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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098589
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】撮像装置、プログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 23/60 20230101AFI20240717BHJP
   H04N 5/222 20060101ALI20240717BHJP
   H04N 23/56 20230101ALI20240717BHJP
   H04N 9/64 20230101ALI20240717BHJP
【FI】
H04N23/60 500
H04N5/222 400
H04N23/56
H04N9/64 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002164
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002185
【氏名又は名称】ソニーグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003410
【氏名又は名称】弁理士法人テクノピア国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】土屋 隆史
【テーマコード(参考)】
5C066
5C122
【Fターム(参考)】
5C066AA01
5C066CA05
5C066EA13
5C066GA01
5C066HA02
5C066KE04
5C066KM02
5C122DA35
5C122EA12
5C122FG03
5C122FG14
5C122FH02
5C122FK23
5C122GG18
5C122HA03
5C122HB01
5C122HB05
(57)【要約】
【課題】背景としての表示装置を用いた撮影で、表示装置からの光を照明光として用いる場合も、適切な色再現ができるようにする。
【解決手段】撮像装置は、イメージセンサで得られた映像データに対して、第1の照明に対して設定された第1の色設定パラメータを用いて行う第1の色変換処理と、第1の照明とは異なる分光特性であって背景映像を表示する表示装置による第2の照明に対して設定された第2の色設定パラメータを用いて行う第2の色変換処理と、を選択的に実行可能に構成された信号処理部を備えるようにする。
【選択図】図25
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イメージセンサで得られた映像データに対して、第1の照明に対して設定された第1の色設定パラメータを用いて行う第1の色変換処理と、前記第1の照明とは異なる分光特性であって背景映像を表示する表示装置による第2の照明に対して設定された第2の色設定パラメータを用いて行う第2の色変換処理と、を実行可能に構成された信号処理部を備えた
撮像装置。
【請求項2】
前記信号処理部は、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータとの両方を用いて行う第3の色変換処理を実行可能に構成されている
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記信号処理部は、
比率情報に応じて、前記第3の色変換処理への前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの反映度合いを設定する
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記信号処理部は、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの少なくとも一方を映像データに関連づける処理を行う
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記信号処理部は、
前記第3の色変換処理における前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの比率情報を映像データに関連づける処理を行う
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記信号処理部は、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータに応じた色変換処理の処理係数を映像データに関連づける処理を行う
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記信号処理部は、
色変換処理の1つとして、ホワイトバランス調整処理、又はマトリクス色変換処理、又は3DLUT変換処理を行う
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記第1の色設定パラメータ、前記第2の色設定パラメータを指示可能なユーザインタフェース部をさらに備え、
前記信号処理部は、前記ユーザインタフェース部で指示された前記第1の色設定パラメータ、前記第2の色設定パラメータを用いて前記第1の色変換処理又は前記第2の色変換処理を実行可能に構成されている
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記第1の色設定パラメータ、前記第2の色設定パラメータ、及び前記比率情報を指示可能なユーザインタフェース部をさらに備え、
前記信号処理部は、前記ユーザインタフェース部で指示された前記第1の色設定パラメータ、前記第2の色設定パラメータ、及び前記比率情報を用いて前記第3の色変換処理を実行可能に構成されている
請求項3に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記第1の色設定パラメータ及び前記第2の色設定パラメータは、色温度及びティント値を含む179
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記映像データはRAW映像データである
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記信号処理部は、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの少なくとも一方を修正し、修正された前記第1の色設定パラメータ又は修正された前記第2の色設定パラメータを、前記RAW映像データに関連づける
請求項11に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記表示装置の形状、又は、LEDライト対応か否かに基づいて、
前記第1の色変換処理と前記第2の色変換処理の一方を自動的に実行するか、又は、前記第1の色変換処理と前記第2の色変換処理の一方をユーザへ示唆する制御部をさらに有する
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項14】
情報処理装置に、
撮像装置による映像データに対して、第1の照明に対して設定された第1の色設定パラメータを用いて行う第1の色変換処理と、前記第1の照明とは異なる分光特性であって背景映像を表示する表示装置による第2の照明に対して設定された第2の色設定パラメータを用いて行う第2の色変換処理と、を実行させる
プログラム。
【請求項15】
前記情報処理装置に、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータとの両方を用いて行う第3の色変換処理を実行させる
請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記映像データとしてのRAW映像データに対する現像処理を前記情報処理装置に実行させるソフトウェアである
請求項14に記載のプログラム。
【請求項17】
前記情報処理装置に、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの少なくとも一方を修正し、修正された前記第1の色設定パラメータ又は修正された前記第2の色設定パラメータを、前記RAW映像データに関連づけさせる
請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記情報処理装置に、
前記撮像装置による映像データに関連づけられたメタデータである前記第1の色設定パラメータ、前記第2の色設定パラメータの少なくとも一方を色変換処理に適用させる
請求項14に記載のプログラム。
【請求項19】
前記情報処理装置に、
前記撮像装置による映像データに関連づけられたメタデータである前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの比率情報を色変換処理に適用させる
請求項14に記載のプログラム。
【請求項20】
前記情報処理装置に、
前記撮像装置による映像データに関連づけられたメタデータである前記第1の色設定パラメータに応じた色変換処理の処理係数と前記第2の色設定パラメータに応じた色変換処理の処理係数の少なくとも一方を色変換処理に適用させる
請求項14に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は撮像装置、プログラムに関し、例えば映像制作の分野で用いることのできる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
映画等の映像コンテンツの制作のための撮影手法として、いわゆるグリーンバックの前で演者が演技を行い、後に背景映像を合成する技術が知られている。
また近年はグリーンバック撮影に代わって、大型のディスプレイを設置したスタジオにおいて、ディスプレイに背景映像を表示させ、その前で演者が演技を行うことで、演者と背景を撮影できる撮影システムも開発され、いわゆるバーチャルプロダクション(Virtual Production)、インカメラVFX(In-Camera VFX)、またはLED(Light Emitting Diode)ウォールバーチャルプロダクション(LED Wall Virtual Production)として知られている。
下記特許文献1には、背景映像の前で演技する演者や物体を撮影するシステムの技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0145644号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大型のディスプレイに背景映像を表示させたうえで、演者及び背景映像をカメラで撮影することによれば、撮影後に背景映像を別途合成しなくてもよいことや、演者やスタッフがシーンを視覚的に理解して演技や演技良否の判断ができるなど、グリーンバック撮影に比べて利点が多い。
【0005】
また、背景映像を表示する大型のディスプレイは照明としての役割も担うことが可能である。このため撮影の照明として、別途の照明装置の光とディスプレイからの光を併用することもあるし、場合によってはディスプレイからの光のみを照明とすることも考えられる。
【0006】
しかし背景映像表示用のディスプレイは、太陽光やLED照明など通常の撮影で使う照明とは分光特性が異なる。このためディスプレイからの光を照明に用いると、撮影された映像は色再現が適切ではない場合がある。
【0007】
そこで本開示では、ディスプレイを照明として用いる場合でも、適切な色合いの映像が撮影できるようにする技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術に係る撮像装置は、イメージセンサで得られた映像データに対して、第1の照明に対して設定された第1の色設定パラメータを用いて行う第1の色変換処理と、前記第1の照明とは異なる分光特性であって背景映像を表示する表示装置による第2の照明に対して設定された第2の色設定パラメータを用いて行う第2の色変換処理と、を実行可能に構成された信号処理部を備える。
分光特性が異なる照明を用いる環境、特には照明機器を用いる場合と、分光特性が照明機器とは異なり背景映像を表示する表示装置を照明機器として利用する場合とで、例えば色再現等のための色変換処理を切り替えることができるようにする。
【0009】
また本技術に係るプログラムは、情報処理装置に、撮像装置による映像データに対して、第1の照明に対して設定された第1の色設定パラメータを用いて行う第1の色変換処理と、前記第1の照明とは異なる分光特性であって背景映像を表示する表示装置による第2の照明に対して設定された第2の色設定パラメータを用いて行う第2の色変換処理と、を実行させるプログラムである。
例えば撮像装置による撮影映像データについて、後段で映像処理を行う場合における現像ソフトウェアとして構成される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本技術の実施の形態の撮影システムの説明図である。
図2】実施の形態の撮影システムのカメラ位置に応じた背景映像の説明図である。
図3】実施の形態の撮影システムのカメラ位置に応じた背景映像の説明図である。
図4】実施の形態の映像コンテンツ制作工程の説明図である。
図5】実施の形態の撮影システムのブロック図である。
図6】実施の形態の撮影システムの背景映像生成のフローチャートである。
図7】実施の形態の複数カメラを用いた撮影システムのブロック図である。
図8】実施の形態の情報処理装置のブロック図である。
図9】実施の形態で用いられるLEDウォールの種類の説明図である。
図10】実施の形態で用いられるLEDウォールの種類の説明図である。
図11】各種照明の分光特性の説明図である。
図12】実施の形態のカメラのブロック図である。
図13】色温度及びティントの説明図である。
図14】実施の形態のカメラのホワイトバランス部の処理の説明図である。
図15】実施の形態のカメラのマトリクス部の処理の説明図である。
図16】実施の形態のLEDライト照明に対応する処理の説明図である。
図17】実施の形態のLEDウォール照明に対応する処理の説明図である。
図18】実施の形態のLEDライト照明とLEDウォール照明に対応する処理の説明図である。
図19】実施の形態のホワイトバランス部の処理の説明図である。
図20】実施の形態のマトリクス部の処理の説明図である。
図21】実施の形態のユーザインタフェースの説明図である。
図22】実施の形態で照明がLEDライトの場合の説明図である。
図23】実施の形態で照明がLEDウォールの場合の説明図である。
図24】実施の形態で照明がLEDライトとLEDウォールの場合の説明図である。
図25】実施の形態の色変換処理のフローチャートである。
図26】実施の形態の操作に応じた処理のフローチャートである。
図27】実施の形態の撮影時の処理のフローチャートである。
図28】実施の形態のRAW現像ソフトウェアによる処理例の説明図である。
図29】実施の形態のRAW現像ソフトウェアによる処理例のフローチャートである。
図30】実施の形態のRAW現像ソフトウェアによる処理例の説明図である。
図31】実施の形態のRAW現像ソフトウェアによる処理例のフローチャートである。
図32】実施の形態のRAW現像ソフトウェアによる処理例の説明図である。
図33】実施の形態のRAW現像ソフトウェアによる処理例のフローチャートである。
図34】実施の形態のRAW現像ソフトウェアによる処理例の説明図である。
図35】実施の形態のRAW現像ソフトウェアによる処理例のフローチャートである。
図36】実施の形態のRAW現像ソフトウェアによるパラメータ修正と出力についての処理例のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を次の順序で説明する。
<1.撮影システム及びコンテンツ制作>
<2.情報処理装置の構成>
<3.照明態様>
<4.カメラの構成と処理例>
<5.メタデータとRAW現像ソフトウェアによる処理例>
<6.まとめ及び変型例>
【0012】
なお、本開示において「映像」或いは「画像」とは静止画、動画のいずれをも含む。また「映像」とはディスプレイに表示されている状態を指すだけでなく、ディスプレイに表示されていない状態の映像データについても包括的に「映像」と表記する場合がある。「画像」も同様である。
例えば実施の形態において、ディスプレイでの表示に至る前における背景映像、カメラによる撮影映像、スイッチャーで切り替えられる背景映像や撮影映像は、実際に表示されている映像ではなく映像データであるが、便宜上「背景映像」「撮影映像」等と表記する。
【0013】
<1.撮影システム及び映像コンテンツ制作>
本開示の技術を適用できる撮影システム及び映像コンテンツの制作について説明する。
図1は撮影システム500を模式的に示している。この撮影システム500はバーチャルプロダクションとしての撮影を行うシステムで、図では撮影スタジオに配置される機材の一部を示している。
【0014】
撮影スタジオにおいては演者510が演技その他のパフォーマンスを行うパフォーマンスエリア501が設けられる。このパフォーマンスエリア501の少なくとも背面、さらには左右側面や上面には、大型の表示装置が配置される。表示装置のデバイス種別は限定されないが、図では大型の表示装置の一例としてLEDウォール505を用いる例を示している。
【0015】
1つのLEDウォール505は、複数のLEDパネル506を縦横に連結して配置することで、大型のパネルを形成する。ここでいうLEDウォール505のサイズは特に限定されないが、演者510の撮影を行うときに背景を表示するサイズとして必要な大きさ、或いは十分な大きさであればよい。
【0016】
パフォーマンスエリア501の上方、或いは側方などの必要な位置に、必要な数のライト580が配置され、パフォーマンスエリア501に対して照明を行う。
【0017】
パフォーマンスエリア501の付近には、例えば映画その他の映像コンテンツの撮影のためのカメラ502が配置される。カメラ502は、カメラマン512が位置を移動させることができ、また撮影方向や、画角等の操作を行うことができる。もちろんリモート操作によってカメラ502の移動や画角操作等が行われるものも考えられる。またカメラ502が自動的もしくは自律的に移動や画角変更を行うものであってもよい。このためにカメラ502が雲台や移動体に搭載される場合もある。
【0018】
カメラ502によって、パフォーマンスエリア501における演者510と、LEDウォール505に表示されている映像がまとめて撮影される。例えばLEDウォール505に背景映像vBとして風景が表示されることで、演者510が実際にその風景の場所に居て演技をしている場合と同様の映像を撮影できることになる。
【0019】
パフォーマンスエリア501の付近にはアウトプットモニタ503が配置される。このアウトプットモニタ503にはカメラ502で撮影されている映像がモニタ映像vMとしてリアルタイム表示される。これにより映像コンテンツの制作を行う監督やスタッフが、撮影されている映像を確認することができる。
【0020】
このように、撮影スタジオにおいてLEDウォール505を背景にした演者510のパフォーマンスを撮影する撮影システム500では、グリーンバック撮影に比較して各種の利点がある。
【0021】
例えば、グリーンバック撮影の場合、演者が背景やシーンの状況を想像しにくく、それが演技に影響するということがある。これに対して背景映像vBを表示させることで、演者510が演技しやすくなり、演技の質が向上する。また監督その他のスタッフにとっても、演者510の演技が、背景やシーンの状況とマッチしているか否かを判断しやすい。
【0022】
またグリーンバック撮影の場合よりも撮影後のポストプロダクションが効率化される。これは、いわゆるクロマキー合成が不要とすることができる場合や、色の補正や映り込みの合成が不要とすることができる場合があるためである。また、撮影時にクロマキー合成が必要とされた場合においても、緑や青の映像を表示するだけで済むため物理的な背景用スクリーンを追加不要とされることも効率化の一助となっている。
【0023】
グリーンバック撮影の場合、演者の身体、衣装、物にグリーンの色合いが増してしまうため、その修正が必要となる。またグリーンバック撮影の場合、ガラス、鏡、スノードームなどの周囲の光景が映り込む物が存在する場合、その映り込みの画像を生成し、合成する必要があるが、これは手間のかかる作業となっている。
【0024】
これに対し、図1の撮影システム500で撮影する場合、グリーンの色合いが増すことはないため、その補正は不要である。また背景映像vBを表示させることで、ガラス等の実際の物品への映り込みも自然に得られて撮影されているため、映り込み映像の合成も不要である。
【0025】
ここで、背景映像vBについて図2図3で説明する。背景映像vBを、LEDウォール505に表示させて、演者510とともに撮影を行うにしても、単純に背景映像vBを表示させるのみでは、撮影された映像は背景が不自然になる。実際には立体で奥行きもある背景を平面的に背景映像vBとしているためである。
【0026】
例えばカメラ502は、パフォーマンスエリア501の演者510に対して、多様な方向から撮影することができ、またズーム操作も行うことができる。演者510も一カ所に立ち止まっているわけではない。するとカメラ502の位置、撮影方向、画角などに応じて、演者510の背景の実際の見え方は変化するはずであるが、平面映像としての背景映像vBではそのような変化が得られない。そこで背景が、視差を含めて、実際の見え方と同様になるように背景映像vBを変化させる。
【0027】
図2はカメラ502が図の左側の位置から演者510を撮影している様子を示し、また図3はカメラ502が図の右側の位置から演者510を撮影している様子を示している。各図において、背景映像vB内に撮影領域映像vBCを示している。
なお背景映像vBのうちで撮影領域映像vBCを除いた部分は「アウターフラスタム」と呼ばれ、撮影領域映像vBCは「インナーフラスタム」と呼ばれる。
ここで説明している背景映像vBとは、撮影領域映像vBC(インナーフラスタム)を含んで背景として表示される映像全体を指す。
【0028】
この撮影領域映像vBC(インナーフラスタム)の範囲は、LEDウォール505の表示面内で、カメラ502によって実際に撮影される範囲に相当する。そして撮影領域映像vBCは、カメラ502の位置、撮影方向、画角等に応じて、実際にそのカメラ502の位置を視点としたときに見える光景を表現するような映像となっている。
【0029】
具体的には、撮影領域映像vBCは、背景としての3D(three dimensions)モデルである3D背景データを用意し、その3D背景データに対して、リアルタイムで逐次、カメラ502の視点位置に基づいてレンダリングする。
なお、実際には撮影領域映像vBCの範囲は、その時点でカメラ502によって撮影される範囲よりも少し広い範囲とされる。これはカメラ502のパン、チルトやズームなどにより撮影される範囲が若干変化したときに、描画遅延によってアウターフラスタムの映像が映り込んでしまうことを防止するためや、アウターフラスタムの映像からの回折光による影響を避けるためである。
このようにリアルタイムでレンダリングされた撮影領域映像vBCの映像は、アウターフラスタムの映像と合成される。背景映像vBで用いられるアウターフラスタムの映像は、予め3D背景データに基づいてレンダリングされたものである場合や、毎フレーム或いは間欠的なフレーム毎に、リアルタイムにレンダリングされる場合があるが、そのアウターフラスタムの映像の一部に、撮影領域映像vBC(インナーフラスタム)の映像を組み込むことで、全体の背景映像vBを生成している。
なお、アウターフラスタムの映像もインナーフラスタムと同様に毎フレームレンダリングするケースがあるが、ここでは静止した映像を例にとり、以降の説明では主にアウターフラスタムの映像は先頭フレームのみレンダリングする場合を例として説明する。
【0030】
これにより、カメラ502を前後左右に移動させたり、ズーム操作を行ったりしても、演者510とともに撮影される範囲の背景は、実際のカメラ502の移動に伴う視点位置やFOV(Field of View(視野))の変化に応じた映像として撮影されることになる。
【0031】
図2図3に示すように、アウトプットモニタ503には、演者510と背景を含むモニタ映像vMが表示されるが、これが撮影された映像である。このモニタ映像vMにおける背景は、撮影領域映像vBCである。つまり撮影された映像に含まれる背景は、リアルタイムレンダリングされた映像となる。
【0032】
このように実施の形態の撮影システム500においては、単に背景映像vBを平面的に表示させるだけではなく、実際に風景を撮影した場合と同様の映像を撮影することができるように、撮影領域映像vBCを含む背景映像vBをリアルタイムに変化させるようにしている。
【0033】
なお、LEDウォール505に表示させた背景映像vBの全体ではなく、カメラ502によって映り込む範囲としての撮影領域映像vBCのみをリアルタイムにレンダリングすることで、システムの処理負担も軽減するような工夫を行ってもよい。
【0034】
ここで、撮影システム500で撮影を行うバーチャルプロダクションとしての映像コンテンツの制作工程を説明しておく。図4に示すように、映像コンテンツ制作工程は3つの段階に大別される。プリプロダクションST1、プロダクションST2、ポストプロダクションST3である。
【0035】
プリプロダクションST1は、背景映像vBを表示するための3D背景データを制作する工程である。上述のように背景映像vBは、撮影の際に3D背景データを用いてリアルタイムでレンダリングを行って生成する。そのために予め3Dモデルとしての3D背景データを制作しておく。
【0036】
3D背景データの制作手法の例として、フルCG(Full Computer Graphics)、点群データ(Point Cloud)スキャン、フォトグラメトリ(Photogrammetry)という例がある。
【0037】
フルCGは、3Dモデルをコンピュータグラフィックスで制作する手法である。3つの手法の中で最も工数や時間を要する手法となるが、非現実的な映像や、実際には撮影が困難な映像などを背景映像vBとしたい場合に用いられることが好適となる。
【0038】
点群データスキャンは、ある位置から例えばライダー(LiDAR)を用いて距離測定を行うとともに、同じ位置からカメラで360度の画像を撮影し、ライダーで測距した点の上にカメラで撮影した色データを載せることで点群データによる3Dモデルを生成する手法である。フルCGに比較して、短い時間で3Dモデル制作ができる。またフォトグラメトリより高精細の3Dモデルを制作しやすい。
【0039】
フォトグラメトリは、物体を複数視点から撮影して得た2次元画像から、視差情報を解析して寸法・形状を求める写真測量の技術である。3Dモデル制作を短時間で行うことができる。
なお、フォトグラメトリによる3Dデータ生成において、ライダーで取得した点群情報を用いても良い。
【0040】
プリプロダクションST1では、例えばこれらの手法を用いて3D背景データとなる3Dモデルを制作する。もちろん上記手法を複合的に用いてもよい。例えば点群データスキャンやフォトグラメトリで制作した3Dモデルの一部をCGで制作し、合成するなどである。
【0041】
プロダクションST2は、図1に示したような撮影スタジオにおいて撮影を行う工程である。この場合の要素技術として、リアルタイムレンダリング、背景表示、カメラトラッキング、照明コントロールなどがある。
【0042】
リアルタイムレンダリングは、図2図3で説明したように各時点(背景映像vBの各フレーム)で撮影領域映像vBCを得るためのレンダリング処理である。これはプリプロダクションST1で制作した3D背景データに対して、各時点のカメラ502の位置等に応じた視点でレンダリングを行うものである。
【0043】
このようにリアルタイムレンダリングを行って撮影領域映像vBCを含む各フレームの背景映像vBを生成し、LEDウォール505に表示させる。
【0044】
カメラトラッキングは、カメラ502による撮影情報を得るために行われ、カメラ502の各時点の位置情報、撮影方向、画角などをトラッキングする。これらを含む撮影情報を各フレームに対応させてレンダリングエンジンに提供することで、カメラ502の視点位置等に応じたリアルタイムレンダリングが実行できる。
【0045】
撮影情報はメタデータとして映像と紐づけられたり対応づけられたりする情報である。
撮影情報としては各フレームタイミングでのカメラ502の位置情報、カメラの向き、画角、焦点距離、F値(絞り値)、シャッタースピード、レンズ情報などを含むことが想定される。
【0046】
照明コントロールとは、撮影システム500における照明の状態をコントロールすることで、具体的にはライト580の光量、発光色、照明方向などの制御を行う。例えば撮影するシーンの時刻設定や場所の設定などに応じた照明コントロールが行われる。
【0047】
ポストプロダクションST3は、撮影後に行われる各種処理を示している。例えば映像の補正、映像の調整、クリップ編集、映像エフェクトなどが行われる。
【0048】
映像の補正としては、色域変換や、カメラや素材間の色合わせなどが行われる場合がある。
映像の調整として色調整、輝度調整、コントラスト調整などが行われる場合がある。
クリップ編集として、クリップのカット、順番の調整、時間長の調整などが行われる場合がある。
映像エフェクトとして、CG映像や特殊効果映像の合成などが行われる場合がある。
【0049】
続いてプロダクションST2で用いられる撮影システム500の構成を説明する。
図5は、図1図2図3で概要を説明した撮影システム500の構成を示すブロック図である。
【0050】
図5に示す撮影システム500は、上述した、複数のLEDパネル506によるLEDウォール505、カメラ502、アウトプットモニタ503、ライト580を備える。そしてさらに撮影システム500は、図5に示すように、レンダリングエンジン520、アセットサーバ530、シンクジェネレータ540、オペレーションモニタ550、カメラトラッカー560、LEDプロセッサ570、ライティングコントローラ581、ディスプレイコントローラ590を備える。
【0051】
LEDプロセッサ570のそれぞれは、1又は複数のLEDパネル506に対応して設けられ、それぞれ対応する1又は複数のLEDパネル506の映像表示駆動を行う。
【0052】
シンクジェネレータ540は、LEDパネル506による表示映像のフレームタイミングと、カメラ502による撮像のフレームタイミングの同期をとるための同期信号を発生し、各LEDプロセッサ570、カメラ502、及びレンダリングエンジン520に供給する。
【0053】
カメラトラッカー560は、各フレームタイミングでのカメラ502による撮影情報を生成し、レンダリングエンジン520に供給する。例えばカメラトラッカー560は撮影情報の1つとして、LEDウォール505の位置或いは所定の基準位置に対する相対的なカメラ502の位置情報や、カメラ502の撮影方向を検出し、これらをレンダリングエンジン520に供給する。
カメラトラッカー560による具体的な検出手法としては、天井にランダムに反射板を配置して、それらに対してカメラ502に組み付けられたカメラトラッカー560から照射された赤外光の反射光から位置を検出する方法がある。また検出手法としては、カメラ502の雲台やカメラ502の本体に搭載されたジャイロ情報や、カメラ502の撮影映像の画像認識によりカメラ502の自己位置推定する方法もある。
【0054】
またカメラ502からレンダリングエンジン520に対しては、撮影情報として画角、焦点距離、F値、シャッタースピード、レンズ情報などが供給される場合もある。
【0055】
アセットサーバ530は、プリプロダクションST1で制作された3Dモデル、即ち3D背景データを記録媒体に格納し、必要に応じて3Dモデルを読み出すことができるサーバである。即ち3D背景データのDB(data Base)として機能する。
【0056】
レンダリングエンジン520は、LEDウォール505に表示させる背景映像vBを生成する処理を行う。このためレンダリングエンジン520は、アセットサーバ530から必要な3D背景データを読み出す。そしてレンダリングエンジン520は、3D背景データをあらかじめ指定された空間座標から眺めた形でレンダリングしたものとして背景映像vBで用いるアウターフラスタムの映像を生成する。
またレンダリングエンジン520は、カメラトラッカー560やカメラ502から供給された撮影情報を用いて3D背景データに対する視点位置等を特定して撮影領域映像vBC(インナーフラスタム)のレンダリングを行う。
【0057】
さらにレンダリングエンジン520は、アウターフラスタムに対し、カメラ502の動きに応じて動的に変化する撮影領域映像vBCを合成して1フレームの映像データとしての背景映像vBを生成する。そしてレンダリングエンジン520は、生成した1フレームの映像データをディスプレイコントローラ590に送信する。
【0058】
ディスプレイコントローラ590は、1フレームの映像データを、各LEDパネル506で表示させる映像部分に分割した分割映像信号nDを生成し、各LEDパネル506に対して分割映像信号nDの伝送を行う。このときディスプレイコントローラ590は、表示部間の発色などの個体差/製造誤差などに応じたキャリブレーションを行っても良い。
なお、ディスプレイコントローラ590を設けず、これらの処理をレンダリングエンジン520が行うようにしてもよい。つまりレンダリングエンジン520が分割映像信号nDを生成し、キャリブレーションを行い、各LEDパネル506に対して分割映像信号nDの伝送を行うようにしてもよい。
【0059】
各LEDプロセッサ570が、それぞれ受信した分割映像信号nDに基づいてLEDパネル506を駆動することで、LEDウォール505において全体の背景映像vBが表示される。その背景映像vBには、その時点のカメラ502の位置等に応じてレンダリングされた撮影領域映像vBCが含まれている。
【0060】
カメラ502は、このようにLEDウォール505に表示された背景映像vBを含めて演者510のパフォーマンスを撮影することができる。カメラ502の撮影によって得られた映像は、カメラ502の内部又は図示しない外部の記録装置において記録媒体に記録されるほか、リアルタイムでアウトプットモニタ503に供給され、モニタ映像vMとして表示される。
【0061】
オペレーションモニタ550では、レンダリングエンジン520の制御のためのオペレーション画像vOPが表示される。エンジニア511はオペレーション画像vOPを見ながら背景映像vBのレンダリングに関する必要な設定や操作を行うことができる。
【0062】
ライティングコントローラ581は、ライト580の発光強度、発光色、照射方向などを制御する。ライティングコントローラ581は、例えばレンダリングエンジン520とは非同期でライト580の制御を行うものとしてもよいし、或いは撮影情報やレンダリング処理と同期して制御を行うようにしてもよい。そのためレンダリングエンジン520或いは図示しないマスターコントローラ等からの指示によりライティングコントローラ581が発光制御を行うようにしてもよい。またレンダリングエンジン520からライト580の制御を行うようにしてもよい。
【0063】
このような構成の撮影システム500におけるレンダリングエンジン520の処理例を図6に示す。
【0064】
レンダリングエンジン520は、ステップS10でアセットサーバ530から、今回使用する3D背景データを読み出し、内部のワークエリアに展開する。
この段階でアウターフラスタムとして用いる映像を生成する場合もある。
【0065】
その後レンダリングエンジン520は、ステップS20で、読み出した3D背景データに基づく背景映像vBの表示終了と判定するまで、ステップS30からステップS60の処理を繰り返す。
【0066】
ステップS30でレンダリングエンジン520は、カメラトラッカー560やカメラ502からの撮影情報を取得する。これにより、現フレームで反映させるカメラ502の位置や状態を確認する。
【0067】
ステップS40でレンダリングエンジン520は、撮影情報に基づいてレンダリングを行う。即ち現在のフレームに反映させるカメラ502の位置、撮影方向、或いは画角等に基づいて3D背景データに対する視点位置を特定してレンダリングを行う。このとき、焦点距離、F値、シャッタースピード、レンズ情報などを反映した映像処理を行うこともできる。このレンダリングによって撮影領域映像vBC(インナーフラスタム)としての映像データを得ることができる。アウターフラスタムについては、ステップS10で予め固定的な映像として生成する他、ステップS40でフレーム毎に生成することもある。
【0068】
ステップS50でレンダリングエンジン520は、全体の背景映像であるアウターフラスタムと、カメラ502の視点位置を反映した映像、即ち撮影領域映像vBCを合成する処理を行う。例えばある特定の基準視点でレンダリングした背景全体の映像に対して、カメラ502の視点を反映して生成した映像を合成する処理である。これにより、LEDウォール505で表示される1フレームの背景映像vB、つまり撮影領域映像vBCを含む背景映像vBが生成される。
【0069】
ステップS60の処理は、レンダリングエンジン520又はディスプレイコントローラ590で行う。ステップS60でレンダリングエンジン520又はディスプレイコントローラ590は、1フレームの背景映像vBについて、個別のLEDパネル506に表示される映像に分割した分割映像信号nDを生成する。キャリブレーションを行う場合もある。そして各分割映像信号nDを各LEDプロセッサ570に送信する。
【0070】
以上の処理により、各フレームタイミングで、カメラ502で撮像される撮影領域映像vBCを含む背景映像vBがLEDウォール505に表示されることになる。
【0071】
ところで図5では1台のカメラ502のみを示したが、複数台のカメラ502で撮影を行うこともできる。図7は複数のカメラ502a,502bを使用する場合の構成例を示している。カメラ502a,502bは、それぞれ独立してパフォーマンスエリア501における撮影を行うことができるようにされる。また各カメラ502a,502b及び各LEDプロセッサ570は、シンクジェネレータ540により同期が維持される。
【0072】
カメラ502a,502bに対応して、アウトプットモニタ503a,503bが設けられ、それぞれ対応するカメラ502a,502bによって撮影された映像を、モニタ映像vMa,vMbとして表示するように構成される。
【0073】
またカメラ502a,502bに対応して、カメラトラッカー560a,560bが設けられ、それぞれ対応するカメラ502a,502bの位置や撮影方向を検出する。カメラ502a及びカメラトラッカー560aからの撮影情報や、カメラ502b及びカメラトラッカー560bからの撮影情報は、レンダリングエンジン520に送信される。
【0074】
レンダリングエンジン520は、カメラ502a側、或いはカメラ502b側のいずれか一方又は両方の撮影情報を用いて、各フレームの背景映像vBを得るためのレンダリングを行うことができる。
【0075】
なお図7では2台のカメラ502a、502bを用いる例を示したが、3台以上のカメラ502を用いて撮影を行うことも可能である。
但し、複数のカメラ502を用い、それぞれの撮影情報を用いて、それぞれのカメラ502に対応した撮影領域映像vBC(インナーフラスタム)のレンダリングを行い、表示させると、それぞれの撮影領域映像vBCが互いに干渉するという事情がある。例えば図7のように2台のカメラ502a、502bを用いる例では、カメラ502aに対応する撮影領域映像vBCを示しているが、カメラ502bの映像を用いる場合、カメラ502bに対応する撮影領域映像vBCも必要になる。その場合に単純に各カメラ502a、502bに対応するそれぞれの撮影領域映像vBCを表示させると、それらが互いに干渉する。このため撮影領域映像vBCの表示に関する工夫が必要とされる。
【0076】
<2.情報処理装置の構成>
次に、プリプロダクションST1、プロダクションST2、ポストプロダクションST3で用いることができる情報処理装置70の構成例を図8で説明する。
情報処理装置70は、コンピュータ機器など、情報処理、特に映像処理が可能な機器である。この情報処理装置70としては、具体的には、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、スマートフォンやタブレット等の携帯端末装置、ビデオ編集装置等が想定される。また情報処理装置70は、クラウドコンピューティングにおけるサーバ装置や演算装置として構成されるコンピュータ装置であってもよい。
【0077】
本実施の形態の場合、具体的には情報処理装置70は、プリプロダクションST1において3Dモデルを制作する3Dモデル制作装置として機能できる。
また情報処理装置70は、プロダクションST2で用いる撮影システム500を構成するレンダリングエンジン520やアセットサーバ530としても機能できる。また情報処理装置70は、カメラ502が備える制御系、信号処理系、インタフェース系としても機能できる。
また情報処理装置70は、ポストプロダクションST3における各種映像処理を行う映像編集装置としても機能できる。
【0078】
図8に示す情報処理装置70のCPU(Central Processing Unit)71は、ROM(Read Only Memory)72や例えばEEP-ROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)などの不揮発性メモリ部74に記憶されているプログラム、または記憶部79からRAM(Random Access Memory)73にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。RAM73にはまた、CPU71が各種の処理を実行する上において必要なデータなども適宜記憶される。
【0079】
映像処理部85は各種の映像処理を行うプロセッサとして構成される。例えば3Dモデル生成処理、レンダリング、DB処理、色・輝度調整処理や色変換処理を含む映像処理、映像編集処理、映像解析・検出処理などのいずれか、或いは複数の処理を行うことができるプロセッサとされる。
【0080】
この映像処理部85は例えば、CPU71とは別体のCPU、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、AI(artificial intelligence)プロセッサ等により実現できる。
なお映像処理部85はCPU71内の機能として設けられてもよい。
【0081】
CPU71、ROM72、RAM73、不揮発性メモリ部74、映像処理部85は、バス83を介して相互に接続されている。このバス83にはまた、入出力インタフェース75も接続されている。
【0082】
入出力インタフェース75には、操作子や操作デバイスよりなる入力部76が接続される。例えば入力部76としては、キーボード、マウス、キー、トラックボール、ダイヤル、タッチパネル、タッチパッド、リモートコントローラ等の各種の操作子や操作デバイスが想定される。
入力部76によりユーザの操作が検知され、入力された操作に応じた信号はCPU71によって解釈される。
入力部76としてはマイクロフォンも想定される。ユーザの発する音声を操作情報として入力することもできる。
【0083】
また入出力インタフェース75には、LCD(Liquid Crystal Display)或いは有機EL(electro-luminescence)パネルなどよりなる表示部77や、スピーカなどよりなる音声出力部78が一体又は別体として接続される。
表示部77は各種表示を行う表示部であり、例えば情報処理装置70の筐体に設けられるディスプレイデバイスや、情報処理装置70に接続される別体のディスプレイデバイス等により構成される。
表示部77は、CPU71の指示に基づいて表示画面上に各種の画像、操作メニュー、アイコン、メッセージ等、即ちGUI(Graphical User Interface)としての表示を行う。
【0084】
入出力インタフェース75には、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)などより構成される記憶部79や通信部80が接続される場合もある。
【0085】
記憶部79は、各種のデータやプログラムを記憶することができる。記憶部79においてDBを構成することもできる。
【0086】
通信部80は、インターネット等の伝送路を介しての通信処理や、外部のDB、編集装置、情報処理装置等の各種機器との有線/無線通信、バス通信などによる通信を行う。例えばポストプロダクションST3に用いる情報処理装置70の場合、通信部80によりアセットサーバ530としてのDBにアクセスすることなども可能である。これによって情報処理装置70は、カメラ502によって撮影した撮影映像vC(図12等参照)や付随するメタデータMT(図30等参照)を取得できる。
【0087】
入出力インタフェース75にはまた、必要に応じてドライブ81が接続され、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、或いは半導体メモリなどのリムーバブル記録媒体82が適宜装着される。
ドライブ81により、リムーバブル記録媒体82からは映像データや、各種のコンピュータプログラムなどを読み出すことができる。読み出されたデータは記憶部79に記憶されたり、データに含まれる映像や音声が表示部77や音声出力部78で出力されたりする。またリムーバブル記録媒体82から読み出されたコンピュータプログラム等は必要に応じて記憶部79にインストールされる。
【0088】
この情報処理装置70では、例えば本実施の形態の処理のためのソフトウェアを、通信部80によるネットワーク通信やリムーバブル記録媒体82を介してインストールすることができる。或いは当該ソフトウェアは予めROM72や記憶部79等に記憶されていてもよい。
【0089】
<3.照明態様>
プロダクションST2における照明の態様について説明する。上述のように撮影システム500には照明装置としてライト580がある。ライト580としては、例えばLEDライトが用いられる。
一方、背景映像vBを表示するLEDウォール505も、各LEDパネル506からの映像光を照射するため、前景、例えば演者510に対する照明となりうる。
【0090】
図9A図9B図10A図10Bに照明態様の例を挙げる。
図9AはLEDウォール505が平面ウォール型の場合である。この場合はLEDウォール505からの光が演者510の正面を照射しにくいため、演者510に対しての照明としてライト580を用いることが考えられる。
【0091】
図9BはLEDウォール505がケーブ型の場合である。例えばLEDウォール505が、演者510の周囲を広く覆い、また天井もあって、周囲及び上方で背景映像vBを表示する場合である。このケーブ型の場合は、LEDウォール505からの光が、演者510に対して十分な照明として機能するため、ライト580を用いない場合もある。
【0092】
図10AはLEDウォール505が演者510の後方から側方を囲うような曲面ウォール型とされている場合である。この場合は、演者510に対してLEDウォール505からの光が照射されうる。このため照明としてはライト580とLEDウォール505からの光の両方が用いられる場合がある。
なお例えば曲面ウォール型の場合は、照明用、及びオブジェクトへの風景の映り込み(例えばパフォーマンスエリア501にあるオブジェクトとしての鏡、グラス等への映り込み)が実景と同様となるようにするために、図10Bのように、LEDウォール505の一部として天井に方形のLEDパネル505aを設置する場合もある。さらに、ケーブ型に近くなるが天井全体を覆うLEDパネルを形成する場合もある。
また図1に示したように、曲面ウォール型ではなく、平面ウォール型で後方と側方に配置する場合もあるし、その場合に天井にLEDパネル505aを配置する例や、天井全体を覆うような例もある。それらのLEDウォール505でも、照明としてはライト580とLEDウォール505からの光の両方が用いられる場合がある。
【0093】
例えば以上のように、照明としては、ライト580を用いる場合、LEDウォール505のみを用いる場合、ライト580とLEDウォール505を共に照明として用いる場合がある。
なお以上はあくまで例である。LEDウォール505のタイプによって照明態様を決定しても良いが、LEDウォール505のタイプによって照明態様が決定される必要はない場合もある。例えばケーブ型のLEDウォール505の場合にライト580を用いる場合もあるし、平面ウォール型のLEDウォール505の場合に、LEDウォール505を照明として使用することもあり得る。
【0094】
ところで撮影システム500では、例えば図9Aのようにライト580を照明として使用することが想定されており、カメラ502で撮影した撮影映像データ(後述の撮影映像vC)において、演者510等の実写部分の映像の色再現は問題ない。
照明用のライト580(例えばLEDライト)は自然光に近い分光特性を持ち、自然な色再現が得られるためである。換言すれば、通常、カメラ502は、ライト580で照明した場合に、自然な色再現が得られるように設計されているためである。
【0095】
ところが背景映像vBの表示のためのLEDウォール505は分光特性が自然光とは大きく異なる。
【0096】
図11では、破線110で自然光(太陽光)の分光特性、一点鎖線111でライト580(照明用のLEDライト)の分光特性、実線112でLEDウォール505からの光の分光特性をそれぞれ示している。
照明用のLEDライトでは、太陽光に近い広い波長域で成分を持つ。
一方、LEDウォール505からの光は、R(赤)、G(緑)、B(青)の各波長域のみに成分を持つ。このため例えば580nm近辺(黄色近辺)の成分が少ない。これによって、LEDウォール505を照明とした場合、撮影映像vC上で演者510の顔や肌の色再現性を低下させている。具体的には肌色が、赤みがかった色となるなどである。
【0097】
そこで本実施の形態では、カメラ502、又はポストプロダクションST3で用いる情報処理装置70が、照明に応じて色変換処理を切り替えることができるようにする。
例えばカメラ502又はポストプロダクションで用いる情報処理装置70は、照明としてライト580が用いられた場合は、ライト580に対して設定された第1の色設定パラメータを用いて行う第1の色変換処理を行い、LEDウォール505が照明用として用いられた場合は、LEDウォール505に対して設定された第2の色設定パラメータを用いて行う第2の色変換処理を行うことができるようにする。つまりカメラ502や情報処理装置70が、第1,第2の色変換処理を選択的に実行可能に構成する。
さらにはカメラ502又は情報処理装置70は、第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータとの両方を用いて行う第3の色変換処理も実行可能に構成する。
【0098】
<4.カメラの構成と処理例>
以下、カメラ502において行われる色変換処理について説明する。まず図12でカメラ502の構成を説明する。
【0099】
カメラ502は、レンズ部20、イメージセンサ21、ユーザインタフェース部22(以下「UI部22」と表記)、通信部23、記録制御部24、制御部25、メモリ部26、表示部27、信号処理部30を有する。
【0100】
レンズ部20は、入射端レンズ、ズームレンズ、フォーカスレンズ、集光レンズなどの各種レンズや、信号電荷が飽和せずにダイナミックレンジ内に入っている状態でセンシングが行われるようにレンズやアイリス(絞り)による開口量などを調整することで露光制御を行う絞り機構を備えて構成されている。
レンズ部20は、例えば交換レンズとして構成される。但し、カメラ502の本体に一体型として構成されるものでもよい。
【0101】
イメージセンサ21は、例えばCCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)型のセンシング素子や、光電変換した信号に対する信号処理回路を有する。2次元配列されたセンシング素子を有するイメージセンサ21により、レンズ部20を介して入射された被写体からの光を光電変換する。そして光電変換による電気信号について、例えばCDS(Correlated Double Sampling)処理やAGC(Automatic Gain Control)処理やA/D(Analog/Digital)変換処理を行う。イメージセンサ21は、これらの処理によって得た映像データを信号処理部30に出力する。
【0102】
信号処理部30は、例えばDSP(Digital Signal Processor)などのデジタル信号処理に特化したマイクロプロセッサや、マイクロコンピュータなどにより構成される。
この信号処理部11は、制御部25からの制御信号SGに従い、イメージセンサ21から送られてくる映像データに対して、各種の信号処理を施す。
【0103】
信号処理部30としては、センサ信号処理部31、ホワイトバランス部32、色分離部33、マトリクス部34、現像処理部35を示している。なお、以下「ホワイトバランス」を「WB」と表記する。例えばホワイトバランス部32については「WB部32」と表記する。また図では「マトリクス」を「MTX」と表記する。
【0104】
センサ信号処理部31はイメージセンサ21からの映像データに対して、黒レベルの調整処理、ビットアサインの調整処理、欠陥画素の補正処理などを行う。
【0105】
WB部32は色設定パラメータに応じてホワイトバランス調整処理を行う。詳細は後述する。
【0106】
なお、ここでいう色設定パラメータとは色温度の値(単位はケルビン)とティント値である。以下、色設定パラメータを、「色温度KL」「ティント値TT」と表記する。
図13にはCIE1931xy色度図を示しており黒体放射カーブ120とその法線方向の矢印121を示した。色温度KLは光源が発している光の色を定量的な数値で表現する単位で、黒体放射カーブ120で表される絶対温度である。ティント値TTは、色味、色合いを調整するパラメータで、矢印121で表される方向に黒体放射カーブ120を補正する制御値である。
つまり色の調整処理において、黒体放射カーブ120上の色は色温度KLで指定され、黒体放射カーブ120から外れている分はティント値TTで指定される。
【0107】
色分離部33では、ホワイトバランス調整後の映像データについて色分離処理を行う。色分離部33は、例えばイメージセンサ21の画素に対するカラーフィルタがベイヤー配列の場合はディベイヤー処理部として構成される。また色分離部33は、モザイクカラーフィルタを用いる場合はデモザイク処理部として構成される。さらに例えばストライプカラーフィルタの場合など他のカラーフィルタを用いる場合も、色分離部33はそのカラーフィルタの形式に応じた色分離を行う構成とされる。
【0108】
マトリクス部34は、映像データに対して例えば3×3のマトリクス係数を用いたマトリクス色変換処理を行う。
このマトリクス部34も色設定パラメータとして色温度KL、ティント値TTに基づいて処理を行う。
【0109】
図12の信号処理部30において色再現や色作りのための色変換処理を行うのは、WB部32とマトリクス部34となる。
【0110】
現像処理部35は、ガンマ処理、LUT(Look Up Table)処理、解像度変換処理、記録用や通信用のためのエンコード処理などの一部又は全部を行うことによって最終的な出力形式の映像データへの変換を行う。
例えば記録用のエンコード処理が施された映像データは記録制御部24で記録媒体に記録される。
また通信用のエンコード処理が施された映像データは通信部23から他の機器に送信される。例えば上述の図5の構成の場合、映像データはレンダリングエンジン520に送信される。
またモニタ用の解像度変換等が施された映像データは、上述のモニタ映像vMとしてアウトプットモニタ503に供給される。
【0111】
なお、本開示では、これらカメラ502によって得られる映像データを包括して「撮影映像vC」と記載している。
また例えばセンサ信号処理部31の出力段階の映像データは、RAW映像データvCrawとして記録制御部24で記録媒体に記録され、また通信部23から送信されることがある。
RAW映像データvCrawは、各画素にカラーフィルタが設けられているイメージセンサ21の画素配置に対応したフレームを有する映像データである。これは、多少異なる場合もあるが元のイメージセンサ21の画素配置に戻せる映像データであるという意味である。従って、イメージセンサ21から読み出された画素配列のままの映像データもRAW映像データvCrawであるし、例えばG1(緑第1画素),G2(緑第2画素),R,Bの4チャネルに分けて圧縮した映像データなどもRAW映像データvCrawに含まれる。またイメージセンサ21の画素配置に対応したフレームとは、イメージセンサ21の全画素の画素配置に対応するものである必要はない。さらにR,G,Bの画素だけでなくホワイト画素を含む場合もある。
このようなRAW映像データvCrawは、表記上区別しているが、撮影映像vCの1つである。
なお撮影映像vC(RAW映像データvCrawを含む)には撮影映像vCの映像データについてのメタデータMT(図30等参照)も含まれる。
【0112】
通信部23は、制御部25からの制御信号SGに基づいて外部機器とのデータ通信やネットワーク通信を有線や無線で行う。例えば撮影システム500の場合、撮影映像vC(メタデータMTを含む)をレンダリングエンジン520に送信する。レンダリングエンジン520に送信された撮影映像vCはポストプロダクションのために例えばアセットサーバ530に格納される。
【0113】
また通信部23はレンダリングエンジン520に限らず、各種の外部の表示装置、記録装置、再生装置等に対して撮影映像vCの送信を行うことも可能である。また、通信部23は、ネットワーク通信部として機能してもよい。例えば、インターネット、ホームネットワーク、LAN(Local Area Network)等の各種のネットワークによる通信を行い、ネットワーク上のサーバや端末等との間で各種データの送受信を行うようにしてもよい。例えばビデオストリーミングとして撮影映像vCを送信することも考えられる。
【0114】
記録制御部24は、制御部25からの制御信号SGに基づいて、例えば不揮発性メモリからなる記録媒体に対して撮影映像vC(メタデータMTを含む)を記録させる処理を行う。
記録制御部24の形態は多様に考えられる。例えば、記録制御部24がカメラ502に内蔵されるフラッシュメモリに対する記録処理を行う構成とされていてもよいし、カメラ502に着脱できるメモリカード(例えば可搬型のフラッシュメモリ)と該メモリカードに対して記憶や読み出しのためのアクセスを行うアクセス部とで構成されていてもよい。またカメラ502に内蔵されている形態としてHDDやSSDなどとして実現されることもある。
【0115】
表示部27は、カメラマン512に対して各種の表示を行うための処理を実行する。表示部27は、例えば、カメラ502の筐体上のモニタやEVF(Electronic View Finder)モニタとされる。表示部27では、撮影映像vCや、ユーザインタフェースのための各種表示を行う。例えば表示部27は、制御部25からの制御信号SGに基づいて各種操作メニューやアイコン、メッセージ等、GUI(Graphical User Interface)としての表示を画面上で実現させる。
【0116】
UI部22は、ユーザ(カメラマン512等)に対する画像表示を行うディスプレイと、タッチセンサ等を有し、操作画像に対するユーザのタップ操作やドラッグ操作などの種々の操作に応じた操作情報を制御部16に出力する。
なお、UI部22は表示部27上にタッチパネルが配置されて形成されてもよい。またUI部22は、カメラ502とは別体の操作機器として構成されてもよい。
【0117】
制御部25は、CPUを備えたマイクロコンピュータにより構成され、カメラ502の統括的な制御を行う。
制御部25は、例えばカメラ502の操作に応じた動画や静止画の記録制御、シャッタースピード、ゲイン、絞り等の制御、フォーカス制御、ズーム制御、信号処理部11における各種信号処理についての指示、記録した画像ファイルの再生動作制御、通信制御、表示制御などを行う。
【0118】
メモリ部26は、制御部25が実行する処理に用いられる情報等を記憶する。図示するメモリ部26としては、例えば、ROM、RAM、フラッシュメモリなどを包括的に示している。
メモリ部26は制御部25としてのマイクロコンピュータチップに内蔵されるメモリ領域であってもよいし、別体のメモリチップにより構成されてもよい。
【0119】
メモリ部26のROMやフラッシュメモリ等には、制御部25が利用するプログラム等が記憶される。ROMやフラッシュメモリ等には、CPUが各部を制御するためのOS(Operating System)や画像ファイル等のコンテンツファイルの他、各種動作のためのアプリケーションプログラムやファームウェア等が記憶される。
制御部25は、当該プログラムを実行することで、カメラ502の全体を制御する。
【0120】
メモリ部26のRAMは、制御部25のCPUが実行する各種データ処理の際に用いられるデータやプログラム等が一時的に格納されることにより、制御部25の作業領域として利用される。
【0121】
以上の構成のカメラ502における、WB部32とマトリクス部34について説明する。
【0122】
WB部32の構成を図14に示す。WB部32は係数設定部41と乗算器42,43,44を有して構成される。
係数設定部41には例えば制御部25から色温度KLとティント値TTが入力される。制御部25は、例えばメモリ部26に格納された色設定パラメータとしての色温度KLとティント値TTを選択して、その値をWB部32に指示する。或いは制御部25はUI部22によるユーザ操作に応じて指示された色温度KLとティント値TTをWB部32に指示する。
【0123】
係数設定部41は、供給された色温度KLとティント値TTに基づいた関数演算によりホワイトバランス調整のためのRゲイン、Gゲイン、Bゲインを算出する。
乗算器42,43,44にはそれぞれセンサ信号処理部31からの映像データにおけるR値(Rin)、G値(Gin)、B値(Bin)が入力される。
乗算器42ではR値(Rin)にRゲインを乗算し、WB調整後のR値(Rout)を出力する。乗算器43ではG値(Gin)にGゲインを乗算し、WB調整後のG値(Gout)を出力する。乗算器44ではB値(Bin)にBゲインを乗算し、WB調整後のB値(Bout)を出力する。
【0124】
マトリクス部34の構成を図15に示す。マトリクス部34は係数設定部45とマトリクス係数処理部46を有して構成される。
係数設定部45には、WB部32と同様に制御部25から色温度KLとティント値TTが入力される。
係数設定部45は、供給された色温度KLとティント値TTに基づいた関数演算によりR値、G値、B値の3×3の演算のための9個のマトリクス係数を算出する。
【0125】
マトリクス係数処理部46には色分離部33からの映像データにおけるR値(Rin)、G値(Gin)、B値(Bin)が入力される。マトリクス係数処理部46はR値(Rin)、G値(Gin)、B値(Bin)に対してマトリクス係数を用いたマトリクス演算を行い色変換後のR値(Rout)、G値(Gout)、B値(Bout)を出力する。
【0126】
このような構成のカメラ502による照明に応じた色再現のための色変換処理について、以下説明していく。
なお以降の説明で参照する図16図17図18図28図30図32図34では、カメラ502の構成として、レンズ部20、イメージセンサ21、WB部32、マトリクス部34のみを抽出して示している。
【0127】
図16図9Aに示した平面ウォール型のLEDウォール505を用いた撮影で、ライト580を演者510に対する照明として用いる場合を示している。
この場合、WB部32とマトリクス部34に対しては、制御部25により、色温度KLとティント値TTとして、ライト580の照明光に対して最適化した色再現係数である色温度KLl、ティント値TTlが指示される。
これによりWB部32ではライト580の照明光に対応したホワイトバランス調整処理が行われ、マトリクス部34でもライト580の照明光に対応したマトリクス色変換処理が行われる。
【0128】
これにより撮影映像vCに基づいて例えばアウトプットモニタ503で表示されるモニタ映像vMは、演者510の肌が自然光の下のような自然な色合いの映像となる。
【0129】
図17図9Bに示したケーブ型のLEDウォール505を用いた撮影で、LEDウォール505を演者510に対する照明として用いる場合を示している。
この場合、WB部32とマトリクス部34に対しては、制御部25により、色温度KLとティント値TTとして、LEDウォール505の光に対して最適化した色再現係数である色温度KLw、ティント値TTwが指示される。
これによりWB部32ではLEDウォール505による照明光に対応したホワイトバランス調整処理が行われ、マトリクス部34でもLEDウォール505による照明光に対応したマトリクス色変換処理が行われる。
【0130】
これにより撮影映像vCに基づいて例えばアウトプットモニタ503で表示されるモニタ映像vMは、演者510の肌が自然光の下のような自然な色合いの映像となる。
【0131】
つまり制御部25は、WB部32とマトリクス部34に対して指示する色設定パラメータとしての色温度KLとティント値TTを、撮影の際の照明態様に応じて変更するようにする。これにより、ライト580を照明として使用する場合でも、LEDウォール505を照明として使用する場合でも、撮影映像vCを自然な色合いの映像とすることができる。
【0132】
続いてライト580とLEDウォール505を照明として併用する場合について説明する。例えば図10A図10Bの曲面ウォール型の場合に照明を併用することが考えられる。また図18に示すように、LEDウォール505が3つの平面型ウォールを背面と両側面に配置したような場合でも、ライト580とLEDウォール505を照明として併用することが想定される。
なお、ライト580とLEDウォール505の光を照明として併用するのは、以上の場合に限らない。例えば図9Aの平面ウォール型、図9Bのケーブ型や、或いは曲面ウォール型で天井が設けられている場合などにおいて、ライト580とLEDウォール505の光を照明として併用する場合もある。図18はライト580とLEDウォール505の光を照明として併用する場合を示す一例に過ぎない。
【0133】
ライト580とLEDウォール505の光を照明として併用する場合には、制御部25は、WB部32とマトリクス部34に対して、ライト580の照明光に対して最適化した色再現係数である色温度KLl、ティント値TTlと、LEDウォール505の光に対して最適化した色再現係数である色温度KLw、ティント値TTwの両方を指示する。
【0134】
さらに制御部25はWB部32とマトリクス部34に対してミックス比MixRを指示する。ミックス比MixRは、ライト580に対する色設定パラメータとLEDウォール505に対する色設定パラメータを、色変換処理に反映させる比率である。
制御部25は、例えばメモリ部26に併用される照明機器に応じて設定されているミックス比MixRを読み出して、WB部32とマトリクス部34に指示できる。
或いは制御部25は例えばライト580とLEDウォール505の照明光強度を測定した値を取得することで、その比率に応じてミックス比MixRを設定し、指示することができる。
さらに制御部25はUI部22によるユーザ操作に応じてミックス比MixRを設定し、指示することができる。
【0135】
そしてWB部32ではミックス比MixRに応じて色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwを反映させたホワイトバランス調整処理(ブレンドWB処理)を行う。
マトリクス部34ではミックス比MixRに応じて色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwを反映させたマトリクス色変換処理(ブレンドMTX処理)を行う。
【0136】
このような処理を行う場合のWB部32の構成を図19に示す。WB部32は係数設定部41a,41bと、ブレンド係数設定部47と、乗算器42,43,44を有して構成される。
【0137】
係数設定部41aには色温度KLwとティント値TTwが入力される。係数設定部41aは、色温度KLwとティント値TTwに基づいた関数演算によりLEDウォール505の照明光に対応するホワイトバランス調整のためのRゲインRg1、GゲインGg1、BゲインBg1を算出する。
【0138】
係数設定部41bには色温度KLlとティント値TTlが入力される。係数設定部41bは、色温度KLlとティント値TTlに基づいた関数演算によりライト580の照明光に対応するホワイトバランス調整のためのRゲインRg2、GゲインGg2、BゲインBg2を算出する。
【0139】
ブレンド係数設定部47では、Rゲイン、Gゲイン、Bゲインをそれぞれミックス比MixRでαブレンドして、ホワイトバランス調整のためのRゲイン、Gゲイン、Bゲインを設定する。
即ちブレンド係数設定部47は、RゲインRg1、Rg2をミックス比MixRでブレンドしてRゲインを設定する。またGゲインGg1、Gg2をミックス比MixRでブレンドしてGゲインを設定する。またBゲインBg1、Bg2をミックス比MixRでブレンドしてBゲインを設定する。
【0140】
このように設定されたRゲイン、Gゲイン、Bゲインが、それぞれ乗算器42,43,44の係数となる。そして乗算器42,43,44にはそれぞれセンサ信号処理部31からの映像データにおけるR値(Rin)、G値(Gin)、B値(Bin)に対してRゲイン、Gゲイン、Bゲインを乗算し、WB調整後のR値(Rout)、G値(Gout)、B値(Bout)を出力する。
【0141】
マトリクス部34の構成を図20に示す。マトリクス部34は係数設定部45a,45bと、ブレンド係数設定部48と、マトリクス係数処理部46を有して構成される。
【0142】
係数設定部45aには色温度KLwとティント値TTwが入力される。係数設定部45aは、色温度KLwとティント値TTwに基づいた関数演算によりLEDウォール505の照明光に対応する3×3マトリクス色変換のための9個のマトリクス係数を算出する。
【0143】
係数設定部45bには色温度KLlとティント値TTlが入力される。係数設定部45bは、色温度KLlとティント値TTlに基づいた関数演算によりライト580の照明光に対応する3×3マトリクス色変換のための9個のマトリクス係数を算出する。
【0144】
ブレンド係数設定部48では、係数設定部45a、45bからのそれぞれ9個の係数について、ミックス比MixRでαブレンドして、9個のマトリクス係数を設定する。このマトリクス係数がマトリクス係数処理部46で用いられる。
【0145】
マトリクス係数処理部46は色分離部33からの映像データにおけるR値(Rin)、G値(Gin)、B値(Bin)に対してマトリクス係数を用いたマトリクス演算を行い色変換後のR値(Rout)、G値(Gout)、B値(Bout)を出力する。
【0146】
WB部32とマトリクス部34が以上のように構成されることで、図18に示したブレンドWB処理、ブレンドMTX処理が実行できる。
そしてミックス比MixRが、LEDウォール505の照明光とライト580の照明光の光強度の比とされていることで、適切な色再現処理が実行され、自然な色合いの撮影映像vCを得ることができる。
【0147】
なお、ミックス比MixRは必ずしも厳密にLEDウォール505とライト580の照明光強度の比とされていなくてもよい。ある程度適切な色再現が行われる比であればよい。さらに、あえて照明光強度比からずらしたミックス比MixRを設定することで、積極的に色作りを行うことも可能である。
【0148】
以上は、照明を併用する場合について述べたが、WB部32とマトリクス部34が図19図20の構成とされる場合において、図16のようにライト580の照明光のみに対応する場合は、色温度KLwと色温度KLl、ティント値TTwとティント値TTlのミックス比MixRが0:100とされればよい。
また図17のようにLEDウォール505の照明光のみに対応する場合は、色温度KLwと色温度KLl、ティント値TTwとティント値TTlのミックス比MixRが100:0とされればよい。
【0149】
図18の構成の場合、制御部25はUI部22によるユーザ操作に応じて色温度KLw,KLl、ティント値TTw,TTl、及びミックス比MixRを設定することも想定される。
例えばUI部22において図21のようなGUI表示50を実行し、ユーザによる操作を可能とする。GUI表示50では、LEDウォール505に対応した色温度操作子51とティント操作子53、ライト580に対応した色温度操作子52とティント操作子54、及びミックス比操作子55が用意される。
【0150】
なお、これらの操作子はディスプレイを用いたタッチ操作子ではなく、実際の物理的なレバー、スライダ、ダイヤル等による操作子とされてもよい。
【0151】
例えばLEDウォール505に対応した色温度操作子51とティント操作子53では、初期値としてLEDウォール505の照明光を用いた場合に色再現を最適化する色温度とティント値に設定されており、ユーザがその初期値から任意に変更できるものとする。
同様にライト580に対応した色温度操作子51とティント操作子53では、初期値としてライト580の照明光を用いた場合に色再現を最適化する色温度とティント値に設定されており、ユーザがその初期値から任意に変更できるものとされる。
ミックス比操作子55では、ミックス比MixRを0:100から100:0の間を任意に設定できる。
【0152】
制御部25はこのようなUI部22による操作情報を取得し、色温度KLw,KLl、ティント値TTw,TTl、及びミックス比MixRを決定してWB部32とマトリクス部34に指示する。
【0153】
例えば照明としてライト580のみを使用する場合は、ユーザは図22のようにミックス比操作子55をライト(LEDライト)側に操作する。すると、WB部32とマトリクス部34では、色温度KLl、ティント値TTlに応じた色変換が行われる。
【0154】
また照明としてLEDウォール505のみを使用する場合は、ユーザは図23のようにミックス比操作子55をLEDウォール505側に操作する。すると、WB部32とマトリクス部34では、色温度KLw、ティント値TTwに応じた色変換が行われる。
【0155】
また照明としてLEDウォール505とライト580を併用し、例えば照明光強度比が50:50の場合は、ユーザは図24のようにミックス比操作子55を中央値(例えば50:50)に操作する。すると、WB部32とマトリクス部34では、色温度KLlと色温度KLw、ティント値TTlとティント値TTwがそれぞれ50%ずつ反映された色変換が行われる。もちろん照明光強度比が異なる場合は、それに応じてミックス比操作子55を操作すればよい。
【0156】
以上の操作により、自然な色合いの撮影映像vCを得ることができる。
また実際の撮影現場では、常にLEDウォール505とライト580の照明光強度比を測定しているわけではない。そこで、例えば図24のようにミックス比操作子55を中央値とした状態から、ユーザがモニタ映像vMを見ながらミックス比操作子55を操作して、色再現性が最適と考える状態に調整することが想定される。
【0157】
さらにミックス比操作子55の操作は、自然な色合いの色再現ではなく、積極的に色作りのために操作することもできる。ミックス比操作子55を操作することで、自然な色合いではないが、映像制作上で狙った色合いの撮影映像vCを得ることができる。
また、色温度操作子51、52やティント操作子53、54の操作を行うことによっても、色作りが可能である。
【0158】
WB部32とマトリクス部34で図18のようなブレンド処理が可能な構成におけるカメラ502の処理例を説明する。
【0159】
図25はカメラ502の制御部25による色設定パラメータの設定処理を示している。例えば制御部25は撮影開始前の時点や、照明態様が変更された時点で、図25の処理を行うことが考えられる。
【0160】
制御部25はステップS101で照明判定を行う。例えば撮影システム500の機器間の情報伝送によりシステム設定情報が伝達され、LEDウォール505の形式やライト580の状態を把握できる場合、制御部25は今回の撮影の照明態様を判定できる。またオペレータが、照明モードなど、照明態様に応じた情報をカメラ502に入力する場合は、制御部25はその照明モードなどの情報を確認する。
【0161】
照明判定の結果、今回の撮影ではライト580のみを照明として使用すると認識した場合は、制御部25はステップS102からステップS110に進み、ライト580に対応する色再現のための色温度KLl、ティント値TTlを例えばメモリ部26から読み出す。そして制御部25はステップS111で、WB部32とマトリクス部34に色設定パラメータとして色温度KLl、ティント値TTlを指示する。なおこの場合のミックス比MixRは、色温度KLl、ティント値TTlを100%とする。
【0162】
照明判定の結果、今回の撮影ではLEDウォール505のみを照明として使用すると認識した場合は、制御部25はステップS103からステップS120に進み、LEDウォール505に対応する色再現のための色温度KLw、ティント値TTwを例えばメモリ部26から読み出す。そして制御部25はステップS121で、WB部32とマトリクス部34に色設定パラメータとして色温度KLw、ティント値TTwを指示する。この場合のミックス比MixRは、色温度KLw、ティント値TTwを100%とする。
【0163】
照明判定の結果、今回の撮影ではライト580とLEDウォール505の両方を照明として使用すると認識した場合は、制御部25はステップS104からステップS130に進み、ライト580に対応する色再現のための色温度KLl、ティント値TTl、及びLEDウォール505に対応する色再現のための色温度KLw、ティント値TTwを例えばメモリ部26から読み出す。
【0164】
また制御部25はステップS131で、ミックス比MixRを設定する。例えばLEDウォール505とライト580の照明光強度比が取得できる場合は、その照明光強度比に応じてミックス比MixRを設定する。照明光強度比が不明な場合は、ミックス比MixR=50:50、或いは予め設定されていた比率などとする。
【0165】
そして制御部25はステップS132で、WB部32とマトリクス部34に色設定パラメータとして色温度KLl、ティント値TTl、色温度KLw、ティント値TTwを指示する。また制御部25はステップS131で設定したミックス比MixRも指示する。
【0166】
例えば以上の処理により、カメラ502の信号処理部30では、撮影前の時点で、撮影時の照明態様に応じて適切な色再現のための色変換処理が行われる状態にセッティングされる。
なお、照明判定の結果が不明である場合は、制御部25はステップS104から図25の処理を終える。
【0167】
以上は、パラメータ設定の処理例としたが、変形例として、例えば図16のライト580対応と図17のLEDウォール505対応の状態を切り替えるのみの処理例も考えられる。つまりブレンド処理を行わない例である。その場合は、図25においてステップS104,S130,S131,S132を設けない処理例となる。
また図25は制御部25がステップS102,S103,S104の判定結果に応じて自動的にパラメータ設定の処理に進むものとしたが、制御部25がユーザにパラメータ設定の示唆を行うようにしてもよい。例えば制御部25はステップS101の照明判定に応じて色設定パラメータのレコメンドを表示部27に表示させる。それに応じてUI部22でユーザがパラメータ設定操作を行うことができるようにする。
【0168】
さらにブレンド処理を行う処理例としては、パラメータ設定処理では、常に色温度KLl、ティント値TTl、色温度KLw、ティント値TTwをWB部32とマトリクス部34に指示しつつ、照明判定の結果に応じてミックス比MixRを設定してWB部32とマトリクス部34に指示するという処理例も考えられる。
【0169】
以上の図25の処理やその変形例の処理で、WB部32とマトリクス部34に対するパラメータ設定が行われるが、UI部22による操作によって、パラメータ設定が変更される場合もある。
【0170】
例えば制御部25は図26の処理を行う。制御部25はステップS150でGUI表示50に対するユーザ操作を監視し、色温度操作子51、52、ティント操作子53、54、或いはミックス比操作子55の操作が行われたか否かを確認する。
【0171】
これらのいずれかの操作が行われた場合は、制御部25はステップS151に進み、パラメータ変更を行う。即ち制御部25は操作子で設定された値に、色温度KLl、ティント値TTl、色温度KLw、ティント値TTw、ミックス比MixRのいずれかの設定を変更し、変更したパラメータをWB部32とマトリクス部34に指示する。
【0172】
このような処理により、任意の時点のオペレータの操作により、信号処理部30における色変換処理のパラメータを変更できることになる。
例えばオペレータは、撮影のリハーサル時などにおいて、モニタ映像vMを見ながらGUI表示50に対して操作を行い、色再現性の調整や、色作りを行うことができる。
【0173】
図27は撮影中の制御部25の処理例を示している。
制御部25は撮影開始に応じてステップS161に進み、信号処理部30による映像処理の開始を指示する。これにより信号処理部30では図12で説明した処理を開始する。
【0174】
また制御部25はステップS162でメタデータMTを生成し、信号処理部30に対して撮影映像vCのフレームと関連づけるように指示する。
特に本実施の形態の場合、制御部25は色設定パラメータに関連するメタデータを撮影映像vCやRAW映像データvCrawに関連づけるようにする処理を行う。
このメタデータMTの具体例としては、後に図28図30図32で説明するメタデータMT1,MT2,MT3,MT4,MT5がある。
【0175】
なお色設定パラメータに関連するメタデータMTは必ずしも撮影映像vCのフレームに関連付けなくても良い。例えばプロジェクト単位、特にはフレームレートや記録方式等を設定する単位で、撮影映像vCに対するメタデータMTの関連付けを行うことが考えられる。また撮影映像vCにおけるクリップ単位、撮影のテイク単位といったファイル単位でメタデータMTの関連付けが行われてもよい。
また、ファイルベースでの関連付けを行う場合や、SDI(Serial Digital Interface)出力を行う場合では、ベースバンドRAW映像データや、圧縮RAW映像データのヘッダやフッタにメタデータMTを含ませることも考えられる。
【0176】
ステップS163で制御部25は、撮影映像vC、RAW映像データvCraw及びメタデータMTの記録や送信を信号処理部30に開始させる。これにより信号処理部30は、撮影映像vCとメタデータMTや、RAW映像データvCrawとメタデータMTを関連づけて、記録媒体に記録させる処理や送信出力する処理を開始する。
【0177】
その後、撮影終了となったら、制御部25はステップS164からステップS165に進み、信号処理部30に撮影終了指示を行う。これにより信号処理部30では、撮影中の処理を終了させる。
【0178】
以上により、撮影映像vCは、照明態様に応じた色設定パラメータに基づく色再現又は色作りが施された映像となる。
また色設定パラメータに関する情報がメタデータMTとして関連づけられたRAW映像データvCrawが記録或いは送信される。
【0179】
<5.メタデータとRAW現像ソフトウェアによる処理例>
続いてポストプロダクションST3においてRAW映像データvCrawに対する処理を行う例を説明する。
【0180】
ポストプロダクションST3においては、映像編集装置となる情報処理装置70が、RAW現像ソフトウェア90に基づく処理を行うものとする。ここではRAW現像ソフトウェア90によって情報処理装置70において行われる4つの映像処理例を挙げる。
なおここではRAW現像ソフトウェア90に基づく処理として説明するが、以下、図28から図36で説明する処理は、RAWカラー調整ソフトウェアに基づいて情報処理装置70が行う処理として理解されても良い。
【0181】
図28はカメラ502とともに、ポストプロダクションST3で使用されるRAW現像ソフトウェア90により実現される情報処理装置70を示している。ここでは情報処理装置70の処理機能として、WB部92,マトリクス部94を示している。WB部92,マトリクス部94は、それぞれ図19図20の処理を行う機能とする。
【0182】
この図28は、カメラ502からのRAW映像データvCrawに対して、メタデータMT1,MT2が関連づけられている例を示している。
メタデータMT1は光源IDである。例えば図25のステップS101の照明判定の処理で認識された照明装置の識別情報である。具体的には光源IDは、ライト580やLEDウォール505の識別情報である。また光源IDは、これらの具体的な機種、例えばLEDライトの機種や、LEDウォール505を構成するLEDパネル506の機種などを識別する情報でもよい。
メタデータMT2は、色設定パラメータである。つまり色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwである。
【0183】
この場合にポストプロダクションST3の情報処理装置70は、RAW映像データvCrawに対する処理の際に、メタデータMT1,MT2を読み出して色変換処理を行うことができる。例えば情報処理装置70のCPU71は、RAW現像ソフトウェア90に基づいて図29の処理を行う。
【0184】
ステップS201でCPU71は、処理対象のRAW映像データvCrawに関連づけられたメタデータMT2として、色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwを読み出す。
【0185】
ステップS202でCPU71は、色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwをWB部92とマトリクス部94の色設定パラメータとして設定する。
【0186】
ステップS203でCPU71は、ミックス比MixRを設定し、WB部92とマトリクス部94に指示する。例えばCPU71はメタデータMT1としての光源IDに基づいて、使用された照明機器や、併用の場合の照明光強度比を推定し、ミックス比MixRを設定することが考えられる。
【0187】
これにより情報処理装置70では、WB部92とマトリクス部94により、撮影時の色変換パラメータを用いた色変換処理が行われ、ポストプロダクションST3で用いるモニタ装置99で、その処理結果の調整後映像vEが表示される。
【0188】
なおこの場合のミックス比MixRは、色再現のために光源IDの情報から推定するものとしたが、例えば図21のようなGUIを用意し、ユーザの操作に応じてミックス比MixRを設定してもよい。
それにより、撮影時の色温度KLとティント値TTを用いつつ、ミックス比MixRをオペレータが任意に設定するような映像処理が可能になる。
また撮影時の色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwを初期設定としつつ、オペレータがこれらの値に任意に変更することも可能となる。
【0189】
図30は、カメラ502からのRAW映像データvCrawに対して、メタデータMT1,MT2,MT3が関連づけられている例である。
メタデータMT3は撮影時に設定したミックス比MixRであるとする。
【0190】
この場合にポストプロダクションST3の情報処理装置70は、RAW映像データvCrawに対する処理の際に、メタデータMT1,MT2,MT3を読み出して色変換処理を行うことができる。例えば情報処理装置70のCPU71は、RAW現像ソフトウェア90に基づいて図31の処理を行う。
【0191】
ステップS211でCPU71は、処理対象のRAW映像データvCrawに関連づけられたメタデータMT2として、色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwを読み出し、またメタデータMT3としてミックス比MixRを読み出す。
【0192】
ステップS212でCPU71は、色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwをWB部92とマトリクス部94のパラメータとして設定する。
【0193】
ステップS213でCPU71は、メタデータMT3としてのミックス比MixRをWB部92とマトリクス部94に指示する。
【0194】
これにより情報処理装置70では、WB部92とマトリクス部94により、撮影時と同様の色変換処理が行われ、モニタ装置99でその処理結果の調整後映像vEが表示される。
【0195】
なお、この例では、光源IDとしてのメタデータMT1は必ずしも必要ではない。但しメタデータMTを含むことで、使用された照明装置の光源種別に応じた色温度やティント値、或いはミックス比の調整等を行うことが可能となる。
【0196】
またこの場合も、例えば図21のようなGUIを用意し、ユーザの操作に応じてミックス比MixRや、色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwを設定することができるようにしてもよい。
これにより、撮影時と同様のパラメータ設定を初期値としつつ、オペレータがパラメータを任意に設定するような映像処理が可能になる。
【0197】
図32は、カメラ502からのRAW映像データvCrawに対して、メタデータMT4,MT5が関連づけられている例である。
メタデータMT4は撮影時のWB部32のホワイトバランス係数(Rゲイン、Gゲイン、Bゲイン)の値である。説明上、ホワイトバランス係数Kwと表記する。
メタデータMT5は撮影時のマトリクス部34で用いられた3×3マトリクス色変換のための9個のマトリクス係数である。説明上、マトリクス係数Kmと表記する。
【0198】
この場合にポストプロダクションST3の情報処理装置70は、RAW映像データvCrawに対する処理の際にメタデータMT4,MT5を読み出して色変換処理を行うことができる。例えば情報処理装置70のCPU71は、RAW現像ソフトウェア90に基づいて図33の処理を行う。
【0199】
ステップS221でCPU71は、処理対象のRAW映像データvCrawに関連づけられたメタデータMT4,MT5として、ホワイトバランス係数Kwとマトリクス係数Kmを読み出す。
【0200】
ステップS222でCPU71は、読み出したホワイトバランス係数Kwとマトリクス係数KmをWB部92とマトリクス部94に指示する。
【0201】
このホワイトバランス係数Kwとマトリクス係数Kmは撮影時のミックス比MixRが反映された後の係数値である。
従って色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTw、及びミックス比MixRを指示しなくとも、WB部92とマトリクス部94により、撮影時と同様の色変換処理が行われ、モニタ装置99でその処理結果の調整後映像vEが表示される。
【0202】
但しこの場合も、例えば図21のようなGUIを用意し、ユーザの操作に応じてミックス比MixRや、色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwを設定することができるようにしてもよい。
これにより、撮影時と同様の色変換を行う状態から、オペレータがパラメータを任意に設定して色作りを行うような映像処理が可能になる。
【0203】
図34は、カメラ502からのRAW映像データvCrawに対して、色変換処理に関するメタデータが関連づけられていない例である。
【0204】
この場合にポストプロダクションST3の情報処理装置70は、例えば図21のようなGUIを用意し、RAW映像データvCrawに対する処理の際に、例えば図35の処理を行う。
【0205】
ステップS231でCPU71は、ユーザによる色変換処理に関する操作を監視する。操作があった場合は、CPU71はステップS232で操作情報を取り込む。
【0206】
ステップS233でCPU71は、操作に応じて色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwを設定し、WB部92とマトリクス部94に指示する。
またステップS234でCPU71は、操作に応じてミックス比MixRを設定し、WB部92とマトリクス部94に指示する。
【0207】
以上により、撮影時の色変換とは無関係に、オペレータがRAW映像データvCrawに対する色作りを行うような映像処理が可能になる。
【0208】
ところで図29図31図33の処理では、メタデータMTに従って色設定パラメータ(色温度、ティント値)を設定し、或いは処理係数(ホワイトバランス係数Kwとマトリクス係数Km)を設定する例とした。そしてこれらの場合に、これらの設定後に、さらに図21のようなGUIによりオペレータが操作して色の修正を行うことができるとも述べた。
そこでRAW現像ソフトウェアに基づいて情報処理装置70において、図29図31、又は図33の処理とともに、図36の処理が行われるようにしてもよい。
【0209】
図36の処理を説明する。情報処理装置70のCPU71は、例えば図29図31、又は図33の処理で色設定パラメータまたは処理係数を設定した後、ステップS251でRAW映像データvCrawに対する色設定が確定されたか否かを確認する。つまりオペレータが色処理を完了させる操作を行ったか否かである。
【0210】
完了操作を検知するまでは、CPU71はステップS252でオペレータによる修正操作を監視する。
オペレータは、図21のGUIにより、LEDウォール505についての色温度やティント値、ライト580についての色温度やティント値、さらにはミックス比MixRを任意に捜査できる。
CPU71はこれらのいずれかの操作がないときはステップS251に戻り、いずれかの操作があった場合はステップS253に進んで操作情報を取り込む。
【0211】
操作情報を取り込んだ場合、CPU71はステップS254で、操作に応じて色温度KLl,KLwとティント値TTl,TTwを設定し、WB部92とマトリクス部94に指示する。
またステップS255でCPU71は、操作に応じてミックス比MixRを設定し、WB部92とマトリクス部94に指示する。そしてステップS251に戻る。
【0212】
以上により、色設定の確定までは、オペレータによる色修正が任意に実行される。
オペレータが色設定の確定の操作、例えばその時点のRAW映像データvCrawの出力(記録、送信、アップロード等)を指示する操作を行った場合、CPU71は、処理をステップS251からステップS256に進め、メタデータMTの生成を行う。この場合のメタデータMTは、その時点の色温度KLl,KLw、ティント値TTl,TTwの値、ミックス比MixR、ホワイトバランス係数Kwとマトリクス係数Kmなどの全部又は一部を含む。
【0213】
そしてステップS257でCPU71は、RAW映像データvCrawとメタデータMTを関連づけて出力する。例えばCPU71は、RAW映像データvCrawとメタデータMTを関連づけられた状態で記録媒体への記録、又は他機器への送信やアップロード等の制御を行う。
なお、この場合に、RAW映像データvCrawとメタデータMTに加えて、WB部92とマトリクス部94で色設定処理された映像データや、或いは現像処理された映像データも共に出力されるようにしてもよい。
【0214】
以上により、修正後の色設定パラメータや処理係数を含むメタデータMTがRAW映像データvCrawとともに出力コンテンツとされる。従ってその後の映像処理の段階で、情報処理装置70で行った処理を再現できる。
【0215】
以上の図36の処理は、図29図31、又は図33の処理の後に行われるとして説明したが、例えば図34で説明した例の場合に、図35の処理に代えて行われるようにしてもよい。
【0216】
また図36の処理はRAW現像ソフトウェア90(又はRAWカラー調整ソフトウェア)に基づいて情報処理装置70で行われるとしたが、カメラ502において制御部25が行う処理としてもよい。つまりカメラ502が、RAW映像データvCrawとオペレータによる色修正操作後の色設定パラメータや処理係数を含むメタデータMTを出力する例である。
【0217】
<6.まとめ及び変型例>
以上の実施の形態によれば次のような効果が得られる。
【0218】
実施の形態の撮像装置であるカメラ502は、イメージセンサ21と信号処理部30を備えている。信号処理部30は、イメージセンサ21で得られた映像データに対して、第1の照明(ライト580)に対して設定された第1の色設定パラメータ(色温度KLlとティント値TTl)を用いて行う第1の色変換処理が実行可能である。また信号処理部30は、第1の照明とは異なる分光特性であって背景映像を表示する表示装置による第2の照明(LEDウォール505)に対して設定された第2の色設定パラメータ(色温度KLwとティント値TTw)を用いて行う第2の色変換処理が可能である。信号処理部30は、この第1,第2の色変換処理を選択的に実行可能に構成されている。
【0219】
LEDウォール505(第2の照明)を用いる場合の撮影環境においてはライト580(LEDライト等の第1の照明)を用いる場合と、LEDウォール505を照明としても利用する場合がある。LEDウォール505からの光は分光特性が照明用途として最適化されているわけではない。そのような場合でもLEDウォール505の分光特性に対して設定された色設定パラメータを用いて第2の色変換処理を行うことで、撮影映像vCの色再現を改善することができる。
【0220】
なお実施の形態ではLEDウォール505に表示させる映像である背景映像vBは、3Dモデルを用いたレンダリングにより得た仮想映像としたが、例えば実写映像をLEDウォール505に表示させる場合にも本開示の技術は適用できる。
【0221】
実施の形態では、信号処理部30が、第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータとの両方を用いて行う第3の色変換処理を実行可能に構成されている例を挙げた。
例えばLEDウォール505とライト580の両方を用いる場合には、LEDウォール505用のパラメータKLw,TTwと、ライト580用のパラメータKLl,TTlを反映させた色変換処理を行うことで、撮影映像vCの色再現を改善することができる。
【0222】
なおWB部32、マトリクス部34が図19図20の構成の場合でも、色温度KLとティント値TTのミックス比MixRが0:100や100:0の場合は、WB部32やマトリクス部34の処理は第1又は第2の色変換処理に相当する。
ミックス比MixRが0:100や100:0ではない場合、つまり色温度KLw、KLlとティント値TTw、TTlの全てが反映される色変換処理が本開示でいう第3の色変換処理となる。
【0223】
実施の形態では、信号処理部30が、ミックス比MixRに応じて、第3の色変換処理への第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータの反映度合いを設定する例を述べた。
LEDウォール505とライト580の両方を用いる場合において、それぞれの照明光としての寄与程度は多様である。そこでLEDウォール505用の色設定パラメータKLw,TTwと、ライト580用の色設定パラメータKLl,TTlを反映させる比率をミックス比MixRに従って設定する。これによりLEDウォール505とライト580のそれぞれの照明光としての強度の比に応じた色変換処理を行うことができる。
【0224】
実施の形態では、カメラ502の信号処理部30は、第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータを映像データにメタデータMTとして関連づける処理を行う例を挙げた。またポストプロダクションST3で用いる情報処理装置70は、映像データに関連づけられたメタデータから第1の色設定パラメータ、第2の色設定パラメータを読み出させて色変換処理に適用させる例を挙げた。
例えば図28図30の例のように、LEDウォール505用の色設定パラメータKLw,TTwと、ライト580用の色設定パラメータKLl,TTlをメタデータMT2としてRAW映像データvCrawに関連づける。
これによりRAW映像データvCrawに対する処理を、RAW現像ソフトウェア90をインストールした情報処理装置70で行う際に、撮影時の色設定パラメータKLw,TTw、KLl,TTlの全部又は一部を用いた色再現処理が可能になる。
【0225】
なお第1の色設定パラメータであるライト580用の色設定パラメータKLl,TTlのみをメタデータMT2としてRAW映像データvCrawに関連づけてもよい。逆に第2の色設定パラメータであるLEDウォール505用の色設定パラメータKLw,TTwのみをメタデータMT2としてRAW映像データvCrawに関連づけてもよい。つまり第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの少なくとも一方を映像データに関連づける処理を行うようにする。
【0226】
なお撮影映像データに関連づける処理とは、例えば色設定パラメータKLw,TTw、KLl,TTl等をメタデータMTとしてRAW映像データvCrawと共に映像ファイルに含まれるデータとし、記録媒体に記録したり、或いは外部機器に送信したりする処理がある。或いは、このようなメタデータMTを、RAW映像データvCrawのファイルとは別ファイルのデータとしても、同じIDを付与する等により互いに対応するものとして管理された状態とする処理を行うことで互いに関連付けてもよい。
【0227】
実施の形態では、カメラ502の信号処理部30は、第3の色再現処理における第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータのミックス比MixRを映像データに関連づける処理を行う例を挙げた。またポストプロダクションST3で用いる情報処理装置70は、映像データに関連づけられたメタデータからミックス比MixRを読み出させて色変換処理に適用させる例を挙げた。
例えば図30の例のように、ミックス比MixRをメタデータMT3としてRAW映像データvCrawに関連づける。
これによりRAW映像データvCrawに対する処理を後に行う際に、撮影時のミックス比MixRを用いた色再現処理が可能になる。特に色設定パラメータKLw,TTw、KLl,TTlと共にミックス比MixRが関連づけられていることで、RAW映像データvCrawに対する処理を、RAW現像ソフトウェア90が機能する情報処理装置70で行う際に、撮影時と同様のミックス比率の色再現処理が可能になる。
【0228】
実施の形態では、カメラ502の信号処理部30は、第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータに応じた色変換処理の処理係数を映像データに関連づける処理を行う例を挙げた。またポストプロダクションST3で用いる情報処理装置70は、映像データに関連づけられたメタデータから、第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータに応じた色変換処理の処理係数(ホワイトバランス係数Kw、マトリクス係数Km)を読み出させて色変換処理に適用させる例を挙げた。
例えば図32の例のように、撮影時の色設定パラメータKLw,TTw、KLl,TTlに基づいて設定されたホワイトバランス係数Kwやマトリクス係数Km自体をメタデータMT4,MT5としてRAW映像データvCrawに関連づけ、ポストプロダクションST3で使用できるようにする。
これによりRAW映像データvCrawに対する処理を、RAW現像ソフトウェア90が機能する情報処理装置70で行う際に、撮影時と同様の色再現処理が可能になる。
【0229】
実施の形態では、カメラ502の信号処理部30や、ポストプロダクションST3で用いる情報処理装置70は、色変換処理の1つとして、ホワイトバランス調整処理を行うものとした。
ホワイトバランス調整により、照明の光源の色温度の差を吸収して自然な色合いを得ることができるようにする。
【0230】
実施の形態では、カメラ502の信号処理部30や、ポストプロダクションST3で用いる情報処理装置70は、色変換処理の1つとして、マトリクス色変換処理を行うものとした。
マトリクス色変換処理により、照明の光源の分光特性の差を吸収して自然な色合いを得ることができるようにする。
なおマトリクス色変換処理と同等の処理を、3DLUT(3次元ルックアップテーブル)を用いた3DLUT変換処理として行うようにしてもよい。
【0231】
実施の形態では、第1、第2の色設定パラメータを指示可能なUI部22を備え、信号処理部30は、UI部22で指示された第1、第2の色設定パラメータを用いて第1の色変換処理又は第2の色変換処理を実行可能に構成されている例を挙げた。
UI部22によってユーザが第1の色設定パラメータ(色温度KLl,ティント値TTl)や、第2の色設定パラメータ(色温度KLw,ティント値TTw)を指定できるようにしている。これによりユーザは照明に応じて色再現のための色変換処理を実行させることができる。加えて、単なる色再現だけでなく、いわゆる望みの色作りのための色変換処理を指示できることにもなる。
なお、図21の例ではミックス比MixRも指定可能なUIとしているが、ミックス比MixRは指定できないUIも考えられる。
【0232】
実施の形態では、第1、第2の色設定パラメータ、及び比率情報を指示可能なUI部22を備え、信号処理部30は、UI部22で指示された第1、第2の色設定パラメータ、及び比率情報を用いて第3の色変換処理を実行可能に構成されている例を挙げた。
UI部22によってユーザが色設定パラメータKLl,TTl、KLw,TTwとともにミックス比MixRを指定できるようにしている。これによりユーザはライト580とLEDウォール505の両方を照明として使用する状況でも色再現や色作りのための色変換処理を実行させることができる。
なお色設定パラメータKLl,TTl、KLw,TTwが例えば固定値にプリセットされ、ミックス比MixRのみユーザが任意に指定できるようなUIも考えられる。
【0233】
実施の形態では、第1、第2の色設定パラメータは、色温度及びティント値を含むものとした。
例えばホワイトバランス調整やマトリクス色変換処理としての処理係数を色温度及びティント値に基づいて設定することで、照明に応じた適切な色再現を実現する。
【0234】
実施の形態では、カメラ502はRAW映像データvCrawを出力することを述べた。さらに、例えばカメラ502の制御部25が図36のような処理を行うことで、信号処理部30は、第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータの少なくとも一方を修正し、修正された第1の色設定パラメータ又は修正された第2の色設定パラメータ、或いはWB部32やマトリクス部34の処理係数を、RAW映像データvCrawに関連づけることができる。
これにより、オペレータの修正を反映した色設定パラメータや処理係数をRAW映像データvCrawとともに出力コンテンツとすることができる。従って後の処理において、カメラ502で修正された色設定を再現できる。
【0235】
実施の形態では、カメラ502の制御部25は、表示装置の形状、又は、LEDライト対応か否かに基づいて、第1の色変換処理と第2の色変換処理の一方を自動的に実行するか、又は、第1の色変換処理と第2の色変換処理の一方をユーザへ示唆する処理を行う例を挙げた。つまり図25の処理では、ステップS101の照明判定に応じて、パラメータ設定を行う。或いはその変形例として述べたように、ユーザに色設定パラメータのレコメンドを行う。これにより再現性のよい色処理を求める場合においてユーザの負担を軽減できる。
【0236】
実施の形態のプログラムは、上述の図29図31図33図35図36のような処理を、例えばCPU、DSP等のプロセッサ、或いはこれらを含むデバイスに実行させるプログラムである。
即ち実施の形態のプログラムは、情報処理装置70に、カメラ502による映像データ(例えばRAW映像データvCraw)に対して、第1の照明に対して設定された第1の色設定パラメータを用いて行う第1の色変換処理と、第1の照明とは異なる分光特性であって背景映像vBを表示する表示装による第2の照明に対して設定された第2の色設定パラメータを用いて行う第2の色変換処理と、を実行させるプログラムである。
【0237】
このようなプログラムにより、例えばポストプロダクションST3において映像編集装置として機能する情報処理装置70により、撮影映像vCに関する色再現のための色変換処理を行うことができるようになる。特にライト580を照明とする場合と、LEDウォール505を照明とする場合とのそれぞれに対応して、撮影映像vCの色再現を改善することができる。
【0238】
また実施の形態のプログラムは、情報処理装置70に、第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータとの両方を用いて行う第3の色変換処理を実行させるプログラムでもある。
例えばLEDウォール505とライト580の両方を用いた場合に対応して、ポストプロダクションST3の際などの情報処理装置70によって、LEDウォール505用のパラメータKLw,TTwと、ライト580用のパラメータKLl,TTlを反映させた色変換処理を行い、撮影映像vCの色再現を改善することができる。
【0239】
実施の形態のプログラムは、カメラ502による撮影映像データとしてのRAW映像データvCrawに対する現像処理を情報処理装置70に実行させるソフトウェアであるとした。即ち、いわゆるRAW現像ソフトウェア90としてのプログラムである。これによりRAW映像データvCrawをポストプロダクションST3で処理する際に好適なプログラムが実現される。
【0240】
なお、ポストプロダクションST3で処理される撮影映像vCは、上述のRAW映像データvCrawに限られない。例えば現像処理後の撮影映像vCに対して同様の処理を行うこともできる。
また例えばカメラ502のWB部32の処理後の映像データを、RAW映像データvCrawとして出力するようにし、そのようなRAW映像データvCrawに対して同様の処理を行うことも考えられる。
【0241】
実施の形態のプログラムは、情報処理装置70が、第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータの少なくとも一方を修正し、修正された第1の色設定パラメータ又は修正された第2の色設定パラメータを、RAW映像データvCrawに関連づけさせる処理を行う例を挙げた(図36参照)。
これにより、オペレータの修正を反映した色設定パラメータや処理係数をRAW映像データvCrawとともに出力コンテンツとすることができる。これによりRAW現像ソフトウェア90に基づいて情報処理装置70で修正された色設定を、後の処理において再現できる。
【0242】
実施の形態のプログラムは、情報処理装置70に、カメラ502による映像データに関連づけられたメタデータである第1の色設定パラメータ、第2の色設定パラメータを色変換処理に適用させる例を挙げた。これにより図28図29で説明したポストプロダクションST3の処理が実行される。
なお、第1の色設定パラメータ、第2の色設定パラメータのいずれか一方を色変換処理に適用させるものでもよい。
【0243】
また実施の形態のプログラムは、情報処理装置70に、カメラ502による映像データに関連づけられたメタデータである、第1の色設定パラメータと第2の色設定パラメータの比率情報を色変換処理に適用させる例を挙げた。これにより図30図31で説明したポストプロダクションST3の処理が実行される。
【0244】
また実施の形態のプログラムは、情報処理装置70に、カメラ502による映像データに関連づけられたメタデータである、第1、第2の色設定パラメータに応じた色変換処理の処理係数(ホワイトバランス係数Kw、マトリクス係数Km)を色変換処理に適用させる例を挙げた。これにより図32図33で説明したポストプロダクションST3の処理が実行される。
なお、第1の色設定パラメータに応じた処理係数、第2の色設定パラメータに応じた処理係数のいずれか一方を色変換処理に適用させるものでもよい。
【0245】
また実施の形態のプログラムは、情報処理装置70に、ユーザ操作により指定された第1、第2の色設定パラメータに応じた色変換処理を実行させる例を挙げた。
例えばRAW映像データvCrawに対して色変換処理に関するパラメータ等のメタデータの有無に関わらず、図21のようなUIが情報処理装置70においても提供されるようにすることで、図34図35で説明したように、ユーザ操作に応じて色再現や色作りのための色変換処理が可能となる。
【0246】
以上のような実施の形態のプログラムは、コンピュータ装置等の機器に内蔵されている記録媒体としてのHDDや、CPUを有するマイクロコンピュータ内のROM等に予め記録しておくことができる。また、このようなプログラムは、フレキシブルディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto Optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク(Blu-ray Disc(登録商標))、磁気ディスク、半導体メモリ、メモリカードなどのリムーバブル記録媒体に、一時的あるいは永続的に格納(記録)しておくことができる。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウェアとして提供することができる。
また、このようなプログラムは、リムーバブル記録媒体からパーソナルコンピュータ等にインストールする他、ダウンロードサイトから、LAN(Local Area Network)、インターネットなどのネットワークを介してダウンロードすることもできる。
【0247】
またこのようなプログラムによれば、実施の形態の情報処理装置70の広範な提供に適している。例えばパーソナルコンピュータ、通信機器、スマートフォンやタブレット等の携帯端末装置、携帯電話機、ゲーム機器、ビデオ機器、PDA(Personal Digital Assistant)等にプログラムをダウンロードすることで、これらの装置を本開示の情報処理装置70として機能させることができる。
【0248】
なお、本明細書に記載された効果はあくまでも例示であって限定されるものではなく、また他の効果があってもよい。
【0249】
なお本技術は以下のような構成も採ることができる。
(1)
イメージセンサで得られた映像データに対して、第1の照明に対して設定された第1の色設定パラメータを用いて行う第1の色変換処理と、前記第1の照明とは異なる分光特性であって背景映像を表示する表示装置による第2の照明に対して設定された第2の色設定パラメータを用いて行う第2の色変換処理と、を実行可能に構成された信号処理部を備えた
撮像装置。
(2)
前記信号処理部は、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータとの両方を用いて行う第3の色変換処理を実行可能に構成されている
上記(1)に記載の撮像装置。
(3)
前記信号処理部は、
比率情報に応じて、前記第3の色変換処理への前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの反映度合いを設定する
上記(2)に記載の撮像装置。
(4)
前記信号処理部は、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの少なくとも一方を映像データに関連づける処理を行う
上記(2)又は(3)に記載の撮像装置。
(5)
前記信号処理部は、
前記第3の色変換処理における前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの比率情報を映像データに関連づける処理を行う
上記(2)から(4)のいずれかに記載の撮像装置。
(6)
前記信号処理部は、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータに応じた色変換処理の処理係数を映像データに関連づける処理を行う
上記(2)又は(3)に記載の撮像装置。
(7)
前記信号処理部は、
色変換処理の1つとして、ホワイトバランス調整処理、又はマトリクス色変換処理、又は3DLUT変換処理を行う
上記(1)から(6)のいずれかに記載の撮像装置。
(8)
前記第1の色設定パラメータ、前記第2の色設定パラメータを指示可能なユーザインタフェース部をさらに備え、
前記信号処理部は、前記ユーザインタフェース部で指示された前記第1の色設定パラメータ、前記第2の色設定パラメータを用いて前記第1の色変換処理又は前記第2の色変換処理を実行可能に構成されている
上記(1)から(7)のいずれかに記載の撮像装置。
(9)
前記第1の色設定パラメータ、前記第2の色設定パラメータ、及び前記比率情報を指示可能なユーザインタフェース部をさらに備え、
前記信号処理部は、前記ユーザインタフェース部で指示された前記第1の色設定パラメータ、前記第2の色設定パラメータ、及び前記比率情報を用いて前記第3の色変換処理を実行可能に構成されている
上記(3)に記載の撮像装置。
(10)
前記第1の色設定パラメータ及び前記第2の色設定パラメータは、色温度及びティント値を含む
上記(1)から(9)のいずれかに記載の撮像装置。
(11)
前記映像データはRAW映像データである
上記(1)から(10)のいずれかに記載の撮像装置。
(12)
前記信号処理部は、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの少なくとも一方を修正し、修正された前記第1の色設定パラメータ又は修正された前記第2の色設定パラメータを、前記RAW映像データに関連づける
上記(11)に記載の撮像装置。
(13)
前記表示装置の形状、又は、LEDライト対応か否かに基づいて、
前記第1の色変換処理と前記第2の色変換処理の一方を自動的に実行するか、又は、前記第1の色変換処理と前記第2の色変換処理の一方をユーザへ示唆する制御部をさらに有する
上記(1)から(12)のいずれかに記載の撮像装置。
(14)
情報処理装置に、
撮像装置による映像データに対して、第1の照明に対して設定された第1の色設定パラメータを用いて行う第1の色変換処理と、前記第1の照明とは異なる分光特性であって背景映像を表示する表示装置による第2の照明に対して設定された第2の色設定パラメータを用いて行う第2の色変換処理と、を実行させる
プログラム。
(15)
前記情報処理装置に、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータとの両方を用いて行う第3の色変換処理を実行させる
上記(14)に記載のプログラム。
(16)
前記映像データとしてのRAW映像データに対する現像処理を前記情報処理装置に実行させるソフトウェアである
上記(14)又は(15)に記載のプログラム。
(17)
前記情報処理装置に、
前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの少なくとも一方を修正し、修正された前記第1の色設定パラメータ又は修正された前記第2の色設定パラメータを、前記RAW映像データに関連づけさせる
上記(16)に記載のプログラム。
(18)
前記情報処理装置に、
前記撮像装置による映像データに関連づけられたメタデータである前記第1の色設定パラメータ、前記第2の色設定パラメータの少なくとも一方を色変換処理に適用させる
上記(14)から(17)のいずれかに記載のプログラム。
(19)
前記情報処理装置に、
前記撮像装置による映像データに関連づけられたメタデータである前記第1の色設定パラメータと前記第2の色設定パラメータの比率情報を色変換処理に適用させる
上記(14)から(18)のいずれかに記載のプログラム。
(20)
前記情報処理装置に、
前記撮像装置による映像データに関連づけられたメタデータである前記第1の色設定パラメータに応じた色変換処理の処理係数と前記第2の色設定パラメータに応じた色変換処理の処理係数の少なくとも一方を色変換処理に適用させる
上記(14)から(17)のいずれかに記載のプログラム。
【符号の説明】
【0250】
21 イメージセンサ
22 UI部
23 通信部
24 記録制御部
25 制御部
26 メモリ部
27 表示部
30 信号処理部
31 センサ信号処理部
32 ホワイトバランス処理部(WB処理部)
33 色分離部
34 マトリクス処理部
35 現像処理部
41,41a,41b 係数設定部
42,43,44 乗算器
45 係数設定部
46 マトリクス係数処理部
47,48 ブレンド係数設定部
50 GUI表示
51 色温度操作子
52 色温度操作子
53 ティント操作子
54 ティント操作子
55 ミックス比操作子
70 情報処理装置、
71 CPU
90 RAW現像ソフトウェア
92 ホワイトバランス処理部(WB処理部)
94 マトリクス処理部
502 カメラ
505 LEDウォール
580 ライト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36