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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098497
(43)【公開日】2024-07-23
(54)【発明の名称】磁気共鳴イメージング装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/055 20060101AFI20240716BHJP
【FI】
A61B5/055 311
A61B5/055 376
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023221437
(22)【出願日】2023-12-27
(31)【優先権主張番号】P 2023001834
(32)【優先日】2023-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023082316
(32)【優先日】2023-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹島 秀則
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AA13
4C096AA14
4C096AB41
4C096AD12
4C096BA05
4C096DA30
(57)【要約】
【課題】MRスペクトロスコピーにおける注目信号のコントラストを向上すること。
【解決手段】 シーケンス制御回路は、複数の周波数選択パルスを含む第1の周波数選択パターンに基づく第1の周波数選択手段を含む第1のMRSパルスシーケンスを用いて測定対象に関する第1のデータを収集する第1のデータ収集と、第1の周波数選択パターンと異なり複数の周波数選択パルスを含む第2の周波数選択パターンを選択する第2の周波数選択手段を含む第2のMRSパルスシーケンスを用いて測定対象に関する第2のデータを収集する第2のデータ収集と、を繰り返し実行する。複数の周波数選択パルスは、励起パルスの前後の周波数選択パルスの選択周波数を異ならせる、及び/又は、複数の周波数選択パルス間の時間t及びエコー時間tTEに対して、(tTE-t)がtと異なるように最適化されている。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の周波数選択パルスを含む第1の周波数選択パターンに基づく第1の周波数選択手段を含む第1のMRSパルスシーケンスを用いて測定対象に関する第1のデータを収集する第1のデータ収集と、前記第1の周波数選択パターンと異なり複数の周波数選択パルスを含む第2の周波数選択パターンを選択する第2の周波数選択手段を含む第2のMRSパルスシーケンスを用いて前記測定対象に関する第2のデータを収集する第2のデータ収集と、を繰り返し実行する収集部、を具備し、
前記複数の周波数選択パルスは、励起パルスの前後の周波数選択パルスの選択周波数を異ならせる、及び/又は、前記複数の周波数選択パルス間の時間t及びエコー時間tTEに対して、(tTE-t)がtと異なるように最適化されている、
磁気共鳴イメージング装置。
【請求項2】
前記第1の周波数選択手段は、特定の周波数に対して第1レゾナンスの第1の周波数選択パルスと前記特定の周波数に対して第2レゾナンスの第2の周波数選択パルスとを含み、
前記第2の周波数選択手段は、前記特定の周波数に対して第2レゾナンスの前記第1の周波数選択パルスと前記特定の周波数に対して第1レゾナンスの前記第2の周波数選択パルスとを含む、
請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項3】
前記第1の周波数選択パルスは、MRスペクトロスコピーの基本シーケンスの反転パルスに後続する周波数選択パルスであり、
前記第2の周波数選択パルスは、MRスペクトロスコピーの基本シーケンスに先行するプリパルスである、
請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項4】
前記基本シーケンスは、PRESS、STEAM、LASER、semi-LASER、SPECIAL又はISISであり、
前記第1の周波数選択パルスは、MEGAパルス、SLOWパルス又はBASINGパルスである、
請求項3記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項5】
前記第1の周波数選択パルスと前記第2の周波数選択パルスとは、フリップアングルが異なる、請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項6】
前記収集部は、繰り返し実行する前記第1のMRSパルスシーケンス及び前記第2のMRSパルスシーケンスについて、エコー時間、繰り返し時間及び傾斜磁場パルスを同一条件に維持する、請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項7】
前記第1のデータと前記第2のデータとに基づいて、前記特定の周波数とは異なる他の周波数の情報を可視化した可視化情報を生成する生成部を更に備える、請求項2記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項8】
前記生成部は、前記第1のデータと前記第2のデータとの差分データに基づいて前記可視化情報を生成する、請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項9】
前記生成部は、前記可視化情報として、MRSスペクトル及び/又はCSI画像を生成する、請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項10】
前記生成部は、前記第1のデータと前記第2のデータとに基づいて、前記可視化情報として、前記測定対象に含まれる代謝物の分類名又は前記測定対象が呈する疾患の分類名を推定する、請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項11】
前記生成部は、前記第1のデータと前記第2のデータとに基づいて、前記可視化情報として、前記測定対象に含まれる代謝物の物質量の絶対値及び/又は相対値を推定する、請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項12】
前記可視化情報を表示機器に表示する表示制御部を更に備える、請求項7記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項13】
励起パルスの前後の周波数選択パルスの選択周波数を異ならせる第1のモード、又は前記時間t及び前記エコー時間tTEに対して、(tTE-t)がtと異なるように最適化されている第2のモードとを選択するための画面を表示機器に表示する表示制御部を更に備える、請求項1記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項14】
前記画面は、前記第1のモード又は前記第2のモードを選択するためのGUI部品の他、前記時間tの入力欄、前記エコー時間tTEの入力欄を含む、請求項13記載の磁気共鳴イメージング装置。
【請求項15】
前記画面は、前記第1の周波数選択パルスの種類を選択するためのGUI部品を含む、請求項13記載の磁気共鳴イメージング装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、磁気共鳴イメージング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
MRスペクトロスコピー(MRS:Magnetic Resonance Spectroscopy)は、収集されたスペクトルから生体内の代謝物の種類を分析することができる。MRSでは、全帯域を励起するRFパルスが印加されるため、微弱信号成分が支配的な信号成分に埋もれてしまう。スペクトルに含まれる種々の信号成分を分解する手法としてエディッティングMRS(Editing MRS)が知られている。エディッティングMRSに使用されるパルスシーケンスの一つとしてMEGA-PRESS法が知られている。
【0003】
MEGA-PRESS法は、MEGAパルスと呼ばれる周波数選択パルス有りのPRESS及び周波数選択パルス無しのPRESS各々でデータ収集を行い、両データの差分スペクトルを得ることにより、周波数選択パルスの有り及び無しの相違に基づく微弱信号成分を抽出する。しかし、周波数選択パルスによる抑制対象の周波数の信号成分は、差分スペクトルにおいて残存することとなる。当該信号成分は解析の妨げになり得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Harris AD, Saleh MG, Edden RA. “Edited 1 H magnetic resonance spectroscopy in vivo: Methods and metabolites” Magn Reson, Med 2017; 77(4):1377-1389
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、MRスペクトロスコピーにおける注目信号のコントラストを向上することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、収集部を有する。収集部は、複数の周波数選択パルスを含む第1の周波数選択パターンに基づく第1の周波数選択手段を含む第1のMRSパルスシーケンスを用いて測定対象に関する第1のデータを収集する第1のデータ収集と、第1の周波数選択パターンと異なり複数の周波数選択パルスを含む第2の周波数選択パターンを選択する第2の周波数選択手段を含む第2のMRSパルスシーケンスを用いて測定対象に関する第2のデータを収集する第2のデータ収集と、を繰り返し実行する。複数の周波数選択パルスは、励起パルスの前後の周波数選択パルスの選択周波数を異ならせる、及び/又は、複数の周波数選択パルス間の時間t及びエコー時間tTEに対して、(tTE-t)がtと異なるように最適化されている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置の構成例を示す図である。
図2図2は、MEGAパルス無しのPRESSのパルスシーケンスの一例を示す図である
図3図3は、MEGAパルス付きのPRESSのパルスシーケンスの一例を示す図である。
図4図4は、MEGA-PRESSにおけるMEGAパルス有りでのスペクトル、MEGAパルス無しでのスペクトル及びこれらの差分スペクトルの一例を示す図である。
図5図5は、磁気共鳴イメージング装置によるMRスペクトロスコピー検査の処理手順の一例を示す図である。
図6図6は、プリパルス追加型MEGA-PRESS(プリパルスが第2レゾナンス&MEGAパルスが第1レゾナンス)の第1のMRSパルスシーケンスの一例を示す図である。
図7図7は、プリパルス追加型MEGA-PRESS(プリパルスが第1レゾナンス&MEGAパルスが第2レゾナンス)の第2のMRSパルスシーケンスの一例を示す図である。
図8図8は、プリパルス追加型MEGA-PRESSにおける第1のスペクトル、第2のスペクトル及び差分スペクトルの一例を示す図である。
図9図9は、代謝物の分類名の推定処理の一例を示す図である。
図10図10は、代謝物の物質量の推定処理の一例を示す図である。
図11図11は、本実施形態のMRSパルスシーケンスに係る幾つかの時間パラメータを例示する図である。
図12図12は、選択画面の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置について説明する。
【0009】
図1は、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の構成例を示す図である。図1に示すように、磁気共鳴イメージング装置1は、架台11、寝台13、傾斜磁場電源21、送信回路23、受信回路25、寝台駆動装置27、シーケンス制御回路29及びホストコンピュータ50を有する。
【0010】
架台11は、静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とを有する。静磁場磁石41と傾斜磁場コイル43とは架台11の筐体に収容されている。架台11の筐体には中空形状を有するボアが形成されている。架台11のボア内には送信コイル45と受信コイル47とが配置される。
【0011】
静磁場磁石41は、中空の略円筒形状を有し、略円筒内部に静磁場を発生する。静磁場磁石41としては、例えば、永久磁石、超伝導磁石または常伝導磁石等が使用される。ここで、静磁場磁石41の中心軸をZ軸に規定し、Z軸に対して鉛直に直交する軸をY軸に規定し、Z軸に水平に直交する軸をX軸に規定する。X軸、Y軸及びZ軸は、直交3次元座標系を構成する。
【0012】
傾斜磁場コイル43は、静磁場磁石41の内側に取り付けられ、中空の略円筒形状に形成されたコイルユニットである。傾斜磁場コイル43は、傾斜磁場電源21からの電流の供給を受けて傾斜磁場を発生する。より詳細には、傾斜磁場コイル43は、互いに直交するX軸、Y軸、Z軸に対応する3つのコイルを有する。当該3つのコイルは、X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿って磁場強度が変化する傾斜磁場を形成する。X軸、Y軸、Z軸の各軸に沿う傾斜磁場は合成されて互いに直交するスライス選択傾斜磁場Gs、位相エンコード傾斜磁場Gp及び周波数エンコード傾斜磁場Grが所望の方向に形成される。スライス選択傾斜磁場Gsは、任意に撮像断面(スライス)を決めるために利用される。位相エンコード傾斜磁場Gpは、空間的位置に応じて磁気共鳴信号(以下、MR信号と呼ぶ)の位相を変化させるために利用される。周波数エンコード傾斜磁場Grは、空間的位置に応じてMR信号の周波数を変化させるために利用される。なお、以下の説明においてスライス選択傾斜磁場Gsの傾斜方向はZ軸、位相エンコード傾斜磁場Gpの傾斜方向はY軸、周波数エンコード傾斜磁場Grの傾斜方向はX軸であるとする。
【0013】
傾斜磁場電源21は、シーケンス制御回路29からのシーケンス制御信号に従い傾斜磁場コイル43に電流を供給する。傾斜磁場電源21は、傾斜磁場コイル43に電流を供給することにより、X軸、Y軸及びZ軸の各軸に沿う傾斜磁場を傾斜磁場コイル43により発生させる。当該傾斜磁場は、静磁場磁石41により形成された静磁場に重畳されて被検体Pに印加される。
【0014】
送信コイル45は、例えば、傾斜磁場コイル43の内側に配置され、送信回路23から電流の供給を受けて高周波パルス(以下、RFパルスと呼ぶ)を発生する。
【0015】
送信回路23は、被検体P内に存在する対象プロトンを励起するためのRFパルスを、送信コイル45を介して被検体Pに印加するために、送信コイル45に電流を供給する。RFパルスは、対象プロトンに固有の共鳴周波数で振動し、対象プロトンを励起させる。励起された対象プロトンからMR信号が発生され、受信コイル47により検出される。送信コイル45は、例えば、全身用コイル(WBコイル)である。全身用コイルは、送受信コイルとして使用されても良い。
【0016】
受信コイル47は、RFパルスの作用を受けて被検体P内に存在する対象プロトンから発せられるMR信号を受信する。受信コイル47は、MR信号を受信可能な複数の受信コイルエレメントを有する。受信されたMR信号は、有線又は無線を介して受信回路25に供給される。図1に図示しないが、受信コイル47は、並列的に実装された複数の受信チャネルを有している。受信チャネルは、MR信号を受信する受信コイルエレメント及びMR信号を増幅する増幅器等を有している。MR信号は、受信チャネル毎に出力される。受信チャネルの総数と受信コイルエレメントの総数とは同一であっても良いし、受信チャネルの総数が受信コイルエレメントの総数に比して多くてもよいし、少なくてもよい。
【0017】
受信回路25は、励起された対象プロトンから発生されるMR信号を受信コイル47を介して受信する。受信回路25は、受信されたMR信号を信号処理してデジタルのMR信号を発生する。デジタルのMR信号は、空間周波数により規定されるk空間にて表現することができる。以下、デジタルのMR信号をk空間データと呼ぶことにする。k空間データは、MR信号の信号強度値を時間関数で表すデジタルデータである。k空間データは、有線又は無線を介してホストコンピュータ50に供給される。k空間データは、第1のデータ及び第2のデータの一例である。
【0018】
なお、上記の送信コイル45と受信コイル47とは一例に過ぎない。送信コイル45と受信コイル47との代わりに、送信機能と受信機能とを備えた送受信コイルが用いられても良い。また、送信コイル45、受信コイル47及び送受信コイルが組み合わされても良い。
【0019】
架台11に隣接して寝台13が設置される。寝台13は、天板131と基台133とを有する。天板131には被検体Pが載置される。基台133は、天板131をX軸、Y軸、Z軸各々に沿ってスライド可能に支持する。基台133には寝台駆動装置27が収容される。寝台駆動装置27は、シーケンス制御回路29からの制御を受けて天板131を移動する。寝台駆動装置27は、例えば、サーボモータやステッピングモータ等の如何なるモータ等を含んでも良い。
【0020】
シーケンス制御回路29は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)あるいはMPU(Micro Processing Unit)のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。シーケンス制御回路29は、処理回路51の撮像条件設定機能514により設定されたデータ収集条件に基づいて傾斜磁場電源21、送信回路23及び受信回路25を同期的に制御し、当該データ収集条件に応じたデータ収集を被検体Pに施して、被検体Pに関するk空間データを収集する。シーケンス制御回路29は、収集部の一例である。
【0021】
本実施形態に係るシーケンス制御回路29は、ケミカルシフト計測の一種であるMRスペクトロスコピー(以下、MRSともいう)のためのデータ収集を実行する。ケミカルシフト計測は、化学的環境の違いに応じて生じる、水素原子核等の対象プロトンの共鳴周波数の微小な差異であるケミカルシフトを計測する技術である。MRSは、単一ボクセルについてデータ収集を行うシングルボクセル法や複数ボクセルについてデータ収集を行うマルチボクセル法があり、本実施形態は何れの方法にも適用可能である。マルチボクセル法は、ケミカルシフトイメージング(CSI:Chemical shift imaging)やMRSイメージング(MRSI:MRS Imaging)等とも呼ばれる。
【0022】
シーケンス制御回路29は、MRSパルスシーケンスを用いて被検体Pの測定対象に対してデータ収集を実行する。MRSパルスシーケンスを実行することにより被検体Pの測定対象から自由誘導減衰(FID:Free induction decay)信号又はスピンエコー信号が発生される。受信回路25は、受信コイル47を介してFID信号又はスピンエコー信号等の観測可能なMR信号を受信し、受信されたMR信号を信号処理して、測定対象に関するデータを収集する。
【0023】
シーケンス制御回路29は、複数の周波数選択パルスを含む第1の周波数選択パターンに基づく第1の周波数選択手段を含む第1のMRSパルスシーケンスを用いて測定対象に関する第1のデータを収集する第1のデータ収集と、第1の周波数選択パターンと異なり複数の周波数選択パルスを含む第2の周波数選択パターンを選択する第2の周波数選択手段を含む第2のMRSパルスシーケンスを用いて測定対象に関する第2のデータを収集する第2のデータ収集と、を繰り返し実行する。周波数選択パターンは、複数の周波数選択パルスの選択周波数、複数の周波数選択パルスの選択順序(印加順序)、複数の周波数選択パルスの印加時刻の調整等の周波数特性の組合せやシーケンスの設計パターンを意味する。複数の周波数選択パルスは、励起パルスの前後の周波数選択パルスの選択周波数を異ならせてもよいし、及び/又は、当該複数の周波数選択パルス間の時間t及びエコー時間tTEに対して、(tTE-t)がtと異なるように最適化されていてもよい。以下、励起パルスの前後の周波数選択パルスの選択周波数を異ならせる実施形態について説明する。
【0024】
シーケンス制御回路29は、抑制対象である特定の周波数(以下、抑制対象周波数)に対する第1のMRSパルスシーケンスを用いて、測定対象に関する第1のデータを収集する第1のデータ収集と、抑制対象周波数に対する第2のMRSパルスシーケンスを用いて、測定対象に関する第2のデータを収集する第2のデータ収集と、を繰り返し実行する。第1のMRSパルスシーケンスは、抑制対象周波数を選択する第1の周波数選択手段を含む。第2のMRSパルスシーケンスは、第1の周波数選択手段とは周波数特性が異なり当該抑制対象周波数を選択する第2の周波数選択手段を含む。抑制対象周波数は、任意に選択される如何なる周波数でもよいが、例えば、信号強度が比較的強くデータ解析を阻害する虞のある周波数、例えば、NAAやGABAその他の任意の代謝物の共鳴周波数を想定する。抑制対象周波数は、ある程度の幅のある帯域として設定されてもよい。周波数選択手段は、上記抑制対象周波数の信号成分を絶対的又は相対的に抑制する効果を発揮する1個以上のRFパルス、1個以上の傾斜磁場パルス又はこれらの任意の組合せを意味する。
【0025】
第1の周波数選択手段は、一例として、第1レゾナンスの第1の周波数選択パルスと第2レゾナンスの第2の周波数選択パルスとを含む。ここで、第1レゾナンスとしては例えば抑制対象周波数を含む周波数帯、第2レゾナンスとしては例えば抑制対象周波数を含まない周波数帯を選択すると良い。なお、便宜上2つの周波数選択パルスを例として説明するが、3以上の周波数選択パルス(例えば第1レゾナンス、第2レゾナンス、第3レゾナンス)を用いても良い。第2の周波数選択手段は、例えば抑制対象周波数に対して第2レゾナンスの第1の周波数選択パルスと抑制対象周波数に対して第1レゾナンスの第2の周波数選択パルスとを含む。第1の周波数選択パルスと第2の周波数選択パルスとは互いにフリップアングルが異なっていても良い。第1の周波数選択パルスと第2の周波数選択パルスとの間で第1レゾナンスと第2レゾナンスとを切り替えることにより、第1の周波数選択手段と第2の周波数選択手段との周波数特性を異ならせる。第1レゾナンスや第2レゾナンスのうちいずれかは、RFパルスによる巨視的磁化の回転角度がすべての周波数帯に対して0度である周波数選択手段としても良い。
【0026】
第1の周波数選択パルス及び第2の周波数選択パルスは、基本シーケンスに併用され、抑制対象周波数とは異なる注目周波数の信号分解性能を高めるためのエディッティングとしての役割を有するRFパルスであり、一例として、抑制対象周波数からの信号発生を絶対的又は相対的に抑制する機能を有する。第1の周波数選択パルスは、MRSの基本シーケンスの反転パルスに後続する周波数選択パルスである。第2の周波数選択パルスは、MRSの基本シーケンスに先行するプリパルスである。基本シーケンスは、第1の周波数選択パルス及び第2の周波数選択パルスが付加されていない、MRSのパルスシーケンスを意味する。基本シーケンスの種類は、特に限定されないが、PRESS(Point resolved spectroscopy)、STEAM(Stimulated echo acquisition mode)、LASER(Localization by adiabatic selective refocusing)、semi-LASER、SPECIAL(spin echo full intensity acquired localized)、ISIS(Image-Selected in vivo spectroscopy)及びこれらの発展法が使用される。第1の周波数選択パルスは、一例として、MEGA(Mescher-Garwood)パルス、SLOW(SLOtboom-Weng)パルス、BASING(Band-selective inversion with gradient dephasing)パルス及びこれらの発展形が使用される。なお、BASINGパルスの発展形として、Single-BASINGパルスやDouble-BASINGパルス等が知られている。
【0027】
図1に示すように、ホストコンピュータ50は、処理回路51、メモリ52、ディスプレイ53、入力インタフェース54及び通信インタフェース55を有するコンピュータである。処理回路51、メモリ52、ディスプレイ53、入力インタフェース54及び通信インタフェース55間のデータ通信は、バスを介して行われる。
【0028】
処理回路51は、ハードウェア資源としてCPU等のプロセッサを有する。処理回路51は、磁気共鳴イメージング装置1の中枢として機能する。例えば、処理回路51は、各種プログラムの実行により取得機能511、可視化情報生成機能512、表示制御機能513及び撮像条件設定機能514を実現する。
【0029】
取得機能511により処理回路51は、シーケンス制御回路29により収集された第1のデータ及び第2のデータ等の種々のデータを取得する。
【0030】
可視化情報生成機能512により処理回路51は、シーケンス制御回路29により収集された第1のデータと第2のデータとに基づいて、抑制対象周波数とは異なる他の周波数(注目周波数)の情報を可視化した可視化情報を生成する。一例として、処理回路51は、第1のデータと第2のデータとの差分データを生成し、生成された差分データに基づいて可視化情報を生成する。一例として、処理回路51は、可視化情報として、MRSスペクトル及び/又はCSI画像を生成する。他の例として、処理回路51は、第1のデータと第2のデータとに基づいて、可視化情報として、測定対象に含まれる代謝物及び/又は当該測定対象が呈する疾患の分類結果を推定してもよい。他の例として、処理回路51は、第1のデータと第2のデータとに基づいて、可視化情報として、測定対象に含まれる代謝物の物質量の絶対値及び/又は相対値を推定してもよい。なお、可視化情報には、抑制対象周波数の情報は含まれてもよいし、含まれていなくてもよい。
【0031】
表示制御機能513により処理回路51は、可視化情報生成機能512により生成された可視化情報等の種々のデータをディスプレイ53等の表示機器に表示する。
【0032】
撮像条件設定機能514により処理回路51は、本実施形態に係るMRSパルスシーケンスの撮像条件を設定する。撮像条件としては、基本シーケンスの種類、第1の周波数選択手段の種類、第2の周波数選択手段の種類、繰り返し時間(TR)、エコー時間(TE)、積算回数(NEX:number of excitation)、スペクトル幅、サンプリング数、領域選択パルス等の条件項目がある。撮像条件は、ユーザにより手動的に又はアルゴリズムに従い自動的に設定されればよい。
【0033】
メモリ52は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。また、メモリ52は、CD-ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬型記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。
【0034】
ディスプレイ53は、表示制御機能513による制御に従い種々の情報を表示する。ディスプレイ53としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
【0035】
入力インタフェース54は、ユーザからの各種指令を受け付ける入力機器を含む。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ、タッチスクリーン、タッチパッド等が利用可能である。なお、入力機器は、マウス、キーボードなどの物理的な操作部品を備えるものだけに限らない。例えば、磁気共鳴イメージング装置1とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、受け取った電気信号を種々の回路へ出力するような電気信号の処理回路も入力インタフェース54の例に含まれる。また、入力インタフェース54は、マイクロフォンにより収集された音声信号を指示信号に変換する音声認識装置でもよい。
【0036】
通信インタフェース55は、LAN(Local Area Network)等を介して磁気共鳴イメージング装置1と、ワークステーションやPACS(Picture Archiving and Communication System)、HIS(Hospital Information System)、RIS(Radiology Information System)等とを接続するインタフェースである。通信インタフェース55は、各種情報を接続先のワークステーション、PACS、HIS及びRISとの間で送受信する。
【0037】
次に、本実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置1の動作例について説明する。
【0038】
まず、本実施形態を理解するうえで必要な知識である、1種類の周波数選択パルスを用いたMRSパルスシーケンスの一例として、基本シーケンスであるPRESSに周波数選択パルスであるMEGAパルスを付加するMEGA-PRESSについて説明する。MEGA-PRESSは、MEGAパルス付きのPRESSとMEGAパルス無しのPRESSとでデータ収集を行い、両データの差分スペクトルを得ることにより、両データ収集間の磁気的環境の相違に起因する差分信号成分を抽出する信号分解手法である。
【0039】
図2は、MEGAパルス無しPRESSのパルスシーケンスの一例を示す図である。図2は、1個の繰り返し時間(TR)分のパルスシーケンスの1例を示している。図2に示すように、MEGAパルス無しPRESS(単にPRESSともいう)は、1個の90°励起パルスとそれに後行する2個の180°反転パルスとを使用してMR信号を発生させる。以後の説明では、Z方向、Y方向、X方向の3軸をこの順で選択する例について考えるが、この3つの軸を任意の方向に回転した場合も同様に適用可能である。90°パルスとそれに重畳して印加されるGz傾斜磁場パルスとによりZ方向に関するスライスが励起され、1回目の180°パルスとそれに重畳して印加されるGy傾斜磁場パルスとによりY方向に関するスライスが励起され、2回目の180°パルスとそれに重畳して印加されるGx傾斜磁場パルスとによりX方向に関するスライスが励起される。これにより、直交3スライスに交差する関心ボクセルが選択され、関心ボクセルからMR信号が発生する。発生されたMR信号は、任意の読み出し傾斜磁場(Readout)により読み出され、当該MR信号に対応するk空間データが収集される。
【0040】
図3は、MEGAパルス付きPRESSのパルスシーケンスの一例を示す図である。図3は、1個の繰り返し時間(TR)分のパルスシーケンスを示している。図3に示すように、MEGAパルス付きのPRESSでは、PRESS法による3度のRFパルスの照射間に周波数選択パルスの一種であるMEGAパルスMPa,MEGAパルスMPbが印加される。具体的には、1個目の180°反転パルスと2個目の180°反転パルスとの間に1個目のMEGAパルスMPaが印加され、2個目の180°反転パルスの後に2個目のMEGAパルスMPbが印加される。MEGAパルスMPa,MPbとしては、一例として、180°パルスが使用される。MEGAパルスMPa,MPbの波形は、特に限定されないが、一例として、Gaussianパルスが使用されるとよい。
【0041】
MEGAパルスMPa,MPbの印加により、抑制対象周波数の信号成分が抑制される。MEGAパルス付きPRESSも、MEGAパルス無しPRESSと同様、1個の90°励起パルスとそれに後行する2個の180°反転パルスとを使用してMR信号を発生させる。発生されたMR信号は、任意の読み出し傾斜磁場(Readout)により読み出され、当該MR信号に対応するk空間データが収集される。MEGAパルス付きPRESSにより収集されたk空間データは、MEGAパルス無しPRESSにより収集されたk空間データに比して、抑制対象周波数に対応する信号成分に選択的なスポイラー傾斜磁場が適用された信号に変化している。なお、図4においてMEGAパルスMPa,MPbは、2回印加されるものとしたが、これに限定されず、1回のみ印加されてもよいし、3回以上印加されてもよい。
【0042】
MEGAパルス無しPRESSとMEGAパルス付きPRESSとの各々は、積算回数(NEX)だけ繰り返される。処理回路51は、NEX個のk空間データを積算する。積算によりノイズを低減することができる。処理回路51は、各積算後のk空間データに対してフーリエ変換を施すことによりスペクトルを生成する。なお、スペクトルの生成過程においてゼロ充填処理や位相補正、ベースライン補正等の各種補正処理が行われてもよい。スペクトルは、第一軸が信号強度に規定され、第一軸に直交する第二軸がケミカルシフト周波数に規定された信号分布を表す。MEGAパルス付きPRESSにより収集されたスペクトルを第3のスペクトル、MEGAパルス無しPRESSにより収集されたスペクトルを第4のスペクトルと呼ぶことにする。
【0043】
図4は、MEGA-PRESSにおけるMEGAパルス有りでのスペクトル(第3のスペクトル)、MEGAパルス無しでのスペクトル(第4のスペクトル)及びこれらの差分スペクトルの一例を示す図である。図4に示すMEGA-PRESSの測定対象は、NAAとGABAとその他の任意の物質を含むファントムである。第3のスペクトルは、MEGAパルス有りPRESSにより収集されたスペクトル、すなわち、MEGAパルスに第1の周波数帯(例えば、1.9ppm)が適用されたとき(便宜上、これを第1レゾナンスという意味でMEGAパルスONと呼ぶ)のスペクトルである。第4のスペクトルは、MEGAパルス無しPRESSにより収集されたスペクトル、すなわち、MEGAパルスに第2の周波数帯(例えば、7.5ppm)が適用されたとき(便宜上、第2レゾナンスという意味でMEGAパルスOFFと呼ぶ)のスペクトルである。MEGAパルスによる選択周波数は、例えば、第1レゾナンスが1.9ppm、第2レゾナンスが7.5ppmに設定されているものとするが、それ以外の周波数であっても良い(非特許文献1参照)。なお、MEGA-PRESSの全体の信号収集帯域は、例えば、1500~5000Hz程度であることを想定する。
【0044】
図4に示すように、信号解析のため、第3のスペクトルから第4のスペクトルを減算して差分スペクトルが生成される。図4に示すように、第4のスペクトルに含まれる抑制対象周波数(1.9ppm)に属する信号成分は、第3のスペクトルではほぼ消失しているため、差分スペクトルにおいてそのまま残存することとなる。MEGAパルスONとOFFとの相違に起因する磁気的環境の相違により、差分スペクトルには、抑制対象周波数以外の周波数帯域に差分信号成分が含まれる。一例として、2.00以上の周波数帯域において比較的信号強度の強い多くの差分信号成分が顕出されている。差分信号成分は、測定対象のうちの抑制対象周波数を共鳴周波数に有する部分構造に発生したJカップリングに由来する信号成分を含んでいる。
【0045】
図4に示すように、抑制対象周波数の信号成分の信号強度が差分信号成分の信号強度に比して著しく高いため、差分信号成分の解析の妨げになり得る。これがMEGA-PRESSなど公知の信号分解手法の欠点である。
【0046】
次に、本実施形態に係る信号分解手法について説明する。本実施形態はMEGA-PRESSなど公知の手法と異なり、1つのリードアウト信号を計測する際に周波数特性の異なる2種以上の周波数選択パルスを用いる。
【0047】
図5は、磁気共鳴イメージング装置1によるMRスペクトロスコピー検査の処理手順の一例を示す図である。まず、シーケンス制御回路29は、プリパルス追加型のMRSデータ収集を実施する(ステップS1)。プリパルス追加型のMRSデータ収集は、Jカップリングに由来する差分信号成分を残しつつ、抑制対象周波数に属する信号成分を抑制するため、MEGA-PRESSにプリパルス型の周波数選択パルスを追加した信号分解手法である。以下、当該パルスシーケンスをプリパルス追加型MEGA-PRESSと呼ぶ。
【0048】
プリパルス追加型MEGA-PRESSは、例えば、抑制対象周波数が1つのRFパルスとして表現される場合には、第2レゾナンスのプリパルスと第1レゾナンスのMEGAパルスとを含む第1のMRSパルスシーケンスと、第1レゾナンスのプリパルスと第2レゾナンスのMEGAパルスとを含む第2のMRSパルスシーケンスとを含むパルスシーケンスとを含む。あるいは、例えば、抑制対象周波数が2つのRFパルスとして表現される場合には、それらを第1レゾナンス・第2レゾナンスと呼び、それらで表現されない周波数の1つを第3レゾナンスと呼ぶとき、第3レゾナンスのプリパルスと第1レゾナンスのMEGAパルスとを含む第1のMRSパルスシーケンスと、第3レゾナンスのプリパルスと第2レゾナンスのMEGAパルスとを含む第2のMRSパルスシーケンスと、第1レゾナンスのプリパルスと第3レゾナンスのMEGAパルスとを含む第3のMRSパルスシーケンスとを含むパルスシーケンスを含む。あるいは、例えば、抑制対象周波数が1つのRFパルスとして表現され、そうでない周波数として2つの異なるRFパルスを利用する場合には、抑制対象周波数を第1レゾナンスと呼び、その他の周波数を第2レゾナンス・第3レゾナンスと呼ぶとき、第2レゾナンスのプリパルスと第1レゾナンスのMEGAパルスとを含む第1のMRSパルスシーケンスと、第3レゾナンスのプリパルスと第2レゾナンスのMEGAパルスとを含む第2のMRSパルスシーケンスと、第1レゾナンスのプリパルスと第3レゾナンスのMEGAパルスとを含む第3のMRSパルスシーケンスとを含むパルスシーケンスを含む。MEGAパルスは、PRESSに含まれる180°反転パルスに後続する周波数選択パルスである。プリパルスは、PRESSに先行する90°飽和パルスである。
【0049】
図6は、プリパルス追加型MEGA-PRESSの第1のMRSパルスシーケンスの一例を示す図である。図6は、1個の繰り返し時間(TR)分のパルスシーケンスを示している。図6に示すように、プリパルス追加型MEGA-PRESSのパルスシーケンスは、MEGA-PRESS部とMEGA-PRESS部に先行する追加プリパルス部とを有する。追加プリパルス部は、90°パルスであるプリパルスPP1が印加され、スポイラー傾斜磁場パルスを印加する。プリパルスPP1は、第2レゾナンスの周波数帯域を対象とする。
【0050】
追加プリパルス部の後、MEGAパルス付きPRESS部が行われる。MEGAパルス付きPRESS部では、PRESS法による3度のRFパルス(90°励起パルス、180°パルス、180°パルス)の照射間に周波数選択パルスの一種であるMEGAパルスMP1,MEGAパルスMP2が印加される。具体的には、1個目の180°反転パルスと2個目の180°反転パルスとの間に1個目のMEGAパルスMP1が印加され、2個目の180°反転パルスの後に2個目のMEGAパルスMP2が印加される。MEGAパルスMP1,MP2は、第1レゾナンスの周波数帯域を対象とする第1レゾナンス。MEGAパルスMP1,MP2としては、一例として、180°パルスが使用される。MEGAパルスMP1,MP2の波形は、特に限定されないが、一例として、Gaussianパルスが使用されるとよい。
【0051】
MEGAパルスMP1,MP2の印加により、抑制対象周波数の信号成分が抑制される。1個の90°励起パルスとそれに後行する2個の180°反転パルスとの印加によりMR信号が発生する。発生されたMR信号は、任意の読み出し傾斜磁場(Readout)により読み出され、当該MR信号に対応するk空間データ(第1のk空間データ)が収集される。なお、図6においてMEGAパルスMP1,MP2は、2回印加されるものとしたが、これに限定されず、1回のみ印加されてもよいし、3回以上印加されてもよい。
【0052】
図7は、プリパルス追加型MEGA-PRESSの第2のMRSパルスシーケンスの一例を示す図である。図7は、1個の繰り返し時間(TR)分のパルスシーケンスを示している。図7に示すように、第2のMRSパルスシーケンスは、第1のMRSパルスシーケンスと同様、追加プリパルス部とMEGA-PRESS部とを有する。第2のMRSパルスシーケンスは、第1のMRSパルスシーケンスに比して、プリパルスPP2及びMEGAパルスPP3,PP2の選択周波数が異なり、換言すれば、エコー時間、繰り返し時間及び傾斜磁場パルスは互いに同一条件に維持される。これにより、第2のMRSパルスシーケンスにより収集される第2のスペクトルと第1のMRSパルスシーケンスにより収集される第1のスペクトルとの相違を、プリパルス及びMEGAパルスの第1レゾナンスと第2レゾナンスとの切替えのみに起因させることが可能である。
【0053】
プリパルス追加型MEGA-PRESSは、周波数選択をプリパルスPP1,PP2で実現するが、非特許文献1の図1のGに示すPolarization Transferとは異なり、可視信号とするための90°パルスは含まない。すなわち、プリパルス付きMEGA-PRESSは、フリップアングルの異なる2種類のRFパルスである第1の周波数選択パルス(MEGAパルスMP1~MP4)と第2の周波数選択パルス(プリパルスPP1~PP2)を含んでいる。
【0054】
第1のMRSパルスシーケンスと第2のMRSパルスシーケンスとの各々は、NEX回だけ繰り返される。処理回路51は、ノイズを低減するため、NEX個の第1のk空間データを積算する。処理回路51は、同様に、NEX個の第2のk空間データを積算する。処理回路51は、各積算後のk空間データに対してフーリエ変換を施すことによりスペクトルを生成する。なお、スペクトルの生成過程においてゼロ充填処理や位相補正、ベースライン補正等の各種補正処理が行われてもよい。第1のk空間データに基づき第1のスペクトルが生成され、第2のk空間データに基づき第2のスペクトルが生成される。
【0055】
ステップS1が行われると処理回路51は、可視化情報生成機能512により、第1のデータと第2のデータとに基づく差分データを生成する(ステップS2)。具体的には、処理回路51は、第1のスペクトルと第2のスペクトルとの差分スペクトルを生成する。
【0056】
図8は、プリパルス追加型MEGA-PRESSにおける第1のスペクトル、第2のスペクトル及び差分スペクトルの一例を示す図である。図7に示すプリパルス追加型MEGA-PRESSの測定対象は、図4と同様、NAAとGABAとを含むファントムである。第1のスペクトルは、第1のMRSパルスシーケンスにより収集されたスペクトル、すなわち、プリパルスが第2レゾナンス且つMEGAパルスが第1レゾナンスの条件のもとでのスペクトルである。第2のスペクトルは、第2のMRSパルスシーケンスにより収集されたスペクトル、すなわち、プリパルスが第1レゾナンス且つMEGAパルスが第2レゾナンスの条件のもとでのスペクトルである。プリパルスによる抑制対象周波数は、NAAの共鳴周波数である1.9ppmを中心とする±0.3ppm程度の局所的な周波数帯域に設定されているものとする。なお、プリパルス付きMEGA-PRESSの全体の信号収集帯域は、1500~5000Hz程度であることを想定する。
【0057】
図8に示すように、処理回路51は、第1のスペクトルから第2のスペクトルを減算して差分スペクトル(以下、本実施形態に係る差分スペクトル)を生成する。第1のスペクトルでは、抑制対象周波数の信号成分がほぼ完全に消失している。第2のスペクトルでは、第1のスペクトルに比して、抑制対象周波数の信号成分が僅かに残存している。
【0058】
上記の通り、プリパルス追加型MEGA-PRESSは、抑制対象周波数を共鳴周波数に有する原子からの信号成分を、励起前に飽和して除去しない第1のMRSパルスシーケンスと、励起前に飽和して除去する第2のMRSパルスシーケンスとを有する。本方式では、PRESSの励起部に先行して追加の周波数選択型飽和部が使用される。この飽和パルスは、MEGAパルスが非エディッティング周波数に中心周波数を有するとき(非アクティブと称する)、エディッティング周波数に中心周波数を有する(アクティブと称する)。飽和パルスが使用される場合(すなわち、Sat)、そのパルスシーケンスは、飽和パルスの周波数帯域が励起されないことを除いてエディッティングパルスが非アクティブであるMEGA-PRESSとして動作する。MEGAパルスが使用された場合(すなわち、Nosat)、そのパルスシーケンスは、エディッティング部が使用されるMEGA-PRESSとして動作する。Jカップリング信号を選択的に抽出するために、Nosatの信号がSatの信号から減算される。飽和されないスピン及びJカップリングの進展は、Satの場合、アクティブである。Nosatの場合、全スピン及びJカップリングの進展はアクティブであり、MEGAパルスの周波数帯域におけるJカップリングの進展は、MEGA部においてスポイルされる。したがって、第1のMRSパルスシーケンスにより収集された第1のスペクトルと第2のMRSパルスシーケンスにより収集された第2のスペクトルとの差分である差分スペクトルにおいて、シングレットと呼ばれる性質を有する代謝物からの信号成分のみを完全に除去することが可能である。
【0059】
本実施形態に係る差分スペクトルでは、第1のMRSパルスシーケンスと第2のMRSパルスシーケンスとの2種類の周波数選択パルス間で第1レゾナンスと第2レゾナンスとを相互に切り替えたことによる磁気的影響を反映している。一例として、本実施形態に係る差分スペクトルでは、抑制対象周波数の信号成分が、図4に示すMEGA-PRESSの差分スペクトルに比して、大きく抑制されている。また、本実施形態に係る差分スペクトルの2.0ppm~3.0ppmには、抑制対象周波数に共鳴周波数を有する特定構造のJカップリング等に由来する差分信号成分が明瞭に顕出されている。このように、本実施形態に係る差分スペクトルにおいては、抑制対象周波数の信号成分が抑制されるため、微弱な信号成分を有する差分信号成分のコントラストが相対的に向上している。よって本実施形態によれば、抑制対象周波数に共鳴周波数を有する原子のJカップリング成分を、高信号分解能で得ることが可能になる。
【0060】
ステップS2が行われると処理回路51は、表示制御機能513により、ステップS5において生成された差分データをディスプレイ53に表示する(ステップS3)。具体的には、処理回路51は、ステップS2において生成された差分スペクトルをディスプレイ53に表示する。上記の通り、差分スペクトルは信号分解性能が良いので、ユーザは、差分スペクトルによりJカップリング等の差分信号成分を良好に観察することが可能である。
【0061】
以上により、図2に示すMRS検査が終了する。
【0062】
(変形例1)
上記実施形態において可視化情報は、スペクトルであるとしたが、本実施形態はこれに限定されない。一例として、可視化情報は、CSI(Chemical Shift Imaging)画像でもよい。CSI画像は、MRSスペクトルの空間分布を表す画像である。一例として処理回路51は、複数のボクセル各々に対してMRSデータ収集を実行して複数のスペクトルを収集し、各ボクセルについて任意のケミカルシフト周波数の信号強度を特定して当該ボクセルに割り付けることにより、当該ケミカルシフト周波数の信号強度の空間分布を表すCSI画像を生成可能である。
【0063】
変形例1に係る処理回路51は、第1のMRSシーケンスにより収集されたk空間データに基づいて第1のCSI画像を生成し、第2のMRSシーケンスにより収集されたk空間データに基づいて第2のCSI画像を生成し、第1のCSI画像と第2のCSI画像とに基づいて差分CSI画像を生成する。そして処理回路51は、差分CSI画像をディスプレイ53に表示する。
【0064】
一例として、差分CSI画像が可視化するケミカルシフト周波数は、差分信号成分が残存する周波数に設定されるとよい。この場合、差分CSI画像により、Jカップリングに対応する部分構造の空間分布を精度良く観察及び解析することが可能である。
【0065】
(変形例2)
上記実施例に係る可視化情報は、スペクトル又はCSI画像であるとした。変形例2に係る可視化情報は、代謝物の分類名又は疾患の分類名である。変形例2に係る処理回路51は、第1のデータと第2のデータとに基づいて、可視化情報として、測定対象に含まれる代謝物の分類名又は当該測定対象が呈する疾患の分類名を推定する。なお、上記第1のデータの一例は第1のスペクトルであり、上記第2のデータの一例は第2のスペクトルである。
【0066】
図9は、代謝物の分類名の推定処理の一例を示す図である。図9に示すように、処理回路51は、学習済みモデルを使用して、第1のMRSパルスシーケンスにより得られた第1のスペクトルと第2のMRSパルスシーケンスにより得られた第2のスペクトルとから、測定対象に含まれる代謝物の分類名を推定する。分類名は、可視化情報として、ディスプレイ53に表示される。
【0067】
学習済みモデルは、ホストコンピュータ50や他のコンピュータにより生成される。以下、学習済みモデルを訓練するコンピュータを訓練装置と呼ぶことにする。訓練装置は、第1のスペクトル及び第2のスペクトルと、正解ラベルである代謝物の分類名(正解分類名)との組合せを有する複数の訓練サンプルを取得する。正解分類名としては、第1のスペクトル及び第2のスペクトルのうちの抑制対象周波数とは異なる注目周波数に対応する代謝物の分類名が付与されるとよい。訓練装置は、所定の最適化アルゴリズムに従い、複数の訓練サンプルに基づいて機械学習モデルの学習パラメータを訓練する。当該機械学習モデルは、多クラス分類問題のためのアーキテクチャを有するように設計され、予め設定された複数の代謝物の分類確率を計算する。訓練装置は、第1のスペクトルと第2のスペクトルとから測定対象に含まれる代謝物の分類確率を推定し、当該推定分類確率と正解分類名に対応する分類確率との差異を最小化するように、学習パラメータを訓練する。
【0068】
変形例2によれば、同一測定対象についてスペクトルの振る舞いの異なる第1のスペクトルと第2のスペクトルとに基づいて代謝物の分類名を推定するので、何れか一方のスペクトルのみに基づく場合に比して、分類名の推定精度の向上が期待される。
【0069】
なお、処理回路51は、測定対象が呈する疾患の分類名についても、第1のスペクトルと第2のスペクトルとから、測定対象が呈する疾患の分類名を推定するように学習パラメータが訓練された学習済みモデルを使用して推定可能である。疾患の分類名としては、第1のスペクトル及び第2のスペクトルのうちの抑制対象周波数とは異なる注目周波数に対応する代謝物が関与する疾患の分類名が付与されるとよい。
【0070】
また、変形例2に係る学習済みモデルの入出力関係は、図9に示す関係のみに限定されない。一例として、変形例2に係る学習済みモデルは、第1のスペクトルと第2のスペクトルとの差分スペクトルから代謝物又は疾患の分類名を出力する学習済みモデルでもよい。
【0071】
(変形例3)
変形例3に係る可視化情報は、代謝物の物質量である。変形例3に係る処理回路51は、第1のデータと第2のデータとに基づいて、可視化情報として、測定対象に含まれる代謝物の物質量の絶対値及び/又は相対値を推定する。なお、上記第1のデータの一例は第1のスペクトルであり、上記第2のデータの一例は第2のスペクトルである。
【0072】
図10は、代謝物の物質量の推定処理の一例を示す図である。図10に示すように、処理回路51は、学習済みモデルを使用して、第1のスペクトルと第2のスペクトルとから、測定対象に含まれる代謝物の物質量を推定する。物質量は、濃度の他、重量や体積等により規定され得る。物質量は、絶対値及び/又は相対値により定義される。MRSにおいて物質量は、典型的には、単位体積あたりのモル濃度により規定され、相対値は基準物質であるクレアチンの濃度に対する比率により規定される。物質量は、可視化情報として、ディスプレイ53に表示される。
【0073】
学習済みモデルは、ホストコンピュータ50や他のコンピュータ等の訓練装置により生成される。訓練装置は、第1のスペクトル及び第2のスペクトルと、正解情報である代謝物の物質量(正解物質量)との組合せを有する複数の訓練サンプルを取得する。正解物質量としては、第1のスペクトル及び第2のスペクトルのうちの抑制対象周波数とは異なる注目周波数に対応する代謝物の物質量が付与されるとよい。訓練装置は、所定の最適化アルゴリズムに従い、複数の訓練サンプルに基づいて機械学習モデルの学習パラメータを訓練する。当該機械学習モデルは、回帰問題のためのアーキテクチャを有するように設計され、予め設定された複数の代謝物の物質量を計算する。訓練装置は、第1のスペクトルと第2のスペクトルとから測定対象に含まれる代謝物の物質量を推定し、当該推定物質量と正解物質量との差異を最小化するように、学習パラメータを訓練する。
【0074】
変形例3によれば、同一測定対象についてスペクトルの振る舞いの異なる第1のスペクトルと第2のスペクトルとに基づいて代謝物の物質量を推定するので、何れか一方のスペクトルのみに基づく場合に比して、物質量の推定精度の向上が期待される。
【0075】
なお、変形例3に係る学習済みモデルの入出力関係は、図10に示す関係のみに限定されない。一例として、変形例3に係る学習済みモデルは、第1のスペクトルと第2のスペクトルとの差分スペクトルから物質量を出力する学習済みモデルでもよい。
【0076】
(変形例4)
上記実施形態において抑制対象周波数は、1帯域であるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。抑制対象周波数は、離散的な2以上の帯域でもよい。
【0077】
なお、必ずしも抑制対象周波数毎に周波数選択パルスを印加する必要はなく、2以上の抑制対象周波数に対して1個のマルチバンドの周波数選択パルスが印加されてもよい。当該方法によって、2以上の抑制対象周波数の信号成分を抑制することが可能である。
【0078】
変形例4によれば、抑制対象周波数が2帯域以上ある場合であっても、本実施形態を適用することができ、信号分解性能を向上することができる。
【0079】
(変形例5)
上記実施形態においてMRSデータ収集は、抑制対象周波数を選択対象とする第1のMRSパルスシーケンスと第2のMRSパルスシーケンスとの2種のデータ収集を含むものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。第1のMRSパルスシーケンスと第2のMRSパルスシーケンスとに加え、広周波数帯域を選択対象とするデータ収集(以下、広周波数のデータ収集)とを含んでもよい。ここで広周波数帯域とは、抑制対象周波数と水や脂肪等の主要成分のピークに対応する周波数帯域(例えば、4.8ppmや1.3ppmを中心とした周波数帯域)とを含む。広周波数帯域のデータ収集のパルスシーケンスは、第1の周波数選択手段である周波数選択パルスと第2の周波数選択手段であるプリパルスとを含まない。例えば、PRESS等の基本シーケンスにより実現される。
【0080】
変形例5に係るシーケンス制御回路29は、周波数選択パルス型のデータ収集とプリパルス型のデータ収集により第1のデータを収集し、プリパルス型のデータ収集により第2のデータを収集し、広周波数帯域のデータ収集により第3のデータを収集する。処理回路51は、第1のデータに基づいて第1のスペクトルを生成し、第2のデータに基づいて第2のスペクトルを生成し、更に、第3のデータに基づいてスペクトル(以下、広周波数帯域スペクトル)を生成する。広周波数帯域スペクトルは、抑制対象周波数の信号成分が抑制されていない。
【0081】
処理回路51は、第1のスペクトル、第2のスペクトル及び広周波数帯域スペクトルに基づいて、抑制対象周波数とは異なる他の周波数を可視化した可視化情報を生成する。一例として、処理回路51は、第1のスペクトルと広周波数帯域スペクトルとに基づく第2の差分スペクトルを生成し、第2のスペクトルと広周波数帯域スペクトルとに基づく第3の差分スペクトルを生成する。第2の差分スペクトルと第3の差分スペクトルとは、ディスプレイ53に表示されるとよい。また、処理回路51は、第2の差分スペクトルと第3の差分スペクトルとに基づく第4の差分スペクトルを生成してもよい。第4の差分スペクトルは、ディスプレイ53に表示される。
【0082】
処理回路51は、変形例2と同様、第2の差分スペクトルと第3の差分スペクトルとに基づいて、測定対象に含まれる代謝物の分類名及び/又は測定対象が呈する疾患の分類名を推定してもよい。また、処理回路51は、変形例3と同様、第2の差分スペクトルと第3の差分スペクトルとに基づいて、測定対象に含まれる代謝物の物質量を推定してもよい。
【0083】
変形例5によれば、3種類以上のMRSデータ収集を使用して、信号分解を実行することができる。
【0084】
(小括)
実施形態に係る磁気共鳴イメージング装置は、シーケンス制御回路29を有する。シーケンス制御回路29は、抑制対象である特定の周波数(抑制対象周波数)に対する第1のMRSパルスシーケンスを用いて、測定対象に関する第1のデータを収集する第1のデータ収集と、抑制対象周波数に対する第2のMRSパルスシーケンスを用いて、測定対象に関する第2のデータを収集する第2のデータ収集と、を繰り返し実行する。第1のMRSパルスシーケンスは、抑制対象周波数を選択する第1の周波数選択手段を含む。第2のMRSパルスシーケンスは、第1の周波数選択手段とは周波数特性が異なり抑制対象周波数を選択する第2の周波数選択手段を含む。
【0085】
上記の構成によれば、第1のデータ収集と第2のデータ収集とで、抑制対象周波数については共に抑制すると共に、当該抑制対象周波数以外の周波数に対する周波数抑制態様を意図的に異ならせることが可能になる。これにより当該抑制対象周波数以外の周波数に対する周波数抑制態様が異なる第1のデータと第2のデータとを収集することが可能になる。また、第1のデータと第2のデータとを収集することにより、抑制対象周波数の信号成分が大幅に抑制され、抑制対象周波数以外の周波数の微弱信号成分が相対的に増強された可視化信号を生成することができる。したがって、微弱信号成分の解析精度の向上が期待される。
【0086】
(その他の実施形態)
まず、MRSパルスシーケンスに係る幾つかの時間パラメータについて説明する。図11は、本実施形態のMRSパルスシーケンスに係る幾つかの時間パラメータを例示する図である。図11は、MRSパルスシーケンスの一例として、図3と同様、MEGAパルス付きのPRESSのパルスシーケンスを例示している。図11図3に示すように、MEGAパルス付きのPRESSでは、PRESS法による3度のRFパルスの照射間に周波数選択パルスの一種であるMEGAパルスMP5,MEGAパルスMP6が印加される。具体的には、1個目の180°反転パルスと2個目の180°反転パルスとの間に1個目のMEGAパルスMPaが印加され、2個目の180°反転パルスの後に2個目のMEGAパルスMPbが印加される。エコー時間tTEは、励起パルスの印加時刻(ある時間を持つパルスが特定の瞬間に印加されたとして扱う場合に、その特定の瞬間をあらわす時刻)からMR信号収集(Readout)の時刻tROまでの経過時間を表す。時間tは、周波数選択パルスの一例であるMEGAパルスMP5の印加時刻からMEGAパルスMP6の印加時刻までの経過時間を表す。以下の説明の通り、MEGAパルスMP5とMEGAパルスMP6は、追加プリパルスの印加なしに又は追加プリパルスの印加と共に、時間t及びエコー時間tTEに対して、(tTE-t)がtと異なるように最適化されていてもよい。
【0087】
次に、MEGAパルスを利用したMRSパルスシーケンスの理論的背景を説明する。対象とする分子1種類の集合的な振る舞いについて、プロダクトオペレータフォーマリズム(POF)を利用して説明する。POFはこの分野における一般的な定式化方法であり、その解説は、例えばスタンフォード大学のNMRに関する講義資料(https://web.stanford.edu/class/rad226a/)から入手可能である。
【0088】
対象とする分子は2以上のスピンで構成されているものとする。励起パルス、再収束パルスは全スピンを対象として作用し、MEGAパルスは全スピンの部分集合に対して作用する。
【0089】
以後、全スピンのうち任意の1つのスピンに注目し、そのスピンを注目スピンと呼ぶ。それ以外のスピンを非注目スピンと呼ぶ。x、y、z方向に対応する注目スピンのオペレータをIx、Iy,Izで表す。第k番目(1,2,・・・,K)の非注目スピンをSk,x、Sk,y、Sk,zで表す。平衡状態のスピン密度オペレータはIz+Σk(Sk,z)であるが、解析の都合により、すべてのパルスにかかる時間は無視できるものとし、励起パルスはπ/2倍のx方向スピンのハミルトニアンのみ、再収束パルスはπ倍のy方向スピンのハミルトニアンのみ、MEGAパルスは周波数選択によって選択されたスピンに対するπ倍のy方向スピンのハミルトニアンのみを考えるものとし、スピンスピンカップリングのうちz方向スピン以外の項は無視できるものとする。
【0090】
パルスシーケンスを理解するには注目スピンの振る舞いのみが理解できれば良いことから、部分スピン密度オペレータとしてIzのみを考える。励起パルスのハミルトニアンは(-π/2)(Ix+Σk(k,x))で与えられるから、励起直後の部分スピン密度オペレータはIyになる。また、励起後はフリープリセッション(Free Precession)とπ倍のハミルトニアンのみがあらわれることに留意する。
【0091】
説明のために、オペレータRを、下記(1)式で定める。
【0092】
【数1】
【0093】
定義から、励起直後の初期状態IはR(0,0,…,0)で与えられる。フリープリセッションのハミルトニアンが(2)式で与えられるとき、部分スピン密度オペレータR(θ、φ,…,φ)に時間tのフリープリセッションを適用した後の部分スピン密度オペレータは、(3)式で書き表される。
【0094】
【数2】
【0095】
部分スピン密度オペレータR(θ、φ,…,φ)に再収束パルスを適用した後の部分スピン密度オペレータは、(4)式で書き表される。
【0096】
【数3】
【0097】
MEGAパルスについては、MEGAパルスが注目スピンに対して作用したケースではクラッシャーにより観測可能な信号がなくなるため、MEGAパルスが注目スピンに対して作用しないケースを考える。
【0098】
MEGAパルスがk<kMEGAに対してのみ反転パルスとして作用した場合、部分スピン密度オペレータR(θ、φ,…,φ)にMEGAパルスを適用した後の部分スピン密度オペレータは、(5)式で表される。
【0099】
【数4】
【0100】
ところで、例えば典型的なMEGA-PRESSシーケンスは、励起、時間t1のフリープリセッション、再収束、時間t2のフリープリセッション、MEGAパルス、時間t3のフリープリセッション、再収束、時間t4のフリープリセッション、MEGAパルス、時間t5のフリープリセッションを経てリードアウトを実行する。そこで、励起直後の初期状態R(0、0,…,0)から開始し、リードアウト中の部分スピン密度オペレータを求めると、下記(6)式で表される。なお、このリードアウト中の部分スピン密度オペレータをQ(tRO)で表すことにする。
【0101】
【数5】
【0102】
ここでt+t+t+t+t=tTE+tROと表し、tRO=0で再収束される場合、つまり、t+t-t-t+t=tROである場合のみを考える。t+t=tと書くことにすると、部分スピン密度オペレータは、(7)式で書き表される。
【0103】
【数6】
【0104】
また、MEGAパルスを用いたパルスシーケンスによって、初期スピンIzから生じるx方向、y方向の観測信号はそれぞれTr{Q(tRO)I}、Tr{Q(tRO)I}に比例する。以後、説明のために2スピン及び3スピンを例として説明するが、4スピン以上の場合にも上記の式から同様の性質を導出できる。
【0105】
はじめに、2スピンつまりK=1の場合を考える。
【0106】
MEGA=0のケース(MEGA OFFに対応)の観測信号Tr{Q(tRO)I}及びTr{Q(tRO)I}はそれぞれ下記(8)式及び(9)式の右項に比例する。
【0107】
【数7】
【0108】
MEGA=1のケース(MEGA ONに対応)の観測信号Tr{Q(tRO)I}及びTr{Q(tRO)I}はそれぞれ下記(10)式及び(11)式の右項に比例する。
【0109】
【数8】
【0110】
2スピンの場合は、MEGAを含むパルスシーケンスの差分観測信号は下記(12)式に比例することがわかる。
【0111】
【数9】
【0112】
次に、3スピンつまりK=2で、MEGAパルスが1つまたは2つのスピンに作用する場合を考える。
【0113】
MEGA=0のケース(MEGA OFFに対応)の観測信号Tr{Q(tRO)I}及びTr{Q(tRO)I}はそれぞれ下記(13)式及び(14)式の右項に比例する。
【0114】
【数10】
【0115】
MEGA=1のケース(MEGA ONかつMEGAパルスが1つのスピンに作用する場合に対応)の観測信号Tr{Q(tRO)I}及びTr{Q(tRO)I}はそれぞれ下記(15)式及び(16)式の右項に比例する。
【0116】
【数11】
【0117】
MEGA=2のケース(MEGA ONかつMEGAパルスが2つのスピンに作用する場合に対応)の観測信号Tr{Q(tRO)I}及びTr{Q(tRO)I}はそれぞれ下記(17)式及び(18)式の右項に比例する。
【0118】
【数12】
【0119】
3スピンかつMEGAパルスが1つのスピンに作用する場合は、MEGAを含むパルスシーケンスの差分観測信号は下記(19)及び(20)式の積に比例することがわかる。
【0120】
【数13】
【0121】
3スピンかつMEGAパルスが2つのスピンに作用する場合は、MEGAを含むパルスシーケンスの差分観測信号は下記(21)式に比例することがわかる。
【0122】
【数14】
【0123】
(21)式は、各項が(22)式及び(23)式であることを利用すると、(24)式のように変形できる。
【0124】
【数15】
【0125】
ここで、(J,J)は分子に応じて例えば(J,J)=(7.1,7.0)や(J,J)=(7.6,4.1)や(J,J)=(10.6,5.4)といった値になる(単位はHz)。これらの例の場合、第1項の角周波数π(J+J)はπを除くとそれぞれ14.1、11.7、16.0になり、第2項の角周波数π(J-J)はπを除くとそれぞれ0.1、3.5、5.2になる。これらの差から、tTEやtがあまり大きくない場合は第1項の影響が支配的である。
【0126】
これらの結果をまとめると、差分観測信号にはおおむね次の性質があると解釈できる。(以後、この性質をMEGAシーケンスの性質と呼ぶ)。
【0127】
(1)MEGAパルスが作用するスピンが1つカップリングしている場合(便宜上、このJ値をJであらわす)、カップリングの影響はcosとしてあらわれ、コントラストとしてその差分信号を利用することから、そのコントラストは次の(25)式に示す項の影響を受ける。
【0128】
【数16】
【0129】
(2)MEGAパルスが作用するスピンが2つカップリングしている場合(便宜上、このJ値をJ及びJで表す)、カップリングの影響は2つのcosの積としてあらわれ、コントラストとしてその差分信号を利用することから、コントラストは(26)式に示す2つの項の影響を受ける。特に、tTEやtがあまり大きくない場合は第1項の影響を受けやすい。
【0130】
【数17】
【0131】
(3)MEGAパルスが作用しないスピンが1つカップリングしている場合(便宜上、このJ値をJで表す)、そのコントラストは次の(27)式に示す項の影響を受ける。なお、この(3)はMEGAパルスを用いない通常のMRSパルスシーケンスと共通の影響である。
【0132】
【数18】
【0133】
従来のMEGAでは、原則として常にtTE=2tを利用し、数値シミュレーション等を利用してtTEをJあるいはJ+Jに対して調整していた(タイミング調整が困難な場合はtTE=2tに近づける)。しかしながら、数値シミュレーションに頼らず理想条件に対して理論式として導出されたMEGAシーケンスの性質によると、tTE=2tはそもそも必須ではないことがわかる。
【0134】
そこで、本実施形態の1つとして、tをtTEではなくJカップリング定数依存で調整することにより、TEを調整し、対象とするメタボライトとの区別が必要な他のメタボライトの影響を変化させる(他のメタボライトの分子構造に依存するが、多くの場合、この変化は軽減になる)方法を示す。MRSシーケンスでは通常、コントラストをtRO=0にあわせて調整するため、以後の例ではこのケースについて説明する。調整の対象がtRO=0でない場合にはtTEを適宜補正すれば良い。
【0135】
MEGAシーケンスの性質(1)のケースでは、sinπJ(tTE-t)は、nを整数としてπJ(tTE-t)=(2n+1)π/2とすればその絶対値を最大にできる。また、sinπJは、(先のnとは独立な)nを整数としてπJ=2n+1)π/とすればその絶対値を最大にできる。例えばJ=8.1Hzの場合を考える。従来のMEGAと同じ調整方法では、tTE-t及びtをそれぞれおよそ61.7ミリ秒とする調整が唯一の選択になる。しかしながら、そもそもtTE=2tという条件は不要であるから、例えばtTE-tをおよそ185.2ミリ秒、tをおよそ61.7ミリ秒とする調整であっても、あるいはtTE-tをおよそ61.7ミリ秒、tをおよそ185.2ミリ秒とする調整であっても良く、これらを用いることでTEを2倍としたデータ収集が可能になる。このとき、T2値やMEGAシーケンスの性質(3)で説明したようなMEGAパルスが作用しないスピンのJカップリング定数を考慮することで、より高いコントラストが得られる選択が可能になる。
【0136】
MEGAシーケンスの性質(2)のケースについては(1)のケースよりも複雑になるものの、第1項については、nを整数としてπ(J+J)(tTE-t)=(2n+1)π/2とする、(先のnとは独立な)nを整数としてπ(J+J)t=(2n+1)π/2とする、のそれぞれを満たすことでその絶対値を最大にできる。第2項については、(先のnとは独立な)nを整数としてπ(J-J)(tTE-t)=(2n+1)π/2とする、(先のnとは独立な)nを整数としてπ(J-J)t=(2n+1)π/2とする、のそれぞれを満たすことでその絶対値を最大にできることになる。この第2項は(J,J)の値によっては対象とするTE(例えば200ミリ秒以下)の範囲では小さくなるため、その場合はMEGAシーケンスの性質(1)のケースにおいてJを(J+J)に置き換えた選択をすれば良いことがわかる。あるいはMEGAシーケンスの性質(2)の式を、tTE-t及びtを適当な間隔(例えば0.1ミリ秒刻み)で変化させてその値を算出すれば、(J,J)の値によらず優れたコントラストが得られるタイミングを求めることが可能である。なお、この場合も、T2値やMEGAシーケンスの性質(3)で説明したようなMEGAパルスが作用しないスピンのJカップリング定数を考慮することで、より高いコントラストが得られる選択が可能になる。
【0137】
また、先に本実施形態の1つとして説明したプリパルス追加型MEGAシーケンスの付加は、平衡状態の密度オペレータSk,z(ただしk<kMEGA)を励起パルスよりも前に抑制しておくことを意味する。したがって、注目する密度オペレータIzから得られる信号のコントラストには影響を与えず、注目していない密度オペレータあるいは他のメタボライトからの信号を選択的に抑制する形で作用し、結果として注目する密度オペレータIzから得られる信号のコントラストを向上させることがわかる。
【0138】
上記の幾つかの実施形態によれば、本実施形態に係る周波数選択パターンとして、励起パルスの前後の周波数選択パルスの選択周波数を異ならせる第1のモードと、時間t及びエコー時間tTEに対して、(tTE-t)がtと異なるように最適化されている第2のモードとがあるものとした。処理回路51は、撮像条件設定機能514により第1のモードと第2のモードとを任意に選択可能である。選択方法としては、ユーザが選択する方法や他の撮像条件に基づき自動的に選択する方法等を採用可能である。ユーザが選択する方法において処理回路51は、表示制御機能516により、第1のモードと第2のモードとを選択するための画面(以下、選択画面)をディスプレイ53に表示する。
【0139】
図12は、選択画面I1の一例を示す図である。図12に示すように、選択画面I1は、選択欄I11、選択欄I12、入力欄I13及び入力欄I14を含む。選択欄I11は、第1の周波数選択パルスの種類を選択するためのGUI(Graphical User Interface)部品である。第1の周波数選択パルスの選択候補としては、例えば、MEGAパルスを意味する「MEGA」やSLOWパルスを意味する「SLOW」がある。図12は、MEGAパルスが選択された例を示している。また、BASINGパルス等の他の周波数選択パルスが選択候補に挙げられてもよい。選択欄I11による選択形式としては、図12に示すようなチェックボックス形式でもよいし、プルダウンメニュー形式やフリーテキスト形式等の他の形式でもよい。なお、第1の周波数選択パルスを使用しない場合、「なし」を選択可能である。
【0140】
選択欄I12は、第1のモード又は第2のモードを選択するためのGUI部品である。選択欄I12による選択形式としては、図12に示すようなチェックボックス形式が考えられる。「第1」は第1のモードを意味し、「第2」は第2のモードを意味する。なお、選択欄I12による選択形式としては、チェックボックス形式に限定されず、プルダウンメニューやフリーテキスト形式等の他の形式でもよい。
【0141】
入力欄I13は、エコー時間tTEを入力するためのGUI部品である。入力欄I14は、周波数選択パルスの印加時刻から、当該周波数選択パルスに後続する他の周波数選択パルスの印加時刻までの経過時間tを入力するためのGUI部品である。入力欄I13及び入力欄I14による入力形式は、図12に示すようなフリーテキスト形式でもよいし、チェックボックス形式やプルダウンメニュー形式でもよい。入力されたエコー時間tTE「〇〇〇」や経過時間t「×××」は、それぞれ当該入力欄I13及び入力欄I14に表示される。
【0142】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、MRS(MRスペクトロスコピー)における注目信号のコントラストを向上することができる。
【0143】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU、GPU、或いは、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC))、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサは記憶回路に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。なお、記憶回路にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むよう構成しても構わない。この場合、プロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、プログラムが記憶回路に保存される代わりに、当該機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0144】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0145】
以上の実施形態に関し、発明の一側面および選択的な特徴として以下の付記を開示する。
【0146】
(付記1)
複数の周波数選択パルスを含む第1の周波数選択パターンに基づく第1の周波数選択手段を含む第1のMRSパルスシーケンスを用いて測定対象に関する第1のデータを収集する第1のデータ収集と、前記第1の周波数選択パターンと異なり複数の周波数選択パルスを含む第2の周波数選択パターンを選択する第2の周波数選択手段を含む第2のMRSパルスシーケンスを用いて前記測定対象に関する第2のデータを収集する第2のデータ収集と、を繰り返し実行する収集部、を含む磁気共鳴イメージング装置。
前記複数の周波数選択パルスは、励起パルスの前後の周波数選択パルスの選択周波数を異ならせる、及び/又は、前記複数の周波数選択パルス間の時間t及びエコー時間tTEに対して、(tTE-t)がtと異なるように最適化されている。
【0147】
(付記2)
前記第1の周波数選択手段は、特定の周波数に対して第1レゾナンスの第1の周波数選択パルスと前記特定の周波数に対して第2レゾナンスの第2の周波数選択パルスとを含んでもよい。前記第2の周波数選択手段は、前記特定の周波数に対して第2レゾナンスの前記第1の周波数選択パルスと前記特定の周波数に対して第1レゾナンスの前記第2の周波数選択パルスを含んでもよい。
【0148】
(付記3)
前記第1の周波数選択パルスは、MRスペクトロスコピーの基本シーケンスの反転パルスに後続する周波数選択パルスでもよい。前記第2の周波数選択パルスは、MRスペクトロスコピーの基本シーケンスに先行するプリパルスでもよい。
【0149】
(付記4)
前記基本シーケンスは、PRESS、STEAM、LASER、semi-LASER、SPECIAL又はISISでもよい。前記第1の周波数選択パルスは、MEGAパルス、SLOWパルス又はBASINGパルスでもよい。
【0150】
(付記5)
前記第1の周波数選択パルスと前記第2の周波数選択パルスとは、フリップアングルが異なってもよい。
【0151】
(付記6)
前記収集部は、繰り返し実行する前記第1のMRSパルスシーケンス及び前記第2のMRSパルスシーケンスについて、エコー時間、繰り返し時間及び傾斜磁場パルスを同一条件に維持してもよい。
【0152】
(付記7)
前記第1のデータと前記第2のデータとに基づいて、前記特定の周波数とは異なる他の周波数の情報を可視化した可視化情報を生成する生成部を更に備えてもよい。
【0153】
(付記8)
前記生成部は、前記第1のデータと前記第2のデータとの差分データに基づいて前記可視化情報を生成してもよい。
【0154】
(付記9)
前記生成部は、前記可視化情報として、MRSスペクトル及び/又はCSI画像を生成してもよい。
【0155】
(付記10)
前記生成部は、前記第1のデータと前記第2のデータとに基づいて、前記可視化情報として、前記測定対象に含まれる代謝物の分類名又は前記測定対象が呈する疾患の分類名を推定してもよい。
【0156】
(付記11)
前記生成部は、前記第1のデータと前記第2のデータとに基づいて、前記可視化情報として、前記測定対象に含まれる代謝物の物質量の絶対値及び/又は相対値を推定してもよい。
【0157】
(付記12)
前記可視化情報を表示機器に表示する表示制御部を更に備えてもよい。
【0158】
(付記13)
励起パルスの前後の周波数選択パルスの選択周波数を異ならせる第1のモード、又は前記時間t及び前記エコー時間tTEに対して、(tTE-t)がtと異なるように最適化されている第2のモードとを選択するための画面を表示機器に表示する表示制御部を更に備えてもよい。
【0159】
(付記14)
前記画面は、前記第1のモード又は前記第2のモードを選択するためのGUI部品の他、前記時間tの入力欄、前記エコー時間tTEの入力欄を含んでもよい。
【0160】
(付記15)
前記画面は、前記第1の周波数選択パルスの種類を選択するためのGUI部品を含んでもよい。
【符号の説明】
【0161】
1 磁気共鳴イメージング装置
11 架台
13 寝台
21 傾斜磁場電源
23 送信回路
25 受信回路
27 寝台駆動装置
29 シーケンス制御回路
41 静磁場磁石
43 傾斜磁場コイル
45 送信コイル
47 受信コイル
50 ホストコンピュータ
51 処理回路
52 メモリ
53 ディスプレイ
54 入力インタフェース
55 通信インタフェース
131 天板
133 基台
511 取得機能
512 可視化情報生成機能
513 表示制御機能
514 撮像条件設定機能
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12