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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098603
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電池パック
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/358 20210101AFI20240717BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20240717BHJP
   H01M 50/204 20210101ALI20240717BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240717BHJP
   H01M 50/30 20210101ALI20240717BHJP
   H01M 50/342 20210101ALI20240717BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240717BHJP
   H01M 50/284 20210101ALN20240717BHJP
【FI】
H01M50/358
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/613
H01M50/204 401Z
H01M10/052
H01M50/204 401H
H01M50/30
H01M50/342 201
H01M4/13
H01M50/284
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002189
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 研介
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄紀
【テーマコード(参考)】
5H012
5H029
5H031
5H040
5H050
【Fターム(参考)】
5H012AA07
5H012BB08
5H012CC08
5H012DD01
5H012GG10
5H029AJ12
5H029AK03
5H029AL00
5H029EJ12
5H031AA09
5H031KK06
5H031KK08
5H040AA28
5H040AA29
5H040AA33
5H040AS07
5H040AT06
5H040AY05
5H050AA15
5H050EA22
(57)【要約】
【課題】電池を構成する材料に含まれる低分子シロキサンがガス化した場合において、この低分子シロキサンを電池ケースの外部に適切に排出する。
【解決手段】電池パックは、電池と、電池ケースと、通気孔と、圧力調整膜と、を備える電池パックである。前記電池は、構成部材として低分子シロキサンを含む。前記電池ケースは、前記電池と、リレー部材とが収容される収容空間を有する。前記通気孔は、前記電池ケースの外部と繋がる。前記通気孔は、前記電池ケースの底部において前記収容空間を構成する底壁面から鉛直下向き方向に形成される。前記圧力調整膜は、前記収容空間内のガスの圧力を調整する。前記圧力調整膜は、前記通気孔の形成箇所に設けられる。前記圧力調整膜は、また、前記構成部材に含まれる低分子シロキサンの分子径よりも大きい保留粒子径を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構成部材として低分子シロキサンを含む電池と、
前記電池と、リレー部材とが収容される収容空間を有する電池ケースと、
前記電池ケースの外部と繋がる通気孔であって、前記電池ケースの底部において前記収容空間を構成する底壁面から鉛直下向き方向に形成される通気孔と、
前記収容空間内のガスの圧力を調整する圧力調整膜であって、前記通気孔の形成箇所に設けられ、かつ、前記構成部材に含まれる低分子シロキサンの分子径よりも大きい保留粒子径を有する圧力調整膜と、
を備えることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記収容空間を構成する底壁面は、前記通気孔の形成箇所において前記鉛直下向き方向に窪んだ窪み空間を構成する底壁面を含み、
前記窪み空間を構成する底壁面、かつ、前記通気孔の開口位置に前記圧力調整膜が設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記電池ケースの底部において前記収容空間を構成する底壁面から鉛直下向き方向に形成されて、前記圧力調整膜の外周を囲む外周溝を更に備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記電池を冷却する冷却水路を更に備え、
前記冷却水路が、前記電池ケースの底部に形成される底部水路を含み、
前記底部水路の一部が、前記鉛直下向き方向において前記外周溝の最深部よりも下方に位置する
ことを特徴とする請求項3に記載の電池パック。
【請求項5】
前記収容空間を構成する底壁面が、前記通気孔の形成箇所の周囲から前記通気孔の形成箇所に向かって傾斜するテーパ面を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項6】
前記電池は、前記収容空間を構成する天井壁面に取り付けられ、
前記収容空間を構成する底壁面が、前記鉛直下向き方向において前記電池の下方に形成される隙間空間を構成する底壁面を含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項7】
前記リレー部材は、前記収容空間に設けられたジャンクションボックス内に位置し、
前記ジャンクションボックスは、前記ジャンクションボックスを構成する壁部材に形成され、前記ジャンクションボックスの内部と外部を繋ぐ貫通孔を備え、
前記貫通孔が、前記鉛直下向き方向において前記リレー部材よりも下方に位置する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項8】
前記通気孔は、前記収容空間を構成する底壁面から前記鉛直下向き方向に延びて前記電池ケースの底部を貫通する貫通孔と、前記貫通孔の途中から分岐して前記電池ケースの底部を通り前記電池ケースの側壁部又は天井部に開口する分岐孔とを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項9】
前記通気孔は、前記収容空間を構成する底壁面から前記鉛直下向き方向に延びて前記電池ケースの底部を貫通し、
前記通気孔は、前記収容空間を構成する底壁面から前記鉛直下向き方向に延びる小径孔と、前記小径孔の下方に位置する大径孔とを含み、
前記大径孔に収容され、前記小径孔の直径よりも大きく、かつ、前記大径孔の直径よりも小さい直径を有する浮力体を更に備える
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項10】
前記通気孔は、前記電池ケースの側面から前記電池ケースの内側に向かう方向に形成された側方溝と、前記収容空間を構成する底壁面から前記鉛直下向き方向に延びる第1縦孔と、前記側方溝を構成する壁面のうちの前記鉛直下向き方向に位置する壁面から当該鉛直下向き方向に延びる第2縦孔と、前記第1縦孔と前記第2縦孔を繋ぐ横孔と、を含み、
前記第2縦孔の開口位置に前記圧力調整膜が設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電池パックに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2019-186039号公報は、ガス排出経路の途中に圧力調整膜を備える組電池を開示する。この従来の組電池において、組電池を構成する各単電池(セル)の内部では、電解液の分解又は揮発に伴いガスが発生する。このガスは、単電池の内部から外部に放出される。ガス排出経路は単電池の外部に設けられており、このガス排出経路には単電池から放出された電解液由来のガスが流れる。圧力調整膜の上流側のガスの圧力が下流側のそれよりも高いと、電解液由来のガスが圧力調整膜を通過する。これにより、電解液由来のガスが組電池の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-186039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単電池を構成する材料には低分子シロキサンが含まれることがある。低分子シロキサンは、通常、(Si(CH)-O-)で表される繰り返し単位を3~20個(D3~D20)含む低分子量環状シロキサン、この繰り返し単位を2~20個(M2~M20)含む低分子量鎖状シロキサンを指す。低分子シロキサンは、ガス化し易い性質がある。ガス化した低分子シロキサン、即ち、ガス状シロキサンは、導通部位に付着すると熱による酸化反応により分解されて二酸化ケイ素に変化することがある。二酸化ケイ素は絶縁性を有することから、導通部位に付着した二酸化ケイ素は絶縁不良の原因となる。
【0005】
電池パックにおいて代表的な導通部位はリレー部材である。電池パックにおいて、リレー部材は、通常、電池ケースに形成される組電池の収容空間と繋がる空間に収容される。そのため、ガス状シロキサンからこのようなリレー部材を保護することが望ましい。これに関し、従来の組電池の圧力調整膜は、ガス状シロキサンに着目して設けられたものではない。従って、この観点に着目した開発には余地があるといえる。
【0006】
本開示の1つの目的は、電池を構成する材料に含まれる低分子シロキサンがガス化した場合において、この低分子シロキサンを電池ケースの外部に適切に排出することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の発明者らは、低分子シロキサンの分子径と空気に対する比重に着目した。例えば、シロキサンD4の平均分子径は約13nmである。そのため、電池を構成する材料に用いられる主要な低分子シロキサンの平均分子径よりも大きい保留粒子径を有する圧力調整膜であれば、この圧力調整膜によって隔てられた2つの空間のガスの圧力差を利用してガス状シロキサンを通過させることができる。また、低分子シロキサンの重さは空気の10倍以上である。そのため、ガス状シロキサンは、電池の稼働中は電池パックの内部空間で発生するガスの対流に伴いこの内部空間を移動するが、電池の非稼働中はこの内部空間の底に溜まることが予想される。そのため、内部空間の底に設けた圧力調整膜であれば、特に電池の非稼働中に低分子シロキサンを効率的に通過させることができる。
【0008】
本開示の発明者らは、この着眼点に基づいて各種の検討、実証実験を行ったところ、上記課題を解決しうる本開示を完成させるに至った。即ち、本開示は、電池と、電池ケースと、通気孔と、圧力調整膜と、を備える電池パックである。前記電池は、構成部材として低分子シロキサンを含む。前記電池ケースは、前記電池と、リレー部材とが収容される収容空間を有する。前記通気孔は、前記電池ケースの外部と繋がる。前記通気孔は、前記電池ケースの底部において前記収容空間を構成する底壁面から鉛直下向き方向に形成される。前記圧力調整膜は、前記収容空間内のガスの圧力を調整する。前記圧力調整膜は、前記通気孔の形成箇所に設けられる。前記圧力調整膜は、また、前記構成部材に含まれる低分子シロキサンの分子径よりも大きい保留粒子径を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電池ケースの外部と繋がる通気孔が、電池ケースの底部において収容空間を構成する底壁面から鉛直下向き方向に形成される。また、この通気孔の形成箇所に、低分子シロキサンの分子径よりも大きい保留粒子径を有する圧力調整膜が設けられる。従って、ガス化した低分子シロキサン(つまり、ガス状シロキサン)を電池ケースの外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本開示の各実施形態に共通する電池パックの基本構成例を示す模式図である。
図2図2は、第1実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。
図3図3は、ガス状シロキサンの濃度の時間変化に関する検証実験結果を示す図である。
図4図4は、第2実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。
図5図5は、第3実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。
図6図6は、第4実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。
図7図7は、第5実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。
図8図8は、第6実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。
図9図9は、第7実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。
図10図10は、浮力体の構成例を示す概略図である。
図11図11は、図10に示すA-A断面で電池ケースの底部を切断し、上方から浮力体を見た図である。
図12図12は、図10に示すB-B断面で電池ケースの底部を切断し、下方から浮力体を見た図である。
図13図13は、第8実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態について説明する。尚、各図において、同一又は相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化し又は省略する。
【0012】
1.第1実施形態
本開示の実施形態に係る電池パックは、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両に搭載される。図1は、本開示の各実施形態に共通する電池パックの基本構成例を示す模式図である。尚、図1に示されるX軸は鉛直方向に相当し、Y軸は水平方向に相当する。より詳細に、X軸の正方向が鉛直上向き方向に相当し、X軸の負方向が鉛直下向き方向に相当する。
【0013】
図1には、電池パックを構成する電池ケース1の断面が描かれている。図1に示されるように、電池ケース1は、天井部11と、底部12と、側壁部13及び14と、隔壁部15と、を含んでいる。側壁部13及び14の一部は、天井部11と共に上部ケースを構成し、側壁部13及び14の残りの部分は、底部12と共に下部ケースを構成する。
【0014】
電池ケース1には、収容空間2が形成される。収容空間2には、複数の組電池3と、ジャンクションボックス4と、圧力調整膜5とが設けられている。図1には3つの隔壁部15が描かれており、これらの隔壁部15によって形成された4つの空間に、4つの組電池3がそれぞれ収容されている。各組電池3は、例えば、リチウムイオン単電池をモジュール化したものである。単電池を構成する材料(例えば、電極の材料)には、低分子シロキサンが用いられている。
【0015】
ジャンクションボックス4には、制御基板41とリレー部材42とが収容されている。リレー部材42は、制御基板41上に設けられた素子同士を連結する部材である。リレー部材42は、電池ケース1の外部から収容空間2に引き込まれた複数の配線を接続する部材でもよい。尚、ジャンクションボックス4は、電池ケース1に必須の構成ではない。そのため、図2以降では、ジャンクションボックス4の図示が省略される場合がある。
【0016】
圧力調整膜5は、収容空間2のガスの圧力が電池ケース1の外部のそれよりも高いときに、収容空間2のガスを電池ケース1の外部に排出する。圧力調整膜5は、また、収容空間2のガスの圧力が電池ケース1の外部のそれと同じ場合であっても、収容空間2の特定のガス(例えば、ガス状シロキサン)の濃度が電池ケース1の外部のそれよりも高いときには、収容空間2の特定のガスを電池ケース1の外部に排出する。この圧力差及び濃度差に基づく排出を可能にするため、圧力調整膜5には、保留粒子径が組電池3に用いられる主要な低分子シロキサンの平均分子径よりも大きいものが使用される。
【0017】
図2は、第1実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。図2に示される例では、収容空間2が、ジャンクション空間21と窪み空間22とを含んでいる。ジャンクション空間21は、図1に示したジャンクションボックス4を収容する空間である。窪み空間22は、ジャンクション空間21を構成する底壁面12aからX軸負方向に向かって窪んだ空間である。窪み空間22を構成する底壁面12bには、この底壁面12bからX軸負方向に延びて底部12を貫通する貫通孔16が設けられている。貫通孔16は、本開示の「通気孔」の一例に相当する。圧力調整膜5は、この底壁面12b上、かつ、貫通孔16の開口の位置に設けられている。
【0018】
尚、図2に示される例では窪み空間22が形成されているが、窪み空間22は形成されていなくてもよい。この場合、貫通孔16は、底壁面12aからX軸負方向に延びて底部12を貫通する。また、圧力調整膜5は、この底壁面12a上、かつ、貫通孔16の開口の位置に設けられる。
【0019】
但し、本開示の発明者らの検証実験によれば、圧力調整膜5を窪み空間22の上方に設けるよりも、窪み空間22の下方に設ける方がジャンクション空間21におけるガス状シロキサンの濃度の低下の速度が高いという知見が得られている(図3参照)。従って、ガス状シロキサンの排出効率を高める観点からすると、収容空間2が窪み空間22を含んでいることが望ましく、底壁面12b上、かつ、貫通孔16の開口の位置に圧力調整膜5が設けられることが望ましい。つまり、図2に示される例は、窪み空間22を形成しない例に比べて有利な効果が期待される。
【0020】
2.第2実施形態
図4は、第2実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。図4に示される例では、図2に示される例に比べて窪み空間22のX軸負方向の長さ(深さ)が短い。その代わり、貫通孔16のX軸負方向の長さ(深さ)は、図2に示される例に比べて長い。
【0021】
図4に示される例では、圧力調整膜5の外周を囲む外周溝17が形成されている。外周溝17の形成方向は、貫通孔16の形成方向(つまり、X軸負方向)と平行である。但し、外周溝17のX軸負方向の長さ(深さ)は、貫通孔16のそれに比べて短い。図4に示される例では、また、外周溝17の最深部よりも下方に底部水路6が形成されている。底部水路6は、組電池3の冷却水路の一部であり、この冷却水路6には、組電池3の冷却水が流れる。
【0022】
収容空間2内の水蒸気は、収容空間2を構成する壁面(例えば、底壁面12a)によって冷やされて凝縮することがある。この凝縮により発生した水滴は、圧力調整膜5によるガスの排出機能を妨げる可能性がある。この点、図4に示される例では、外周溝17が形成されている。そのため、仮にジャンクション空間21で水滴が発生したとしても、この水滴をこのジャンクション空間21に集めることが可能となる。
【0023】
図4に示される例では、また、底部水路6が形成されている。そのため、例えば、電池パックの稼働中に温められた冷却水によって底部水路6の周囲を温めて、外周溝17に集められた水をガス化することも可能となる。つまり、外周溝17による水滴収集機能を回復させることも可能となる。
【0024】
3.第3実施形態
図5は、第3実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。図5に示される例では、底壁面12aが、貫通孔16の形成箇所(窪み空間22の形成箇所)に向かって傾斜するテーパ面を構成している。尚、図5に示される例では底壁面12aの全体がテーパ面を構成しているが、窪み空間22の開口に繋がる一部の底壁面12aのみがテーパ面を構成していてもよい。
【0025】
図5に示される例によれば、底壁面12aに溜まった低分子シロキサンを圧力調整膜5の設置位置に集めることができる。従って、圧力調整膜5による低分子シロキサンの排出効率を高めることが可能となる。
【0026】
4.第4実施形態
図6は、第4実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。図6に示される例では、組電池3が収容空間2を構成する天井壁面11aに取り付けられている。つまり、第1~第4実施形態とは異なり、第5実施形態では組電池3の取り付け位置が反転している。この結果、図7に示される例では、収容空間2が、ジャンクション空間21と電池空間23とを含んでいる。ジャンクション空間21については既に説明したとおりである。電池空間23は、組電池3よりも下方に形成される空間である。
【0027】
既に説明したように、低分子シロキサンは単電池の材料に用いられている。そのため、低分子シロキサンがガス化した場合、ガス状シロキサンは組電池3が設けられている空間からジャンクション空間21に移動してくることが予想される。この点、図6に示される例によれば、組電池3よりも下方に電池空間23が形成されている。そのため、図2図4及び図5に示した例に比べて、空気よりも重いガス状シロキサンがジャンクション空間21に移動しやすくなる。従って、圧力調整膜5による低分子シロキサンの排出効率を高めることが可能となる。
【0028】
尚、第4実施形態で説明した組電池3の反転取り付けについては、制御基板41及びリレー部材42を含むジャンクションボックス4の取り付けにも適用が可能である。つまり、本開示におけるジャンクションボックス4の取り付け位置は、図2図4及び図5に示した底壁面12aでもよいし、図6に示した天井壁面11aでもよい。
【0029】
5.第5実施形態
図7は、第5実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。図7に示される例では、ジャンクションボックス4が省略されることなく描かれている。このジャンクションボックス4を構成する壁部材には、ジャンクションボックス4の内部と外部を繋ぐ貫通孔43が形成されている。図7に示される例では、リレー部材42よりも下方の位置に貫通孔43が位置している。この例では、また、窪み空間22の開口に近い位置に貫通孔43が位置している。
【0030】
ジャンクションボックス4が収用空間に設けられる場合、ジャンクションボックス4のネジや壁部材の隙間からジャンクションボックス4の内部空間にガス状シロキサンが侵入することがある。この点、図7に示される例によれば、ジャンクションボックス4の内部空間に侵入したガス状シロキサンを、貫通孔43を通じて速やかに排出することができる。また、窪み空間22の開口に近い位置からガス状シロキサンを排出できる。従って、圧力調整膜5によるガス状シロキサンの排出効率を高めることも可能となる。
【0031】
6.第6実施形態
図8は、第6実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。図8に示される例では、貫通孔16が途中で分岐している。分岐孔18は、底部12内をY軸正方向に延び、側壁部13に近い位置で向きを変えて側壁部13内をX軸正方向に延びている。Y軸正方向に延びる分岐孔18の部分を「横分岐孔18a」とも称し、X軸正方向に延びる分岐孔18の部分を「縦分岐孔18b」とも称す。縦分岐孔18bは天井部11の表面に開口している。
【0032】
図2図4図7に示した例では貫通孔16が分岐していないが、図8に示される例では貫通孔16が分岐孔18に繋がっている。そのため、仮に、電池ケース1が水没して外部の水が貫通孔16に侵入した場合であっても、貫通孔16と分岐孔18の接続位置まで浸水していなければ、貫通孔16の内部のガスの圧力を大気圧に維持することができる。そのため、圧力調整膜5にかかる圧力が高くなり過ぎるのを抑えることが可能となる。尚、この観点からすると、分岐孔18が開口する位置は天井部11の表面でなくてもよく、例えば、側壁部13の表面でもよい。
【0033】
7.第7実施形態
図9は、第7実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。図9に示される例では、貫通孔16の位置に浮力体7が設けられている。この浮力体7について、図10図12を参照して説明する。図10は、浮力体7の構成例を示す概略図である。図11は、図10に示すA-A断面で底部12を切断し、底壁面12b側から浮力体7を見た図に相当する。図12は、図10に示すB-B断面で底部12を切断し、底部12の表面(底面)側から浮力体7を見た図に相当する。
【0034】
図10に示されるように、貫通孔16は、底壁面12bの開口の径と同じ径を有する小径孔16aと、この小径孔16aよりも径の大きい大径孔16bとから構成されている。図10に示される例では、大径孔16bは、小径孔16aとの接続部分からX軸負方向に向かってその径が拡大し、途中からはその径が一定になっている。浮力体7は、球体状の浮き71を備えており、浮き71は大径孔16bに位置している。浮き71の直径r71は、小径孔16aの半径r16aよりも大きく、大径孔16bの最大半径r16b(max)よりも小さい(図11参照)。
【0035】
浮力体7は、また、錘部72と、連結部73とを備えている。錘部72は、浮き71の移動を安定させるために設けられる。連結部73は、底部12に連結される部位であり、浮き71のX軸方向の移動を規制するために設けられる。図12に示されるように、連結部73は、環状部73aと、この環状部73aの中心に向かって延びる4本の腕部73bと、から構成される。環状部73aは大径孔16bを構成する壁面に接合され、これにより、連結部73が底部12に連結されている。尚、説明の便宜上、図12においては錘部72の図示が省略されている。
【0036】
図10図12に示した貫通孔16と浮力体7によれば、通常時は浮き71の周囲を通ってガス状シロキサンを外部に排出することが可能となる。一方、例えば、電池ケース1が水没して外部の水が大径孔16bに侵入してきた場合には、浮き71が上方に移動して小径孔16aと大径孔16bの接続部分を塞ぐことが可能となる。従って、収容空間2に外部の水が侵入するのを抑えてこの収容空間2に収容されている制御基板41等の部品を保護することが可能となる。
【0037】
8.第8実施形態
図13は、第8実施形態に係る電池パックの構成例を示す模式図である。図13に示される例では、図2等に示した貫通孔16が底部12に形成されていない。その代わり、底部12には連通孔19が形成されている。連通孔19は、底部12内をX軸方向に延びる第1縦孔19a及び第2縦孔19bと、底部12内をY軸方向に延びてこれらの縦孔を繋ぐ横孔19cと、底部12の側面から底部12の内側に窪む側方溝19dとから構成されている。第2縦孔19bは、側方溝19dを構成する壁面のうち、X軸負方向に位置する壁面において側方溝19dと接続されている。連通孔19は、本開示の「通気孔」の一例に相当する。圧力調整膜5は、この第2縦孔19bの開口の位置に設けられている。
【0038】
図13に示される例によれば、底部12の表面における連通孔19の開口の位置を、底部12の側面に形成することが可能となる。従って、仮に、電池パックが車両の底部に設けられる場合において、飛び石による底部12の底面の損傷が起きたとしても、圧力調整膜5によるガス状シロキサンの排出機能を維持することが可能となる。
【符号の説明】
【0039】
1 電池ケース 2 収容空間 3 組電池 4 ジャンクションボックス 5 圧力調整膜 6 底部水路 7 浮力体 11 天井部 11a 天井壁面 12 底部 12a,12b,12c 底壁面 13,14 側壁部 15 隔壁部 16 貫通孔 16a 小径孔 16b 大径孔 17 外周溝 18 分岐孔 18a 横分岐孔 18b 縦分岐孔 19 連通孔 19a 第1縦孔 19b 第2縦孔 19c 横孔 19d 側方溝 21 ジャンクション空間 22 窪み空間 23 電池空間 41 制御基板 42 リレー部材 43 貫通孔 71 浮き 72 錘部 73 連結部
図1
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図13