(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098528
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0247 20160101AFI20240717BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/023 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/0245 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20240717BHJP
【FI】
H01M8/0247
H01M8/0273
H01M8/023
H01M8/0245
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002059
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】外村 孝直
(72)【発明者】
【氏名】柴田 和則
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA12
5H126AA13
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD05
5H126JJ03
(57)【要約】
【課題】耐面圧を向上させることができる燃料電池を提供する。
【解決手段】反応ガスの供給を受けて発電する燃料電池であって、電解質膜および電極を含む発電部と、前記発電により生じた電流を集電し、隔壁として機能するセパレータと、前記発電部の外周に配置され、当該発電部の両側に配置された前記セパレータと実質的に当接して前記反応ガスの漏れを抑えるシールラインを形成したシールガスケットと、前記発電部と前記セパレータとの間に挟まれ、該セパレータを介して前記反応ガスが供給される所定の気孔率で形成された多孔体と、前記多孔体に供給された前記反応ガスが、前記セパレータと前記シールラインと当該多孔体とに囲まれて形成された空隙へ流れ出るのを抑制する、前記セパレータの形状を備え、前記セパレータは、一定の幅を有するリブとそのリブ幅以下の間隔で隣接配置されたリブを複数有することにより定寸保持部が構成される形状を備える、燃料電池。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応ガスの供給を受けて発電する燃料電池であって、
電解質膜および電極を含む発電部と、
前記発電により生じた電流を集電し、隔壁として機能するセパレータと、
前記発電部の外周に配置され、当該発電部の両側に配置された前記セパレータと実質的に当接して前記反応ガスの漏れを抑えるシールラインを形成したシールガスケットと、
前記発電部と前記セパレータとの間に挟まれ、該セパレータを介して前記反応ガスが供給される所定の気孔率で形成された多孔体と、
前記多孔体に供給された前記反応ガスが、前記セパレータと前記シールラインと当該多孔体とに囲まれて形成された空隙へ流れ出るのを抑制する、前記セパレータの形状を備え、
前記セパレータは、一定の幅を有するリブとそのリブ幅以下の間隔で隣接配置されたリブを複数有することにより定寸保持部が構成される形状を備える、燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1において開示されるような燃料電池に関して様々な技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術では、燃料電池の耐面圧が十分ではない。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、耐面圧を向上させることができる燃料電池を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示においては、反応ガスの供給を受けて発電する燃料電池であって、
電解質膜および電極を含む発電部と、
前記発電により生じた電流を集電し、隔壁として機能するセパレータと、
前記発電部の外周に配置され、当該発電部の両側に配置された前記セパレータと実質的に当接して前記反応ガスの漏れを抑えるシールラインを形成したシールガスケットと、
前記発電部と前記セパレータとの間に挟まれ、該セパレータを介して前記反応ガスが供給される所定の気孔率で形成された多孔体と、
前記多孔体に供給された前記反応ガスが、前記セパレータと前記シールラインと当該多孔体とに囲まれて形成された空隙へ流れ出るのを抑制する、前記セパレータの形状を備え、
前記セパレータは、一定の幅を有するリブとそのリブ幅以下の間隔で隣接配置されたリブを複数有することにより定寸保持部が構成される形状を備える、燃料電池を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の燃料電池は、耐面圧を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】(1)が燃料電池を平面視したときの一例を示す概略模式図であり、(2)が隣り合うセル間の従来のリブの膜端部沿いの配置の一例を示す断面模式図であり、(3)が隣り合うセル間の本開示のリブの膜端部沿いの配置の一例を示す断面模式図である。
【
図2】隣り合うセル間の本開示のリブの配置の一例を示す平面模式図である。
【
図3】(1)が隣り合うセル間の本開示のリブの配置の別の一例を示す平面模式図であり、(2)が燃料電池の膜端部周辺の一部を平面視したときの一例を示す概略模式図であり、(3)が燃料電池の膜端部周辺の一部を平面視したときの別の一例を示す概略模式図である。
【
図4】隣り合うセル間の本開示のリブの配置の別の一例を示す平面模式図である。
【
図5】隣り合うセル間の本開示のリブの配置の別の一例を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない燃料電池の一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
【0010】
積層したセルの各セパレータ間の接着が樹脂シートと熱溶着接着剤により構成されている燃料電池では、発電部と、その周囲の定寸部が発生し、発電部と定寸部は気密性を保つため、接着等によって連結されている。
発電部にはガス拡散層(多孔体)などの構成部材があるため、発電部と定寸部の境界には膜端部と呼ぶ溝状の部分が発生することが多い。この膜端部は、構造上ガスが流通するため、熱溶着接着剤等で閉塞する必要がある。しかし、熱溶着接着剤で封止するためには、一定以上の幅で加熱プレスする必要があるため、一定幅でセルの薄肉部が発生し、セル積層時の押圧に耐えられなくなるため、一定以下の間隔で、膜端部を横断するリブを設けて、耐面圧を確保する構造となっている。このリブは通常、発電部と定寸部との接着部を横断するため、リブの幅が一定以上になると、接着部の剥離が発生し、気密性を阻害する。リブの幅を一定幅以下に押さえると剥離は防止されるが、セパレータの積層ずれや隣接するセルの積層ずれの許容値が減少し、生産性に影響を及ぼす。
従来技術では、溶着樹脂部分の膜端部を積層したセルの各セパレータのリブを互いに異なる方向に形成することにより、ずれの許容を広くしている。しかしながら、積層されたリブにおいて、互いちがいの構成の場合、積層された時点において、応力が集中してしまい、かつリブの幅も狭くなっている(0.8mm程度)ので強度も低下しているため、リブの座屈が発生し、積層組み立てが困難となってしまう。
そこで、本開示では、リブ形状や配置を工夫することで、一定以下の幅のリブでも積層時の許容値を確保し、安定して製品を生産できる形状を提供する。
【0011】
第1実施形態
本開示の第1実施形態においては、反応ガスの供給を受けて発電する燃料電池であって、
電解質膜および電極を含む発電部と、
前記発電により生じた電流を集電し、隔壁として機能するセパレータと、
前記発電部の外周に配置され、当該発電部の両側に配置された前記セパレータと実質的に当接して前記反応ガスの漏れを抑えるシールラインを形成したシールガスケットと、
前記発電部と前記セパレータとの間に挟まれ、該セパレータを介して前記反応ガスが供給される所定の気孔率で形成された多孔体と、
前記多孔体に供給された前記反応ガスが、前記セパレータと前記シールラインと当該多孔体とに囲まれて形成された空隙へ流れ出るのを抑制する、前記セパレータの形状を備え、
前記セパレータは、一定の幅を有するリブとそのリブ幅以下の間隔で隣接配置されたリブを複数有することにより定寸保持部が構成される形状を備える、燃料電池を提供する。
【0012】
第1実施形態によれば、リブの幅を、剥離を発生させない一定の幅(1mm前後が適当であり、0.8mm~1.2mmであってもよい)とし、隣接するリブをリブ幅以下の間隔で配置した集合体を複数設け、積層時にリブ幅以上のずれが発生した場合にも、隣接のリブが積層時の荷重を分担し、荷重集中が起こらない状態とすることができる。
【0013】
図1は、(1)が燃料電池を平面視したときの一例を示す概略模式図であり、(2)が隣り合うセル間の従来のリブの膜端部沿いの配置の一例を示す断面模式図であり、(3)が隣り合うセル間の本開示のリブの膜端部沿いの配置の一例を示す断面模式図である。
燃料電池は、
図1(1)に示す通常ガス流れとなる領域である発電部と、その周囲の定寸部を有し、発電部と定寸部の境界には、
図1(1)に脇流れで示す膜端部を有する。
本開示では、
図1(2)に示すような従来技術のように、隣り合う一定幅(例えば0.8mm)のリブを、リブ幅を超える間隔で等間隔に配置させるのではなく、
図1(3)に示すように、隣り合うリブをリブ幅よりも狭い間隔で配置した一定幅(1mm前後が適当であり、0.8mm~1.2mmであってもよい)のリブの集合体を複数設け、この集合体間の間隔を、集合体内のリブの間隔よりも広く配置してもよい。これにより、燃料電池のセルの積層時に、多少ずれても、異なるセルに設けられたリブ同士を当接させることによって、セル間の寸法を一定寸法に保持することができる。
【0014】
第2実施形態
本開示の第2実施形態においては、第1実施形態において、前記セパレータは、一定の幅(1mm前後が適当であり、0.8mm~1.2mmであってもよい)を有し、且つ、平面視したときに隣接するセルのリブと一定以上の角度(概ね90°以上であり、80°以上であってもよい)で交差し、且つ、交差するリブの交点が2か所以上存在する状態でリブが形成され定寸保持部が構成される形状を有してもよい。
【0015】
第2実施形態によれば、一定幅のリブを大きく角度をつけて配置し、複数のリブ交差点によりセル積層時に荷重を分担することで、荷重の集中が起こらない状態とすることができる。
図2は、隣り合うセル間の本開示のリブの配置の一例を示す平面模式図である。
本開示では、
図2に示すように、隣接するセル同士の一定の幅(1mm前後が適当であり、0.8mm~1.2mmであってもよい)のリブを平面視したときに交差させ、この交差時の異なるセルに設けたリブ同士の間隔を狭く配置させてもよい。これにより、隣接する相手方のセルのリブと複数の箇所で当接部分を設けることができ、セル積層の押圧力を分散させることができる。
【0016】
第3実施形態
本開示の第3実施形態においては、第1実施形態において、前記セパレータは、一定の幅(1mm前後が適当であり、0.8mm~1.2mmであってもよい)を有し、且つ、前記発電部と前記発電部の周囲の定寸部の両側にまたがり膜端部を横断する小幅リブと、前記小幅リブと所定の間隔を空けて配置され、且つ、前記発電部と定寸部をまたがず膜端部を横断しない形で配置された一定の幅(2mm前後以上が適当であり、1.8mm以上であってもよく、2.2mm以上であってもよい)以上の大幅リブにより、定寸保持部が構成される形状を有してもよい。
【0017】
第3実施形態によれば、発電部と定寸部にまたがり膜端部を横断するリブを膜端部の脇流れ防止リブ(小幅リブ)として配置し、発電部と定寸部の内の少なくとも一方に荷重分担用の脇流れ防止より幅広のリブ(大幅リブ)を設け、脇流れ防止と荷重分担を機能分担させることができる。
図3は、(1)が隣り合うセル間の本開示のリブの配置の別の一例を示す平面模式図であり、(2)が燃料電池の膜端部周辺の一部を平面視したときの一例を示す概略模式図であり、(3)が燃料電池の膜端部周辺の一部を平面視したときの別の一例を示す概略模式図である。
本開示では、
図3(1)、(2)に示すように、燃料電池の熱膨張によりカバーシートの接着剥がれが生じない箇所である発電部と定寸部の内の少なくとも一方に、太いリブ(大幅リブ)を設け、接着剥がれが生じる箇所である発電部と定寸部にまたがり膜端部を横断する箇所においては、1mm前後又は0.8mm以下のリブ(小幅リブ)を設ける。これにより、小幅リブがセルのずれによって当接しなくても、大幅リブによって、隣り合う大幅リブ同士がセル間で当接し、定寸間隔を保持することができる。なお、
図3(2)に示す発電部は、発電部を構成し、周辺部材は、定寸部を構成し、シールカバー部材は、シールガスケットであり、シールラインを構成する。
【0018】
本開示では、
図3(3)に示すように、発電部と定寸部にまたがり膜端部を横断し、且つ、隣り合うリブをリブ幅よりも狭い間隔で配置した一定幅(1mm前後が適当であり、0.8mm~1.2mmであってもよい)のリブ(小幅リブ)の集合体を複数設け、この集合体間の間隔を、集合体内のリブの間隔よりも広く配置してもよい。これにより、燃料電池のセルの積層時に、多少ずれても、異なるセルに設けられたリブ同士を当接させることによって、セル間の寸法を一定寸法に保持することができる。
【0019】
第4実施形態
本開示の第4実施形態においては、第3実施形態の構成のうち、隣り合うセル間において、前記セパレータは、前記発電部と定寸部の両側にまたがり膜端部を横断し、且つ、平面視したときに隣接するセルの小幅リブが各々逆角度になるような状態で小幅リブが形成され定寸保持部が構成される形状を有してもよい。
【0020】
図4は、隣り合うセル間の本開示のリブの配置の別の一例を示す平面模式図である。
図5は、隣り合うセル間の本開示のリブの配置の別の一例を示す平面模式図である。
第4実施形態によれば、
図4~5に示すように、セルの発電部と定寸部の両側にまたがり膜端部を横断し、且つ、平面視したときに隣接するセルの小幅リブが各々逆角度になるように又は交差するように配置された小幅リブにより、発電部又は定寸部に配置された大幅リブによる面圧分散に加え、脇流れ防止リブである小幅リブの定寸保持効果が発揮されるようにすることができる。
図5に示すように、隣接するセルのリブ幅は、異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0021】
燃料電池は、反応ガスの供給を受けて発電する。
燃料電池は、セルを複数個積層した燃料電池スタックであってもよい。
本開示においては、セル及び燃料電池スタックのいずれも燃料電池と称する場合がある。
セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよい。
【0022】
発電部は、電解質膜および電極を含む。
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
電極は、アノード(燃料極)及びカソード(酸素極)である。
本開示においては、燃料電池に供給されるガスは反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガス(アノードガス)であり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガス(カソードガス)である。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは、酸素を含有するガスであり、酸素、空気(エア)等であってもよい。
【0023】
多孔体は、燃料電池のセルの積層方向において発電部とセパレータとの間に挟まれ、該セパレータを介して反応ガスが供給される所定の気孔率で形成される。
多孔体は、ガス拡散層であってもよい。
多孔体は、気孔を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質部材等が挙げられる。
【0024】
セパレータは、発電により生じた電流を集電し、隔壁として機能する。セパレータは、燃料電池のセルにおいて、通常、一対のセパレータが発電部を挟持するように、発電部の積層方向の両側に配置される。
セパレータは、多孔体に供給された反応ガスが、セパレータとシールラインと当該多孔体とに囲まれて形成された空隙へ流れ出るのを抑制する形状を備える。
セパレータは、上記第1~4実施形態のような、一定の幅を有するリブとそのリブ幅以下の間隔で隣接配置されたリブを複数有することにより定寸保持部が構成される形状を備える。
セパレータとしては、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)等であってもよい。
【0025】
シールガスケットは、平面視において発電部の外周に配置され、且つ、当該発電部の積層方向の両側に配置された一対のセパレータと実質的に当接して反応ガスの漏れを抑えるシールラインを形成する。
シールガスケットは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)ゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー樹脂、変性エポキシ樹脂等であってもよい。