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特開2024-98555レンズ、光源装置、金型、および、金型の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098555
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】レンズ、光源装置、金型、および、金型の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/118 20150101AFI20240717BHJP
   B29C 33/42 20060101ALI20240717BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240717BHJP
   G02B 5/18 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G02B1/118
B29C33/42
G02B3/00 Z
G02B5/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002104
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116034
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 啓輔
(74)【代理人】
【識別番号】100144624
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 達也
(72)【発明者】
【氏名】藤野 仁志
(72)【発明者】
【氏名】大鹿 怜
【テーマコード(参考)】
2H249
2K009
4F202
【Fターム(参考)】
2H249AA03
2H249AA18
2H249AA22
2H249AA32
2H249AA39
2H249AA46
2H249AA55
2H249AA63
2K009AA01
2K009DD11
4F202AF01
4F202AH73
4F202AH76
4F202AR07
4F202AR12
4F202CA01
4F202CA09
4F202CA11
4F202CB01
4F202CD18
4F202CK12
(57)【要約】
【課題】微細構造を有するレンズを成型するための金型の製造を容易にすることを目的とする。
【解決手段】レンズ20は、微細構造40を有する。微細構造40は、反射防止機能を有する。微細構造40は、断面V字状の溝50を有する。溝50は、レンズ20の光学面(第1光学面21)に並ぶ。溝50は、第1面51と、第2面52と、を有する。第1面51は、レンズ20の光軸X1に対する角度が第1角度となる。第2面52は、光軸X1に対して第1角度よりも大きな第2角度で傾斜する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
反射防止機能を有する微細構造が設けられたレンズであって、
前記微細構造は、前記レンズの光学面に並ぶ断面V字状の溝を有し、
前記溝は、
前記レンズの光軸に対する角度が第1角度となる第1面と、
前記光軸に対して前記第1角度よりも大きな第2角度で傾斜する第2面と、を有することを特徴とするレンズ。
【請求項2】
前記光学面は、凸面であり、
前記第1面は、前記光軸とは反対側を向いていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項3】
前記光学面は、凹面であり、
前記第1面は、前記光軸側を向いていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項4】
前記溝は、前記光軸を中心とした渦巻状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項5】
前記レンズは、前記光軸に直交する第1方向の屈折力が、前記光軸および前記第1方向の両方に直交する第2方向の屈折力と異なることを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項6】
前記光学面は、回折格子を構成する第2溝を有し、
前記第2溝の深さは、前記溝の深さより大きいことを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項7】
前記第2溝は、ブレーズド回折格子を構成する溝であり、
前記第1面と前記第2面のなす角は、90°からブレーズ角を引いた値よりも小さいことを特徴とする請求項6に記載のレンズ。
【請求項8】
前記第1面は、前記光軸と平行であることを特徴とする請求項1に記載のレンズ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のレンズと、
前記レンズに向けて光を出射する半導体レーザと、を備え、
前記レンズは、前記半導体レーザからの光をビームに変換することを特徴とする光源装置。
【請求項10】
前記第1面の前記光軸に沿った方向の寸法Dは、前記半導体レーザの波長をλとして、
λ/20<D<λ/4
を満たすことを特徴とする請求項9に記載の光源装置。
【請求項11】
前記光軸と直交する方向に隣接する前記第1面のピッチPは、前記半導体レーザの波長をλとして、
P<λ
を満たすことを特徴とする請求項10に記載の光源装置。
【請求項12】
反射防止機能を有する微細構造であって、レンズの光学面に並ぶ断面V字状の溝を有する微細構造が設けられたレンズを成型するための金型であって、
前記溝の第1面を形成するための第1成型面と、
前記溝の第2面を形成するための第2成型面と、を有し、
前記レンズの光軸に対応した基準軸に対する前記第2成型面の角度は、前記基準軸に対する前記第1成型面の角度よりも大きいことを特徴とする金型。
【請求項13】
前記光学面は、凸面であり、
前記第1成型面は、前記基準軸側を向いていることを特徴とする請求項12に記載の金型。
【請求項14】
前記光学面は、凹面であり、
前記第1成型面は、前記基準軸とは反対側を向いていることを特徴とする請求項12に記載の金型。
【請求項15】
前記第1成型面は、前記基準軸と平行であることを特徴とする請求項12に記載の金型。
【請求項16】
請求項12から請求項15のいずれか1項に記載の金型の製造方法であって、
先端の角度が、前記第1成型面と前記第2成型面のなす角となる刃先によって、金型の基材を切削することで、前記第1成型面と前記第2成型面を形成することを特徴とする金型の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ、光源装置、金型、および、金型の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光学面に反射防止機能を有する微細構造が設けられたレンズが知られている(特許文献1参照)。反射防止機能は、レンズ表面における反射を抑制して透過率を向上させる。微細構造は、断面U字状の溝や柱状の凸部を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-201371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術のような形状の微細構造を成形するための金型は、例えば陽極酸化アルミナ法などの特殊な方法によって加工しなければならず、金型の製造が煩雑になるといった問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、微細構造を有するレンズを成型するための金型の製造を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係るレンズは、微細構造を有する。
微細構造は、反射防止機能を有する。微細構造は、断面V字状の溝を有する。
溝は、レンズの光学面に並ぶ。溝は、第1面と、第2面と、を有する。第1面は、レンズの光軸に対する角度が第1角度となる。第2面は、光軸に対して第1角度よりも大きな第2角度で傾斜する。
【0007】
微細構造の溝が断面V字状となる構成によれば、レンズを成型するための金型を、ダイヤモンドチップなどの切削工具を用いた切削加工によって容易に製造できる。
【0008】
また、光学面は、凸面であってもよい。この場合、第1面は、光軸とは反対側を向いていてもよい。
【0009】
光学面が凸面となる構成において第1面が光軸とは反対側を向くことで、金型の加工時にレンズの溝に対応した凸部の高さを大きくすることができる。これにより、レンズの溝の深さを大きくしてレンズの透過率を高くすることができる。
【0010】
また、光学面は、凹面であってもよい。この場合、第1面は、光軸側を向いていてもよい。
【0011】
光学面が凹面となる構成において第1面が光軸側を向くことで、金型の加工時にレンズの溝に対応した凸部の高さを大きくすることができる。これにより、レンズの溝の深さを大きくしてレンズの透過率を高くすることができる。
【0012】
また、溝は、光軸を中心とした渦巻状に形成されていてもよい。
【0013】
溝を光軸を中心とした渦巻状に形成することで、微細構造の形状が略光軸対称となるので、レンズの任意の箇所で略同等の反射防止効果を得ることができる。
【0014】
また、レンズは、光軸に直交する第1方向の屈折力が、光軸および第1方向の両方に直交する第2方向の屈折力と異なっていてもよい。
【0015】
また、光学面は、回折格子を構成する第2溝を有していてもよい。この場合、第2溝の深さは、溝の深さより大きくてもよい。
【0016】
光学面が、微細構造を構成する溝と、回折格子を構成する第2溝とを有することで、回折格子として機能するレンズに、反射防止機能を持たせることができる。
【0017】
また、第2溝は、ブレーズド回折格子を構成する溝であってもよい。この場合、第1面と第2面のなす角は、90°からブレーズ角を引いた値よりも小さくてもよい。
【0018】
また、第1面は、光軸と平行であってもよい。
【0019】
また、本発明に係る光源装置は、前記レンズと、半導体レーザと、を備える。
半導体レーザは、レンズに向けて光を出射する。
レンズは、半導体レーザからの光をビームに変換する。
【0020】
また、光源装置を構成するレンズにおいて、第1面の光軸に沿った方向の寸法Dは、半導体レーザの波長をλとして、λ/20<D<λ/4を満たしてもよい。
【0021】
また、光源装置を構成するレンズにおいて、光軸と直交する方向に隣接する第1面のピッチPは、半導体レーザの波長をλとして、P<λを満たしてもよい。
【0022】
また、本発明に係る金型は、反射防止機能を有する微細構造が設けられたレンズを成型するための金型である。
微細構造は、レンズの光学面に並ぶ断面V字状の溝を有する。
金型は、第1成型面と、第2成型面と、を有する。
第1成型面は、溝の第1面を形成する。
第2成型面は、溝の第2面を形成する。
レンズの光軸に対応した基準軸に対する第2成型面の角度は、基準軸に対する第1成型面の角度よりも大きい。
【0023】
金型が、レンズの断面V字状の溝に対応した断面V字状の第1成型面および第2成型面を有することで、チップを有する加工工具を用いた切削加工によって金型を容易に製造できる。
【0024】
また、光学面は、凸面であってもよい。この場合、第1成型面は、基準軸側を向いていてもよい。
【0025】
光学面が凸面となるレンズを成型する金型において第1成型面が基準軸側を向くことで、金型の加工時にレンズの溝に対応した凸部の高さを大きくすることができる。これにより、レンズの溝の深さを大きくしてレンズの透過率を高くすることができる。
【0026】
また、光学面は、凹面であってもよい。この場合、第1成型面は、基準軸とは反対側を向いていてもよい。
【0027】
光学面が凹面となるレンズを成型する金型において第1成型面が基準軸とは反対側を向くことで、金型の加工時にレンズの溝に対応した凸部の高さを大きくすることができる。これにより、レンズの溝の深さを大きくしてレンズの透過率を高くすることができる。
【0028】
また、第1成型面は、基準軸と平行であってもよい。
【0029】
また、本発明に係る金型の製造方法は、前記金型を製造するための方法である。
金型の製造方法において、先端の角度が、第1成型面と第2成型面のなす角となる刃先によって、金型の基材を切削することで、第1成型面と第2成型面を形成する。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、微細構造を有するレンズを成型するための金型の製造を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1実施形態の光源装置を示す斜視図である。
図2】光源装置を示す断面図である。
図3】レンズを示す平面図である。
図4図3のIV-IV断面図(a)と、図4(a)の破線で囲った部分を拡大した図(b)である。
図5】第1金型を示す平面図である。
図6図5のVI-VI断面図(a)と、図6(a)の破線で囲った部分を拡大した図(b)である。
図7】第2実施形態のレンズおよび第1金型を示す断面図(a)と、図7(a)の破線で囲った部分を拡大した図(b)である。
図8】第3実施形態のレンズを示す平面図である。
図9図8のIX-IX断面図(a)と、図9(a)の破線で囲った部分を拡大した図(b)と、図9(b)の破線で囲った部分を拡大した図(c)である。
図10】第3実施形態の第1金型を示す断面図(a)と、図10(a)の破線で囲った部分を拡大した図(b)と、図10(b)の破線で囲った部分を拡大した図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の第1実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、光源装置1は、プリンタの走査光学装置を構成する装置である。光源装置1は、半導体レーザ10と、レンズ20と、ホルダ30とを備える。
【0033】
以下の説明では、レンズ20の光軸X1に沿った方向を、「光軸方向」ともいう。また、光軸X1に直交する方向を、「第1方向」ともいう。また、光軸X1および第1方向の両方に直交する方向を、「第2方向」ともいう。図面における各方向を示す矢印は、各方向における一方側を指すこととする。
【0034】
半導体レーザ10は、レンズ20に向けて光を出射する。
レンズ20は、半導体レーザ10からの光をビームに変換する。レンズ20は、半導体レーザ10に対して光軸方向の一方側に配置される。
ホルダ30は、半導体レーザ10とレンズ20を保持する。
【0035】
図2に示すように、レンズ20は、第1光学面21と、第2光学面22とを有する。
第1光学面21は、光軸方向において、レンズ20の一端に位置する。第2光学面22は、光軸方向において、レンズ20の他端に位置する。
【0036】
第1光学面21は、光軸方向の一方側に向けて凸となる凸面である。第2光学面22は、光軸X1に直交する平面である。
【0037】
図3に示すように、レンズ20は、第1光学面21に微細構造40を有する。微細構造40は、反射防止機能を有する。微細構造40は、第1光学面21において、光軸X1と直交する方向に並ぶ溝50を有する。溝50は、光軸X1を中心とした、同心円状または渦巻状に形成されている。
【0038】
なお、レンズ20は、第2光学面22に、微細構造40を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0039】
図4(a),(b)に示すように、溝50は、断面V字状の溝である。溝50は、第1面51と、第2面52とを有する。第1面51と第2面52は、光軸X1に沿った断面において、複数存在する。複数の第1面51と複数の第2面52は、光軸X1に沿った断面において、光軸X1側から順に交互に配置される。
【0040】
詳しくは、光軸X1に沿った断面において、第1面51は、2つの第2面52の間に位置する。光軸X1に沿った断面において、第1面51は、2つの第2面52に接続されている。
【0041】
光軸X1に沿った断面において、第2面52は、2つの第1面51の間に位置する。光軸X1に沿った断面において、第2面52は、2つの第1面51に接続されている。
【0042】
第1面51は、レンズ20の光軸X1に対する角度が第1角度となっている。本実施形態では、第1角度は0°である。つまり、本実施形態では、第1面51は、光軸X1と平行となっている。第1面51は、光軸X1とは反対側を向いている。
【0043】
第2面52は、光軸X1に対して第1角度よりも大きな第2角度で傾斜している。第2面52は、第1面51の光軸方向の他端から、光軸方向の一方側および第1方向において光軸X1から離れる方向に向けて斜めに延びている。
【0044】
溝50の深さおよび幅は、ナノメートルオーダとなっている。詳しくは、第1面51の光軸方向の寸法Dは、半導体レーザ10の波長をλとして、λ/20<D<λ/4を満たす。ここで、寸法Dは、溝50の深さである。
【0045】
第1方向に隣接する2つの第1面51のピッチPは、半導体レーザ10の波長をλとして、P<λを満たす。ここで、ピッチPは、溝50の幅である。また、第1方向に隣接する2つの第1面51は、第2面52の第1方向の一端に位置する第1面51と、第2面52の第1方向の他端に位置する第1面51である。
【0046】
図5に示す金型60は、レンズ20を成型するための金型である。金型60は、第1金型61と、第2金型とを有する。レンズ20は、第1金型61と第2金型とを合わせることによって形成される空間内に材料を注入して固めることで製造される。なお、第2金型については、図示および説明は省略する。
【0047】
第1金型61は、主に、レンズ20の第1光学面21を形成するための金型である。第1金型61は、溝50に対応した凸部70を有している。凸部70は、溝50に対応した形状、詳しくは、金型60の基準軸X2を中心とした同心円状または渦巻状に形成されている。
【0048】
ここで、金型60の基準軸X2は、レンズ20の光軸X1に対応した位置に位置する。詳しくは、基準軸X2は、金型60内の成型後のレンズ20の光軸X1と一致する。
【0049】
図6(a),(b)に示すように、凸部70は、第1成型面71と、第2成型面72とを有する。第1成型面71は、溝50の第1面51を形成するための面である。第2成型面72は、溝50の第2面52を形成するための面である。
【0050】
第1成型面71と第2成型面72は、基準軸X2に沿った断面において、複数存在する。複数の第1成型面71と複数の第2成型面72は、基準軸X2に沿った断面において、基準軸X2から順に交互に配置される。
【0051】
詳しくは、基準軸X2に沿った断面において、第1成型面71は、2つの第2成型面72の間に位置する。基準軸X2に沿った断面において、第1成型面71は、2つの第2成型面72に接続されている。
【0052】
基準軸X2に沿った断面において、第2成型面72は、2つの第1成型面71の間に位置する。基準軸X2に沿った断面において、第2成型面72は、2つの第1成型面71に接続されている。
【0053】
第1成型面71は、基準軸X2と平行である。第1成型面71は、基準軸X2側を向いている。
基準軸X2に対する第2成型面72の角度は、基準軸X2に対する第1成型面71の角度よりも大きい。第1成型面71と第2成型面72のなす角は、レンズ20の第1面51と第2面52のなす角に等しい。
【0054】
次に、第1金型61の製造方法について説明する。
第1金型61の製造方法で使用する加工工具は、第1金型61を切削するためのチップ80を有している。チップ80の先端である刃先81は、例えば単結晶ダイヤモンドからなっている。刃先81の角度θ1は、第1成型面71と第2成型面72のなす角θ2となっている。この刃先81によって、第1金型61の基材を切削することで、第1成型面71と第2成型面72を形成する。
【0055】
詳しくは、まず、基準軸X2を中心に第1金型61を回転させる。次に、チップ80を第1金型61の基準軸X2に配置する。その後、チップ80を基準軸X2から徐々に遠ざける方向に移動させることで、同心円状または渦巻状の凸部70を第1金型61に形成する。なお、チップ80を基準軸X2に向けて近づけていくことで、同心円状または渦巻状の凸部70を第1金型61に形成してもよい。
【0056】
以上、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
微細構造40の溝50が断面V字状となるので、レンズ20を成型するための金型60を、ダイヤモンドチップなどの切削工具を用いた切削加工によって容易に製造できる。
【0057】
凸面状の第1光学面21に形成された第1面51が光軸X1とは反対側を向くことで、例えば凸面状の第1光学面21に形成された第1面51が光軸X1側を向く構成と比べ、第1金型61の加工時にレンズ20の溝50に対応した凸部70の高さを大きくすることができる。これにより、レンズ20の溝50の深さを大きくしてレンズ20の透過率を高くすることができる。
【0058】
光軸X1を中心とした同心円状または渦巻状に溝50を形成することで、微細構造40の形状が略光軸対称となるので、レンズ20の任意の箇所で略同等の反射防止効果を得ることができる。
【0059】
第1光学面21が凸面となるレンズ20を成型する第1金型61において第1成型面71が基準軸X2側を向くことで、第1金型61の加工時にレンズ20の溝50に対応した凸部70の高さを大きくすることができる。これにより、レンズ20の溝50の深さを大きくしてレンズ20の透過率を高くすることができる。
【0060】
次に、本発明の第2実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図7(a)に示すように、第2実施形態のレンズ220は、凹面状の第1光学面221と、平面状の第2光学面222とを有する。図7(b)に示すように、レンズ220は、第1光学面221に微細構造240を有する。なお、レンズ220は、第2光学面222に、微細構造240を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0061】
微細構造240は、反射防止機能を有する。微細構造240は、第1光学面221において、光軸X21と直交する方向に並ぶ溝250を有する。溝250は、光軸X21を中心とした、同心円状または渦巻状に形成されている。
【0062】
溝250は、断面V字状の溝である。溝250は、第1面251と、第2面252とを有する。第1面251と第2面252は、光軸X21に沿った断面において、複数存在する。複数の第1面251と複数の第2面252は、光軸X21に沿った断面において、光軸X21側から順に交互に配置される。
【0063】
第1面251は、レンズ20の光軸X21に対する角度が第1角度となっている。本実施形態では、第1角度は0°である。つまり、本実施形態では、第1面251は、光軸X21と平行となっている。第1面251は、光軸X21側を向いている。
【0064】
第2面252は、光軸X21に対して第1角度よりも大きな第2角度で傾斜している。第2面252は、第1面251の光軸方向の他端から、光軸方向の一方側および第1方向において光軸X21側に向けて斜めに延びている。
【0065】
溝250の深さおよび幅の大きさは、第1実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0066】
図7(a)に示すように、第1金型261は、主に、レンズ220の第1光学面221を形成するための金型である。第1金型261は、溝250に対応した凸部270を有している。凸部270は、溝250に対応した形状、詳しくは、第1金型281の基準軸X22を中心とした同心円状または渦巻状に形成されている。
【0067】
ここで、第1金型261の基準軸X22は、レンズ220の光軸X21に対応した位置に位置する。詳しくは、基準軸X22は、第1金型261内の成型後のレンズ220の光軸X21と一致する。
【0068】
図7(b)に示すように、凸部270は、第1成型面271と、第2成型面272とを有する。第1成型面271は、溝250の第1面251を形成するための面である。第2成型面272は、溝250の第2面252を形成するための面である。
【0069】
第1成型面271と第2成型面272は、基準軸X22に沿った断面において、複数存在する。複数の第1成型面271と複数の第2成型面272は、基準軸X22に沿った断面において、基準軸X22側から順に交互に配置される。第1成型面271は、基準軸X22とは反対側を向いている。
【0070】
以上、第2実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
凹面状の第1光学面221に形成された第1面251が光軸X21側を向くことで、例えば凹面状の第1光学面221に形成された第1面251が光軸X21とは反対側を向く構成と比べ、第1金型261の加工時にレンズ220の溝250に対応した凸部270の高さを大きくすることができる。これにより、レンズ220の溝250の深さを大きくしてレンズ220の透過率を高くすることができる。
【0071】
第1光学面221が凹面となるレンズ220を成型する第1金型261において第1成型面271が基準軸X22とは反対側を向くことで、第1金型261の加工時にレンズ220の溝250に対応した凸部270の高さを大きくすることができる。これにより、レンズ220の溝250の深さを大きくしてレンズ220の透過率を高くすることができる。
【0072】
次に、本発明の第3実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。
図8に示すように、第3実施形態に係るレンズ320は、第1方向の屈折力が第2方向の屈折力と異なるレンズである。レンズ320は、光軸方向から見て、略楕円形状となっている。
【0073】
図9(a)に示すように、レンズ320は、第1光学面321と、第2光学面322とを有する。
【0074】
第1光学面321は、ブレーズド回折格子を構成する第2溝90を複数有している。図8に示すように、各第2溝90は、光軸方向から見て、略楕円形状に延びる。複数の第2溝90は、光軸X31側から順に大きさが大きくなっている。隣接する2つの第2溝90のうち、光軸X31から遠い方の第2溝90が、光軸X31に近い方の第2溝90を囲うように配置されている。
【0075】
図9(a)に示すように、複数の第2溝90は、光軸方向において同じ位置に位置する。第2溝90は、断面V字状の溝である。第2溝90は、第3面93と、第4面94とを有している。
【0076】
第3面93と第4面94は、光軸X31に沿った断面において、複数存在する。複数の第3面93と複数の第4面94は、光軸X31に沿った断面において、光軸X31側から順に交互に配置される。
【0077】
第3面93は、レンズ320の光軸X31に対する角度が第3角度となっている。本実施形態では、第3角度は0°である。第3面93は、光軸X31側を向いている。
【0078】
第4面94は、光軸X31に対して第3角度よりも大きな第4角度で傾斜している。第4面94は、第3面93の光軸方向の他端から、光軸方向の一方側および第1方向において光軸X31に近づく方向に向けて斜めに延びている。光軸X31に直交する面と第4面94のなす角は、ブレーズド回折格子のブレーズ角θbとなっている。
【0079】
第2溝90の深さおよび幅は、マイクメートルロオーダとなっている。第2溝90の第4面94は、図9(b)に示すように、ナノメートルオーダの溝350を有する。
【0080】
溝350は、反射防止機能を有する微細構造340を構成する断面V字状の溝である。溝350の深さは、第2溝90の深さよりも小さい。図9(c)に示すように、溝350は、第1面351と、第2面352とを有する。なお、レンズ320は、第2光学面322に、微細構造を有していてもよいし、有していなくてもよい。
【0081】
第1面351と第2面352は、光軸X31に沿った断面において、複数存在する。複数の第1面351と複数の第2面352は、光軸X31に沿った断面において、光軸X31側から順に交互に配置される。
【0082】
第1面351は、レンズ320の光軸X31に対する角度が第1角度となっている。本実施形態では、第1角度は0°である。第1面351は、光軸X31側を向いている。つまり、第1面351と第3面93は、同じ方向を向いている。
【0083】
第2面352は、光軸X31に対して第1角度よりも大きな第2角度で傾斜している。第2面352は、第1面351の光軸方向の他端から、光軸方向の一方側および第1方向において光軸X31に近づく方向に向けて斜めに延びている。第1面351と第2面352のなす角θ3は、90°からブレーズ角θbを引いた値よりも小さい。
【0084】
図10(a),(b)に示すように、第1金型361は、レンズ320の第1光学面321を形成するための金型である。第1金型361は、レンズ320の光軸X31に対応した基準軸X32を有する。第1金型361は、第2溝90に対応した第2凸部390と、溝350に対応した凸部370とを有している。
【0085】
第2凸部390は、第3成型面393と、第4成型面394とを有する。第3成型面393は、第2溝90の第3面93を形成するための面である。第4成型面394は、第2溝90の第4面94を形成するための面である。基準軸X32に直交する面と第4成型面394のなす角は、ブレーズド回折格子のブレーズ角θbとなっている。
【0086】
凸部370は、第1成型面371と、第2成型面372とを有する。第1成型面371は、溝350の第1面351を形成するための面である。第2成型面372は、溝350の第2面352を形成するための面である。第1成型面371と第2成型面372のなす角θ4は、第1面351と第2面352のなす角θ3と等しい。
【0087】
凸部370は、先端の角度θ5がθ4となるチップ380によって形成される。詳しくは、チップ380は、チップ380の刃先を形成する第1チップ面381および第2チップ面382を有する。第1チップ面381は、第1成型面371を形成するための面である。第2チップ面382は、第2成型面372を形成するための面である。第1チップ面381と第2チップ面382のなす角は、θ5である。
【0088】
チップ380によって第1成型面371および第2成型面372を形成する際、第1チップ面381は、基準軸X32に平行となっている。これにより、チップ380によって、基準軸X32に沿った第1成型面371および第3成型面393を良好に形成することができる。
【0089】
ここで、微細構造の溝350の第1面351が光軸X31に対して大きく傾斜する場合には、チップ380の第1チップ面381も基準軸X32に対して大きく傾斜し、第3成型面393が基準軸X32に対して大きく傾斜してしまう。
【0090】
ここで、第1面351が光軸X31に対して大きく傾斜する場合の例としては、例えば、第1面と第2面が、二等辺三角形の等しい二辺を構成する場合、詳しくは、光軸に対する第1面の角度と、光軸に対する第2面の角度が同じである場合が挙げられる。より詳しくは、溝の底を通り、かつ、光軸と平行となる直線に対する第1面の角度と、この直線に対する第2面の角度が同じ場合である。
【0091】
これに対し、本実施形態のように、光軸X31に対する第1面351の角度が、光軸X31に対する第2面352の角度よりも小さくなることで、第1チップ面381の基準軸X32に対する角度を小さくすることができ、第3成型面393が基準軸X32に対して大きく傾斜するのを抑制することができる。
【0092】
特に、第1面351を光軸X31と平行にすることで、第1チップ面381が基準軸X32と平行になるので、本実施形態のように第1成型面371および第3成型面393を基準軸X32と平行に形成することができる。また、第1チップ面381が基準軸X32と平行になることで、第1成型面371および第3成型面393の少なくとも一方を基準軸X32に対して斜めに形成することもできる。
【0093】
以上、第3実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
第1光学面321が、微細構造340を構成する溝350と、ブレーズド回折格子を構成する第2溝90とを有するので、ブレーズド回折格子として機能するレンズ320に、反射防止機能を持たせることができる。
なお、第3実施形態において第1方向の屈折力が第2方向の屈折力と異なるレンズとしたが、微細構造340を構成する溝350と、ブレーズド回折格子を構成する第2溝90とを有するレンズは第1方向の屈折力と第2方向の屈折力とが等しいレンズであってもよい。また、第1光学面321は、屈折力を有する凸面あるいは凹面に形成されてもよい。
【0094】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
【0095】
凸面状の光学面に形成される溝の第1面は、光軸側に向いていてもよい。また、凹面状の光学面に形成される溝の第1面は、光軸とは反対側に向いていてもよい。
【0096】
凸面状の光学面を形成するための金型の第1成型面は、基準軸とは反対側を向いていてもよい。凹面状の光学面を形成するための金型の第1成型面は、基準軸側を向いていてもよい。
【0097】
前記した実施形態および変形例で説明した各要素を、任意に組み合わせて実施してもよい。
【符号の説明】
【0098】
20 レンズ
21 第1光学面
40 微細構造
50 溝
51 第1面
52 第2面
X1 光軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10