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特開2024-98598赤身魚肉の加工方法及び当該加工方法により加工された赤身魚肉
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  • 特開-赤身魚肉の加工方法及び当該加工方法により加工された赤身魚肉 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098598
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】赤身魚肉の加工方法及び当該加工方法により加工された赤身魚肉
(51)【国際特許分類】
   A23B 4/06 20060101AFI20240717BHJP
   A23L 17/00 20160101ALI20240717BHJP
   A23B 4/08 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A23B4/06 501B
A23L17/00 A
A23B4/08 A
A23B4/06 501E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002174
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】521107518
【氏名又は名称】澤野 裕
(71)【出願人】
【識別番号】521475808
【氏名又は名称】山城 信行
(71)【出願人】
【識別番号】521475819
【氏名又は名称】澤野 輝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【弁理士】
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】澤野 裕
(72)【発明者】
【氏名】山城 信行
(72)【発明者】
【氏名】澤野 輝夫
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC02
4B042AD39
4B042AE03
4B042AG30
4B042AH01
4B042AK01
4B042AP06
4B042AP18
4B042AP21
4B042AP30
(57)【要約】
【課題】生の状態の赤身魚肉に対して、その赤色の鮮明さを保った状態で保存することが可能な赤身魚肉の加工方法を提供すること。
【解決手段】以下の工程を順次行う赤身魚肉の加工方法Aであって、生の状態の赤身魚肉を切断し切身魚肉F1とする切断工程S1と、切身魚肉F1を冷蔵し冷蔵魚肉F2とする冷蔵工程S2と、冷蔵魚肉F2を酸素雰囲気下で加圧し加圧魚肉F3とする加圧工程S3と、加圧魚肉F3を、再度冷蔵して再冷蔵魚肉F4とする再冷蔵工程S4と、再冷蔵魚肉F4を、真空密封して真空魚肉F5とする真空化工程S5と、真空魚肉F5を、冷凍して冷凍魚肉F6とする冷凍工程S6と、を有する赤身魚肉の加工方法A。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を順次行う赤身魚肉の加工方法であって、
生の状態の前記赤身魚肉を切断し切身魚肉とする切断工程と、
前記切身魚肉を冷蔵し冷蔵魚肉とする冷蔵工程と、
前記冷蔵魚肉を酸素雰囲気下で加圧し加圧魚肉とする加圧工程と、
前記加圧魚肉を、再度冷蔵して再冷蔵魚肉とする再冷蔵工程と、
前記再冷蔵魚肉を、真空密封して真空魚肉とする真空化工程と、
前記真空魚肉を、冷凍して冷凍魚肉とする冷凍工程と、
を有する赤身魚肉の加工方法。
【請求項2】
前記冷蔵工程が、冷蔵温度で3~4℃で、少なくとも2時間以上行われるものである請求項1記載の赤身魚肉の加工方法。
【請求項3】
前記加圧工程により、前記冷蔵魚肉からその重量の5~15%の重量の水分が排出されるものである請求項1記載の赤身魚肉の加工方法。
【請求項4】
前記加圧工程が、1.5~4.0hpaで行われるものである請求項1記載の赤身魚肉の加工方法。
【請求項5】
前記冷凍工程が、-50~-45℃で行われるものである請求項1記載の赤身魚肉の加工方法。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載の赤身魚肉の加工方法により加工された赤身魚肉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤身魚肉の加工方法に関し、更に詳しくは、生の状態の赤身魚肉を、その赤色を維持して保存することが可能となる赤身魚肉の加工方法、及び当該加工方法により加工された赤身魚肉に関する。
【背景技術】
【0002】
マグロをはじめとする赤身魚肉は、食用として人気があり広く利用されている。
この赤身魚肉は、流通上、冷凍加工されて保存及び輸送されることが一般的である。そのため、種々の冷凍方法が開発されている。
例えば、特許文献1の魚体の凍結方法は、冷凍を行う際のエネルギー効率を向上させるため、魚体を網状体内に収納し、金属製の凍結パンに載置して凍結させるというものである。
【0003】
また、赤身魚肉はその色合いが品質として評価されるところ、この色合いを改善するための凍結方法が開発されている。(特許文献2)
これは、冷凍された赤身魚肉を外周側から加温して当該赤身魚肉の表面を解凍する表面解凍化工程と、再度赤身魚肉を凍結させる再冷凍工程とを有するものである。
【0004】
さらに赤身魚肉においては、冷凍及び解凍の工程において、ドリップ(水分)が流出し品質の低下の原因となるところ、これを抑制する処理方法が開発されている(特許文献3)。
これは、魚肉表面を冷風により乾燥した後、当該魚肉を食塩水に浸漬することによって表面をゲル化する処理方法である。
【0005】
ところで、赤身魚肉の材料となる魚が遠洋漁業で収獲される場合、その収穫に使われる船舶は、大型で冷凍設備を備えていることが一般的である。
収獲された魚は、船上で冷凍されて陸に水揚げされる。
一方で、近海漁業や養殖等による場合、水揚げの段階の魚は冷凍されていない生の状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-120492号公報
【特許文献2】特開2015-65831号公報
【特許文献3】国際公開第2009/19960号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の通り、赤身魚肉は冷凍して保存されることが一般的であり、食用に供するためには前もって解凍する必要がある。
この解凍の際に赤身魚肉の鮮明さが維持できず、くすんだ色となってしまう場合がある。
赤身魚肉は赤色が鮮明であるほど品質が良いと評価されるものであり、くすんだ色となってしまった赤身魚肉は品質が低下したものとされる。
ちなみに、赤身魚肉が赤色を呈するのは魚肉中の色素が酸素と結合することによるものである。
赤身魚肉が解凍の際に変色してしまうのは、この酸素が色素から分離してしまうことが原因である。
【0008】
ところで、前述の特許文献1の凍結方法においては、赤身魚肉の変色やドリップの流出についての考慮はされていない。
一方、特許文献2の凍結方法においては、表面解凍化工程で赤身魚肉の表面に温風を吹き付けており、必然的に赤身魚肉が加温されることによって変質し、赤色の鮮明さが失われ、品質の低下は免れない。
特許文献3の魚肉処理方法においては、魚肉の表面を乾燥し食塩水に浸漬することによりゲル化させるものであるから、必然的に魚肉の表面は変質し、赤色の鮮明さが失われてしまう。
したがって、この場合も品質の低下は避けられない。
【0009】
また、冷凍された状態で陸に水揚げされる魚肉と、生の状態で陸に水揚げされる魚肉とでは、出発材料が異なるため、同じ加工方法を適用することは困難である。
【0010】
本発明は、上述の課題を受けて開発されたものである。
すなわち、本発明は生の状態の赤身魚肉に対して、その赤色の鮮明さを保った状態で保存することが可能な赤身魚肉の加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は鋭意検討の結果、生の状態の赤身魚肉を酸素雰囲気下で加圧した後に冷凍することで、上記課題を解決可能であることを見出した。
本発明はこの知見に基づく。
【0012】
本発明は、以下の工程を順次行う赤身魚肉の加工方法Aであって、生の状態の赤身魚肉を切断し切身魚肉F1とする切断工程S1と、切身魚肉F1を冷蔵し冷蔵魚肉F2とする冷蔵工程S2と、冷蔵魚肉F2を酸素雰囲気下で加圧し加圧魚肉F3とする加圧工程S3と、加圧魚肉F3を、再度冷蔵して再冷蔵魚肉F4とする再冷蔵工程S4と、再冷蔵魚肉F4を、真空密封して真空魚肉F5とする真空化工程S5と、真空魚肉F5を、冷凍して冷凍魚肉F6とする冷凍工程S6と、を有する赤身魚肉の加工方法Aに存する。
【0013】
本発明は、冷蔵工程S2が、冷蔵温度で3~4℃で、少なくとも2時間以上行われるものである上記記載の赤身魚肉の加工方法Aに存する。
【0014】
本発明は、加圧工程S3により、冷蔵魚肉F2からその重量の5~15%の重量の水分が排出されるものである上記記載の赤身魚肉の加工方法Aに存する。
【0015】
本発明は、加圧工程S3が、1.5~4.0hpaで行われるものである上記記載の赤身魚肉の加工方法Aに存する。
【0016】
本発明は、冷凍工程S6が、-50~-45℃で行われるものである上記記載の赤身魚肉の加工方法Aに存する。
【0017】
本発明は、上記記載の赤身魚肉の加工方法Aにより加工された赤身魚肉に存する。
【0018】
また本発明は、上記の構成を適宜組み合わせたものであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
赤身魚肉の加工方法Aにおいては、冷蔵工程S2を経た冷蔵魚肉F2を酸素雰囲気下で加圧し加圧魚肉F3とする加圧工程S3を有することにより、赤身魚肉の細胞内の色素と酸素が結合し、後続する工程を経ても赤身魚肉が鮮明な赤色の状態となり、赤身魚肉の品質を維持することができる。
また、赤身魚肉から水分が排出されるため、後続する冷凍工程S6において細胞内の水分が膨張した場合にも、赤身魚肉の細胞が傷つかず、品質が維持される。
【0020】
また、再冷蔵工程S4を経た再冷蔵魚肉F4を、真空密封して真空魚肉F5とする真空化工程S5を有することにより、赤身魚肉を長期にわたって保存することが可能となる。
【0021】
赤身魚肉の加工方法Aにおいては、冷蔵工程S2が、冷蔵温度で3~4℃で、少なくとも2時間以上行われるものであることにより、赤身魚肉の表面と中芯までがより均一に冷蔵され、細胞の状態を安定させることが可能となる。
これにより、均一な加工が可能となり赤身魚肉の品質が向上する。
【0022】
赤身魚肉の加工方法Aにおいては、加圧工程S3により、冷蔵魚肉F2からその重量の5~15%の重量の水分が排出されるものであることにより、後続する冷凍工程S6において赤身魚肉が冷凍魚肉F6とされた場合に、魚肉の細胞内の水分が凍結し、膨張しても細胞を破壊することがなく、赤身魚肉の品質を維持して保存することが可能となる。
【0023】
赤身魚肉の加工方法Aにおいては、加圧工程S3が、1.5~4.0hpaで行われるものであることにより、赤身魚肉の細胞内から水分及び老廃物をより適切に排出することが可能となる。
その結果、赤身魚肉の品質が向上する。
【0024】
赤身魚肉の加工方法Aにおいては、冷凍工程S6が、-50~-45℃で行われるものであることにより、赤身魚肉の表面と中芯までがより均一に冷凍され、長期にわたっての保存が可能となる。
【0025】
上記の加工方法により加工された赤身魚肉においては、長期の保存を行ったのちに食用のために解凍した場合にも、赤身魚肉が鮮明な赤色を呈し、品質を維持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、赤身魚肉の加工方法を示すフローチャートである。
図2図2は、赤身魚肉の細胞内の色素と酸素との関係を説明する模式図である。
図3図3は、赤身魚肉の細胞内の水分が氷となる状態を説明する模式図である。
図4図4は、加圧工程を示す説明図である。
図5図5は、真空化工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0028】
本発明の加工方法に用いられる赤身魚肉は、近海漁業や養殖等により得られるマグロ等の赤身魚肉である。遠洋漁業で収穫されるこれらの魚は、船上で一度冷凍されてから水揚げされるのに対し、一般に近海漁業や養殖等で収穫される魚は、生の状態のまま水揚げされる。
本発明の加工方法は、生の状態の赤身魚肉に対して行うものである。
【0029】
図1は、赤身魚肉の加工方法Aを示すフローチャートである。
本発明の赤身魚肉の加工方法Aは、生の状態の赤身魚肉を順次、切断工程S1、冷蔵工程S2、加圧工程S3、再冷蔵工程S4、真空化工程S5、冷凍工程S6を経ることにより加工する。
【0030】
(切断工程S1)
最初の切断工程S1においては、赤身魚肉を切断して切身魚肉F1とする。
すなわち水揚げされた魚は、血抜きされ、内蔵及びエラ、ヒレなどを除かれる。
そして当該赤身魚肉は、部位に応じてプレート状やサク状に切断され、切身魚肉F1とされる。
切身魚肉F1は、魚体の大きさや用途に応じて適宜の大きさとされるが、後述する冷蔵工程S2や冷凍工程S6において、赤身魚肉の中芯まで温度を下げ易くするため、厚みが1.9~2.2cm程であることが好ましい。
例えば16cm×5~7cm×2~2.2cmの厚板状(いわゆる「サク状」)とされる。この場合、切身魚肉F1の重さは、約190~200g程となる。
ちなみに、赤身魚肉の切断には、バンドソー等の切断工具を好適に用いることが可能である。
【0031】
(冷蔵工程S2)
冷蔵工程S2においては、前工程である切断工程S1を経た切身魚肉F1を冷蔵する。
冷蔵工程S2においては、切身魚肉F1を低温下で2時間以上保管することで冷蔵魚肉F2とする。
このとき、魚肉の細胞Sをより良い状態とする観点から、冷蔵する温度は3~4℃であることが好ましい。
冷蔵工程S2により、切身魚肉F1の表面から中芯までが一様に冷蔵され、魚肉を構成する細胞の状態が安定する。
これにより、後続する各工程において、魚肉の表面から中芯までを一様に加工することが可能となり、赤身魚肉の品質が向上する。
【0032】
(加圧工程S3)
最初に参考までに、赤身魚肉の冷凍及び解凍において、赤身魚肉が変色し、赤色の鮮明さが失われる機構について述べる。
図2は、赤身魚肉の細胞S内の色素Cと酸素Oとの関係を説明する模式図である。
赤身魚肉は、赤身魚肉の細胞Sの中に存在する色素Cが、酸素Oと結合することにより赤色を呈している。
この酸素Oが失われることが、赤身魚肉が変色する原因である。
赤身魚肉の色素Cは、酸素Oが少ない環境下においては酸素Oを外部に放出する。
したがって、酸素Oが多い環境下にして、赤身魚肉の細胞S内に十分に酸素Oを供給することで色素Cが酸素Oを失うことがない。
そのため赤身魚肉の変色を抑え赤色の鮮明さを保ち、赤身魚肉の品質を保つことが可能となる。
【0033】
図3は、赤身魚肉の細胞Sの中の水分が氷Iとなる状態を説明する模式図である。
赤身魚肉を構成する細胞Sの中には水分が含まれているところ、赤身魚肉を冷凍すると当該水分が氷Iとなり、結晶化する。
氷Iの結晶は鋭利な構造をしているため、赤身魚肉の細胞Sを傷つけ、品質低下の原因となる。
【0034】
また、魚類は哺乳類等と比較して、排泄機能が発達していないことから、細胞S内に多くの老廃物Dが残存している。
当該老廃物Dは、雑味等の原因となる。
さらに、かかる老廃物Dは酸素Oと結合するため、赤身魚肉の細胞Sの中の色素Cから酸素Oを奪い、変色の原因となる。
したがって、老廃物Dを除くことで赤身魚肉の変色を抑え、品質を向上させることができる。老廃物Dは細胞S内の水分中に存在しているため、細胞S内の水分を排出することで赤身魚肉の品質を向上させることが可能となる。
【0035】
図4は、加圧工程S3示す説明図である。
次に、加圧工程S3においては、前工程である冷蔵工程S2を経た冷蔵魚肉F2を冷蔵温度下において、酸素を供給する。
これにより、細胞内の色素Cと酸素Oが強固に結合し、赤身魚肉を食用のために解凍した場合にも、魚肉が鮮明な赤色を呈し、品質を維持することが可能となる。
また、加圧されることで赤身魚肉から水分が排出されるため、後に冷凍した場合に細胞内の水分が凍結して膨張し、細胞を傷つけてしまうようなことが防止される。
【0036】
具体的には、冷蔵工程S2を経た冷蔵魚肉F2を、密封可能な袋体1に入れた吸水シート2上に載置する。
さらに、袋体1内に酸素を注入し、加圧した状態で袋体1を封止することで、冷蔵魚肉F2を加圧魚肉F3とする。
このとき、細胞に十分な酸素を供給する観点から、袋体1の内部は酸素濃度が50%以上であり、1.0~6.0hpa程度の状態とすることが好ましく、酸素濃度が65%以上であり、1.5~4.0hpa程度の状態とすることがより好ましい。
ここで吸水シート2には、不織布等、適宜の素材を利用できる。
【0037】
冷蔵魚肉F2に酸素が供給されることで、冷蔵魚肉F2の細胞内の色素Cと酸素Oが結合し、鮮明な赤色を呈する。
また、冷蔵魚肉F2が加圧されることで、冷蔵魚肉F2内の細胞から水分と老廃物とが排出され、加圧魚肉F3となる。
これらにより、赤身魚肉の品質が向上するとともに、長期間の保存が可能となる。
【0038】
吸水シート2は、加圧工程S3により赤身魚肉から排出される水分を吸収する。
これにより、赤身魚肉から排出された水分及び当該水分に含まれる老廃物が赤身魚肉の細胞内に再吸収されることを極力防止することが可能となる。
その結果、赤身魚肉の品質が向上する。
【0039】
加圧工程S3において冷蔵魚肉F2から排出される水分の量は、冷蔵魚肉F2の5~15重量%であることが好ましい。
これにより、後述する冷凍工程S6において赤身魚肉が冷凍されても、赤身魚肉の細胞内の水分が膨張した場合にも、細胞が傷ついて赤身魚肉の品質が低下することを極力防止することができる。
【0040】
(再冷蔵工程S4)
再冷蔵工程S4においては、前工程である加圧工程S3を経た加圧魚肉F3を袋体1に入れた状態のまま、低温下で冷蔵し、再冷蔵魚肉F4とする。
再冷蔵の温度は魚肉中芯までの色素と酸素の結合性の観点から3~4℃であることが好ましい。
また、再冷蔵工程S4は、少なくとも3時間以上であることが好ましく、6~12時間程度行うことがより好ましい。
これにより、再冷蔵魚肉F4の中芯まで色素Cと酸素との結合が行われると同時に、再冷蔵魚肉F4の表面と中芯とが一様の温度となり、細胞の状態が安定する。
【0041】
(真空化工程S5)
真空化工程S5においては、前工程である再冷蔵工程S4を経た再冷蔵魚肉F4を、前述の袋体1とは別の密封袋体3に入れ直して収容し、その後、当該密封袋体3の内部を真空状態にすることで真空魚肉F5とする。
これにより、魚肉内の色素から酸素が離脱することを防止することが出来る。
また、赤身魚肉が外気に触れて変質することを防止することができ、長期の保存が可能となる。
【0042】
(冷凍工程S6)
冷凍工程S6においては、前工程である真空化工程S5を経た真空魚肉F5を、魚肉の中芯までの冷凍の観点から、その密封状態のまま-50~-45℃下で冷凍し、冷凍魚肉F6とする。このとき、少なくとも6時間以上冷凍することで、冷凍魚肉F6の表面と中芯とが一様に冷凍される。
冷凍工程S6により中芯まで冷凍されることで、冷凍魚肉F6を、例えば-20℃前後で約1か月間の冷凍保存を行った場合にも、十分に品質を維持することが可能となる。
具体的には、魚肉の乾燥が見られず、また食用のために解凍した場合にも、赤身魚肉が鮮明な赤色を呈する。
【0043】
以上の方法により加工された赤身魚肉は、解凍して食用とする。
このとき、冷蔵庫内での解凍、温水又は冷水に浸漬することによる解凍、又は常温下での解凍等、解凍の方法によらず赤身魚肉の色合いの鮮明さを維持することが可能である。そのため、消費者が冷凍状態で購入した後、容易に家庭で解凍することが可能となる。
また、加圧工程S3により赤身魚肉内の水分及び老廃物が排出されている状態であり、かつ赤身魚肉内の色素が酸素と強固に結合している状態であるため、再度冷凍したとしても、赤身魚肉の色合いを維持することが可能となる。
したがって、赤身魚肉の一部を利用し、残りを再度冷凍保存するといった利用方法に用いることも可能となる。
【0044】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0045】
加圧工程S3においては、酸素に加えて不活性化ガス等、赤身魚肉の品質維持・向上のための各種の食品添加用ガスを加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明の赤身魚肉の加工方法Aは、解凍方法によらず、赤身魚肉の赤色を維持することが可能であり、かつ、解凍後に再度冷凍しても赤身魚肉の変色を抑えることが可能であることから、マグロをはじめ種々の食用の魚肉に対して適用可能である。
また、本発明の加工方法Aにより加工された赤身魚肉は、家庭用及び業務用の食用として、広く供することが可能である。
【符号の説明】
【0047】
A・・・赤身魚肉の加工方法
S1・・・切断工程
S2・・・冷蔵工程
S3・・・加圧工程
S4・・・再冷蔵工程
S5・・・真空化工程
S6・・・冷凍工程
F1・・・切身魚肉
F2・・・冷蔵魚肉
F3・・・加圧魚肉
F4・・・再冷蔵魚肉
F5・・・真空魚肉
F6・・・冷凍魚肉
1・・・袋体
2・・・吸水シート
3・・・密封袋体
S・・・細胞
O・・・酸素
C・・・色素
I・・・氷
D・・・老廃物
図1
図2
図3
図4
図5