(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098579
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】スライドドア支持機構
(51)【国際特許分類】
E05D 15/10 20060101AFI20240717BHJP
B60J 5/06 20060101ALI20240717BHJP
E05D 15/30 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
E05D15/10
B60J5/06 A
E05D15/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002142
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】深堀 敬
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034FA01
2E034GA01
2E034GB15
(57)【要約】
【課題】車両の外観意匠性を向上できるとともに車両の乗降性を向上でき、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与できるスライドドア支持機構を提供する。
【解決手段】スライドドア支持機構1は、車体に設けられるロアレール105と、車体のリアドア開口部をスライド移動によって開閉するリアスライドドア103bと、リアスライドドア103bに設けられるドアレール2と、ロアレール105とドアレール2とに跨る第1アーム3と、第1アーム3に設けられるとともに、ロアレール105にスライド移動自在に設けられる車体側ローラユニット8及び車体側ローラ14と、第1アーム3に設けられるとともに、ドアレール2にスライド移動自在に設けられるドア側ローラ15と、リアスライドドア103b及び第1アーム3に回動自在に支持される第2アーム4と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられる車体側ガイドと、
前記車体のドア開口部をスライド移動によって開閉するスライドドアと、
前記スライドドアに設けられるドア側ガイドと、
前記車体側ガイドと前記ドア側ガイドとに跨る第1アームと、
前記第1アームに設けられるとともに、前記車体側ガイドにスライド移動自在に設けられる被車体側ガイドと、
前記第1アームに設けられるとともに、前記ドア側ガイドにスライド移動自在に設けられる被ドア側ガイドと、
前記スライドドア及び前記第1アームに回動自在に支持される第2アームと、
を備える、
ことを特徴とするスライドドア支持機構。
【請求項2】
前記スライドドアのうち、前記ドア側ガイドよりも前記スライドドアの閉側端部に設けられ、前記第2アームを回動自在に支持するドア側支持部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のスライドドア支持機構。
【請求項3】
前記第1アームの長手方向中央部に設けられ、前記第2アームを回動自在に支持するアーム側支持部を備える、
ことを特徴とする請求項2に記載のスライドドア支持機構。
【請求項4】
前記第1アームは、車幅方向内側に向かって凸となるように湾曲形成されている、
ことを特徴とする請求項3に記載のスライドドア支持機構。
【請求項5】
前記スライドドアの車幅方向内側の面は、
前記ドア側ガイドが設けられる第1面と、
前記第2アームが支持されるとともに、前記第2アームが車幅方向で重なる領域に形成された第2面と、
を備え、
前記第2面は、前記第1面よりも車幅方向外側に位置している、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のスライドドア支持機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スライドドア支持機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両は、乗降用等のドア開口部をスライド移動によって開閉するスライドドアを備えたものがある。スライドドアを支持するための機構は、例えば車体に設けられたレールと、スライドドアに回動自在に設けられたアームと、アームに設けられるとともにレールにスライド移動自在に設けられるローラと、を備える。
レールは、例えばドア開口部に沿って前後方向に延びる主レールと、主レールと車幅方向に並んで配置された副レールと、を備える。
【0003】
副レールは、スライドドアの開位置からスライドドアの閉位置近傍に至るまで主レールと平行で、かつ主レールよりも車室側に配置されている。また、副レールは、スライドドアの閉位置近傍から閉位置に向かうに従って漸次主レールに接近するように湾曲形成されている。
ローラは、主レールにスライド移動自在に設けられる主ガイドローラと、副レールにスライド移動自在に設けられる副ガイドローラと、を備える。
【0004】
このような構成のもと、主ガイドローラ及び副ガイドローラは、スライドドアの開位置から閉位置近傍に至る間は、車幅方向に沿って並んでいる。このため、アームも車幅方向に沿っている。主ガイドローラ及び副ガイドローラがスライドドアの閉位置近傍から閉位置に向かうと、主ガイドローラと副ガイドローラとの並び方向は、徐々に前後方向に沿っていく。このため、アームも前後方向に沿うように徐々に傾動して折り畳まれる。
スライドドアはアームに回動自在に設けられているので、アームが折り畳まれることに伴い車体側へと引き込まれる。このように、レールを車室側に引き込むことなく、ドア開口部をスライドドアによって閉じることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで上述の従来技術では、アームは、スライドドアに対して回動軸線を中心に回動するだけである。このため、アームが折り畳まれたとき、スライドドアの閉側端部からアームが大きく突出してしまう。この結果、スライドドアの閉側端部に隣接する別のドア(例えばフロントドア等)を開けたとき、スライドドアから突出する折り畳まれたアームが露出して外観意匠性が悪化してしまう可能性があった。また、車両の乗降性が悪化してしまう可能性があった。
【0007】
例えば、スライドドアからのアームの突出長さを短くするためにアームそのものの長さを短くすることが考えられる。しかしながら、このように構成するとスライドドアを開ける際に車体とスライドドアとの距離が短くなりすぎて干渉してしまう可能性もある。このため、アームの長さを短くすることができず、外観意匠性を改善することが困難である。
【0008】
そこで、本発明は、車両の外観意匠性を向上できるとともに車両の乗降性を向上でき、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与できるスライドドア支持機構を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明に係るスライドドア支持機構(例えば、実施形態のスライドドア支持機構1)は、車体(例えば、実施形態の車体101)に設けられる車体側ガイド(例えば、実施形態のロアレール105、第1レール5、第2レール6)と、前記車体のドア開口部(例えば、実施形態のリアドア開口部102b)をスライド移動によって開閉するスライドドア(例えば、実施形態のリアスライドドア103b)と、前記スライドドアに設けられるドア側ガイド(例えば、実施形態のドアレール2)と、前記車体側ガイドと前記ドア側ガイドとに跨る第1アーム(例えば、実施形態の第1アーム3)と、前記第1アームに設けられるとともに、前記車体側ガイドにスライド移動自在に設けられる被車体側ガイド(例えば、実施形態の車体側ローラユニット8、車体側ローラ14)と、前記第1アームに設けられるとともに、前記ドア側ガイドにスライド移動自在に設けられる被ドア側ガイド(例えば、実施形態のドア側ローラ15)と、前記スライドドア及び前記第1アームに回動自在に支持される第2アーム(例えば、実施形態の第2アーム4)と、を備える、ことを特徴とする。
【0010】
このように構成することで、ドア開口部をスライドドアによって閉じる際、被ドア側ガイドを介し、ドア側ガイドに対して第1アームがスライド移動しながら折り畳まれる。このため、第1アームの長さを十分に長くしてもスライドドアから第1アームが突出してしまう長さをできる限り短くできる。よって、車両の外観意匠性を向上できるとともに車両の乗降性を向上できる。延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
また、第2アームを設けることにより、簡素な構造で第1アームの挙動を制限できる。このため、スライドドアの開閉動作を安全、かつ確実に行うことができる。
【0011】
(2)上記構成において、前記スライドドアのうち、前記ドア側ガイドよりも前記スライドドアの閉側端部に設けられ、前記第2アームを回動自在に支持するドア側支持部(例えば、実施形態のドア側支持部18)を備えてもよい。
【0012】
このように構成することで、第2アームによってスライドドアを確実に支持できる。
ところで、第1アームに設けられた被ドア側ガイドとスライドドアに設けられたドア側ガイドとは、ドア側ガイドに対して被ドア側ガイドがスライド移動自在である分、多少ガタつく。このようなドア側ガイドよりもスライドドアの閉側端部にガタつきの少ない第2アームを支持させることにより、ドア開口部に対して精度よく、かつ安定してスライドドアを閉じることができる。また、被ドア側ガイドとドア側ガイドとのガタつきを過度に無くす必要がなくなる。このため、ドア側ガイドに対して被ドア側ガイドをスムーズにスライド移動させることができる。
【0013】
(3)上記構成において、前記第1アームの長手方向中央部に設けられ、前記第2アームを回動自在に支持するアーム側支持部(例えば、実施形態の支持シャフト17)を備えてもよい。
【0014】
このように構成することで、第2アームによる第1アームの支持強度を高めることができる。例えば、第1アームの長手方向中央よりも被ドア側ガイド部(スライドドア側の端部)寄りにアーム側支持部を設けたとする。このような場合、結果的に第1アームの長手方向両端部のみが車体側ガイドやドア側ガイドに支持されているのと同じ事になってしまうので、第1アームを安定させることが困難になる。このため、上記のように構成することで、第2アームによって第1アームを安定させることができる。
【0015】
(4)上記構成において、前記第1アームは、車幅方向内側に向かって凸となるように湾曲形成されてもよい。
【0016】
このように構成することで、第1アームを折り畳んだ状態で、第1アームの長手方向中央部に設けられたアーム側支持部を車幅方向内側に寄せることができる。このため、第1アームを折り畳んだ状態で、第1アームの長手方向中央部に第2アームを連結しつつ被車体ガイドとドア側支持部を近接配置できる。よって、スライドドア支持機構の車幅方向の幅をできる限り小さくできる。
【0017】
(5)上記構成において、前記スライドドアの車幅方向内側の面(例えば、実施形態の内面107)は、前記ドア側ガイドが設けられる第1面と(例えば、実施形態の第1アーム取付面107b)、前記第2アームが支持されるとともに、前記第2アームが車幅方向で重なる領域に形成された第2面(例えば、実施形態の第2アーム取付面107a)と、を備え、前記第2面は、前記第1面よりも車幅方向外側に位置してもよい。
【0018】
第1アームを折り畳んだ状態では、第1アームと第2アームとが車幅方向で重なることになる。つまり、スライドドア支持機構は、第1アームを折り畳んだ状態において、第2アームの存在している箇所が第2アームの存在していない箇所よりも車幅方向の幅が大きくなる。そこで、第1面よりも第2面を車幅方向外側に位置させることで、スライドドアを閉じた際の車体とスライドドアとの間の隙間を小さくできる。この隙間にスライドドア支持機構を配置することが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、車両の外観意匠性を向上できるとともに車両の乗降性を向上でき、延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与できるスライドドア支持機構を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態における車両の概略側面図である。
【
図2】本発明の実施形態におけるリアスライドドアの開位置の途中でのスライドドア支持機構を上から見た概略構成図である。
【
図3】本発明の実施形態におけるリアスライドドアの閉位置でのスライドドア支持機構を上から見た概略構成図である。
【
図4】
図3の状態のスライドドア支持機構を上から見た平面図であり、一部を破断している。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
<車両>
図1は、本発明に係るスライドドア支持機構1が設けられた車両100の概略側面図である。
以下の説明では、車両100の地面側を単に下側、車両100の天井側を単に上側、車両100の進行方向前方を単に前方、進行方向後方を単に後方、車幅方向内側を車室側、車幅方向外側を車外側と称して説明する。
【0023】
図1に示すように、車両100の車体101における側部には、例えばフロントドア開口部102aと、フロントドア開口部102aの後方に形成されたリアドア開口部102bと、が形成されている。フロントドア開口部102aは、図示しないヒンジ機構を介して車体101に設けられたフロントドア103aによって開閉される。リアドア開口部102bは、リアスライドドア103bによって開閉される。
【0024】
車体101の側部には、リアドア開口部102bの上側に配置されているアッパーレール104と、リアドア開口部102bの下側に配置されているロアレール105と、リアドア開口部102bにおける上下方向中央部の後方に配置されたセンターレール106と、が設けられている。これらレール104,105,106に、リアスライドドア103bがスライド移動自在に設けられている。
【0025】
リアスライドドア103bが完全に後方に位置しているとき、リアドア開口部102bが完全に開いている。以下、この位置をリアスライドドア103bの開位置と称する。リアスライドドア103bが完全に前方に位置しているとき、リアドア開口部102bが完全に閉じている。以下、この位置をリアスライドドア103bの閉位置と称する。各レール104,105,106のうち、例えばロアレール105は、スライドドア支持機構1を構成している。
【0026】
<スライドドア支持機構>
図2、
図3は、スライドドア支持機構1を上から見た概略構成図である。
図2は、リアスライドドア103bが開いている状態で、かつ開位置の途中を示す。
図3は、リアスライドドア103bの閉位置を示す。
図4は、
図3の状態のスライドドア支持機構1を上から見た平面図であり、一部を破断して示している。
図5は、
図4のV-V線に沿う断面図である。
【0027】
図2から
図5に示すように、スライドドア支持機構1は、ロアレール105と、リアスライドドア103bの車室側の内面107に設けられたドアレール2と、ロアレール105とドアレール2とに跨る第1アーム3と、リアスライドドア103b及び第1アーム3に回転自在に支持される第2アーム4と、を主構成としている。
【0028】
ロアレール105は、リアドア開口部102bの下端に配置された第1レール5と、第1レール5の車外側で、かつ第1レール5よりも上方に配置された第2レール6と、を備える。
図5に詳示するように、第1レール5は、車体101に形成されたレール収納凹部101aに固定されている。第1レール5は、前後方向に延びている。第1レール5の車幅方向及び上下方向に沿う断面形状は、車外側が開口されたC字状である。第1レール5は、横ローラ収納部5aと縦ローラ収納部5bとが一体成形されている。
【0029】
横ローラ収納部5aの車外側が開口されている。横ローラ収納部5aには、後述する横ローラ11がスライド移動自在に収納される。縦ローラ収納部5bは、横ローラ収納部5aの上部に配置されている。上下方向で縦ローラ収納部5bと横ローラ収納部5aとが連通されている。すなわち、縦ローラ収納部5bの車幅方向及び上下方向に沿う断面形状は、下側が開口するC字状である。縦ローラ収納部5bには、後述する縦ローラ12がスライド移動自在に収納される。
【0030】
第2レール6は、車体101におけるレール収納凹部101aよりも上方にブラケット7を介して固定されている。これにより、第2レール6は、第1レール5の車外側で、かつ第1レール5よりも上方に配置される。第2レール6の車幅方向及び上下方向に沿う断面形状は、下側が開口するC字状である。
【0031】
図2に詳示するように、第2レール6は、大部分に形成された第2レール本体6aと、第2レール本体6aの閉側端部である前部に形成された湾曲レール部6bと、を備える。第2レール本体6aは、リアスライドドア103bの開位置からリアスライドドア103bの閉位置近傍に至る間に形成されている。第2レール本体6aは、第1レール5と平行に延びている。
【0032】
湾曲レール部6bは、第2レール本体6aの閉側端部から閉位置に向かうに従って、車室側に接近するように、かつ車幅方向に沿って湾曲形成されている。換言すれば、湾曲レール部6bは、第2レール本体6aの閉側端部から閉位置に向かうに従って、上下方向からみて漸次第1レール5に接近するように車幅方向に沿って湾曲形成されている。湾曲レール部6bは、第2レール本体6aに連なっている。第2レール6には、後述する車体側ローラ14がスライド移動自在に収納される。
【0033】
図4に詳示するように、リアスライドドア103bの内面107は、閉側端部である前方に形成された第2アーム取付面107aと、第2アーム取付面107aの後方で、リアスライドドア103bにおける内面107の大部分に形成された第1アーム取付面107bと、を備える。第2アーム取付面107a及び第1アーム取付面107bは、それぞれ前後方向及び上下方向に沿う平坦な面である。第2アーム取付面107aは、第1アーム取付面107bよりも車外側に位置している。第2アーム取付面107aと第1アーム取付面107bとは、段差部107cを介して連なっている。第1アーム取付面107bに、ドアレール2が設けられている。
【0034】
ドアレール2は、第1アーム取付面107bに沿うように前後方向に延びている。ドアレール2の車幅方向及び上下方向に沿う断面形状は、下側が開口するC字状である。ドアレール2には、後述するドア側ローラ15がスライド移動自在に収納される。
【0035】
図4に詳示するように、第1アーム3は、車室側に向かって凸となるように僅かに湾曲形成されている。
図5に詳示するように、第1アーム3の車幅方向及び上下方向に沿う断面形状は、車室側が開口するC字状である。すなわち、第1アーム3は、上下方向に沿う第1縦壁3aと、第1縦壁3aの上端から車室側に向かって突出する第1上横壁3bと、第1縦壁3aの下端から車室側に向かって突出する第1下横壁3cと、が一体成形されている。
【0036】
第1アーム3のうち、ロアレール105側の端部には、車体側ローラユニット8が設けられている。車体側ローラユニット8は、第1上横壁3b及び第1下横壁3cに取り付けられたブラケット9と、ブラケット9に支持された横ローラ11及び縦ローラ12と、を備える。
【0037】
ブラケット9は、第1アーム3に取り付けられた固定部9aと、固定部9aに一体成形されたベース部9bと、を備える。固定部9aは、第1上横壁3bの上面と第1下横壁3cの下面とに重なるように跨ってC字状に形成されている。固定部9aは、支持シャフト13を介して第1アーム3に回転自在に支持されている。支持シャフト13は、第1上横壁3b及び第1下横壁3cを貫通して上下方向に延びている。
【0038】
ベース部9bは、固定部9aの下壁からロアレール105に向かって延出されている。ベース部9bのロアレール105側の端部に、横ローラ11及び縦ローラ12が支持されている。
横ローラ11は、ベース部9bから車幅方向に沿って、かつ車室側に向かって突出する支軸11aと、支軸11aにおける車室側の端部に回転自在に支持された横ローラ本体11bと、を備える。この横ローラ本体11bが、第1レール5の横ローラ収納部5aに収納されている。
【0039】
縦ローラ12は、2つ設けられている。2つの縦ローラ12は、それぞれ横ローラ11を間に挟んで前後方向両側に配置されている。縦ローラ12は、ベース部9bから上方に向かって突出する支軸12aと、支軸12aの上端に回転自在に支持された縦ローラ本体12bと、を備える。支軸12a及び縦ローラ本体12bは、横ローラ本体11bと上下方向で並んで配置されている。縦ローラ本体12bが、縦ローラ収納部5bに収納されている。各ローラ収納部5a,5b内でそれぞれローラ本体11b,12bが回転されるので、車体側ローラユニット8は、第1レール5にスライド移動自在に設けられる。
【0040】
第1アーム3のうち、車体側ローラユニット8よりもドアレール2側には、車体側ローラ14が設けられている。車体側ローラ14は、第1アーム3の第1上横壁3bに配置されている。車体側ローラ14は、第1上横壁3bから上方に向かって突出する支軸14aと、支軸14aの上端に回転自在に支持された車体側ローラ本体14bと、を備える。
【0041】
第1上横壁3bにおける車体側ローラ14に対応する箇所は、第1縦壁3aとは反対側に向かって若干張り出している。車体側ローラ本体14bが、第2レール6に収納されている。第2レール6内で車体側ローラ本体14bが回転されるので、車体側ローラ14は、第2レール6にスライド移動自在に設けられる。
【0042】
第1アーム3のうち、ドアレール2側の端部には、ドア側ローラ15が設けられている。ドア側ローラ15は、第1アーム3の第1上横壁3bに配置されている。ドア側ローラ15は、第1上横壁3bから上方に向かって突出する支軸15aと、支軸15aの上端に回転自在に支持されたドア側ローラ本体15bと、を備える。ドア側ローラ本体15bが、ドアレール2に収納される。ドアレール2内でドア側ローラ本体15bが回転されるので、ドア側ローラ15は、ドアレール2にスライド移動自在に設けられる。
【0043】
図5に詳示するように、第2アーム4の車幅方向及び上下方向に沿う断面形状は、車室側が開口するC字状である。すなわち、第2アーム4は、上下方向に沿う第2縦壁4aと、第2縦壁4aの上端から車室側に向かって突出する第2上横壁4bと、第2縦壁4aの下端から車室側に向かって突出する第2下横壁4cと、が一体成形されている。
【0044】
第2上横壁4bの内面と第2下横壁4cの内面との間の幅は、第1上横壁3bの外面と第1下横壁3cの外面との間の幅よりも若干大きい。第2上横壁4b及び第2下横壁4cのうち、各々第1アーム3側の端部には、それぞれ舌片部16が延出形成されている。各舌片部16は、第2アーム4の長手方向に沿って延出されている。各舌片部16は、それぞれ第1上横壁3bの外面に重なるとともに、第1下横壁3cの外面に重なる。各舌片部16は、支持シャフト17を介して第1アーム3に回転自在に支持されている。
【0045】
支持シャフト17は、第1アーム3の長手方向中央部に設けられている。長手方向中央部とは、第1アーム3の長手方向において完全に中央のみを意味するのではなく、その中央を含む周辺近傍も含む。支持シャフト13は、第1上横壁3b及び第1下横壁3cを貫通して上下方向に延びている。
【0046】
第2アーム4のうち、リアスライドドア103b側の端部は、ドア側支持部18を介してリアスライドドア103bに回転自在に支持されている。
図5に詳示するように、ドア側支持部18の車幅方向及び上下方向に沿う断面形状は、車室側が開口するC字状である。すなわち、ドア側支持部18は、上下方向に沿う支持部縦壁18aと、支持部縦壁18aの上端から車室側に向かって突出する支持部上横壁18bと、支持部縦壁18aの下端から車室側に向かって突出する支持部下横壁18cと、が一体成形されている。
【0047】
支持部縦壁18aは、前後方向に長く形成されている。支持部縦壁18aの前後方向の長さは、第2アーム4の舌片部16を除いた長手方向の長さとほぼ同じである。支持部縦壁18aは、リアスライドドア103bの第2アーム取付面107a上に載置されている。第2アーム取付面107aの前後方向の長さは、支持部縦壁18aの前後方向の長さよりも若干長い。このような第2アーム取付面107aに、ボルト20を介して支持部縦壁18aが締結固定されている。
【0048】
支持部上横壁18bの内面と支持部下横壁18cの内面との間の幅は、第2上横壁4bの外面と第2下横壁4cの外面との間の幅よりも若干大きい。
支持部上横壁18b及び支持部下横壁18cのうち、閉側端部には、それぞれ車室側に向かって舌片部19が延出形成されている。各舌片部19は、それぞれ第2上横壁4bの外面に重なるとともに、第2下横壁4cの外面に重なる。各舌片部19に、支持シャフト21を介して第2アーム4が回転自在に支持されている。支持シャフト21は、第2上横壁4b及び第2下横壁4cを貫通して上下方向に延びている。
【0049】
ここで、支持部縦壁18aの前後方向の長さは、第2アーム4の舌片部16を除いた長手方向の長さとほぼ同じであり、第2アーム取付面107aの前後方向の長さは、支持部縦壁18aの前後方向の長さよりも若干長い。したがって、第2アーム取付面107aは、第2アーム4の回動領域、つまり、第2アーム4と車幅方向で重なる領域に形成されていることになる。
【0050】
<スライドドア支持機構の動作>
次に、
図2から
図5に基づいて、スライドドア支持機構1の動作について説明する。
図2に示すように、リアスライドドア103bが開位置にある場合、車体側ローラ14は、第2レール6のうちの第2レール本体6aに位置している。このため、車体側ローラユニット8と車体側ローラ14とは、車幅方向に一定の間隔をあけて配置されている。この分、第1アーム3と車体101との間の角度、及び第1アーム3とリアスライドドア103bとの間の角度が大きく、第1アーム3は起き上った状態になる。
【0051】
第1アーム3が起き上がった状態では、第1アーム3と第2アーム4との間の角度、及び第2アーム4とリアスライドドア103bとの間の角度も大きく、第1アーム3に追随して第2アーム4も起き上っている。また、第1アーム3が起き上がった状態では、ドアレール2の閉位置寄り(前方寄り)に、ドア側ローラ15が位置されている。
【0052】
この状態からリアスライドドア103bを閉位置に移動させると、
図3に示すように、車体側ローラ14が湾曲レール部6bにスライド移動される。第1レール5と湾曲レール部6bとは、閉位置に向かうに従って車幅方向で徐々に接近していくので、車体側ローラユニット8に対して車体側ローラ14が後方にずれる。
【0053】
これにより、第1アーム3と車体101との間の角度、及び第1アーム3とリアスライドドア103bとの間の角度が次第に小さくなり、第1アーム3が次第に折り畳められる。第1アーム3と第2アーム4との間の角度、及び第2アーム4とリアスライドドア103bとの間の角度も小さくなり、第1アーム3に追随して第2アーム4も折り畳められる。
【0054】
ここで、第2アーム4のうち、第1アーム3側の端部は、支持シャフト17を介して第1アーム3に回転自在に支持されている。第2アーム4のうち、リアスライドドア103b側の端部は、ドア側支持部18を介してリアスライドドア103bに回転自在に支持されている。このため、第2アーム4は、第1アーム3を後方に押し倒すようにして折り畳まられる。この結果、第1アーム3は、ドア側ローラ15をドアレール2に沿って開位置方向(後方)にスライド移動させながら折り畳まれる。そして、車室側にリアスライドドア103bが引き込まれ、リアスライドドア103bが閉位置となる。
【0055】
また、
図5に詳示するように、第1上横壁3bの外面と第1下横壁3cの外面との間の幅よりも若干大きいので、第1アーム3と第2アーム4とが折り畳まれたとき、第2アーム4に第1アーム3の一部が収納される。支持部上横壁18bの内面と支持部下横壁18cの内面との間の幅は、第2上横壁4bの外面と第2下横壁4cの外面との間の幅よりも若干大きいので、ドア側支持部18に第2アーム4が折り畳まれたとき、ドア側支持部18に第2アーム4が収納される。このため、第1アーム3や第2アーム4が折り畳まれたとき、これら第1アーム3や第2アーム4が嵩張ることがない。
【0056】
このように、スライドドア支持機構1は、車体101に設けられるロアレール105と、リアスライドドア103bに設けられるドアレール2と、ロアレール105とドアレール2とに跨る第1アーム3と、第1アーム3に設けられる車体側ローラユニット8、車体側ローラ14及びドア側ローラ15と、リアスライドドア103b及び第1アーム3に回動自在に支持される第2アーム4と、を備える。
【0057】
このため、リアドア開口部102bをリアスライドドア103bによって閉じる際、ドア側ローラ15を介し、ドアレール2に対して第1アーム3をスライド移動させながら折り畳むことができる。したがって、第1アーム3の長さを十分に長くしてもリアスライドドア103bを閉じる際、リアスライドドア103bから第1アーム3が突出してしまう長さ(
図3における符号L参照)をできる限り短くできる。よって、車両100の外観意匠性を向上できるとともに車両100の乗降性を向上できる。延いては持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
また、第2アーム4を設けることにより、簡素な構造で第1アーム3の挙動を制限できる。このため、リアスライドドア103bの開閉動作を安全、かつ確実に行うことができる。
【0058】
リアスライドドア103bの内面107のうち、ドアレール2よりも閉側端部に、ドア側支持部18を設けた。ドア側支持部18を介し、リアスライドドア103bに第2アーム4を回動自在に支持した。このため、第2アーム4によってリアスライドドア103bを確実に支持できる。
【0059】
ところで、第1アーム3に設けられたドア側ローラ15とリアスライドドア103bに設けられたドアレール2とは、ドアレール2に対してドア側ローラ15がスライド移動自在である分、多少ガタつく。このようなドアレール2よりもリアスライドドア103bの閉側端部にガタつきの少ない第2アーム4を支持させることにより、リアドア開口部102bに対して精度よく、かつ安定してリアスライドドア103bを閉じることができる。また、ドアレール2とドア側ローラ15とのガタつきを過度に無くす必要がなくなる。よって、ドアレール2に対してドア側ローラ15をスムーズにスライド移動させることができる。
【0060】
第1アーム3の長手方向中央部に、第2アーム4を回動自在に支持するための支持シャフト17が設けられている。このため、第2アーム4による第1アーム3の支持強度を高めることができる。例えば、第1アーム3の長手方向中央よりもドア側ローラ15(リアスライドドア103b側の端部)寄りに支持シャフト17を設けたとする。このような場合、結果的に第1アーム3の長手方向両端部のみが車体側ローラユニット8及び車体側ローラ14やドア側ローラ15に支持されているのと同じ事になってしまう。この構成では、第1アーム3を安定させることが困難になる。よって、上記のように構成することで、第2アーム4によって第1アーム3を安定させることができる。
【0061】
第1アーム3は、車室側に向かって凸となるように僅かに湾曲形成されている。このため、第1アーム3を折り畳んだ状態で、第1アーム3の長手方向中央部に設けられた支持シャフト17を車幅方向内側に寄せることができる。したがって、第1アーム3を折り畳んだ状態で、第1アーム3の長手方向中央部に第2アーム4を連結しつつ車体側ローラユニット8及び車体側ローラ14と支持シャフト17とを車幅方向で近接配置できる。よって、スライドドア支持機構1の車幅方向の幅をできる限り小さくできる。
【0062】
リアスライドドア103bの内面107は、ドアレール2が設けられる第1アーム取付面107bと、第2アーム4が支持されるとともに、第2アーム4が車幅方向で重なる領域に形成された第2アーム取付面107aと、を備える。
ここで、リアスライドドア103bが閉位置にある状態において、リアスライドドア103bの第2アーム取付面107a上では、ドア側支持部18、第2アーム4、及び第1アーム3が折り重なる。このため、スライドドア支持機構1において、第2アーム4が存在している箇所は、第2アーム4が存在していない箇所よりも車幅方向の幅が大きくなってしまう。
【0063】
換言すれば、第2アーム取付面107aに対応する箇所では、スライドドア支持機構1の車幅方向の幅が大きくなってしまう。しかしながら、第2アーム取付面107aは、第1アーム取付面107bよりも車外側に位置している。このため、リアスライドドア103bが閉位置にある状態において、車体101とリアスライドドア103bの第1アーム取付面107bとの間の幅が大きくなってしまうことがない。すなわち、リアスライドドア103bを閉じた際の車体101とリアスライドドア103bとの間の隙間を小さくできる。この隙間にスライドドア支持機構1を配置することが可能になる。
【0064】
本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば上述の実施形態では、ロアレール105がスライドドア支持機構1を構成している場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、アッパーレール104がスライドドア支持機構1を構成してもよい。
【0065】
上述の実施形態では、ロアレール105は、第1レール5及び第2レール6の2つのレールで構成されている場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、1つのレールでもよい。1つのレールの場合、第1アーム3を折り畳む構造を別で設ければよい。1つのレールの場合、レールに応じて車体側ローラユニット8又は車体側ローラ14のいずれかを設けたり、これらに代わる機構を設けたりしてもよい。
【0066】
上述の実施形態では、車体101に対して第1アーム3をスライド移動自在に設けるために、ロアレール105、車体側ローラユニット8及び車体側ローラ14を設けた場合について説明した。リアスライドドア103bに対して第1アーム3をスライド移動自在に設けるために、ドアレール2及びドア側ローラ15を設けた場合について説明した。
【0067】
しかしながらこれに限られるものではない。車体101に、ロアレール105に代わって車体側ガイドを設け、第1アーム3に、車体側ローラユニット8及び車体側ローラ14に代わって車体側ガイドにスライド移動自在に支持される被車体側ガイドを設ければよい。リアスライドドア103bに、ドアレール2に代わってドア側ガイドを設け、第1アーム3に、ドア側ローラ15に代わってドア側ガイドにスライド移動自在に支持される被ドア側ガイドを設ければよい。これら車体側ガイド、被車体側ガイド、ドア側ガイド、及び被ドア側ガイドは、例えば各々ローラ11,12,14,15をシューに変更したり、各々レール2,105等をバーに変更したりすることも可能である。車体側ガイド、被車体側ガイド、ドア側ガイド、及び被ドア側ガイドを、既知のいわゆるスライド機構や台形ネジで構成することも可能である。
【0068】
上述の実施形態では、リアスライドドア103bを前方にスライド移動させることにより、リアドア開口部102bに対してリアスライドドア103bを閉位置とする場合について説明した。しかしながらこれに限られるものではなく、リアスライドドア103bを後方にスライド移動させることにより、リアドア開口部102bに対してリアスライドドア103bを閉位置としてもよい。このように構成する場合、閉側端部とは後部の事をいう。
【符号の説明】
【0069】
1…スライドドア支持機構
2…ドアレール(ドア側ガイド)
3…第1アーム
4…第2アーム
5…第1レール(車体側ガイド)
6…第2レール(車体側ガイド)
8…車体側ローラユニット(被車体側ガイド)
14…車体側ローラ(被車体側ガイド)
15…ドア側ローラ(被ドア側ガイド)
17…支持シャフト(アーム側支持部)
18…ドア側支持部
100…車両
101…車体
102b…リアドア開口部(ドア開口部)
103b…リアスライドドア(スライドドア)
105…ロアレール(車体側ガイド)
107…内面(面)
107a…第2アーム取付面(第2面)
107b…第1アーム取付面(第1面)