(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024009853
(43)【公開日】2024-01-23
(54)【発明の名称】遺伝子発現の調節及び脱制御されたタンパク質発現のスクリーニング
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/68 20180101AFI20240116BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALI20240116BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALI20240116BHJP
C12N 15/11 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/113 20100101ALI20240116BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240116BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240116BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240116BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240116BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240116BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240116BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240116BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240116BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240116BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20240116BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20240116BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240116BHJP
C12N 15/54 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C12Q1/68
C12Q1/6827 Z ZNA
C12Q1/6883 Z
C12N15/11 Z
C12N15/09 110
C12N15/63 Z
C12N15/113 130Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61P43/00 111
A61K45/00
A61P9/00
A61P35/00
A61P37/02
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K31/7088
G01N33/53 M
C12N15/54
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023171631
(22)【出願日】2023-10-02
(62)【分割の表示】P 2021123345の分割
【原出願日】2016-10-07
(31)【優先権主張番号】1517937.7
(32)【優先日】2015-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1614744.9
(32)【優先日】2016-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】304032273
【氏名又は名称】ユニバーシティ・オブ・サザンプトン
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】ヴォアチョフスキー,イゴール
(72)【発明者】
【氏名】クラロヴィコヴァ,ヤナ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被験者を機能性ATMタンパク質欠損とその関連病態への感受性についてスクリーニングする方法、被験者を治療のために選択する方法、機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態を治療又は予防する方法、DNA傷害性の放射線療法及び化学療法に対する細胞感受性を改変する方法、がんを治療する方法、並びに関連する組成物及びキットを提供する。
【解決手段】機能性ATMタンパク質欠損への感受性に関して被験者をスクリーニングする方法であって、ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を決定することを含み、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す、前記方法とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性ATMタンパク質欠損への感受性に関して被験者をスクリーニングする方法であって、
ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を決定することを含み、
非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す、前記方法。
【請求項2】
機能性ATMタンパク質欠損に感受性の被験者を治療のために選択する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を決定し、ここで、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
該被験者を薬剤による治療のために選択し、それにより該被験者における機能性ATMレベルを増加させる、
ことを含む、前記方法。
【請求項3】
選択された被験者へ薬剤を投与し、それにより該被験者を治療することをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
薬剤がNSEリプレッサー剤を含む、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を同定し、ここで、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
該被験者へ機能性ATMレベルを増加させる薬剤を投与する、
ことを含む、前記方法。
【請求項6】
機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態を治療又は予防する方法であって、
NSEリプレッサー剤を被験者へ投与し、それにより機能性ATMタンパク質レベルを増加させることを含み、
該薬剤は、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEへ結合し、それによりプレmRNA転写産物の成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を減少させる、前記方法。
【請求項7】
成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の減少が、機能性ATMタンパク質発現を増加させる、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態又は症状の治療又は予防のためである、請求項5~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
病態が、毛細血管拡張性運動失調症、がん、免疫不全、細胞の放射線感受性、又は染色体の不安定性である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
NSEが、tctacaggttggctgcatagaagaaaaagを含む配列を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
NSEリプレッサー剤が:
agTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又は
tcttagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又は
tctcagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag、
を含む配列内でNSEへ結合する、請求項4~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
NSEリプレッサー剤が、NSE又はNSEのATMイントロン28内の5’若しくは3’スプライス部位へ結合する、請求項4~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
被験者においてATM発現の脱制御に関連した病態を治療又は予防する方法であって、
NSEアクチベーター剤を被験者へ投与することを含み、
NSEアクチベーター剤は、ATMイントロン28内の調節モチーフへ結合することによって、又はATMプレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置するシュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位へ結合することによって、ATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させる、前記方法。
【請求項14】
該被験者においてがんを治療又は予防する方法であって、
NSEアクチベーター剤を被験者へ投与し、ここで、NSEアクチベーター剤は、放射線療法のようなDNA傷害剤による細胞傷害性療法へのがん細胞の感受性を増加させ、そして、ATMイントロン28内の調節モチーフへ結合することによって、又はATMプレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置するシュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位へ結合することによって、ATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させ、そして
放射線療法又は化学療法のような細胞傷害性療法で被験者を治療する、
ことを含む、前記方法。
【請求項15】
放射線療法又は化学療法のようなDNA傷害剤による細胞傷害性療法への細胞の感受性を増加させる方法であって、
NSEアクチベーター剤を投与することによってATMタンパク質発現を低下させることを含み、
NSEアクチベーター剤は、ATMイントロン28内のモチーフへ結合することによって、又はATMプレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置するシュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位へ結合することによって、ATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させる、前記方法。
【請求項16】
成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させることが、機能性ATMタンパク質発現の減少を提供する、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
シュードエクソンが、配列tcatcgaatacttttggaaataagを含む、請求項13~16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
ATMイントロン28内の調節モチーフが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合する、請求項13~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
ATMイントロン28内の調節モチーフが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソン(PE)を含む、
請求項13~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
被験者、細胞、又は組織において機能性ATM発現を調整する方法であって、本明細書に記載のNSEアクチベーター剤及び/又はNSEリプレッサー剤を投与することを含む、前記方法。
【請求項21】
NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤が、ポリ核酸ポリマーを含む、請求項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤が、SSO(スプライススイッチングオリゴヌクレオチド)である、請求項1~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤が、NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤を細胞へ送達するのに適した送達ビヒクルと結合している、請求項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
NSEリプレッサー剤が:
配列cuucuaugcagccaaccuguagacuのSSO(SSO-NSE3)若しくはその核酸類似体;又は
配列accuuuuucuucuaugcagccaacのSSO(SSO-NSE5)若しくはその核酸類似体を含むか、及び/又は
NSEリプレッサー剤が:aacauuucuauuuaguuaaaagc(SSO
A11);uuaguauuccuugacuuua(SSO A17);gacugguaaauaauaaacauaauuc(SSO B2);auauauuagagauacaucagcc(SSO B4);及び、uuagagaaucauuuuaaauaagac(SSO AN3)、若しくはこれらの組合せを含む群より選択されるいずれか1つのSSOを含むか又はそれから成る、請求項4~12又は20~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
NSEアクチベーター剤が、SSO PEkr/PEdelを含むか;及び/又は
NSEアクチベーター剤が:aacuuaaagguuauaucuc(SSO A2);uauaaauacgaauaaaucga(SSO A4);caacacgacauaaccaaa(SSO A9);gguaugagaacuauagga(SSO
A23);gguaauaagugucacaaa(SSO A25);guaucauacauuagaagg(SSO A26);及び、uguggggugaccacagcuu(SSO B11)、若しくはこれらの組合せを含む群より選択されるいずれか1つのSSOを含むか又はそれから成る、請求項13~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
ATM脱制御に関連した病態の治療に対する被験者の応答を予測するための、rs609261及び/又はrs4988000遺伝子型決定の使用。
【請求項27】
本明細書に記載のNSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤を含む、組成物。
【請求項28】
医薬的に許容される製剤である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存
在を同定し、ここで、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換する薬剤を該被験者へ投与する、
ことを含む、前記方法。
【請求項30】
被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換することを含む、前記方法。
【請求項31】
非チミン変異体残基rs609261を置換することが、非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換するように整えられた薬剤を被験者へ投与することを含む、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
非チミン残基を置換するための薬剤が、ゲノム編集分子である、請求項29~31のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
非チミン残基を置換するための薬剤が、rs609261を標的とするRNA分子と一緒のCRISPR-Cas9又はその機能性同等物である、請求項29~32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を同定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
rs4988000でのグアニン変異体残基をアデニンに置換する薬剤を該被験者へ投与する、
ことを含む、前記方法。
【請求項35】
被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基をアデニン残基に置換するか、又はrs4988000でのグアニン変異体残基へSSOを結合させることによってrs4988000でのグアニン変異体残基を遮断する、
ことを含む、前記方法。
【請求項36】
rs4988000でのグアニン変異体残基を置換することが、rs4988000でのグアニン変異体残基をアデニン残基に置換するように整えられた薬剤を被験者へ投与することを含む、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
グアニン残基を置換するための薬剤が、ゲノム編集分子である、請求項34~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
グアニン残基を置換するための薬剤が、rs4988000を標的とするRNA分子と一緒のCRISPR-Cas9又はその機能性同等物である、請求項31~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
被験者又は被験者の集団を機能性ATMタンパク質欠損への感受性についてスクリーニングする方法であって、
ヒト被験者のゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定するこ
とを含み、
rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者(又は被験者群)が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す、前記方法。
【請求項40】
機能性ATMタンパク質欠損に感受性である被験者又は被験者の集団を治療又は予防のために選択する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
該被験者の機能性ATMレベルを増加させる薬剤で治療するために被験者を選択する、ことを含む、前記方法。
【請求項41】
被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を同定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
機能性ATMレベルを増加させる薬剤を該被験者へ投与する、
ことを含む、前記方法。
【請求項42】
CGハプロタイプをTAへ修飾することを組み合わせた、請求項29~33及び34~38のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
被験者においてCGハプロタイプを同定すること、及び任意選択的に、請求項1~42に従って被験者を治療すること又は治療のために被験者を選択することと組み合わせた、請求項1及び36に記載の方法。
【請求項44】
成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の調節を改変する方法であって、
スプライソソーム成分に対してNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを挿入又は欠失させることを含み、
前記1以上のスプライシング調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、前記方法。
【請求項45】
機能性タンパク質をコードする遺伝子の成熟RNA転写産物におけるNSEの包含によって調節される機能性タンパク質の発現の調節を改変する方法であって、
スプライソソーム成分に対してNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを挿入又は欠失させることを含み、
前記1以上のスプライシング調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、前記方法。
【請求項46】
1以上のスプライシング調節モチーフの挿入又は欠失が、ATMイントロン28のゲノムDNA内である、請求項44又は45に記載の方法。
【請求項47】
1以上のスプライシング調節モチーフの挿入が、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の低下を引き起こす、請求項44~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項48】
1以上のスプライシング調節モチーフの欠失が、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の増加を引き起こす、請求項44~46のいずれか1項に記載の方法。
【請求項49】
1以上のスプライシング調節モチーフの挿入又は欠失が、CRISPR-Cas9のようなゲノム編集技術の使用を含む、請求項44~48のいずれか1項に記載の方法。
【請求項50】
rs609261変異体及び/又はrs4988000変異体を同定するための、1以上のオリゴヌクレオチドプローブを含むキット。
【請求項51】
1以上のオリゴヌクレオチドプローブが、rs609261変異体及び/又はrs4988000変異体を含む核酸の領域をPCR増幅する際に使用するためのプライマーである、請求項50に記載のキット。
【請求項52】
NSEアクチベーター剤及び/又はNSEリプレッサー剤をコードする核酸を含むベクター。
【請求項53】
遺伝子発現の調節を改変可能な薬剤をスクリーニングする方法であって:
機能性遺伝子の発現を制限するナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)を同定し;
スプライソソーム成分に対してNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを同定し、前記1以上のスプライシング調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含み;
該1以上のスプライシング調節モチーフの1つのスプライシング調節モチーフへワトソン-クリック塩基対合を介してハイブリダイズする配列を含むアンチセンスポリ核酸で、1以上のスプライシング調節モチーフを標的とし;そして
該遺伝子の成熟RNA転写産物におけるNSEの包含が増加するか又は減少するかを決定する、
ことを含む、前記方法。
【請求項54】
遺伝子の発現を調節する方法であって、スプライソソーム成分に対してナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)と競合する、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンのようなスプライシング調節モチーフへ結合する薬剤を提供することを含む、前記方法。
【請求項55】
スプライソソーム成分に対してナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)と競合する、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンのような遺伝子スプライシング調節モチーフへ結合する薬剤であって、
遺伝子スプライシング調節モチーフは、該遺伝子の成熟RNA転写産物内へのNSEの包含を制御する、前記薬剤。
【請求項56】
本明細書に実質的に記載され、添付の図面を参照してもよい、方法、使用、組成物、ベクター、又は薬剤。
【請求項57】
タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを、予めプロセシングされたmRNA転写産物上の標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、NSEは該mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、NSEの有無はタンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
【請求項58】
タンパク質が、プロセシングされたmRNA転写産物より発現される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
NSEの存在が、タンパク質発現を下方制御する、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
NSEの不存在が、タンパク質発現を上方制御する、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
ポリ核酸ポリマーが、ATMイントロン28内のモチーフへハイブリダイズする、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
モチーフが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合するスプライシング調節モチーフである、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
スプライシング調節モチーフが、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
シュードエクソンが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソンである、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
モチーフが、U2AF65結合部位である、請求項62に記載の方法。
【請求項66】
モチーフが、転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフである、請求項62に記載の方法。
【請求項67】
転移因子が、Alu又はMER51である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項67に記載の方法。
【請求項70】
単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項67に記載の方法。
【請求項71】
ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、請求項57~70のいずれか1項に記載の方法。
【請求項72】
単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、請求項57~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを、転移因子内の標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、NSEは該mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、NSEの有無はタンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
【請求項74】
タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを、転移因子の上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、NSEは、mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、NSEの有無は、タンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
【請求項75】
タンパク質が、プロセシングされたmRNA転写産物より発現される、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項76】
NSEの存在が、タンパク質発現を下方制御する、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項77】
NSEの不存在が、タンパク質発現を上方制御する、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項78】
転移因子が、Alu又はMER51である、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項79】
単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項80】
ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、請求項73、74、又は79のいずれか1項に記載の方法。
【請求項81】
単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、請求項73に記載の方法。
【請求項82】
単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項74に記載の方法。
【請求項83】
単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項74に記載の方法。
【請求項84】
NSEの活性化が、エクソンスキッピングをさらに誘導する、請求項73又は74に記載の方法。
【請求項85】
NSEが、イントロン28内に位置している、請求項73、74、又は84のいずれか1項に記載の方法。
【請求項86】
NSEが、ATMタンパク質発現を調節する、請求項73、74、84、又は85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
それを必要とする被験者においてATM発現の脱制御に関連した疾患又は病態を治療又は予防する方法であって:
(i)予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内へのNSEの包含を促進させる、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)アクチベーター剤;及び
(ii)医薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクル、
を含む医薬組成物を該被験者へ投与することを含み、
ATM発現の脱制御に関連した疾患又は病態は、該NSEアクチベーター剤の投与によって該被験者において治療又は予防される、前記方法。
【請求項88】
それを必要とする被験者において機能性ATMタンパク質欠損に関連した疾患又は病態を治療又は予防する方法であって:
(i)予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内のNSEの排除を促進させる、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)リプレッサー剤;及び
(ii)医薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクル、
を含む医薬組成物を該被験者へ投与することを含み、
機能性ATMタンパク質欠損に関連した疾患又は病態は、該NSEリプレッサー剤の投与によって該被験者において治療又は予防される、前記方法。
【請求項89】
NSEアクチベーター剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、請求項87に記載の方法。
【請求項90】
NSEリプレッサー剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
ポリ核酸ポリマーが、ATMイントロン28内のモチーフへハイブリダイズする、請求項89又は90に記載の方法。
【請求項92】
ポリ核酸ポリマーが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合するスプライシング調節モチーフへハイブリダイズする、請求項89に記載の方法。
【請求項93】
スプライシング調節モチーフが、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
シュードエクソンが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソンである、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
ポリ核酸ポリマーが、U2AF65結合部位へハイブリダイズする、請求項89に記載の方法。
【請求項96】
ポリ核酸ポリマーが、転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフへハイブリダイズする、請求項89又は90に記載の方法。
【請求項97】
転移因子が、Alu又はMER51である、請求項96に記載の方法。
【請求項98】
単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、請求項97に記載の方法。
【請求項99】
単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項97に記載の方法。
【請求項100】
単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項97に記載の方法。
【請求項101】
ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、請求項89~100のいずれか1項に記載の方法。
【請求項102】
単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、請求項89~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
疾患又は病態が、がんである、請求項87に記載の方法。
【請求項104】
それを必要とする被験者において疾患又は病態を治療又は予防する方法であって:
(i)予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内へのNSEの包含を促進させる、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)アクチベーター剤;及び
(ii)医薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクル、
を含む医薬組成物を該被験者へ投与することを含み、
該疾患又は病態は、該NSEアクチベーター剤の投与によって該被験者において治療又は予防される、前記方法。
【請求項105】
それを必要とする被験者において疾患又は病態を治療又は予防する方法であって:
(i)予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内のNSEの排除を促進させる、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)リプレッサー剤;及び
(ii)医薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクル、
を含む医薬組成物を該被験者へ投与することを含み、
該疾患又は病態は、該NSEリプレッサー剤の投与によって該被験者において治療又は予防される、前記方法。
【請求項106】
NSEアクチベーター剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、請求項104に記載の方法。
【請求項107】
NSEリプレッサー剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、請求項105に記載の方法。
【請求項108】
ポリ核酸ポリマーが、ATMイントロン28内のモチーフへハイブリダイズする、請求項106又は107に記載の方法。
【請求項109】
ポリ核酸ポリマーが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合するスプライシング調節モチーフへハイブリダイズする、請求項106に記載の方法。
【請求項110】
スプライシング調節モチーフが、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、請求項109に記載の方法。
【請求項111】
シュードエクソンが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソンである、請求項110に記載の方法。
【請求項112】
ポリ核酸ポリマーが、U2AF65結合部位へハイブリダイズする、請求項108に記載の方法。
【請求項113】
ポリ核酸ポリマーが、転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフへハイブリダイズする、請求項106又は107に記載の方法。
【請求項114】
転移因子が、Alu又はMER51である、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、請求項114に記載の方法。
【請求項116】
単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項114に記載の方法。
【請求項117】
単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項114に記載の方法。
【請求項118】
ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、請求項104~117のいずれか1項に記載の方法。
【請求項119】
単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、請求項104~118のいずれか1項に記載の方法。
【請求項120】
疾患又は病態が、がんである、請求項104に記載の方法。
【請求項121】
疾患又は病態が、ATM発現の脱制御に関連した疾患又は病態である、請求項104に記載の方法。
【請求項122】
疾患又は病態が、機能性ATMタンパク質欠損に関連した疾患又は病態である、請求項105に記載の方法。
【請求項123】
ポリ核酸ポリマーが、ヌクレオシド部分、リン酸エステル部分、5’末端、3’末端、又はこれらの組合せにおいて修飾されている、請求項57~122のいずれか1項に記載の方法。
【請求項124】
ポリ核酸ポリマーが、人工ヌクレオチドを含む、請求項57~123のいずれか1項に記載の方法。
【請求項125】
人工ヌクレオチドが、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、ロック核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、ペプチド核酸(PNA)、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、モルホリノ、メチルホスホネートヌクレオチド、チオホスホネートヌクレオチド、及び2’-フルオロN3-P5’-ホスホロアミダイトから成る群より選択される、請求項124に記載の方法。
【請求項126】
送達ビヒクルが、ナノ粒子ベースの送達ビヒクルを含む、請求項87、88、104、又は105に記載の方法。
【請求項127】
タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを転移因子内の標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、選択的スプライス部位の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、該選択的スプライス部位は、mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、該選択的スプライス部位の有無は、タンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
【請求項128】
タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを転移因子の上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、選択的スプライス部位の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、該選択的スプライス部位は、mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、該選択的スプライス部位の有無は、タンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
【請求項129】
トランスポゾン因子が、予めプロセシングされたmRNA転写産物上にある、請求項127又は128に記載の方法。
【請求項130】
タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを予めプロセシングされたmRNA転写産物上の標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、選択的スプライス部位の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、該選択的スプライス部位は、mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、該選択的スプライス部位の有無は、タンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
【請求項131】
タンパク質が、プロセシングされたmRNA転写産物より発現される、請求項130に記載の方法。
【請求項132】
NSEの存在が、タンパク質発現を下方制御する、請求項130に記載の方法。
【請求項133】
NSEの不存在が、タンパク質発現を上方制御する、請求項130に記載の方法。
【請求項134】
ポリ核酸ポリマーが、ATMイントロン28内のモチーフへハイブリダイズする、請求項130に記載の方法。
【請求項135】
モチーフが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合するスプライシング調節モチーフである、請求項134に記載の方法。
【請求項136】
スプライシング調節モチーフが、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、請求項135に記載の方法。
【請求項137】
シュードエクソンが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソンである、請求項136に記載の方法。
【請求項138】
モチーフが、U2AF65結合部位である、請求項134に記載の方法。
【請求項139】
モチーフが、転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフである、請求項134に記載の方法。
【請求項140】
転移因子が、Alu又はMER51である、請求項139に記載の方法。
【請求項141】
単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、請求項140に記載の方法。
【請求項142】
単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項140に記載の方法。
【請求項143】
単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項140に記載の方法。
【請求項144】
ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、請求項130~143のいずれか1項に記載の方法。
【請求項145】
単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、請求項130~144のいずれか1項に記載の方法。
【請求項146】
a)予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内へのNSEの包含を促進する、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)アクチベーター剤、又は予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内のNSEの排除を促進する、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)リプレッサー剤;及び
b)医薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクル、
を含む医薬組成物。
【請求項147】
NSEアクチベーター剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、請求項146に記載の医薬組成物。
【請求項148】
NSEリプレッサー剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、請求項147に記載の医薬組成物。
【請求項149】
ポリ核酸ポリマーが、ATMイントロン28内のモチーフへハイブリダイズする、請求項147又は148に記載の医薬組成物。
【請求項150】
ポリ核酸ポリマーが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合するスプライシング調節モチーフへハイブリダイズする、請求項147に記載の医薬組成物。
【請求項151】
スプライシング調節モチーフが、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、請求項150に記載の医薬組成物。
【請求項152】
シュードエクソンが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソンである、請求項151に記載の医薬組成物。
【請求項153】
ポリ核酸ポリマーが、U2AF65結合部位へハイブリダイズする、請求項150に記載の医薬組成物。
【請求項154】
ポリ核酸ポリマーが、転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフへハイブリダイズする、請求項147又は148に記載の医薬組成物。
【請求項155】
転移因子が、Alu又はMER51である、請求項154に記載の医薬組成物。
【請求項156】
単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、請求項154に記載の医薬組成物。
【請求項157】
単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項154に記載の医薬組成物。
【請求項158】
単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、請求項154に記載の医薬組成物。
【請求項159】
ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、請求項146~158のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項160】
単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、請求項146~159のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項161】
請求項146~160のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
[0001] 本願は、2015年10月9日出願の英国特許出願番号1517937.7及び2016年8月31日出願の英国特許出願番号1614744.9の利益を請求するものであり、その全体が本明細書に援用される、。
【背景技術】
【0002】
[0002] ATMタンパク質は、PI3/PI4-キナーゼファミリーに属しており、神経系と免疫系の発生に関与している。ATMプロテインキナーゼは、DNA傷害時に活性化され、その後DNA修復機構を調整する。
【発明の概要】
【0003】
[0003] ある態様では、本明細書に記載されるものには、被験者を機能性ATMタンパク質欠損とその関連病態への感受性についてスクリーニングする方法、被験者を治療のために選択する方法、機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態を治療又は予防する方法、DNA傷害性の放射線療法及び化学療法に対する細胞感受性を改変する方法、がんを治療する方法、並びに関連する組成物及びキットが含まれる。
【0004】
[0004] ある態様では、本明細書に開示するのは、被験者について機能性ATMタンパク質欠損への感受性をスクリーニングする方法であって、該スクリーニングは、ヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を決定することを含み、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す。いくつかの態様では、NSEは、配列tctacaggttggctgcatagaagaaaaagを含む。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤は、配列agTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又はtcttagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又はtctcagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag内のNSEへ結合するように整えられる。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤は、NSE又はATMイントロン28内のその5’又は3’スプライス部位へ結合するように整えられる。
【0005】
[0005] ある態様では、本明細書に開示するのは、機能性ATMタンパク質欠損に感受性である被験者を治療のために選択する方法であって、該方法は、ヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を決定し、ここで、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして該被験者の機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤で治療するためにそのような被験者を選択することを含む。いくつかの態様では、該方法は、選択された被験者を治療するために該薬剤を投与することを含む。いくつかの態様では、該薬剤は、NSEリプレッサー剤を含む。いくつかの態様では、NSEは、配列tctacaggttggctgcatagaagaaaaagを含む。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤は、配列agTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又はtcttagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又はtctcagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag内のNSEへ結合するように整えられる。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤は、NSE又はATMイントロン28内のその5’又は3’スプライス部位へ結合するように整えられる。
【0006】
[0006] ある態様では、本明細書に開示するのは、被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、該方法は、ヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を同定し、ここで、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤を該被験者へ投与することを含む。いくつかの態様では、NSEは、配列tctacaggttggctgcatagaagaaaaagを含む。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤は、配列agTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又はtcttagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又はtctcagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag内のNSEへ結合するように整えられる。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤は、NSE又はATMイントロン28内のその5’又は3’スプライス部位へ結合するように整えられる。
【0007】
[0007] ある態様では、本明細書に開示するのは、機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態を治療又は予防する方法であって、機能性ATMタンパク質レベルを増加させるように整えられたNSEリプレッサー剤の投与を含み、該薬剤は、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEへ結合して成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を減少させるように整えられる。いくつかの態様では、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を減少させることが、機能性ATMタンパク質発現の増加を提供する。いくつかの態様では、被験者又はリスク状態の被験者集団において機能性ATMタンパク質欠損の治療又は予防する方法は、機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態又は症状を治療又は予防するためである。いくつかの態様では、該病態は、毛細血管拡張性運動失調症、がん、免疫不全、細胞の放射線感受性、又は染色体の不安定性である。いくつかの態様では、NSEは、配列tctacaggttggctgcatagaagaaaaagを含む。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤は、配列agTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又はtcttagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又はtctcagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag内のNSEへ結合するように整えられる。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤は、NSE又はATMイントロン28内のその5’又は3’スプライス部位へ結合するように整えられる。
【0008】
[0008] ある態様では、本明細書に開示するのは、被験者においてATM発現の脱制御に関連した病態を治療又は予防する方法であって、NSEアクチベーター剤の投与を含み、ここで、NSEアクチベーター剤は、ATMイントロン28内の調節モチーフへ結合することによってATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させるように整えられ、場合により、ATMイントロン28内の調節モチーフは、スプライソソーム成分についてNSEと競合し、さらに場合により、そのようなモチーフは、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソン(PE)を含むか又は該シュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位へ結合する。
【0009】
[0009] ある態様では、本明細書に開示するのは、該被験者においてがんを治療又は予防する方法であり、該方法は、放射線療法のようなDNA傷害剤での細胞傷害性療法へのがん細胞の感受性を増加させるように整えられたNSEアクチベーター剤を投与し、ここで、NSEアクチベーター剤は、ATMイントロン28内の調節モチーフへ結合することによってATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させるように整えられ、
場合により、ATMイントロン28内の調節モチーフは、スプライソソーム成分についてNSEと競合し、さらに場合により、そのようなモチーフは、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソン(PE)を含むか又は該シュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位へ結合し、そして放射線療法又は化学療法のような細胞傷害性療法で被験者を治療することを含む。いくつかの態様では、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させることが、機能性ATMタンパク質発現の減少を提供する。いくつかの態様では、シュードエクソンは、配列tcatcgaatacttttggaaataagを含む。
【0010】
[0010] ある態様では、本明細書に開示するのは、放射線療法又は化学療法のようなDNA傷害剤での細胞傷害性療法への細胞の感受性を増加させる方法であって、該方法は、ATMイントロン28内のモチーフへ結合することによってATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させるように整えられたNSEアクチベーター剤を投与することによりATMタンパク質発現を低下させることを含み、場合により、ATMイントロン28内の調節モチーフは、スプライソソーム成分についてNSEと競合し、さらに場合により、そのようなモチーフは、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソン(PE)を含むか又は該シュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位へ結合する。
【0011】
[0011] ある態様では、本明細書に開示するのは、被験者、細胞、又は組織において機能性ATM発現を増減させる方法であり、該方法は、本明細書に記載のNSEアクチベーター剤及び/又はNSEリプレッサー剤を投与することを含む。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤は、ポリ核酸ポリマーを含む。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤は、SSO(スプライススイッチングオリゴヌクレオチド)である。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤は、NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤を細胞へ送達するのに適した送達ビヒクルと会合している。いくつかの態様では、NSEリプレッサー剤は、配列cuucuaugcagccaaccuguagacuのSSO(SSO-NSE3)若しくはその核酸類似体;又は配列accuuuuucuucuaugcagccaacのSSO(SSO-NSE5)若しくはその核酸類似体を含む;及び/又はNSEリプレッサー剤は、aacauuucuauuuaguuaaaagc(SSO A11);uuaguauuccuugacuuua(SSO A17);gacugguaaauaauaaacauaauuc(SSO B2);auauauuagagauacaucagcc(SSO B4);及びuuagagaaucauuuuaaauaagac(SSO AN3)、又はこれらの組合せを含む群より選択されるいずれか1つのSSOを含むか又はそれから成る。又は、本明細書に開示するのは、NSEアクチベーター剤がSSO PEkr/PEdelを含む;及び/又はNSEアクチベーター剤が、aacuuaaagguuauaucuc(SSO A2);uauaaauacgaauaaaucga(SSO A4);caacacgacauaaccaaa(SSO A9);gguaugagaacuauagga(SSO A23);gguaauaagugucacaaa(SSO A25);guaucauacauuagaagg(SSO A26);及びuguggggugaccacagcuu(SSO B11)、又はこれらの組合せを含む群より選択されるいずれか1つのSSOを含むか又はそれから成る、請求項13~22のいずれか1項に記載の方法である。
【0012】
[0012] ある態様では、本明細書に開示するのは、ATM脱制御に関連した病態への治療に対する被験者の応答を予測するためのrs609261及び/又はrs4988000遺伝子型決定の使用である。
【0013】
[0013] ある態様では、本明細書に開示するのは、本明細書に記載のNSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤を含む組成物である。いくつかの態様では、該組成物は、医薬的に許容される製剤である。
【0014】
[0014] ある態様では、本明細書に開示するのは、被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、該方法は、そのヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を同定し、ここで、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換するように整えられた薬剤を該被験者へ投与することを含む。
【0015】
[0015] ある態様では、本明細書に開示するのは、機能性ATMタンパク質欠損の被験者において治療又は予防する方法であって、該方法は、ヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換することを含む。いくつかの態様では、非チミン変異体残基rs609261を置換することは、非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換するように整えられた薬剤を該被験者へ投与することを含む。いくつかの態様では、非チミン残基を置換するための薬剤は、ゲノム編集分子である。いくつかの態様では、非チミン残を置換するための薬剤は、rs609261を標的とするように整えられた適正なRNA分子と一緒の、CRISPR-Cas9又はその機能性同等物である。
【0016】
[0016] ある態様では、本明細書に開示するのは、被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、該方法は、ヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を同定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして、rs4988000でのグアニン変異体残基をアデニンに置換するように整えられた薬剤を該被験者へ投与することを含む。
【0017】
[0017] ある態様では、本明細書に開示するのは、被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、該方法は、ヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基をアデニン残基に置換すること、又はSSOの結合によって該グアニン残基を遮断することを含む。いくつかの態様では、rs4988000でのグアニン変異体残基を置換することは、rs4988000でのグアニン変異体残基をアデニン残基に置換するように整えられた薬剤を該被験者へ投与することを含む。いくつかの態様では、グアニン残基を置換するための薬剤は、ゲノム編集分子である。いくつかの態様では、グアニン残基を置換するための薬剤は、rs4988000を標的とするように整えられた適正なRNA分子と一緒の、CRISPR-Cas9又はその機能性同等物である。
【0018】
[0018] ある態様では、本明細書に開示するのは、被験者又は被験者の集団において機能性ATMタンパク質欠損への感受性についてスクリーニングする方法であって、該スクリーニングは、ヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定することを含み、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者(又は被験者群)が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す。
【0019】
[0019] ある態様では、本明細書に開示するのは、機能性ATMタンパク質欠損に感受性である被験者又は被験者の集団を治療又は予防するために選択する方法であって、該方
法は、ヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして、該被験者の機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤で治療するためにそのような被験者を選択することを含む。
【0020】
[0020] ある態様では、本明細書に開示するのは、被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、該方法は、ヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を同定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして、機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤を該被験者へ投与することを含む。いくつかの態様では、該方法は、CGハプロタイプをTAへ改変することと組み合わされる。いくつかの態様では、該方法は、被験者においてCGハプロタイプを同定することと組み合わされ、場合により、先行する特許請求項に従って患者を治療するか又は治療のために選択する。
【0021】
[0021] ある態様では、本明細書に開示するのは、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の調節を改変する方法であり、該方法は、スプライソソーム成分についてNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを挿入又は欠失させることを含み、前記調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む。
【0022】
[0022] ある態様では、本明細書に開示するのは、タンパク質をコードする遺伝子の成熟RNA転写産物におけるNSEの包含によって調節される機能性タンパク質の発現の調節を改変する方法であり、該方法は、スプライソソーム成分についてNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを挿入又は欠失させることを含み、前記調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む。いくつかの態様では、1以上のスプライシング調節モチーフの挿入又は欠失は、ATMイントロン28のゲノムDNA内である。いくつかの態様では、1以上のスプライシング調節モチーフの挿入は、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の低下を引き起こす。いくつかの態様では、1以上のスプライシング調節モチーフの欠失は、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の増加を引き起こす。いくつかの態様では、1以上のスプライシング調節モチーフの挿入又は欠失は、CRISPR-Cas9のようなゲノム編集技術の使用を含む。
【0023】
[0023] ある態様では、本明細書に開示するのは、rs609261変異体及び/又はrs4988000変異体を同定するための1以上のオリゴヌクレオチドプローブを含むキットである。いくつかの態様では、1以上のオリゴヌクレオチドプローブは、rs609261及び/又はrs4988000を含む核酸の領域をPCR増幅する際に使用するためのプライマーである。
【0024】
[0024] ある態様では、本明細書に開示するのは、NSEアクチベーター剤及び/又はNSEリプレッサー剤をコードする核酸を含むベクターである。
[0025] ある態様では、本明細書に開示するのは、遺伝子の発現の調節を改変することが可能な薬剤をスクリーニングする方法であり、該方法は:機能性の遺伝子発現を制限するナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)を同定し;スプライソソーム成分についてNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを同定し、ここで、前記調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含み;そのスプライシング調節モチーフへワトソン-クリック塩基対合を介してハイブリダイズするように整えられたアンチセンスポリ核酸で1以上
のスプライシング調節モチーフを標的とし;そして該遺伝子の成熟RNA転写産物におけるNSEの包含が増加するか又は減少するかを決定することを含む。
【0025】
[0026] ある態様では、本明細書に開示するのは、遺伝子の発現を調節する方法であり、該方法は、スプライソソーム成分についてナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)と競合する、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンのようなスプライシング調節モチーフへ結合するように整えられた薬剤を提供することを含む。
【0026】
[0027] ある態様では、本明細書に開示するのは、スプライソソーム成分についてナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)と競合する、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンのような遺伝子スプライシング調節モチーフへ結合するように整えられた薬剤であり、スプライシング調節モチーフは、該遺伝子の成熟RNA転写産物内へのNSEの包含を調節する。
【0027】
[0028] ある態様では、本明細書に開示するのは、実質的に本明細書に記載され、添付の図面を参照してもよい、方法、使用、組成物、ベクター、又は薬剤である。
援用
[0029] 本明細書において言及されるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、それぞれ個別の刊行物、特許、又は特許出願が、具体的かつ個別的に援用されると示されるのと同じ程度で本明細書に援用される。
本願は以下の発明を包含する。
[項目1] 機能性ATMタンパク質欠損への感受性に関して被験者をスクリーニングする方法であって、
ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を決定することを含み、
非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す、前記方法。
[項目2] 機能性ATMタンパク質欠損に感受性の被験者を治療のために選択する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を決定し、ここで、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
該被験者を薬剤による治療のために選択し、それにより該被験者における機能性ATMレベルを増加させる、
ことを含む、前記方法。
[項目3] 選択された被験者へ薬剤を投与し、それにより該被験者を治療することをさらに含む、項目2に記載の方法。
[項目4] 薬剤がNSEリプレッサー剤を含む、項目2又は3に記載の方法。
[項目5] 被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を同定し、ここで、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
該被験者へ機能性ATMレベルを増加させる薬剤を投与する、
ことを含む、前記方法。
[項目6] 機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態を治療又は予防する方法であっ
て、
NSEリプレッサー剤を被験者へ投与し、それにより機能性ATMタンパク質レベルを増加させることを含み、
該薬剤は、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEへ結合し、それによりプレmRNA転写産物の成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を減少させる、前記方法。
[項目7] 成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の減少が、機能性ATMタンパク質発現を増加させる、項目6に記載の方法。
[項目8] 機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態又は症状の治療又は予防のためである、項目5~7のいずれか1項に記載の方法。
[項目9] 病態が、毛細血管拡張性運動失調症、がん、免疫不全、細胞の放射線感受性、又は染色体の不安定性である、項目8に記載の方法。
[項目10] NSEが、tctacaggttggctgcatagaagaaaaagを含む配列を含む、項目1~9のいずれか1項に記載の方法。
[項目11] NSEリプレッサー剤が:
agTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又は
tcttagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag;又は
tctcagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag、
を含む配列内でNSEへ結合する、項目4~10のいずれか1項に記載の方法。
[項目12] NSEリプレッサー剤が、NSE又はNSEのATMイントロン28内の5’若しくは3’スプライス部位へ結合する、項目4~10のいずれか1項に記載の方法。
[項目13] 被験者においてATM発現の脱制御に関連した病態を治療又は予防する方法であって、
NSEアクチベーター剤を被験者へ投与することを含み、
NSEアクチベーター剤は、ATMイントロン28内の調節モチーフへ結合することによって、又はATMプレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置するシュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位へ結合することによって、ATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させる、前記方法。
[項目14] 該被験者においてがんを治療又は予防する方法であって、
NSEアクチベーター剤を被験者へ投与し、ここで、NSEアクチベーター剤は、放射線療法のようなDNA傷害剤による細胞傷害性療法へのがん細胞の感受性を増加させ、そして、ATMイントロン28内の調節モチーフへ結合することによって、又はATMプレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置するシュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位へ結合することによって、ATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させ、そして
放射線療法又は化学療法のような細胞傷害性療法で被験者を治療する、
ことを含む、前記方法。
[項目15] 放射線療法又は化学療法のようなDNA傷害剤による細胞傷害性療法への細胞の感受性を増加させる方法であって、
NSEアクチベーター剤を投与することによってATMタンパク質発現を低下させることを含み、
NSEアクチベーター剤は、ATMイントロン28内のモチーフへ結合することによって、又はATMプレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置するシュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位へ結合することによって、ATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させる、前記方法。
[項目16] 成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させることが、機能性A
TMタンパク質発現の減少を提供する、項目13~15のいずれか1項に記載の方法。
[項目17] シュードエクソンが、配列tcatcgaatacttttggaaataagを含む、項目13~16のいずれか1項に記載の方法。
[項目18] ATMイントロン28内の調節モチーフが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合する、項目13~17のいずれか1項に記載の方法。
[項目19] ATMイントロン28内の調節モチーフが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソン(PE)を含む、項目13~18のいずれか1項に記載の方法。
[項目20] 被験者、細胞、又は組織において機能性ATM発現を調整する方法であって、本明細書に記載のNSEアクチベーター剤及び/又はNSEリプレッサー剤を投与することを含む、前記方法。
[項目21] NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤が、ポリ核酸ポリマーを含む、項目1~20のいずれか1項に記載の方法。
[項目22] NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤が、SSO(スプライススイッチングオリゴヌクレオチド)である、項目1~21のいずれか1項に記載の方法。
[項目23] NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤が、NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤を細胞へ送達するのに適した送達ビヒクルと結合している、項目1~22のいずれか1項に記載の方法。
[項目24] NSEリプレッサー剤が:
配列cuucuaugcagccaaccuguagacuのSSO(SSO-NSE3)若しくはその核酸類似体;又は
配列accuuuuucuucuaugcagccaacのSSO(SSO-NSE5)若しくはその核酸類似体を含むか、及び/又は
NSEリプレッサー剤が:aacauuucuauuuaguuaaaagc(SSO
A11);uuaguauuccuugacuuua(SSO A17);gacugguaaauaauaaacauaauuc(SSO B2);auauauuagagauacaucagcc(SSO B4);及び、uuagagaaucauuuuaaauaagac(SSO AN3)、若しくはこれらの組合せを含む群より選択されるいずれか1つのSSOを含むか又はそれから成る、項目4~12又は20~23のいずれか1項に記載の方法。
[項目25] NSEアクチベーター剤が、SSO PEkr/PEdelを含むか;及び/又は
NSEアクチベーター剤が:aacuuaaagguuauaucuc(SSO A2);uauaaauacgaauaaaucga(SSO A4);caacacgacauaaccaaa(SSO A9);gguaugagaacuauagga(SSO
A23);gguaauaagugucacaaa(SSO A25);guaucauacauuagaagg(SSO A26);及び、uguggggugaccacagcuu(SSO B11)、若しくはこれらの組合せを含む群より選択されるいずれか1つのSSOを含むか又はそれから成る、項目13~19のいずれか1項に記載の方法。[項目26] ATM脱制御に関連した病態の治療に対する被験者の応答を予測するための、rs609261及び/又はrs4988000遺伝子型決定の使用。
[項目27] 本明細書に記載のNSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤を含む、組成物。
[項目28] 医薬的に許容される製剤である、項目27に記載の組成物。
[項目29] 被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を同定し、ここで、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性
ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換する薬剤を該被験者へ投与する、
ことを含む、前記方法。
[項目30] 被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、ヒト被験者のゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換することを含む、前記方法。
[項目31] 非チミン変異体残基rs609261を置換することが、非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換するように整えられた薬剤を被験者へ投与することを含む、項目29又は30に記載の方法。
[項目32] 非チミン残基を置換するための薬剤が、ゲノム編集分子である、項目29~31のいずれか1項に記載の方法。
[項目33] 非チミン残基を置換するための薬剤が、rs609261を標的とするRNA分子と一緒のCRISPR-Cas9又はその機能性同等物である、項目29~32のいずれか1項に記載の方法。
[項目34] 被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を同定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
rs4988000でのグアニン変異体残基をアデニンに置換する薬剤を該被験者へ投与する、
ことを含む、前記方法。
[項目35] 被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基をアデニン残基に置換するか、又はrs4988000でのグアニン変異体残基へSSOを結合させることによってrs4988000でのグアニン変異体残基を遮断する、
ことを含む、前記方法。
[項目36] rs4988000でのグアニン変異体残基を置換することが、rs4988000でのグアニン変異体残基をアデニン残基に置換するように整えられた薬剤を被験者へ投与することを含む、項目34又は35に記載の方法。
[項目37] グアニン残基を置換するための薬剤が、ゲノム編集分子である、項目34~36のいずれか1項に記載の方法。
[項目38] グアニン残基を置換するための薬剤が、rs4988000を標的とするRNA分子と一緒のCRISPR-Cas9又はその機能性同等物である、項目31~34のいずれか1項に記載の方法。
[項目39] 被験者又は被験者の集団を機能性ATMタンパク質欠損への感受性についてスクリーニングする方法であって、
ヒト被験者のゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定することを含み、
rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者(又は被験者群)が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す、前記方法。
[項目40] 機能性ATMタンパク質欠損に感受性である被験者又は被験者の集団を治療又は予防のために選択する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
該被験者の機能性ATMレベルを増加させる薬剤で治療するために被験者を選択する、
ことを含む、前記方法。
[項目41] 被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法であって、
ヒト被験者のゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を同定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして
機能性ATMレベルを増加させる薬剤を該被験者へ投与する、
ことを含む、前記方法。
[項目42] CGハプロタイプをTAへ修飾することを組み合わせた、項目29~33及び34~38のいずれか1項に記載の方法。
[項目43] 被験者においてCGハプロタイプを同定すること、及び任意選択的に、項目1~42に従って被験者を治療すること又は治療のために被験者を選択することと組み合わせた、項目1及び36に記載の方法。
[項目44] 成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の調節を改変する方法であって、
スプライソソーム成分に対してNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを挿入又は欠失させることを含み、
前記1以上のスプライシング調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、前記方法。
[項目45] 機能性タンパク質をコードする遺伝子の成熟RNA転写産物におけるNSEの包含によって調節される機能性タンパク質の発現の調節を改変する方法であって、
スプライソソーム成分に対してNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを挿入又は欠失させることを含み、
前記1以上のスプライシング調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、前記方法。
[項目46] 1以上のスプライシング調節モチーフの挿入又は欠失が、ATMイントロン28のゲノムDNA内である、項目44又は45に記載の方法。
[項目47] 1以上のスプライシング調節モチーフの挿入が、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の低下を引き起こす、項目44~46のいずれか1項に記載の方法。
[項目48] 1以上のスプライシング調節モチーフの欠失が、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の増加を引き起こす、項目44~46のいずれか1項に記載の方法。
[項目49] 1以上のスプライシング調節モチーフの挿入又は欠失が、CRISPR-Cas9のようなゲノム編集技術の使用を含む、項目44~48のいずれか1項に記載の方法。
[項目50] rs609261変異体及び/又はrs4988000変異体を同定するための、1以上のオリゴヌクレオチドプローブを含むキット。
[項目51] 1以上のオリゴヌクレオチドプローブが、rs609261変異体及び/又はrs4988000変異体を含む核酸の領域をPCR増幅する際に使用するためのプライマーである、項目50に記載のキット。
[項目52] NSEアクチベーター剤及び/又はNSEリプレッサー剤をコードする核酸を含むベクター。
[項目53] 遺伝子発現の調節を改変可能な薬剤をスクリーニングする方法であって:
機能性遺伝子の発現を制限するナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)を同定し;
スプライソソーム成分に対してNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを同定し、前記1以上のスプライシング調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含み;
該1以上のスプライシング調節モチーフの1つのスプライシング調節モチーフへワトソン-クリック塩基対合を介してハイブリダイズする配列を含むアンチセンスポリ核酸で、1以上のスプライシング調節モチーフを標的とし;そして
該遺伝子の成熟RNA転写産物におけるNSEの包含が増加するか又は減少するかを決定する、
ことを含む、前記方法。
[項目54] 遺伝子の発現を調節する方法であって、スプライソソーム成分に対してナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)と競合する、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンのようなスプライシング調節モチーフへ結合する薬剤を提供することを含む、前記方法。
[項目55] スプライソソーム成分に対してナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)と競合する、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンのような遺伝子スプライシング調節モチーフへ結合する薬剤であって、
遺伝子スプライシング調節モチーフは、該遺伝子の成熟RNA転写産物内へのNSEの包含を制御する、前記薬剤。
[項目56] 本明細書に実質的に記載され、添付の図面を参照してもよい、方法、使用、組成物、ベクター、又は薬剤。
[項目57] タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを、予めプロセシングされたmRNA転写産物上の標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、NSEは該mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、NSEの有無はタンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
[項目58] タンパク質が、プロセシングされたmRNA転写産物より発現される、項目57に記載の方法。
[項目59] NSEの存在が、タンパク質発現を下方制御する、項目57に記載の方法。
[項目60] NSEの不存在が、タンパク質発現を上方制御する、項目57に記載の方法。
[項目61] ポリ核酸ポリマーが、ATMイントロン28内のモチーフへハイブリダイズする、項目57に記載の方法。
[項目62] モチーフが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合するスプライシング調節モチーフである、項目61に記載の方法。
[項目63] スプライシング調節モチーフが、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、項目62に記載の方法。
[項目64] シュードエクソンが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソンである、項目63に記載の方法。
[項目65] モチーフが、U2AF65結合部位である、項目62に記載の方法。
[項目66] モチーフが、転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフである、項目62に記載の方法。
[項目67] 転移因子が、Alu又はMER51である、項目66に記載の方法。
[項目68] 単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、項目67に記載の方法。
[項目69] 単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目67に記載の方法。
[項目70] 単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目67に記載の方法。
[項目71] ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、項目57~70のいずれか1項に記載の方法。
[項目72] 単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、項目57~71のいずれか1項に記載の方法。
[項目73] タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを、転移因子内の標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、NSEは該mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、NSEの有無はタンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
[項目74] タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを、転移因子の上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、NSEは、mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、NSEの有無は、タンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
[項目75] タンパク質が、プロセシングされたmRNA転写産物より発現される、項目73又は74に記載の方法。
[項目76] NSEの存在が、タンパク質発現を下方制御する、項目73又は74に記載の方法。
[項目77] NSEの不存在が、タンパク質発現を上方制御する、項目73又は74に記載の方法。
[項目78] 転移因子が、Alu又はMER51である、項目73又は74に記載の方法。
[項目79] 単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、項目73又は74に記載の方法。
[項目80] ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、項目73、74、又は79のいずれか1項に記載の方法。
[項目81] 単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、項目73に記載の方法。
[項目82] 単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目74に記載の方法。
[項目83] 単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目74に記載の方法。
[項目84] NSEの活性化が、エクソンスキッピングをさらに誘導する、項目73又は74に記載の方法。
[項目85] NSEが、イントロン28内に位置している、項目73、74、又は84のいずれか1項に記載の方法。
[項目86] NSEが、ATMタンパク質発現を調節する、項目73、74、84、又は85のいずれか1項に記載の方法。
[項目87] それを必要とする被験者においてATM発現の脱制御に関連した疾患又は病態を治療又は予防する方法であって:
(i)予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内へのNSEの包含を促進させる、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)アクチベーター剤;及び
(ii)医薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクル、
を含む医薬組成物を該被験者へ投与することを含み、
ATM発現の脱制御に関連した疾患又は病態は、該NSEアクチベーター剤の投与によって該被験者において治療又は予防される、前記方法。
[項目88] それを必要とする被験者において機能性ATMタンパク質欠損に関連した疾患又は病態を治療又は予防する方法であって:
(i)予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内のNSEの排除を促進させる、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)リプレッサー剤;及び
(ii)医薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクル、
を含む医薬組成物を該被験者へ投与することを含み、
機能性ATMタンパク質欠損に関連した疾患又は病態は、該NSEリプレッサー剤の投与によって該被験者において治療又は予防される、前記方法。
[項目89] NSEアクチベーター剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、項目87に記載の方法。
[項目90] NSEリプレッサー剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、項目88に記載の方法。
[項目91] ポリ核酸ポリマーが、ATMイントロン28内のモチーフへハイブリダイズする、項目89又は90に記載の方法。
[項目92] ポリ核酸ポリマーが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合するスプライシング調節モチーフへハイブリダイズする、項目89に記載の方法。
[項目93] スプライシング調節モチーフが、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、項目92に記載の方法。
[項目94] シュードエクソンが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソンである、項目93に記載の方法。
[項目95] ポリ核酸ポリマーが、U2AF65結合部位へハイブリダイズする、項目89に記載の方法。
[項目96] ポリ核酸ポリマーが、転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフへハイブリダイズする、項目89又は90に記載の方法。
[項目97] 転移因子が、Alu又はMER51である、項目96に記載の方法。
[項目98] 単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、項目97に記載の方法。
[項目99] 単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目97に記載の方法。
[項目100] 単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目97に記載の方法。
[項目101]
ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、項目89~100のいずれか1項に記載の方法。
[項目102] 単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、項目89~101のいずれか1項に記載の方法。
[項目103] 疾患又は病態が、がんである、項目87に記載の方法。
[項目104] それを必要とする被験者において疾患又は病態を治療又は予防する方法であって:
(i)予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内へのNSEの包含を促進させる、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)アクチベーター剤;及び
(ii)医薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクル、
を含む医薬組成物を該被験者へ投与することを含み、
該疾患又は病態は、該NSEアクチベーター剤の投与によって該被験者において治療又は予防される、前記方法。
[項目105] それを必要とする被験者において疾患又は病態を治療又は予防する方法であって:
(i)予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内のNSEの排除を促進させる、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)リプレッサー剤;及び
(ii)医薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクル、
を含む医薬組成物を該被験者へ投与することを含み、
該疾患又は病態は、該NSEリプレッサー剤の投与によって該被験者において治療又は予防される、前記方法。
[項目106] NSEアクチベーター剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、項目104に記載の方法。
[項目107] NSEリプレッサー剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、項目105に記載の方法。
[項目108] ポリ核酸ポリマーが、ATMイントロン28内のモチーフへハイブリダイズする、項目106又は107に記載の方法。
[項目109]
ポリ核酸ポリマーが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合するスプライシング調節モチーフへハイブリダイズする、項目106に記載の方法。
[項目110] スプライシング調節モチーフが、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、項目109に記載の方法。
[項目111] シュードエクソンが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソンである、項目110に記載の方法。
[項目112] ポリ核酸ポリマーが、U2AF65結合部位へハイブリダイズする、項目108に記載の方法。
[項目113] ポリ核酸ポリマーが、転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフへハイブリダイズする、項目106又は107に記載の方法。
[項目114] 転移因子が、Alu又はMER51である、項目113に記載の方法。[項目115] 単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、項目114に記載の方法。
[項目116] 単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目114に記載の方法。
[項目117] 単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目114に記載の方法。
[項目118] ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、項目104~117のいずれか1項に記載の方法。
[項目119] 単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、項目104~118のいずれか1項に記載の方法。
[項目120] 疾患又は病態が、がんである、項目104に記載の方法。
[項目121] 疾患又は病態が、ATM発現の脱制御に関連した疾患又は病態である、項目104に記載の方法。
[項目122] 疾患又は病態が、機能性ATMタンパク質欠損に関連した疾患又は病態である、項目105に記載の方法。
[項目123] ポリ核酸ポリマーが、ヌクレオシド部分、リン酸エステル部分、5’末端、3’末端、又はこれらの組合せにおいて修飾されている、項目57~122のいずれか1項に記載の方法。
[項目124] ポリ核酸ポリマーが、人工ヌクレオチドを含む、項目57~123のいずれか1項に記載の方法。
[項目125] 人工ヌクレオチドが、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)、ロック核酸(LNA)、エチレン核酸(ENA)、ペプチド核酸(PNA)、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、モルホリノ、メチルホスホネートヌクレオチド、チオールホスホネートヌクレオチド、及び2’-フルオロN3-P5’-ホスホロアミダイトから成る群より選択される、項目124に記載の方法。
[項目126] 送達ビヒクルが、ナノ粒子ベースの送達ビヒクルを含む、項目87、88、104、又は105に記載の方法。
[項目127] タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを転移因子内の標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、選択的スプライス部位の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、該選択的スプライス部位は、mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、該選択的スプライス部位の有無は、タンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
[項目128] タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを転移因子の上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、選択的スプライス部位の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、該選択的スプライス部位は、mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、該選択的スプライス部位の有無は、タンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
[項目129] トランスポゾン因子が、予めプロセシングされたmRNA転写産物上にある、項目127又は128に記載の方法。
[項目130] タンパク質発現を調節する方法であって:
a)単離ポリ核酸ポリマーを被験者の標的細胞へ接触させ;
b)接触されたポリ核酸ポリマーを予めプロセシングされたmRNA転写産物上の標的モチーフへハイブリダイズさせ、ここで、接触されたポリ核酸ポリマーの標的モチーフへのハイブリダイゼーションは、選択的スプライス部位の活性化を促進又は抑制し;
c)予めプロセシングされたmRNA転写産物のmRNA転写産物をプロセシングし、ここで、該選択的スプライス部位は、mRNA転写産物内に存在するか又は存在せず;そして
d)工程c)のプロセシングされたmRNA転写産物を翻訳し、ここで、該選択的スプライス部位の有無は、タンパク質発現を調節する、
ことを含む、前記方法。
[項目131] タンパク質が、プロセシングされたmRNA転写産物より発現される、項目130に記載の方法。
[項目132] NSEの存在が、タンパク質発現を下方制御する、項目130に記載の方法。
[項目133] NSEの不存在が、タンパク質発現を上方制御する、項目130に記載の方法。
[項目134] ポリ核酸ポリマーが、ATMイントロン28内のモチーフへハイブリダイズする、項目130に記載の方法。
[項目135] モチーフが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合するスプライシング調節モチーフである、項目134に記載の方法。
[項目136] スプライシング調節モチーフが、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、項目135に記載の方法。
[項目137] シュードエクソンが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソンである、項目136に記載の方法。
[項目138] モチーフが、U2AF65結合部位である、項目134に記載の方法。[項目139] モチーフが、転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフである、項目134に記載の方法。
[項目140] 転移因子が、Alu又はMER51である、項目139に記載の方法。[項目141] 単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、項目140に記載の方法。
[項目142] 単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目140に記載の方法。
[項目143] 単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目140に記載の方法。
[項目144] ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、項目130~143のいずれか1項に記載の方法。
[項目145] 単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、項目130~144のいずれか1項に記載の方法。
[項目146] a)予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内へのNSEの包含を促進する、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)アクチベーター剤、又は予めプロセシングされたmRNA転写産物と相互作用して、プロセシングされたmRNA転写産物内のNSEの排除を促進する、ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)リプレッサー剤;及び
b)医薬的に許容される賦形剤及び/又は送達ビヒクル、
を含む医薬組成物。
[項目147] NSEアクチベーター剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、項目146に記載の医薬組成物。
[項目148] NSEリプレッサー剤が、単離ポリ核酸ポリマーである、項目147に記載の医薬組成物。
[項目149] ポリ核酸ポリマーが、ATMイントロン28内のモチーフへハイブリダイズする、項目147又は148に記載の医薬組成物。
[項目150] ポリ核酸ポリマーが、スプライソソーム成分に対してNSEと競合するスプライシング調節モチーフへハイブリダイズする、項目147に記載の医薬組成物。
[項目151] スプライシング調節モチーフが、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む、項目150に記載の医薬組成物。
[項目152] シュードエクソンが、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソンである、項目151に記載の医薬組成物。
[項目153] ポリ核酸ポリマーが、U2AF65結合部位へハイブリダイズする、項目150に記載の医薬組成物。
[項目154] ポリ核酸ポリマーが、転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフへハイブリダイズする、項目147又は148に記載の医薬組成物。
[項目155] 転移因子が、Alu又はMER51である、項目154に記載の医薬組成物。
[項目156] 単離ポリ核酸ポリマーが、Alu内の標的モチーフへハイブリダイズする、項目154に記載の医薬組成物。
[項目157] 単離ポリ核酸ポリマーが、Aluの上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目154に記載の医薬組成物。
[項目158] 単離ポリ核酸ポリマーが、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする、項目154に記載の医薬組成物。
[項目159] ポリ核酸ポリマーが、長さ約10~約50ヌクレオチドである、項目146~158のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目160] 単離ポリ核酸ポリマーが、配列番号18~52から成る群より選択される配列に対して少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性がある配列を含む、項目146~159のいずれか1項に記載の医薬組成物。
[項目161] 項目146~160のいずれか1項に記載の医薬組成物を含む細胞。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】[0030]
図1A~
図1Cは、ATMイントロン28内のU2AF抑制クリプティックエクソンの同定を例証する。
図1Aは、このクリプティックエクソン(ここでは、NMD-スイッチエクソンのことをNSEと呼称する)活性化の概略を示す。NSE配列(上パネル)を箱で囲み、星印はrs609261を示して、黒色の矩形は、指定のアンチセンスオリゴヌクレオチドを示す。下パネルには、両方のU2AF35アイソフォーム(ab-)、U2AF35a(a-)、U2AF35b(b-)、及び対照(c)のRNAi-又はSSO-仲介欠失からのRNA-Seqデータのゲノムブラウザビューを示す。U2AF1のエクソンAbとエクソン3の3’ssを標的とするSSOとU2AF35 siRNAについては、先に記載した通りである。Y軸:表示密度。上にNSEの包含/排除を点線によって概略的に示す。ATMエクソン(灰色のボックス)には、番号を付してある。この29ヌクレオチド(nt)のNSEは、ATM mRNA内に終止コドンを導入した。
図1Bは、独立した欠失におけるRT-PCR(上パネル)によるNSE活性化の検証を示す(下パネル)。パネルAに、RT-PCRプライマー(ATM-F、ATM-R、
図20)を矢印で示す。スプライス産物を右方に示し、NSE付き転写産物の百分率を上に示す。エラーバーは、2回のトランスフェクション実験のSDを示す(
***,p<0.0001,
**,p<0.001)。
図1Cは、成熟転写産物におけるNSEの包含が残留U2AFと逆相関することを示す(r=ピアソン相関係数)。ヘテロ2量体レベルの推定値を決定した。
【
図2-1】[0031]
図2A~
図2Cは、rs609261によって改変される、NSE活性化とATM発現を示す。指定の集団において、rs609261での対立遺伝子頻度を示す(
図2A)。
図2Bは、例示のミニ遺伝子の概略を示す。NSEとエクソン29を含有するATMのXhoI/XbaI断片をU2AF1のエクソン2とエクソン4の間でクローニングした(黒色のボックス)。外因性転写産物を増幅するためのRT-PCRプライマー(PL3とATM-R、
図20)を矢印によって示す。
図2Cは、外因性プレmRNAにおけるrs609261依存性のNSE活性化を示す。U2AF35又はU2AF65を欠失したHEK293細胞についてT(黒色)ミニ遺伝子とC(灰色)ミニ遺伝子で一過性トランスフェクションした。U2AF35 siRNAとU2AF65 siRNAの最終濃度は、それぞれ30nMと60nMであった。
【
図2-2】[0031]
図2D~
図2Iは、rs609261によって改変される、NSE活性化とATM発現を示す。
図2Dは、rs609261(星印)でホモ接合性である細胞株の同定を例証する。NSEを箱で囲む。
図2Eと
図2Fは、内因性転写産物におけるNSEの対立遺伝子特異的な活性化が用量依存的なやり方でATM発現を制限することを示す。内因性転写産物の供給源を底部に示し、抗体を右方に示す。培養物中のsiRNAの濃度は、3、10、及び30nMであった(C1、C2、対照のsiRNA)。GFP-プラスミドと蛍光顕微鏡法によってトランスフェクション効率をモニターした。
図2Gは、UPF1欠失がNSE活性化を増加させて(上パネル)、アイソフォームU2AF1cを上方制御した(下パネル)ことを示す。U2AF1cアイソフォームは、エクソンAbとエクソン3をともに含有して、NMDによって抑制される。UPF1 siRNAの最終濃度は、7、20、及び60nMであった(SC=スクランブル対照)。エラーバーは、独立したトランスフェクションのSDである。
図2Hは、U2AF関連タンパク質と異種核内RNPのサブセットを欠失した細胞におけるNSEの包含レベルを示す。エラーバーは、2回のトランスフェクションのSDを示す。免疫ブロットを右方に示す。U2AF35 siRNAの最終濃度は、25nMであって;残存するsiRNAは、60nMであった(C=対照)。
図2Iは、PUF60の過剰発現がNSEスキッピングを誘導したこと示す。免疫ブロットを下に、抗体を右方に示す。
【
図3】[0032]
図3A~
図3Dは、NSEを標的とするSSOによるU2AF抑制ATM発現のレスキューを例証する。
図3Aと
図3Bは、外因性(
図3A)及び内因性(
図3B)のATM転写産物における効率的なSSO仲介NSE阻害を示す。右パネルには、2回のトランスフェクション実験の平均のNSE包含レベルを示す。
図3Cは、NSEへのアクセスを遮断するSSOによる、ATMタンパク質レベルの回復を示す。U2AF35を欠く細胞と対照細胞を、NSE 3’ssを標的とするSSOと対照SSOでトランスフェクトした(
図1Aと
図20)。48時間後、この細胞をイオン化放射線(IR,10Gy)へ曝露して、1時間後に採取した。グラジエントSDS-PAGEを使用して、細胞溶解液を分離した。抗体を用いたウェスタンブロッティングを右方に示した。
図3Dは、欠失細胞における、SSO-NSE3によるATM発現の用量依存性の復元を示す。
【
図4-1】[0033]
図4A~
図4Bは、イントロン性シスエレメントとNSE活性化を調節するSSOの同定を示す。
図4Aは、ATMイントロン28内の2つのシュードエクソンの概略を示す。カノニカル(canonical)エクソン(番号付け)を灰色のボックスとして、NSEを白色のボックスとして、そしてPEを格子状のボックスとして示す。星印は、A-Tを引き起こす、IVS28-159のA>G置換の位置を示す。このA-T事例では、NSEがヒトイントロンの最小サイズ未満でPEより離れているので、NSEとPEをともに介在配列と一緒にATM mRNAに含めた。カノニカル転写産物と異常な転写産物をそのプレmRNAの上と下に点線でそれぞれ示す。中央のパネルは、両方のU2AF35アイソフォーム(ab-)を、架橋結合及び免疫沈降によって同定されるU2AF65タグ/高信頼性結合部位(水平線/矩形)と一緒に欠失した細胞におけるNSEのRNA-Seq表示密度を示す。その一番下には、Phylop(100 VC)による100塩基位置(basewise)の脊椎動物の保存を示す。より下のパネルは、Cミニ遺伝子において導入された突然変異(赤字で下線した)を示す。
図4Bは、野生型Cミニ遺伝子と変異Cミニ遺伝子のスプライシングパターンを示す。突然変異をパネルAに示し;RNA産物を概略的に右方に示す。クローンPEdelPPT/AGによって産生された最大の産物は、短縮されたシュードイントロン(42ヌクレオチド)を含有する。
【
図4-2】[0033]
図4C~
図4Hは、イントロン性シスエレメントとNSE活性化を調節するSSOの同定を示す。
図4Cは、(モック)欠失HEK293細胞においてNSE(レーン2、3、7、及び8)又はPE(レーン4、5、9、及び10)が変異したCミニ遺伝子のスプライシングパターンを示す。突然変異が一番下にあって、ミニ遺伝子配列が
図21にある。スプライス産物を概略的に右方に示し;PE上のヘアピン記号は、MIRステムループ挿入を示す。
図4Dと
図4EはSSO誘導シュードエクソンスイッチングを例証する。トランスフェクトされたミニ遺伝子を上方に、スプライス産物を右方に、そしてSSOを一番下に示す。SSO配列は、
図20にある。パネルD~パネルGに示すSSOの最終濃度は、3、10、及び30nMであった。
図4Fは、PEを標的とするSSOがNSEスキッピングを誘導したことを示す。
図4Gは、欠失時にNSEを活性化する配列を標的とするSSO(PEdelPPT/AG;パネルAとパネルB)がPEを阻害することを示す。
図4Hは、NSE活性化がハプロタイプ依存性であることを示す。指定の変異体でのミニ遺伝子ハプロタイプを一番下に示す。カラムは平均のNSE包含を表し、エラーバーはSDであって、星印は、
図1Bと同様に、統計学的有意差を示す。
【
図5-1】[0034]
図5A~
図5Bは、ATMシグナル伝達のエクソン中心性の制御を示す。
図5Aは、MRN-ATM-CHEK2-CDC25-cdc2/サイクリンB経路における、U2AF制御された遺伝子及びエクソンレベルの発現変化を示す(左パネル)。括弧内にLog2倍率変化値とq値を示す。CHEK2遺伝子とCDC25A遺伝子のエクソン利用をRNA-Seqブラウザショットによって示し;PCR検証ゲルを右パネルに示す。CHEK2エクソン9は、NMDスイッチエクソンであり;エクソン11は、キナーゼドメインの一部をコードする。ATMシグナル伝達経路におけるU2AF仲介性の発現変化の全スペクトルを
図9に示し;U2AF仲介性のスプライシング制御の例を
図S3~
図S6に示す。
図5Bは、U2AF35欠失細胞においてIRの後で損傷したATMシグナル伝達を示す。HEK293細胞を、U2AF35(モック)欠失させて、48時間後にIR(10Gy)へ処した。指定の時点での免疫ブロッティングによって発現を検証した。抗体を右方に示す。CHEK2エクソン9スキッピングレベルを一番下に示す。
【
図5-2】[0034]
図5C~
図5Gは、ATMシグナル伝達のエクソン中心性の制御を示す。
図5Bは、U2AF35欠失細胞においてIRの後で損傷したATMシグナル伝達を示す。HEK293細胞を、U2AF35(モック)欠失させて、48時間後にIR(10Gy)へ処した。指定の時点での免疫ブロッティングによって発現を検証した。対照細胞(U2AF35+)と欠失細胞(U2AF35-)におけるその測定値をパネル
図5Cに示す。
図5Dは、UPF1欠失細胞におけるCHEK2エクソン9包含を示す。UPF1s iRNAの最終濃度(
図20)は、12.5、25、50、及び100nMであった。
図5Eは、SSOによるCHEK2エクソン9の抑制がCHEK2レベルを低下させて、NSEの包含を促進したことを示す。CHEK2エクソン9を標的とするSSOの最終濃度は、3、10、及び30nMであった。
図5Fは、HEK293細胞を指定のSSOでトランスフェクションした時のCHEK2エクソン9の包含を示す。
図5Gは、SF3B1の欠乏がCHEK2エクソン9スキッピングを誘導したが、NSE活性化は変化させなかったことを示す。SF3B1を標的とする各siRNAの最終濃度は、20nMであった。
【
図6】[0035]
図6は、U2AF35におけるがん関連突然変異によるNSE抑制のレスキューを示す。U2AF35における、Cミニ遺伝子のU2AF35依存性NSEスプライシングのジンクフィンガー1及び2置換によるレスキュー(上パネル)。いずれの置換も、U2AF1a構築体(35a)において行った。がん関連突然変異(下)を箱で囲み;スプライス産物を右方に示す。U2AF35抗体とGFP抗体での免疫ブロットを下方のパネルに示す(ex=外因性U2AF35;en=内因性U2AF35)。
【
図7】[0036]
図7は、シュードエクソン標的化による、遺伝子発現のSSOベースの調節を示す。カノニカルエクソンを灰色のボックスとして、ナンセンス変異依存RNA分解機構(NMD)のスイッチエクソンを黒色のボックスとして、シュードエクソンを白色のボックスとして示す。カノニカルスプライシングを点線によって示す。NMDエクソンと競合するシュードスプライス部位をRNA前駆体の下に示す。SSOアクチベーター/リプレッサーを水平の黒色/灰色のバーによってそれぞれ示す。成熟転写産物への包含のために、U2AF、異種核内リボ核タンパク質、又はセリン/アルギニンリッチタンパク質といったスプライソソーム成分についてNMDスイッチエクソンと競合するスプライシング調節モチーフ又は2次構造は、簡略化のために示していない。それらは、以前に詳しく記載された計算法(例えば、Kralovicova, J. and Vorechovsky, I. (2007) Global control of aberrant splice site activation by auxiliary splicing sequences: evidence for a gradient in exon and intron definition[異常スプライス部位活性化の補助的スプライシング配列による全体制御;エクソン及びイントロンの明確性における勾配の証拠]Nucleic acids Res., 35, 6399-6413 とその中の参考文献)によって予測し得るか、又はRNA架橋結合及び免疫沈降、スプライシング基質の突然変異誘発、及びRNAフォールディング試験が含まれる実験法によって決定し得る。
【
図8】[0037]
図8A~
図8Cは、SSO仲介性のNSE抑制がATM発現を高めることを示す。
図8Aは、SSO-NSE3が全ATMと活性化ATMの発現を増加させたことを示す。HEK293細胞を、U2A F35(モック)欠失させ、Xpressタグ付きCHEK2とSSO NSE3/対照(SSO-C)で同時トランスフェクトし、イオン化放射線(IR)へ曝露して、30分後に採取した。細胞溶解液を指定の抗体で免疫ブロットした。siRNAとSSOの最終濃度は、30nMであった。CHEK2を発現するプラスミドの量は、30、90、及び270ngであって;エンプティ(empty)ベクター由来のDNAを270ng/mLの最終濃度まで加えた。Ex/enCHEK2は、D9C6抗体によって検出される、外因性CHEK2と内因性CHEK2からのシグナルである。
図8Bと
図8Cは、NMDスイッチエクソン9を標的とするSSO(SSO CHEK2)による、外因性CHEK2の増加した発現を示す。一定量のSSO CHEK2を増加量のXpress-CHEK2とトランスフェクション及びローディング対照としての一定量のGFPプラスミドで同時トランスフェクトして(B)、その反対でも行った(C)。抗体は、右方にある。
【
図9】[0038]
図9は、U2AF制御された機能性ATM相互作用の例示マップを図解する。U2AF制御されたATMシグナル伝達ネットワークを赤色の矢印/桃色の背景によって強調する。U2AF35欠失細胞において上方/下方制御される遺伝子を赤色/濃緑色でそれぞれ示す。有意に改変されたエクソン利用を明示する遺伝子を黄色で示す。このATMシグナル伝達マップは、ATM相互作用性のタンパク質(紫色)/タンパク質複合体(淡緑色)を示す。矢印は活性化に対応し、T形状の刃形は阻害に対応して、白丸は未知の制御を示す。抑制(containment)リンクを緑色の刃形として示す。
【
図10】[0039]
図10A~
図10Cは、U2AF35欠失細胞内のCDC25BとCDC25Cにおけるエクソン利用を示す。対照(ctr)細胞と欠失(ab-)細胞におけるRNA-Seqデータのゲノムブラウザビュー(
図10Aと
図10Bの左パネル)。PCRプライマーを矢印によって示し、差示的に利用されるエクソンを黒色の矩形によって示す。RefSeqエクソンの注釈を一番下に示す。各U2AFサブユニットとU2AF関連タンパク質を欠失した細胞より抽出したRNAでのRT-PCRを使用するRNA-Seqデータの検証(
図10Aと
図10Bの右パネル)。
【
図11-1】[0040]
図11A~
図11Cは、TTK、PIN1、及びCDK1におけるU2AF制御エクソン利用を示す。対照(ctr)細胞と欠失(ab-)細胞におけるRNA-Seqデータのゲノムブラウザビュー(
図11A、
図11Bの左パネル、及び
図11C)。PCRプライマーを矢印によって示し、差示的に利用されるエクソンを黒色の矩形によって示す。RefSeqエクソンの注釈を一番下に示す。各U2AFサブユニットとU2AF関連タンパク質を欠失した細胞より抽出したRNAでのRT-PCRを使用するRNA-Seqデータの検証(
図11Bの右パネル)。
【
図11-2】[0040]
図11A~
図11Cは、TTK、PIN1、及びCDK1におけるU2AF制御エクソン利用を示す。対照(ctr)細胞と欠失(ab-)細胞におけるRNA-Seqデータのゲノムブラウザビュー(
図11A、
図11Bの左パネル、及び
図11C)。
【
図12】[0041]
図12A~
図12Dは、欠失細胞におけるRAD50とEZH2のRNAプロセシングを示す。対照(ctr)細胞と欠失(ab-)細胞におけるRNA-Seqデータのゲノムブラウザビュー(
図12A、
図12B、
図12C、及び
図12Dの左パネル)。PCRプライマーを矢印によって示し、差示的に利用されるエクソンを黒色の矩形によって示す。RefSeqエクソンの注釈を一番下に示す。各U2AFサブユニットとU2AF関連タンパク質を欠失した細胞より抽出したRNAでのRT-PCRを使用するRNA-Seqデータの検証(
図12Aと
図11Bの右パネル)。
【
図13】[0042]
図13A~
図13Bは、ぺプチジル-プロリルイソメラーゼPIN2とシェルタリン複合体の成分のU2AF35制御されたエクソン利用を示す。
【
図15】[0044]
図15A~
図15Eは、正常組織細胞と白血病細胞におけるNSE活性化を示す。19種のヒト組織(
図15A)と17種のAML/CMML骨髄試料(
図15B)においてプライマーのATM-F及びATM-Rを使用してNSEの包含レベルを測定した(
図1,
図20)。エクソン包含を定量した。平均値を対応なしt検定で比較した(
図15C)。
図15Dと
図15Eは、リンパ芽球様細胞株における、U2AF抑制(
図15D)及び活性化(
図15E)エクソンの包含レベルを示す(上)。細胞は、指定温度で低温ショックと熱ショックへ曝露した。ES,エクソンスキッピング;EI,エクソン包含。
【
図16】[0045]
図16A~
図16Bは、NSE活性化に影響を及ぼす、ATMイントロン28内の転移因子の同定を示す。
図16Aは、イントロン28内の転移因子の位置とNSE活性化の概略を示す。カノニカルエクソンを灰色のボックスとして、NSEを白色のボックスとして、NSEに隣接するイントロンを実線として、そしてそれらのスプライシングを点線によって示す。転移因子を1次転写産物の下にある水平の白い矩形として示し;UCは、識別可能なトランスポゾンを欠くユニーク配列である。それらの欠失を1~6と番号付けし、これは、パネルBのレーン番号に対応する。RT-PCRプライマーを黒色の矢印によって示す。スケールが上部にある。より下のパネルでは、NSE配列を箱で囲んでいる。センスAlu(Alu+)を欠く構築体は、反復的に連結/増殖し得なかったので、検査しなかった。
図16Bは、アンチセンスAluとMER51エレメントの欠失がNSE活性化を変化させることを示す。U2AF35を(モック)欠失させたHEK293細胞内へ野生型(WT)構築体と変異構築体(1~6と指定)を一過的にトランスフェクトした。NSE+/-は、NSEを含む/含まないRNA産物である。カラムは、平均のNSEの包含(%)を表し、エラーバーは、2回のトランスフェクション実験のSDを表す。星印は、両側のP値<0.01(t検定)を示す。
【
図17-1】[0046]
図17A~
図17Bは、NSEを活性化するか又は抑制するイントロン性SSOの同定を示す。
図17Aは、イントロン28において検討したSSOの転移因子に対する位置を示す。凡例については、
図16Aを参照のこと。
図17Bは、外因性転写産物においてNSE活性化を変化させるイントロン28 SSOの同定を示す。例示のSSOを表2に収載する。「x」記号は多数の陰性対照を示し、点線は平均のNSE包含を示し、エラーバーは2回のトランスフェクション実験のSDを示す。カラムは平均の包含レベルを表し、星印は、有意なP値を示す。
【
図17-2】[0046]
図17Cは、NSEを活性化するか又は抑制するイントロン性SSOの同定を示す。1本鎖領域を標的とするSSOに内因性NSEを抑制する傾向があったことを示す。rは、ピアソン相関係数である。P値を括弧内に示す。
【
図18】[0047]
図18A~
図18Bは、SSO-NSE3のヒト細胞株へのTMC-SA支援送達がNSE抑制をもたらすことを示す。
図18Aは、HEK293細胞におけるNSEの包含がSSO-NSE3/TMC-SAナノ複合体の曝露時に阻害されることを示す。N/P比は、20、40、及び80であった(Sc=同じ修飾のあるスクランブル対照、M=サイズマーカー)。エラーバーは、2回のトランスフェクション実験のSDを示す。指定の比較についてのP値を上方に示す。
図18Bは、SSO-NSE3/TMC-SA複合体へ曝露されたVAVY細胞におけるNSE抑制を示す。
【
図19】[0048]
図19は、ATMイントロン28のあるMER51コンセンサス配列における逆方向反復を示す(v,トランスバージョン;i,トランジション)。ATM MER51A内のほとんどの安定した逆方向反復に下線を施して強調する;プリンリッチの1本鎖領域を赤色で示し;MER51ファミリーについて最初に記載した長い末端反復相同性をイタリック体で示す。並置した断片は、
図16aに示した欠失4に対応する。MER51Aコンセンサス配列は、アンチセンス配向にある。
【
図20】[0049]
図20は、例示の合成DNA及びRNAの配列を例解する。
【
図21】[0050]
図21は、NSEとPEにおいて変異したスプライシングレポーター構築体の例示配列を示す。
【
図22】[0051]
図22は、NSEとPEにおける補助スプライシングエレメントを示す。
【
図23】[0052]
図23は、NMDに関与するU2AF35制御転写産物の概要を示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[0053] 介在配列又はイントロンは、1次転写産物、核内低分子RNA(snRNA)、及び多数のタンパク質の間の複雑な相互作用を統合する、スプライソソームと呼ばれる大きくて高度に動的なRNA-タンパク質複合体によって除去される。スプライソソームは、各イントロン上で特定の目的のために秩序だったやり方で組み立てられ、U1 snRNAによる5’スプライス部位(5’ss)の認識、又はU2経路(U2補助因子(U2AF)が3’ss領域へ結合して、分岐点配列(BPS)へのU2結合を促進することを含む)による3’ssの認識から始まる。U2AFは、U2AF2コード化65kDサブユニット(U2AF65)[ポリピリミジントラクト(PPT)と結合する]とU2AF1コード化35kDサブユニット(U2AF35)[高度に保存されたAGジヌクレオチドと3’ssで相互作用してU2AF65結合を安定にする]から構成される安定したヘテロ2量体である。BPS/PPTユニットと3’ss/5’ssに加えて、正確なスプライシングには、イントロン性又はエクソン性のスプライシングエンハンサー又はサイレンサーとして知られる、スプライス部位認識を活性化するか又は抑制する補助的な配列又は構造が必要とされる。これらのエレメントは、高等真核生物のゲノム内にある(同じ配列を有するが、正統の部位より1桁分の数で優る)大過剰のクリプティック部位又はシュード部位の中で真のスプライス部位が認識されることを可能にする。それらは、制御機能をしばしば有するが、それらの活性化又は抑制の正確な機序は、ほとんど理解されていない。
【0030】
[0054] エクソーム配列決定研究は、がん細胞、最も著名には骨髄異形成症候群には、U2AF1/U2AF2と3’ss認識に関与する他の遺伝子(SF3B1,ZRSR2、SF1、SF3A1、PRPF40B、及びSRSF2)において体細胞突然変異のきわめて限定されたパターンがあることを明らかにしてきた。これらの遺伝子は、スプライソソームアセンブリーの間にしばしば相互作用する産物をコードするので、発がんにおける共通の経路の存在を示唆し、このことは、がん関連突然変異の高度の相互排除性によってさらに支持されている。これらの突然変異を担う白血病試料におけるゲノム全体のトランスクリプトームプロファイリングでは、mRNA前駆体のスプライシングに数多くの改変が検出されたが、特定のRNAプロセシング障害とがんの発生又は進行との間の重要な関連については、これらの標的が治療上の調節にきわめて有望であるにもかかわらず、不明なままである。これらのRNA結合タンパク質とDNA傷害応答(DDR)経路の間の相互関連性も依然として十分特徴づけられているわけではない。
【0031】
[0055] 従来のスプライシングモチーフ(BPS/PPT/3’ss/5’ss)と補助的なスプライシングモチーフにおける突然変異は、エクソンスキッピング、又はクリプティックエクソン若しくはスプライス部位の活性化といった異常なスプライシングをしばしば引き起こして、ヒトの罹病及び死亡へ有意に寄与する。異常なスプライシングパターンも選択的スプライシングパターンもエクソンとイントロンにおける天然のDNA変異体によって影響を受ける可能性があり、このことは、メンデル形質と複合形質の両方の遺伝率において重要な役割を担う。しかしながら、対立遺伝子又はハプロタイプ特異的なRNA発現を表現型の変動性へ翻案する分子機序についても、イントロン性及びエクソン性の変異対立遺伝子とトランス作用因子の間の相互作用についても、ほとんどわかっていない。
【0032】
[0056] アンチセンス技術は、今や重要な臨床応用に達している。例えば、ATM遺伝子を標的とするアンチセンススプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)は、毛細血管拡張性運動失調症(A-T)におけるスプライシング突然変異を修復するのに使用されたことがあって、ATMタンパク質レベルを正常化するのに成功した(Du et al.,
2011; Du et al.,2007)。
【0033】
[0057] 白血病と固形腫瘍の両方の大部分で、ATM発現の脱制御が示されている(例えば、Stankovic et al., 1999; Starczynski et al., 2003)。ATMの化学阻害剤(ウォルトマンニン、CP-466722、KU-55933、及びKU60019)は、主として非特異的な効果及び/又は高い毒性の故に臨床試験に到達していないが、KU-559403については、良好なバイオアベイラビリティと信頼し得るほどに付与される放射線感受性が示されている。
【0034】
[0058] いくつかの事例では、遺伝子発現を配列特異的なやり方で上方又は下方制御する能力は、望ましい。
[0059] ある態様では、本発明で提供するのは、被験者又は被験者の集団について機能性ATMタンパク質欠損への感受性をスクリーニングする方法であって、ここで該スクリーニングは、そのヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティック又はナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を決定することを含み、ここで非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者(又は被験者群)が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す。
【0035】
[0060] 「機能性ATMタンパク質欠損」という用語は、ある被験者、細胞、又は組織において機能的であるATMタンパク質の存在/発現の低下を意味する。機能性ATM欠乏症は、ATM前駆体メッセンジャーRNA(プレmRNA)のRNAプロセシングを改変する、ATMイントロン28内の機能性変異体rs609261の所産である。rs609261でのシトシン対立遺伝子は、この位置でのチミン対立遺伝子より、ATM mRNAにおけるナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(本明細書ではNSEと呼称する)のより高次の包含を生じて、チミン対立遺伝子より効率的にATMタンパク質の発現を制限する。この制限は、同じイントロン内のNSE又はNSE制御配列へのアクセスを遮断する新規SSOによって除去するか又は調節することが可能であって、ATMタンパク質の脱抑制又は阻害をそれぞれもたらす。
【0036】
[0061] いくつかの態様では、本発明で提供するのは、機能性ATMタンパク質欠損に感受性である被験者又は被験者の集団を治療又は予防のために選択する方法であって、該
方法は、そのヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を決定すること(ここで非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す)と、該被験者の機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤での治療のためにそのような被験者を選択することを含む。
【0037】
[0062] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質欠損の被験者における治療又は予防の方法が提供され、該方法は、そのヒトゲノムのNSEの3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を同定すること(ここで非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す)と、機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤の該被験者への投与を含む。
【0038】
[0063] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質のレベルを増加させるように整えられたNSEリプレッサー剤の投与を含む、機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態の治療又は予防の方法が提供され、ここで該薬剤は、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEへ、又は同じイントロン内のNSE活性化制御配列へ結合して、成熟転写産物におけるNSEの包含を減少させるように整えられる。
【0039】
[0064] 本発明の別の側面によれば、NSEアクチベーター剤の投与を含む、ATM発現の脱制御に関連した病態の被験者における治療又は予防の方法が提供され、ここでNSEアクチベーター剤は、ATMイントロン28内のNSE阻害性調節モチーフへ結合することによって、ATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させるように整えられる。
【0040】
[0065] ATMイントロン28内のNSE阻害性調節モチーフは、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソン(PE)、又は該シュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位といった、スプライソソーム成分についてNSEと競合する配列を含み得る。
【0041】
[0066] 本発明の別の側面によれば、放射線療法のような、2本鎖DNAの切断を誘導するDNA傷害剤へのがん細胞の感受性を増加させるように整えられたNSEアクチベーター剤の投与(ここでNSEアクチベーター剤は、ATMイントロン28内のNSE調節モチーフへ結合することによってATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させるように整えられる)と、放射線療法又は化学療法のような、2本鎖切断を引き起こすDNA傷害剤で被験者を治療することを含む、該被験者におけるがんの治療又は予防の方法が提供される。
【0042】
[0067] 本発明の別の側面によれば、ATMイントロン28内の調節モチーフへ結合することによってATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させるように整えられたNSEアクチベーター剤の投与によるATMタンパク質発現の低下を含む、放射線療法での治療のような細胞傷害性療法への細胞の感受性を増加させる方法が提供される。
【0043】
[0068] ATMイントロン28内の調節モチーフは、スプライソソーム成分についてNSEと競合し得て、ここでそのようなモチーフは、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソン(PE)、又は該シュードエクソンの上流にあるU2AF65結合部位を含み得る。
【0044】
[0069] 本発明の別の側面によれば、本明細書に記載のNSEアクチベーター剤及び/
又はNSEリプレッサー剤の投与を含む、被験者、細胞、又は組織において機能性ATM発現を増減させる方法が提供される。
【0045】
[0070] 本発明の別の側面によれば、ATM脱制御に関連した病態への治療に対する被験者の応答を予測することへのrs609261遺伝子型決定の使用が提供される。
[0071] 本発明の別の側面によれば、本発明のNSEリプレッサー剤を含む組成物が提供される。
【0046】
[0072] 本発明の別の側面によれば、本発明のNSEアクチベーター剤を含む組成物が提供される。
[0073] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質欠損の被験者における治療又は予防のための方法が提供され、該方法は、そのヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を同定すること(ここで非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す)と、非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換するように整えられた薬剤の該被験者への投与を含む。
【0047】
[0074] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質欠損の被験者における治療又は予防の方法が提供され、該方法は、そのヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換することを含む。
【0048】
[0075] 本発明の別の側面によれば、本発明のポリ核酸ポリマーを含むベクターが提供される。
[0076] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質欠損の被験者における治療又は予防の方法が提供され、該方法は、そのヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を同定すること(ここでrs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す)と、rs4988000でのグアニン変異体残基をアデニンに置換するように整えられた薬剤の該被験者への投与を含む。
【0049】
[0077] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質欠損の被験者における治療又は予防の方法が提供され、該方法は、そのヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基をアデニン残基に置換することを含む。
【0050】
[0078] 本発明の第1の側面によれば、被験者又は被験者の集団について機能性ATMタンパク質欠損への感受性をスクリーニングする方法が提供され、ここで該スクリーニングは、そのヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定することを含み、ここでrs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者(又は被験者群)が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す。
【0051】
[0079] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質欠損に感受性である被験者又は被験者の集団を治療又は予防のために選択する方法が提供され、該方法は、そのヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定すること(ここでrs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す)と、該被験者の機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤での治療のためにそのような被験者を選択することを含む。
【0052】
[0080] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質欠損の被験者における治療又は予防の方法が提供され、該方法は、そのヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を同定すること(ここでrs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す)と、機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤の該被験者への投与を含む。
【0053】
[0081] 本発明の別の側面によれば、遺伝子の発現の制御を改変することが可能な薬剤又は薬剤の組合せをスクリーニングする方法(
図7)が提供され、該方法は、機能性の遺伝子発現を制限するナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)を同定すること;スプライソソーム成分についてNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを同定すること(前記調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む);そのスプライシング調節モチーフへワトソン-クリック塩基対合を介してハイブリダイズするように整えられたアンチセンスポリ核酸でその1以上のスプライシング調節モチーフを標的とすること;及び該遺伝子の成熟RNA転写産物におけるNSEの包含が増加又は減少するかを決定することを含む。
【0054】
[0082] 本発明の別の側面によれば、NSEスプライシング調節モチーフへ結合するように整えられた薬剤を提供することを含む、遺伝子の発現を調節する方法が提供される。
[0083] 本発明の別の側面によれば、NSEの遺伝子スプライシング調節モチーフへ結合するように整えられた薬剤が提供され、ここでスプライシング調節モチーフは、該遺伝子の成熟RNA転写産物内へのNSEの包含を制御する。
【0055】
[0084] 本発明の別の側面によれば、本発明で提供するのは、mRNA遺伝子転写産物におけるNSEの包含によって引き起こされる疾患病理の治療又は予防の方法であって、該方法は、その遺伝子の成熟RNA転写産物へのNSEの包含を制御する遺伝子NSEスプライシング調節モチーフへ結合するように整えられた薬剤を提供することを含む。
【0056】
[0085] 本発明の好ましい態様について、本明細書に示して記載してきたが、当業者には、そのような態様が例示としてのみ提供されることが明らかであろう。今や、当業者には、本発明から逸脱することなく、多数の変形、変更、及び代用が発想されよう。本発明を実施する場合には、本明細書に記載した本発明の態様に対する様々な代替態様を利用し得ると理解されたい。以下の特許請求項は、本発明の範囲を明確化して、これらの特許請求項の範囲内の方法及び構造とそれらの均等物がそれによって含まれると企図される。
【0057】
[0086] 種々の決定には、当業者に利用可能などの好適なアッセイ又は遺伝子解析も使用し得る。いくつかの事例では、in situ ハイブリダイゼーション及びRT-PCRのような核酸ベースの技術を用いて核酸レベルで検出がなされる。配列決定技術には、Helicos True Single Molecule Sequencing(tSMS)(Harris T.D. et al. (2008) Science 320:106-109);454配列決定法(ロシュ)(Margulies, M. et al. 2005, Nature, 437, 376-380);SOLiD技術(アプライド・バイオシステムズ);SOLEXA配列決定法(Illumina);Pacific Biosciences の単一分子リアルタイム(SMRTTM)技術;ナノポア(nanopore)配列決定法(Soni GV and Meller A. (2007) Clin Chem 53: 1996-2001);半導体配列決定法(Ion Torrent;Personal Genome Machine);DNAナノボール(nanoball)配列決定法;Dover Systems(Polonator)由来の技術を使用する配列決定法、及びナノポアベースの戦略(例、Oxford Nanopore、Genia Technologies、及び Nabsys)のような、配列決定に先立って増幅を必要としないし他のやり方でネイティブDNAを形質転換することもない技術(例、Pacific Biosciences 及び Helicos)といった次世代の配列決定技術を含めることができる。配列決定技術には、サンガー配列決定法、マキサム・ギルバート配列決定法、ショットガン配列決定法、ブリッジPCR、質量分析法ベースの配列決定法、微小流路(microfluidic)ベースのサンガー配列決定法、顕微鏡法ベースの配列決定法、RNAP配列決定法、又はハイブリダイゼーションベースの配列決定法も含めることができる。
【0058】
[0087] 目的の遺伝子転写産物の配列決定法には、増幅工程も含めてよい。例示の増幅法には、限定されないが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、核酸配列ベースの増幅(NASBA)、自立配列複製(3SR)、ループ介在等温増幅(LAMP)、鎖置換増幅(SDA)、全ゲノム増幅、多重置換増幅、鎖置換増幅、ヘリカーゼ依存性増幅、ニッキング(nicking)酵素増幅反応、組換えポリメラーゼ増幅、逆転写PCR、ライゲーション媒介PCR、又はメチル化特異的PCRが含まれる。
【0059】
[0088] 核酸配列を入手するために使用し得る追加の方法には、例えば、全ゲノムRNA発現アレイ、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ゲノム配列決定法、de novo 配列決定法、Pacific Biosciences SMRT配列決定法、免疫組織化学(IHC)、免疫細胞化学(ICC)、質量分析法、タンデム質量分析法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF MS)、in-situ ハイブリダイゼーション、蛍光 in-situ ハイブリダイゼーション(FISH)、色素 in-situ ハイブリダイゼーション(CISH)、銀 in situ ハイブリダイゼーション(SISH)、デ
ジタルPCR(dPCR)、逆転写PCR、定量PCR(Q-PCR)、単一マーカーqPCR、リアルタイムPCR、nCounter Analysis(Nanostring technology)、ウェスタンブロッティング、サザンブロッティング、SDS-PAGE、ゲル電気泳動法、及びノーザンブロッティングが含まれる。
【0060】
[0089] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質欠損の被験者における治療又は予防の方法が提供され、該方法は、そのヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を同定すること(ここで非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示す)と、機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤の該被験者への投与を含む。
【0061】
[0090] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質レベルを増加させるように整えられたNSEリプレッサー剤の投与を含む、機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態の治療又は予防の方法が提供され、ここで該薬剤は、プレmRNA転写産物のATMイントロン28内のNSEへ結合して、この成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を減少させるように整えられる。
【0062】
[0091] 成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を減少させることは、機能性ATMタンパク質発現の増加を提供する場合がある。
[0092] 機能性ATMタンパク質欠損の被験者又はリスク病態の被験者集団における治療又は予防の方法は、機能性ATMタンパク質欠損に関連した病態の治療又は予防の方法であり得る。該病態は、毛細血管拡張性運動失調症;小脳性運動失調症;眼皮膚血管拡張症;がん;免疫不全;細胞の放射線感受性;又は染色体の不安定性のいずれの症状でもよい。がんは、リンパ芽球様白血病、又はリンパ腫を含み得る。1つの態様では、該病態は、毛細血管拡張性運動失調症である。別の態様では、該病態は、がんである。そのがんは、非ホジキンリンパ腫又はホジキンリンパ腫を含み得る。
【0063】
[0093] 1つの態様では、NSEは、配列tctacaggttggctgcatag
aagaaaaag(配列番号57)を含む。NSEリプレッサー剤は、配列;agTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag(配列番号58)(隣接する介在配列のそれぞれの3’及び5’スプライス部位ジヌクレオチドに下線を施す)内のNSEへ結合するように整えられ得る。NSEリプレッサー剤は、ATMイントロン28内のNSEの5’又は3’スプライス部位へ結合するように整えられ得る。別の態様では、NSEリプレッサー剤は、ATMイントロン28内のNSEの3’スプライス部位へ結合するように整えられる。別の態様では、NSEリプレッサー剤は、配列tcttagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag(配列番号59)(隣接する介在配列のそれぞれの3’及び5’スプライス部位ジヌクレオチドに下線を施す)内のNSEへ結合するように整えられ得る。別の態様では、NSEリプレッサー剤は、配列tctcagTCTACAGGTTGGCTGCATAGAAGAAAAAGgtagag(配列番号60)(隣接する介在配列のそれぞれの3’及び5’スプライス部位ジヌクレオチドに下線を施す)内のNSEへ結合するように整えられ得る。
【0064】
[0094] 本発明の別の側面によれば、NSEアクチベーター剤の投与を含む、ATM発現の脱制御に関連した病態の被験者における治療又は予防の方法が提供され、ここでNSEアクチベーター剤は、ATMイントロン28内のスプライシング調節モチーフへ結合することによってATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させるように整えられる。
【0065】
[0095] 成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させることは、機能性ATMタンパク質発現の減少を提供する場合がある。
[0096] 本発明の別の側面によれば、放射線療法のようなDNA傷害剤での細胞傷害性療法へのがん細胞の感受性を増加させるように整えられたNSEアクチベーター剤の投与(ここでNSEアクチベーター剤は、ATMイントロン28内のスプライシング調節モチーフへ結合することによって、ATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させるように整えられる)と、放射線療法又は化学療法のような細胞傷害性療法で被験者を治療することを含む、被験者におけるがんの治療又は予防の方法が提供される。
【0066】
[0097] 化学療法は、2本鎖DNA切断を誘発する治療薬剤を含み得る。当業者は、2本鎖DNA切断を誘発することが可能である数種の化学療法剤/治療薬剤があることを理解されよう。1つの態様では、化学療法剤は、ブレオマイシンを含み得る。
【0067】
[0098] 成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させることは、機能性ATMタンパク質発現の減少を提供する場合がある。
[0099] 放射線療法又は化学療法は、該薬剤の投与後であってよい。放射線療法又は化学療法は、該薬剤の投与から1日以上後であってよい。放射線療法又は化学療法は、該薬剤の投与から1週以上後であってよい。
【0068】
[0100] 1つの態様では、シュードエクソンは、配列tcatcgaatacttttggaaataagを含む。
[0101] 本発明の別の側面によれば、放射線療法のようなDNA傷害剤による細胞傷害性療法への細胞の感受性を増加させる方法が提供され、該方法は、ATMイントロン28内のNSE調節モチーフへ結合することによってATM成熟RNA転写産物におけるNSEの包含を増加させるように整えられたNSEアクチベーター剤の投与により、ATMタンパク質発現を低下させることを含む。
【0069】
[0102] 1つの態様では、該細胞はがん性細胞である。別の態様では、該細胞は前がん性細胞である。
[0103] 本発明の別の側面によれば、被験者、細胞、又は組織において機能性ATM発現を増減させる方法が提供され、該方法は、本明細書に記載のNSEアクチベーター剤及び/又はNSEリプレッサー剤を投与することを含む。
【0070】
ナンセンス変異依存mRNA分解機構
[0104] ナンセンス変異依存mRNA分解機構(NMD)は、すべての真核生物に存在する監視経路である。その主たる機能は、未熟な終止コドンを含有するmRNA転写産物を消失させることによって遺伝子発現におけるエラーを抑えることである。NMDは、未熟な終止コドンのある転写産物だけでなく、多くの内因性遺伝子より発現される広範囲のmRNAアイソフォームを標的とするので、NMDが細胞内の定常状態のRNAレベルの微調整と粗調整をともに推進する主要制御因子であることを示唆する。
【0071】
[0105] ナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)は、成熟RNA転写産物に含まれる場合にNMD経路を活性化するエクソン又はシュードエクソンである。成熟転写産物におけるNSEの包含は、遺伝子発現を下方制御する。
【0072】
[0106] クリプティック(又はシュード-スプライス部位)は、真のスプライス部位と同じスプライシング認識配列を有するが、スプライシング反応では使用されない。それらは、ヒトゲノム内の真のスプライス部位より1桁分の数で優るが、通常は、これまでほとんど理解されていない分子機序によって抑制されている。クリプティック5’スプライス部位は、コンセンサスNNN/GUNNNN又はNNN/GCNNNN(ここでNは、任意のヌクレオチドであって、/は、エクソン-イントロンの境界である)を有する。クリプティック3’スプライス部位は、コンセンサスNAG/Nを有する。それらの活性化は、正統のスプライス部位の最適なコンセンサス(即ち、それぞれ、MAG/GURAGUとYAG/G[ここでMはC又はAであり、RはG又はAであり、そしてYはC又はUである])へそれらをより似せる周囲のヌクレオチドによって明確に影響を受ける。
【0073】
[0107] クリプティック(又はシュード)エクソンは、真のエクソンと同じスプライシング認識配列を有するが、スプライシング反応では使用されない。それらは、真のエクソンより1桁分の数で優るが、通常は、これまでほとんど理解されていない分子機序によって抑制されている。
【0074】
[0108] スプライス部位とそれらの制御配列は、例えば、Kralovicova, J. and Vorechovsky, I. (2007) Global control of aberrant splice site activation by auxiliary splicing sequences: evidence for a gradient in exon and intron definition[異常スプライス部位活性化の補助的スプライシング配列による全体制御;エクソン及びイントロンの明確性に勾配があることの証拠]Nucleic acids Res., 35, 6399-6413,(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2095810/pdf/gkm680.pdf) に収載された、公的に利用可能な好適なアルゴリズムを使用して、当業者によって容易に同定することができる。
【0075】
[0109] クリプティックスプライス部位又はスプライシング制御配列は、U2AFのようなRNA結合タンパク質について、NSEのスプライス部位と競合する場合がある。1つの態様では、該薬剤は、クリプティックスプライス部位又はスプライシング制御配列へ結合してRNA結合タンパク質の結合を妨げて、それによってNSEスプライス部位の利用を有利にする場合がある。
【0076】
[0110] 1つの態様では、クリプティックスプライス部位は、NSEの5’又は3’スプライス部位を含まなくてもよい。クリプティックスプライス部位は、NSEの5’スプライス部位の少なくとも10ヌクレオチド上流にあり得る。クリプティックスプライス部
位は、NSEの5’スプライス部位の少なくとも20ヌクレオチド上流にあり得る。クリプティックスプライス部位は、NSEの5’スプライス部位の少なくとも50ヌクレオチド上流にあり得る。クリプティックスプライス部位は、NSEの5’スプライス部位の少なくとも100ヌクレオチド上流にあり得る。クリプティックスプライス部位は、NSEの5’スプライス部位の少なくとも200ヌクレオチド上流にあり得る。
【0077】
[0111] クリプティックスプライス部位は、NSEの3’スプライス部位の少なくとも10ヌクレオチド下流にあり得る。クリプティックスプライス部位は、NSEの3’スプライス部位の少なくとも20ヌクレオチド下流にあり得る。クリプティックスプライス部位は、NSEの3’スプライス部位の少なくとも50ヌクレオチド下流にあり得る。クリプティックスプライス部位は、NSEの3’スプライス部位の少なくとも100ヌクレオチド下流にあり得る。クリプティックスプライス部位は、NSEの3’スプライス部位の少なくとも200ヌクレオチド下流にあり得る。
【0078】
NSEリプレッサー剤とNSEアクチベーター剤
[0112] NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤は、ポリ核酸ポリマーを含み得る。1つの態様では、NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤は、SSO(スプライススイッチングオリゴヌクレオチド)である。
【0079】
[0113] NSEリプレッサー剤及び/又はNSEアクチベーター剤がポリ核酸ポリマーを含む態様では、他に示さなければ、以下の陳述がNSEリプレッサー剤及びNSEアクチベーター剤へ等しく適用され得る。ポリ核酸ポリマーは、約50ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約45ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約40ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約35ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約30ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約24ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約25ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約20ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約19ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約18ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約17ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約16ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約15ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約14ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約13ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約12ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約11ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約10ヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約10~約50のヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約10~約45のヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約10~約40のヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約10~約35のヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約10~約30のヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約10~約25のヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約10~約20のヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約15~約25のヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約15~約30のヌクレオチドの長さであり得る。ポリ核酸ポリマーは、約12~約30のヌクレオチドの長さであり得る。
【0080】
[0114] ポリ核酸ポリマーの配列は、部分的にプロセシングされたmRNA転写産物の標的配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%相補的であり得る。ポリ核酸ポリマーの配列は、そのプレmRNA転写産物の標的配列に対して100%相補的であり得る。
【0081】
[0115] ポリ核酸ポリマーの配列は、プレmRNA転写産物の標的配列に対して4以下のミスマッチを有し得る。ポリ核酸ポリマーの配列は、プレmRNA転写産物の標的配列に対して3以下のミスマッチを有し得る。ポリ核酸ポリマーの配列は、プレmRNA転写産物の標的配列に対して2以下のミスマッチを有し得る。ポリ核酸ポリマーの配列は、プレmRNA転写産物の標的配列に対して1以下のミスマッチを有し得る。
【0082】
[0116] ポリ核酸ポリマーは、プレmRNA転写産物の標的配列へ特異的にハイブリダイズし得る。その特異性は、プレmRNA転写産物の標的配列に対するポリ核酸ポリマーの少なくとも91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、又は100%の配列相補性であり得る。ハイブリダイゼーションは、高ストリンジェントハイブリダイゼーション条件下であり得る。
【0083】
[0117] ポリ核酸ポリマーは、表2又は
図20に例解される配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性がある配列を有し得る。ポリ核酸ポリマーは、表2又は
図20に例解される配列に対して100%の配列同一性がある配列を有し得る。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、表2に例解される配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性がある配列を有し得る。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、表2に例解される配列に対して100%の配列同一性がある配列を有し得る。
【0084】
[0118] いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも50%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも60%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも70%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも80%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも85%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも90%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも91%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも92%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも93%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも94%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも95%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも96%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも97%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも98%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも99%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも99.5%の配列同一性がある配列を有する。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して100%の配列同一性がある配列を有する。
【0085】
[0119] いくつかの態様では、ポリ核酸ポリマーが転移因子の内部、転移因子の上流、又は転移因子の下流にあるモチーフへハイブリダイズする。いくつかの事例では、転移因子は、Alu、MER51、UC、又はL4Cである。いくつかの事例では、転移因子は、Alu(例えばAlu-又はAlu+)又はMER51である。いくつかの事例では、転移因子は、Alu(例えばAlu-又はAlu+)である。他の事例では、転移因子は、MER51である。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、Alu(例えばAlu-又はAlu+)内部の標的モチーフへハイブリダイズする。他の事例では、ポリ核酸ポリマーは、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性がある配列を有する。
【0086】
[0120] いくつかの態様では、ポリ核酸ポリマーは、Alu(例えばAlu-又はAlu+)の上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、Aluの上流にある標的モチーフへハイブリダイズする。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800塩基、又はそれ以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約5以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約10以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約20以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約30以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約40以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約50以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約80以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約100以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約150以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約200以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約300以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約500以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約800以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性がある配列を有する。
【0087】
[0121] いくつかの態様では、ポリ核酸ポリマーは、Alu(例えばAlu-又はAlu+)の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800塩基、又はそれ以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約5以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約10以上
の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約20以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約30以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約40以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約50以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約80以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約100以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約150以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約200以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約300以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約500以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、Aluの約800以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性がある配列を有する。
【0088】
[0122] いくつかの態様では、ポリ核酸ポリマーは、MER51の上流又は下流にある標的モチーフへハイブリダイズする。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、MER51の上流にある標的モチーフへハイブリダイズする。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800塩基、又はそれ以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約5以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約10以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約20以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約30以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約40以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約50以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約80以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約100以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約150以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約200以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約300以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約500以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約800以上の塩基上流にある。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性がある配列を有する。
【0089】
いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、MER51の下流にある標的モチーフへハイブリダイズする。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、180、200、250、300、350、400、450、500、600、700、800塩基、又はそれ以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約5以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約10以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約20以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約30以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約40以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約50以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約80以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約100以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約150以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約200以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約300以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約500以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、標的モチーフは、MER51の約800以上の塩基下流にある。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーは、配列番号18~52より選択される配列に対して少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%の配列同一性がある配列を有する。
【0090】
[0123] ポリ核酸ポリマー配列への言及がなされる場合、当業者は、標的配列へハイブリダイズする能力が維持されるならば、あるいは(その置換が標的配列内である場合は)標的配列として認識される能力が維持されるならば、その配列において、1以上の置換が許容され得て、2つの置換が許容されてもよいことが理解されよう。配列同一性への参照は、標準/デフォルト変数を使用する、BLAST配列アライメント(www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)によって決定され得る。例えば、配列は、99%の同一性を有して、それでも本発明に従って機能する場合がある。他の態様では、配列は、98%の同一性を有して、それでも本発明に従って機能する場合がある。別の態様では、配列は、95%の同一性を有して、それでも本発明に従って機能する場合がある。
【0091】
[0124] SSOのようなポリ核酸ポリマーは、RNA又はDNAを含み得る。SSOのようなポリ核酸ポリマーは、RNAを含み得る。SSOのようなポリ核酸ポリマーは、DNA又はRNAと同等の相補性を有する、天然又は合成又は人工のヌクレオチド類似体又は塩基を含み得る。SSOのようなポリ核酸ポリマーは、DNA、RNA、及び/又はヌクレオチド類似体の組合せを含み得る。ヌクレオチド類似体は、PNA又はLNAを含み得る。別の態様では、SSOのような核酸は、PMOを含み得るか又はそれからなり得る。
【0092】
[0125] いくつかの事例では、合成又は人工のヌクレオチド類似体又は塩基は、リボース部分、リン酸エステル部分、ヌクレオシド部分、又はこれらの組合せの1以上における修飾を含むことができる。例えば、ヌクレオチド塩基は、アデニン、グアニン、シトシン、チミン、及びウラシルのような、どの天然に存在する非修飾ヌクレオチド塩基であっても、標的プレmRNA状に存在する塩基と水素結合することが可能であるように非修飾ヌクレオチド塩基に十分類似している、どの合成又は修飾塩基でもよい。修飾ヌクレオチド塩基の例には、限定されるものではないが、ヒポキサンチン、キサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、及び5-ヒドロキシメトイルシトシンが含まれる。
【0093】
[0126] 時には、本明細書に記載されるポリ核酸ポリマーは、オリゴマーの諸成分を連結させる骨格構造も含み得る。「骨格構造」及び「オリゴマー連結」という用語は、互換的に使用し得て、ポリ核酸ポリマーのモノマー間の連結を意味する。天然に存在するオリゴヌクレオチドにおいて、骨格は、オリゴマーの糖部分を連結する3’-5’ホスホジエステル結合を含む。本明細書に記載されるポリ核酸ポリマーの骨格構造又はオリゴマー連結には、(限定されるものではないが)ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホロセレノエート、ホスホロジセレノエート、ホスホロアニロチオエート、ホスホロアニラデート、ホスホロアミデート、等が含まれ得る。例えば、LaPlanche et al., Nucleic acids Res. 14:9081 (1986); Stec et al., J. Am. Chem. Soc. 106:6077 (1984), Stein et al., Nucleic acids Res. 16:3209 (1988), Zon et al., Anti Cancer Drug Design 6:539 (1991); Zon et al., Oligonucleotides and Analogues: A Practical Approach [オリゴヌクレオチドと類似体:実践アプローチ] pp.87-108 (F.Eckstein, Ed., Oxford University Press, Oxford England (1991)); Stec et al., 米国特許第5,151,510号;Uhlmann an Peyman, Chemical Reviews 90:543 (1990) を参照のこと。
【0094】
[0127] 複数の態様では、ポリ核酸ポリマー骨格のリン-ヌクレオチド間連結のそれぞれでの立体化学は、ランダムである。複数の態様では、ポリ核酸ポリマー骨格のリン-ヌクレオチド間連結のそれぞれでの立体化学は、制御されていて、ランダムではない。例えば、参照によって本明細書に取り込まれる、米国特許出願公開公報番号:2014/0194610「Methods for the Synthesis of Functionalized Nucleic Acids(機能化核酸の合成法)」は、核酸オリゴマー内の各リン原子でのキラリティーの掌性を独立的に選択するための方法について記載する。複数の態様では、本明細書に記載されるポリ核酸ポリマーが、ランダムではないリン-ヌクレオチド間連結を有するポリ核酸ポリマーを含む。複数の態様では、本発明の方法に使用される組成物が、純粋なジアステレオ異性のポリ核酸ポリマーを含む。複数の態様では、本発明の方法に使用される組成物が、少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、約100%、約90%~約100%、約91%~約100%、約92%~約100%、約93%~約100%、約94%~約100%、約95%~約100%、約96%~約100%、約97%~約100%、約98%~約100%、又は約99%~約100%のジアステレオマー純度を有するポリ核酸ポリマーを含む。
【0095】
[0128] 複数の態様では、ポリ核酸ポリマーは、そのリン-ヌクレオチド間連結でのRp及びSp配置のノンランダム混合物を有する。例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチドでは、良好な活性とヌクレアーゼ安定性の間で均衡を達成するために、RpとSpの混合が求められる場合がある(参照により本明細書に組み込まれる、Wan, et al., 2014「Synthesis, biophysical properties and biological activity of second generation antisense oligonucleotides containing chiral phosphorothioate linkages(キラルホスホロチオエート連結を含有する第2世代アンチセンスオリゴヌクレオチドの合成、生物物理学特性、及び生体活性)」 Nucleic Acids Research 42(22): 13456-13468)。複数の態様では、本明細書に記載されるポリ核酸ポリマーは、約5~100%のRp、少なくとも約5%のRp、少なくとも約10%のRp、少なくとも約15%のRp、少なくとも約20%のRp、少なくとも約25%のRp、少なくとも約30%のRp、少なくとも約35%のRp、少なくとも約40%のRp、少なくとも約45%のRp、少なくとも約50%のRp、少なくとも約55%のRp、少なくとも約60%のRp、少なくとも約65%のRp、少なくとも約70%のRp、少なくとも約75%のRp、少なくとも約80%のRp、少なくとも約85%のRp、少なくとも約90%のRp、又は少なくとも約95%のRpを、残るSpとともに含むか、又は約100%のRpを含む。複数の態様では、本明細書に記載されるポリ核酸ポリマーは、約10%~約100%のRp、約15%~約100%のRp、約20%~約100%のRp、約25%~約100%のRp、約30%~約100%のRp、約35%~約100%のRp、約40%~約100%のRp、約45%~約100%のRp、約50%~約100%のRp、約55%~約100%のRp、約60%~約100%のRp、約65%~約100%のRp、約70%~約100%のRp、約75%~約100%のRp、約80%~約100%のRp、約85%~約100%のRp、約90%~約100%のRp、又は約95%~約100%のRp、約20%~約80%のRp、約25%~約75%のRp、約30%~約70%のRp、約40%~約60%のRp、又は約45%~約55%のRpを、残るSpとともに含む。
【0096】
[0129] 複数の態様では、本明細書に記載されるポリ核酸ポリマーは、約5~100%のSp、少なくとも約5%のSp、少なくとも約10%のSp、少なくとも約15%のS
p、少なくとも約20%のSp、少なくとも約25%のSp、少なくとも約30%のSp、少なくとも約35%のSp、少なくとも約40%のSp、少なくとも約45%のSp、少なくとも約50%のSp、少なくとも約55%のSp、少なくとも約60%のSp、少なくとも約65%のSp、少なくとも約70%のSp、少なくとも約75%のSp、少なくとも約80%のSp、少なくとも約85%のSp、少なくとも約90%のSp、又は少なくとも約95%のSpを、残るRpとともに含むか、又は約100%のSpを含む。複数の態様では、本明細書に記載されるポリ核酸ポリマーは、約10%~約100%のSp、約15%~約100%のSp、約20%~約100%のSp、約25%~約100%のSp、約30%~約100%のSp、約35%~約100%のSp、約40%~約100%のSp、約45%~約100%のSp、約50%~約100%のSp、約55%~約100%のSp、約60%~約100%のSp、約65%~約100%のSp、約70%~約100%のSp、約75%~約100%のSp、約80%~約100%のSp、約85%~約100%のSp、約90%~約100%のSp、又は約95%~約100%のSp、約20%~約80%のSp、約25%~約75%のSp、約30%~約70%のSp、約40%~約60%のSp、又は約45%~約55%のSpを、残るRpとともに含む。
【0097】
[0130] ヌクレオチド類似体又は人工ヌクレオチド塩基は、リボース部分の2’ヒドロキシル基に修飾がある核酸を含み得る。この修飾は、2’-O-メチル修飾又は2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)修飾であり得る。2’-O-メチル修飾は、リボース部分の2’ヒドロキシル基へメチル基を付加し得て、一方2’O-メトキシエチル修飾は、リボース部分の2’ヒドロキシル基へメトキシエチル基を付加し得る。アデノシン分子の2’-O-メチル修飾とウリジンの2’O-メトキシエチル修飾の例示の化学構造を下記に図示する。
【0098】
【0099】
[0131] 2’ヒドロキシル基での追加の修飾には、2’-O-アミノプロピル糖コンホメーションを含めることができて、これは、アミン基を2’酸素へ結合するプロピルリンカーを含む、延長アミン基を含むことができる。この修飾は、糖1つに付きこのアミン基からの1つの陽電荷を導入することによって、リン酸エステルに由来するオリゴヌクレオチド分子全体の陰電荷を中和することができて、それによってその双性イオン特性による細胞取込み特性を改善することができる。2’-O-アミノプロピルヌクレオシドホスホロアミダイトの例示の化学構造を下記に図示する。
【0100】
【0101】
[0132] 2’ヒドロキシル基での別の修飾には、4’リボース位も含め得る、ロックされた(locked)か又は架橋されたリボースコンホメーション(例、ロック核酸又はLNA)を含めることができる。この修飾において、2’炭素で結合した酸素分子は、メチレン基によって4’炭素へ連結して、それによって2’-C,4’-C-オキシ-メチレン連結性の2環式リボヌクレオチドモノマーを形成することができる。LNAの化学構造の例示の描図を下記に図示する。左方に示した描図は、LNAモノマーの化学連結性を強調する。右方に示した描図では、LNAモノマーのフラノース環のロックされた3’-エンド(3E)コンホメーションを強調する。
【0102】
【0103】
[0133] 2’ヒドロキシル基でのさらなる修飾は、糖コンホメーションをC3’-エンド糖パッカリング(puckering)コンホメーションの中へロックする、例えば2’-4’
-エチレン-架橋型核酸のようなエチレン核酸(ENA)を含み得る。ENAは、LNAも含む、修飾された核酸の架橋型核酸群の一部である。ENAと架橋型核酸の例示の化学構造を下記に図示する。
【0104】
【0105】
[0134] 2’ヒドロキシル基でのなお他の修飾には、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、又は2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)を含めることができる。
【0106】
[0135] ヌクレオチド類似体は、モルホリノ類、ペプチド核酸(PNA)、メチルホスホネートヌクレオチド、チオールホスホネートヌクレオチド、2’-フルオロN3-P5’-ホスホロアミダイト、1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA)、又はこれらの組合せをさらに含み得る。モルホリノ又はホスホロジアミデートモルホリノオリゴ(PMO)は、その構造が、通常の糖及びリン酸エステルの構造からの逸脱によって天然の核酸構造を模倣する合成分子を含む。また、5員リボース環は、4個の炭素、1個の窒素、及び1個の酸素を含有する6員モルホリノ環で置換し得る。リボースモノマーは、リン酸エステル基の代わりにホスホロジアミデート基によって連結することができる。これらの骨格改変は、すべての陽電荷と陰電荷を除去して、モルホリノ類を、荷電性オリゴヌクレオチドによって使用されるような細胞送達剤の手助け無しに細胞膜を横断することができる中性分子にすることを可能にする。
【0107】
【0108】
[0136] ペプチド核酸(PNA)は、糖環もリン酸エステル連結も含有しない。その代わり、塩基は、オリゴグリシン様分子に付いて、それによって適切に整えられるので、骨格電荷を消失させることができる。
【0109】
【0110】
[0137] リン酸エステル骨格の修飾は、メチルホスホネートヌクレオチドのようなメチル又はチオール修飾も含み得る。例示のチオールホスホネートヌクレオチド(左)とチルホスホネートヌクレオチド(右)を下記に図示する。
【0111】
【0112】
[0138] さらに、例示の2’-フルオロN3-P5’-ホスホロアミダイトを下記のように図示する:
【0113】
【0114】
[0139] さらに、例示のヘキシトール核酸(又は1’,5’-アンヒドロヘキシトール核酸(HNA))を下記のように図示する:
【0115】
【0116】
[0140] リボース部分、リン酸エステル骨格、及びヌクレオシドの修飾に加えて、ヌクレオチド類似体は、例えば、3’又は5’末端でも修飾することができる。例えば、3’末端には、3’カチオン基を含めることができる、又は3’末端のヌクレオシドを3’-3’連結で逆にすることができる。別の代替態様では、3’末端は、アミノアルキル基(例、3’C5-アミノアルキルdT)でブロックすることができる。5’末端は、アミノアルキル基(例、5’-O-アルキルアミノ置換基)でブロックすることができる。他の5’コンジュゲートは、5’-3’エクソヌクレアーゼによる切断を阻害することができる。他の3’コンジュゲートは、3’-5’エクソヌクレアーゼによる切断を阻害することができる。
【0117】
[0141] 他に断らなければ、1本鎖核酸(例、プレmRNA転写産物、オリゴヌクレオチド、SSO、等)配列の左端は、5’端であって、1本鎖又は2本鎖の核酸配列の左手方向は、5’方向と呼ばれる。同様に、核酸配列(1本鎖又は2本鎖)の右手端又は方向は、3’端又は3’方向である。一般に、核酸内の基準点に対して5’にある領域又は配列は、「上流」と言及されて、核酸内の基準点に対して5’にある領域又は配列は、「下流」と言及される。一般に、mRNAの5’方向又は5’端は、開始又は出発コドンが位置する所であって、一方3’端又は3’方向は、終止コドンが位置する所である。いくつかの側面では、核酸内の基準点の上流にあるヌクレオチドが負数で指定される場合がある一方、一方核酸内の基準点の下流にあるヌクレオチドが正数で指定される場合がある。例えば、基準点(例、mRNA内のエクソン-エクソン連結部)が「ゼロ」位と指定される場合があると、その基準点のすぐ隣で上流にあるヌクレオチドは、「マイナス1」例えば「-1」と指定され、その基準点のすぐ隣で下流にあるヌクレオチドは、「プラス1」例えば「+1」と指定される。
【0118】
[0142] いくつかの事例では、本明細書に記載される人工ヌクレオチド類似体の1以上が、天然のポリ核酸ポリマーと比べた場合、例えば、RNアーゼHのようなリボヌクレアーゼ、DNアーゼのようなデオキシリボヌクレアーゼ、又は5’-3’エクソヌクレアーゼ及び3’-5’エクソヌクレアーゼのようなエクソヌクレアーゼといったヌクレアーゼに対して抵抗性である。いくつかの事例では、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、又は2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)修飾された、LNA、ENA、PNA、HNA、モルホリノ、メチルホスホネートヌクレオチド、チオールホスホネートヌクレオチド、2’-フルオロN3-P5’-ホスホロアミダイト、又はこれらの組合せを含む人工ヌクレオチド類似体が、例えば、RNアーゼHのようなリボヌクレアーゼ、DNアーゼのようなデオキシリボヌクレアーゼ、又は5’-3’エクソヌクレアーゼ及び3’-5’エクソヌクレアーゼのようなエクソヌクレアーゼといったヌクレアーゼに対して抵抗性である。2’-O-メチル修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。2’O-メトキシエチル(2’-O-MOE)修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。2’-O-アミノプロピル修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。2’-デオキシ修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。T-デオキシ-2’-フルオロ修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。LNA修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。ENA修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。HNA修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。モルホリノ類は、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。PNAは、ヌクレアーゼに対して抵抗し得る(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)。メチルホスホネートヌクレオチド修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。チオールホスホネートヌクレオチド修飾されたポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。2’-フルオロN3-P5’-ホスホロアミダイトを含むポリ核酸ポリマーは、ヌクレアーゼ抵抗性(例えば、RNアーゼH、DNアーゼ、5’-3’エクソヌクレアーゼ又は3’-5’エクソヌクレアーゼ抵抗性)であり得る。
【0119】
[0143] いくつかの事例では、本明細書に記載される人工ヌクレオチド類似体の1以上が、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する。2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、又は2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)修飾された、LNA、ENA、PNA、HNA、モルホリノ、メチルホスホネートヌクレオチド、チオールホスホネートヌクレオチド、又は2’-フルオロN3-P5’-ホスホロアミダイトを含む人工ヌクレオチド類似体の1以上は、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。2’-O-メチル修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。2’-O-アミノプロピル修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。2’-デオキシ修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。T-デオキシ-2’-フルオロ修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。LNA修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。ENA修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。PNA修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。HNA修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。モルホリノ修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。メチルホスホネートヌクレオチド修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。チオールホスホネートヌクレオチド修飾されたポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。2’-フルオロN3-P5’-ホスホロアミダイトを含むポリ核酸ポリマーは、同等の天然ポリ核酸ポリマーに比して、そのmRNA標的に対して増加した結合親和性を有する可能性がある。増加した親和性は、より低いKd、より高い融点(Tm)、又はこれらの組合せで例証することができる。
【0120】
[0144] 追加の事例では、本明細書に記載されるポリ核酸ポリマーを修飾して、その安定性を高めてよい。ポリ核酸ポリマーがRNAである態様では、ポリ核酸ポリマーは、その安定性を高めるように修飾し得る。ポリ核酸ポリマーは、上記に記載した修飾の1以上によって、その安定性を高めるように修飾し得る。ポリ核酸ポリマーは、2’ヒドロキシル位で、2’-O-メチル、2’-O-メトキシエチル(2’-O-MOE)、2’-O
-アミノプロピル、2’-デオキシ、T-デオキシ-2’-フルオロ、2’-O-アミノプロピル(2’-O-AP)、2’-O-ジメチルアミノエチル(2’-O-DMAOE)、2’-O-ジメチルアミノプロピル(2’-O-DMAP)、T-O-ジメチルアミノエチルオキシエチル(2’-O-DMAEOE)、又は2’-O-N-メチルアセトアミド(2’-O-NMA)修飾によるか又はロックされたか又は架橋型のリボースコンホメーション(例、LNA又はENA)によるように修飾し得る。ポリ核酸ポリマーは、2’-O-メチル及び/又は2’-O-メトキシエチルリボースによって修飾し得る。ポリ核酸ポリマーは、その安定性を高めるために、モルホリノ類、PNA、HNA、メチルホスホネートヌクレオチド、チオールホスホネートヌクレオチド、又は2’-フルオロN3-P5’-ホスホロアミダイトも含めてよい。当業者には、送達のために安定性を高めるのに適したRNAへの修飾が明らかであろう。
【0121】
[0145] 本明細書に記載されるポリ核酸ポリマーは、当該技術分野で知られた手順を使用する、化学合成及び/又は酵素ライゲーション反応を使用して、構築することができる。例えば、天然に存在するヌクレオチド、又は分子の生物学的安定性を高めるか又はポリ核酸ポリマーと標的核酸の間で形成される2重鎖の物理学的安定性を高めるように設計された、様々に修飾されたヌクレオチドを使用して、ポリ核酸ポリマーを化学的に合成することができる。例示の方法には、US5,142,047;US5,185,444;WO2009099942;又はEP1579015に記載されるものを含めることができる。追加の例示の方法には、Griffey et al.,「2’-O-aminopropyl ribonucleotides: a zwitterionic modification that enhances the exonuclease resistance and biological activity of antisense oligonucleotides(2’-O-アミノプロピルリボヌクレオチド:アンチセンスオリゴヌクレオチドのエクソヌクレアーゼ抵抗性と生物学的活性を高める双性イオン修飾)」J. Med. Chem. 39(26): 5100-5109 (1997));Obika, et al.「Synthesis of 2’-O, 4’-C-methyleneuridine and -cytidine. Novel bicyclic nucleosides
having affixed C3, -endo suger puckering(2’-O,4’-C-メチレンウリジン
及びシチジンの合成。固定されたC3,エンド糖パッカリングを有する新規2環式ヌクレオシド)」Tetrahedron Letters 38(50): 8735 (1997);Koizumi, M.「ENA oligonucleotides as therapeutics(治療薬としてのENAオリゴヌクレオチド)」Current opinion in molecular therapeutics 8(2): 144-149 (2006);及び Abramova et al.,「Novel oligonucleotide analogues based on morpholino nucleoside subunits-antisense technologies: new chemical possibilities(モルホリノヌクレオシドサブユニット-アンチセ
ンス技術に基づく新規オリゴヌクレオチド類似体:新しい化学の可能性)」Indian Journal of Chemistry 48B: 1721-1726 (2009) に記載されるものを含めることができる。あるいは、ポリ核酸ポリマーは、あるポリ核酸ポリマーがアンチセンス配向でその中へサブクローン化された(即ち、挿入されたポリ核酸ポリマーから転写されるRNAが目的の標的ポリ核酸ポリマーに対してアンチセンス配向になる)発現ベクターを使用して生物学的に産生することができる。
【0122】
[0146] ポリ核酸ポリマーは、別のアンチセンス分子のようなどの核酸分子へも、ペプチドへも、又はポリ核酸ポリマーの送達を促進する、及び/又は該核酸を特定の組織、細胞種、又は細胞の発生期へ標的指向させる他の化学品へも結合し得る。ポリ核酸ポリマーは、タンパク質又はRNAへ結合し得る。ポリ核酸ポリマーへ繋がったタンパク質は、スプライシングとイントロン除去を増強する、阻害する、又は調節するスプライシング因子を含み得る。ポリ核酸ポリマーへ繋がったRNAは、スプライシングとイントロン除去を増強する、阻害する、又は調節する、アプタマー又はあらゆる構造を含み得る。ポリ核酸ポリマーは、単離された核酸であり得る。
【0123】
[0147] ポリ核酸ポリマーは、該ポリ核酸ポリマーを細胞へ送達するのに適した送達ビヒクルへコンジュゲートさせても、それによって結合してもよい。該細胞は、特定の細胞
種、又は特定の発生期であり得る。送達ビヒクルは、部位特異的、組織特異的、細胞特異的、又は発生期特異的な送達が可能であり得る。例えば、送達ビヒクルは、細胞特異的なウイルス粒子又はその成分であっても、あるいは、送達ビヒクルは、細胞特異的な抗体粒子又はその成分であってもよい。ポリ核酸ポリマーは、膵臓中のβ細胞への送達に標的指向され得る。ポリ核酸ポリマーは、胸腺細胞への送達に標的指向され得る。ポリ核酸ポリマーは、悪性細胞への送達に標的指向され得る。ポリ核酸ポリマーは、前悪性細胞(近未来のうちに、プレ白血病や骨髄異形成症候群のような明らかに悪性の表現型、又は組織病理学的に定義される前がん病変又は病態へ発達することが知られている)への送達に標的指向され得る。
【0124】
[0148] ポリ核酸ポリマーは、ナノ粒子ベースの送達ビヒクルへコンジュゲートさせても、それによって結合してもよい。ナノ粒子は、金属ナノ粒子、例えば、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオビウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金、ガドリニウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズ、タリウム、鉛、ビスマス、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ホウ素、ケイ素、リン、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、及びこれらの組合せ、合金、又は酸化物のナノ粒子であり得る。ナノ粒子は、ポリマー材料より製造される場合もある。例示のポリマー材料には、限定されるものではないが、ポリ(エチレンイミン)(PEI)、ポリ(アルキルシアノアクリレート)、ポリ(アミドアミン)デンドリマー(PAMAM)、ポリ(ε-カプロラクトン)(PCL)、乳酸-グリコール酸共重合体(PLGA)、又はポリエステル(ポリ(乳酸)(PLA)が含まれる。ナノ粒子は、機能性エレメントの付着用の分子でさらにコートされる場合もある。いくつかの事例では、コーティング剤は、コンドロイチン硫酸、硫酸デキストラン、カルボキシメチルデキストラン、アルギン酸、ペクチン、カラゲナン、フコイダン、アガロペクチン、ポルフィラン、カラヤゴム、ゲランゴム、キサンタンゴム、ヒアルロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、キチン(又はキトサン)、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、リゾチーム、シトクロムC、リボヌクレアーゼ、トリプシノゲン、キモトリプシノゲン、α-キモトリプシン、ポリリジン、ポリアルギニン、ヒストン、プロタミン、グラフェン、オバルブミン、又はデキストリン若しくはシクロデキストリンを含む。ナノ粒子には、コア-シェルナノ粒子にあるように、コア、又はコア及びシェルが含まれる場合がある。ナノ粒子は、約500nm、400nm、300nm、200nm、又は100nm未満の少なくとも1つの寸法を有することもできる。
【0125】
[0149] いくつかの態様では、ポリ核酸ポリマーが、目的の部位(例えば、悪性組織部位、又はタンパク質発現が脱制御されている細胞)への送達のために、ナノ粒子ベースの送達ビヒクルとともに製剤化され得る。いくつかの事例では、ポリ核酸ポリマーが、血液-脳関門(BBB)を通過する輸送を促進し、及び/又は可能にするために、ナノ粒子ベースの送達ビヒクルとともに製剤化され得る。
【0126】
[0150] 脳-血液関門を通過する浸透又は輸送を促進することが当該技術分野で知られている物質(例えばトランスフェリン受容体に対する抗体)へポリ核酸ポリマーを結合させる場合もある。いくつかの態様では、ポリ核酸ポリマーは、例えば、該化合物をより有効にするか又は脳-血液関門を通過する輸送を高めるために、ウイルスベクターと連結される。いくつかの態様では、糖(例えば、メソエリスリトール、キシリトール、D(+)ガラクトース、D(+)ラクトース、D(+)キシロース、ズルシトール、ミオイノシトール、L(-)フルクトース、D(-)マンニトール、D(+)グルコース、D(+)アラビノース、D(-)アラビノース、セロビオース、D(+)マルトース、D(+)ラフィノース、L(+)ラムノース、D(+)メリビオース、D(-)リボース、アドニトール、D(+)アラビトール、L(-)アラビトール、D(+)フコース、L(-)フコース、D(-)リキソース、L(+)リキソース、及びL(-)リキソース)又はアミノ酸(例えば、グルタミン、リジン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、チロシン、バリン、及びタウリン)の注入によって浸透性の血液-脳関門破壊が支援される。血液-脳関門浸透を高めるための方法及び材料については、米国特許第4,866,042号、米国特許第6,294,520号、及び米国特許第6,936,589号に記載されており、それぞれ本明細書に援用される。
【0127】
[0151] 1つの態様では、ポリ核酸ポリマーは、薬物のような化学分子(例えば非ペプチド又は核酸ベースの分子)へ結合し得る。該薬物は、低分子(例えば900Da未満の分子量を有する)であり得る。
【0128】
[0152] 本発明の1つの態様では、送達ビヒクルは、細胞浸透ペプチド(CPP)を含み得る。例えば、ポリ核酸ポリマーは、CPPと結合又は複合化し得る。当業者は、いかなる好適なCPPもポリ核酸ポリマーとコンジュゲートして、該ポリ核酸ポリマーの細胞への及び/又は細胞内への送達に役立ち得ることを理解されよう。このようなCPPは、本明細書に援用される、Boisguerin et al., Advanced Drug Delivery Reviews, (2015)によって記載される、いかなる好適なCPP技術でもよい。ポリ核酸ポリマーへのコンジュゲーションに適した送達ビヒクルについては、本明細書に援用される、Lochmann et al (European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics, 58(2004), 237-251) にも記載されている。
【0129】
[0153] CPPは、例えば、該ペプチド内の残基の大多数がリジン又はアルギニンである場合、アルギニン及び/又はリジンリッチのペプチドであり得る。CPPは、ポリ-L-リジン(PLL)を含み得る。あるいは、CPPは、ポリアルギニンを含み得る。好適なCPPは、ペネトラチン(Penetratin);R6-ペネトラチン;トランスポータン(Transportan);オリゴ-アルギニン;F-3;B-ペプチド;B-MSP;Pip1、Pip2a、Pip2b、Pip5e、Pip5f、Pip5h、Pip5j;Pip5k、Pip5l、Pip5m、Pip5n、Pip5o、Pip6a、Pip6b、Pip6c、Pip6d、Pip6e、Pip6f、Pip6g、又はPip6hのようなPipペプチド;配列PKKKRKVのペプチド;ペナトラチン(Penatratin);Lys4;SPACE;Tat;Tat-DRBD(dsRNA結合ドメイン);(RXR)4;(RFF)3RXB;(KFF)3K;RgF2;T細胞由来CPP;Pep-3;PEGpep-3;MPG-8;MPG-8-Chol;PepFect6;P5RHH;R15;及びChol-R9;又はこれらの機能性変異体(例えば、Boisguerin et al. Advanced Drug Delivery Reviews (2015) を参照のこと)を含む群より選択され得る。
【0130】
[0154] 1つの態様では、CPPは、Pipペプチドを含むか又はそれから成る。Pipペプチドは、Pip1、Pip2a、Pip2b、Pip5e、Pip5f、Pip5h、Pip5j;Pip5k、Pip5l、Pip5m、Pip5n、Pip5o、Pip6a、Pip6b、Pip6c、Pip6d、Pip6e、Pip6f、Pip6g、及びPip6hを含む群より選択され得る。
【0131】
[0155] 本発明の1つの態様では、送達ビヒクルは、ペプチドベースのナノ粒子(PBN)を含むことができ、複数のCPP(例えば、本明細書で考察した1以上の好適なCPP)が電荷相互作用を介してポリ核酸ポリマーと複合体を形成する。このようなナノ粒子は、約50nm~250nmの大きさであり得る。1つの態様では、ナノ粒子は、約70~200nmの大きさであり得る。別の態様では、ナノ粒子は、約70~100nmの大きさ又は125~200nmの大きさであり得る。
【0132】
[0156] 1つの態様では、ポリ核酸ポリマーは、送達ビヒクルと、例えばイオン結合によって複合化し得る。あるいは、ポリ核酸ポリマーは、送達ビヒクルへ共有結合し得る。コンジュゲーション/結合の方法については、本明細書に援用される、Lochmannら(European Journal of Pharmaceutics and Biopharmaceutics, 58(2004), 237-251)に記載されている。例えば、コンジュゲーション法は、反応基(例えば-NH2又は-SH2)を含有する好適なテザー(tether)をポリ核酸ポリマーへ導入して、合成後に活性中間体としてペプチドのような送達ビヒクルへ付加し、続いて水系媒体においてカップリング反応を行うことを含み得る。代替方法は、単一の固相支持体上でコンジュゲーションを線形モードで行うことを含み得る。
【0133】
[0157] 送達ビヒクルとポリ核酸ポリマーは、チオール-マレイミド連結のように、チオール及び/又はマレイミドで連結し得る。ポリ核酸ポリマーと送達ビヒクルのコンジュゲーションは、コンジュゲートされる各分子上のアジド又は2’-O-プロパルジル官能基とアルキン基の反応のような、クリックケミストリー(click-chemistry)によってよ
い。1つの態様では、送達ビヒクルとポリ核酸ポリマーは、チオエーテル架橋によって連結し得る。別の態様では、送達ビヒクルとポリ核酸ポリマーは、ジスルフィド架橋によって連結し得る。当業者は、ポリ核酸ポリマーと送達ビヒクル(ペプチドのような)のコンジュゲーションに適した連結基又は反応を容易に確認されよう。
【0134】
[0158] 1つの態様では、NSEリプレッサー剤は、配列cuucuaugcagccaaccuguagacu(SSO-NSE3)(配列番号53)のSSO又はその核酸類似体を含み得る。1つの態様では、NSEリプレッサー剤は、配列accuuuuucuucuaugcagccaac(SSO-NSE5)(配列番号54)のSSO又はその核酸類似体を含み得る。当業者は、NSE3(cuucuaugcagccaaccuguagacu)(配列番号53)とNSE5(accuuuuucuucuaugcagccaac)(配列番号54)が配列において重複することに注目されよう。1つの態様では、NSEリプレッサー剤は、この重複配列(即ち、accuuuuucuucuaugcagccaaccuguagacu)(配列番号55)の配列又はその内部にある配列を有するSSOを含み得る。
【0135】
[0159] 1つの態様では、NSEリプレッサー又はNSEアクチベーター剤は、以下を含む群より選択されるいずれか1つのSSOを含むか又はそれから成る:
aacuuaaagguuauaucuc(SSO A2)(配列番号18);
uauaaauacgaauaaaucga(SSO A4)(配列番号19);
caacacgacauaaccaaa(SSO A9)(配列番号21);
aacauuucuauuuaguuaaaagc(SSO A11)(配列番号23);
uuaguauuccuugacuuua(SSO A17)(配列番号26);
gguaugagaacuauagga(SSO A23)(配列番号32);
gguaauaagugucacaaa(SSO A25)(配列番号34);
guaucauacauuagaagg(SSO A26);
gacugguaaauaauaaacauaauuc(SSO B2);
auauauuagagauacaucagcc(SSO B4);
uguggggugaccacagcuu(SSO B11);
uuagagaaucauuuuaaauaagac(SSO AN3);及び
cuguaaaagaaaauaga(PEkr)、又はこれらの組合せ。
【0136】
[0160] 別の態様では、NSEアクチベーター剤は、以下を含む群より選択されるいずれか1つのSSOを含むか又はそれから成る:
aacuuaaagguuauaucuc(SSO A2)(配列番号18);
uauaaauacgaauaaaucga(SSO A4)(配列番号19);
caacacgacauaaccaaa(SSO A9)(配列番号21);
gguaugagaacuauagga(SSO A23)(配列番号32);
gguaauaagugucacaaa(SSO A25)(配列番号34);
guaucauacauuagaagg(SSO A26)(配列番号35);
uguggggugaccacagcuu(SSO B11)(配列番号45);及び
cuguaaaagaaaauaga(PEkr)(配列番号56)、又はこれらの組合せ。
【0137】
[0161] NSEアクチベーター剤は、配列aacuuaaagguuauaucuc(SSO A2)(配列番号18)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEアクチベーター剤は、配列uauaaauacgaauaaaucga(SSO A4)(配列番号19)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEアクチベーター剤は、配列caacacgacauaaccaaa(SSO A9)(配列番号21)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEアクチベーター剤は、配列gguaugagaacuauagga(SSO A23)(配列番号32)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEアクチベーター剤は、配列gguaauaagugucacaaa(SSO A25)(配列番号34)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEアクチベーター剤は、配列guaucauacauuagaagg(SSO A26)(配列番号35)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEアクチベーター剤は、配列uguggggugaccacagcuu(SSO B11)(配列番号45)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。
【0138】
[0162] 1つの態様では、NSEアクチベーター剤は、本明細書に記載されるSSO PEkrを含み得る。1つの態様では、NSEアクチベーター剤は、配列CUGUAAAAGAAAAUAGA(PEkr)(配列番号56)のSSOを含み得る。PEkrは、PEdelとして言及される場合もあって、これらの用語は交換可能であると理解される。
【0139】
[0163] 1つの態様では、NSEリプレッサー剤は、以下を含む群より選択されるいずれか1つのSSOを含むか又はそれから成る:
cuucuaugcagccaaccuguagacu(SSO-NSE3)(配列番号53);
accuuuuucuucuaugcagccaac(SSO-NSE5)(配列番号54);
aacauuucuauuuaguuaaaagc(SSO A11)(配列番号23);
uuaguauuccuugacuuua(SSO A17)(配列番号26);
gacugguaaauaauaaacauaauuc(SSO B2)(配列番号37);
auauauuagagauacaucagcc(SSO B4)(配列番号39);及び
uuagagaaucauuuuaaauaagac(SSO AN3)(配列番号51)、又はこれらの組合せ。
【0140】
[0164] NSEリプレッサー剤は、配列cuucuaugcagccaaccuguagacu(SSO-NSE3)(配列番号53)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEリプレッサー剤は、配列accuuuuucuucuaugcagccaac(SSO-NSE5)(配列番号54)のSSOを含むか又はそれから成る場合があ
る。NSEリプレッサー剤は、配列aacauuucuauuuaguuaaaagc(SSO A11)(配列番号23)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEリプレッサー剤は、配列uuaguauuccuugacuuua(SSO A17)(配列番号26)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEリプレッサー剤は、配列gacugguaaauaauaaacauaauuc(SSO B2)(配列番号37)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEリプレッサー剤は、配列auauauuagagauacaucagcc(SSO B4)(配列番号39)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。NSEリプレッサー剤は、配列uuagagaaucauuuuaaauaagac(SSO AN3)(配列番号51)のSSOを含むか又はそれから成る場合がある。
【0141】
[0165] 1つの態様では、SSOのようなNSEリプレッサー剤は、rs4988000でのグアニン変異体残基へ結合するように整えられ得る。
[0166] 当業者は、本明細書に記載される2種以上のSSOの組合せを、治療のために提供及び/又は使用してよいことを理解されよう。例えば、2、3、4、5種以上のNSEリプレッサー剤の組合せを提供しても、2、3、4、5種以上のNSEアクチベーター剤の組合せを提供してもよい。
【0142】
[0167] 成熟RNAにおけるNSEの包含を低下することへ言及がなされる場合、その抑制は、完全(例えば100%)であっても、一部であってもよい。この低下は、臨床的に有意であり得る。この低下/是正は、治療無しの被験者におけるNSEの包含のレベルに対するものであっても、同様の被験者の集団におけるNSEの包含の量に対するものであってもよい。この抑制/是正は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも10%少ないNSEの包含であってよい。この低下は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも20%少ないNSEの包含であってよい。この低下は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも40%少ないNSEの包含であってよい。この低下は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも50%少ないNSEの包含であってよい。この低下は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも60%少ないNSEの包含であってよい。この低下は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも80%少ないNSEの包含であってよい。この低下は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも90%少ないNSEの包含であってよい。
【0143】
[0168] 活性ATMタンパク質レベルを増加させることへの言及がなされる場合、この増加は、臨床的に有意であり得る。この増加は、治療無しの被験者における活性ATMタンパク質のレベルに対するものであっても、同様の被験者の集団における活性ATMタンパク質の量に対するものであってもよい。この増加は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも10%以上の活性ATMタンパク質であってよい。この増加は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも20%以上の活性ATMタンパク質であってよい。この増加は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも40%以上の活性ATMタンパク質であってよい。この増加は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも50%以上の活性ATMタンパク質であってよい。この増加は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも80%以上の活性ATMタンパク質であってよい。この増加は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも100%以上の活性ATMタンパク質であってよい。この増加は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも200%以上の活性ATMタンパク質であってよい。この増加は、平均的な被験者、又は治療前の被験者に対して少なくとも500%以上の活性ATMタンパク質であってよい。
【0144】
[0169] 活性ATM及び機能性ATMという用語は、本明細書において互換的に使用し
得る。
[0170] 本発明の別の側面によれば、ATM脱制御に関連した病態の治療に対する被験者の応答を予測するための、rs609261遺伝子型決定の使用が提供される。
【0145】
[0171] ATM脱制御に関連した病態は、A-T又はがんを含むことができる。
[0172] 1つの態様では、rs609261シトシン残基の存在は、同じ位置での非シトシン残基に比べて、より高いNSE活性化、DNA2本鎖切断シグナル伝達に対するATMのより非効率な応答、より高いがんリスク、及びより低い生存率に関連する。
【0146】
[0173] 本発明の別の側面によれば、本発明のNSEリプレッサー剤を含む組成物が提供される。
[0174] 本発明の別の側面によれば、本発明のNSEアクチベーター剤を含む組成物が提供される。
【0147】
[0175] 1つの態様では、組成物は、医薬的に許容される製剤である。
[0176] 該組成物は、ポリ核酸ポリマーに加えて、少なくとも1つの他の生理活性分子を含み得る。この生理活性分子は、薬物又はプロドラッグであり得る。この生理活性分子は、核酸又はアミノ酸を含み得る。この生理活性分子は、低分子(例えば900ダルトン未満の分子)を含み得る。
【0148】
[0177] いくつかの態様では、本明細書に記載される医薬製剤は、経腸投与経路、非経口投与経路、又は局所投与経路によって被験者へ投与される。いくつかの事例では、本明細書に記載される医薬製剤は、経腸投与経路によって被験者へ投与される。他の事例では、本明細書に記載される医薬製剤は、非経口投与経路によって被験者へ投与される。追加の事例では、本明細書に記載される医薬製剤は、局所投与経路によって被験者へ投与される。
【0149】
[0178] 例示の投与経路には、限定されるものではないが、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、頭蓋内、脳内、脳室内、髄腔内、又は硝子体内)、経口、鼻腔内、頬内、局所、直腸、経粘膜、又は経皮の投与経路が含まれる。いくつかの事例では、本明細書に記載される医薬組成物は、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、動脈内、頭蓋内、脳内、脳室内、髄腔内、又は硝子体内)投与用に製剤化される。他の事例では、本明細書に記載される医薬組成物は、経口投与用に製剤化される。さらに他の事例では、本明細書に記載される医薬組成物は、鼻腔内投与用に製剤化される。
【0150】
[0179] 本明細書に記載される医薬製剤には、限定されるものではないが、水性液体分散液剤、自己乳化型分散液剤、固体溶液剤、リポソーム分散液剤、エアゾール剤、固体剤形、散剤、即時放出型製剤、制御放出型製剤、速溶解型製剤、錠剤、カプセル剤、丸剤、遅延放出型製剤、延長放出型製剤、パルス放出型製剤、多微粒子製剤、並びに即時及び制御複合放出型製剤が含まれ得る。
【0151】
[0180] 医薬製剤には、医薬品において一般的に使用される賦形剤を含むことができ、本明細書に開示される組成物との適合性と、所望される剤形の放出プロフィール特性に基づいて選択されるべきである、担体又は担体材料が含まれ得る。例示の担体材料には、例えば、結合剤、懸濁剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、滑沢剤、湿潤剤、希釈剤、等が含まれる。医薬的に適合可能な担体材料には、限定されるものではないが、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル類、カゼイン酸ナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン、塩化ナトリウム、リン酸三カル
シウム、リン酸二カリウム、セルロースとセルロースコンジュゲート、糖類、ステアロイルラクチル酸ナトリウム、カラゲナン、モノグリセリド、ジグリセリド、プレゼラチン化デンプン、等が含まれ得る。リポソーム剤には、立体的に安定したリポソーム剤(例えば、1種以上の特殊化脂質を含むリポソーム剤)が含まれ得る。これらの特殊化脂質は、循環存続時間が亢進したリポソーム剤をもたらすことができる。立体的に安定したリポソーム剤は、1種以上の糖脂質を含み得るか、又はポリエチレングリコール(PEG)部分のような1種以上の親水性ポリマーで誘導体化される場合もある。例えば、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed(レミントン:調剤の科学と実践、第19版)」(ペンシルヴェニア州イーストン:Mack Publishing Company, 1995);Hoover, John E.「Remington’s Pharmaceutical Sciences(レミントン製剤科学)」(Mack Publishing Co., ペンシルヴェニア州イーストン、1975);Liberman, H. A. and Lachman, L.(監修)「Pharmaceutical Dosage Forms(医薬剤形)」Marcel Decker, ニューヨーク州ニューヨーク、1980;及び「Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery Systems(医薬剤形と薬物送達システム)」第7版(Lippincott Williams & Wilkins, 1999)
を参照のこと。
【0152】
[0181] 本発明の別の側面によれば、被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法が提供され、該方法は、ヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261の存在を同定し、ここで、非チミン変異体残基rs609261の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして、非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換するように整えられた薬剤を該被験者へ投与する、ことを含む。
【0153】
[0182] 本発明の別の側面によれば、被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法が提供され、該方法は、ヒトゲノムのNSE(ATMイントロン28内のクリプティックエクソン)の3’スプライス部位に対して-3位に位置する非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換する、ことを含む。
【0154】
[0183] 1つの態様では、非チミン変異体残基rs609261を置換することは、非チミン変異体残基rs609261をチミン残基に置換するように整えられた薬剤を被験者へ投与する、ことを含み得る。
【0155】
[0184] 非チミン残基を置換するための薬剤は、rs609261を標的とするように整えられた適正なRNA分子と一緒の、CRISPR-Cas9のようなゲノム編集分子又はその機能性同等物であり得る。
【0156】
[0185] 本発明の別の側面によれば、被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法が提供され、該方法は、そのヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を同定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして、rs4988000でのグアニン変異体残基をアデニンに置換するように整えられた薬剤を該被験者へ投与する、ことを含む。
【0157】
[0186] 本発明の別の側面によれば、被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法が提供され、該方法は、そのヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基をアデニン残基に置換する、ことを含む。
【0158】
[0187] 1つの態様では、rs4988000でのグアニン変異体残基を置換することは、rs4988000でのグアニン変異体残基をアデニン残基に置換するように整えら
れた薬剤を該被験者へ投与することを含み得る。
【0159】
[0188] グアニン残基を置換するための薬剤は、rs4988000を標的とするように整えられた適正なRNA分子と一緒の、CRISPR-Cas9のようなゲノム編集分子又はその機能性同等物であり得る。
【0160】
[0189] 本発明の第1の側面によれば、被験者又は被験者の集団を機能性ATMタンパク質欠損への感受性についてスクリーニングする方法が提供され、該スクリーニングは、ヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定することを含み、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者(又は被験者群)が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性である、ことを示す。
【0161】
[0190] 本発明の別の側面によれば、機能性ATMタンパク質欠損に感受性である被験者又は被験者の集団を治療又は予防のために選択する方法が提供され、該方法は、ヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして、該被験者の機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤で治療するためにそのような被験者を選択する、ことを含む。
【0162】
[0191] 本発明の別の側面によれば、被験者において機能性ATMタンパク質欠損を治療又は予防する方法が提供され、該方法は、ヒトゲノムのrs4988000でのグアニン変異体残基の存在を決定し、ここで、rs4988000でのグアニン変異体残基の存在は、該被験者が機能性ATMタンパク質欠損を有するか又はそれに感受性であることを示し、そして、機能性ATMレベルを増加させるように整えられた薬剤を該被験者へ投与する、ことを含む。
【0163】
[0192] 本発明の方法は、例えばSSOを使用して、グアニン変異体残基をrs4988000で遮断することを含み得る。
[0193] PEは、天然のDNA変異体rs4988000(G/A)を含有し、これもNSE認識に影響を及ぼす(
図4H)。rs4988000で系統的に変異させたC及びTミニ遺伝子のトランスフェクションは、U2AF35欠失細胞及びモック欠失細胞で、稀なA対立遺伝子がそれぞれのプレmRNAでのNSEの包含を減少させることを明らかにした。したがって、グアニン残基をアデニンで置換すると、NSEの包含を減少させ、機能性ATMタンパク質のレベルを増加させるだろう。
【0164】
[0194] 最も高いNSEの包含がもたらされるのは、白色人種において最も頻度が高いハプロタイプ(CG)であって、ハプロタイプ:CA>TG>TA(それぞれrs609261とrs4988000と呼ばれる)がそれに続く。故に、本発明の方法及び組成物は、CGハプロタイプをCA、TG、又はTAへ改変するために組み合わせて(同時的又は連続的に)使用し得る。1つの態様では、本発明の方法及び組成物は、CGハプロタイプをTAへ改変するために使用し得る。1つの態様では、本発明の方法及び組成物は、CAハプロタイプをTG又はTAへ改変するために使用し得る。1つの態様では、本発明の方法及び組成物は、CAハプロタイプをTAへ改変するために使用し得る。1つの態様では、本発明の方法及び組成物は、TGハプロタイプをTAへ改変するために使用し得る。
【0165】
[0195] 本発明の方法及び組成物はまた、被験者においてCGハプロタイプを同定することと、任意選択的に、本発明に従って該患者を治療するか又は選択するために、組み合わせて(同時的又は連続的に)使用し得る。本発明の方法及び組成物はまた、被験者においてCAハプロタイプを同定することと、任意選択的に、本発明に従って該患者を治療す
るか又は選択するために、組み合わせて(同時的又は連続的に)使用し得る。本発明の方法及び組成物はまた、被験者においてTGハプロタイプを同定することと、任意選択的に、本発明に従って該患者を治療するか又は選択するために、組み合わせて(同時的又は連続的に)使用し得る。
【0166】
[0196] 本発明の別の側面によれば、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の調節を改変する方法が提供され、該方法は、スプライソソーム成分についてNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを挿入又は欠失させることを含み、前記調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む。
【0167】
[0197] 本発明の別の側面によれば、タンパク質をコードする遺伝子の成熟RNA転写産物におけるNSEの包含によって調節される機能性タンパク質発現の調節を改変する方法が提供され、該方法は、スプライソソーム成分についてNSEと競合する、NSEの上流又は下流にある1以上のスプライシング調節モチーフを挿入又は欠失させることを含み、前記調節モチーフは、クリプティックスプライス部位又はシュードエクソンを含む。
【0168】
[0198] 1つの態様では、1以上のスプライシング調節モチーフの挿入又は欠失は、ATMイントロン28のゲノムDNA内である。
[0199] 1以上のスプライシング調節モチーフの挿入は、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の低下を引き起こす場合がある。1以上のスプライシング調節モチーフの欠失は、成熟RNA転写産物におけるNSEの包含の増加を引き起こす場合がある。
【0169】
[0200] 1以上のスプライシング調節モチーフの挿入又は欠失は、CRISPR-Cas9のようなゲノム編集技術の使用を含み得る。CRISPR-Cas9は、適正な標的化RNA分子とともに提供され得る。
【0170】
[0201] 本発明に従って治療又はスクリーニングされる被験者又は細胞は、哺乳動物であり得る。1つの態様では、被験者はヒトである。1つの態様では、細胞はヒト細胞である。
【0171】
[0202] 本発明では、本明細書に記載される1以上の方法において使用するためのキット及び製造品が提供される。該キットは、本明細書に記載されるポリ核酸ポリマーの1以上を含有することができる。
【0172】
[0203] 本発明の別の側面によれば、rs609261変異体及び/又はrs4988000変異体を同定するための、1以上のオリゴヌクレオチドプローブを含むキットが提供される。
【0173】
[0204] 当業者は、特徴的な遺伝子配列の有無をプローブするための技術に馴染みがあろう。例えば、オリゴヌクレオチドプローブは、rs609261及び/又はrs4988000を含む核酸の領域をPCR増幅する際に使用するためのプライマーを含み得る。別の態様では、オリゴヌクレオチドプローブは、rs609261又はrs4988000へ直接結合することができ、その結合は検出可能であり得る。該プローブの結合は、例えばSERS又はSERRS技術を使用して、検出可能であり得る。
【0174】
[0205] 該キットには、バイアル、チューブ、等のような1以上の容器を受容するように仕切られた、担体、パッケージ、又は容器を含めることもでき、その容器それぞれは、本明細書に記載の方法において使用される、ポリ核酸ポリマーと試薬といった、別々の構成要素の1つを含む。好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、及び試験
管が含まれる。容器は、ガラス又はプラスチックのような多様な材料から成型され得る。
【0175】
[0206] 本発明で提供される製造品は、包装材料を含有する。医薬包装材料の例には、限定されるものではないが、ボトル、チューブ、バッグ、容器、ボトル、及び選択される製剤と企図される投与及び治療の形式に適したあらゆる包装材料が含まれる。
【0176】
[0207] キットには、典型的には、内容物を収載するラベル、及び/又は使用説明書、並びに使用説明書付きの添付文書が含まれる。典型的には、説明書のセットも含まれるものである。
【0177】
[0208] 本発明の別の側面によれば、本発明のポリ核酸ポリマーを含むベクターが提供される。
[0209] 該ベクターは、ウイルスベクターを含み得る。ウイルスベクターは、アデノ関連ウイルスベクターを含み得る。該ベクターは、ポリ核酸ポリマーを悪性細胞又は特定の細胞種へ標的指向させるウイルスも含み得る。
【0178】
適応症
[0210] いくつかの事例では、本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、遺伝病のような遺伝子疾患又は病態を治療する。本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、タンパク質の産生不全を特徴とする遺伝病のような遺伝子疾患又は病態を治療することができる。本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、不完全なスプライシングを特徴とする遺伝病のような遺伝子疾患又は病態を治療することができる。
【0179】
[0211] 本明細書に記載される組成物及び方法は、常染色体優性疾患、常染色体劣性疾患、X連鎖優性疾患、X連鎖劣性疾患、Y連鎖疾患、ミトコンドリア病、又は多因子若しくは多遺伝子疾患のような遺伝子疾患又は病態を治療するために使用することもできる。本明細書に記載される組成物及び方法を使用して、常染色体優性疾患、常染色体劣性疾患、X連鎖優性疾患、X連鎖劣性疾患、Y連鎖疾患、ミトコンドリア病、又は多因子若しくは多遺伝子疾患を治療することができ、この疾患又は病態は、タンパク質の産生不全を特徴とする。本明細書に記載される組成物及び方法は、常染色体優性疾患、常染色体劣性疾患、X連鎖優性疾患、X連鎖劣性疾患、Y連鎖疾患、ミトコンドリア病、又は多因子若しくは多遺伝子疾患を治療するために使用することもでき、この疾患又は病態は、不完全なスプライシングを特徴とする。
【0180】
[0212] ATM発現の脱制御に関連した病態は、がんを含み得る。本明細書に記載される組成物及び方法は、がんを治療するために使用することができる。1つの態様では、がんは、乳癌を含む。がんは、固形腫瘍又は血液系腫瘍であり得る。固形腫瘍は、肉腫又は癌腫であり得る。肉腫は、骨、軟骨、脂肪筋、血管又は造血組織のがんであり得る。例示の肉腫には、胞巣状横紋筋肉腫、胞巣状軟部肉腫、エナメル上皮腫、血管肉腫、軟骨肉腫、脊索腫、軟部組織の淡明細胞肉腫、脱分化型脂肪肉腫、デスモイド、線維形成性小円形細胞腫瘍、胎児性横紋筋肉腫、類上皮線維肉腫、類上皮血管内皮腫、類上皮肉腫、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、腎外性ラブドイド腫瘍、骨外性粘液型軟骨肉腫、骨外性骨肉腫、線維肉腫、巨細胞腫瘍、血管外皮腫、乳児型線維肉腫、炎症性筋線維芽細胞腫瘍、カポシ肉腫、骨平滑筋肉腫、脂肪肉腫、骨脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫(MFH)、骨悪性線維性組織球腫(MFH)、悪性間葉腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、間葉性軟骨肉腫、粘液線維肉腫、粘液型脂肪肉腫、粘液炎症性線維芽細胞肉腫、血管周囲類上皮細胞分化を伴う新生物、骨肉腫、傍骨性骨肉腫、血管周囲類上皮細胞分化を伴う新生物、骨膜性骨肉腫、多形型脂肪肉腫、多形型横紋筋肉腫、PNET/骨外性ユーイング腫瘍、横紋筋肉腫、円形細胞型脂肪肉腫、小細胞型骨肉腫、孤在線維性腫瘍、滑膜肉腫、血管拡張型骨肉腫を含めることができる。
【0181】
[0213] 癌腫は、上皮細胞より発生する癌であり得る。例示の癌腫には、腺癌、扁平細胞癌、腺扁平上皮癌、退形成癌、大細胞癌、小細胞癌、肛門癌、盲腸癌、胆管癌(即ち、胆管細胞癌)、膀胱癌、脳腫瘍、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、原発不明癌(CUP)、食道癌、眼癌、卵管癌、消化器系癌、腎癌、肝癌、肺癌、髄芽腫、黒色腫、口腔癌、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺疾患、陰茎癌、下垂体腫瘍、前立腺癌、直腸癌、皮膚癌、胃癌、精巣癌、咽頭癌、甲状腺癌、子宮癌、膣癌、又は外陰癌を含めることができる。血液系腫瘍は、血管系の悪性腫瘍であって、T細胞ベースの悪性腫瘍とB細胞ベースの悪性腫瘍を含めることができる。例示の血液系腫瘍には、骨髄性白血病、骨髄増殖性腫瘍、非特定型末梢T細胞リンパ腫(PTCL-NOS)、未分化大細胞型リンパ腫、血管免疫芽球性リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫、成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)、芽球型NK細胞リンパ腫、腸管症型T細胞リンパ腫、肝脾ガンマ・デルタT細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、鼻性NK/T細胞リンパ腫、治療関連T細胞リンパ腫、慢性リンパ球性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、高リスクCLL、非CLL/SLLリンパ腫、前リンパ球性白血病(PLL)、濾胞性リンパ腫(FL)、びまん性大細胞B細胞リンパ腫(DLBCL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、ワルデンストレームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫、節外性辺縁帯B細胞リンパ腫、節性辺縁帯B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、非バーキット高悪性度B細胞リンパ腫、縦隔原発B細胞リンパ腫(PMBL)、免疫芽球性大細胞リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、B細胞前リンパ球性白血病、リンパ形質細胞性リンパ腫、脾辺縁帯リンパ腫、形質細胞骨髄腫、形質細胞腫、縦隔(胸腺)大細胞型B細胞リンパ腫、血管内大細胞型B細胞リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、又はリンパ腫様肉芽腫症を含めることができる。
【0182】
[0214] 本発明の別の側面によれば、プレmRNA遺伝子転写産物におけるNSEの包含によって引き起こされる疾患病理を治療又は予防する方法が提供され、該方法は、プレmRNA遺伝子転写産物上に存在するシュードエクソンのクリプティックスプライス部位へ結合するように整えられた薬剤を提供することを含み、クリプティック部位は、該遺伝子の成熟RNA転写産物へのナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)の包含を調節することが可能である。
【0183】
[0215] ここで、プレmRNA遺伝子転写産物上に存在するシュードエクソンのクリプティックスプライス部位への薬剤の結合は、NSEの包含を低下させる。
[0216] 該方法は、ある疾患病理が、遺伝子転写産物におけるNSEの包含によって引き起こされるかどうかを治療に先立って決定することを含み得る。
【0184】
[0217] 当業者は、本発明の1つの態様又は側面の任意選択の特徴が、本発明の他の態様又は側面に対して、適宜適用可能であり得ることを理解されよう。
【実施例0185】
[0218] 本発明の態様を、添付の図面を参照して、例としてのみ挙げて以下により詳細に記載する。これらの実施例は、例示の目的のためにのみ提供するのであって、本明細書で提供される特許請求の範囲を制限するものではない。
【0186】
[0219] 略語
NSE: ATMイントロン28内のナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン
PE: ATMイントロン28内のNSEの3’に位置する24ヌクレオチドのシュードエクソン
NMD: ナンセンス変異依存RNA分解機構
A-T: 毛細血管拡張性運動失調症
ATM: 毛細血管拡張性運動失調症における欠損遺伝子
SSO: スプライススイッチングオリゴヌクレオチド
DSB: 2本鎖DNAの切断
DDR: DNAの傷害応答
MIR: 哺乳動物散在反復
BPS: 分岐点配列
PPT: ポリピリミジントラクト
IR: イオン化放射線
U2AF: U2核内低分子リボ核タンパク質の補助因子
U2AF35: U2AF1によってコードされる、U2AFの35kDサブユニット
U2AF65: U2AF2によってコードされる、U2AFの65kDサブユニット
snRNA 核内低分子RNA
実施例1
概要
[0220] 表現型の多様性と遺伝子疾患への感受性は、天然のイントロン性変異体によって影響を受けるが、RNA結合タンパク質とそれらの相互作用については、ほとんど不明である。今回、拘束された(detained)ATMイントロン内の1塩基多型がU2核内低分子リボ核タンパク質(U2AF)の補助因子を欠く細胞において機能性を獲得することを示した。ATMイントロン28におけるナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソン(NSE)の抑制には、それぞれのU2AFサブユニットが必要とされた。NSEは、NSE3’スプライス部位に対して-3位に位置するrs609261でのチミンよりもシトシンの存在時により大きな度合いで活性化された。このシトシン対立遺伝子は、白色人種において優性であるが、アジア人の集団において主要な対立遺伝子であるチミンよりも、ATM発現のより効率的なNSE仲介性の阻害をもたらした。NSE活性化は、白血病細胞において脱制御病態にあって、U2AF35残基34でのアミノ酸同一性によって影響を受けた。NSEと下流シュードエクソンの間の競合を利用して、NSEを抑制するか又は活性化してATM発現を調節するスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)を同定した。RNA-Seqを使用して、ATMシグナル伝達経路におけるU2AF制御されるエクソン利用がMRN/ATM-CHEK2-CDC25-cdc2/サイクリンB軸に集中して、U2AFががん関連融合や染色体転座に関与する転写産物のRNAプロセシングを選好的に制御することを示した。これらの結果は、3’スプライス部位制御と2本鎖DNA切断に対するATM依存性応答の間の重要な連関を明らかにし、RNA結合因子への応答におけるイントロン性変異体の機能的柔軟性を例証し、イントロン内のシュードスプライス部位を標的とすることによって遺伝子発現を改変するSSOの多用途性を実証して、がんのリスク及び生存率における人種差を説明する可能性がある。
【0187】
序論
[0221] 今回、ATM遺伝子(毛細血管拡張性運動失調症、A-T、突然変異型)におけるナンセンス変異依存分解機構(NMD)のスイッチエクソン(NSE)をU2AFが抑制することを示し、成熟転写産物におけるNSEの包含を制御する3’ss認識に関与する他のタンパク質を同定した。この事象がATM発現を制限する程度は、イントロン28の深部にあるNSE 3’ssコンセンサス内に位置する一般的なC/T変異体rs609261に依存する。また同定されるのは、成熟転写産物におけるNSEの包含を制御するイントロン性シスエレメントと、同じイントロン内の競合シュードエクソンを標的とすることによってNSE活性化を調節するスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)である。RNA-Seqを使用して、DNA傷害応答(DDR)経路のU2AF仲介性の制御がATM-CHEK2-CDC25-cdc2/サイクリンB軸に集中していることを次に示して、それが2本鎖DNA切断(DSB)に対する細胞性応答とともに共進化してきたことを示唆した。最後に、がん関連の遺伝子融合と染色体転座における、U2AF制御転写産物の選好的な関与を実証する。
【0188】
結果
ATMにおけるU2AF抑制クリプティックエクソンの同定
[0222] 最近になって、各U2AFサブユニットの欠失が主として選択的にスプライスされる多数のエクソンの下方及び上方制御をもたらすことが示されてきた。U2AF35が欠失した細胞において全体のRNAプロセシング変化を精査したところ、RefSeqによって注目されないクリプティックな29ヌクレオチドのATMエクソン(NSEと呼称する、
図1A)の予期せぬ強い活性化が見出された。このNSE活性化は、各U2AF35アイソフォームを、アイソフォーム特異的な低分子干渉RNA(siRNA)で、そして選択的にスプライスされるU2AF1エクソンAb及び3(それぞれ、アイソフォームのU2AF35bとU2AF35aをコードする)の3’ssを標的とするSSOで個別に欠失させた細胞でも観測された(
図1A)。RT-PCRを使用するRNA-Seqデータの検証は、リンパ芽球様細胞株において観測されるレベルに類似して、未処理HEK293細胞内のポリアデニル化転写産物の約10~20%にNSEが存在していることを示した。このNSEの包含レベルは、約90%のU2AF35が欠失した培養物では約75%まで増加して、約75%のU2AF65が欠失した細胞では約50%まで増加し(
図1B)、siRNA用量依存性であって、利用可能なU2AFヘテロ2量体の量と逆相関し(
図1C)、NSE抑制への各U2AFサブユニットの必要性と一致した。RNA-Seqデータの精査は、NSEの周囲にあるイントロン配列の保持を明らかにし(
図1A)、イントロン28が「拘束」されて、転写後にスプライスされる可能性があることを示唆した。イントロン28の保持レベルは、U2AF35のSSO仲介の欠失にもsiRNA仲介性の欠失にも影響されず(
図1A)、この遺伝子内の他のクリプティックエクソンでNSEと同じ程度まで活性化されるものはなかった。従って、NSEは、ATM発現のU2AFによるエクソン中心性の制御において重要な役割を担うものである。
【0189】
NSE活性化とATM発現は、rs609261によって改変される。
[0223] NSEの周囲にあるゲノム配列の検証は、NSE3’ssに対して-3の位置が多型性である(rs609261,
図2A)ことを明らかにし、ここではアフリカ人種とアジア人種でチミン(T)が優勢であるのに対し、白色人種ではシトシン(C)が優勢である(
図2A)。この位置での塩基同一性は、普遍的なエクソン認識に重要であって、エクソン包含レベルのCAG>TAG>AAG>GAG階層が正統の3’ssとU2AF35依存性の3’ssの両方にある。NSE利用が対立遺伝子特異的であることを確認するために、この位置にC又はTを含有する2つのレポーター構築体のスプライシングを、ヒト胚性腎(HEK)293細胞への一過性トランスフェクションに続いて検証した(
図2B)。未処理細胞と各U2AFサブユニットを個別に欠失させた細胞の両方で、T構築体は、Cレポーターより低いNSEの包含を生じた(
図2C)。
【0190】
[0224] U2AF35を欠く細胞において、対立遺伝子特異的なNSE利用が差示的なタンパク質発現を生じるかどうかを検証するために、初めに利用可能な細胞株よりrs609261を挟んだDNAの配列を決定して、それぞれの対立遺伝子について同型接合であるトランスフェクト可能な細胞を入手した。HEK293細胞は、C対立遺伝子について同型接合であることがわかって、HeLa細胞は、T対立遺伝子について同型接合であった(
図2D)。U2AF35欠失細胞と未処理対照からの免疫ブロットより、各細胞株における効率的な欠失と、T対立遺伝子よりもC対立遺伝子の存在下でのATM発現のより大きなU2AF仲介性の低下が確認された(
図2E,F)。NMD経路の主要因子であるUPF1の欠失は、ATM成熟RNAにおけるNSEの包含の用量依存性の増加を明らかにした(
図2G)。欠失細胞からの免疫ブロットには、推定される短鎖型シグナルを検出しなかった。
【0191】
[0225] U2AF抑制エクソンとU2AF活性化エクソンがU2AF関連タンパク質に
対する選好的な応答を示すので、PUF60とCAPERa、並びにhnRNP A1を含めていくつかの異種核内RNPをHEK293細胞より欠失させた。PUF60は、ウリジンリッチモチーフと3’ssで相互作用して、hnRNP A1は、AG含有UリッチRNA上でU2AFヘテロ2量体とともに3元複合体を形成する。PUF60又はhnRNP A1のいずれかの欠失がNSEの包含を増加させた(
図2H)一方で、PUF60の過剰発現は、NSEスキッピングをもたらした(
図2I)。従って、ATMイントロン28深部のrs609261及び集団依存性のNSE活性化は、U2AF、PUF60、及びhn RNPA1によって制御されて、一般的なイントロン多型の機能性が3’ss認識を容易にするRNA結合タンパク質の細胞レベルに伴っていかに変動するかを実証する。
【0192】
SSOによるNSE阻害は、ATM発現を促進する
[0226] U2AFを欠く細胞におけるNSE活性化を抑制してATM発現を回復させることが可能であるかを検証するために、C対立遺伝子レポーター構築体を、それぞれのNSEスプライス部位を標的とするSSOとともに同時トランスフェクトした(
図1A)。SSOをそれぞれのホスホロチオエート連結と2’-O-メチルリボースで修飾して、NSEのPPT、安定したMフォールド予測ステム、及びrs609261を回避するように設計した。外因性転写産物(
図3A)と内因性転写産物(
図3B)の両方において、各SSOは、NSEの包含を用量依存的なやり方で減少させて、NSE 3’ssを標的とするSSOは、その5’ssを架橋するSSOよりも同じ濃度でより効率的であった。
【0193】
[0227] 次に、イオン化放射線(IR)へ曝露した細胞において、NSE 3’ss SSOがATMタンパク質の発現及び活性化を増加させることが可能であるかどうかを検証した。非曝露細胞とIR曝露細胞の両方で、U2AF35を欠く細胞における低いATM発現がこのSSOによって一部レスキューされて(レーン1対2とレーン5対6、
図3C、レーン5~8対レーン9~12、
図8A)、その増加は、用量依存性であった(
図4D)。IRに続いて、S1981で自己リン酸化した活性化ATMは、未処理細胞と比較して、欠失細胞において低下したシグナルを示した(レーン6対8、
図3Cと、レーン1~4対レーン5~8、
図8A)。NSE 3’ss SSOへの曝露は、活性化ATMもやや増加させた(レーン5~8対レーン9~12、
図8A、レーン5対6、
図3C)。ATMシグナル伝達に対するSSO仲介NSE抑制の推定効果を探究し始めると、U2AFを(モック)欠失した(モック)照射細胞では、野生型CHEK2も過剰発現されていた(
図8A)。CHEK2は、DNA2本鎖切断(DSB)に応答してT68でATMによってリン酸化されるセリン/スレオニンキナーゼである。しかしながら、U2AFを欠く細胞は、対照に比較して、著しく低いレベルの内因性CHEK2を有して、これは、NSE 3’ss SSOによって変化されるように見えなかった(レーン1~4対レーン5~8対レーン9~12)。一方、外因性CHEK2は、IR曝露細胞と非曝露細胞の両方で欠失細胞において増加していた(レーン1~4対レーン5~8、
図5と、さらに下の
図8B,Cも参照のこと)。
【0194】
[0228] まとめると、NSE活性化は、NSEスプライス部位へのアクセスを遮断するがRNアーゼH切断は支持しないSSOによって効率的に阻害された。より効率的なSSOは、ATMのNSE仲介性の阻害を一部レスキューした。
【0195】
NMDスイッチエクソンの活性化は、下流シュードエクソンによって影響を受ける。
[0229] 成熟転写産物におけるNSEの包含を制御するイントロン性の制御シスエレメントを同定するために、以前に報告したA-T突然変異IVS28-159A>Gを利用した。この突然変異は、NSE 3’ssを活性化する一方で、その5’ssを抑制して代わりに下流の5’ssを促進して、このmRNAに112ヌクレオチドのクリプティックエクソンを導入することが観測された。このエクソンの内部に観測される最適のBPS
/PPTモチーフに先行される強い3’ssコンセンサスがあって、これは、U2AFへ結合して、より小さな24ヌクレオチドのシュードエクソン(PEと呼称される;
図4A)を活性化する場合がある。ATMにおける公知のRNA架橋連結/免疫沈降データの検証は、U2AF65がNSEの上流及び下流とPEの上流で結合することを示して、NSE活性化がPE 3’ssとNSE 3’ssで組み立てられる、一部生産的なスプライソソーム間での競合によって制御され得ることを示唆した。この2つの3’ssは、哺乳動物において保存されているが、ヒトイントロンの最小サイズより小さな距離で分離していて、NSEとPEの同時認識を立体的に妨げる(
図4A)。この仮説に一致して、Cミニ遺伝子において導入されるPE PPT/3’ssの欠失は、U2AFのPEへの結合の減少を介してNSE抑制を緩和するはずなので、NSEの包含を増加させた(
図4B)。この欠失は、NSEとPEを分離するイントロンの保持ももたらして、A-T突然変異IVS28-159A>Gのスプライシングパターンを模倣した。そのイントロンの長さを59ヌクレオチドから79ヌクレオチドへ増加させて、それによってこの2つのシュード3’ss間の不十分な距離によって課せられる立体障害を克服することも、NSEの包含を改善して、イントロン保持を減少させた(
図4B)。
【0196】
[0230] NSE不活性化がmRNAにおけるPEの包含に影響を及ぼし得るかを検証するために、初めにNSE 3’ssを消失させた。この突然変異は、正統のNSE 3’ssの7ヌクレオチド下流にあるクリプティック3’ssを活性化した(レーン1、2とレーン6、7、
図4C,
図21)。このクリプティック3’ssは、U2AFへの減少した要求性を示した。この背景でNSEとPEの間のイントロン長さを広げてもPEを活性化することができず(
図4C,レーン3とレーン8)、PEはエクソン性スプライシングエンハンサーを欠いて、最適以下のBPSを有する(
図22)ので、哺乳動物ワイド散在反復(MIR)に由来する24ヌクレオチドのステムループをPEの中央に挿入した。このMIRヘアピンは、末端RNAトリループにおいて曝露されるスプライシングエンハンサーを介して、ほぼ普遍的なエクソン定義モジュールとして作用する。この拡大されたPEは、モック欠失細胞において強く活性化されたが、U2AF35を欠く細胞ではNSEによって打ち負かされて(レーン4とレーン9)、NSEの包含がPEよりU2AF35に依存していることを示した。PE内のMIR挿入と拡大イントロンをともに含有する構築体は、最終的に、NSEとPEをともに含有するmRNAを産生した(レーン5とレーン10)。
【0197】
競合するシュードエクソンを標的とするイントロン性SSOによる遺伝子発現の調節
[0231] 次に、MIRレポーターを利用して、NSE SSOとPE SSOのエクソン利用とATM発現に対する影響を検証した。
図4Dは、NSE 3’ss SSOが、NSEを含有する転写産物を抑制して、PEのあるそれを上方制御したのに対して、PE内のMIRエンハンサーループを標的とするSSOでは、反対の効果が見出されたことを示す。NSEとPEがmRNAにおけるそれらの同時包含には不十分な距離で分離したレポーターでは、同じパターンが観測された(
図4E)。これらの結果は、PE及び/又はPEの上流にあるU2AF65結合部位を標的とするSSOには、潜在的にNSEの包含を促進してATM発現を低下させる可能性がある一方で、NSE SSOは反対の効果を有するはずであることを示唆した。このアプローチは、その一方が遺伝子制御にとって決定的である、競合するシュードエクソンのアンチセンスベースの標的化によって、遺伝子発現をいずかの方向で調節する広汎な戦略を提供するだろう。この概念を検証するために、PE 3’ssとPE 5’ssを標的とするSSOについて試験した。それぞれのPE SSOは、外因性転写産物と内因性転写産物の両方でNSEスキッピングを誘導した(
図4F)が、PEのわずか上流にあるU2AF65結合部位(即ち、NSE抑制配列(構築体:delPPT/AG,
図4B))を標的とするSSO(
図4A)がPEの包含を低下させて、MIRレポーターにおいてNSEをわずかに増加させた(
図4G)。対照的に、5’方向に延長されたより長いオリゴ(SSO-PEBP,
図20)は、何の効果も示さなかった。
【0198】
[0232] PEは、天然のDNA変異体rs4988000(G/A)を含有し、これもNSE認識に影響を及ぼす場合がある(
図4H)。rs4988000で系統的に変異させたC及びTミニ遺伝子のトランスフェクションは、U2AF35欠失細胞とモック欠失細胞の両方で、稀なA対立遺伝子がそれぞれのプレmRNAでのNSEの包含を減少させることを明らかにした。従って、白色人種において最も頻度が高いハプロタイプ(CG)によって、最も高いNSEの包含が生じて、ハプロタイプ:CA>TG>TAがそれに続いた。
【0199】
[0233] まとめると、U2AF抑制NSEのハプロタイプ依存性の活性化は、競合するシュード3’ssの上流にあるU2AF65イントロン性結合部位を標的とするSSOによって改変することが可能であって、NMDスイッチエクソンとイントロン内のそれらの調節モチーフへのアンチセンスベースの標的化によってエクソン中心性の遺伝子発現を操作するための一般的な方法を提供する可能性がある。
【0200】
ATMシグナル伝達のU2AFによる制御:焦点でのDSB
[0234] ATMがDDR経路における主要な上位(apical)キナーゼであって、NMDスイッチエクソンがタンパク質相互作用パートナーをコードする遺伝子をしばしば制御するので、現在知られているATM基質とATMシグナル伝達ネットワークの他の構成要素のU2AF35誘導性のRNAプロセシング変化を系統的に特徴付けた。興味深いことに、DDRと細胞周期制御に関与してU2AF35依存性のエクソンを含有する遺伝子がほとんど増えなかった(FDR=0.08)ものの、ATM-CHEK2-CDC25-CDC2/サイクリンB軸の各成分は、RNAプロセシング改変を示した(
図5A,
図9)。この経路は、DSBのATMシグナル伝達にとって決定的である。
【0201】
[0235] 初めに、U2AFを欠く細胞におけるATM発現の低下(
図8)は、CHEK2 mRNAの減少、CHEK2イントロン10の保持の増加、及びエクソン9とエクソン11のスキッピングに関連していた(
図5A)。既知のCHEK2基質のRNAプロセシング改変は、細胞周期を制御する遺伝子(CDC25A、CDC25B、CDC25C、及びTTK;
図5A,S3A-B,11A)に限られて、DNA修復に関与する遺伝子(BRCA1/2,XRCC1,FOXM1,TRIM28)又はp53シグナル伝達に関与する遺伝子(TP53,MDM4,CABIN1,STRAP,AATF)では、明らかでなかった。CHEK2エクソン9スキッピングは、NMDを活性化すると予測されたが、IR後24時間でもほとんど増加せず、IR後早くも30分に観測される全CHEK2の低落に寄与しなかった(
図5Bと
図5C)。CHEK2エクソン9の包含が増加したのは、最高濃度のUPF1 siRNAの場合だけであった(
図5D)ので、その3’ssを標的とするSSOでHEK293細胞をトランスフェクトした。この処理は、エクソン9スキッピングを誘導して、CHEK2タンパク質の発現を低下させたが、それはNSE活性化も増加させた(
図5E)。対照的に、NSE又はPEを標的とするSSOは、CHEK2エクソン9の包含にいかなる影響も及ぼさなかった(
図5F)。SF3B1を欠く細胞では、NSEではなく、エクソン9スキッピングも劇的に増加した(
図5G)。U2AF35を欠く細胞において対照と比較してCHEK2の外因性発現が増加した(
図8A)理由に対処するために、CHEK2抑制性SSOとCHEK2発現性プラスミドでHEK293細胞を同時トランスフェクトした(
図8Bと
図8C)。U2AF機能性(proficient)細胞でも、内因性CHEK2の低下が外因性CHEK2の有意な増加に関連していて、細胞内のCHEK2タンパク質全体の厳格な恒常性の制御を示した。
【0202】
[0236] 次に、CHEK2とCHEK1によってリン酸化されて14-3-3の結合を促進する残基(S178)をコードする、CDC25Aエクソン6の完全活性化にU2A
Fが必要とされた(
図5A)。U2AF35は、CDC25BとCDC25Cのエクソン3の包含にも必要とされて(
図10Aと
図10B)、これまでのマイクロアレイデータを裏付けた。CDC25Bエクソン3は、Bドメイン残基S169(MAPKAPキナーゼ2とpEg3によってリン酸化される)を含めて、多数のリン酸化残基をコードする。このアイソフォームは、中心体に局在化して、有糸分裂の間に蓄積する。CDC25Cエクソン3は、自己増殖ループの一部としてcdc2/サイクリンBによってリン酸化されるT67をコードする。CDC25Cにおいてリン酸化されるT67は、PIN1のWWドメインによって認識される結合部位を創出して、それがU2AF抑制NMDスイッチエクソンの活性化を持続して(
図11B)、おそらくはこの豊富なぺプチジル-プロリルイソメラーゼの触媒活性を改変する。最後に、U2AF35を欠く細胞では、サイクリンB1-相互作用タンパク質(CCNB1IP1,HEI10としても知られる)と同様に、サイクリンB1及びB2のmRNAが上方制御されたが、それらのRNAプロセシングパターンは、改変されたように見えなかった(
図5A)。サイクリンBの上方制御は、(転写後にスプライスされ得る)拘束されたCDK1イントロンに関連していた(
図11C)。
【0203】
[0237] DSBへのATM動員は、MRE11、RAD50、及びNBNから成るMRN複合体によって促進される。U2AF35を欠く細胞において、NBNは、明瞭なRNAプロセシング変化を示さなかったが、おそらくはNMDスイッチエクソンの活性化及び/又は追加のスプライシング改変を介して、RAD50 mRNAが下方制御された(
図12A~Cと
図9)。最後のMRE11Aエクソンは、B細胞を除いてほとんどの細胞型に存在する、欠失細胞内の遠位選択的ポリアデニル化部位の促進の結果として、上方制御された。DEXSeq分析では、セリン/スレオニンタンパク質キナーゼ(ATRとPRKDC)のホスファチジルイノシトール3-キナーゼ様ファミリーの他のメンバーをコードする転写産物においても、BRCA1/2、RNF168、及びATMインタラクタ(ATMIN)をコードする転写産物においても、有意なRNAプロセシング変化を検出しなかった。エクソン又は遺伝子発現が改変した追加のATM相互作用パートナーには、RPS6、SRSF1、及び他のSRタンパク質、EP300、RPA2、BLM、FANCD2及びFANCI、PPP2R5C及びPPP2R5D、及びSMC3、コヒーシン複合体の中心成分が含まれた(
図9)。
【0204】
[0238] U2AF35の欠失は、ATMシグナル伝達への数多くの機能的連関を有する、クロマチン修飾に関与する遺伝子/エクソンの選好的な改変に関連した(
図9)。例えば、INO80クロマチン再構成複合体は、ATMによってリン酸化されて、CHEK2が含まれるチェックポイントレギュレーターへ機能的に関連する。U2AFは、酵母Ies6相同体に存在しないペプチドをコードする54ヌクレオチドのエクソンを含有するINO80Cアイソフォームを阻害したが、このことは生体内でのINO80機能にとって決定的で、ACTR5とのヘテロ2量体形成やヌクレオソーム結合を変化させる可能性がある。欠失細胞では、ACTR5、ACTL6A、及びRUVL2Bが含まれる、INO80複合体の多数の成分の発現が変化していた。多くのINO80サブユニットは、選好的にテロメアに局在化して、それらの突然変異は、テロメア延長をもたらす。U2AFは、mRNAにおけるTERF1エクソン7の完全な包含に必要とされ(
図13A)、シェルテリン複合体の重要成分である、TRF1(エクソン7+)/PIN2(エクソン7-)アイソフォームの量を制御する。エクソン7は、多数のリン酸化セリン残基をコードして、いずれのアイソフォームも、この2量体化ドメインを介してヘテロ2量体化することができる。テロメアへのTRF1結合がATM阻害によって促進される一方で、ATM仲介性のリン酸化は、テロメアDNAとのTRF1相互作用を妨害する。テロメアとのTRF1会合は、RAD50によっても負に制御される。TRF1相互作用性のTIF2は、核内マトリックスに局在化してTINF2によってコードされる、別のシェルテリンタンパク質である。TIF2は、TIN2S及びTIN2Lと呼ばれる、選択的スプライシングによって産生される少なくとも2つのアイソフォームで存在する。TIN2Lは、余分のNM結合ドメインを含有して、TIF2S(これは、長い3’非翻訳領域を形成する3’イントロンが保持された転写産物によってコードされる)より強く核内マトリックスと会合する。このmRNAアイソフォームは、U2AFによって抑制された(
図13B)。
【0205】
[0239] まとめると、上記の結果は、U2AF制御がクロマチン修飾やテロメア長さ制御に関与する追加のATM基質まで拡張されるものの、DDRのU2AF35仲介性の制御の中心には、MRN/ATM-CHEK2-CDC25-cdc2/サイクリンB軸があることを示す。
【0206】
U2AFは、白血病関連融合に関与する転写産物のRNAプロセシングを選好的に制御する。
[0240] CHEK2は、PML(前骨髄球性白血病)をリン酸化して、後続の自己リン酸化のためにPMLを必要とするらしい。U2AF35の欠失は、PMLの近位の選択的ポリアデニル化部位の使用を促進して、核内輸送シグナルをコードする最終エクソンを欠く、最も短いPMLアイソフォームの上方制御をもたらした(
図14A)。この長いPMLアイソフォームと短いPMLアイソフォームは、異なる機能を有し;例えば、核内PMLアイソフォームは、細胞質のアイソフォームと異なって、IFNγシグナル伝達の正のレギュレーターである。最長のPMLアイソフォームのC末端は、AML1と特異的に相互作用して、AML1仲介性の転写を高め、U2AFの不足がPML-AML1相互作用を妨げる可能性があることを示唆する。PMLはまたPIN1と結合して、この相互作用は、PML分解をリン酸化依存的なやり方で促進する。U2AF欠失は、PIN1 NMDエクソンを増加させ(
図11B)、このきわめて豊富なぺプチジル-プロリルイソメラーゼ(これは、リン酸化CDC25が含まれる、多くのリンタンパク質と相互作用して、有糸分裂を制御する)の発現を潜在的に制限する。
【0207】
[0241] PMLとは別に、U2AF35の欠失は、NPM1が含まれる他のRARAパートナーを上方制御した(
図14B)。この事象は、近位ポリアデニル化部位の昇格に関連して、それによって、より短い、おそらくはより安定な転写産物の量を増加させた。選択的にスプライスされるBCORのエクソンであるBCL6コリプレッサー(BCOR-RARA融合を形成していくつかのヒストンデアセチラーゼと相互作用して、BCL6の転写抑制を増加させる)も、下方制御されていた(
図14C)。
【0208】
[0242] 興味深いことに、U2AF35感受性遺伝子/エクソンとがん関連遺伝子融合に関与する1,187個の遺伝子並びに再発性の染色体転座に関与する300個の遺伝子の間の重複は、予測より大きくて、差示的に使用されるエクソンがある遺伝子では、転写産物レベルで Cufflinks によって示唆される遺伝子より有意なP値が観測された(表1
)。同様に、骨髄異形成症候群において頻繁に変異する遺伝子とU2AF35欠失時に差示的に発現される遺伝子の共用は、予測より有意に高かった(P<0.01,超幾何分布検定)。従って、がん関連遺伝子融合や染色体転座に関与する転写産物のRNAプロセシングは、U2AFによって選好的に制御される。
【0209】
[0243] がん関連U2AF1突然変異のNSEスプライシングにおける機能を検証す
るために、U2AF35を(モック)欠失させた細胞へCミニ遺伝子とともに同時トランスフェクトされる、野生型と変異型のU2AF35構築体を用いた再構成実験を実施した(
図6)。NSE活性化は、いずれのU2AF35アイソフォームによっても、並びにジンクフィンガー1ドメイン内のS34(がんにおいて最も頻繁に変異するU2AF35残基)の置換を含有するU2AF35aによっても、ある程度まで抑制された。対照的に、これらの突然変異がさほど頻繁でない第2のジンクフィンガードメイン内のQ157の置換では、部分的なレスキューしか達成されなかった。S34Tと小さなアミノ酸での置換を含めて、他のS34突然変異ではこの欠損を完全に再構成することができなかったが、
この位置での大きな残基(S34R)は、効率的であった。従って、NSE認識には、U2AF35の34位にある残基の独自性(identity)が重要である。
【0210】
[0244] 最後に、多様なヒト組織では、ヘキサマーでプライミングされた試料とポリアデニル化転写産物の両方で、低い度合いのNSE活性化を検出した(
図15A)。NSE含有RNAの比率は、平均して、正常細胞より白血病細胞において高くて、正常組織では観測されないきわめて高いレベルを明示する試料もあって(
図15Bと
図15C)、これは、これまでに白血病と固形腫瘍のいずれでも観測されたATM発現の低下に寄与する可能性がある。溶解に先立って指定温度での低温ショックと熱ショックへ曝露したリンパ芽球様細胞株のパネルより抽出したポリアデニル化RNAにおいても、NSEの包含を試験した(
図15Dと
図15E)。興味深いことに、NSEは、細胞を42℃へ(しかし準生理学的な温度ではなくて)曝露することによって、わずかな程度活性化されるように見えた(
図15)ので、悪性細胞において著しく高いNSEの包含レベルが患者の試料の保存の間に遭遇する冷温ショックによって説明される可能性は低いことを示唆した。43℃での熱ストレスへ曝露したJurkat細胞のプロテオミクスプロファイリングでは、U2AF35aが含まれるいくつかのタンパク質の発現減少が明らかにされたので、これらの結果は、特定のNSEリプレッサーとしてのU2AF35をさらに裏付ける。
【0211】
考察
[0245] 本明細書に記載される研究は、RNAプロセシングとDDR経路の間で現在知られている関連を有意に拡張する(
図5と
図9)。ATM発現に決定的な選択的スプライシングに共役したNMDスイッチエクソンを同定して(
図1と
図3)、がんリスクにおけるその重要性を検討した(
図2、
図6、及び
図15)。このエクソンの成熟転写産物における包含にイントロン性ハプロタイプがいかに影響を及ぼすかということと、3’ss選択に関与するRNA結合タンパク質の細胞レベルに対するそれらの機能依存性についても示した(
図2と
図4H)。最後に、その制御配列を標的とすることによってこのエクソンの活性化を調節するSSOを同定して、遺伝子発現を改変するための新規なアンチセンス戦略を提唱した。
【0212】
[0246] U2AFは、重要な3’ss認識複合体であって、選択的スプライシングの決定的なレギュレーターである。タンパク質-タンパク質相互作用を拡大することに加えて、選択的スプライシングは、定量的な遺伝子発現をNMDにより微調整するように進化してきた(この因子を欠く細胞では多くのNMDエクソンの改変があることに一致している)(
図1、
図5、及び
図13)。選択的にスプライスされるエクソンによってコードされるペプチドが無秩序領域や翻訳後修飾(PTM)部位に濃縮されて、2以上のアイソフォーム間の動的で可逆的なスイッチングに必要とされる。逆に、PTMは、NSE制御に関与するタンパク質を含めて、数多くのスプライシング因子を制御する。この複雑性は、明瞭な課題が前途にあることを表して、CHEK2エクソン9を標的とするときに観測されるNSE活性化によって例示することができる(
図5E)。CHEK2発現の低下は、CDK11(これは、CHEK2依存的なやり方でS737で恒常的にリン酸化されて、U2AF65とPUF60と相互作用し、NSEレベルを制御する調節ループを創出する)のような他のキナーゼとの相互作用を改変する可能性がある(
図2H,I)。
【0213】
[0247] これらの結果は、U2AFがDDR制御の統合的な部分であって、そのPTMネットワークの微調整に貢献して、PTMそれ自体に従属することを示唆する。U2AF35は、DNA傷害時にS59での増加したリン酸化を示すタンパク質の中で見出された。このセリン残基は、U2AF35aにのみ存在して、U2AF35bではアラニンに置き換わっている。U2AF35bの外因性発現がU2AF35aより高くて、U2AF35bの相対量がU2AF65の欠失時に増加したことは、この2つのU2AF35アイソフォームがU2AF65と差示的に相互作用する可能性があって、DDRにおいて同等の役割を有さない可能性があることを示唆した。しかしながら、U2AF35制御エクソンとU2AF65制御エクソンは多大に重複しているので、U2AF35欠失細胞において見出される、全てではないとしてもほとんどのRNAプロセシング変化は、NSE活性化を含めて、U2AFヘテロ2量体の不足に帰せられるものである(
図1C)。
【0214】
[0248] U2AF抑制エクソンは、U2AF活性化エクソンと比較して、独自の3’ss組織化とU2AF関連タンパク質への応答を有し、このエクソン抑制が直接的なRNA結合に関与することを示唆する。このことは、NMDを受けない外因性転写産物に対してNSE活性化が観測されることと、SSO誘導性のNSE遮断によって裏付けられる(
図2と
図4)。NSEは、予測されるBPSと3’ssの間にAGジヌクレオチドを欠いて、そのAG排除ゾーンは、平均より長くて、5つの保存グアニンの珍しいストレッチをBPSの上流に有し、これが抑制のために必要とされ得る、3’ss域の安定した2次構造に貢献するのかもしれない。NSEとPEの両方のアデニンリッチな3’部分は、その5’部分よりも進化において多く保存されていて(
図4A)、構造化されたRNA内の非対合位置を占有するアデニンの傾向を考慮すると、重要なリガンド相互作用を提供する可能性がある。興味深いことに、霊長類のNSEは、-3位にウリジンを有して、その位置にシトシンを有する下等哺乳類より長いPPTを有する。U2AFによるエクソン抑制への最も単純な説明となるのは、直接的なRNA結合であるように見あるが、U2AF35欠失は、NMDに関与するいくつかのタンパク質の下方制御をもたらし(表S4)、このことが内因性転写産物に対するNSE活性化に貢献するのかもしれない。加えて、NSE制御には、U2AF65とTRF1のC末端又はATMシグナル伝達ネットワークの他の成分の間の物理的な相互作用も参画するのかもしれない。
【0215】
[0249] U2AF1/U2AF2とは別に、3’ss選択に関与する追加の遺伝子もがんでは変異していることがわかった。興味深いことに、SF3B1突然変異のある慢性リンパ球性白血病は、ATM末端切断をもたらす、ATMエクソン46のクリプティック3’ss活性化に関連していた。最近、がん関連SRSF2突然変異の結果としてのEZH2エクソンのスプライシングが造血分化障害に関与している可能性があるとされ、同じNMDエクソンは、U2AF35欠失時にも上方制御された(
図12D)。これらのエクソンが白血病発生の根底にある共通の3’ss認識経路の標的であるかどうかは、依然として確定していない。対照的に、SF3B1の欠失した細胞では、CHEK2エクソン9のほとんど完全なスキッピングがもたらされ、NSEの包含が変化するように見えなかった(
図5G)。
【0216】
[0250] NSE活性化が正常細胞とがん細胞のいずれにおいてもATM発現を束縛する可能性があって(
図1、
図2、及び
図15)、ATMがDDR経路における制限因子であるので、rs609261でのシトシンは、(前)悪性細胞においてだけでなく生殖細胞株においても相対的なATM不足を付与する可能性がある。ATMキナーゼ活性は、A-T重症度の良好な予測因子であるように見えるが、A-T対立遺伝子の多様性は、臨床症状のスペクトルを完全には説明しない。A-T患者の臨床的多様性には、NSE活性化に関与する遺伝子(
図1,
図2)、特に「漏出(leaky)」突然変異のある遺伝子が貢献す
る可能性がある。NSEの包含を改変する天然の変異体(
図2C~
図Fと
図4H)も、ATMシグナル伝達ネットワーク内のU2AF制御エクソン利用の核心(central focus)
と一致して、明白な臨床的特徴を欠くが、放射線感受性やがんリスクの増加を示す場合があるA-TさらにはA-T異型接合体の表現型の複雑性に貢献する場合がある(
図9)。
【0217】
[0251] これらの結果は、NSE活性化が、白色人種において、アジア人の集団よりも、rs609261でのC対立遺伝子が前者においてより高頻度であることの結果として、平均してより効率的であることを予測させる(
図2A)。アジア系アメリカ人は、長期間にわたって存続する一般的な悪性腫瘍での死亡率が白色人種より低い。造血系腫瘍のリ
スクも人種群で大きく変動して、その発生率は、A-Tと関連する非ホジキンリンパ腫とホジキンリンパ腫を含めて、白人集団において最も高い。この傾向は、移民でも存続して、後続の世代でも続く。リンパ芽球様白血病、リンパ腫、及び他の癌種は、アジア人集団と白色人種集団の間で異なる発生率を示すが、A-Tにおいてより優勢であるように見えない骨髄性白血病では、リンパ系腫瘍や他のがんとは異なって、年齢標準化発生率に有意な人種差を見出さなかった。アジア人のがん患者は、細胞傷害性療法に対して、白色人種患者よりも好ましく応答して、平均して、より長いメジアン生存率を有する。アジア人のがん患者はまた、いくつかの遺伝子融合の発生率が白色人種より低いと報告されて、DSBへ応答する彼らの能力を反映する可能性がある。rs609261は、神経膠種との関連についてのコクラン=アーミテージ(Cochrane-Armitage)検定において、ATM変異体の最低のp値を示した。最小組換え領域内のrs609261のわずかに約35kb上流に位置する、rs2235006(ATM対立遺伝子、F582L)は、慢性リンパ球性白血病の高いリスク(OR11.2)と関連していた。この研究では、865の候補遺伝子内の1467のコーディング非同義SNPについて遺伝子型決定をして、ATM-BRCA2-CHEK2 DDR軸をコードする遺伝子における変異体が、最も重大なリスク経路と関連があると示唆された。90歳代/100歳以上と対照若年者との対立遺伝子関連研究でも、ATMと寿命の間の関連性が示唆された。最後に、血液系腫瘍において頻繁に改変される遺伝子における突然変異率についても人種差に注目した;例えば、慢性リンパ球性白血病におけるSF3B1突然変異は、中国人の集団において、ヨーロッパ人の集団より頻繁でなかった。
【0218】
[0252] 上記の考察は、まとめると、がんのリスク及び生存率におけるrs609261依存性NSE活性化の重要性を支持するが、NSEの包含のU2AF依存性やhnRNP A1依存性(
図2H,S8B)は、それが決して固定されてないことを明証する。これらのタンパク質の悪性腫瘍ごとに変化する発現パターンは、この変異体の「気まぐれな機能性(capricious functionality)」を含意するものであろう。この属性を有するより多くの多型部位が今後確定される見込みがあって、「有毒(poison)」クリプティックエクソンの制限的な能力による遺伝子発現の個体間変動性に対してだけでなく、潜在的には、複雑形質の「消えた遺伝力」や、特にがん分野でのゲノムワイド関連研究の失敗例に貢献するだろう。
【0219】
[0253] RNA-Seqは、DNA傷害に応答するトランスクリプトーム全体について検証する有力なツールであるが、RNAプロセシングにおいて観測される改変の生物学的及び統計学的意義を正確に評価する厳密な標準手法は、まだ実施されていない。DEXSeqアルゴリズムの高ストリンジェンシーを仮定すれば、U2AFへ応答する追加の生物学的に重要なRNAプロセシング事象の存在は、排除することができない。例えば、CLASP1内の24ヌクレオチドエクソンと27ヌクレオチドエクソンの上方制御と共役していた、CHEK1における近位ポリアデニル化部位の上方制御は、ATMアポトーシス経路との関係を示唆するだろう。これらの事象は、DEXSeqによって検出されなかったが、ゲノムブラウザでは見えて、確認が必要とされた。アポトーシス経路が特に興味深いのは、プログラムされた細胞死に対する骨髄系前駆細胞の感受性が示されて、初期の臨床段階ではなくて、より進行した段階においてATMシグナル伝達に関与する遺伝子の脱制御が見出された、骨髄異形成症候群においてである。興味深いことに、U2AF1突然変異は、進行期でもより頻繁であることが見出され、短い生存と関連付けられた。この研究はまた、現行の不完全な転写産物注釈の限界とクリプティックエクソンをRNA-Seqデータにおいて検証することの重要性も強調している。故に、将来のRNA-Seq研究では、終止コドン含有転写産物の不安定性によって妨げられてきた、選択的スプライシングに関連するNMD事象の全体的な検出を試みるべきである。
【0220】
[0254] 最後に、本研究は、ATMタンパク質レベルも増加させたSSOによる、AT
M内の主要なNMDスイッチエクソンの効率的な抑制を実証する(
図3A~D,
図8)。それはまた、遺伝子発現のSSO仲介調節の標的として利用し得る(
図4D~G)、同じイントロンにおいて競合するNSEの調節モチーフを明らかにする(
図4A~C,
図H)。このアプローチをCRISPR-Cas9のようなゲノム編集と組み合わせて、ミニ遺伝子研究(
図4C)において示唆されたスプライシング調節モチーフ又はタンパク質結合部位を欠失又は導入することが可能であって、RNAプロセシングについて所望される結果をもたらす効率的なイントロン性SSOを我々が見出すのに役立つはずである。そのようなSSOの探索は、ヒトエクソンを標的とするSSOへの探索より挑戦的である。例えば、SMN2エクソン7を系統的にカバーするほとんどのSSOは、エクソンスキッピング(脊髄性筋萎縮症の治療に利用される事象)を刺激したが、その約20%は、エクソンの包含を誘導したのである。類推によって、イントロンスプライシングの所望される刺激が見出されたのは、INS イントロン1を標的とするSSOの10%でしかなくて、大多数は、この効果を示すのに失敗した。提起される戦略は、ヒトの補助スプライシング配列についての下等動物に比較してずっと高次の情報内容を利用して、将来の全世界的なプレmRNAフォールディング研究によって大いに促進されるはずである。例えば、NSE 3’ssを効率的に遮断したSSO(SSO-NSE3,
図3A,B)とは違って、NSE内へ7ヌクレオチドだけ伸びている一部重複性のモルホリノは、U2AF結合部位を標的としたにもかかわらず、同じ3’ssを抑制して突然変異:IVS28-159A>Gのスプライシングをレスキューすることに失敗した(
図4A)。このことは、このモルホリノオリゴが、上記の知見に一致して、エクソン活性化の責任はないがエクソン抑制には責任がある構造又はモチーフへのアクセスを遮断した可能性があることを示唆する(
図1A~C)。イントロン内のスプライシング因子の結合部位を標的とするか又はそれを回避するアンチセンスベースのRNAプロセシングアクチベーター又は阻害剤の投与は、がん細胞におけるNMDの有益又は有害な帰結を形成するために療法的に利用することができよう。このアプローチは、NMDが広範囲の転写産物に及ぶ制御機能として主に役立って、短鎖型ポリペプチドを産生するNMD基質の翻訳も促進する可能性がある(このことは、抗腫瘍免疫を刺激する場合がある)という広汎な認識によって支持されている。
【0221】
材料及び方法
プラスミド構築体
[0255] 約0.9kbのアンプリコンをU2AF1構築体のXhoI/XbaI部位へクローニングすることによって、ATMミニ遺伝子を製造した。クローニングプライマーを表S1に示す。企図した変化の同一性を確認して、望まれない突然変異を排除するために、全挿入物について配列決定した。PUF60発現ベクターも使用した。hnRNP A1構築体は、Gideon Dreyfuss(ペンシルヴェニア大学)の寛大な贈り物であった。
【0222】
細胞培養とトランスフェクション
[0256] 10%(v/vウシ胎仔血清(Life Technologies)を補充したDMEMにお
いて、標準条件で細胞培養を維持した。低分子干渉RNA(siRNA)とスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)でのU2AFサブユニットとU2AF35アイソフォームの欠失は、各アイソフォームの欠失レベルを確定する、経時変化実験に従って行った。オリゴ(リボ)ヌクレオチドとsiRNAを表S1に収載する。トランスフェクションは、jetPRIME(Polyplus)を製造業者の推奨法に従って使用して、6ウェルプレート又は12ウェルプレートにおいて行った。細胞は、IRへ曝露して単一ヒットを受けたもの以外は、セカンドヒットから48時間後に採取した。SF3B1欠失のためには、HEK293細胞をsiRNA混合物(S23850、S23852、及びS223598(Life Technologies))へ曝露して、48時間後に採取した。
【0223】
RNA‐Seq
[0257] DEXSeq(v.1.12.1)を使用して、0.05未満のq値に基づい
て、差示的なエクソン利用の解析を実施した。試料セット間の差示的な遺伝子とアイソフォーム発現について、Cufflinks(v.2.1.1)(百万の読取り測定値につきキロベースのエクソンモデルあたりの断片を使用して読取り値を正規化する)で解析した。FDR補正P値(q<0.05)に基づいて、有意に差示的に発現される遺伝子の選択を行った。
【0224】
ヒトの組織及び細胞株におけるNSE発現
[0258] 19の異なる組織由来の全RNA試料を含有する FirstChoice ヒト全RNA
サーベイパネルは、Life Technologies より購入した。それぞれの組織試料は、異なるドナーに由来するRNAのプールを含有した。リンパ芽球様細胞株を低温ショックと熱ショックへ曝露した。全RNA試料をモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(プロメガ)とランダムヘキサマー又はオリゴ-d(T)プライマーで逆転写した。
図20に示すプライマーを使用して、cDNA試料を増幅した。急性骨髄性白血病又は慢性骨髄単球性白血病の無作為選択患者の骨髄試料由来の白血球より抽出した全RNAをランダムヘキサマープライマーで逆転写した。本研究は、国立研究倫理委員会(英国、サウスウェスト)[National Research Ethics Service (UK) Committee South West]によって承認された。
【0225】
スプライススイッチングオリゴヌクレオチド
[0259] 1本鎖領域との相互作用を最大化して、Mフォールドによって予測される2次構造を回避するようにSSOを設計した。すべてのSSOを Eurofins より購入し、水に希釈して、それらのアリコートを-80℃で保存した。いずれのトランスフェクションも、jetPRIME(Polyplus)を製造業者の推奨法に従って使用して行った。
【0226】
細胞培養物のイオン化放射線への曝露
[0260] Gulmay Medical(X-Strahl)D3225常用電圧X線システムを室温で0.63Gy/分の線量率で使用して、第1ヒット後48時間、(モック)欠失HEK293細胞をIRへ曝露した。実線量率は、不変メーターによってモニターした。図面の註に示したように、細胞を採取した。
【0227】
免疫ブロッティング
[0261] ATMに対する抗体(D2E2)、ATM-pS1981に対する抗体(D6H9)、CHEK2に対する抗体(D9C6)、及びCHEK2pThr68に対する抗体(C13C1)を Cell Signaling Technology 社より購入した。RBM39抗体を Thermo Fisher Scientific(PA5-31103)より購入した。X-プレスタグ、U2AF35、U2AF65、及びチューブリンを検出する抗体を使用した。SF3B1免疫ブロッティングは、マウスモノクローナル抗SAP155抗体(D138-3,MBL)で実施した。細胞溶解液の調製と免疫ブロッティングを行った。
【0228】
【0229】
実施例2 ATM遺伝子において制御されるナンセンス変異依存RNA分解機構のスイッチエクソンを標的とするアンチセンスマクロウォーク
概要
[0262] ATMは、DNA傷害応答(DDR)経路の決定的なキナーゼをコードする、重要ながん感受性遺伝子である。ATMの不足は、リンパ系腫瘍への高い感受性を明示する稀な遺伝的症候群である、毛細血管拡張性運動失調症(A-T)をもたらす。ATM発現は、スプライソソームによってしっかり制御される、イントロン28内に位置するナンセンス変異依存RNA分解機構(NMD)のスイッチエクソン(NSEと呼称される)によって制限される。成熟転写産物におけるNSEの包含をスプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)によって調節することが可能であるが、そのイントロンにおけるそれらの最適な標的は不明であって、リンパ系細胞へのそれらの送達についても検証されていない。今回、NSEのアクチベーター及び阻害剤を同定するためにイントロン28を標的とする効率的なSSOへの体系的な探索を利用した。イントロン性転移因子の断片欠失解析によってこれらのアンチセンス化合物の発見を支援して、離れたアンチセンスAluの除去時のNSE抑制と、長鎖末端リピートトランスポゾン、MER51Aの消失時のNSE活性化を明らかにした。キトサンベースのナノ粒子での胚性細胞とリンパ芽球様細胞へのSSO送達時の効率的なNSE抑制も実証して、がんやA-TにおけるATM発現のNSE仲介性の調節への可能性を開いた。まとめると、これらの結果は、NMDスイッチエクソンを制御することにおける転移因子の重要な役割と遺伝子発現を改変するイントロン性SSOの能力を強調する。
【0230】
序論
[0263] 真核生物の遺伝子は、正確なタンパク質合成を確実にするために、スプライソソームと呼ばれる、大きくて高度に動的なRNAタンパク質複合体によって除去される必要がある介在配列又はイントロンを含有する。該細胞は、ヒトゲノムの少なくとも4分の1に由来する、前駆体メッセンジャーRNA(プレmRNA)を含有するイントロンの転写を完了するのに過度のエネルギー及び時間を必要として、この課題を達成するには、ノンコーディングRNAと200より多い様々なスプライソソームタンパク質を合成する必要もある。かつては、「利己的(selfish)」又は「ジャンク(junk)」DNAとみなさ
れたが、イントロンは、今日では、遺伝子発現を高め、選択的RNAプロセシング、mRNA輸送、及びRNA監視を制御する、真核生物遺伝子の決定的な機能的成分と認められ
ている。それらは、新たな遺伝子コーディング配列や制御配列とノンコーディングRNA(マイクロRNAと環状RNAが含まれる)の重要な供給源でもある。それらの除去プロセスは、転写、mRNA輸送、及び翻訳と緊密に共役して、ほとんどのヒトイントロンは、プレmRNAより同時転写的に消失されるが、核酸療法への標的としてのそれらの潜在可能性については、解明の端緒に付いたばかりである。
【0231】
[0264] スプライソソームは、各イントロン上に、秩序だったやり方で、特定の目的のために(ad hoc)組み立てられ、U1核内低分子RNPによる5’スプライス部位(5’ss)の認識又はU2経路による3’ssの認識から始まる。正確なスプライシングには、従来のスプライス部位認識配列(5’ss、分岐点、ポリピリミジントラクト、及び3’ss)に加えて、イントロン性又はエクソン性のスプライシングエンハンサー又はサイレンサーとして知られる、スプライス部位を活性化するか又は抑制する補助的な配列又は構造が必要とされる。これらのエレメントは、真核生物ゲノムにある大過剰のクリプティック又はシュード部位(類似の配列を有するが、正統の部位より1桁分の数で優る)の中で真のスプライス部位が認識されることを可能にする。クリプティックスプライス部位の活性化は、未熟な終止コドン(PTC)を翻訳読取りフレームに導入する可能性があって、それが遺伝性疾患をもたらす場合がある。そのような転写産物は、通常はNMD経路によって認識されて、下方制御されている。しかしながら、クリプティックエクソンとNMDは、天然に存在する転写産物の発現を制御する上で、そして造血作用の最終段階によって例示されるような、分化段階特異的なスプライシングスイッチにも重要な役割を担っている。加えて、クリプティックスプライス部位は、天然のスプライス部位と競合し得る、非生産的又は部分的なスプライソソームアセンブリーを許容する場合があって、単一ヌクレオチド解像度でのそれらの正確な選択を促進する。従って、遺伝子発現を制限してmRNAアイソフォームのプールを制御する、そのような「シュードエクソン」(「有毒」エクソン又は「NMDスイッチ」エクソンとしても知られる)を活性化するクリプティックスプライス部位は、核酸治療剤の興味深い標的を提供する可能性があるが、そのようなアプローチの利用は、その揺籃期にある。
【0232】
[0265] スプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)は、スプライス部位認識又は制御配列へ結合してそれらの標的についてシス及びトランス作用因子と競合することによってイントロンスプライシングを調節するアンチセンス試薬である。それらは、異常なRNAプロセシングを回復させ、既存のmRNAアイソフォームの相対量を改変するか又は通常は該細胞によって発現されない新規のスプライス変異体を産生することが示されてきた。前臨床開発と臨床開発において利用されたほとんどのSSOは、エクソン配列を標的としてきた。機能的なイントロン性SSOは、疾患起因性の突然変異によって活性化されるイントロン性クリプティックスプライス部位へのアクセスをSSOが遮断しなければ、同定することがより困難である。第1に、大部分のイントロン配列は、ヒトゲノム内にイントロン性の補助スプライシングモチーフが多量にあるにもかかわらず、RNAプロセシングに影響を及ぼさないかもしれない。加えて、それらの同定は、長いイントロンでは、コストがかかって非効率的である。エクソンスキッピングを導入するように設計されたほとんどのエクソン性SSOは、通常は、所望される効果を有する。例えば、SMN2エクソン7を系統的に網羅するほとんどのSSOは、脊髄性筋萎縮症へのアンチセンス療法の前提条件であるエクソンスキッピングを刺激したが、エクソンの包含を増加させたのは、約20%であった。対照的に、イントロンスプライシングの刺激が見出されたのは、INSイントロン1を標的とするSSOの約10%にすぎず、その一方で、大多数はこの効果を示すことができなかった。有効なSSOの同定は、スプライソソーム又はエクソン接合複合体の成分についての結合部位を同定する、プレmRNAフォールディング及び紫外線架橋連結及び免疫沈降の全体研究によって促進される可能性がある。しかしながら、これらの結合部位は、最適のアンチセンス標的を反映しないかもしれないし、それらの解像度は十分でないかもしれない。このように、RNAプロセシングに対して所望される効果があるイントロン性SSOの探索は、依然として難題なのである。
【0233】
[0266] 最近、RNA-Seq研究は、U2核内低分子RNP(U2AF)の補助因子の各サブユニットを欠失した細胞内のATMイントロン28深部にあるNMDスイッチエクソン(NSEと呼ばれる)の活性化を明らかにした。U2AFは、イントロン末端にある高度に保存された3’ss AGジヌクレオチドと共役してポリピリミジントラクトへ結合して、この結合が分岐部位へのU2動員とラリアット(lariat)イントロンの形成を促進する。しかしながら、各U2AFサブユニット(U2AF35とU2AF65)を欠失した細胞において活性化されて特徴的な3’ss組織化を明示した多数のエクソンの最近の同定では、ますます増えつつあるRNA結合タンパク質で見出される、エクソン抑制性や活性化の活性に類似して、カノニカルスイッチエクソンとNMDスイッチエクソンの両方のサブセットがU2AFによって抑制されることが示唆された。このNSEレベルは、3’ss認識に関与する追加のスプライシング因子のノックダウンに即応して、NSEそれ自体とその3’ssにそれぞれ位置する、2つの天然DNA変異体(rs4988000とrs609261)によって影響を受けた。NSEと同じイントロン内のその競合性シュードエクソンを標的とすることによってATM mRNAにおけるNSEの包含レベルを調節するSSOも同定されてきた。このATM NSEは、いくつかの理由で、抗がん療法への興味深くて有望な標的を提供する:(i)ATMキナーゼは、2本鎖切断に応答して活性化され、広範囲の標的がある広汎なシグナル伝達ネットワークを可動化して、DNA傷害剤に対する細胞感受性に影響を及ぼす;(ii)ATMシグナル伝達経路におけるU2AF制御されたエクソン利用は、MRN/ATM-CHEK2-CDC25軸に集中して、選好的に関与する転写産物では、がん関連遺伝子融合と染色体転座との関連が示唆された;そして(iii)ATM NSE活性化は、各U2AFサブユニットを欠いている細胞においてATM発現を制限する。しかしながら、最適のNSE SSOについては知られておらず、リンパ系細胞へのそれらの送達については、検証されていない。
【0234】
[0267] 今回の研究では、イントロン28全体を網羅するSSOについて系統的にスクリーニングして、NSEを活性化するか又は抑制して推定のNSEベースのATM阻害剤及びアクチベーターとして治療戦略に利用し得る、追加のSSOを同定した。NSEの包含に影響を及ぼす同じイントロン内の遠れた転移因子も同定した。最後に、キトサンベースのナノ粒子を使用する胚性及びリンパ芽球様細胞株へのSSO送達時の効率的なNSE抑制についても示した。
【0235】
材料及び方法
プラスミド構築体
[0268] ATMイントロン28全体と隣接するエクソンを含有するレポーター構築体を、増殖プライマーのATM26及びATM27(表2)を使用して、pCR3.1(インビトロジェン)のHindIII/XbaI部位においてクローニングした。欠失構築体(
図16)は、突然変異誘発プライマーでの重複伸長PCRによって入手した(表2)。NSEとエクソン29を含有する約0.9kbのアンプリコンをU2AF1構築体のXhoI/XbaI部位へクローニングすることによって、ハイブリッドATMミニ遺伝子を作製した。プラスミドを大腸菌(DH5α)内で増殖させて、Gene JET Plasmid Miniprep キット(Thermo Scientific)でプラスミドDNAを抽出した。挿入物全体について配列決定して、企図された変化の独自性を確認して、望まれない突然変異を排除した。
【0236】
スプライススイッチングオリゴヌクレオチド(SSO)
[0269] 内因性プレmRNAと外因性プレmRNAの両方でSSOを検証するために、イントロン28において転移因子を回避するようにSSOを設計した。RepeatMasker を
使用して、この構築体の配列内にトランスポゾンを確認した。このSSOのGC含量は、少なくとも24%(平均31%)であって、それらの平均長は、約20ヌクレオチドであ
った。SSOは、ATMイントロン28内の3つのユニーク領域(A、B、及びANと呼ばれる、
図17)を包括的に網羅して、ホモポリマートラクトだけを回避した。体外(ex
vivo)スクリーニングに十分な安定性を確保するために、SSO(Eurofins)を各リボ
ースで2’-O-メチルによって、そして各末端連結部ではホスホロチオエートによって修飾した。SSOを2重蒸留水で希釈して、Nanodrop(ThermoScientific)を使用して定量した。それらの正規化アリコートを-80℃で保存した。
【0237】
PU値の決定
[0270] PU(無対応確率)値は、短い配列のすべての可能なRNA構造を考慮し、各ヌクレオチド位置でのそれらの比較を可能にすることによって平衡分配関数を使用して、RNA1本鎖性を評価する。PU値が高いほど、RNAモチーフの1本鎖性が高いことを示す。PU値は、先の3つのイントロン領域とそれらの30ヌクレオチドの隣接配列をインプットとして使用して、記載のように計算した。SSO標的の各位置でのPU値を平均して、SSO誘導性のNSE包含レベルと相関付けた。
【0238】
ステアリル化トリメチルキトサンの製造
[0271] 元は Agaricus bisporus より入手した超純粋キトサンに由来するトリメチル
キトサンキトサンは、KitoZyme(ベルギー)より提供された。
【0239】
[0272] 精製産物は、0.33M NaCH3COOH/0.28M CH3COOH溶出液における1mL/分の流速でのゲル浸透クロマトグラフィーによって定量されるように、43.3±5.5kDの数平均分子量(Mn)と2.4±0.3の多分散指数(Mw/Mn)を有した。アセチル化の度合いと4級化の度合いは、フーリエ変換赤外分光法と1H-核磁気共鳴分光法(1H NMR)によってそれぞれ決定して、11.1±0.9%と30.1±4.6%であった。トリメチルキトサンをN-スクシンイミジルステアレート(Santa Cruz BioTechnologies)で官能化して、1H NMRによって決定したように、2.1±0.6%(モル%)の最終置換度を達成した。
【0240】
ナノ複合体の形成
[0273] 等量(30μL)のSSOとポリマー溶液を混合することによって、ナノ複合体を製造した。簡潔に言えば、SSOを緩衝液A(20mM HEPES,pH7.3,5%(w/v)グルコース)に希釈して1M Na2SO4を補充して、50mMの最終濃度とした。ポリマー溶液とSSO溶液をともに60℃で5分間加熱した後で、ボルテックスを用いて1,000rpmで15秒間混合した。この被検複合体は、先に最適化したように、4級化アミン(N)のリン酸基(P)に対するモル比が20、40、及び80であるように製造されて、20~80のN/P比に対して110~130nmの流体力学的径を有した。この複合体を室温で30分間安定化させた後で、血清も抗生物質もない240μLの培養基(DMEM)へ加えた。キトサン含有培養物中のSSOの最終濃度は、300nMであった。トランスフェクションから24時間後、300μLの血清/抗生物質入り培養基を加えた。この細胞を24時間後に採取した。
【0241】
[0274] 細胞培養とトランスフェクション。HEK293細胞とリンパ芽球様VAVY細胞を10%(v/v)胎仔ウシ血清を補充したDMEMにおいて標準培養条件で維持した。トランスフェクションに先立つ24時間前に細胞を70%集密度で播種した。jetPRIME(Polyplus)を製造業者の推奨法に従って使用して、12又は24ウェルプレートにおいて、野生型構築体と欠失構築体のトランスフェクションを行った。全RNA抽出のためにこの細胞を24時間後に採取した。各SSOを全長ATM構築体(50nM)の有り無しでトランスフェクトして、RNA抽出のために48時間後に細胞を採取した。
【0242】
[0275] スプライス(された)産物の分析。TRI試薬(Ambion)を使用してRNA試
料を単離した。キトサン実験からの全RNA試料をRNeasyキット(キアゲン)で抽出した。RNAを定量して、1μgの全RNAをモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(プロメガ)とランダムヘキサマー又はオリゴ-d(T)プライマーで逆転写した。外因性cDNA試料は、プライマーのPL4とATM-Fを使用して増幅して、内因性産物は、プライマーのATM-FとATM-Rを使用して増幅した(表2)。スプライス産物をアガロースゲルとポリアクリルアミドゲルで分離して、それらのシグナル強度を測定した。統計解析は、Stat200(BioSoft,イギリス)で行った。
【0243】
【0244】
結果
[0276] NSEの3’ss又は5’ssのいずれかを標的とするSSOは、このエクソンをハプロタイプ依存的なやり方で効率的に抑制する。NSEを活性化する最適なイントロン性SSOの同定を容易にするために、ATMイントロン28全体を含むスプライシングレポーター構築体(
図16A)を初めに作製した。この構築体は、HEK293 DNAを鋳型として使用するPCRによって入手した。イントロン28の参照配列(hg19)は、約3,100ヌクレオチドの長さで、平均的なヒトイントロンに類似している。イントロン28の約64%を転移因子が占有し、このイントロンの5’半分の約350ヌクレオチド領域とエクソン性隣接配列を除いて、その中央部分を完全に充たしている(
図16A)。プラスミドDNAの配列決定は、追加のトランスポゾンコピーのない、転移因子の同じ組織を明らかにした。それはまた、rs4988000とrs609261でのC対立遺伝子とG対立遺伝子をそれぞれ示し、この構築体がATM mRNAにおけるNSEの包含に最も許容的なハプロタイプを含有することを示した。HEK293細胞へのトランスフェクションの後で全RNAを抽出して、ベクタープライマーPL4(表2)とエクソンプライマーでの増幅に先立って逆転写した(
図16A)。スプライス産物の検証は、ほとんどの転写産物がイントロン配列を完全に欠いた(NSE-)のに対し、約36%のmRNAがNSEを含有する(
図16B,レーン1)ことを示し、この割合は、先に報告されたハイブリッドレポーターの場合よりやや高かった。
【0245】
[0277] 転移因子のNSEの包含への重要性を決定するために、重複伸長PCRを使用して、イントロン28由来の各トランスポゾンを個別に欠失させた(欠失1~欠失5、
図16A)。このイントロンの大きな中央部分もすべてのトランスポゾンと共に欠失させて、NSEとその上流配列をインタクトなままにした(このイントロンの約75%、欠失6)。実証済みの変異構築体(いずれも、rs4988000とrs609261で野生型構築体と同一の遺伝子型を有する)のトランスフェクションは、その大きな欠失がNSE含有転写産物を増進することを明らかにした(欠失6、
図16B)。MER51エレメントの欠失は、NSEの包含をより小さな程度で増加させた。対照的に、アンチセンスAluの欠失がNSEを阻害する一方で、長い散在反復の欠失(欠失3と欠失5)又はユニークなイントロン性断片の欠失(欠失2)は、NSE活性化に何の影響も及ぼさなかった。NSE包含レベルの変動性は、U2AF35の2ヒットノックダウンの後でずっとより高くて、欠失6でのみNSEレベルの有意な増加が維持され(
図16B)、NSE応答の主要なストレス成分に一致していた。次いで、そのゲノム内にユニーク配列を有する3つのイントロン領域(A、B、及びANと呼ばれる)を標的とする一方でNSEの上流にある予測分岐部位を回避するSSOの系列を設計した(
図17A,表2)。各SSOをそれぞれのリボースにて2’-O-メチルで、そしてそれぞれの末端連結部にてホスホロチオエートで修飾して、一過性トランスフェクションにおけるそれらのRNアーゼH抵抗性と十分な安定性を確保した。陽性対照と陰性対照として、NSE 3’ssを遮断するのにきわめて効率的であるSSO-NSE3と、スクランブルSSOの系列と、RNA-Seqによって確認されるようにHEK293細胞において発現されない他の遺伝子(INSとBTKが含まれる)を標的とするSSOの系列を使用した。それぞれのSSOを野生型ATM構築体の有り無しで個別にトランスフェクトした。
【0246】
[0278] スプライス産物の測定は、SSO-NSE3により最も効率的なNSE抑制が生じることを明らかにした(
図17B)。試験したSSOの約半数が対照と比較してNSEの包含レベルを改変し、リプレッサーSSOとアクチベーターSSOがほぼ同数であった。反復トランスフェクション間のピアソン相関係数は、きわめて有意で0.88(P<10~8)に達した;しかしながら、外因性NSEレベルと内因性NSEレベルの間の全体相関性は、0.35(P<0.01)にすぎなかった。
【0247】
[0279]
図16の実験は、NSEの包含がトランスポゾンの内側と外側にある遠位スプライシング制御配列によって制御されることを示した。その天然のプレmRNAコンテクストにおいて実験的に決定されたスプライシングエンハンサー及びサイレンサーのモチーフは、1本鎖領域において選好的に生じ、それらがRNA結合タンパク質やエクソン選択を制御する他のリガンドへよりアクセスし易いことを示唆した。従って、SSOの不対合領域への選好的な標的化をすれば、イントロン性SSOの探索が改善される可能性がある。この仮説を検証するために、各SSOによって誘導されるNSE包含のレベルをそれらの平均PU値と相関させた(
図17C)。これらの数値は、平衡分配関数を使用して、それらのRNA標的の1本鎖性を評価するものであって、数値が高いほど、1本鎖コンホメーションの確率が高いことを知らせる。興味深いことに、平均PU値がより高いSSO標的は、エクソンスキッピングを誘導する傾向があって、該エクソンより2kbほど離れた所での不対合相互作用の効率的な遮断がその活性化を妨げる可能性があることを示唆した。
【0248】
[0280] 上記に記載した実験では、成熟した外因性転写産物及び内因性転写産物においてNSEの包含を活性化するイントロン性SSOの小セットを同定した。NSEがATM発現をNMDにより制限し得るので、アクチベーターSSOとリプレッサーSSOは、調整可能な遺伝子特異的阻害剤として役立つ可能性がある。NSE活性化SSOによる一過性のATM抑制は、2本鎖切断シグナル伝達経路や放射線増感作用を阻害することによるがん治療に有利であり得る。
【0249】
[0281] HEK293細胞よりずっと低いトランスフェクション効率を有する細胞へATM SSOを送達することができるかどうかを検証するために、ステアリル化トリメチル化キトサン(TMC-SA)を利用した。キトサンは、生体適合性、生分解性、及び低い毒性及び免疫原性で知られている、D-グルコサミンとN-アセチル-D-グルコサミンの天然の共重合体である。トリメチル化されると、キトサンは、中性pHでのその溶解性を改善する永続的な陽電荷を獲得する。ステアリル化は、SSOとの安定したナノ複合体の形成と、HeLa/pLuc705系(変異HBB1イントロンによって中断されたルシフェラーゼ遺伝子を利用する)におけるそのトランスフェクション活性に必要であることがわかった。
【0250】
[0282] TMC-SAがSSO-NSE3のHEK293細胞内への送達を促進することができるかどうかを最初に検討した。
図18Aは、SSO-NSE3-TMCナノ粒子への曝露に続くNSEレベルの低下をスクランブルSSOと比較して示す。この低落は、20及び40のTMC-SA/SSO-NSE3(N/P)比で有意であった。このNSE低落は、非複合SSO-NSE3へ曝露した細胞におけるNSEの包含と比較する場合にも明らかであって、このきわめてトランスフェクト可能な細胞株によるそれらの有意な取込みと一致していた。しかしながら、NSEレベルの抑制は、TMC-SA/SSO-NSE3では、jetPrime で同じ細胞株へより低い最終濃度でトランスフェクトされた同
じオリゴほどは効率的でなかった。TMC-SA/SSO-NSE3ナノ複合体への曝露時の有意なNSE抑制は、非複合SSO-NSE3がNSEを抑制し得なかったリンパ芽球様細胞株でも観測された(
図18B)。まとめると、これらの結果は、イントロン性SSOのキトサンベースの送達系がヒト細胞においてNMDスイッチエクソンを抑制することが可能であるという初めての原理証明を提供するものである。
【0251】
考察
[0283] 本研究は、NMDスイッチエクソンの活性化を促進及び抑制する転移因子の初めての例を示す(
図16)。Alu配列それ自体に3’ss又は5’ss活性化又は補助スプライシングモチーフを介してエクソン化する傾向があって、そのことがヒトの病的病態に有意に寄与する。それらはまた、離れた欠失によってエクソン化されて遺伝性疾患を引き起こす可能性があり、それらが遠位イントロン配列の成熟転写産物における包含を促進し得ることを示唆する。このことは、選択的にスプライスされるエクソンに隣接するAluの割合が恒常的にスプライスされるものより高いことによってさらに裏付けられる。これらの離れた効果の正確な機序については理解されていないが、これらのGCリッチ転写産物の2次構造が重要な役割を担う可能性がある。
【0252】
[0284] 突然変異誘発性のエクソン化は、哺乳動物の散在反復配列と呼ばれる、より昔からの短鎖散在エレメントが含まれる、他のすべての転移因子群でも示されてきた。今回の研究では、MER51A(中位反復頻度リピート[Medium Reiterated frequency repe
at]ファミリー51)に対して最も類似しているイントロン性転移因子がNSEを抑制し、Alu仲介性のNSE活性化に対抗する緩衝剤として作用した(
図16Aと
図16B)。ATM MER51は、相対的にGCリッチ(約44%)であって、同時転写フォールディングの間にGCリッチAluとの分子内相互作用を促進するのかもしれない。このエレメントは、いくつかの逆位反復を含有し、おそらくは、NSEの包含を制御し得る、曝露されたプリンリッチループを含有する安定したヘアピンを形成する(
図19)。ヒトゲノムには、識別可能なMER配列の約250,000コピーが存在すると推定され、その多くがタンパク質コーディング遺伝子の成熟転写産物に見出され、タンパク質相互作用の多様性に貢献している。突然変異誘発性MERエクソン化の事象は、ギテルマン(Gitelman)症候群を引き起こすことも示された。MER51の3’部分は、疾患起因性エクソン化の約15%を占める、レトロウイルスの長い末端反復に類似している(
図19)。ほとんどのMERの起源は、哺乳動物の拡張と同時進行した、Alu拡散以前の哺乳動物散在反復の低落の後と位置付けられて、MERが早期の哺乳動物放散への洞察をもたらす可能性があることを示唆した。しかしながら、MER仲介性のエクソン活性化の根底にある分子機序についてはわかってないので、さらなる研究が求められよう。まとめると、これらの結果は、長いイントロンにおける転移因子の相互作用が多くのNMDスイッチエクソンの包含レベルに影響を及ぼして、遺伝子発現を微調整する可能性を示唆する。
【0253】
[0285] 本研究では、ATM発現に決定的な制御NMDスイッチエクソンを促進することによって作用する候補配列特異的なATM阻害剤も同定した(
図17)。ATM阻害剤は、多くの癌種の治療計画に不可欠な部分である、2本鎖切断を誘導する細胞傷害性療法(局所放射線療法が含まれる)に対してがん細胞を増感させる。化学的なATM阻害剤は、がん放射線療法への多大な期待を示したが、それらの望まれない薬物動態プロフィール、高い毒性、又は乏しい効果は、臨床現場へのそれらの進展を阻んできた。対照的に、新たに同定されたSSOは、ヒトゲノム内のユニーク配列を標的とし、それらの作用機序は十分明確であって、それらは、天然の生分解性化合物を使用して細胞へ送達することができる(
図18)。加えて、NSEを活性化するSSOとそれを抑制するSSOのアベイラビリティは、化学阻害剤より正確に遺伝子発現を増減させる機会を提供する。本明細書に記載されるアプローチは、NMDを活性化するクリプティックエクソンのSSO仲介性調節を利用する。これらのエクソンは、通常は、天然の転写産物においてごく低いレベルで存在しているが、それらの包含レベルは、様々な刺激に応答して効率的に上方制御することができる。最近、NMDの遺伝子特異的なアンチセンス阻害では、エクソン接合部の複合沈着部位を標的とするSSOを利用して、それによってPTC含有エクソンのスキッピングに頼らないNMD抑制を可能にした。イントロン配列に依拠する前者のアプローチとエクソン標的に依拠する後者のアプローチという2つのアプローチには、今後互いに補完して、NMDを阻害するアンチセンス戦略のレパートリーを広げる可能性があろう。
【0254】
[0286] 今回のスクリーニングにおいて利用したSSOの平均的な長さは、ユニークな標的への最小値に近かった(表2)。この短いSSOは、より長いSSOより多くのオフターゲット(off-target)効果を誘導して、内因性NSE転写産物と外因性NSE転写産物の包含レベル間の低い相関性に寄与する可能性がある。このあり得る最適以下の標的特異性とは別に、イントロン28スプライシングとNSEの包含は、外因性転写産物に存在しなかった隣接イントロンによって影響を受ける可能性がある。加えて、イントロン28スプライシングは、完全に同時転写的でない場合もあって、異なるプロモーターより転写されるRNAのフォールディングとフォールディング速度論が別個になって、その低い相関性に寄与する可能性がある。それでもやはり、今回の研究は、下等動物(選択的スプライシングへの制御可能性がより低い、より小さなイントロンを有する)と比較した場合のイントロン性補助スプライシング配列のより高次の情報量に一致して、SSOの候補イントロン性標的部位がヒトゲノムに豊富にあることを明確に実証する。SSO-NSE3と他のSSOは、内因性NSE含有mRNAを抑制することが可能であり(
図17Bと
図1
7C)、比存在度が約1%ほどの低さであるNMD転写産物がmRNA消費に寄与することが可能であっても、それらの低下が正常細胞においてATMタンパク質レベルの持続的な増加をもたらし得るかは検証されていない。今回のアプローチには、特に(NSEの3’ss認識を容易にする)C対立遺伝子をrs609261に担う同型接合A-T患者において、漏出A-T対立遺伝子の表現型の結果を突然変異非依存的なやり方で緩和する可能性があるかもしれない。最後に、キトサンベースのナノ粒子が血液脳関門を貫通して組織形態学に悪影響を及ぼすことなく小脳に蓄積することが示され、NSEリプレッサーと推定ATMアクチベーターを神経細胞へ送達してATの小脳症状を改善する可能性を開いた。