(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098520
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】光ファイバジャイロ装置
(51)【国際特許分類】
G01C 19/72 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
G01C19/72 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002043
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000203634
【氏名又は名称】多摩川精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】山本 健広
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105AA03
2F105BB02
2F105BB04
2F105BB15
2F105DD01
2F105DD13
2F105DE01
2F105DE05
2F105DE21
2F105DE25
2F105DE30
(57)【要約】
【課題】3軸の角速度の検出が可能であって、熱の影響による検出精度が悪化の解消及び整備性の向上に配慮された光ファイバジャイロ装置を提供する。
【解決手段】光ファイバジャイロ装置1において、互いに直交する3軸を含むように配置された3個の光ファイバコイル121,122,123を有する光ファイバコイル部120と、異なる3波長を含む光を光源111により発生し、異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して、3軸の光ファイバコイル121,122,123に供給し、3軸の光ファイバコイル121,122,123で周回した光をそれぞれ受光し、3軸の受光結果を出力する光学処理部110と、光源111に電力を供給すると共に、3軸の受光結果を処理し、3軸それぞれの角速度を検出する制御ユニット200とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに直交する3軸を少なくとも含むように配置された3個の光ファイバコイル(121,122,123)を有する光ファイバコイル部(120)と、
異なる3波長を含む光を光源(111)により発生し、前記異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して、3軸の前記光ファイバコイルに供給し、3軸の前記光ファイバコイルで周回した光をそれぞれ受光し、3軸の受光結果を出力する光学処理部(110)と、
前記光源(111)に電力を供給すると共に、前記3軸の受光結果を処理し、3軸それぞれの角速度を検出する制御ユニット(200)と、
を備える光ファイバジャイロ装置。
【請求項2】
前記光学処理部(110)と前記制御ユニット(200)とは、分離した状態で構成され、接続ケーブル(300)により電気的に相互に接続されている、
請求項1に記載の光ファイバジャイロ装置。
【請求項3】
前記光学処理部(110)と前記制御ユニット(200)とは、遮熱部(400)を挟んで配置される、
請求項1に記載の光ファイバジャイロ装置。
【請求項4】
前記光学処理部(110)は、前記異なる3波長を含む光を発生する前記光源(111)と、光カプラ(112)と、光分岐混合器(113)と、光分離フィルタ(114)と、第1の受光器(115)と、第2の受光器(116)と、第3の受光器(117)とを備えて構成され、
前記光カプラ(112)は、前記光源(111)からの前記異なる3波長を含む光を前記光分岐混合器(113)に供給すると共に、前記光分岐混合器(113)からの光を前記光分離フィルタ(114)に供給し、
前記光分岐混合器(113)は、前記光カプラ(112)を介した前記光源(111)からの前記異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して3軸の前記光ファイバコイル(121,122,123)に供給すると共に、3軸の前記光ファイバコイル(121,122,123)のそれぞれで周回した光を受け取って混合し前記光カプラ(112)に供給し、
前記光分離フィルタ(114)は、前記光カプラ(112)から供給される光を波長毎に分離して、前記第1の受光器(115)、前記第2の受光器(116)、及び前記第3の受光器(117)に供給し、
前記第1の受光器(115)、前記第2の受光器(116)、及び前記第3の受光器(117)は、前記光分離フィルタ(114)で分離された波長毎の光をそれぞれ受光し、前記3軸の受光結果を出力する、
請求項1に記載の光ファイバジャイロ装置。
【請求項5】
前記光分岐混合器(113)は、前記異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して、3軸の前記光ファイバコイル(121,122,123)に、互いに逆向きとなる第1回転方向と第2回転方向とに供給すると共に、3軸の前記光ファイバコイル(121,122,123)のそれぞれで前記第1回転方向に周回した光と前記第2回転方向に周回した光とを受け取って混合し、
前記光分離フィルタ(114)は、それぞれの光の波長毎に前記光ファイバコイル(121,122,123)を前記第1回転方向に周回した光と前記第2回転方向に周回した光とを合成して干渉光を生成し、前記第1の受光器(115)、前記第2の受光器(116)、及び前記第3の受光器(117)に各波長の前記干渉光を供給する、
請求項4に記載の光ファイバジャイロ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバジャイロ装置に関し、特に、熱による影響を受けにくく、整備性に配慮された光ファイバジャイロ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバジャイロセンサは、光ファイバジャイロスコープとも呼ばれ、光の干渉を利用して機械的な回転を検出するジャイロスコープである。光ファイバジャイロセンサでは、コイル状に巻かれた光ファイバコイルがセンシングコイル部として利用される。センシングコイル部には、位相の揃った光が第1回転方向(たとえば時計回り)と第2回転方向(たとえば反時計回り)に供給される。センシングコイル部に角速度が加わると、サニャック効果により両回り光に位相差が発生し、干渉を生じる。この干渉を検出し、演算処理することで、センシングコイル部に加わった角速度を検出することができる。
【0003】
光ファイバジャイロセンサを互いに直交する3軸分取り付けて構成される光ファイバジャイロ装置の場合、車両や飛翔体等の各種移動体の姿勢や挙動を検出することができる。このような3軸の光ファイバジャイロ装置は、以下の特許文献に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される光ファイバジャイロ装置の場合、3軸分の取り付け穴を有する取り付けブロックに、光ファイバジャイロセンサを3軸分取り付けるようにしていた。
【0006】
なお、各軸の光ファイバジャイロセンサは、円環状のセンシングコイル部の内側の空間に、光源、各種のフィルタ、受光器、及び信号処理回路などが配置されており、結果として発熱する多くの部品等が狭い空間に密閉されて収められている。このような光ファイバジャイロ装置は、熱の影響により各部の特性が変化し、検出精度が悪化することがあった。
また、いずれかの軸の信号処理回路の故障等により基板を交換するような場合、該当する軸について、基板以外の部位(光源、受光器、センシングコイル部)を含めた光ファイバジャイロセンサ一式を取り外す必要があり、整備性が悪い問題があった。
【0007】
したがって、3軸の角速度を検出可能な光ファイバジャイロ装置において、熱の影響による検出精度の悪化の解消及び整備性の向上が望まれていた。
本発明は、以上のような課題を解決するためになされたものであり、3軸の角速度の検出が可能であって、熱の影響による検出精度の悪化の解消及び整備性の向上に配慮された光ファイバジャイロ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る光ファイバジャイロ装置は、互いに直交する3軸を少なくとも含むよう配置された3個の光ファイバコイルを有する光ファイバコイル部と、異なる3波長を含む光を光源により発生し、異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して、3軸の光ファイバコイルに供給し、3軸の光ファイバコイルで周回した光をそれぞれ受光し、3軸の受光結果を出力する光学処理部と、光源に電力を供給すると共に、3軸の受光結果を処理し、3軸それぞれの角速度を検出する制御ユニットと、を備える。
【0009】
この発明に係る光ファイバジャイロ装置において、光学処理部と制御ユニットとは、分離した状態で構成され、接続ケーブルにより電気的に相互に接続されている。
【0010】
この発明に係る光ファイバジャイロ装置において、光学処理部と制御ユニットとは、遮熱部を挟んで配置される。
【0011】
この発明に係る光ファイバジャイロ装置において、光学処理部は、異なる3波長を含む光を発生する光源と、光カプラと、光分岐混合器と、光分離フィルタと、第1の受光器と、第2の受光器と、第3の受光器とを備えて構成され、光カプラは、光源からの異なる3波長を含む光を光分岐混合器に供給すると共に、光分岐混合器からの光を光分離フィルタに供給し、光分岐混合器は、光カプラを介した光源からの異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して3軸の光ファイバコイルに供給すると共に、3軸の光ファイバコイルのそれぞれで周回した光を受け取って混合し光カプラに供給し、光分離フィルタは光カプラから供給される光を波長毎に分離して、第1の受光器、第2の受光器、及び第3の受光器に供給し、第1の受光器、第2の受光器、及び第3の受光器は、3軸の受光結果を出力する。
【0012】
この発明に係る光ファイバジャイロ装置において、光分岐混合器は、異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して、3軸の光ファイバコイルに、互いに逆向きとなる第1回転方向と第2回転方向とに供給すると共に、3軸の光ファイバコイルのそれぞれで第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光とを受け取って混合し、光分離フィルタは、それぞれの光の波長毎に光ファイバコイルを第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光とを合成して干渉光を生成し、第1の受光器、第2の受光器、及び第3の受光器に各波長の干渉光を供給する。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、3軸の角速度の検出が可能であり、熱の影響による検出精度の悪化を解消することが可能であって、整備性の向上に配慮された光ファイバジャイロ装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施の形態1の光ファイバジャイロ装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の実施の形態1の光ファイバジャイロ装置の各部の配置を示す構成図である。
【
図3】本発明の実施の形態2の光ファイバジャイロ装置の各部の配置を示す構成図である。
【
図4】比較例の光ファイバジャイロ装置の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の光ファイバジャイロ装置の実施の形態につき、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一部分には同一符号を付している。
【0016】
[比較例]
まず、本発明の実施の形態1における光ファイバジャイロ装置1に対する比較例として、従来から知られている3軸の光ファイバジャイロ装置1Aについて
図4を参照して説明する。
図4は、比較例の光ファイバジャイロ装置1Aの構成を示す構成図である。
【0017】
図4において、光ファイバジャイロ装置1Aは、XYZの3軸方向の取り付け穴を有する取付けブロック1BLKに、3軸分の光ファイバジャイロセンサ1X,1Y,及び1Zが取り付けられている。
【0018】
各軸の光ファイバジャイロセンサ1X,1Y,1Zは、それぞれ円環状の光ファイバコイルの内側の空間に、電源部、演算処理部、及び光源が配置され、密閉されている。すなわち、各軸の光ファイバジャイロセンサ1X,1Y,1Zは、発熱する多くの部品等が狭い空間に密閉されて収められている。このため、各軸の光ファイバジャイロセンサ1X,1Y,1Zは、自ら発生した熱の影響により各部の特性が変化し、検出精度が悪化することがあった。
【0019】
光ファイバジャイロ装置1Aにおいて、いずれかの軸の光ファイバジャイロセンサの演算処理部の故障等により基板を交換するような場合、該当する軸について、光ファイバジャイロセンサを取り付けブロック1BLKから取り外し、取り外した光ファイバジャイロセンサを分解する必要があり、整備性が悪い問題があった。
【0020】
同様に、光ファイバジャイロ装置1Aにおいて、プログラムのバージョンアップのために3軸の制御基板を交換するような場合、各軸の制御基板のみを取り外して交換することができず、光ファイバジャイロセンサ1X,1Y,1Zの全てを取り付けブロック1BLKから取り外し、光ファイバジャイロセンサ1X,1Y,1Zの全てを分解する必要があり、整備性が悪い問題があった。
なお、光源の交換、光ファイバコイルの交換の場合についても、同様の課題を有している。
【0021】
取付けブロック1BLKは、3軸分の光ファイバジャイロセンサ1X,1Y,及び1Zを互いに接触させることなく取り付ける必要がある。このため、取付けブロック1BLKは、取り付け位置だけでなく内部の空間にも余裕を持たせる必要があり、大型化する傾向があった。
【0022】
実施の形態1.
次に、
図1を用いて、本発明の実施の形態1における光ファイバジャイロ装置1の構成について説明する。
図1は、本発明の実施の形態1の光ファイバジャイロ装置1の構成を示すブロック図である。
【0023】
光ファイバジャイロ装置1は、互いに直交する3軸分の光ファイバジャイロセンサの機能を備えることで、3軸の角速度を検出し、移動体の姿勢や挙動を検出するものである。
【0024】
図1において、光ファイバジャイロ装置1は、主に、光学ユニット100と、制御ユニット200とを備えている。光学ユニット100には、光学処理部110と、光ファイバコイル部120とが設けられている。ここで、光学ユニット100と制御ユニット200とは、分離した状態で構成されている。
図1中で、矢印付き実線は電気的な信号あるいは電力を意味し、矢印なし太実線は光の伝送を意味する。
【0025】
具体的には、光学ユニット100に属する光学処理部110と、制御ユニット200とが、分離した状態で構成されている。光学処理部110と制御ユニット200とは、接続ケーブル300により電気的に相互に接続されている。すなわち、光学処理部110と、制御ユニット200とは、機械的に分離された状態に配置され、結果として熱的に分離された状態で構成されている。
【0026】
光学処理部110には、光源111と、光カプラ112と、光分岐混合器113と、光分離フィルタ114と、第1の受光器115と、第2の受光器116と、第3の受光器117とが設けられている。
【0027】
光ファイバコイル部120には、互いに直交する3軸を少なくとも含むように配置された3個の光ファイバコイル121,122,123が設けられている。すなわち、光ファイバコイル部120には3軸分の光ファイバコイル121,122,123がまとめた状態の3軸一体型に集約されてコンパクトに構成されている。
光ファイバコイル121,122,123のいずれかを整備する必要がある場合には、光ファイバコイル部120以外の開封や取り外しは必要がないため、3軸分の光ファイバコイルが独立している従来構成より整備性が改善されている。
【0028】
光ファイバコイル部120において、3個の光ファイバコイル121,122,123が、「互いに直交する3軸を少なくとも含むように配置される」とは、
・(a)互いに完全に直交する第1軸(X軸)、第2軸(Y軸)、及び第3軸(Z軸)に沿って配置された状態、
・(b)第1軸(主にX軸の成分を含み、副次的にY軸あるいはZ軸の少なくとも一方の成分を含みうる)と、第2軸(主にY軸の成分を含み、副次的にX軸あるいはZ軸の少なくとも一方の成分を含みうる)と、第3軸(主にZ軸の成分を含み、副次的にX軸あるいはY軸の少なくとも一方の成分を含みうる)とに沿って配置された状態、
のいずれかの状態を意味している。
【0029】
光源111は、フィルタで分離または分岐可能な異なる3波長λ1,λ2,λ3を含む光を発生する。光カプラ112は、光源111からの光を光分岐混合器113に供給すると共に、光分岐混合器113からの光を光分離フィルタ114に供給する。
【0030】
光分岐混合器113は、光カプラ112を介した光源111からの異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して、3軸の光ファイバコイル121,122,123に、互いに逆向きとなる第1回転方向と第2回転方向とに供給すると共に、3軸の光ファイバコイル121,122,123のそれぞれで第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光とを受け取って混合し、光カプラ112に供給する。
【0031】
光分離フィルタ114は、光カプラ112から供給される光を波長毎に分離して、それぞれの光の波長毎に光ファイバコイル121,122,123を第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光とを合成する。ここで、光ファイバコイル121,122,123に角速度が加わると、サニャック効果により両回り光に位相差が発生し、干渉(すなわち、干渉光)を生じる。第1の受光器115、第2の受光器116、及び第3の受光器117に各波長の干渉光を供給し、干渉を検出し、制御ユニット200で演算処理することで、光ファイバコイル121,122,123に加わった角速度を検出することができる。
【0032】
第1の受光器115は、光分離フィルタ114で分岐された、光ファイバコイル121からの光により合成された干渉光を光電変換し、第1受光信号を生成する。第2の受光器116は、光分離フィルタ114で分岐された、光ファイバコイル122からの光により合成された干渉光を光電変換し、第2受光信号を生成する。第3の受光器117は、光分離フィルタ114で分離された、光ファイバコイル123からの光により合成された干渉光を光電変換し、第3受光信号を生成する。
第1の受光器115、第2の受光器116、及び第3の受光器117でそれぞれ生成された3軸の受光結果としての第1受光信号、第2受光信号、及び第3受光信号は、接続ケーブル300を経由して、制御ユニット200に送られる。
【0033】
以上の光学処理部110は、単一の光源111から3軸分の3波長の発光を行うと共に、第1の受光器115、第2の受光器116、及び第3の受光器117で3軸分の受光を行う3軸一体型であるため、集約されてコンパクトに構成されている。ここで、光学処理部110を整備する必要がある場合には、光学処理部110以外の開封や取り外しは必要がなく、3軸分の光学処理部が独立している従来構成より整備性が改善されている。
【0034】
制御ユニット200は、光学ユニット100と機械的または熱的に分離された状態で構成され、詳しくは、光学処理部110と分離された状態で構成されている。そして、制御ユニット200は、接続ケーブル300により光学処理部110と電気的に接続されている。
制御ユニット200は、接続ケーブル300を介して光学処理部110内と接続され、光源111に電力を供給すると共に、3軸の受光結果である第1受光信号、第2受光信号、及び第3受光信号を処理し、3軸それぞれの角速度を検出する。
【0035】
制御ユニット200には、制御回路201と、信号処理回路202と、電源回路203とが設けられている。
制御回路201は、光源111に電力を供給して光源111の発光を制御すると共に、信号処理回路202における信号処理を制御し、3軸それぞれの角速度を含むジャイロ信号を外部に出力する。信号処理回路202は、光学ユニット100からの第1受光信号、第2受光信号、及び第3受光信号を処理し、3軸それぞれの角速度を検出する。電源回路203は、外部から供給される電力を用いて、各部に必要な電圧に調整した電力を供給する。
以上のように制御ユニット200は、3軸分の処理の制御を一括して行うように、3軸一体型に集約されてコンパクトに構成されている。そして、制御ユニット200を整備する必要がある場合には、制御ユニット200以外の開封や取り外しは必要がなく、3軸分の制御ユニットが独立している従来構成より整備性が改善されている。
【0036】
以下、光ファイバジャイロ装置1における3軸の角速度の検出について説明する。
光源111で生成された異なる3波長λ1,λ2,λ3を含む光は、光カプラ112を通り、光分岐混合器113で波長λ1,λ2,λ3の光にそれぞれ分岐され、3軸の光ファイバコイル121,122,123それぞれに、互いに逆向きとなる第1回転方向と第2回転方向とに供給される。例えば、第1回転方向は右回りまたは時計回りである場合、第2回転方向は左回り反時計回りである。
【0037】
3軸の光ファイバコイル121,122,123のそれぞれで第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光とは、光分岐混合器113で再び混合され、光カプラ112を通り、光分離フィルタ114に供給される。そして、光分離フィルタ114により、波長λ1,λ2,λ3の光にそれぞれ分離される。
【0038】
第1の受光器115は、光分離フィルタ114で分離された第1の波長λ1の光について、光ファイバコイル121を第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光とにより合成された干渉光を光電変換し、第1受光信号を生成する。
第2の受光器116は、光分離フィルタ114で分離された第2の波長λ2の光について、光ファイバコイル122を第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光とにより合成された干渉光を光電変換し、第2受光信号を生成する。
第3の受光器117は、光分離フィルタ114で分離された第3の波長λ3の光について、光ファイバコイル123を第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光とにより合成された干渉光を光電変換し、第3受光信号を生成する。
【0039】
信号処理回路202は、第1受光信号、第2受光信号、及び第3受光信号を処理し、3軸それぞれの角速度を検出する。第1受光信号、第2受光信号、及び第3受光信号に含まれる干渉光は、各光ファイバコイル121,122,123を第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光の位相差によるものである。このため、信号処理回路202は、第1受光信号、第2受光信号、及び第3受光信号のそれぞれに含まれる位相差からX,Y,Zの各軸に加わった角速度を検出する。信号処理回路202で検出された3軸それぞれの角速度は、制御回路201からジャイロ信号として外部に出力される。
【0040】
次に、
図2を用いて、本発明の実施の形態1における光ファイバジャイロ装置1の各部の配置について説明する。
図2は、本発明の実施の形態1の光ファイバジャイロ装置1の各部の配置を示す構成図である。
【0041】
光ファイバコイル部120には、互いに直交する3軸を少なくとも含むように、3個の光ファイバコイル121,122,123が設けられている。なお、光ファイバコイル121,122,123は、
図1に示される円形以外にも、楕円形、長円形、角丸多角形など、各種の形状に構成することができる。
光ファイバコイル部120は、3個の光ファイバコイル121,122,123の端部を近接させるように配置することで、3軸分まとめた状態の3軸一体型に集約されてコンパクトに構成されている。光ファイバコイル部120は、3個の光ファイバコイル121,122,123の端部を近接させるように配置することで、全体を覆う立方体に対して凹部のような空間が形成される。この空間内に、光学処理部110が配置される。そして、光学処理部110と光ファイバコイル部120とにより、光学ユニット100を形成している。
【0042】
制御ユニット200は、接続ケーブル300を介して、光学ユニット100内の光学処理部110と分離して配置されている。すなわち、光学ユニット100と制御ユニット200とは、機械的または熱的に分離された状態に配置されている。
例えば、光学処理部110内の光源111等で発生した熱は、制御ユニット200内の信号処理回路202に到達することはない。この結果、光源111からの熱に影響されず、信号処理回路202の検出精度は良好に保たれる。また、制御ユニット200内の電源回路203等で発生した熱は、光学処理部110内の各種光学系部品に到達することはない。この結果、光学処理部110の光学的特性は良好な状態に保たれる。
【0043】
制御ユニット200が光学ユニット100と分離された状態に配置されているため、制御ユニット200内の制御回路201または信号処理回路202が搭載された基板を交換する、あるいは、基板上の電子部品を交換するような場合、制御ユニット200のみで対処することができる。また、制御ユニット200の分解することなく、制御ユニット200そのものを交換することも可能である。
【0044】
この結果、制御ユニット200以外の部位(光学処理部110、及び、光ファイバコイル部120)を取り外す必要がなく、整備性が改善される。
また、光学処理部110を修理または交換する場合も同様に、光学処理部110以外の部位(制御ユニット200、及び、光ファイバコイル部120)を取り外す必要がなく、整備性が改善される。
更に、光ファイバコイル部120を修理または交換する場合も同様に、光ファイバコイル部120以外の部位(光学処理部110、及び、制御ユニット200)を取り外す必要がなく、整備性が改善される。
【0045】
実施の形態2.
次に、
図3を用いて、本発明の実施の形態2における光ファイバジャイロ装置1の各部の配置について説明する。
図3は、本発明の実施の形態2の光ファイバジャイロ装置1の各部の配置を示す構成図である。なお、
図1を用いて説明した光学処理部110、光ファイバコイル部120、制御ユニット200の各部の回路構成は、実施の形態2においても実施の形態1と同じであるため、重複した説明を省略する。
【0046】
光ファイバコイル部120には、互いに直交する3軸を少なくとも含むように、3個の光ファイバコイル121,122,123が設けられている。なお、光ファイバコイル121,122,123は、円形以外に、楕円形、長円形、角丸多角形などの各種の形状にすることができる。
光ファイバコイル部120は、3個の光ファイバコイル121,122,123の端部を近接させるように配置することで、全体を覆う立方体に対して凹部のような空間が形成される。この空間内に、光学処理部110と制御ユニット200とが、遮熱部400を挟むようにして配置される。
【0047】
光学処理部110と遮熱部400と制御ユニット200とは、
図3の紙面内で縦方向に並んだ状態で示しているが、これに限定されず、紙面内で横に並ぶように配置してもよい。この場合、縦方向の上下の順、横方向の左右の順は、任意に決めることができる。
また、遮熱部400は、光学処理部110と制御ユニット200との間に配置するだけでなく、光学処理部110及び制御ユニット200の少なくとも一方の表面を覆うように配置してもよい。ここで、表面を覆うとは、外装であってもよいし、内装であってもよい。また、表面を覆うとは、対向する面を少なくとも覆えばよい。
【0048】
ここで、遮熱部400は、熱輻射による熱移動を防ぐことを目的として、光学処理部110と制御ユニット200との間に配置されている。なお、遮熱部400は、熱伝導を減らすための断熱部材であってもよいし、遮熱と断熱との両方の機能を兼ね備えた部材であってもよい。このような遮熱部400を光学処理部110と制御ユニット200との間に配置することで、例えば、光学処理部110内の光源111で発生した熱は、制御ユニット200内の信号処理回路202に到達することはない。この結果、光源111等からの熱に影響されず、信号処理回路202の検出精度は良好に保たれる。また、制御ユニット200内の電源回路203等で発生した熱は、光学処理部110内の各種光学系部品に到達することはない。この結果、光学処理部110の光学的特性は良好な状態に保たれる。
【0049】
光学処理部110と制御ユニット200とは、
図1と同様に接続ケーブル300を介して接続されてもよいが、図示されない接続コネクタ等を介して位置決めを兼ねて互いに接続されてもよい。
【0050】
光学処理部110と制御ユニット200とは、光ファイバコイル部120と分離された状態に配置されているため、光学処理部110を修理または交換する場合、制御ユニット200を修理または交換する場合、光ファイバコイル部120を修理または交換場合のいずれであっても、修理または交換する以外の部位を取り外す必要がなく、整備性が改善される。
【0051】
[実施の形態により得られる効果]
実施の形態1及び2に説明した光ファイバジャイロ装置1において、互いに直交する3軸を少なくとも含むように配置された3個の光ファイバコイル121,122,123を有する光ファイバコイル部120と、異なる3波長を含む光を光源111により発生し、異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して、3軸の光ファイバコイル121,122,123に供給し、3軸の光ファイバコイル121,122,123で周回した光をそれぞれ受光し、3軸の受光結果を出力する光学処理部110と、光源111に電力を供給すると共に、3軸の受光結果を処理し、3軸それぞれの角速度を検出する制御ユニット200と、を備える。
ここで、光ファイバコイル部120には3軸分の光ファイバコイル121,122,123がまとめて一体型に配置され、光学処理部110は3波長の光を発生すると共に3波長を検出し、制御ユニット200は3波長分の干渉光から角速度を演算処理することにより、3軸の角速度を効率的に検出することができる。
また、3軸の受光結果を出力する光学処理部110と、3軸それぞれの角速度を検出する制御ユニット200とが別に構成されたことで、熱による悪影響を受けにくく構成されている。この結果、3軸の角速度の検出が可能であり、熱の影響による検出精度の悪化を解消することが可能であって、整備性の向上に配慮された光ファイバジャイロ装置1を提供することができる。
【0052】
実施形態1及び2に係る光ファイバジャイロ装置1において、光学処理部110と制御ユニット200とは、分離した状態で構成され、接続ケーブル300により電気的に相互に接続されている。この結果、光学処理部110と、制御ユニット200とは、機械的に分離された状態に配置され、結果として熱的に分離された状態で構成されている。この結果、3軸の角速度の検出が可能であり、熱の影響による検出精度の悪化を解消することが可能になる。
【0053】
実施形態1及び2に係る光ファイバジャイロ装置1において、光学処理部110と制御ユニット200とは、遮熱部400を挟んで配置される。この結果、光学処理部110と制御ユニット200との間で熱の移動が防がれ、結果として熱的に分離された状態で構成されている。このため、3軸の角速度の検出が可能であり、熱の影響による検出精度の悪化を解消することが可能になる。
【0054】
実施形態1に係る光ファイバジャイロ装置1において、光学処理部110は、異なる3波長を含む光を発生する光源111と、光カプラ112と、光分岐混合器113と、光分離フィルタ114と、第1の受光器115と、第2の受光器116と、第3の受光器117とを備えて構成される。光カプラ112は、光源111からの光を光分岐混合器113に供給すると共に、光分岐混合器113からの光を光分離フィルタ114に供給する。光分岐混合器113は、光カプラ112を介した光源111からの異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して3軸の光ファイバコイル121,122,123に供給すると共に、3軸の光ファイバコイル121,122,123のそれぞれで周回した光を受け取って混合し光カプラ112に供給する。光分離フィルタ114は、光カプラ112から供給される光を波長毎に分離して、第1の受光器115、第2の受光器116、及び第3の受光器117に供給する。第1の受光器115、第2の受光器116、及び第3の受光器117は、光分離フィルタ114で分離された波長毎の光をそれぞれ受光し、3軸の受光結果を出力する。
この結果、光源111からの異なる3波長を含む光を3軸の光ファイバコイル121,122,123に供給し、光ファイバコイル121,122,123を周回した光を第1の受光器115、第2の受光器116、及び第3の受光器117で受光して3軸の受光結果を出力することにより、3軸の角速度の検出が可能であり、熱の影響による検出精度の悪化を解消することが可能であって、整備性の向上に配慮された光ファイバジャイロ装置1を提供することができる。
【0055】
実施形態1に係る光ファイバジャイロ装置1において、光分岐混合器113は、異なる3波長を含む光を波長毎に分岐して、3軸の光ファイバコイル121,122,123に、互いに逆向きとなる第1回転方向と第2回転方向とに供給すると共に、3軸の光ファイバコイル121,122,123のそれぞれで第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光とを受け取って混合する。光分離フィルタ114は、それぞれの光の波長毎に光ファイバコイル121,122,123を第1回転方向に周回した光と第2回転方向に周回した光とを合成して干渉光を生成し、第1の受光器115、第2の受光器116、及び第3の受光器117に各波長の干渉光を供給する。
ここで、光ファイバコイル121,122,123に角速度が加わると、サニャック効果により両回り光に位相差が発生し、干渉光を生じる。第1の受光器115、第2の受光器116、及び第3の受光器117に各波長の干渉光を供給し、干渉を検出し、制御ユニット200で演算処理することで、光ファイバコイル121,122,123に加わった角速度を検出することができる。この結果、3軸の角速度の検出が可能であり、熱の影響による検出精度の悪化を解消することが可能であって、整備性の向上に配慮された光ファイバジャイロ装置1を提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1 光ファイバジャイロ装置、100 光学ユニット、110 光学処理部、111 光源、112 光カプラ、113 光分岐混合器、114 光分離フィルタ、115 第1の受光器、116 第2の受光器、117 第3の受光器、120 光ファイバコイル部、121,122,123 光ファイバコイル、200 制御ユニット、201 制御回路、202 信号処理回路、203 電源回路、300 接続ケーブル、400 遮熱部。