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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098601
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】ペグ用固定具
(51)【国際特許分類】
   E04H 15/62 20060101AFI20240717BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20240717BHJP
   E02D 27/14 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
E04H15/62 A
E02D5/80
E02D27/14
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002182
(22)【出願日】2023-01-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-11-10
(71)【出願人】
【識別番号】301037512
【氏名又は名称】伊藤組土建株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】西岡 誠
【テーマコード(参考)】
2D041
2D046
2E141
【Fターム(参考)】
2D041GA01
2D041GC12
2D046CA06
2E141FF01
(57)【要約】
【課題】 ロープ等の支持部材を地面に強力に固定できるとともに、ペグを打ち込む角度の変更が可能で、かつペグを打ち込むときの振動を他のペグに伝え難くすることのできる、ペグ用固定具を提供する。
【解決手段】 地面Fの所定位置に固定されるブロック状の固定具本体2と、固定具本体2に支持部材Rを連結するための連結部3と、固定具本体2の外周縁に貫通するように形成された複数個のペグ挿入孔4とを有しており、各ペグ挿入孔4は、地面Fに固定される固定具本体2の上下方向に対して傾斜されて形成されているとともに、ペグ挿入孔4の中間位置の内径L1が挿入されるペグPの外径より大きく形成され、かつ、ペグ挿入孔4の入口および出口の内径L2が中間位置の内径L1より大径に形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テント等の簡易構造物を支持するロープ等の支持部材をペグにより地面に固定するためのペグ用固定具であって、
地面の所定位置に固定されるブロック状の固定具本体と、
前記固定具本体に前記支持部材を連結するための連結部と、
前記固定具本体の外周縁に貫通するように形成された複数個のペグ挿入孔と
を有しており、
前記各ペグ挿入孔は、地面に固定される前記固定具本体の上下方向に対して傾斜されて形成されているとともに、前記ペグ挿入孔の中間位置の内径が挿入されるペグの外径より大きく形成され、かつ、前記ペグ挿入孔の入口および出口の内径が前記中間位置の内径より大径に形成されている、前記ペグ用固定具。
【請求項2】
前記各ペグ挿入孔は、当該ペグ挿入孔の中心軸を通る断面において内周面を表す輪郭線が前記入口から前記出口にかけて前記中間位置を内側に膨出させた凸形曲面状に形成されている、請求項1に記載のペグ用固定具。
【請求項3】
前記各ペグ挿入孔の前記入口側の孔周縁部および前記出口側の孔周縁部の内側略半分がそれぞれ前記固定具本体の上面および下面と同一面に形成されているとともに、前記各ペグ挿入孔の前記入口側の孔周縁部および前記出口側の孔周縁部の外側略半分が前記ペグ挿入孔の中心軸に対して直交する直交面として形成されており、前記直交面を含む前記固定具本体の一部が前記固定具本体の前記上面および前記下面よりも上方および下方に突出する突出部として形成されている、請求項1または請求項2のいずれかに記載のペグ用固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テント等の簡易構造物を支持する支持部材をペグにより地面に固定するためのペグ用固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、アウトドアブームにより、老若男女問わずキャンプ場でテントやタープを設営し、キャンプを楽しむ人が増えている。また、テントは、災害時の避難場所として用いられることもある。
【0003】
テント等は、設営や撤収が容易な簡易的な構造物であり、一般的な建築物等と異なりコンクリート基礎等によって地面に固定されておらず、地面に置かれているだけであるため風で飛ばされてしまうことがある。そこでテント等は、風で飛ばされないようにガイドロープ等の支持部材によって地面に固定される。このときガイドロープ等を地面に固定する方法の一つとして、ペグと呼ばれる杭が用いられる。
【0004】
一般的なテント用のペグは、先端が尖った棒状部材であり、上端にはロープを係止するための切り欠き、フック、孔等が形成されている。全体の長さは、10cm~50cm程度であり、これをハンマーなどで地面に打ち込むことで地面に固定される。
【0005】
ただし、地面と打ち込まれたペグとの間の摩擦抵抗力が弱いと、強風や突風等により抜けてしまうことがある。抜けたペグが飛散すると危険であるし、テントが潰れて人身事故に至ることもある。このような事故を回避するためには、ロープの本数を増やしてペグによる固定箇所を増やしたり、あるいは長大なペグを土中深く打ち込んで抵抗力を高める必要がある。しかしながら、ロープの本数を増やすとテント周辺の空きスペースが減ってしまって不便であるし、長大なペグの打ち込みは負担が大きく誰にでもできる作業ではない。
【0006】
このような問題に対し、特開2012-82673号公報では、テント支柱受台に複数の斜めの貫通穴を設けたテント用アンカーに関する発明が開示されている(特許文献1)。この特許文献1によれば、ペグを引抜く力はペグと土との粘着力で決まり、この粘着力以上の引抜力が作用するとペグは抜けてしまうが、当該発明では複数本のペグを斜めに地中に打ち込むことで上下方向の抗力が発生し、地盤が崩れるまではペグは抜けず、従来のペグに比べて大きな抗力を発揮することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-82673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された発明においては、ペグを挿通させる貫通穴の内径が入口から出口まで一定であり、ペグを打ち込める角度に融通が利かず、角度調整ができない構造となっている。このため、打ち込んだ先に石などの障害物があるとそれ以上打ち込めなくなるという問題がある。このため、例えば特許文献1に記載のアンカーのように複数本のペグを打ち込む場合、1本が無事に打ち込めたとしても、2本目以降のペグの打ち込み先に障害物があると、これを回避することができず、それまで打ち込まれたペグを抜いて位置を変更し、改めてペグを打ち込み直す必要が生じる。このような作業のやり直しは極めて不便であり、実用性を欠く。
【0009】
また、障害物や固い地盤に対してうっかりペグを打ち込むとペグの先端側が曲がってしまい貫通穴から抜けなくなり、当該アンカー自体が使えなくなるという問題も生じる。
【0010】
さらに、複数本のペグで地面に固定する場合、貫通穴との隙間に余裕がないためペグを打ち込む振動がアンカーを介して先に打ち込まれているペグに伝わり、当該ペグから地盤へと伝わって地盤を崩してしまうという問題がある。地盤が崩れると、ペグと地盤との間に隙間ができて抜けやすくなったり、地盤(土壌)ごと抜けることもある。
【0011】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、ロープ等の支持部材を地面に強力に固定できるとともに、ペグを打ち込む角度の変更が可能で、かつペグを打ち込むときの振動を他のペグに伝え難くすることのできる、ペグ用固定具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係るペグ用固定具は、ロープ等の支持部材を地面に強力に固定するとともに、ペグの打ち込み角度を360度の方向に変更を可能とするという課題を解決するために、テント等の簡易構造物を支持するロープ等の支持部材をペグにより地面に固定するためのペグ用固定具であって、地面の所定位置に固定されるブロック状の固定具本体と、前記固定具本体に前記支持部材を連結するための連結部と、前記固定具本体の外周縁に貫通するように形成された複数個のペグ挿入孔とを有しており、前記各ペグ挿入孔は、地面に固定される前記固定具本体の上下方向に対して傾斜されて形成されているとともに、前記ペグ挿入孔の中間位置の内径が挿入されるペグの外径より大きく形成され、かつ、前記ペグ挿入孔の入口および出口の内径が前記中間位置の内径より大径に形成されている。
【0013】
また、本発明の一態様として、ペグとペグ挿入孔との接触面積を減らし、ペグを打ち込むときの振動を他のペグに伝え難くするという課題を解決するために、前記各ペグ挿入孔は、当該ペグ挿入孔の中心軸を通る断面において内周面を表す輪郭線が前記入口から前記出口にかけて前記中間位置を内側に膨出させた凸形曲面状に形成されていてもよい。
【0014】
さらに、本発明の一態様として、ペグの打ち込み角度を把握し易くするとともに、地面に対する横滑りを防ぐという課題を解決するために、前記各ペグ挿入孔の前記入口側の孔周縁部および前記出口側の孔周縁部の内側略半分がそれぞれ前記固定具本体の上面および下面と同一面に形成されているとともに、前記各ペグ挿入孔の前記入口側の孔周縁部および前記出口側の孔周縁部の外側略半分が前記ペグ挿入孔の中心軸に対して直交する直交面として形成されており、前記直交面を含む前記固定具本体の一部が前記固定具本体の前記上面および前記下面よりも上方および下方に突出する突出部として形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ロープ等の支持部材を地面に強力に固定できるとともに、ペグを打ち込む角度の変更が可能で、かつペグを打ち込むときの振動を他のペグに伝え難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るペグ用固定具の一実施形態を示す斜視図である。
図2】本実施形態のペグ用固定具を示す平面図である。
図3】本実施形態のペグ用固定具に支持部材(ロープ)を連結した状態を示す斜視図である。
図4】連結部として貫通孔に棒材を架設した他の実施形態のペグ用固定具を示す斜視図である。
図5】連結部としてU字金具を設けた他の実施形態のペグ用固定具を示す斜視図である。
図6】連結部として雌ネジ部を設けた他の実施形態のペグ用固定具を示す斜視図である。
図7図2のA-A線断面を示す断面図である。
図8】ペグ挿入孔の中心軸を通る断面(図9のB-B線断面)を示す断面図である
図9】本実施形態のペグ用固定具を示す側面図である。
図10】本実施形態のペグ用固定具を重ねた状態を示す斜視図である。
図11】本実施形態のペグ用固定具を地面に固定した状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るペグ用固定具の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0018】
ペグ用固定具1は、簡易構造物を支持する支持部材Rを地面Fに固定するためのものであって、本実施形態では、図1に示すように、ブロック状の固定具本体2と、この固定具本体2にロープ等の支持部材Rを連結する連結部3と、ペグPを挿入する複数個のペグ挿入孔4と、地面Fに対する横滑りを防ぐ突出部5とを有する。以下、各構成について詳細に説明する。
【0019】
なお、本実施形態における簡易構造物は、図示しないが、キャンプや運動会、避難所等において簡易的な建物や日除け等として用いられるテントやタープ等であって、コンクリート基礎等に固定されておらず設営や撤収が容易な構造物である。また、本実施形態における支持部材Rは、前記簡易構造物を地面Fに固定したり自立させたりするのに用いられるものであり、ロープや支柱等である。
【0020】
固定具本体2は、簡易構造物の周辺における地面Fの所定位置に固定されるものであり、本実施形態では、プラスチック製であって、図1および図2に示すように、平面視で略六角形に形成され、中央に貫通孔21を有する枠状に形成されている。
【0021】
固定具本体2の寸法は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、六角形の1辺の長さがペグ挿入孔4に挿入されるペグPの外径の3倍~4倍程度の長さに形成されている。また、枠の太さおよび高さはペグPの外径の2倍~3倍程度の太さおよび高さに形成されている。
【0022】
また、中央の貫通孔21は、支持部材Rであるロープ等を挿通させることができる寸法に開口されている。本実施形態では、固定具本体2に貫通孔21を形成することで、当該固定具本体2の一部を後述する連結部3として機能させることができるように構成している。
【0023】
なお、固定具本体2の形状は、平面視で略六角形状のものに限定されるものではなく、平面視で三角形や四角形等の多角形や丸形などから適宜選択することができる。また、固定具本体2の素材は、プラスチックに限定されるものではなく、アルミニウムや鉄等の金属材料でもよく、強度が十分であれば木材その他の素材であってもよい。
【0024】
連結部3は、固定具本体2にテント等の簡易構造物を支持するロープ等の支持部材Rを連結するためのものであり、本実施形態では、略六角形枠状の固定具本体2における6辺のうち、1辺おきに配置されたペグ挿入孔4が開口していない3辺の枠部分によって構成される。つまり、本実施形態における連結部3は、図3に示すように、支持部材Rとしてのガイドロープを貫通孔21に通して括り付けることにより、固定具本体2に連結できるように構成されている。
【0025】
なお、連結部3は、固定具本体2の一部からなる構成に限定されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、図4に示すように貫通孔21に棒材などを架設したり、図5に示すようにU字金具等を設けたりして、ロープやラカビナ、フック等を係止できるようにしてもよく、図6に示すように、雌ネジ孔を形成して任意の金具やテントの支柱等を締結できるようにしてもよい。また、図示しないが、テントの支柱等を脱着可能なジョイント構造を備えてもよい。
【0026】
ペグ挿入孔4は、固定具本体2を地面Fに固定するためのペグPを挿入させるための孔である。複数個のペグ挿入孔4が固定具本体2の外周縁に貫通するように形成されており、本実施形態では、図1および図2に示すように、略六角形状の固定具本体2における6辺のうち1つおきの辺に1個ずつ、計3個の孔が形成されている。これにより、各ペグ挿入孔4は、同心円(図2における一点鎖線)の上に等間隔で配置されている。
【0027】
また、各ペグ挿入孔4は、地面Fに対して上下方向の抗力を発揮させるために、図7に示すように、地面Fに固定される固定具本体2の上下方向に対して傾斜されて形成されている。本実施形態では、各ペグ挿入孔4の中心軸(図7における一点鎖線)が、互いに交差しないように、地面Fに対して全て同一角度であり、かつ平面視で同心円の接線方向(図2における二点鎖線の矢印方向)に向けて形成されている。
【0028】
さらに、各ペグ挿入孔4は、挿入するペグPの挿入角度を調整できるように、図7に示すように、ペグ挿入孔4の中間位置の内径L1が挿入されるペグPの外径より大きく形成されているとともに、ペグ挿入孔4の入口および出口の内径L2が前記中間位置の内径L1より大径に形成されている。
【0029】
また、各ペグ挿入孔4は、当該ペグ挿入孔4の内周面41と挿入されるペグPとを点接触させることでペグPを打ち込むときの振動を固定具本体2に伝え難くするために、図7および図8に示すように、ペグ挿入孔4の中心軸を通る断面において内周面41を表す輪郭線が入口から出口にかけて中間位置を内側に膨出させた凸形曲面状となるように形成されている。
【0030】
具体的には、各ペグ挿入孔4は、図7に示すように、ペグ挿入孔4の中心軸が地面Fに対して約60°の角度となるように傾斜しており、挿入させるペグPが中心軸に対して上下方向のみならず左右方向や斜め方向を含む360度方向に±15°の範囲以内で角度変化ができるように、各ペグ挿入孔4の入口、出口および中間位置の内径L1,L2および内周面41が適宜形成されている。
【0031】
また、本実施形態では、図1図8および図9に示すように、各ペグ挿入孔4の入口側の孔周縁部42および出口の孔周縁部42の内側略半分が、それぞれ固定具本体2の上面および下面と同一面に形成されている。また、各ペグ挿入孔4の入口側の孔周縁部42および出口の孔周縁部42の外側略半分が各ペグ挿入孔4の中心軸に対して直交する直交面43として形成されている。これにより、各孔周縁部42の半分を固定具本体2と一体的にすることで各ペグ挿入孔4の強度を保ち、かつ各孔周縁部42の残り半分を直交面43とすることでペグ挿入孔4をのぞき込まなくてもその形状からペグ挿入孔4の傾斜角度を容易に目視で把握することができ、打ち込み作業を迅速に行うことができるように構成されている。
【0032】
突出部5は、固定される地面Fとの横滑りを防止するための部分であり、図9に示すように、直交面43を含む固定具本体2の一部を当該固定具本体2の上面および下面よりも上方および下方に突出させてなる。つまり、図11に示すように、突出部5が地面Fに食い込むことで固定具本体2の横滑りが防止でき、より強固に固定できるようになっている。
【0033】
また、直交面43を構成する部分は、略半分が突出部5として構成されているとともに、残り半分が固定具本体2の上面および下面よりも凹状に形成されており、本実施形態では、これら凹凸形状が上下対称で、かつ相互に噛み合わせ可能に形成されている。これにより、図10に示すように、ペグ用固定具1は他のペグ用固定具1と重ね合わせることができるようになっている。
【0034】
次に、本実施形態のペグ用固定具1の各構成における作用について説明する。
【0035】
本実施形態では、図3に示すように、簡易構造物であるテントを支持する支持部材R(ガイドロープ)を予め連結部3に括り付けて連結する。
【0036】
なお、図4から図6に示すように、連結部3がU字金具等で構成されており地面Fへの固定後にフックやカラビナ等によって支持部材Rを連結可能な場合は、ペグ用固定具1を地面Fに固定した後に支持部材Rを連結してもよい。
【0037】
次に、支持部材Rを連結した固定具本体2を地面Fの所定位置に置く。例えば、支持部材Rがテントを支持するガイドロープの場合は、テントを支持している位置からテントの側面に対して直角方向の当該ガイドロープが届く位置に置かれる。
【0038】
地面Fに置かれた固定具本体2のペグ挿入孔4にペグPを挿入し、ハンマーなどで地面Fに打ち込む。本実施形態では、直交面43が、孔の中心軸に対して直交しているため、孔をのぞき込まなくてもペグPの挿入方向を把握することができ、誰でも適切な角度で打ち込み作業を行うことができる。
【0039】
また、本実施形態における各ペグ挿入孔4は、図7に示すように、孔の中間位置の内径L1をペグPの外径より大きく形成し、かつ入口および出口の内径L2を中間位置の内径L1より大径に形成しているため、ペグPの挿入角度を地中に対する上下方向のみならず360度の方向に±15°、例えば地面Fに対しては約45°から約75°の範囲で、また図示しないが、左右方向に対しては-15°から+15°の範囲で調整することができる。このため、地中に石などの障害物があってもペグ用固定具1の位置を変えることなく、ペグPの挿入角度の調整だけで打ち込み作業を続行することができる。
【0040】
さらに、本実施形態における各ペグ挿入孔4の内周面41が凸形曲面状であるため、当該内周面41とペグPとは1点または2点の点接触となる。このため、打ち込み作業時の振動がペグPを介して固定具本体2に伝わり難くなり、先に打ち込まれたペグPにも振動が伝わり難くなる。よって、地盤との間に隙間ができたり、土壌を崩壊したりしないため、地面Fに対する抵抗力が高い状態でペグ用固定具1を地面Fに固定することができる。
【0041】
また、本実施形態では、各ペグ挿入孔4を各中心軸同士が交わらないように配置したため、ペグPの打ち込み時に先に打ち込んだ他のペグPが邪魔にならない。さらに、各ペグ挿入孔4の入口側の孔周縁部42および出口側の孔周縁部42の内側略半分は固定具本体2と一体的に形成されており、各ペグ挿入孔4の強度が保たれている。よって、各ペグ挿入孔4は、ペグPの打ち込み時の衝撃等による大きな力を受けてもひび割れたり破損したりしない。
【0042】
打ち込み作業が完了すると、ペグ用固定具1は、図11に示すように、地面Fに対して放射状に打ち込まれた3本のペグPによって地面Fに固定される。これにより上下方向の引抜力のみではなく、斜め方向や横方向などあらゆる方向の引抜力に対しても抗力を高めることができる。また、短いペグPでも十分な抗力が得られるため、長大なペグPを使用する必要がなくなり、非力な人でも打ち込み作業を行うことができる。
【0043】
また、固定具本体2の下面より下方に突出した突出部5が、地面Fに突き刺さるように固定されるため、横滑りするのを防止することができる。これにより、安定した固定具本体2に対してペグPを打ち込み易いし、横方向に強い力で引っ張られたり、誤って蹴飛ばされたりしても、突出部5が抵抗となるためペグPと地盤との間に隙間ができにくくなり、ペグPによる抵抗力を保つことができる。
【0044】
一方、簡易構造物の撤収時には、ペグPを地面Fから引き抜くことで、地面Fから簡単に取り外すことができる。上述の通り、短いペグPを使用することができるため撤収作業も容易になる。仮に、硬い地面Fに打ち込んでペグPが曲がっても、ペグPの曲がりに沿うように角度を調整しながらペグ挿入孔4から引き抜くことができる。よって、ペグ用固定具1は繰り返し何度でも使用することができ、製品寿命も長い。
【0045】
以上のような本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
1.ペグPを打ち込める角度を360度の方向に任意に変更することができ、石などの障害物があってもペグ用固定具1の位置を変えることなく、挿入角度を変えて打ち込み作業を行うことができる。
2.ペグPとペグ挿入孔4とが1点または2点の点接触となるため、ペグPを打ち込むときの振動が伝わり難く、打ち込み振動によるペグPと地盤との隙間の形成や土壌の破壊を防ぐことができる。
3.直交面43がペグ挿入孔4の中心軸に対して直交しているため、ペグPの挿入角度を容易に把握することができ、誰でも適切な角度で打ち込み作業を行うことができる。
4.突出部5が地面Fに対して突き刺さるよう安定的に固定されるため、ペグPを打ち込み易く、また横方向に強い力で引っ張られたり、誤って蹴飛ばされたりしても横滑りせず、ペグPと地盤との間に隙間ができるのを防ぎ、ペグPによる抵抗力を保つことができる。
5.各ペグ挿入孔の入口側の孔周縁部42および出口側の孔周縁部42の内側半分は固定具本体2と一体的に形成されているため、各ペグ挿入孔4の強度を保つことができる。
6.複数本の傾斜させたペグPによって地面Fに固定されるため、地面Fに対する抵抗力が高くなり、比較的短いペグPにより十分な抵抗力が得られるため、打ち込み作業および撤収作業を容易に行うことができる。
7.打ち込んだペグPが曲がったとしても、ペグPの挿入角度の調節が可能なためペグ挿入孔4から引き抜くことができ、ペグ用固定具1を繰り返し何度でも使用することができる。
【実施例0046】
本実施例1では、本発明に係るペグ用固定具を作成し、キャンプ地を想定した草地での引抜試験を実施した。
【0047】
[地盤の硬軟試験]
本実施例1では、第一地盤と第二地盤の2箇所の草地地盤で試験を行った。試験を行うに当たり、ポータブルコーン貫入試験による各地盤の硬軟試験を行った。試験機の荷重計容量は1000N、較正係数は4.594N/目盛、ロッド質量0.78kg、先端コーン質量0.13kg、コーン面積3.23E-04立方メートル、貫入速度1cm/s、最終貫入深さ0.9m。試験当日の天候は晴れ。36時間前に降雨があり、降雨時から試験当日までの気温は最低気温16℃、最高気温25℃であった。
【0048】
試験の結果、コーン貫入抵抗は、第一地盤が平均1245kN/平方メートル、第二地盤が平均1387kN/平方メートルであり、第一地盤に比べて第二地盤の方が固い地盤であった。
【0049】
[1本のペグによる引抜試験]
最大荷重を計測できるアナログ荷重計(最大100kg)を用いて、第二地盤に打ち込まれた1本のペグの引抜試験を行った。ペグは地面に対して略垂直方向に打ち込み、そのペグを略垂直方向に引き抜いたときの最大荷重値を計測した。
【0050】
その結果、ペグは長さ200mm、250mm、300mmおよび400mmは、いずれも2~3kgで抜けてしまった。
【0051】
[本発明に係るペグ用固定具を用いた引抜試験]
本発明に係るペグ用固定具をペグで第一地盤に固定し、1本のペグの引抜試験と同じ機具を用いて引抜試験を行った。ペグは、長さ200mm、250mm、300mmの3種類を用いた。
【0052】
その結果、ペグの長さ200mmのときは15kg、250mmのときは35kg、300mmのときは48kgであった。
【0053】
同様に、第一地盤より地盤の固い第二地盤でも引抜試験を行った。その結果、ペグの長さ200mmのときは30kg、250mmのときは65kg、300mmのときは80kgであった。また、長さ400mmのペグでも試験を行ったが機具の最大荷重である105kgで引っ張っても引き抜くことができなかった。このように、本発明に係るペグ用固定具を用いることで、ペグが1本のときに比べると、約10倍~30倍以上の抵抗力が発揮された。
【0054】
以上より、本発明に係るペグ用固定具を用いることで、1本のペグに比べると約10倍~30倍以上の抵抗力が発揮された。最大風速8メートルの環境下でテントを支持する場合に支持部材のロープに40kgの荷重がかかることを想定すると、250mm程度の一般的な長さのペグを用いることで、十分な抵抗力を得られることがわかった。
【0055】
なお、本発明に係るペグ用固定具は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。例えば、連結部3としてU字金具等を用いる場合は、固定具本体2の中心位置に設けるものに限定されず、外周縁の所定の位置に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 ペグ用固定具
2 固定具本体
3 連結部
4 ペグ挿入孔
5 突出部
21 貫通孔
41 内周面
42 孔周縁部
43 直交面
R 支持部材
F 地面
P ペグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11