(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098535
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】高所作業車の安全装置
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20240717BHJP
B66F 9/06 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B66F9/24 H
B66F9/06 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002070
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100115808
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 真司
(74)【代理人】
【識別番号】100113549
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 守
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】大葉 孝明
(72)【発明者】
【氏名】八重樫 耕
【テーマコード(参考)】
3F333
【Fターム(参考)】
3F333AA08
3F333AB01
3F333AC01
3F333BD01
3F333FA11
3F333FA21
3F333FA22
3F333FA29
3F333FA36
3F333FD15
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】障害物付近での作業性の低下を防止することのできる高所作業車の安全装置を提供する。
【解決手段】安全装置は、距離センサ55において検出される検出距離DKが予め定められた設定距離DS以下となる場合に、作業台40の障害物Sへの接近方向の移動を停止させる制御を行う。但し、この安全装置は、操作レバーの操作量が予め設定された閾値操作量以下である状態で距離センサ55の検出距離が設定距離DS以下となった場合には、当該操作量に応じた駆動速度での作業台40の対象物Sへの接近方向の移動を許容する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な走行体と、
前記走行体に起伏作動および伸縮作動自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に設けられた作業台と、
前記作業台を移動させる際に駆動されるアクチュエータと、
前記アクチュエータの駆動操作を行うための操作装置と、
前記操作装置の操作に応じて前記アクチュエータを駆動させて前記作業台を移動させる制御を行う作動制御部と、
前記作業台に設けられて周囲の対象物との距離を検出する距離検出部と、
設定距離を設定する距離設定部と、
前記距離検出部において検出される検出距離が前記距離設定部において設定される設定距離以下となる場合に、前記作業台の前記対象物への接近方向の移動を停止させる制御を行う停止制御部とを備え、
前記停止制御部は、前記操作装置の操作量が予め設定された閾値操作量以下である状態で前記距離検出部の検出距離が前記距離設定部において設定される設定距離以下となった場合には、当該操作量に応じた駆動速度での前記作業台の前記対象物への接近方向の移動を許容することを特徴とする高所作業車の安全装置。
【請求項2】
所定の警報作動を行う警報装置を備え、
前記停止制御部は、前記距離検出部の検出距離が前記距離設定部において設定される設定距離以下となる状態で前記操作装置の操作量に応じた駆動速度での前記作業台の前記対象物への接近方向の移動を許容する場合には、前記警報装置に警報作動を行わせることを特徴とする請求項1に記載の高所作業車の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者搭乗用の作業台を備える高所作業車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の高所作業車として、走行可能な車体上に旋回、起伏、伸縮作動自在に配設されたブームと、このブームの先端部に設けられた作業者搭乗用の作業台とを備え、作業台に搭乗した作業者が作業台上に設けられた操作装置を操作してブームを作動させることにより、作業台を任意の高所位置へ移動自在に構成した車両が知られており、例えば、電線工事、ビルディングや船舶の建造、高速道路建設等、種々の高所での作業に用いられている。
【0003】
このような高所作業車では、作業台の側面等にレーザセンサや超音波センサなどの距離センサを設けて、作業台の移動する方向に存在する物体(障害物)との距離を検出し、この検出距離が予め設定された設定距離以下となった場合に、作業台の移動を強制的に停止(規制停止)させるものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、作業台が障害物に対して設定距離以下まで接近した場合に、常に作業台の移動を規制停止させると、作業台を障害物の付近にある作業対象に対して十分に近付けることができなくなったり、作動規制を解除する手間が生じたりすることで、障害物付近での作業性が低下するという問題があった。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、障害物付近での作業性の低下を防止することのできる高所作業車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る高所作業車の安全装置は、走行可能な走行体と、前記走行体に起伏作動および伸縮作動自在に設けられたブームと、前記ブームの先端部に設けられた作業台と、前記作業台を移動させる際に駆動されるアクチュエータと、前記アクチュエータの駆動操作を行うための操作装置と、前記操作装置の操作に応じて前記アクチュエータを駆動させて前記作業台を移動させる制御を行う作動制御部と、前記作業台に設けられて周囲の対象物との距離を検出する距離検出部と、設定距離を設定する距離設定部と、前記距離検出部において検出される検出距離が前記距離設定部において設定される設定距離以下となる場合に、前記作業台の前記対象物への接近方向の移動を停止させる制御を行う停止制御部とを備え、前記停止制御部は、前記操作装置の操作量が予め設定された閾値操作量以下である状態で前記距離検出部の検出距離が前記距離設定部において設定される設定距離以下となった場合には、当該操作量に応じた駆動速度での前記作業台の前記対象物への接近方向の移動を許容することを特徴とする。
【0008】
また、上記構成の高所作業車の安全装置において、所定の警報作動を行う警報装置を備え、前記停止制御部は、前記距離検出部の検出距離が前記距離設定部において設定される設定距離以下となる状態で前記操作装置の操作量に応じた駆動速度での前記作業台の前記対象物への接近方向の移動を許容する場合には、前記警報装置に警報作動を行わせることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る高所作業車の安全装置によれば、作業台が障害物に対して設定距離以下まで接近したとしても、現在操作中の操作装置の操作量が閾値操作量以下である場合には、作業台の移動が規制停止されることなく、当該操作装置の操作に応じた作業台の移動が許容されるため、当該作業台を障害物と接触しない程度のぎりぎりの位置まで接近させて目的の作業対象に近付けることができるようになり、作業の安全性を確保しつつ、障害物付近での作業性を向上させることが可能となる。
【0010】
また、上記構成の高所作業車の安全装置において、作業台が障害物に対して設定距離以下まで接近した状態において操作装置の操作に応じた作業台の移動を許容する場合には警報装置に警報作動を行わせることで、作業台が障害物に接近していることを作業者に対して注意喚起することができ、作業の安全性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る安全装置を備える高所作業車を示す側面図である。
【
図2】第1実施形態の安全装置を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態の安全装置における距離センサの検出可能範囲を示す側面図である。
【
図4】第1実施形態において適用される設定距離を説明するための模式図である。
【
図5】第1実施形態の安全装置の作用(ブームの伸縮作動に応じて作業台が障害物に接近する場合)を説明するための模式図である。
【
図6】第1実施形態の安全装置の作用(走行体の走行作動に応じて作業台が障害物に接近する場合)を説明するための模式図である。
【
図7】第2実施形態の安全装置を示すブロック図である。
【
図8】第2実施形態の安全装置の作用(低速作動時のブームの伸縮作動に応じて作業台が障害物に接近する場合)を説明するための模式図である。
【
図9】第2実施形態の安全装置の作用(高速作動時のブームの伸縮作動に応じて作業台が障害物に接近する場合)を説明するための模式図である。
【
図10】第3実施形態の安全装置を示すブロック図である。
【
図11】第3実施形態における伸縮操作レバーの操作量とブームの伸長速度との関係を示す図である。
【
図12】第4実施形態の安全装置を示すブロック図である。
【
図13】第4実施形態の安全装置の作用(ブームの伸縮作動に応じて作業台が障害物に接近する場合)を説明するための模式図である。
【
図14】第4実施形態における伸縮操作レバーの操作量とブームの伸長速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。本実施形態に係る安全装置を備えた自走式の高所作業車1を
図1に示しており、まず、この
図1を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。
【0013】
高所作業車1は、左右一対の前輪12および後輪13を有して走行可能な走行体10と、走行体10上に水平旋回自在に設けられた旋回体20と、旋回体20の上部に揺動自在に設けられたブーム30と、ブーム30の先端部に設けられた作業者搭乗用の作業台40とを備えて構成される。以下では、
図1の左方向を前進方向(前方向)と呼称し、
図1の右方向を後進方向(後方向)と呼称する。
【0014】
走行体10には、前輪駆動用の走行モータ14(
図2を参照)が設けられており、この走行モータ14の回転駆動によって左右の前輪(「駆動輪」とも呼称する)12を回転作動させることにより、走行体10を走行させることができるように構成されている。走行モータ14には、左右の前輪(駆動輪)12の回転をそれぞれ制動するブレーキシリンダ15(
図2を参照)が設けられている。ブレーキシリンダ15は、作動油の供給を受けていないときに、内蔵されたスプリングの力により走行モータ14の回転軸を機械的に制動ロックする、いわゆるネガティブブレーキである。また、走行体10には、操舵シリンダ16(
図2を参照)が設けられており、この操舵シリンダ16を伸縮駆動させて、不図示のステアリング機構を介して左右の後輪(「操舵輪」とも呼称する)13の向き(舵角)を変えることにより、走行体10の舵取り(後輪13の転舵作動)を行うことができるようになっている。なお、前輪(駆動輪)12、後輪(操舵輪)13、走行モータ14、ブレーキシリンダ15、操舵シリンダ16、ステアリング機構などから走行体10の走行装置が構成されている。
【0015】
走行体10と旋回体20との間には、旋回機構11が設けられている。旋回機構11は、走行体10の上部に設けられた外輪(図示せず)と、旋回体20の下部に設けられて外輪に係合される内輪(図示せず)とを備えて構成される。旋回体20は、旋回機構11を介して走行体10に水平旋回自在に取り付けられており、走行体10内に設けられた旋回モータ21(
図2を参照)を回転駆動させることにより、垂直軸回りに360度水平旋回作動可能に構成されている。なお、旋回機構11の内側には、図示省略するが、走行体10側と旋回体20側との間での作動油の供給(油圧配管の接続)を可能とするスイベルジョイントと、走行体10側と旋回体20側との間での信号や電力の入出力(電気配線の接続)を可能とするスリップリングとが取り付けられている。
【0016】
ブーム30は、旋回体20側から順に、基端ブーム31、中間ブーム32及び先端ブーム33が入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ34(
図2を参照)の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮作動させることができる。また、旋回体20とブーム30との間には起伏シリンダ22(
図2を参照)が跨設されており、この起伏シリンダ22を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体をフートピン23を中心として上下面内において起伏作動させることができる。
【0017】
ブーム30の先端部には、垂直ポスト37が上下方向に揺動自在に枢支されている。垂直ポスト37は、先端ブーム33の先端部との間に配設されたレベリング機構(図示せず)により揺動制御が行われ、ブーム30の起伏角度の如何に関らず垂直ポスト37が常時垂直姿勢に保持される構成となっている。垂直ポスト37には、作業台ブラケット39を介して作業者搭乗用の作業台40が取り付けられている。作業台ブラケット39の内部には、首振りモータ38(
図2を参照)が取り付けられており、この首振りモータ38を回転駆動させることにより、作業台40全体を垂直ポスト37まわりに首振り作動(水平旋回作動)させることができる。ここで、垂直ポスト37は、上述のように常時垂直姿勢が保たれるため、結果として作業台40の床面はブーム30の起伏角度によらず常時水平に保持される。
【0018】
作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作装置50が取り付けられている。操作装置50には、
図2に示すにように、走行体10の走行操作(発進、停止および走行時の速度調整操作)を行うための走行操作レバー51aと、走行体10の舵取り操作(操舵輪13の操舵操作)を行うための操舵操作レバー51bと、旋回体20の旋回操作を行うための旋回操作レバー51cと、ブーム30の起伏操作を行うための起伏操作レバー51dと、ブーム30の伸縮操作を行うための伸縮操作レバー51eと、作業台40の首振り操作を行うための首振り操作レバー51fとを有している。これらの操作レバー51a~51fは、非操作状態のときは、レバーの向きが垂直姿勢となる中立位置に保持され、この中立位置を基準に各操作レバー51a~51fに応じて定められた方向へ傾倒操作可能に構成されている。各操作レバー51a~51fの操作状態(中立位置を基準とする操作方向および操作量)は、例えばポテンショメータ等の操作検出器により検出され、その検出信号が各操作レバー51a~51fの操作状態(中立位置を基準とする操作方向および操作量)に応じた操作信号として後述のコントローラ60に入力される。このように、作業台40に搭乗した作業者は、操作装置50の各操作レバー51a~51fを操作することにより、走行体10の走行作動(走行モータ14の回転駆動)、走行体10の制動作動(ブレーキシリンダ15の伸縮駆動)、走行体10の転舵作動(操舵シリンダ16の伸縮駆動)、旋回体20の旋回作動(旋回モータ21の回転駆動)、ブーム30の起伏作動(起伏シリンダ22の伸縮駆動)、ブーム30の伸縮作動(伸縮シリンダ34の伸縮駆動)、作業台40の首振り作動(首振りモータ38の回転駆動)などの各作動操作を行うことができる。なお、詳細後述するが、この作業台40には、作業台40の周囲に存在する対象物(障害物)との間の距離を検出するための距離センサ55(
図2を参照)が取り付けられている。
【0019】
高所作業車1の作動機構は、
図2に示すように、操作装置50からの操作信号を受けて、走行モータ14、ブレーキシリンダ15、操舵シリンダ16、旋回モータ21、起伏シリンダ22、伸縮シリンダ34、及び首振りモータ38等(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも称する)を制御するコントローラ60と、これらの油圧アクチュエータを駆動させるために作動油を供給する油圧ユニット70とを備えて構成される。
【0020】
油圧ユニット70は、作動油を貯留する油圧タンク71と、旋回体20に搭載されたエンジンEの動力を用いて駆動されることで作動油を吐出する油圧ポンプ72と、油圧ポンプ72から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ部73とを有して構成される。制御バルブ部73は、走行モータ14に対応する走行制御バルブV1、ブレーキシリンダ15に対応するブレーキ制御バルブV2、操舵シリンダ16に対応する操舵制御バルブV3、旋回モータ21に対応する旋回制御バルブV4、起伏シリンダ22に対応する起伏制御バルブV5、伸縮シリンダ34に対応する伸縮制御バルブV6、首振りモータ38に対応する首振り制御バルブV7を有している。この制御バルブ部73は、コントローラ60の作動制御部61からの指令信号に基づき、各制御バルブV1~V7のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ72から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの駆動方向及び駆動速度を制御する。なお、コントローラ60の作動制御部61は、各操作レバー51a~51fからの操作信号が入力されると、この操作信号(操作方向および操作量)に応じた指令信号を対応する制御バルブV1~V7に出力して、この操作信号(操作方向および操作量)に応じた駆動方向および駆動速度で油圧アクチュエータを駆動する。なお、操作レバー51a~51fの操作量と操作信号の出力値とはほぼ比例関係にあり、この操作信号の出力値と制御バルブV1~V7への指令信号の出力値(バルブ開度、つまり、油圧アクチュエータに供給される作動油の供給量)もほぼ比例関係にある。
【0021】
[第1実施形態]
次に、第1実施形態に係る安全装置について
図2~
図4を参照して説明する。
【0022】
第1実施形態の安全装置は、
図2に示すように、距離センサ55と、コントローラ60と、制御バルブ部73とを主体に構成される。この安全装置は、作業台40の周囲に存在する対象物(障害物S)との距離を検出して当該障害物Sとの干渉を防止する障害物検出機能を有している。なお、制御バルブ部73については、前述したので、重複説明を省略する。
【0023】
距離センサ55は、
図3に示すように、作業台40の後端側(操作装置50の反対側)に取り付けられており、作業台40の後方に存在する障害物Sとの距離を検出する。距離センサ55は、例えば、LiDAR(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Rangingの略称)により構成される。この距離センサ(LiDAR)55は、照射したレーザ光が障害物S(測距点)に到達して戻るまでの往復時間に基づいて障害物S(測距点)までの距離を検出する。また、この距離センサ(LiDAR)55は、レーザ光を高速で縦方向および横方向に二次元的に走査することで、上下方向および左右方向の所定の角度の検出可能範囲56内において障害物S(測距点)との距離を三次元で検出する。なお、距離センサ55は、作業台40の後側面に取り付けられており、距離センサ55により検出される障害物Sとの間の距離は、実質的にみて作業台40と障害物Sとの間の距離とみなすことができる。そして、距離センサ55は、検出可能範囲56内に存在する障害物Sまでの距離を検出して、その検出した距離(検出距離)に応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ60に出力する。
【0024】
なお、本実施形態では、距離センサ55を作業台40の後端側に設けているが、作業台40の前後、左右、上下にそれぞれ設けてもよい(2個以上の距離センサ55を設けてもよい)。また、距離センサ55は、LiDARに限定されるものではなく、例えば超音波センサ、赤外線センサ、レーダセンサ(ミリ波レーダ)など他の非接触式の距離センサを採用してもよい。また、この距離センサ55に代えて、例えば、単眼カメラ、ステレオカメラ、デプスカメラなどの撮像装置を適用してもよい。
【0025】
コントローラ60は、作動制御部61と、停止制御部62と、距離設定部63とを有している。
【0026】
作動制御部61は、各操作レバー51a~51fからの操作信号に応じた指令信号(制御信号)を各制御バルブV1~V7に送信して、各制御バルブV1~V7のスプールを電磁駆動することで、各油圧アクチュエータの駆動方向および駆動速度を制御する。
【0027】
走行操作レバー51aが中立位置から前方向(操作しているオペレータを基準とした前後左右方向:以下同様)に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(前進方向)および作動速度(走行速度)で走行体10が走行作動するように、走行制御バルブV1のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、走行モータ14の駆動方向および駆動速度を制御する。一方、走行操作レバー51aが中立位置から後方向に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(後進方向)および作動速度(走行速度)で走行体10が走行作動するように、走行制御バルブV1のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、走行モータ14の駆動方向および駆動速度を制御する。
【0028】
また、走行操作レバー51aが中立位置から前後いずれかの方向に傾倒操作されると、ブレーキ制御バルブV2を励磁状態に制御して、ブレーキシリンダ15へ作動油を供給することで、該ブレーキシリンダ15による前輪(駆動輪)12の制動を解除して、前輪(駆動輪)12の回転を許容する。一方、走行操作レバー51aが中立位置にある状態(中立位置に復帰操作された状態)では、ブレーキ制御バルブV2を非励磁状態に制御して、ブレーキシリンダ15への作動油の供給を遮断することで、前輪(駆動輪)12の回転を制動する。
【0029】
操舵操作レバー51bが中立位置から左方向に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(進行方向に対して左方向)および作動量(舵角)で後輪13の転舵作動を行うように、操舵制御バルブV3のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、操舵シリンダ16の駆動方向および駆動速度を制御する。一方、操舵操作レバー51bが中立位置から右方向に操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(進行方向に対して右方向)および作動量(舵角)で後輪13の転舵作動を行うように、操舵制御バルブV3のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、操舵シリンダ16の駆動方向および駆動速度を制御する。
【0030】
旋回操作レバー51cが中立位置から左方向に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(左回り方向)および作動速度(旋回速度)で旋回体20が旋回作動するように、旋回制御バルブV4のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、旋回モータ21の駆動方向および駆動速度を制御する。一方、旋回操作レバー51cが中立位置から右方向に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(右回り方向)および作動速度(旋回速度)で旋回体20が旋回作動するように、旋回制御バルブV4のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、旋回モータ21の駆動方向および駆動速度を制御する。
【0031】
起伏操作レバー51dが中立位置から前方向に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(起仰方向)および作動速度(起伏速度)でブーム30が起伏作動するように、起伏制御バルブV5のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、起伏シリンダ22の駆動方向および駆動速度を制御する。一方、起伏操作レバー51dが中立位置から後方向に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(倒伏方向)および作動速度(起伏速度)でブーム30が倒伏作動するように、起伏制御バルブV5のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、起伏シリンダ22の駆動方向および駆動速度を制御する。
【0032】
伸縮操作レバー51eが中立位置から前方向に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(縮小方向)および作動速度(伸縮速度)でブーム30が伸縮作動するように、伸縮制御バルブV6のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、伸縮シリンダ34の駆動方向および駆動速度を制御する。一方、伸縮操作レバー51eが中立位置から後方向に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(伸長方向)および作動速度(伸縮速度)でブーム30が伸縮作動するように、伸縮制御バルブV6のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、伸縮シリンダ34の駆動方向および駆動速度を制御する。
【0033】
首振り操作レバー51fが中立位置から左方向に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(左回り方向)および作動速度(首振り速度)で作業台40が首振り作動するように、首振り制御バルブV7のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、首振りモータ38の駆動方向および駆動速度を制御する。一方、首振り操作レバー51fが中立位置から右方向に傾倒操作されたときは、その操作方向および操作量に応じた作動方向(右回り方向)および作動速度(首振り速度)で作業台40が首振り作動するように、首振り制御バルブV7のスプールの移動方向およびバルブ開度を制御して、首振りモータ38の駆動方向および駆動速度を制御する。
【0034】
なお、以下では、走行操作レバー51a、操舵操作レバー51b、旋回操作レバー51c、起伏操作レバー51d、伸縮操作レバー51e、首振り操作レバー51fを特に区別する必要がない場合には、単に「操作レバー51」と呼称する。
【0035】
停止制御部62は、距離センサ55により検出される検出距離DKと、距離設定部63により設定される設定距離DSとを比較して、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近しているか否かを判定する。停止制御部62は、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS以下となったことを判定した場合には、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近したと判断し、作動制御部61に停止信号を出力する。作動制御部61は、停止制御部62から停止信号を受信した場合には、制御バルブV1~V7のスプールを制御して、駆動中の油圧アクチュエータが停止するまで減速させることで、作業台40の障害物Sへの接近方向の移動を停止(規制停止)させる。なお、この作業台40の規制停止は、作業台40を急停止させるものでもよいし、作業台40を緩停止させるものでもよい。
【0036】
ここで、本実施形態では、作業台40の位置を移動させるときに駆動される油圧アクチュエータとして、走行モータ14、旋回モータ21、起伏シリンダ22、伸縮シリンダ34および首振りモータ38などが設けられている。つまり、本実施形態では、作業台40の位置を移動させるための作動(作動の種類)として、走行作動、旋回作動、起伏作動、伸縮作動、首振り作動などがあり、作動の種類に応じて移動中の作業台40を規制停止させるために要する停止距離(停止可能距離)が異なり得る。そのため、本実施形態では、作動の種類に応じて作業台40の停止位置が障害物Sに対して近くなったり遠くなったりすること(作業台40を停止させたときの障害物Sとの間の距離感の違い)を抑制するため、作動の種類(駆動対象の油圧アクチュエータの種類))に応じて設定距離DSを変更するように構成されている。なお、「作業台40の位置が移動する」とは、ブーム30の旋回作動、起伏作動、伸縮作動および作業台40の首振り作動に応じて作業台40の位置(走行体10および地面に対する位置)が移動する場合と、走行体10の走行作動に応じて作業台40の位置(地面に対する位置)が移動する場合とを含む意味で用いる。
【0037】
距離設定部63は、
図4に示すように、作業台40を規制停止させるか否かを判定するための閾値である設定距離DSを設定する。設定距離DSは、作業台40を十分な余裕をもって障害物Sの手前で停止させることのできる距離として、作動の種類に応じて設定される可変値である。本実施形態では、作動の種類に応じて設定される設定距離DSとして、走行作動時の設定距離、旋回作動時の設定距離、起伏作動時の設定距離、伸縮作動時の設定距離、首振り作動時の設定距離を有している。この設定距離DSは、作業台40の停止に要する停止可能距離DTに、マージンとしての余裕距離DYを加算した距離である。停止可能距離DTは、走行作動、旋回作動、起伏作動、伸縮作動、首振り作動などの各作動において、最大作動速度(フルレバー操作時の作動速度)で作動させている状態から所定の減速度で停止させるときに必要となる作業台40の停止距離(最大停止距離)であり、作動の種類ごとに算出される可変値である。なお、作動の種類ごとに最大作動速度および減速度(所定の減速度)は予め決められており、この既知の値から作動の種類に応じた停止可能距離DTが算出される。本実施形態では、停止可能距離DTを各作動の最大作動速度に対応した停止距離(最大停止距離)に設定することで、実際の作動速度に関わらず、移動中の作業台を当該停止可能距離DTの範囲内で確実に停止させることが可能となる。余裕距離DYは、空走距離や測定誤差などの安全を考慮した距離であり、作動の種類に依存しない共通の固定値が設定される。
【0038】
例えば、距離設定部63は、ブーム30の伸縮作動に応じて作業台40の位置が移動していることを判定した場合には、
図4(A)に示すように、ブーム30の伸縮速度(伸縮操作レバー51eの操作量)に関わらず、ブーム30の伸縮作動時の設定距離DS1として、ブーム30を最大伸縮速度で作動させたときに要する作業台40の停止可能距離DT1に、余裕距離DYを加算した距離(例えば60cm)を設定する。また、距離設定部63は、走行体10の走行作動に応じて作業台40の位置が移動していることを判定した場合には、
図4(B)に示すように、走行体10の走行速度(走行操作レバー51aの操作量)に関わらず、走行体10の走行作動時の設定距離DS2として、走行体10を最大走行速度で走行作動させたときに要する作業台の停止距離DT2に、余裕距離DYを加算した距離(例えば100cm)を設定する。本実施形態では、基本的には、ブーム30の伸縮作動よりも走行体10の走行作動の方が作業台40の移動速度に寄与するため、操作レバー51の操作量が同じであってもブーム30の伸縮作動時よりも走行体10の走行作動時の方が作業台40の停止に要する停止可能距離DTは長くなり(DT1<DT2)、その分だけブーム30の伸縮作動時よりも走行体10の走行作動時の方が設定距離DSも長くなる(DS1<DS2)。なお、詳細な説明は省略するが、ブーム30の旋回作動時の設定距離DS、起伏作動時の設定距離DS、および首振り作動時の設定距離DSについても、その作動特性に応じて適宜な値(距離)が設定される。
【0039】
このように距離設定部63は、いずれの作動が実行されているかを判定して(現在実行中の作動の種類を判定して)、その作動の種類に対応した設定距離DSを設定する。なお、距離設定部63は、各操作レバー51からの操作信号に基づいて、いずれの作動が実行されているかを判定する(現在実行中の作動の種類を判定する)。
【0040】
次に、第1実施形態の特徴的な作用として、ブーム30の伸縮作動(伸長作動)により作業台40が障害物Sに接近する場合と、走行体10の走行作動により作業台40が障害物Sに接近する場合とを説明する。
【0041】
(伸縮作動時の制御)
始めに、ブーム30の伸縮作動(伸長作動)により作業台40が障害物Sに接近する場合について
図5を参照しながら説明する。なお、図示例では、ブーム30の伸縮作動に応じて作業台40が水平方向(後方向)に移動するものとする。
【0042】
まず、
図5(A)に示すように、伸縮操作レバー51eが中立位置から後方向に傾倒操作されると、伸縮シリンダ34が伸長駆動して、ブーム30が軸方向に伸長作動することで、作業台40が後方(障害物Sに接近する方向)に移動する。このとき、距離設定部63は、伸縮操作レバー51eからの操作信号に基づき、ブーム30が伸長作動していること(伸縮シリンダ34が伸長駆動していること)を判定し、伸縮作動(伸長作動)に対応した設定距離DS1を設定する。それにより、停止制御部62は、この設定距離DS1と、距離センサ55において時々刻々と検出される検出距離DKとを比較して、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS1以下まで接近したか否かを判定する。
【0043】
ここで、
図5(B)に示すように、伸縮操作レバー51eが後方向にフルレバー操作されて、ブーム30が最大伸長速度で伸長作動しているときに、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS1以下まで接近したものとする。このとき、停止制御部62は、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS1以下となったことを判定し、停止信号を出力する。作動制御部61は、停止制御部62からの停止信号を受信すると、伸縮制御バルブV6のバルブ開度を小さくしていき、伸縮シリンダ34の伸長駆動が停止するまで減速することで(ブーム30の伸長作動が停止するまで減速することで)、作業台40の障害物Sへの接近方向の移動を減速させて最終的に停止させる。
【0044】
それにより、
図5(C)に示すように、作業台40を設定距離DS1に達してから停止可能距離DT1だけ移動させた位置、すなわち、作業台40を障害物Sよりも余裕距離DYだけ手前の位置で安全に停止させることができる。
【0045】
(走行作動時の制御)
続いて、走行体10の走行作動により作業台40が障害物Sに接近する場合について
図6を参照しながら説明する。
【0046】
まず、
図6(A)に示すように、走行操作レバー51aが中立位置から後方向に傾倒操作されると、走行モータ14が逆転方向に回転駆動して、走行体10が後進方向に走行作動することで、作業台40が後方(障害物Sに接近する方向)に移動する。このとき、距離設定部63は、走行操作レバー51aからの操作信号に基づき、走行体10が走行作動していること(走行モータ14が回転駆動していること)を判定し、走行作動に対応した設定距離DS2を設定する。それにより、停止制御部62は、この設定距離DS2と、距離センサ55において時々刻々と検出される検出距離DKとを比較して、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS2以下まで接近したか否かを判定する。なお、この走行作動時の設定距離DT2は、伸縮作動時の設定距離DT1よりも大きな距離である。
【0047】
ここで、
図6(B)に示すように、走行操作レバー51aが後方向にフルレバー操作されて、走行体10が最大走行速度で走行作動しているときに、作業台40が障害物Sに対して設定距離DT2以下まで接近したものとする。このとき、停止制御部62は、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DT2以下となったことを判定し、停止信号を出力する。作動制御部61は、停止制御部62からの停止信号を受信すると、走行制御バルブV1のバルブ開度を小さくしていき、走行モータ14の回転駆動が停止するまで減速することで(走行体10の走行作動が停止するまで減速することで)、作業台40の障害物Sへの接近方向の移動を減速させて最終的に停止させる。
【0048】
それにより、
図6(C)に示すように、作業台40を設定距離DS2に達してから停止可能距離DT2だけ移動させた位置、すなわち、作業台40を障害物Sよりも余裕距離DYだけ手前の位置で安全に停止させることができる。
【0049】
このようにブーム30の伸縮作動時と走行体10の走行作動時とで設定距離DS(DS1,DS2)を設定変更することで、ブーム30の伸長作動により作業台40が設定距離DS1を越えて障害物Sに接近したときの停止位置と、走行体10の走行作動により作業台40が設定距離DS2を越えて障害物Sに接近したときの停止位置とを同じ位置(障害物Sから同じ距離だけ手前の停止位置)とすることができる。
【0050】
以上、第1実施形態の安全装置によれば、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近したときに規制停止させる場合に、当該設定距離DSを作動の種類(油圧アクチュエータの種類)に応じて設定変更することで、作動の種類ごとに作動特性が異なる場合であっても、規制停止時の障害物Sまでの距離感の違いを軽減することができ、当該距離感の相違を起因として作業者が感じる違和感や恐怖感を軽減して、作業の安全性を向上させることが可能となる。
【0051】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態に係る安全装置について
図7を参照して説明する。ここで、上記の第1実施形態の安全装置では、作動の種類(油圧アクチュエータの種類)に応じて設定距離DSを設定変更していたが、この第2実施形態の安全装置では、作動の種類(油圧アクチュエータの種類)と作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)とに応じて設定距離DSを設定変更するようになっている。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同一の構成(又は同一の機能を有する構成)には同一の番号を用いて重複説明を省略し、主として上記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0052】
第2実施形態の安全装置は、
図7に示すように、距離センサ55と、コントローラ60と、制御バルブ部73とを主体に構成される。この安全装置は、第1実施形態と同様に、作業台40の周囲に存在する対象物(障害物S)との距離を検出して当該障害物Sとの干渉を防止する障害物検出機能を有している。
【0053】
コントローラ60は、作動制御部61と、停止制御部62と、距離設定部163とを有している。なお、作動制御部61および停止制御部62については、上述の第1実施形態と同様の構成のため、ここでは重複説明を省略する。
【0054】
距離設定部163は、作業台40を規制停止させるか否かを判定するための設定距離DSを設定する。この設定距離DSは、作業台40の移動を規制停止させるときに当該作業台40の減速を開始してから停止するまでに要する停止可能距離DTを加味して算出される。なお、第1実施形態の停止可能距離DTは、各作動における最大作動速度に対応した停止距離であったが、第2実施形態の停止可能距離DTは、各作動における現在の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)に対応した停止距離である。ここで、各作動における減速度は当該作動の種類ごとに予め決められており、各作動の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)が小さいほど作業台40の停止距離(停止可能距離DT)は短くなり、各作動の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)が大きいほど作業台40の停止距離(停止可能距離DT)は長くなる。つまり、作業台40の停止可能距離DTは、各作動の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)に応じて変化することになる。また、各作動の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)は、各作動に対応付けられた操作レバー51の操作量と略比例関係にあり、操作レバー51の操作量が小さいほど作動速度は小さくなり、操作レバー51の操作量が大きいほど作動速度は大きくなる。そのため、本実施形態では、各作動の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)と比例関係にある各操作レバー51の操作量に基づいて作業台40の停止可能距離DTを算出し、この停止可能距離DTにマージンとしての余裕距離DYを加算することで設定距離DSを算出する。従って、この設定距離DSについても、各操作レバー51の操作量(作動速度)に応じて異なるものとなり、各操作レバー51の操作量(作動速度)が小さいほど設定距離DSは短くなり、各操作レバー51の操作量(作動速度)が大きいほど設定距離DSは長くなる。このように、距離設定部163は、各操作レバー51の操作量(各作動の作動速度)に基づいて設定距離DSを算出して設定する。
【0055】
次に、第2実施形態の特徴的な作用として、ブーム30の伸縮作動により作業台40が障害物Sに接近する場合について説明する。
【0056】
(低速作動時の制御)
始めに、低速作動時のブーム30の伸縮作動(伸長作動)により作業台40が障害物Sに接近する場合について
図8を追加参照しながら説明する。なお、図示例では、ブーム30の伸縮作動に応じて作業台40が水平方向(後方向)に移動するものとする。
【0057】
まず、
図8(A)に示すように、伸縮操作レバー51eが中立位置から後方向に傾倒操作されると、伸縮シリンダ34が伸長駆動することで、ブーム30が軸方向に伸長作動して、作業台40が後方(障害物Sに接近する方向)に向けて移動する。このとき、伸縮操作レバー51eは微操作(例えば小刻みにインチング操作)されており、伸縮操作レバー51eの操作量は最大操作量(フルレバー操作時の操作量)に対して20%の操作量であるものとする。つまり、ブーム30は微操作(インチング操作)に応じた低速の作動速度で伸長作動しており、作業台40は障害物Sに対して低速で接近している。それにより、距離設定部163は、伸縮操作レバー51eからの操作信号に基づき、この伸縮操作レバー51eの操作量(20%)に応じた設定距離DS11を算出して設定する。つまり、距離設定部163は、伸縮操作レバー51eの操作量(20%)に応じた伸長速度でブーム30を伸長作動させているときに作業台40の停止に要する停止可距離DT11に、余裕距離DYを加算した距離を設定距離DS11とする。
【0058】
ここで、
図8(B)に示すように、ブーム30を伸長作動させているときに、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS11以下まで接近したものとする。なお、伸縮操作レバー51eの操作量は、最大操作量に対して20%の操作量を維持しているものとする。このとき、停止制御部62は、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS11以下となったことを判定し、停止信号を出力する。作動制御部61は、停止制御部62からの停止信号を受信すると、伸縮制御バルブV6のバルブ開度を小さくしていき、伸縮シリンダ34の伸長駆動が停止するまで減速することで(ブーム30の伸長作動が停止するまで減速することで)、作業台40の障害物Sへの接近方向の移動を停止させる。それにより、
図8(C)に示すように、低速移動中の作業台40を設定距離DS11の位置から停止可能距離DT11だけ移動させた位置、すなわち、障害物Sよりも余裕距離DYだけ手前の位置で安全に停止させることができる。
【0059】
(高速作動時の制御)
続いて、高速作動時のブーム30の伸縮作動(伸長作動)により作業台40が障害物Sに接近する場合について
図9を追加参照しながら説明する。なお、図示例では、ブーム30の伸縮作動に応じて作業台40が水平方向(後方向)に移動するものとする。
【0060】
まず、
図9(A)に示すように、伸縮操作レバー51eが中立位置から後方向に傾倒操作されると、伸縮シリンダ34が伸長駆動することで、ブーム30が軸方向に伸長作動して、作業台40が後方(障害物Sに接近する方向)に向けて移動する。このとき、伸縮操作レバー5eはフルレバー操作されており、伸縮操作レバー51eの操作量は最大操作量(100%の操作量)であるものとする。つまり、ブーム30はフルレバー操作に応じた高速の作動速度(最大作動速度)で伸長作動しており、作業台40は障害物Sに対して高速で接近している。それにより、距離設定部163は、伸縮操作レバー51eからの操作信号に基づき、この伸縮操作レバー51eの操作量(100%)に応じた設定距離DS12を算出して設定する。つまり、距離設定部163は、伸縮操作レバー51eの操作量(100%)に応じた伸長速度でブーム30を伸長作動させているときに作業台40の停止に要する停止可距離DT12に、余裕距離DYを加算した距離を設定距離DS12とする。
【0061】
ここで、
図9(B)に示すように、ブーム30を伸長作動させているときに、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS12以下まで接近したものとする。なお、伸縮操作レバー51eの操作量は、最大操作量(100%の操作量)を維持しているものとする。このとき、停止制御部62は、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS12以下となったことを判定し、停止信号を出力する。作動制御部61は、停止制御部62からの停止信号を受信すると、伸縮制御バルブV6のバルブ開度を小さくしていき、伸縮シリンダ34の伸長駆動が停止するまで減速することで(ブーム30の伸長作動が停止するまで減速することで)、作業台40の障害物Sへの接近方向の移動を停止させる。それにより、
図9(C)に示すように、高速移動中の作業台40を設定距離DS12の位置から停止可能距離DT12だけ移動させた位置、すなわち、障害物Sよりも余裕距離DYだけ手前の位置で安全に停止させることができる。
【0062】
このようにブーム30の伸長作動において低速作動時と高速作動時とで設定距離DS(DS11,DS12)を設定変更することで、低速作動時のブーム30の伸長作動により作業台40が設定距離DS11を越えて障害物Sに接近したときの停止位置と、高速作動時のブーム30の伸長作動により作業台40が設定距離DS12を越えて障害物Sに接近したときの停止位置とを同じ位置(障害物Sから同じ距離だけ手前の停止位置)とすることができる。
【0063】
なお、詳細な説明は省略するが、走行作動時の設定距離DS、ブーム30の旋回作動時の設定距離DS、起伏作動時の設定距離DS、および首振り作動時の設定距離DSについても、各操作レバー51の操作量に応じて適宜な値(距離)が設定される。
【0064】
以上、第2実施形態の安全装置によれば、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近したときに規制停止させる場合に、当該設定距離DSを作動の種類(油圧アクチュエータの種類)に関する情報だけでなく現在の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)に関する情報も加味してきめ細やかに設定することができるため、規制停止時の障害物Sまでの距離感の違いをより一層軽減することができ(常に作業台40を障害物Sに対して同じ距離だけ手前の位置で停止させることができ)、当該距離感の相違を起因として作業者が感じる違和感や恐怖感を軽減して、更なる安全性の向上を図ることが可能となる。
【0065】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態に係る安全装置について
図10~
図11を参照して説明する。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同一の構成(又は同一の機能を有する構成)には同一の番号を用いて重複説明を省略し、主として上記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0066】
第3実施形態の安全装置は、
図10に示すように、距離センサ55と、検出機能切換スイッチ58と、コントローラ60と、制御バルブ部73とを主体に構成される。この安全装置は、第1実施形態と同様に、作業台40の周囲に存在する対象物(障害物S)との距離を検出して当該障害物Sとの干渉を防止する障害物検出機能を有している。
【0067】
検出機能切換スイッチ58は、操作装置50に設けられている。この検出機能切換スイッチ58は、オン位置とオフ位置とのいずれかに切り換え可能なトグルスイッチにより構成されている(作業者が手を離しても当該切り換えられた操作位置を保持する構成となっている)。検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられると、障害物検出機能が有効となり、作業台40の周囲にある障害物Sとの距離を検出するモードとなる。検出機能切換スイッチ58がオフ位置に切り換えられると、障害物検出機能が無効となり、作業台40の周囲にある障害物Sとの距離を検出しないモードとなる。
【0068】
コントローラ60は、作動制御部61と、停止制御部262と、距離設定部263と、速度制限部264とを有している。なお、本実施形態では、検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられている場合(障害物検出機能が有効である場合)に、停止制御部262、距離設定部263および速度制御部264が動作する。
【0069】
停止制御部262は、検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられている場合、距離センサ55により検出される検出距離DKと、距離設定部263により設定される設定距離DSとを比較して、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近しているか否かを判定する。停止制御部262は、検出距離DKが設定距離DS以下となったことを判定した場合、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近したと判断し、作動制御部61に停止信号を出力する。
【0070】
距離設定部263は、検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられている場合、作業台40を規制停止させるか否かを判定するための設定距離DSを設定する。この第3実施形態の設定距離DSは、作動の種類および作動速度に依存しない固定値である。つまり、距離設定部263は、1つの設定距離DSのみを記憶しており、この一つの設定距離DSを全ての種類の作動に対して共通の閾値として設定する。なお、検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられている場合には、詳細は後述するが、各作動の作動速度の上限が制限されることで、それに伴い作業台40を停止するときに要する距離(停止可能距離DT)が全体的に短くなるため、作動の種類や作動速度によらず一律の設定距離DSを採用した場合であっても、その分だけ設定距離DSを短距離にすることができる(規制停止時の作業台40の停止位置の範囲を狭めることができる)。
【0071】
速度制限部264は、検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられている場合、各作動の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)の上限を制限する。すなわち、速度制限部264は、検出機能切換スイッチ58がオン位置である場合、操作レバー51の操作量が予め定められた閾値操作量未満であるときは、当該操作レバー51に対応付けられた作動の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)を当該操作量に応じた速度(通常の作動速度)で許容し、操作レバー51の操作量が閾値操作量以上であるときは、当該操作レバー51に対応付けられた作動の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)を所定の制限速度に制限する(
図11を参照)。この制限速度は、上記のとおり、設定距離DSを短距離化したとしても、この設定距離DSの範囲内で作業台40を停止させることのできる作動速度(作業台40を障害物Sの手前で確実に停止させることのできる作動速度)に設定されている。本実施形態では、制限速度として、各操作レバー51の閾値操作量に対応する作動速度(例えば、閾値操作量が最大操作量に対して30%の操作量であった場合には、この30%の操作量に対応する作動速度)が設定されている。つまり、各操作レバー51の操作量が閾値操作量を超えたとしても、各作動の作動速度は当該閾値操作量に対応する作動速度(制限速度)を維持することになる。本実施形態では、作動の種類に応じて作動特性(操作レバー51の操作量と作動速度との対応関係など)が異なるため、制限速度(作動速度の上限)は作動の種類ごとに設定されている(作動の種類に応じて異なる制限速度が設定される)。つまり、作業台40の移動速度に寄与する作動(作動の種類)であるほど制限速度は小さくなり、それに応じて操作レバー51の閾値操作量も小さく設定される。なお、本実施形態では、作動速度の上限を制限するということ(作動速度を所定の制限速度(制限作動速度)に制限するということ)は、油圧アクチュエータの駆動速度の上限を制限すること(油圧アクチュエータの駆動速度を所定の制限速度(制限駆動速度)に制限すること)、並びに作業台40の移動速度の上限を制限すること(作業台40の移動速度を所定の制限速度(制限移動速度)に制限すること)と同じ意味で用いている。
【0072】
この作動速度の制限は、速度制御部264が各制御バルブV1~V7のスプールの駆動量を制限することで行われる。その変形例としては、速度制限部264が作動制御部61に対して作動速度の上限を制限するための制御信号を送信するものでもよいし、速度制御部264が作動制御部61から各制御バルブV1~V7に送信される制御信号を修正し、この修正した制御信号を各制御バルブV1~V7に送信するものでもよい。
【0073】
次に、第3実施形態の特徴的な作用として、検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられているときに、ブーム30の伸縮作動(伸長作動)により作業台40が障害物Sに接近する場合について説明する。なお、
図11は、検出機能切換スイッチ58がオン位置であるときの伸縮操作レバー51eの操作量とブーム30の伸長速度(伸縮速度)との関係を示す図である。図中、横軸は伸縮操作レバー51eの操作量(最大操作量を「100%」としたときの百分率で示す)を表し、縦軸はブーム30の伸長速度(最大伸長速度を「100%」としたときの百分率で示す)を表す。なお、図示例では、伸縮操作レバー51eの閾値操作量が50%の操作量に設定されている。
【0074】
まず、作業の開始に伴い、検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられる。続いて、作業台40を目的の位置(例えば後方の位置)に移動させるために、伸縮操作レバー51eが後方向に傾倒操作される。それにより、ブーム30が軸方向に伸長作動することで、作業台40が後方(障害物Sに接近する方向)に移動する。なお、検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられると、距離センサ55の検出可能範囲56内にある障害物S(作業台40の後方に存在する障害物S)との距離が時々刻々と検出される。
【0075】
ここで、検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられている場合、伸縮操作レバー51eの操作量が閾値操作量(50%の操作量)に達するまでは、伸縮操作レバー51eの操作量に対してブーム30の伸長速度が比例的に増加し、伸縮操作レバー51eの操作量が0%から50%まで増加すると、ブーム30の伸長速度も0%から50%まで増加する(それに応じて作業台40の移動速度も増加する)。
【0076】
一方、検出機能切換スイッチ58がオン位置に切り換えられている場合に、伸縮操作レバー51eの操作量が閾値操作量(50%の操作量)を超えると、ブーム30の伸長速度が所定の制限速度(50%の速度)を上限として制限される。つまり、伸縮操作レバー51eの操作量が閾値操作量(50%の操作量)を超えた場合には、当該操作量の如何に関らず、常にブーム30の伸長速度が所定の制限速度(50%の速度)に制限される。
【0077】
ここで、ブーム30を伸長作動させているときに、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近したものとする。なお、伸縮操作レバー51eの操作量は、閾値操作量(50%の操作量)以上であるものとする。このとき、停止制御部262は、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS以下となったことを判定すると、停止信号を出力する。作動制御部61は、停止制御部262からの停止信号を受信すると、伸縮制御バルブV6のバルブ開度を小さくしていき、伸縮シリンダ34の伸長駆動が停止するまで減速することで、作業台40の障害物Sへの接近方向の移動を停止させる。そのため、伸縮操作レバー51eの操作量が閾値操作量以上である場合(例えばフルレバー操作されている場合)であっても、ブーム30の伸長速度が制限速度(50%)を上限として制限されるため、作業台40を障害物Sの手前の位置(設定距離DSの範囲内)で安全に停止させることができる。そのため、ブーム30の伸長速度の相違(例えばフルレバー操作時の伸長速度とインチング操作時の伸長速度との相違)に応じて、作業台40の停止位置が大きくばらつくことを抑制することができる。
【0078】
以上、第3実施形態の安全装置によれば、検出機能切換スイッチ58がオン位置である場合には、各作動の作動速度の上限を制限することで、この作動速度の上限を制限した分だけ設定距離DSを短くして、規制停止時の作業台40の停止位置の範囲を狭めることができるため、作動の種類ごとに作動特性が異なる場合であっても、規制停止時の障害物Sまでの距離感の違いを軽減することができ、当該距離感の相違を起因として作業者が感じる違和感や恐怖感を軽減することができるとともに、作業台を安全且つ自由に移動させることのできる範囲を拡張させることが可能となる。
【0079】
なお、この第3実施形態では、所定の条件として、検出機能切換スイッチ58がオン位置である場合(障害物検出機能が有効である場合)に、各作動の作動速度の上限を制限するように構成したが、この構成に限定されるものではない。すなわち、所定の条件として、距離センサ55の検出距離DKが所定距離以下となった場合(但し、所定距離>設定距離DS)や、作業台40の移動方向が所定方向(作業者が視認し難い方向:例えば後方または上方)である場合に、各作動の作動速度の上限を制限するように構成してもよい。また、検出機能切換スイッチ58がオン位置であるかオフ位置であるかに関わらず、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS以下となったときに停止信号を出力するようにして、検出機能切換スイッチ58がオン位置である場合には各作動の作動速度の上限を制限し、検出機能切換スイッチ58がオフ位置である場合には各作動の作動速度の上限を制限しない(各操作レバー51の操作量に応じた作動速度を許容する)ように構成してもよい。
【0080】
また、この第3実施形態の速度制限部264を第1実施形態または第2実施形態の安全装置に適用してもよい。すなわち、この第3実施形態では、作動の種類(油圧アクチュエータの種類)および作速速度(油圧アクチュエータの駆動速度)に依存しない単一の設定距離DSのみが設定されているが、第1実施形態または第2実施形態と同様に、作動の種類(油圧アクチュエータの種類)ごとに設定距離DSを設定したり、各作動の作動速度(油圧アクチュエータの駆動速度)に応じた設定距離DSを設定したりしてもよい。
【0081】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態に係る安全装置について
図12~
図14を参照して説明する。なお、以下の説明では、上記第1実施形態と同一の構成(又は同一の機能を有する構成)には同一の番号を用いて重複説明を省略し、主として上記第1実施形態と相違する部分を中心に説明する。
【0082】
第4実施形態の安全装置は、
図12に示すように、距離センサ55と、警報装置59と、コントローラ60と、制御バルブ部73とを主体に構成される。この安全装置は、第1実施形態と同様に、作業台40の周囲に存在する対象物(障害物S)との距離を検出して当該障害物Sとの干渉を防止する障害物検出機能を有している。
【0083】
警報装置59は、操作装置50に取り付けられている。この警報装置59は、例えば、警報ランプ、警報ブザー、表示モニタ、音声スピーカ等から構成されており、コントローラ60からの指令信号に応じて警報を発して、作業者に注意喚起を図るようになっている。なお、この警報装置59は、視覚および聴覚などを通じて作業者に注意を喚起し得るあらゆる手段を含む。
【0084】
コントローラ60は、作動制御部61と、停止制御部362と、距離設定部363とを有している。
【0085】
距離設定部363は、作業台40を規制停止させるか否かを判定するための設定距離DSを設定する。この第4実施形態の設定距離DSは、上記第3実施形態と同様に、作動の種類および作動速度に依存しない固定値である。つまり、距離設定部363は、1つの設定距離DSのみを記憶しており、この一つの設定距離DSを全ての種類の作動に対して共通の閾値として設定する。
【0086】
停止制御部362は、距離センサ55により検出される検出距離DKと、距離設定部363により設定される設定距離DSとを比較して、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近しているか否かを判定する。停止制御部362は、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS以下となったことを判定した場合、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近したと判断し、作動制御部61に停止信号を出力する。
【0087】
ここで、停止制御部362は、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS以下となったことを判定した場合でも、現在操作されている操作レバー51の操作量が予め定められた閾値操作量以下であるときは、作動制御部61に対して停止信号を出力することなく(作業台40の移動を規制停止させることなく)、当該操作レバー51の操作状態(操作方向および操作量)に応じた作動を継続させて、当該操作量に応じた作動速度で作業台40を移動させる。つまり、停止制御部362は、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DSに達したときに操作されている操作レバー51の操作量が閾値操作量以下である場合(例えば操作レバー51を短時間だけ断続的に小刻みに操作するインチング操作がされている場合)には、当該操作量に応じた作動速度(作業台40の移動速度)が小さいため、作業台40が設定距離DSを越えて障害物Sに接近したとしても、作業台40を強制的に規制停止させることなく、当該操作量に応じた油圧アクチュエータの駆動速度(通常の駆動速度)並びに作動速度(通常の作動速度)での作業台40の移動を許容する。但し、停止制御部362は、設定距離DS内において作業台40を規制停止させず作業台40の移動を許容する場合には、警報装置59に指令信号を出力して、この警報装置59を作動させることで、作業者に対して注意喚起を図る(作業台40が障害物Sに接近していることを報知する)。
【0088】
なお、閾値操作量は作動の種類に依存しない固定値であり、いずれの操作レバー51が操作された場合でも、閾値操作量は常に決まった値となる。これは、全ての操作レバー51に対して閾値操作量を共通の値に設定することで、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近したとしても作動が継続されるときの操作量の感覚(どれ位の操作量であれば作動が継続されるのか)を認識し易くすることができ、障害物S付近での作業性を一層向上させるためである。本実施形態では、各操作レバー51を最大限に傾倒操作したときの操作量(最大操作量)を100%とした場合に、その30%の操作量を閾値操作量として設定している。それにより、作業台40が障害物Sに接近した場合でも、現在操作中の操作レバー51の操作量が30%以下であれば、そのまま作動を継続させて作業台40を移動させることができることを作業者は容易に認識することができる。
【0089】
次に、第4実施形態の特徴的な作用として、ブーム30の伸縮作動(伸長作動)により作業台40が障害物Sに接近する場合について説明する。なお、
図14は、伸縮操作レバー51eの後方向への操作量とブーム30の伸長速度との関係を示す図である。図中、横軸は伸縮操作レバー51eの後方向への操作量(最大操作量を「100%」としたときの百分率で示す)を表し、縦軸はブーム30の伸長速度(最大伸長速度を「100%」としたときの百分率で示す)を表す。なお、図示例では、伸縮操作レバー51eの閾値操作量が「30%」に設定されている。
【0090】
まず、
図13(A)に示すように、伸縮操作レバー51eが後方向に傾倒操作されると、伸縮シリンダ34が伸長駆動することで、ブーム30が軸方向に伸長作動して、作業台40が後方(障害物Sに接近する方向)に移動する。このとき、作業者は作業台40の移動方向に障害物Sが存在することを認識し、この障害物Sとの干渉を回避するために、伸縮操作レバー51eの操作量を小さくして(例えばインチング操作などに切り換えて)、ブーム30の伸長速度を減速することで、作業台40の移動速度(障害物Sへの接近速度)を減速する。なお、作業台40が障害物Sに接近している際、距離センサ55において障害物Sとの距離が時々刻々と検出される。
【0091】
ここで、
図13(B)に示すように、伸縮操作レバー51eの操作量が閾値操作量以下である状態で、ブーム30が伸長作動することにより、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近したものとする。このとき、停止制御部362は、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS以下となったことを判定すると、現在操作中の伸縮操作レバー51eの操作量が閾値操作量以下であるか否かを判定する。停止制御部362は、伸縮操作レバー51eの操作量が閾値操作量以下であることを判定すると、作動制御部61に対して停止信号を出力することなく、警報装置59に対して指令信号を出力する。すなわち、停止制御部61は、伸縮操作レバー51eの操作量に応じた伸長速度でブーム30を伸長作動させること(伸縮操作レバー51eの操作量に応じた駆動速度で伸縮シリンダ34を伸長駆動させること)を許容するとともに、警報装置59を作動させて作業者に対して注意喚起を図る。
【0092】
そのため、
図13(C)に示すように、現在操作中の伸縮操作レバー51eの操作量が閾値操作量以下であることを条件に、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近した場合でも、作業台40の移動を強制的に規制停止させず、当該操作量に応じた伸長速度でブーム30を伸長作動させて、そのまま作業台40を障害物Sの存在する方向に移動させることができる(目的の作業対象まで作業台40を近付けることができる)。
【0093】
なお、図示省略するが、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DSに達したときに、現在操作中の伸縮操作レバー51eの操作量が閾値操作量を超えている場合には、当該操作量に応じた伸縮速度でのブーム30の伸長作動を許容することなく、上記第1実施形態等で説明したように、作業台40を強制的に規制停止(減速停止)させる制御が行われる。
【0094】
以上、第4実施形態の安全装置によれば、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近したとしても、現在操作中の操作レバー51の操作量が閾値操作量以下である場合には、作業台40の移動が規制停止されることなく、当該操作レバー51の操作に応じた作業台40の移動が許容されるため、当該作業台40を障害物Sと接触しない程度のぎりぎりの位置まで接近させて目的の作業対象に近付けることができるようになり、作業の安全性を確保しつつ、障害物S付近での作業性を向上させることが可能となる。
【0095】
また、第4実施形態の安全装置では、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近した状態において操作レバー51の操作に応じた作業台の移動を許容する場合には、警報装置59を作動させることで、作業台40が障害物Sに接近していることを作業者に対して注意喚起することができ、作業の安全性を向上させることが可能となる。
【0096】
なお、上記第1実施形態または上記第2実施形態の安全装置においても、この第4実施形態と同様に、作業台40が障害物Sに対して設定距離DS以下まで接近したとしても、現在操作中の操作レバー51の操作量が閾値操作量以下である場合には、作業台40の移動を規制停止することなく、当該操作レバー51の操作に応じた作業台40の移動を許容するように構成してもよい。
【0097】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。また、上記実施形態に記載された各構成要素を適宜組み合わせたもの、あるいは、上記実施形態に記載された各構成要素のうち一部を削除又は周知・慣用技術等で転換したものについても、本発明の範囲に含まれるものである。
【0098】
上記実施形態では、作業台40が障害物Sに対して接近するときの作動(作業台40の位置を移動させるときの作動)として、ブーム30の伸縮作動や走行体10の走行作動を例示して説明したが、ブーム30の旋回作動、起伏作動、首振り作動などの他の作動に適用してもよい。
【0099】
また、上記実施形態では、障害物検出機能として、作業台40の後方に存在する障害物Sとの距離を検出したが、作業台40の上方に存在する障害物Sとの距離を検出するように構成してもよい。つまり、建造物の屋内やトンネル内などの作業現場において、作業台40を上方に向けて移動させる場合に、作業台40の上方に存在する障害物Sとの距離を検出し、この検出距離DKが設定距離DS以下となったときに作業台40を規制停止させる構成(すなわち、作業台40と障害物Sとの間に作業者が挟み込まれることを防止する構成)としてもよく、その場合でも上記第1~第4実施形態の構成を適用することができる。
【0100】
また、上記実施形態では、操作レバー51の操作に応じて、ブーム30の旋回作動、起伏作動、伸縮作動、首振り作動を単独または個別に操作した場合を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、複数の作動を同時に操作した場合(例えば起伏作動と伸縮作動とを連動操作した場合)でも、その複数の作動の種類および/または作動速度に応じた設定距離DSを設定し、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS以下となったときに作業台40を規制停止するように構成してもよい(その場合でも上記第1~第4実施形態の構成を適用することができる)。さらには、操作レバー51の操作に応じて、複数の作動を複合的に制御して、作業台40を水平方向および垂直方向に直線的に移動させる水平垂直作動制御(HV制御)を行うように構成してもよく、その場合でも、複数の作動の種類および/または作動速度に応じた設定距離DSを設定して、距離センサ55の検出距離DKが設定距離DS以下となったときに作業台40を規制停止するように構成することができる(その場合でも上記第1~第4実施形態の構成を適用することができる)。
【0101】
また、上記実施形態では、本発明に係る高所作業車として、自走式高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、例えば、トラックマウント式の高所作業車などの他の高所作業車に適用してもよい。また、上記実施形態では、ホイール式の高所作業車を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、クローラ式の高所作業車であってもよい。
【符号の説明】
【0102】
1 高所作業車
10 走行体
14 走行モータ(アクチュエータ)
20 旋回体
21 旋回モータ(アクチュエータ)
22 起伏シリンダ(アクチュエータ)
30 ブーム
34 伸縮シリンダ(アクチュエータ)
38 首振りモータ(アクチュエータ)
40 作業台
50 操作装置
55 距離センサ(距離検出部)
58 検出機能切換スイッチ
59 警報装置
60 コントローラ
61 作動制御部
62 停止制御部
63 距離設定部
73 制御バルブ部
163 距離設定部(第2実施形態)
262 停止制御部(第3実施形態)
263 距離設定部(第3実施形態)
264 速度制限部(第3実施形態)
362 停止制御部(第4実施形態)
363 距離設定部(第4実施形態)
DS 設定距離