B-6)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0098】
<製造例13:(B-7)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ステアリン酸58g(0.2モル)、セバシン酸32g(0.16モル)製造例10で得た、硬化ヒマシ油EO25モル付加物545g(0.27モル)、エステル化触媒である濃流酸を1.8g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液1.3gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に140℃まで昇温し、10時間エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)1.5gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い硬化ヒマシ油EO25モル付加物・セバシン酸・ステアリン酸の複合ポリエステル(B-7)を得た。(B-7)の強酸価は0.1mKOH/gであった。
【0099】
<製造例14:(B’-2)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ステアリン酸58g(0.2モル)、セバシン酸32g(0.16モル)製造例10で得た、硬化ヒマシ油EO25モル付加物545g(0.27モル)、エステル化触媒である濃流酸を1.8g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液1.3gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に140℃まで昇温し、10時間エステル化反応を行い(B’-2)を得た。(B’-2)はエステル化後の酸触媒除去処理を行っていない硬化ヒマシ油EO25モル付加物・セバシン酸・ステアリン酸の複合ポリエステルであり、(B’-2)の強酸価は3.4mKOH/gであった。
【0100】
<製造例15:(B-8)の製造>
乾燥したAOA反応槽にオレイン酸207g(0.7モル)、触媒である水酸化カリウム0.7gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、100℃まで昇温し、減圧度2.7kPaで90分間脱水を行った。脱水後160℃まで昇温し、エチレンオキサイド293g(6.7モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行った後、酢酸0.7gを加え60℃で30分間撹拌し、オレイン酸のEO9モル付加物(B-8)を得た。(B-8)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0101】
<製造例16:(B-9)の製造>
製造例6において、「2-デシル-1-テトラデカノール367g(1.0モル)」に代えて「ラウリルアルコールEO3モル付加物318g(1.0モル)」を用いる以外は同様にしてビス(ラウリルアルコールEO3モル付加物)チオジプロピオネート(B-9)を得た。(B-9)の強酸価は0.01mKOH/gであった。
【0102】
<比較製造例1:(B’-1)の製造>
(C1)ビスフェノールAのEO2モル付加物の製造
乾燥したAOA反応槽に、ビスフェノールAを701.4g(3.1モル)、触媒である水酸化カリウム2.3gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、110℃まで昇温する。昇温後、水素化ホウ素ナトリウム水溶液(濃度20%)を0.09g仕込み、減圧窒素置換を行う。その後、120℃まで昇温し、エチレンオキサイド298.6g(6.8モル)を徐々に仕込み圧力0.3MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行った後、リン酸(濃度90%)を4.1g加え95℃で1時間混合し、さらに、水を24g加え95℃で1時間混合する。その後、115℃で減圧脱水を行う。その後、ろ過を行いビスフェノールAのEO2モル付加物を得た。
【0103】
(C2)ビスフェノールAのEO2モル付加物ジラウレートの製造
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、(C1)で得た、ビスフェノールAのEO2モル付加物を268.2g(0.8モル)、ラウリン酸254.7g(1.3モル)を仕込み70℃まで無撹拌で昇温した。撹拌可能となれば、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.3gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に150℃まで昇温し、10時間エステル化反応を行い(B’-1)を得た。(B’―1)は、エステル化後の酸触媒除去処理を行っていないビスフェノールAのEO2モル付加物のジラウレートである。(B’-1)の強酸価は0.29mKOH/gであった。
【0104】
<製造例17:(E-1)の製造>
乾燥したAOA反応槽に牛脂アルキルアミン81g(0.3モル)、触媒である水酸化カリウム3.4gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、100℃まで昇温し、減圧度2.7kPaで90分間脱水を行った。脱水後160℃まで昇温し、エチレンオキサイド198g(4.5モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行い、牛脂アルキルアミンEO15モル付加物(E-1)を得た。(E-1)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0105】
<製造例18:(E-2)の製造>
乾燥したAOA反応槽に、ステアリルアルコール100g(0.4モル)、触媒である水酸化カリウム1.2gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、100℃まで昇温し、減圧度2.7kPaで90分間脱水を行った。脱水後170℃まで昇温し、プロピレンオキサイド232g(4.0モル)とエチレンオキサイド228.8g(5.2モル)を徐々に仕込み圧力0.4MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行い、ステアリルアルコールのエチレンオキサイド13モルプロピレンオキサイド10モル付加物(ステアリルアルコールEO13モルPO10モルランダム付加物)を得た。(E-2)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0106】
<製造例19:(E-3)の製造>
乾燥したAOA反応槽に、2-エチルヘキシルアルコール65g(0.5モル)、触媒である水酸化カリウム2.3gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、110℃まで昇温し、プロピレンオキサイド435g(7.5モル)を徐々に仕込み圧力0.4MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行い、同じ温度でエチレンオキサイド286g(6.5モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行い、2-エチルヘキシルアルコールのプロピレンオキサイド15モルエチレンオキサイド13モル付加物(2-エチルヘキシルアルコールPO15モルEO13モルブロック付加物)を得た。(E-3)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0107】
<製造例20:(E-4)の製造>
製造例19において、プロピレンオキサイドの使用量を580g(10モル)に変えたこと、およびエチレンオキサイドの使用量を198g(4.5モル)に変えたこと以外は、製造例19と同じ操作を行い、2-エチルヘキシルアルコールのプロピレンオキサイド20モルエチレンオキサイド9モル付加物(2-エチルヘキシルアルコールPO20モルEO9モルブロック付加物)を得た。(E-4)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0108】
<製造例21:(E-5)の製造>
乾燥したAOA反応槽に、オレイルアルコール116.8g(0.4モル)、触媒である水酸化カリウム1.5gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、100℃まで昇温し、減圧度2.7kPaで90分間脱水を行った。脱水後150℃まで昇温し、エチレンオキサイド133.3g(3.0モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行い、オレイルアルコールのEO7モル付加物を得た。(E-5)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0109】
<製造例22:(E-6)の製造>
乾燥したAOA反応槽に、トリデカノール100g(0.5モル)、触媒である水酸化カリウム0.3gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、100℃まで昇温し、減圧度2.7kPaで90分間脱水を行った。脱水後140℃まで昇温し、プロピレンオキサイド87g(1.5モル)を徐々に仕込み圧力0.4MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行い、同じ温度でエチレンオキサイド110g(2.5モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行い、トリデカノールのプロピレンオキサイド3モルエチレンオキサイド5モル付加物(トリデカノ-ルPO3モルEO5モルブロック付加物)を得た。(E-6)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0110】
<製造例23:(E-7)の製造>
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、2-オクチルデカノール299g及び無水リン酸47.3gを仕込み、60℃で反応させた後、120℃に昇温し反応を継続する。その後、60℃に冷却し、水酸化カリウム50.3gを投入し、2-オクチルデカノールのリン酸(モノ-、ジ-)エステルカリウム塩を得た(モノエステルとジエステルの重量割合は1:1)。得られた2-オクチルデカノールのリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、2-オクチルデカノールのリン酸エステルカリウム塩(E-7)を90重量%含有する溶液を得た。(E-7)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0111】
<製造例24:(E-8)の製造>
攪拌機、温度計を備えた反応容器に、ラウリルアルコールEO3モル付加物(ドデシルアルコールEO3モル付加物)1109g及び無水リン酸165gを仕込み、60℃で反応させた後、水酸化カリウム359gを投入し、ラウリルアルコールのEO3モル付加物のリン酸(モノ-、ジ-)エステルのカリウム塩を得た(モノエステルとジエステルの重量割合は1:1)。得られたラウリルアルコールのEO3モル付加物のリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、ラウリルアルコールのEO3モル付加物のリン酸エステルカリウム塩(E-8)を70重量%含有する溶液を得た。(E-8)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0112】
<製造例25:(E-9)の製造>
製造例23において、2-オクチルデカノール299gに代えてオレイルアルコール648g用いたこと、および無水リン酸を114g用いたこと以外は製造例23と同様の操作を行い、オレイルアルコールのリン酸(モノ-、ジ-)エステルカリウム塩を得た(モノエステルとジエステルの重量割合は2:3)。得られたオレイルアルコールのリン酸エステルカリウム塩に水を加えて、オレイルアルコールのリン酸エステルカリウム塩(E-9)を25重量%含有する溶液を得た。(E-9)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0113】
<製造例26:(E-10)の製造>
製造例23において、2-オクチルデカノール299gに代えて2-デシルテトラデカノールを424g用いたこと、および無水リン酸を54g用いたこと、水酸化カリウム50.3gに代えて水酸化ナトリウム26gを用いたこと以外は製造例23と同様の操作を行い、2-デシルテトラデカノールのリン酸(モノ-、ジ-)エステルナトリウム塩を得た(モノエステルとジエステルの重量割合は1:1)。得られた2-デシルテトラデカノールのリン酸エステルナトリウム塩に水を加えて、2-デシルテトラデカノールのリン酸エステルナトリウム塩(E-10)を95重量%含有する溶液を得た。(E-10)の強酸価は0mKOH/gであった。
【0114】
<実施例1>
表1に記載の量のエステル化合物(B)[硬化ヒマシ油EO25モル付加物、硬化ヒマシ油EO25モル付加物・セバシン酸・ステアリン酸の複合ポリエステル、オレイン酸のEO9モル付加物及びビス(ラウリルアルコールEO3モル付加物)チオジプロピオネート]に、酸化防止剤(D-1)を添加し、70~80℃で1時間攪拌混合した。
混合後、40℃以下に冷却し、エステル化合物(A)[(A-1)トリメチロールプロパンヤシ油脂肪酸トリエステル]、シリコーン系化合物(C-1)及び界面活性剤(E)[(E-1)牛脂アルキルアミンEO15モル付加物]を混合した。
次に、鉱物油(F)(JX日鉱日石エネルギー(株)製「カクタスノルマルパラフィンYHNP」)30.0重量部を加えて混合することにより、実施例1の合成繊維用処理剤を得た。
実施例1の合成繊維用処理剤の25℃における動粘度を測定したところ、30.0mm/sであった。動粘度は、25℃に温調した合成繊維用処理剤を、ウベローデ型粘度計を用いて測定した。
【0115】
<実施例2~17及び比較例1~6>
各成分[エステル化合物(A)、エステル化合物(B)、シリコーン系化合物(C)、酸化防止剤(D)、界面活性剤(E)、鉱物油(F)、外観調整剤(G)及び粘度調整剤(H)]として表1~表4に記載の種類の化合物を、表1~表4に記載の量(重量部)で用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い実施例2~17及び比較例1~6の合成繊維用処理剤を製造した。外観調整剤(G)または粘度調整剤(H)を用いる例では、鉱物油(F)を加えた後に、外観調整剤(G)または粘度調整剤(H)を加えた。
表1~表4に記載のエステル化合物(A)、エステル化合物(A’)、エステル化合物(B)、エステル化合物(B’)、シリコーン系化合物(C)、酸化防止剤(D)、他の酸化防止剤(H1)、界面活性剤(E)及び粘度調整剤(H)の量は、各成分の配合量(重量部)であり、界面活性剤(E-7)、(E-8)、(E-9)、(E-10)及び(E-11)については溶液の量(水を含む量)である。
【0116】
表1~表4に記載の各成分は以下の通りである。表1~表4においては、触媒除去処理を行っていない成分について「(未処理)」と記載した。
(A-1):製造例1で製造したトリメチロールプロパンヤシ油脂肪酸トリエステル(化学式量=707)
(A-2):植物油脂(日清オイリオグループ(株)製「菜種白絞油」、グリセリンと炭素数17~20の脂肪族カルボン酸とのトリエステル)
(化学式量=707)
(A-3):製造例3で製造した2-オクチルドデシルステアレート(化学式量=565)
(A-4):製造例4で製造した2-デシルテトラデシルオレート(化学式量=618)
(A-5):製造例6で製造したビス(2-デシルテトラデシル)チオジプロピオネート(化学式量=850)
(A’-1):製造例2で製造したトリメチロールプロパンヤシ油脂肪酸トリエステル(触媒除去処理なし、化学式量=707)
(A’-2):製造例5で製造した2-デシルテトラデシルオレート(触媒除去処理なし、化学式量=618)
(A’-3):製造例7で製造したビス(2-デシルテトラデシル)チオジプロピオネート(触媒除去処理なし、化学式量=850)
【0117】
(B-1):ソルビタントリオレートEO20モル付加物(三洋化成工業(株)製、「サンデット OS-200A」)(化学式量=1840、強酸価0mKOH/g)
(B-2):製造例8で製造したトリメチロールプロパンのEO24モル付加物のトリステアレート
(B-3):製造例9で製造したトリメチロールプロパンのEO24モル付加物のトリラウレート
(B-4):製造例10で製造した硬化ヒマシ油EO25モル付加物(化学式量=2040)
(B-5): 製造例11で製造した硬化ヒマシ油EO25モル付加物と豚脂硬化油及び牛脂硬化油との混合物
(B-6):製造例12で製造した硬化ヒマシ油EO10モル付加物(化学式量=1380)
(B-7): 製造例13で製造した硬化ヒマシ油EO25モル付加物・セバシン酸・ステアリン酸の複合ポリエステル(化学式量=3800)
(B-8):製造例15で製造したオレイン酸のEO9モル付加物(化学式量=678)
(B-9):製造例16で製造したビス(ラウリルアルコールEO3モル付加物)チオジプロピオネート(Mn=778)
(B’-1):比較製造例1で製造したビスフェノールAのEO2モル付加物のジラウレート(触媒除去処理なし、化学式量=680)
(B’-2): 製造例14で製造した硬化ヒマシ油EO25モル付加物・セバシン酸・ステアリン酸の複合ポリエステル(触媒除去処理なし、化学式量=3800)
【0118】
(C-1):ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製、「KF-96L-5CS」)
(C-2):変性シリコーン(信越化学工業(株)製、「KF-4917」)
(C-3):ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製、「KF-96A-20CS」)
(C-4):アルキル変性シリコーン(ダウ・東レ(株)製、「SF8419」)
【0119】
(D-1):ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン(株)製、「イルガノックス245」)
(D-2):ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン(株)製、「イルガノックス565」)
(H1-1):2-メルカプトベンズイミダゾール(大内新興化学工業(株)製、「ノクラックMB」)
【0120】
(E-1):製造例17で製造した牛脂アルキルアミンEO15モル付加物(化学式量=930)
(E-2):製造例18で製造したステアリルアルコールPO13モルEO10モルランダム付加物(化学式量=1464)
(E-3):製造例19で製造した2-エチルヘキシルアルコールのPO15モルEO13モルブロック付加物(化学式量=1572)
(E-4):製造例20で製造した2-エチルヘキシルアルコールのPO20モルEO9モルブロック付加物(化学式量=1686)
(E-5):製造例21で製造したオレイルアルコールのEO7モル付加物(化学式量=576)
(E-6):製造例22で製造したトリデカノールのPO3モルEO5モルブロック付加物(化学式量=594)
(E-7):製造例23で製造した2-オクチルデカノールリン酸(モノ,ジ)エステルのカリウム塩を90重量%含有する溶液
(E-8):製造例24で製造したドデシルアルコールEO3モル付加物のリン酸(モノ,ジ)エステルのカリウム塩を70重量%含有する溶液
(E-9):製造例25で製造したオレイルアルコールのリン酸(モノ-、ジ-)エステルカリウム塩を25重量%含有する溶液
(E-10):製造例26で製造した2-デシルテトラデカノールのリン酸エステルナトリウム塩を95重量%含有する溶液
(E-11):オレイン酸カリウムを10重量%含有する溶液[強酸価は0mKOH/g]
(E-12):アルキルリン酸エステルカリウム塩[花王(株)製、「エレクトロストリッパーF」]
(E-13):アルキルイミダゾリルオキシアルキレンカルボン酸ナトリウム塩[花王(株)製、「T-240」]
【0121】
<評価試験>
実施例1~17及び比較例1~6の処理剤を用い、下記の方法により評価試験を行った。
【0122】
<評価試験1:繊維-金属間の摩擦力の測定>
(1-1)評価試験用合成繊維用処理剤液の調製
実施例1~17および比較例1~6の合成繊維用処理剤を、不揮発性成分の濃度が0.5重量%となるように、ジエチルエーテルに溶解し評価試験用の合成繊維用処理剤液を調製した。
【0123】
(1-2)試料糸の作製
(1-1)で調製した各例の処理剤液に、ポリエステル製の原糸(1000デニール/72フィラメント)を浸して、5分間静置した後、原糸をかき混ぜながら風乾しジエチルエーテルを除去し、合成繊維用処理剤を付着させた試料糸[試料糸の重量に対して合成繊維用処理剤(不揮発性成分)の重量割合は0.3%]を作製した。
【0124】
(1-3)繊維-金属間の摩擦力の測定(25℃、0.5m/分)
(1-2)で作製した試料糸を、温度25℃、湿度40%の条件下で、TORAY式摩擦試験機を用いて表面温度が25℃の摩擦体の表面(表面梨地クロムメッキ、直径5cmの円柱状の摩擦体)に初期荷重0.98N、糸速度0.5m/分、接触角180°で接触させた後の荷重を測定し、試料糸と摩擦体との摩擦力とした。結果を表1~表4に示す。
摩擦力の値が低いほど、繊維用処理剤により処理した繊維とローラーとの間の摩擦力が低いことを示す。上記の測定条件において摩擦力は16.6N以下が好ましい。
【0125】
(1-4)繊維-金属間の摩擦力の測定(25℃、300m/分)
(1-3)において糸速度を300m/分としたこと以外は、(1-3)と同じ操作を行い、試料糸と摩擦体との摩擦力を測定した。結果を表1~表4に示す。
摩擦力の値が低いほど、繊維用処理剤により処理した繊維とローラーとの間の摩擦力が低いことを示す。上記の測定条件において摩擦力は20.6N以下が好ましい。
【0126】
(1-5)高温環境下における繊維-金属間の摩擦力の測定(240℃、0.5m/分)
(1-2)で作製した試料糸を、温度240℃、湿度40%の条件下で、TORAY式摩擦試験機を用いて表面温度が25℃の摩擦体の表面(表面梨地クロムメッキ、直径5cmの円柱状の摩擦体)に初期荷重0.98N、糸速度0.5m/分、接触角180°で接触させた後の荷重を測定し、試料糸と摩擦体との摩擦力とした。結果を表1~表4に示す。
摩擦力の値が低いほど、繊維用処理剤により処理した繊維とローラーとの間の摩擦力が低いことを示す。上記の測定条件において摩擦力は13.1N以下が好ましい。
【0127】
(1-6)高温環境下における繊維-金属間の摩擦力の測定(240℃、300m/分)
(1-5)において糸速度を300m/分としたこと以外は、(1-5)と同じ操作を行い、試料糸と摩擦体との摩擦力を測定した。結果を表1及び表2に示す。
摩擦力の値が低いほど、繊維用処理剤により処理した繊維とローラーとの間の摩擦力が低いことを示す。上記の測定条件において摩擦力は15.0N以下が好ましい。
【0128】
<評価試験2:繊維-繊維間の摩擦力の測定>
(2-1)繊維-繊維間の摩擦力の測定(25℃、0.5m/分)
評価試験1の(1-2)で作製した試料糸を、温度25℃、湿度40%の条件下、TORAY式摩擦試験機を用いて初期荷重0.98N、糸速度0.5m/分、ツイスト数2.5回における繊維-繊維間の摩擦力を測定した。結果を表1~表4に示す。
摩擦力の値が高いほど、繊維同士の摩擦力が低いことを示す。上記の測定条件において摩擦力は16.4N以下が好ましい。
【0129】
(2-2)繊維-繊維間の摩擦力の測定(25℃、100m/分)
(2-1)において糸速度を100m/分としたこと以外は、(2-1)と同じ操作を行い、繊維-繊維間の摩擦力を測定した。結果を表1及び表2に示す。
摩擦力の値が低いほど、繊維同士の摩擦力が低いことを示す。上記の測定条件において摩擦力は18.7N以下が好ましい。
【0130】
<評価試験3:加熱張力変動の算出>
(3-1)加熱張力変動の算出
評価試験1の(1)で調製した合成繊維用処理剤液を市販のナイロンエアバッグ糸(470dtx)に合成繊維用処理剤(純分)として1.0重量%となるように付着させた試験糸を、温度250℃の条件下で摩擦体(表面梨地クロムメッキ、直径5cm)に初期荷重500g、糸速度0.5m/min、接触角180°で接触させ、接触後の荷重T1(g)及び、24時間走行させた後の荷重T2(g)を東レ式高荷重摩擦測定器により測定し、加熱張力変動(T2-T1)(g)を算出した。
加熱張力変動が小さいほど、長時間使用における断糸及び毛羽が少なくなることを意味する。加熱張力変動は20g以下が好ましい。加熱張力変動が20g以下であれば、断糸及び毛羽がほとんど発生しない。
【0131】
<評価試験4:タール硬度の測定>
(4-1)サンプルの作成
SUS製シャーレ(直径50mm、深さ10mm)に各例の合成繊維用処理剤0.5gを量り取り、エスペック(株)製の防爆型循風乾燥機SAFETY OVEN SPHH-101で250℃、ダンパ25%で24時間焼成しタール硬度測定用のサンプルを作成した。
(4-2)硬度測定
合成繊維用処理剤の加熱劣化物の硬度はJIS K 5600-5-4:1999「塗料一般試験方法-第5部:塗膜の機械的性質-第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠し手かき法によって測定した。
作成した合成繊維用処理剤の加熱劣化物の硬度を測定した。なお、硬度が低い程、処理剤の加熱劣化物の除去性が良好であることを示す。硬度は6H以下が好ましい。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
【表3】
【0135】
【表4】
【0136】
表1~表4の結果から、実施例1~17の合成繊維用処理剤を用いた合成繊維では、25℃および240℃における繊維-金属間の摩擦力が低く、タール硬度が低いということがわかる。したがって、本発明によれば、タールが軟らかいためタールを除去しやすく、高温における繊維-金属間の摩擦低減効果に優れた合成繊維用処理剤を提供することができるということがわかる。