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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098543
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】農作業機
(51)【国際特許分類】
   A01B 35/04 20060101AFI20240717BHJP
   A01B 33/16 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A01B35/04 D
A01B33/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002087
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000188009
【氏名又は名称】松山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 智之
(72)【発明者】
【氏名】倉田 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】小山 瑞樹
(72)【発明者】
【氏名】嶋形 祐汰
(72)【発明者】
【氏名】小林 貴史
【テーマコード(参考)】
2B033
2B034
【Fターム(参考)】
2B033AA04
2B033AB01
2B033AB11
2B033DB35
2B033DB48
2B033ED20
2B034AA03
2B034BA06
2B034BB01
2B034EA02
2B034EB03
(57)【要約】
【課題】作業者の負担軽減を図ることができる農作業機を提供する。
【解決手段】農作業機1は、連結マスト18を有する機体11と、耕耘作業をする耕耘体12と、整地作業をする整地体13とを備える。また、農作業機1は、整地体13を整地作業状態及び土引作業状態に切換可能な切換部61を備え、この切換部61は整地体13の状態を切り換えるための駆動手段63を有する。この駆動手段63は、機体11のうち連結マスト18以外の部分である耕耘カバー部15の上面に設ける。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車に連結される連結マストを有する機体と、
前記機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、
前記耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、
前記整地体を整地作業状態及び土引作業状態に切換可能な切換部とを備え、
前記切換部は、切換用の駆動手段を有し、
前記駆動手段は、前記機体のうち前記連結マスト以外の部分に設けられている
ことを特徴とする農作業機。
【請求項2】
前記駆動手段は、
前記機体のうち前記連結マスト以外の部分に設けられたベース部材と、
前記ベース部材に着脱可能に取り付けられた駆動ユニットとを有する
ことを特徴とする請求項1記載の農作業機。
【請求項3】
前記ベース部材は、
前記機体のうち前記連結マスト以外の部分に設けられたベース板部と、
前記ベース板部に設けられ、前記駆動ユニットが着脱可能に取り付けられた取付板部とを有する
ことを特徴とする請求項2記載の農作業機。
【請求項4】
前記切換部は、前記駆動ユニットからの動力に基づいて回動する回動体を有し、
前記ベース部材は、前記回動体の回動を規制する回動規制部を有する
ことを特徴とする請求項2又は3記載の農作業機。
【請求項5】
前記切換部は、
係合部を有する整地体支持手段と、
前記係合部との係合によって前記整地体を土引作業状態に維持する係合体とを有し、
前記係合体は、前記機体のうち前記連結マストが取り付けられたマスト取付部に設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機。
【請求項6】
前記機体は、前記耕耘体を覆う耕耘カバー部を有し、
前記駆動手段は、前記耕耘カバー部に設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の農作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業者の負担軽減を図ることができる農作業機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば下記の特許文献1に記載された農作業機が知られている。
【0003】
この農作業機は、例えばトラクタ等の走行車に連結される連結マストを有する機体を備え、この機体には耕耘体及び整地体が設けられている。また、この農作業機は、整地体を整地作業状態及び土引作業状態に選択的に切換可能な切換部(整地体操作手段)を備えている。
【0004】
そして、切換部は、整地体の状態を自動で切り換えるための切換用の駆動手段を有し、この駆動手段は機体の連結マストに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6-335304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の農作業機では、例えば作業者が連結マストの交換作業を行う場合に、切換部の駆動手段を連結マストから取り外す必要があるため、その交換作業に手間を要し、作業者の負担となるおそれがある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、作業者の負担軽減を図ることができる農作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る農作業機は、走行車に連結される連結マストを有する機体と、前記機体に設けられ、耕耘作業をする耕耘体と、前記耕耘体の後方で整地作業をする整地体と、前記整地体を整地作業状態及び土引作業状態に切換可能な切換部とを備え、前記切換部は、切換用の駆動手段を有し、前記駆動手段は、前記機体のうち前記連結マスト以外の部分に設けられているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者の負担軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の一実施の形態に係る農作業機の側面図である。
図2】同上農作業機の平面図である。
図3】同上農作業機の部分側面図である。
図4】同上農作業機の部分平面図である。
図5図4の部分拡大図(連結マストを取り外した状態)である。
図6】同上農作業機の切換部の駆動手段のベース部材を示す図である。
図7】同上切換部の保持体及び長尺体を示す図である。
図8】同上切換部の係合体、規制体及びねじりバネを示す図である。
図9】同上切換部によって整地体が土引作業状態に切り換えられた状態の側面図(農作業機の持上状態)である。
図10】土引作業状態の整地体が土引作業をしている状態の側面図(農作業機による土引作業)である。
図11】同上切換部によって整地体が整地作業状態に切り換えられた状態の側面図(農作業機の持上状態)である。
図12】整地作業状態の整地体が整地作業をしている状態の側面図(農作業機による代掻作業)である。
図13】代掻作業の終了後に農作業機が持ち上げられた状態の側面図(整地体の整地作業状態)である。
図14】連結マストをこれとは形状が異なる他の連結マストに交換(付替)する場合の説明図であって、(a)は連結マストが取り付けられた状態の図であり、(b)はその連結マストが取り外された状態の図であり、(c)は他の連結マストを示す図である。
図15】駆動ユニットを新品に交換する場合の説明図であって、(a)は駆動ユニットが取り付けられた状態の図であり、(b)はその駆動ユニットが取り外された状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施の形態に係る農作業機について図1ないし図15を参照して説明する。
【0012】
図中の1は農作業機で、この農作業機1は、例えば走行車であるトラクタ(図示せず)の後部に連結され、そのトラクタの走行により水田等の圃場を前方(進行方向)に移動しながら農作業、すなわち例えば代掻作業(耕耘整地作業)及び土引作業状態(土寄せ作業)を選択的に行うことが可能な代掻機(ハロー)である。
【0013】
農作業機1は、例えば折畳み可能な3分割構造の折畳み作業機で、トラクタの後部の3点リンク部に着脱可能に連結(装着)される中央作業部2と、この中央作業部2の左右方向両端部に回動中心軸5を中心として上下方向に回動可能に設けられた延長作業部(サイド作業部)3と、この延長作業部3を中央作業部2に対して上下方向に回動させる回動駆動手段である電動油圧シリンダ(シリンダ部)4とを備えている。
【0014】
そして、左右の延長作業部3の各々は、いずれも伸縮可能な電動油圧シリンダ4の伸縮動作に基づいて、一方向への回動(開方向への略180度回動)により展開状態となり、他方向への回動(閉方向への略180度回動)により折畳状態となる。
【0015】
それゆえ、この3分割式の農作業機1は、中央作業部2のみで作業を行う状態と、中央作業部2と左右両方の延長作業部3とで作業を行う状態と、中央作業部2と左右いずれか一方のみの延長作業部3とで作業を行う状態とに選択的に切換可能である。
【0016】
中央作業部2は、トラクタの後部の3点リンク部に着脱可能に連結される機体(中央機体)11と、この機体11に回転可能に設けられ、所定方向に回転しながら耕耘作業をする耕耘体(中央耕耘体)12と、機体11の耕耘カバー部15の後端部に上下方向に回動可能に設けられ、耕耘体12の後方で整地作業をする整地体(中央整地体)13とを備えている。なお、整地体13は、整地作業状態では整地作業をするが、後述する切換部61で土引作業状態に切り換えられた場合には土引作業をするものである。
【0017】
機体11は、トラクタの後部の3点リンク部(農作業機昇降支持部)に着脱可能に連結される3点連結部16を左右方向中央部に有している。
【0018】
3点連結部16は、例えばトラクタの3点リンク部に予め装着された図示しないクイックカプラ(オートヒッチ)を介して、トラクタの3点リンク部に連結される。3点連結部16は、クイックカプラの上部フックと係脱可能に係合する上部ピン17を有した上部連結部である連結マスト(トップマスト)18と、クイックカプラの下部フックと係脱可能に係合する下部ピン19を有した左右1対の下部連結部であるロワアーム20とを有している。
【0019】
また、機体11は、トラクタのPTO軸にジョイントを介して接続される入力軸21を回転可能に支持する入力軸支持部(ミッションケース)23を左右方向中央部に有している。
【0020】
入力軸支持部23の左右両側には、左右方向長手状で筒状のフレームパイプ部24の内端部が連結されている。そして、入力軸支持部23、左側のフレームパイプ部24、及びこのフレームパイプ部24の外端部に連結された伝動ケース部には、入力軸からの動力を耕耘体12に伝達する動力伝達手段が収納されている。
【0021】
また、入力軸支持部23には、突出状のマスト取付部25が上方及び後方に向かって突出するように固設されている。そして、マスト取付部25には、連結マスト18が取付手段26によって着脱可能に取り付けられている。
【0022】
取付手段26は、例えば複数(例えば2本)のボルト27と、当該ボルト27と螺合する複数のナット28とで構成されている(図14参照)。このため、連結マスト18及びマスト取付部25には、ボルト27を挿通可能なボルト用孔18a,25aがそれぞれ形成されている。
【0023】
つまり、連結マスト18は、互いに離間対向する左右1対の対向板部29を有し、これら両対向板部29にボルト用孔18aが形成され、また同様に、マスト取付部25は、互いに離間対向する左右1対の対向板部30を有し、これら両対向板部30にボルト用孔25aが形成されている。
【0024】
なお、連結マスト18の両対向板部29の上端部同士は、連結板部40で連結されている。また、入力軸21の上方部はカバー部材22で覆われており、このカバー部材22は入力軸支持部23に取り付けられている。
【0025】
耕耘体12は、動力伝達手段からの動力に基づいて所定方向に駆動回転する左右方向の耕耘軸31と、この耕耘軸31に着脱可能に取り付けられた複数の耕耘爪32とを有している。そして、耕耘体12の上方部は、機体11の屈曲板状の耕耘カバー部15で覆われている。
【0026】
整地体13は、機体11の耕耘カバー部15の後端部に左右方向の軸33を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた略板状の第1整地部である第1整地体(中央均平板)36と、この第1整地体36の下端部に左右方向の軸34を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた略板状の第2整地部である第2整地体(中央レーキ)37とを有している。
【0027】
左右の各延長作業部3は、中央作業部2の機体11に対して回動中心軸(回動支点)5を中心として上下方向に回動可能な機体(延長機体)41と、この機体41に回転可能に設けられ、延長作業部3の展開状態時に中央作業部2の耕耘体12と一体となって耕耘作業をする耕耘体(延長耕耘体)42と、機体41の耕耘カバー部45の後端部に上下方向に回動可能に設けられ、延長作業部3の展開状態時に中央作業部2の整地体13と一体となって整地作業をする整地体(延長整地体)43とを備えている。なお、整地体43は、整地作業状態では整地作業をするが、後述する切換部61で整地体13と一緒に土引作業状態に切り換えられた場合には土引作業をするものである。
【0028】
延長作業部3の耕耘体42は、中央作業部2の耕耘体12と同様、左右方向の耕耘軸51と、この耕耘軸51に着脱可能に取り付けられた複数の耕耘爪52とを有している。そして、耕耘体42の上方部は、機体41の耕耘カバー部45で覆われている。
【0029】
延長作業部3の整地体43は、中央作業部2の整地体13と同様、機体41の耕耘カバー部45の後端部に左右方向の軸を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた略板状の第1整地部である第1整地体(延長均平板)53と、この第1整地体53の下端部に左右方向の軸を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた略板状の第2整地部である第2整地体(延長レーキ)54とを有している。
【0030】
なお、第2整地体54の外端部には補助整地板(補助レーキ)55が回動可能に設けられており、この補助整地板55は、モータ等の駆動源を有する切換装置(サイドキット)56によって展開状態及び折畳状態に選択的に切換可能となっている。
【0031】
また一方、農作業機1は、少なくとも中央作業部2の整地体(中央作業部2と展開状態の延長作業部3とで作業をする場合には整地体13及び整地体43の両方である。以下でも同様)13を整地作業状態及び土引作業状態に選択的に切換可能な切換部61を備えている。
【0032】
すなわち例えば、中央作業部2の左右方向中央部には、トラクタに乗った作業者がリモコン等の操作部(図示せず)を用いて遠隔操作可能な電動式の切換部61が設けられている。
【0033】
そして、作業者によって操作部が操作された場合には、制御部60がその操作部からの情報を受信して切換部61を制御する。なお、制御部60は、例えば中央作業部2の機体11の右側のフレームパイプ部24に取り付けられており、この制御部60と切換部61とが配線によって電気的に接続されている。
【0034】
ここで、切換部61は、作業者による操作部の操作に基づいて整地体13の状態を自動で切り換えるための切換用の駆動手段63を有し、この駆動手段63は、機体11のうち連結マスト18以外の部分、すなわち例えば耕耘カバー部15の上面における左右方向中央位置の近傍位置の部分である取付面部64に取り付けられて設けられている。
【0035】
つまり、駆動手段63は、中央作業部2の機体11の連結マスト18には装着されておらず、当該連結マスト18以外の位置、すなわち例えば耕耘カバー部15上の取付位置(農作業機中央近傍の位置)に取り付けられている。
【0036】
そして、駆動手段63は、例えばそれぞれ複数のボルト58及びナット59からなる取付手段65によって耕耘カバー部15の取付面部64に取り付けられた板状のベース部材66と、このベース部材66に取付手段68によって着脱可能に取り付けられたユニット状の駆動ユニット67とを有している。
【0037】
つまり、機体11の耕耘カバー部15の上面に固定されたベース部材66には、取付手段68によって駆動ユニット67が着脱可能に取り付けられている。
【0038】
取付手段68は、例えば複数(例えば4本)のボルト71と、当該ボルト71と螺合する複数のナット72とで構成されている(図15参照)。なお、当該図15に図示した例では、ナット72は、駆動ユニット67の収納ケース81の側面部81aに一体的に突設されているが、例えば収納ケース81とは別体のナット等を用いるようにしてもよい。また、取付手段68は、駆動ユニット67をベース部材66に着脱可能に取り付ける手段であればよく、例えば工具レスで着脱可能な構成等でもよい。
【0039】
駆動ユニット67は、例えば制御部60で制御される駆動源である電動モータ(図示せず)を有したモータユニットからなるもので、電動モータ及びギア等を内部に収納した容器状の収納ケース81を有し、この収納ケース81の左側の側面部81aからは、電動モータからの動力に基づいて回動可能な駆動軸(出力軸)82が左側方に向かって突出している。
【0040】
そして、駆動ユニット67は、側面視で機体11の入力軸支持部23と略同じ高さに位置している(図3参照)。また、側面視において駆動ユニット67の前端部67aが入力軸支持部23と重なっている。さらに、駆動ユニット67の収納ケース81の側面部81aと、ベース部材66の取付板部87との間には、ナット72の大きさに対応した所定寸法の隙間83が存在している。なお、例えば隙間83を設けずに収納ケース81の側面部81aが取付板部87に面状に直接接触するようにしてもよい。
【0041】
ベース部材66は、耕耘カバー部15の取付面部64に取付手段65で着脱可能に取り付けられた板状のベース板部86と、このベース板部86の略中央部に立設され、駆動ユニット67の収納ケース81が取付手段68で着脱可能に取り付けられ、当該駆動ユニット67を支持する取付板部87と、この取付板部87に突設された複数の回動規制部である前側回動規制軸88及び後側回動規制軸89とを有している(図6参照)。
【0042】
ベース板部86は、耕耘カバー部15の形状に対応した断面略へ字状の屈曲板のもので、このベース板部86には複数のボルト用孔85が形成され、この各ボルト用孔85には取付手段65のボルト58が挿脱可能に挿通されている。
【0043】
また、取付板部87には、1つの駆動軸用孔91及び複数(例えば上下前後で4つ)のボルト用孔92が形成されている。そして、駆動軸用孔91には駆動ユニット67の駆動軸82が挿脱可能に挿通され、各ボルト用孔92にはボルト71が挿脱可能に挿通されている。
【0044】
なお、4つのボルト用孔92のうち、上前側のボルト用孔92(92a)は取付板部87の上端部の前角部に形成され、上後側のボルト用孔92(92b)は取付板部87の上端部の後角部に形成され、下前側のボルト用孔92(92c)は取付板部87の前側回動規制軸88の近傍に形成され、下後側のボルト用孔92(92d)は取付板部87の後側回動規制軸89の近傍に形成されている。
【0045】
また、切換部61は、駆動ユニット67の駆動軸82からの動力に基づいてその駆動軸82と一体となって前後方向に回動する回動体93を有している。
【0046】
回動体93は、略扇状の回動板部94と、この回動板部94に突設され、駆動軸82が挿脱可能に挿入(嵌入)された筒状部95とを有している。回動板部94には、筒状部95の軸芯を中心(略中心を含む)とする円弧状の長孔部96が形成されている。なお、長孔部96は円弧状ではなく直線状でもよい。
【0047】
また、筒状部95にはピン用孔97が形成されており、この筒状部95のピン用孔97及び挿入状態の駆動軸82のピン用孔98に取付ピン73が挿脱可能に挿通されている。これら両ピン用孔97,98に挿通された取付ピン73は、着脱可能な抜止ピン74で抜け止めされている。
【0048】
そして、回動体93の一方向(前側)への回動は駆動手段63のベース部材66の前側回動規制軸88によって規制され、回動体93の他方向(後側)への回動は駆動手段63のベース部材66の後側回動規制軸89によって規制される。
【0049】
さらに、切換部61は、回動体93の長孔部96に挿通された丸軸状の挿通軸104を有する保持体101と、この保持体101によって摺動可能に保持された長尺状の長尺体102とを有している(図7参照)。
【0050】
保持体101は、外形直方体状の本体部103を有し、この本体部103には挿通軸104及びグリースニップル用の取付部105がそれぞれ異なる面に突設されている。また、本体部103には挿通孔106が貫通して形成され、この挿通孔106に長尺体102が摺動可能に挿通されて保持されている。なお、本体部103の形状は、図示した形状には限定されず、例えば円筒形状や、六角筒形状等の多角筒形状等でもよい。
【0051】
長尺体102は、真っ直ぐな細長い丸軸状の軸状部111を有し、この軸状部111の一端側外周面にはねじ溝部112が形成され、このねじ溝部112に抜止用のナット113がワッシャ114とともに螺合により取り付けられている。また、軸状部111の他端部には板状の連結板部116が連設され、この連結板部116にピン用孔117が形成されている。さらに、軸状部111の外周面における他端部近傍には、突出状でかつ円環状のバネ当接部118が固設されている。
【0052】
そして、長尺体102の軸状部111の外周側には、長尺体102を付勢する弾性変形可能な第1弾性部材であるコイルバネ120が配設されている。コイルバネ120は、その一端部がワッシャ114を介して保持体101の本体部103のバネ当接面119に当接し、その他端部が長尺体102のバネ当接部118に当接する(図7参照)。
【0053】
また、切換部61は、丸軸状の係合部である係合軸121を有する整地体支持手段122と、その係合軸121との係合によって整地体13を土引作業状態に維持してロックする回動可能な板状の係合体(土引カム)123と、この係合体123と長尺体102とを連結する連結体124とを有している。
【0054】
さらに、切換部61は、係合体123の回動を規制する規制体125と、これら係合体123及び規制体125間に架設され、当該係合体123を付勢する弾性変形可能な第2弾性部材であるねじりバネ130とを有している。
【0055】
整地体支持手段122は、整地体13を支持するもので、機体11のマスト取付部25の後端部に軸126を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた第1支持アーム131と、この第1支持アーム132の後端部に軸127を中心として上下方向に回動可能に取り付けられた第2支持アーム132とを有している。そして、第2支持アーム132の下端部は、整地体13の第2整地体37に軸128を介して回動可能に取り付けられている。
【0056】
また、整地体支持手段122は、係合体123と係脱可能に係合する係合アーム133を有し、この係合アーム133の後端部(下端部)は、第1支持アーム131の取付部134に軸129を介して回動可能に取り付けられている。そして、係合アーム133は、自由端側である前端側(上端側)に係合軸121を有し、この係合軸121が整地体13の土引作業状態時に係合体123と係合する。なお、係合アーム133の前端側は、連結マスト18内に挿入配置されている。
【0057】
係合アーム133は、互いに離間対向する左右1対の対向板部136を有し、これら両対向板部136の上端部同士が上板部である連結板部137で連結され、この連結板部137には前後方向長手状の開口部138が形成されている。そして、係合体123の出入部139は、その開口部138を介して係合アーム133内に対して出入可能となっている。
【0058】
係合体123は、例えば所定形状に形成された1枚の板状部材からなるもので、機体11のマスト取付部25に、左右方向の軸(回動支点)140を中心として回動可能に設けられている(図8参照)。
【0059】
この係合体123は、例えばボルト141及びナット142でマスト取付部25に回動可能に取り付けられ、そのボルト141の軸部によって係合体123の回動支点である軸140が構成されている。これらボルト141及びナット142の代わりに、ピンを用いて係合体123をマスト取付部25にそのピンを中心として回動可能に設けてもよい。なお、規制体125は、マスト取付部25の左側の対向板部30に固設されている。
【0060】
また、係合体123は、係合アーム133の係合軸121と係脱可能に係合する係合凹部145を有し、この上方側に向かって開口した凹状の係合凹部145には、膨出部分146及び窪み部分147が形成されている。膨出部分146は係合凹部145の一方側上部に形成され、かつ、窪み部分147は係合凹部145の他方側下部に形成されている。
【0061】
さらに、係合体123は、ねじりバネ130の付勢力(図8に示すa方向の付勢力)を受けた状態で規制体125の第1規制面151に当接(接触)する第1当接面153と、ねじりバネ130の付勢力(図8に示すb方向の付勢力)を受けた状態で規制体125の第2規制面152に当接(接触)する第2当接面154とを有している。
【0062】
ねじりバネ130は、軸140を中心とした係合体123の回動時に支点越えするもので、その一端部が係合体123の取付孔155に取り付けられ、その他端部が規制体125の取付孔156に取り付けられている(図8参照)。
【0063】
連結体124は、中間の一箇所で屈曲した丸軸状の軸状部161を有し、この軸状部161の一端側が係合体123の連結孔157に嵌入されて溶接等で固定されている。また、軸状部161の他端部には板状の連結板部162が連設され、この連結板部162にピン用孔163が形成されている。
【0064】
そして、連結ピン165が連結体124の連結板部162のピン用孔163及び長尺体102の連結板部116のピン用孔117に挿通されることにより、両連結板部116,162相互が連結されている。これら両ピン用孔117,163に挿通された連結ピン165は、図示しない抜止ピンで抜け止めされている。こうして、連結体124によって係合体123と長尺体102とが互いに連結されており、長尺体102の移動に応じて係合体123が回動する。
【0065】
なお、上述したように、整地体13,43を整地作業状態及び土引作業状態に選択的に切り換えるための切換部61は、駆動手段63、回動体93、保持体101、長尺体102、コイルバネ120、整地体支持手段122、係合体123、連結体124、規制体125及びねじりバネ130等で構成されている。また、駆動手段63は、ベース部材66及び駆動ユニット67等で構成されている。さらに、整地体支持手段122は、係合軸121を有する係合アーム133、第1支持アーム131及び第2支持アーム132等で構成されている。
【0066】
また、農作業機1の中央作業部2には、整地作業状態の整地体13,43の圃場面に対する接地圧を調整可能な左右1対の接地圧調整部170が設けられている。
【0067】
次に、農作業機1の作用等を説明する。
【0068】
まず、農作業機1を用いて圃場で土引作業をする場合について説明する。
【0069】
図9に示すように、トラクタの3点リンク部を油圧で作動させて農作業機1を所定位置まで持ち上げた状態で、作業者が操作部の土引切換ボタンを操作すると、切換部61の駆動手段63の駆動軸82が一方向に回動し、この回動により回動体93が前側回動規制軸88に当接するまで回動する。
【0070】
すると、保持体101の挿通軸104が長孔部96の一端部に押されることで長尺体102が前方側に移動し、この移動に応じて係合体123が当該係合体123の第1当接面153と規制体125の第1規制面151とが当接する当接位置(土引位置)まで回動する。
【0071】
なおこの際、コイルバネ120が長尺体102を前方側に付勢するため、係合体123の出入部139が係合アーム133の開口部138の縁部分に接触(干渉)しても、係合体123は、コイルバネ120の付勢力を受けて所望の当接位置まで回動する。また、係合体123は、回動途中の支点越えの位置からねじりバネ130の付勢力も受ける。
【0072】
そして、係合体123の回動によって係合アーム133の係合軸121が係合体123の係合凹部145の窪み部分147との対向位置に移動し、その結果、第2整地体37が下方回動して傾斜姿勢となり、整地体13が土引作業状態(機体11に対して上下回動不能なロック状態)に切換設定される。
【0073】
この切換設定後、図10に示すように、圃場でトラクタの3点リンク部を油圧で作動させて農作業機1を所定位置(土引作業姿勢)まで降ろしてから、トラクタの走行により農作業機1を前方(進行方向)に移動させると、土引作業状態の整地体13が土引作業をする。
【0074】
このとき、係合アーム133の係合軸121と係合体123の係合凹部145の窪み部分147との係合により係合アーム(ロックアーム)133がロックされるため、整地体13は、土引作業状態(ロック状態)に維持されて土引作業を行う。
【0075】
次いで、農作業機1を用いて圃場で代掻作業(耕耘整地作業)をする場合について説明する。
【0076】
図11に示すように、トラクタの3点リンク部を油圧で作動させて農作業機1を所定位置まで持ち上げた状態で、作業者が操作部の代掻切換ボタンを操作すると、切換部61の駆動手段63の駆動軸82が他方向に回動し、この回動により回動体93が後側回動規制軸89に当接するまで回動する。
【0077】
すると、保持体101の挿通軸104が長孔部96の他端部に押されることで長尺体102が後方側に移動し、この移動に応じて係合体123がその第1当接面153と第1規制面151とが互いに離れる方向(前方側)に回動する。なおこの際、ねじりバネ130は、係合体123の回動途中で支点越えして付勢方向が変わる。
【0078】
そして、係合体123の回動によって係合アーム133の係合軸121が係合体123の係合凹部145の窪み部分147との対向位置から離れて膨出部分146の下側に当接係合し、その結果、係合軸121と窪み部分147との係合による係合アーム133のロックが解除され、整地体13が整地作業状態(機体11に対して上下回動可能なフリー状態)に切換設定される。
【0079】
この切換設定後、図12に示すように、圃場でトラクタの3点リンク部を油圧で作動させて農作業機1を所定位置(整地作業姿勢)まで降ろしてから、トラクタの走行により農作業機1を前方(進行方向)に移動させると、整地作業状態の整地体13が整地作業をする。
【0080】
このとき、係合アーム133の係合軸121は、前方側への移動により係合体123の係合凹部145内から出てその係合体123よりも前方に位置する。また、係合体123の出入部139は、係合アーム133内に入り込む。さらに、係合体123は、ねじりバネ130の付勢力に基づいて、当該係合体123の第2当接面154と規制体125の第2規制面152とが当接する当接位置(整地位置)まで回動する。
【0081】
そして、このような図12に示す状態では、耕耘体12が耕耘作業をし、その後方で整地作業状態の整地体13が整地作業をすることで、農作業機1による代掻作業が行われる。
【0082】
なお、図13に示すように、代掻作業の終了後、トラクタの3点リンク部を油圧で作動させて農作業機1を所定位置(前傾姿勢)まで持ち上げると、整地体13の自重に基づいて係合アーム133が後方側に移動し、その結果、係合軸121が係合体123の係合凹部145内に戻る。
【0083】
そして、上記農作業機1によれば、切換部61の駆動手段63は、機体11のうち連結マスト18以外の部分、すなわち例えば耕耘カバー部15に設けられているため、例えば交換作業の作業者(農家やメーカの担当者等)が連結マスト18の交換作業を行う場合等において、従来の構成では必要であった駆動手段を連結マストから取り外す作業をする必要がなく、その交換作業が容易であり、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0084】
ここで、図14を参照して具体的に説明すると、例えば農家(ユーザー)がトラクタを買い替えた場合において、旧トラクタに対応する連結マスト18(18A)を新トラクタに対応する連結マスト18(18B)に交換(付替)するときには、その農家である作業者は、駆動手段63を取り外すことなく、連結マスト18(18A)のみを取り外せばよく、容易に交換作業ができる。
【0085】
すなわち例えば、ボルト27及びナット28からなる取付手段26による取り付けを解除(ボルト固定の解除)するだけで、一の連結マスト18(18A)を機体11のマスト取付部25から容易に取り外すことができる。また、取付手段26を用いて、一の連結マスト18(18A)とは形状が異なる他の連結マスト18(18B)を機体11のマスト取付部25に容易に取り付けることができる。このように、連結マスト18のみを単体で容易に交換(着脱)でき、作業性及びメンテナンス性等の向上を図ることができる。
【0086】
なお、例えば出荷時の梱包の際に連結マスト18が邪魔になる場合があり、このような場合においても、梱包作業者(メーカの担当者等)は、駆動手段63を取り外すことなく、連結マスト18のみを簡単に着脱することが可能である。
【0087】
また、切換部61の駆動手段63は、機体11の耕耘カバー部15に設けられたベース部材66と、このベース部材66に着脱可能に取り付けられた駆動ユニット67とを有するため、例えば交換作業の作業者が駆動ユニット67の交換作業を行う場合等において、トラクタから農作業機1を外すことなく、農作業機1をトラクタに連結した状態(連結マスト18の上部ピン17とクイックカプラの上部フックとが互いに係合した状態)のまま、駆動ユニット67を容易に交換でき、作業者の負担軽減を図ることができ、しかも、ベース部材66は耕耘カバー部15に取り付けた状態のままでよく、一体物であるユニット状の駆動ユニット67のみを単体で容易に交換(着脱)でき、作業性及びメンテナンス性等の向上を図ることができる。
【0088】
ここで、図15を参照して具体的に説明すると、例えば農家(ユーザー)が故障した駆動ユニット67をそれと同じ新品の駆動ユニット67に交換(付替)する場合には、その農家である作業者は、農作業機1をトラクタに連結した状態のまま容易に交換作業ができる。
【0089】
すなわち例えば、取付ピン73及び抜止ピン74を抜き取った後、ボルト71及びナット72からなる取付手段68による取り付けを解除(ボルト固定の解除)するだけで、故障した駆動ユニット67をベース部材66の取付板部87から容易に取り外すことができる。また、取付手段68を用いて新品の駆動ユニット67をベース部材66の取付板部87に容易に取り付けることができる。
【0090】
なお、駆動ユニット67の取り外しの際には、両ピン73,74を抜き取った後、駆動軸82を回動体93の筒状部95及びベース部材66の駆動軸用孔91から抜き出す。他方、駆動ユニット67の取り付けの際には、駆動軸82を回動体93の筒状部95及びベース部材66の駆動軸用孔91に差し込んだ後、両ピン73,74を装着することでこれら駆動軸82と回動体93とを接続する。
【0091】
また、駆動手段63は、駆動ユニット67を支持するベース部材66を有し、このベース部材66のベース板部86が耕耘カバー部15の上面上にその上面と面状に直接接触して載置された状態で当該耕耘カバー部15に取り付けられているため、ベース部材66で駆動ユニット67を安定的に支持できるばかりでなく、ベース部材66で耕耘カバー部15の左右方向中央付近を効果的に補強できる。
【0092】
なお、上記一実施の形態では、農作業機1は、3分割構造の折畳み作業機である場合について説明したが、それには限定されず、例えば折畳み不可能な一本物の作業機でもよく、また整地体は、第1整地体と第2整地体とを有するものには限られず、例えば第1整地体である均平板のみを有するものでもよい。
【0093】
また、切換部の駆動手段の駆動源は、電動モータには限定されず、例えば電動シリンダ等の他のアクチュエータを用いてもよい。
【0094】
さらに、駆動手段のベース部材は、機体の耕耘カバー部に設けられた構成には限定されず、機体のうち連結マスト以外の部分、すなわち例えばフレームパイプ部、入力軸支持部等に設けられた構成でもよい。
【0095】
また、駆動手段のベース部材は、必ずしも機体のうち連結マスト以外の部分に対して着脱可能である必要はなく、例えば駆動手段のベース部材を溶接等で固定した構成等でもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 農作業機
11 機体
12 耕耘体
13 整地体
15 耕耘カバー部
18 連結マスト
25 マスト取付部
61 切換部
63 駆動手段
66 ベース部材
67 駆動ユニット
86 ベース板部
87 取付板部
88 回動規制部である前側回動規制軸
89 回動規制部である後側回動規制軸
93 回動体
121 係合部である係合軸
122 整地体支持手段
123 係合体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15