(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098596
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】共振抑制制御装置
(51)【国際特許分類】
G05B 11/36 20060101AFI20240717BHJP
G05B 13/04 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
G05B11/36 501C
G05B11/36 501E
G05B13/04
G05B11/36 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002171
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】増井 陽二
【テーマコード(参考)】
5H004
【Fターム(参考)】
5H004GA08
5H004GA09
5H004GB12
5H004HA10
5H004HA12
5H004HB10
5H004HB12
5H004KB02
5H004KB04
5H004KB22
5H004KB24
5H004KB26
5H004KB31
5H004KC33
5H004KC34
5H004KC55
5H004LA13
5H004MA14
(57)【要約】
【課題】制御対象の共振周波数における振動の抑制制御を行う共振抑制制御装置において、簡単で実装しやすく、且つ、モデル化誤差等による影響を低減可能な構成を提供する。
【解決手段】制御装置2は、制御対象P1の共振周波数における振動の抑制制御を行う共振抑制制御装置である。制御装置2は、制御対象P1の出力を入力側に負帰還させるフィードバックループ部30と、制御対象P1の規範モデル20とを備える。フィードバックループ部30は、バンドパスフィルタ機能51と位相補償機能52と振幅調整機能53とを有する制御器50と、規範モデル20の規範出力と制御対象P1の出力との偏差を低減させるように、位相補償機能52のパラメータを調整するパラメータ調整部40とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御対象の共振周波数における振動の抑制制御を行う共振抑制制御装置であって、
前記制御対象の出力を入力側に負帰還させるフィードバックループ部と、
前記制御対象の規範モデルと、
を備え、
前記フィードバックループ部は、
一部の振動モードを抽出するフィルタ機能と位相補償機能と振幅調整機能とを有する制御器と、
前記規範モデルの規範出力と前記制御対象の出力との偏差を低減させるように、前記制御器における前記フィルタ機能、前記位相補償機能及び前記振幅調整機能の少なくとも1つのパラメータを調整するパラメータ調整部と、
を有する、
共振抑制制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の共振抑制制御装置において、
前記パラメータ調整部は、前記位相補償機能の伝達関数のパラメータを調整する、
共振抑制制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の共振抑制制御装置において、
前記パラメータ調整部は、前記フィルタ機能と前記位相補償機能と前記振幅調整機能とを有する前記制御器の伝達関数のパラメータを調整する、
共振抑制制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載の共振抑制制御装置において、
前記パラメータ調整部は、前記伝達関数の微分要素の次数に応じてパラメータを調整する、
共振抑制制御装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の共振抑制制御装置において、
複数の前記フィードバックループ部を備え、
前記フィードバックループ部における前記フィルタ機能は、前記制御対象が有する複数の振動モードから一部の振動モードを抽出する、
共振抑制制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御対象の共振周波数における振動の抑制制御を行う共振抑制制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
制御対象の共振周波数における振動の抑制制御を行う共振抑制制御装置が知られている。このような共振抑制制御装置の一例として、例えば特許文献1には、2つ以上の振動モードを有する伝達系を制御対象とする共振抑制制御装置が開示されている。
【0003】
前記共振抑制制御装置は、前記制御対象の出力部に現れる出力値を前記制御対象の入力部に負帰還させる複数のフィードバックループを有する。複数のフィードバックループのそれぞれは、前記制御対象の一部の振動モードを抽出するバンドパスフィルタと、位相補償部と、振幅調整部とを有する。
【0004】
これにより、複数の振動モードが存在した場合でも、抽出した振動モードに対して共振抑制を効果的に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、制御対象の制御系の設計はモデルに基づいて行われる。しかしながら、一般に前記制御対象の応答出力と前記モデルの応答出力とを厳密に一致させることは困難である。このため、前記制御対象の応答出力と前記モデルの応答出力との間には、いわゆるモデル化誤差と呼ばれる誤差が存在する。例えば、制御系に入力信号を入力してから、それに応じた出力信号が得られるまでに、むだ時間とよばれる一定の時間がかかる。このむだ時間を厳密に考慮してモデルを設計する場合、前記モデルの設計が複雑になる。
【0007】
上述の特許文献1の共振抑制制御装置では、共振周波数に応じて、バンドパスフィルタと、位相補償部と、振幅調整部とのパラメータが可変である。これにより、共振が変化する制御対象に対しても振動抑制が可能である。しかしながら、前記特許文献1の共振抑制制御装置では、共振周波数の変化に伴うむだ時間の位相変化を補正テーブル等によって調整する必要があった。また、前記特許文献1の共振抑制制御装置は、むだ時間の推定誤差には対応していなかった。
【0008】
また、前記モデル化誤差は、上述のむだ時間以外にも、共振周波数及び減衰比等のずれも含む。
【0009】
上述の各種のモデル化誤差の影響によって、制御対象に対する振動抑制制御が適切に行うことができない場合がある。
【0010】
さらに言えば、制御対象の伝達関数が時間とともに変化した場合、上述のむだ時間や共振周波数等も変化することがある。
【0011】
このため、ロバストに振動抑制制御を行うには、制御対象の共振周波数が時間とともに変化する場合、又は、制御対象のモデルが設計時と実際とで誤差を有する場合を考慮する必要がある。
【0012】
本発明の目的は、制御対象の共振周波数における振動抑制制御を行う共振抑制制御装置において、振動抑制制御におけるモデル化誤差等による影響を低減可能な構成を簡単で且つ実装しやすい構成によって実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一実施形態に係る共振抑制制御装置は、制御対象の共振周波数における振動の抑制制御を行う共振抑制制御装置である。前記共振抑制制御装置は、前記制御対象の出力を入力側に負帰還させるフィードバックループ部と、前記制御対象の規範モデルと、を備える。前記フィードバックループ部は、一部の振動モードを抽出するフィルタ機能と位相補償機能と振幅調整機能とを有する制御器と、前記規範モデルの規範出力と前記制御対象の出力との偏差を低減させるように、前記制御器における前記フィルタ機能、前記位相補償機能及び前記振幅調整機能の少なくとも1つのパラメータを調整するパラメータ調整部と、を有する(第1の構成)。
【0014】
これにより、制御対象の伝達関数が時間とともに変化した場合、又は、制御対象のモデルが設計時と実際とで誤差を有する場合を考慮して各パラメータを調整できる。このため、前記制御器の伝達関数を、前記制御対象の振動を抑制可能な伝達関数に設定することができる。
【0015】
従って、従来技術の伝達関数の各パラメータを調整することで、制御対象に対して理想応答になるような前記制御器の伝達関数を求めることができる。
【0016】
よって、制御対象の共振周波数における振動の抑制制御を行う共振抑制制御装置において、振動の抑制制御におけるモデル化誤差等による影響を低減可能な構成を簡単で且つ実装しやすい構成によって実現できる共振抑制制御装置が得られる。
【0017】
前記第1の構成において、前記パラメータ調整部は、前記位相補償機能の伝達関数のパラメータを調整する(第2の構成)。
【0018】
これにより、従来技術の位相補償機能の伝達関数のパラメータを可変にした簡単な構成により、むだ時間の位相の推定誤差を補正できる共振抑制制御装置が実現できる。
【0019】
前記第1の構成において、前記パラメータ調整部は、前記フィルタ機能と前記位相補償機能と前記振幅調整機能とを有する前記制御器の伝達関数のパラメータを調整する(第3の構成)。
【0020】
これにより、従来技術のバンドパスフィルタ機能と位相補償機能と振幅調整機能とを含む制御器の伝達関数のパラメータを可変にした簡単な構成により、モデル化誤差を補正できる共振抑制制御装置が得られる。
【0021】
前記第3の構成において、前記パラメータ調整部は、前記伝達関数の微分要素の次数に応じてパラメータを調整する(第4の構成)。
【0022】
これにより、前記制御対象の伝達関数に合わせたパラメータの調整ができる。よって、モデル化誤差に対応できる。
【0023】
前記第1から5のいずれか1つの構成において、複数の前記フィードバックループ部を備え、前記複数のフィードバックループ部における前記フィルタ機能は、前記制御対象が有する複数の振動モードから一部の振動モードを抽出する(第5の構成)。
【0024】
上述の構成では、前記複数のフィードバックループ部のそれぞれの前記フィルタ機能によって、抽出された振動モードに対して、前記位相補償機能による位相補償と前記振幅調整機能による振幅調整とが行われる。
【0025】
よって、前記制御対象における複数の振動モードの共振周波数での振動を抑制することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一実施形態に係る共振抑制制御装置は、前記制御対象の出力を入力側に負帰還させるフィードバックループ部と、前記制御対象の規範モデルと、を備える。前記フィードバックループ部は、一部の振動モードを抽出するフィルタ機能と位相補償機能と振幅調整機能とを有する制御器と、前記規範モデルの規範出力と前記制御対象の出力との偏差を低減させるように、前記制御器における前記フィルタ機能、前記位相補償機能及び前記振幅調整機能の少なくとも1つのパラメータを調整するパラメータ調整部と、を有する。
【0027】
これにより、制御対象の共振周波数における振動の抑制制御を行う共振抑制制御装置において、振動の抑制制御におけるモデル化誤差等による影響を低減可能な構成を簡単で且つ実装しやすい構成によって実現できる共振抑制制御装置が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る制御装置を備えた試験装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図2は、制御装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は、制御装置の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態2に係る制御装置の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、実施形態2のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行わない比較例に係る制御装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、制御対象のむだ時間を除いた周波数特性を示すボード線図である。
【
図7】
図7は、制御対象のむだ時間の周波数特性を示すボード線図である。
【
図8】
図8は、むだ時間を所定の推定値と推定した制御対象において、実施形態2のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行っていない場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、実際のむだ時間が前記所定の推定値よりも大きい制御対象において、実施形態2のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行っていない場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、むだ時間を前記所定の推定値と推定した制御対象において、実施形態2のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【
図11】
図11は、実際のむだ時間が前記所定の推定値よりも大きい制御対象において、実施形態2のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【
図12】
図12は、実施形態3に係る制御装置の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図13】
図13は、実施形態4に係る制御装置の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図14】
図14は、1次共振の周波数に誤差を有する場合の比較例の時間応答の一例を示すグラフである。
【
図15】
図15は、むだ時間を前記所定の推定値と推定した制御対象において、実施形態4のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【
図16】
図16は、実際のむだ時間が前記所定の推定値よりも大きい制御対象において、実施形態4のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【
図17】
図17は、1次共振の周波数に誤差を有する制御対象において、実施形態4のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【
図18】
図18は、設計に用いた制御対象の周波数特性と、モデル化誤差を有する場合の制御対象の周波数特性とを示すボード線図である。
【
図19】
図19は、減衰比のモデル化誤差を有する制御対象において、実施形態4のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【
図20】
図20は、実施形態5に係る制御装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図21】
図21は、実施形態5に係る制御装置の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【
図22】
図22は、設計に用いた制御対象の周波数特性と、モデル化誤差を有する場合の制御対象の周波数特性とを示すボード線図である。
【
図23】
図23は、モデル化誤差を有さない制御対象において、実施形態5のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【
図24】
図24は、モデル化誤差を有する制御対象において、実施形態5のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳しく説明する。図中の同一又は相当部分については同一の符号を付してその説明は繰り返さない。
【0030】
[実施形態1]
(全体構成)
図1は、本発明の実施形態1に係る共振抑制制御装置を備えた試験装置1の概略構成を機能ブロックで示す図である。この試験装置1は、自動車のモータなどの供試体Mの特性を試験するための試験装置である。なお、試験装置1で試験する供試体Mは、モータ以外の回転体であってもよい。
【0031】
具体的には、試験装置1は、制御装置2(共振抑制制御装置)と、モータ駆動回路3と、電動モータ4と、トルク検出器5とを備える。
【0032】
制御装置2は、入力指令であるモータトルク指令rと後述のフィードバック値とを用いて、モータ駆動回路3に対する駆動指令uを生成する。制御装置2は、トルク検出器5の出力値を用いてモータトルク指令rに対して負帰還するフィードバック制御を行う。なお、制御装置2が駆動指令uを生成する構成は、従来と同様である。このため、制御装置2が駆動指令uを生成する構成の詳しい説明は省略する。
【0033】
モータ駆動回路3は、特に図示しないが、複数のスイッチング素子を有する。モータ駆動回路3は、駆動指令uに基づいて前記複数のスイッチング素子が駆動することにより、電動モータ4の図示しないコイルに電力を供給する。
【0034】
電動モータ4は、図示しない回転子及び固定子を有する。前記固定子のコイルにモータ駆動回路3から電力が供給されることにより、前記回転子が前記固定子に対して回転する。前記回転子は、図示しない中間軸を介して、供試体Mに対し、供試体Mと一体で回転可能に連結されている。これにより、前記回転子の回転によって、電動モータ4から供試体Mにトルクを出力することができる。なお、電動モータ4の構成は、一般的なモータの構成と同様であるため、電動モータ4の詳しい説明は省略する。
【0035】
トルク検出器5は、電動モータ4と供試体Mとを接続する中間軸に設けられている。トルク検出器5は、電動モータ4から出力されたトルクを検出する。トルク検出器5で検出されたトルクの出力値は、制御装置2にフィードバックループ部30の入力値として入力される。すなわち、トルク検出器5の出力値は、フィードバック制御に用いられる。なお、トルク検出器5の構成は、従来の構成と同様であるため、トルク検出器5の詳しい説明は省略する。
【0036】
上述のような構成を有する試験装置1は、電動モータ4、トルク検出器5及び供試体Mを含む軸系の剛性によって、電動モータ4の回転時に機械共振(単に共振という)が生じる。供試体Mの試験において、前記共振が周波数の測定範囲内で発生した場合、トルク検出器5では、電動モータ4の出力トルクに前記共振の振動成分が加わったトルク(例えば軸トルク)が検出される。そのため、前記共振の振動成分を除去することが要求される。
【0037】
(制御装置の概略構成)
図2を用いて、上記要求を満たすための制御装置2の概略構成について説明する。
図2は、制御装置2の概略構成を示す機能ブロック図である。
図2に示すように、制御装置2は、入力指令であるモータトルク指令rに対してトルク検出器5の出力値を負帰還するフィードバックループ部30と、制御対象Pの規範モデル20とを有する。すなわち、本実施形態の試験装置1は、制御装置2、モータ駆動回路3、電動モータ4及びトルク検出器5を含み且つ供試体Mを含まない制御系によって、電動モータ4の駆動を制御する。
【0038】
なお、
図2において、rはモータトルク指令としての目標値であり、uは制御対象P1に対する駆動指令としての制御入力であり、yはトルク検出器5の出力値であり、y
mは規範モデル20の出力値である。
【0039】
また、
図2における符号P1は制御対象であり、本実施形態では、制御対象P1は、モータ駆動回路3、電動モータ4及びトルク検出器5を含む。なお、制御対象P1には、電動モータ4と供試体Mとを接続する中間軸のうち、電動モータ4からトルク検出器5までの範囲も含む。
【0040】
規範モデル20は、制御系の望ましい特性を有する。規範モデル20は、例えば、応答性やオーバーシュートなど所望の応答を得るモデルとして設計することができる。規範モデル20は、モータトルク指令rに対して規範出力ymを出力する。
【0041】
フィードバックループ部30は、微分要素を含む微分フィードバック系である。フィードバックループ部30には、トルク検出器5の出力値が入力される。フィードバックループ部30は、制御器50と、パラメータ調整部40とを有する。
【0042】
制御器50は、バンドパスフィルタ機能(フィルタ機能)51と、位相補償機能52と、振幅調整機能53とを有する。
【0043】
バンドパスフィルタ機能51は、一部の振動モードを抽出するため、所定の周波数帯の信号を通過させる。具体的には、バンドパスフィルタ機能51は、制御対象P1の共振周波数帯の信号を通過させる。バンドパスフィルタ機能51は、低周波数帯の信号をカットするハイパスフィルタの機能と高周波の信号をカットするローパスフィルタの機能とを有する。
【0044】
位相補償機能52は、共振によって生じる振動を抑制する信号(振動抑制信号)を生成する際に、位相進み補償及び位相遅れ補償の両方の機能を有する。位相補償機能52は、位相進み補償又は位相遅れ補償として、振動抑制信号の位相を任意の位相に調整できる。位相補償機能52は、バンドパスフィルタ機能51によって抽出された共振周波数における振動を抑制するように、振動抑制信号の位相を調整する。
【0045】
振幅調整機能53は、振動抑制信号のゲインを調整する。すなわち、振幅調整機能53は、振動抑制信号の振幅を調整する。振幅調整機能53は、バンドパスフィルタ機能51によって抽出された共振周波数における振動を抑制するように、振動抑制信号の振幅を調整する。
【0046】
パラメータ調整部40は、規範モデル20の規範出力ymと制御モデルP1の出力yとの偏差eが0に収束するように、制御器50におけるバンドパスフィルタ機能51、位相補償機能52及び振幅調整機能53の少なくとも1つのパラメータを調整する。例えば、パラメータ調整部40は、バンドパスフィルタ機能51、位相補償機能52及び振幅調整機能53のいずれか1つのパラメータを調整してもよい。また、パラメータ調整部40は、バンドパスフィルタ機能51、位相補償機能52及び振幅調整機能53のうち、2つ以上に対して、パラメータを調整してもよい。例えば、バンドパスフィルタ機能51、位相補償機能52及び振幅調整機能53の3つの機能に関係するパラメータを調整してもよい。また、パラメータ調整部40は、バンドパスフィルタ機能51及び位相補償機能52の2つの機能に対して、又は、位相補償機能52及び振幅調整機能53の2つの機能に対して、パラメータを調整してもよい。
【0047】
以上の構成により、フィードバックループ部30では、フィードバックする信号の位相及び振幅が調整されることにより、共振によって生じる振動を抑制する振動抑制信号が生成される。
【0048】
(制御装置の詳細構成)
図3を用いて、制御装置2の詳細構成について説明する。
図3は、制御装置2の詳細構成を示す機能ブロック図である。
【0049】
図3に示すように、制御器50は、より詳細には、バンドパスフィルタ機能51を実現するバンドパスフィルタ151と、位相補償機能52及び振幅調整機能53の2つの機能を有する補償部110とを含む。
【0050】
バンドパスフィルタ151は、バンドパスフィルタ機能51を実現する。バンドパスフィルタ151の構成は、従来の構成と同様であるため、バンドパスフィルタ151の詳しい説明は省略する。
【0051】
補償部110は、以下の(1)式によって決まる伝達特性を有する。なお、T1、T2は時定数、sは微分要素、gは振幅調整のための係数である。
【0052】
また、(1)式の最左辺の分母を、以下の(2)式によって置き換えて微分要素sについて項分けすると、(1)式の最右辺に示すように表すことができる。
【0053】
【0054】
【数2】
前記(1)式の最左辺において、係数gが振幅調整機能53に対応し、それ以外の部分が位相補償機能52に対応する。
【0055】
また、前記(1)式の最右辺は、sの1次の項と、sの0次の項とを含む。これらの2項は並列接続的要素である。
【0056】
sの1次の項は、可変ゲインk1を係数として含む。可変ゲインk1とそれ以外のgT2s/H1の部分とは、直列接続的要素である。なお、可変ゲインk1は、後述のパラメータ調整部40によって生成される。なお、可変ゲインk1=1の場合、従来の制御器の伝達特性と同じになる。
【0057】
前記伝達特性をブロック図で示すと、
図3に示す通りである。すなわち、バンドパスフィルタ機能51は、1次要素111(gT
2s/H
1)と、0次要素112(g/H
1)とに対して並列的に接続される。また、1次要素111と、可変ゲイン要素113(k
1)とは直列的に接続される。さらに、可変ゲイン要素113の出力と、0次要素112の出力とが足し合わされた値が補償部110の最終的な出力となる。すなわち、補償部110の最終的な出力が、制御器50の出力である。制御器50は、補償部110の前記最終的な出力をモータトルク指令rに対して負帰還する。
【0058】
パラメータ調整部40は、偏差eと、1次要素111を介した信号ξ
1とを
図3に示す式に適用して、可変ゲインk
1を生成する。信号ξ
1は、例えば、非特許文献:『田村捷利、市川邦彦著「モデル規範形適応制御系の設計」、計測と制御、公益社団法人計測自動制御学会、昭和56年11月、Vol.20、No.11、p.1078-1086』に記載の手法により生成することができる。なお、本実施形態では可変ゲインk
1を正規化できるよう該非特許文献の構成に対して1次要素111の分子と0次要素112の分子とに係数を持たせている。パラメータ調整部40は、規範モデル20の規範出力と制御対象P1の出力との偏差eを0にさせるような可変ゲインk
1を生成する。
【0059】
以上に説明した通り、制御装置2は、制御対象P1の共振周波数における振動の抑制制御を行う共振抑制制御装置である。制御装置2は、制御対象P1の出力を入力側に負帰還させるフィードバックループ部30と、制御対象P1の規範モデル20と、を備える。フィードバックループ部30は、制御器50と、パラメータ調整部40とを有する。制御器50は、バンドパスフィルタ機能51と位相補償機能52と振幅調整機能53とを有する。パラメータ調整部40は、規範モデル20の規範出力と制御対象P1の出力との偏差eを低減させるように、制御器50におけるバンドパスフィルタ機能51、位相補償機能52及び振幅調整機能53の少なくとも1つのパラメータを調整する。
【0060】
これにより、制御対象P1のモデルが設計時と実際とでむだ時間の誤差を有する場合を考慮して各パラメータを調整できる。このため、制御器50の伝達関数を、制御対象P1の振動を抑制可能な伝達関数に設定することができる。
【0061】
従って、従来技術の伝達関数の各パラメータを調整することで、制御対象P1に対して理想応答になるような制御器50の伝達関数を求めることができる。
【0062】
よって、制御対象P1の共振周波数における振動の抑制制御を行う制御装置2において、振動の抑制制御におけるモデル化誤差等による影響を低減可能な構成を簡単で且つ実装しやすい構成によって実現できる制御装置2が得られる。
【0063】
また、パラメータ調整部40は、位相補償機能52の伝達関数の分子のパラメータを調整する。
【0064】
これにより、従来技術の位相補償機能の伝達関数のパラメータを可変にした簡単な構成により、むだ時間の位相の推定誤差を補正できる制御装置2が実現できる。
【0065】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る制御装置2A(共振抑制制御装置)の詳細構成を示す機能ブロック図である。実施形態2に係る制御装置2Aは、複数のフィードバックループ部230A,230Bを有する点で、実施形態1に係る制御装置2と異なる。また、制御対象P2は、2つの振動モードを有している点で、実施形態1に係る制御対象P1と異なる。
【0066】
以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0067】
図4に示すように、制御装置2Aは、入力指令であるモータトルク指令rに対して制御対象P2の出力値を負帰還する複数のフィードバックループ部230A,230Bを有する。
【0068】
複数のフィードバックループ部230A,230Bは、それぞれ、各振動モードの共振周波数における振動を抑制するように構成されている。
【0069】
フィードバックループ部230Aは、制御器250Aと、パラメータ調整部240Aとを有する。フィードバックループ部230Bは、制御器250Bと、パラメータ調整部240Bとを有する。
【0070】
複数のフィードバックループ部230A,230Bにおける制御器250A,250Bは、それぞれ、以下の点で実施形態1に係る制御器50と異なる。
【0071】
すなわち、制御器250Aのバンドパスフィルタ251A及び制御器250Bのバンドパスフィルタ251Bは、それぞれ、異なる振動モードを抽出可能なように、異なる帯域の信号を通過可能に構成されている。
【0072】
制御器250A及び制御器250Bの補償部210A及び補償部210Bは、それぞれ、後述する可変ゲインk1及びk2によって個別にパラメータ調整される以外は、実施形態1に係る補償部110と同様である。すなわち、制御器250Aの可変ゲイン要素213Aは、可変ゲインk1よってパラメータ調整され、制御器250Bの可変ゲイン要素213Bは、可変ゲインk2よってパラメータ調整される。
【0073】
制御器250A及び制御器250Bは、上述の点以外は実施形態1に係る制御器50と同様である。
【0074】
また、パラメータ調整部240A、240Bも、それぞれ、信号ξ1及びξ2が個別に入力され、可変ゲインk1及びk2を個別に出力する以外は、実施形態1に係るパラメータ調整部40と同様である。
【0075】
上述の構成では、複数のフィードバックループ部230A,230Bによって、各振動モードの共振周波数での振動を抑制することができる。よって、複数の振動モードを有する制御対象Pの各振動モードの共振周波数における振動を抑制することができる。
【0076】
(シミュレーション1)
図5~
図11を用いて、実施形態2に係る制御装置2Aの効果を説明する。
図5は、実施形態2のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行わない比較例に係る制御装置2000の概略構成を示す機能ブロック図である。
図6は、制御対象P2のむだ時間を除いた周波数特性を示すボード線図である。
図7は、制御対象P2のむだ時間の周波数特性を示すボード線図である。
図8は、むだ時間が所定の推定値の場合の比較例の時間応答の一例を示すグラフである。
図9は、実際のむだ時間が前記所定の推定値より大きい場合の比較例の時間応答の一例を示すグラフである。
図10は、むだ時間を前記所定の推定値と推定した制御対象P2において、実施形態2のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
図11は、実際のむだ時間が前記所定の推定値よりも大きい制御対象P2において、実施形態2のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【0077】
実施形態2に係る制御装置2Aの効果を、比較例に係る制御装置2000と比較して、以下のとおり確認した。
【0078】
まず、
図5を用いて、比較例に係る制御装置2000の概略構成について説明する。
図5に示す比較例に係る制御装置2000は、例えば、前記特許文献1:特開2021-140221号公報の
図2に記載の公知の構成と同様である。このため、以下では、制御装置2000の構成の概略のみ説明し、その詳細な説明については省略する。
図5に示すように、比較例に係る制御装置2000は、概略的には、入力指令であるモータトルク指令rに対して制御対象P2の出力値を負帰還する2つのフィードバックループ部2011,2012を有する。なお、
図5において、dは外乱である。
2つのフィードバックループ部2011,2012には、それぞれ、トルク検出器5の出力値が入力される。
【0079】
フィードバックループ部2011は、バンドパスフィルタ2051と、位相補償部2052と、振幅調整部2053とを有する。フィードバックループ部2012は、バンドパスフィルタ2061と、位相補償部2062と、振幅調整部2063とを有する。
【0080】
フィードバックループ2011とフィードバックループ2012とは、制御対象P2の出力値yのうち、通過する信号の帯域が異なる。これにより、制御装置2000は、制御対象P2が有する2つの振動モードの共振周波数における振動を抑制するように構成されている。
【0081】
しかしながら、制御装置2000は、制御装置2Aのような規範モデル20及びパラメータ調整部240A,240Bを有さない。したがって、制御装置2000は、実施形態2のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行わない。
【0082】
次に、
図6及び
図7に、制御対象P2の周波数特性について説明する。
図6に示すように、制御対象P2は、1次共振R1及び2次共振R2の2つの振動モードを有している。
図7は、システム同定時に、むだ時間を所定の推定値と推定した場合の周波数特性(実線)と、実際のむだ時間が前記推定値より大きい場合の周波数特性(破線)とを示している。
図7に示すように、周波数が高くなるにつれて、位相のずれも大きくなる。
【0083】
このような場合、望ましい共振抑制結果を得るには、上述したように位相補償機能52のパラメータを調整することが好ましい。
【0084】
比較のため比較例に係る制御装置2000において、むだ時間が前記所定の推定値の場合に、入力にチャープ信号を与えたシミュレーションを実施した。このシミュレーションの結果、
図8に示すように、制御によって1次共振R1及び2次共振R2の振動を抑制できている。
【0085】
また、むだ時間が前記所定の推定値より大きい場合も、同様にシミュレーションを実施した。このシミュレーションの結果、振動の出力のピークは、
図8に示した補助線L11のレベルよりも大きくなり、
図9に示すように、補助線L12のレベルになった。むだ時間の推定値からの誤差がある場合、1次共振R1の振動を抑制できていないことが確認できる。
【0086】
これに対して、実施形態2に係る制御装置2Aにおいて、むだ時間が前記所定の推定値の場合について、同様にシミュレーションを実施した。その結果、
図10に示すように、制御装置2Aの制御によって1次共振R1及び2次共振R2の振動を抑制できていることが確認できた。さらに言えば、
図8と
図10とを比較すると、
図8では、1次共振R1のピークが補助線L11のレベルであったのに対して、
図10では、1次共振R1のピークは、
図8に示した補助線L11のレベルよりも低い補助線L21のレベルに抑えられている。すなわち、実施形態2に係る制御装置2Aのほうが、比較例に係る制御装置2000よりも、振動をより抑制できている。これは、制御装置2Aの適応制御により推定誤差の影響を低減できているためと推察される。
【0087】
また、むだ時間が前記所定の推定値よりも大きい場合のシミュレーション結果は以下の通りである。すなわち、
図9と
図11とを比較すると、
図9では、1次共振R1のピークが補助線L12のレベルであったのに対して、
図11では、1次共振R1のピークは、
図9に示した補助線L12よりも低い補助線L22のレベルに抑えられている。このため、実施形態2に係る制御装置2Aのほうが、比較例に係る制御装置2000よりも、より振動を抑制できている。
【0088】
以上に説明した通り、制御装置20Aは、2つのフィードバックループ部230A,230Bを備える。2つのフィードバックループ部230A,230Bのそれぞれのバンドパスフィルタ(バンドパスフィルタ機能)251A,251Bは、制御対象P2が有する2つの振動モードから一部の振動モードを抽出する。
【0089】
上述の構成では、2つのフィードバックループ部230A,230Bそれぞれによって、抽出された振動モードに対して、位相補償機能52による位相補償と振幅調整機能53による振幅調整とが行われる。
【0090】
よって、制御対象P2における2つの振動モードの共振周波数における振動を抑制することができる。
【0091】
[実施形態3]
図12は、実施形態3に係る制御装置2B(共振抑制制御装置)の詳細構成を示す機能ブロック図である。実施形態3に係る制御装置2Bは、バンドパスフィルタ機能51と位相補償機能52と振幅調整機能53とを有する補償部310に対して、パラメータ調整を行う点で、実施形態1に係る制御装置2と異なる。
【0092】
以下では、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0093】
図12に示すように、制御装置2Bは、入力指令であるモータトルク指令rに対して制御対象P1の出力値を負帰還するフィードバックループ部330を有する。フィードバックループ部330は、制御器350と、パラメータ調整部340とを有する。
【0094】
制御器350は、バンドパスフィルタ機能51と位相補償機能52と振幅調整機能53とを有する補償部310を有する。
【0095】
補償部310は、以下の(3)式によって決まる伝達特性を有する。なお、ωPは中心角周波数、ζは減衰比である。
【0096】
また、(3)式の左辺の分母を、以下の(4)式によって置き換え、分母を、以下の(5)及び(6)式によって置き換えて、微分要素sについて項分けすると、(3)式の右辺に示すように表すことができる。
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【数6】
前記(3)式は全体としてバンドパスフィルタ機能51、位相補償機能52及び振幅調整機能53を実現する。
【0101】
また、前記(3)式の右辺は、sの2次の項と、sの1次の項とを含む。これらの2項は並列接続的要素である。
【0102】
sの2次の項は、可変ゲインk
1を係数として含む。可変ゲインk
1とそれ以外のa
1s
2/H
2の部分とは、直列接続的要素である。
図12に示すパラメータ調整部340の添え字iは、i=1,2である。なお、可変ゲインk
1及びk
2は、パラメータ調整部340によって生成される。パラメータ調整部340は、2つの可変ゲインk
1及びk
2を出力する以外は、実施形態1のパラメータ調整部40と同様である。すなわち、パラメータ調整部340は、偏差eと、後述する2次要素311を介した信号ξ
1とを入力として、可変ゲインk
1を生成する。また、パラメータ調整部340は、偏差e及び後述する1次要素312を介した信号ξ
2が入力されることにより、可変ゲインk
2を生成する。
【0103】
なお、可変ゲインk1=1且つk2=1の場合、前記(3)式で示される制御器350の補償部310の伝達特性は、従来の制御器の伝達特性と同じになる。
【0104】
前記伝達特性をブロック図で示すと、
図12に示す通りである。すなわち、制御対象P1の出力は、制御器350の2次要素311(a
1s
2/H
2)と、1次要素312(a
2s/H
2)とに対して並列的に接続される。また、2次要素311と、第1可変ゲイン要素313(k
1)とは直列的に接続される。1次要素312と、第2可変ゲイン要素314(k
2)とは直列的に接続される。さらに、第1可変ゲイン要素313の出力と、第2可変ゲイン要素314の出力とが加え合わされた値が補償部310の最終的な出力となる。すなわち、補償部310の最終的な出力が、制御器350の出力である。制御器350は、補償部310の前記最終的な出力をモータトルク指令rに対して負帰還する。
【0105】
なお、フィードバックループ部330には、ループ構造の観点から見れば、2つのループが含まれるが、いずれも1つの振動モードの共振周波数における振動を抑制するように構成されたループであるため1群のループとみなすことができる。
【0106】
以上に説明した通り、制御装置2Bの制御器350は、バンドパスフィルタ機能51と位相補償機能52と振幅調整機能53とを有する補償部310を有する。制御装置2Bのパラメータ調整部340は、補償部310の伝達関数のパラメータを調整する。すなわち、パラメータ調整部340は、制御器350の伝達関数のパラメータを調整する。
【0107】
これにより、従来技術のバンドパスフィルタ機能と位相補償機能と振幅調整機能とを含む制御器の伝達関数のパラメータを可変にした簡単な構成により、モデル化誤差を補正できる制御装置2Bが得られる。
【0108】
また、パラメータ調整部340は、前記伝達関数の微分要素の次数に応じてパラメータを調整する。
【0109】
これにより、制御対象P1の伝達関数に合わせたパラメータの調整ができる。よって、モデル化誤差に対応できる。
【0110】
[実施形態4]
図13は、実施形態4に係る制御装置2C(共振抑制制御装置)の詳細構成を示す機能ブロック図である。実施形態4に係る制御装置2Cは、制御対象P2の2つの振動モードの共振周波数における振動を抑制するように構成されている点で、実施形態3に係る制御装置2Bと異なる。
【0111】
以下では、実施形態3と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態3と異なる部分についてのみ説明する。
【0112】
図13に示すように、制御装置2Cは、入力指令であるモータトルク指令rに対して制御対象P2の出力値を負帰還する複数のフィードバックループ部430A,430Bを有する。
【0113】
複数のフィードバックループ部430A,430Bは、それぞれ、各振動モードの共振周波数における振動を抑制するように構成されている。
【0114】
なお、複数のフィードバックループ部430A,430Bには、それぞれ、ループ構造の観点から見れば、2つのループが含まれるが、上述した理由から、同じ振動モードに対応する1群のループとみなすことができる。
【0115】
フィードバックループ部430Aは、制御器450Aと、パラメータ調整部440Aとを有する。フィードバックループ部430Bは、制御器450Bと、パラメータ調整部440Bとを有する。
【0116】
パラメータ調整部440Aの添え字iは、i=11,12であり、パラメータ調整部440Bの添え字jは、j=21,22である。パラメータ調整部440A、440Bの構成は、上述した実施形態3のパラメータ調整部340の構成と同様である。
【0117】
制御器450A,450Bは、それぞれ、バンドパスフィルタ機能51と位相補償機能52と振幅調整機能53とを有する補償部410A,410Bを有する。
【0118】
補償部410A,410Bは、それぞれ、固有のパラメータを有している以外は、実施形態3の補償部310と同様である。
【0119】
補償部410A,410Bは、2次要素411A,411Bと、1次要素412A,412Bと、第1可変ゲイン要素413A,413Bと、第2可変ゲイン要素414A,414Bとを有する。これらの伝達特性をブロック図で示すと、
図13に示す通りである。上述の通り、それぞれ、固有のパラメータを有している以外は、実施形態3の補償部310における構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0120】
なお、可変ゲインk11=1且つk12=1の場合、制御器450Aの伝達特性は、従来の制御器の伝達特性と同じになる。また、可変ゲインk21=1且つk22=1の場合、制御器450Bの伝達特性は、従来の制御器の伝達特性と同じになる。
【0121】
(シミュレーション2)
図5~
図9に加えて、
図14~
図19を用いて、実施形態4に係る制御装置2Cの効果を説明する。
図14は、1次共振の周波数に誤差を有する場合の比較例の時間応答の一例を示すグラフである。
図15は、むだ時間を前記所定の推定値と推定した制御対象P2において、実施形態4のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
図16は、実際のむだ時間が前記所定の推定値より大きい制御対象P2において、実施形態4のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
図17は、1次共振の周波数に誤差を有する制御対象P2において、実施形態4のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
図18は、設計に用いた制御対象の周波数特性と、モデル化誤差を有する場合の制御対象P2の周波数特性とを示すボード線図である。
図19は、減衰比のモデル化誤差を有する制御対象P2において、実施形態4のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【0122】
実施形態4に係る制御装置2Cの効果を、前述の比較例に係る制御装置2000と比較して、以下のとおり確認した。すなわち、制御装置2000は、実施形態4のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行わない。制御装置2000の構成は、
図7に示したとおりである。制御装置2000の周波数特性は、
図5及び
図6に示したとおりである。
【0123】
また、むだ時間が推定通りの場合、上述した通り、比較例に係る制御装置2000は、
図8に示すように、ある程度振動抑制を抑制している。
【0124】
一方、むだ時間の推定値からの誤差がある場合、上述した通り、比較例に係る制御装置2000は、
図9に示すように、1次共振R1の振動を抑制できていない。
【0125】
さらに、1次共振R1の周波数に誤差を有する場合も、比較例に係る制御装置2000は、
図14に示すように、1次共振R1の振動を抑制できていないことが確認できる。
【0126】
これに対して、実施形態4に係る制御装置2Cにおいて、むだ時間を前記所定の推定値と推定した制御対象P2について、同様にシミュレーションを実施した。その結果、
図15に示すように、制御によって1次共振R1及び2次共振R2の振動を抑制できている。さらに言えば、
図8と
図15とを比較すると、
図8では、1次共振R1のピークが補助線L11のレベルであったのに対して、
図15では、1次共振R1のピークは、
図8に示した補助線L11のレベルよりも低い補助線L31のレベルに抑えられている。また、
図8では、2次共振R2のピークが補助線L13のレベルであったのに対して、
図15では、2次共振R2のピークは、
図8に示した補助線L13のレベルよりも低い補助線L33のレベルに抑えられている。
【0127】
すなわち、実施形態4に係る制御装置2Cのほうが、比較例に係る制御装置2000よりも、1次共振及び2次共振の振動をより抑制できている。これは、制御装置2Cの適応制御により推定誤差の影響を低減できているためと推察される。
【0128】
また、むだ時間が前記所定の推定値よりも大きい場合及び1次共振R1の周波数に誤差を有する場合のシミュレーション結果においても、実施形態4に係る制御装置2Cのほうが、比較例に係る制御装置2000よりも、1次共振及び2次共振の振動をより抑制できていることが確認できた。
【0129】
すなわち、むだ時間が前記所定の推定値よりも大きい場合の結果は、
図9と
図16とを比較して、1次共振R1の周波数に誤差を有する場合の結果は、
図14と
図17とを比較して、実施形態4に係る制御装置2Cのほうが、比較例に係る制御装置2000よりも、1次共振及び2次共振の振動をより抑制できている。
【0130】
また、実施形態4に係る制御装置2Cは、共振周波数と減衰比のモデル化誤差にも同時に対応できていることをシミュレーションによって確認した。
【0131】
図18に示すように、制御対象は、2つの振動モードを有している。設計に用いた制御対象の周波数特性のグラフ(実線)と、減衰比のモデル化誤差を有する場合の制御対象の周波数特性のグラフ(破線)とを比べると、1次共振の共振周波数と、減衰比とにモデル化誤差が含まれる。これにより、設計に用いた制御対象の周波数特性のグラフ(実線)と、減衰比のモデル化誤差を有する場合の制御対象の周波数特性のグラフ(破線)とを比べると、1次共振の周波数、ゲイン及び位相に相違がある。
【0132】
制御装置2Cでは、
図19に示すように、上述のような1次共振に相違があったとしても、制御によって1次共振R1及び2次共振R2の振動を抑制できている。
【0133】
以上に説明した通り、制御装置2Cは、複数のフィードバックループ部430A,430Bを備える。複数のフィードバックループ部430A,430Bが有する制御器450A,450Bは、バンドパスフィルタ機能51と位相補償機能52と振幅調整機能53とを有する補償部410A,410Bを有する。
【0134】
複数のフィードバックループ部430A,430Bそれぞれの前記バンドパスフィルタ機能を含む補償部410A,410Bは、制御対象P2が有する複数の振動モードから一部の振動モードを抽出する。
【0135】
上述の構成では、複数のフィードバックループ部430A,430Bそれぞれの前記バンドパスフィルタによって、制御対象P2の複数の振動モードから一部の振動モードが抽出される。このため、複数のフィードバックループ部430A,430Bそれぞれによって、抽出された振動モードに対して、位相補償機能52による位相補償と振幅調整機能53による振幅調整とが行われる。
【0136】
よって、制御対象P2の複数の振動モードの共振周波数における振動を抑制することができる。
【0137】
[実施形態5]
図20は、実施形態5に係る制御装置2D(共振抑制制御装置)の概略構成を示す機能ブロック図である。
図21は、実施形態5に係る制御装置2D(共振抑制制御装置)の詳細構成を示す機能ブロック図である。実施形態5に係る制御装置2Dは、1次要素及び2次要素だけでなく、3次要素を有する点で、実施形態4に係る制御装置2Cと異なる。
【0138】
また、実施形態5に係る制御装置2Dの制御器550A,550Bにおける補償部510A,510Bは、実施形態1,2,3,4に係る制御装置2,2A,2B,2Cの制御器(バンドパスフィルタ機能,位相補償機能,振幅調整機能)をより効果的に動作させるように、一部の振動モードを抽出するフィルタ機能55と、抽出した振動モードの減衰比を調整する減衰比調整機能56とを有する点で、実施形態1~4に係る制御装置2~2Cと異なる。フィルタ機能55及び減衰比調整機能56については、特許文献:特開2017-182178号公報の内容と同様であるため、説明は省略する。
【0139】
以下では、実施形態4と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態4と異なる部分についてのみ説明する。
【0140】
図20及び
図21に示すように、制御装置2Dは、入力指令であるモータトルク指令rに対して制御対象P2の出力値を負帰還する複数のフィードバックループ部530A,530Bを有する。
【0141】
複数のフィードバックループ部530A,530Bは、それぞれ、各振動モードの共振周波数における振動を抑制するように構成されている。すなわち、フィードバックループ部530Aは、制御対象P2が有する1次の振動モードにおける振動を抑制するように構成されている。フィードバックループ部530Bは、制御対象P2が有する2次の振動モードにおける振動を抑制するように構成されている。
【0142】
なお、複数のフィードバックループ部530A,530Bには、それぞれ、ループ構造の観点から見れば、3つのループが含まれるが、上述した理由から、同じ振動モードに対応する1群のループとみなすことができる。
【0143】
フィードバックループ部530Aは、制御器550Aと、パラメータ調整部540Aとを有する。フィードバックループ部530Bは、制御器550Bと、パラメータ調整部540Bとを有する。
【0144】
図21に示すパラメータ調整部540Aの添え字iは、i=11,12,13であり、パラメータ調整部540Bの添え字jは、j=21,22,23である。パラメータ調整部540A、540Bの構成は、上述した実施形態4のパラメータ調整部440A、440Bの構成と同様である。
【0145】
制御器550A,550Bは、それぞれ、補償部510A,510Bを有する。補償部510A,510Bは、それぞれ、フィルタ機能55と、減衰比調整機能56とを有する。フィルタ機能55は、一部の振動モードを抽出する点で、バンドパスフィルタ機能51と共通する。減衰比調整機能56は、位相補償機能52と振幅調整機能53とを含む。すなわち、制御器550A,550Bは、それぞれ、一部の振動モードを抽出するフィルタ機能と位相補償機能と振幅調整機能とを有する。
【0146】
補償部510A,510Bは、3次要素511A(a11s3/H3),511B(a21s3/H3)と、2次要素512A(a12s2/H3),512B(a22s2/H3)と、1次要素513A(a13s/H3),513B(a23s/H3)と、第1可変ゲイン要素514A(k11),514Bと、第2可変ゲイン要素515A(k12),515Bと第3可変ゲイン要素516A(k13),516Bとを有する。
【0147】
ここで、a11=KD1ωd
2
、a12=2KD1ζ2ωn2ωd
2、a13=KD1ωn2
2ωd
2、a21=KD2ωd
2、a22=2KD2ζ1ωn1ωd
2、a23=KD2ωn1
2ωd
2である。ζ1は、1次共振の減衰比、ωn1は、1次共振の共振角周波数、ζ2は、2次共振の減衰比、ωn2は、2次共振の共振角周波数、KD1及びKD2は、減衰比を調整するための係数である。また、H31は、特許文献:特開2017-182178号公報の(14)式の分母を用いて、プロパな関数になるようH31=k2ωn2
2(s2+2ζdωds+ωd
2)(Ts+1)、H32=k1ωn1
2(s2+2ζdωds+ωd
2)(Ts+1)とすればよい。ここで、Tは2次共振の周波数以上の時定数とすればよい。また、ここではH31,H32を3次のものとしたが、3次より大きければよい。
【0148】
補償部510A,510Bは、制御対象P2の2つの振動モードを抽出可能なように、特許文献:特開2017-182178号公報に記載の逆関数のフィルタを用いる。すなわち、補償部510Aは、制御対象P2で生じる1次の振動モードを抽出するため、2次の振動モードの伝達特性を表す関数の逆関数のフィルタを用いる。また、補償部510Aは、制御対象P2で生じる2次の振動モードを抽出するため、1次の振動モードの伝達特性を表す関数の逆関数のフィルタを用いる。
【0149】
前記伝達特性をブロック図で示すと、
図21に示す通りである。すなわち、制御対象P2の出力は、制御器550Aの3次要素511A、2次要素512A、1次要素513Aと、制御器550Bの3次要素511B、2次要素512B、1次要素513Bと、に対して並列的に接続される。
【0150】
また、補償部510Aでは、3次要素511Aは、第1可変ゲイン要素514Aと直列的に接続される。2次要素512Aは、第2可変ゲイン要素515Aと直列的に接続される。1次要素513Aは、第3可変ゲイン要素516Aと直列的に接続される。
【0151】
また、第1可変ゲイン要素514Aの出力と、第2可変ゲイン要素515Aの出力と、第3可変ゲイン要素516Aの出力とが加え合わされた値が補償部510Aの最終的な出力となる。すなわち、補償部510Aの最終的な出力が、制御器550Aの出力である。制御器550Aは、補償部510Aの前記最終的な出力をモータトルク指令rに対して負帰還する。
【0152】
補償部510Bの構成については、補償部510Aと同様であるので、その説明を省略する。
【0153】
なお、各可変ゲインの値が1の場合、制御装置2Dの伝達特性は、上述の特許文献:特開2017-182178号公報に記載の制御器の伝達特性と同じになる。
【0154】
(シミュレーション3)
図22~
図24を用いて、実施形態5に係る制御装置2Dの効果を説明する。
図22は、設計に用いた制御対象の周波数特性と、モデル化誤差を有する場合の制御対象の周波数特性とを示すボード線図である。
図23は、モデル化誤差を有さない制御対象P2において、実施形態5のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
図24は、モデル化誤差を有する制御対象P2において、実施形態5のようなパラメータを調整する振動抑制制御を行う場合の時間応答の一例を示すグラフである。
【0155】
図22に示すように、モデル化誤差を有する制御対象P2では、共振周波数等が、設計に用いた制御対象P2とは異なる。
【0156】
図23と
図24とを比較すると、モデル化誤差の有りの場合と、モデル化誤差の無しの場合との間で、ほとんど、制御装置2Dの振動抑制効果に差がない。
【0157】
よって、モデル化誤差の影響を受けにくい制御装置2Dが得られる。
【0158】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【0159】
前記各実施形態では、制御装置2,2A,2B,2C,2Dは、制御対象P1,P2の振動モードに対応して、1つ又は2つのフィードバックループ部を有する。しかしながら、制御装置は、3つ以上のフィードバックループ部を有していてもよい。この場合には、複数のフィードバックループ部に対し、トルク検出器の出力値において通過する信号の帯域が異なるのが好ましい。
【0160】
前記各実施形態において、制御装置2,2A,2B,2C,2Dは、サーボ制御やフィードフォワード制御などの他の制御を行ってもよい。また、制御装置2,2A,2B,2C,2Dは、むだ時間制御などを行ってもよい。
【0161】
前記各実施形態では、制御対象P1,P2は、モータ駆動回路3、電動モータ4及びトルク検出器5を含む。しかしながら、制御対象は、他の構成を含んでいてもよいし、他の構成を有する軸系を含んでいてもよい。
【0162】
前記各実施形態では、制御装置2,2A,2B,2C,2Dのフィードバックループ部30,230A,230B,330,430A,430B,530A,530Bは、バンドパスフィルタと、位相補償と、振幅調整との機能を有する。しかしながら、制御装置のフィードバックループ部は、他の構成を含んでいてもよい。
【0163】
前記各実施形態では、パラメータ調整部40,240A,240B,340,440A,440B,540A,540Bが、偏差eと、信号ξ1,ξ2,ξ11,ξ12,ξ13,ξ21,ξ22,ξ23とに基づいて、可変ゲインk1,k2,k11,k12,k13,k21,k22,k23を生成する。これによって、パラメータ調整部40,240A,240B,340,440A,440B,540A,540Bは、パラメータを調整する。しかしながら、パラメータ調整部は、初期値を1に調整し、その後、上述の偏差と信号とに基づくパラメータ調整を行ってもよい。初期値を1に調整することで、制御開始時の制御器の伝達特性を、従来の制御器の伝達特性と同じにできる。このため、制御開始時の伝達特性が予測可能なものとなる。また、制御装置は、パラメータ調整を行う制御と、可変ゲインを所定の値、例えば1に固定する制御とを切り替え可能に構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、制御対象の共振周波数における振動の抑制制御を行う共振抑制制御装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0165】
1 試験装置
2、2A、2B、2C、2D 制御装置(共振抑制制御装置)
3 モータ駆動回路
4 電動モータ
5 トルク検出器
20 規範モデル
30、230A、230B、330、430A、430B、530A、530B フィードバックループ部
40、240A、240B、340、440A、440B、540A、540B パラメータ調整部
50、250A、250B、350、450A、450B、550A、550B 制御器
51 バンドパスフィルタ機能
52 位相補償機能
53 振幅調整機能
111 1次要素
112 0次要素
113 可変ゲイン要素
110、210A、210B、310、410A、410B、510A、510B 補償部
151、251A、251B バンドパスフィルタ
213A、213B 可変ゲイン要素
311 2次要素
312 1次要素
313 第1可変ゲイン要素
314 第2可変ゲイン要素
411A、411B 2次要素
412A、412B 1次要素
413A、413B 第1可変ゲイン要素
414A、414B 第2可変ゲイン要素
511A、511B 3次要素
512A、512B 2次要素
513A、513B 1次要素
514A、514B 第1可変ゲイン要素
515A、515B 第2可変ゲイン要素
516A、516B 第3可変ゲイン要素
M 供試体
P1、P2 制御対象
R1 1次共振
R2 2次共振