(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098618
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】抗菌剤及びそれを用いた抗菌用品
(51)【国際特許分類】
A01N 59/16 20060101AFI20240717BHJP
A61L 2/23 20060101ALI20240717BHJP
A01N 25/00 20060101ALI20240717BHJP
A01N 25/12 20060101ALI20240717BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20240717BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
A01N59/16 A
A61L2/23
A01N25/00 102
A01N25/12
A01N25/10
A01P3/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002214
(22)【出願日】2023-01-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-27
(71)【出願人】
【識別番号】514092397
【氏名又は名称】株式会社ジーエルライフ
(74)【代理人】
【識別番号】110003454
【氏名又は名称】弁理士法人友野国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】梶 浩之
【テーマコード(参考)】
4C058
4H011
【Fターム(参考)】
4C058AA01
4C058BB07
4C058JJ02
4C058JJ30
4H011AA01
4H011BA04
4H011BB18
4H011BC19
4H011DA02
4H011DC05
4H011DC06
4H011DF03
4H011DH02
(57)【要約】
【課題】本発明は、抗菌用品の使用者が、抗菌効果が消失したことを知覚することができる抗菌剤及びそれを用いて抗菌効果が消失したことを知覚することができる抗菌用品、すなわち、期限切れ表示機能を有する抗菌剤及びそれを用いた期限切れ表示機能を有する抗菌用品を提供することを課題とするものである。
【解決手段】本発明は、抗菌性を有する金属を蒸着源として、粒状合成樹脂を粒状合成樹脂として用い、制御された蒸着雰囲気温度と連続蒸着時間の下で物理蒸着を行うことによって、粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持され、粒状合成樹脂から脱離することによって期限切れを表示できる金属ナノ粒子担持合成樹脂抗菌剤である。また、本発明は、その金属ナノ粒子担持合成樹脂抗菌剤が、内部を視認でき、通液可能な収容部材に封入した期限切れを表示できる抗菌用品である。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理蒸着が、抗菌性を有する金属を蒸着源として用いると共に、粒状合成樹脂を被蒸着体として用い、連続して蒸着する蒸着時間を0.01secから0.2secの範囲に制御すると同時に、蒸着雰囲気温度を25℃から前記粒状合成樹脂の融点の範囲に制御して行われ、
前記蒸着源からの蒸発物質が、前記粒状合成樹脂表面上へ間欠的に到達し、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項2】
前記物理蒸着が、前記抗菌性を有する金属として、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、コバルト(Co)、及び、ニッケル(Ni)から選択されるいずれか一つ以上の金属、又は、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、コバルト(Co)、及び、ニッケル(Ni)から選択される二種以上の金属を含む合金を用いると共に、前記粒状合成樹脂として、熱可塑性樹脂を用い、蒸着法、イオンプレーティング法、及び、スパッタリング法から選択されるいずれかの方法で行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項1に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項3】
前記物理蒸着が、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリフッ化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択されるいずれか一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項4】
前記物理蒸着が、前記蒸着雰囲気温度を25℃から150℃の範囲に制御し、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリフッ化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択されるいずれか一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項5】
前記物理蒸着が、前記蒸着雰囲気温度を25℃から150℃の範囲に制御し、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からから選択されるいずれか一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項6】
前記物理蒸着が、前記蒸着雰囲気温度を40℃から130℃の範囲に制御し、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択される一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項7】
前記物理蒸着が、前記金属のナノ粒子の平均粒子径が1~50nmとなるように制御して行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項8】
前記物理蒸着が、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂に対して、0.005~0.5重量%付着するように制御して行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項9】
前記物理蒸着が、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂に対して、0.005~0.5重量%付着するように制御して行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項7に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項10】
請求項7に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項11】
請求項8に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項12】
請求項9に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項13】
物理蒸着が、抗菌性を有する金属を蒸着源として用いると共に、粒状合成樹脂を粒状合成樹脂として用い、蒸着雰囲気温度を25℃から前記粒状合成樹脂の融点の範囲に制御すると同時に、連続して蒸着する蒸着時間を0.01secから0.2sec以下に制御して行われ、
前記蒸着源からの蒸発物質が、前記粒状合成樹脂表面上へ間欠的に到達し、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持されることを特徴とする、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有する金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌剤及びそれを用いた抗菌用品に関する。特に、抗菌効果の期限切れが視認することができる抗菌剤及びそれを用いた抗菌用品に関する。
【背景技術】
【0002】
1900年代後半、人間の物質的欲求がある程度満足されると、清潔で罹患しない快適な生活環境、すなわち、目に見えない真菌、細菌、及び、ウイルス等の病原体から保護され、悪臭もなく清浄な空気に囲まれた生活環境に対する要求が急速に高まってきた。それと呼応するように、1985年頃、安定性及び安全性に課題を有していた有機抗菌剤に対し、安定性及び安全性に優れた銀を用いた無機抗菌剤の出現により、家庭・台所用品、食品容器・包材、衣料品、文具・おもちゃ、電気・電子製品、住宅・建材、及び、車両・航空機等に至るまで抗菌加工処理が施された抗菌用品の用途が拡大した(例えば、特許文献1及び非特許文献1)。しかし、「抗菌」という用語が、適正に理解されることがなく、病原性を有する真菌、細菌、及び、ウイルスに限定されず、病原性がない微生物も含めた、滅菌、殺菌、消毒、除菌、静菌、制菌、防腐、防菌、及び、防黴等も含めた総称として一般消費者に広まり、これらの学術的に類似した用語の区別もなく、抗菌用品の効果効用に対する誤解も多い状況にあった(例えば、非特許文献2及び3)。このため、現在では、ISOのプラスチック専門委員会年次大会で承認され国際標準化された抗菌試験方法が、ISO22196として発行されるに至り、一般社団法人抗菌製品技術協議会(Society of International sustaining growth for Antimicrobial Articles, SIAA)が、ISO2216番号入りSIAAマークを運用し管理するまでになっている(非特許文献4)。
【0003】
このような抗菌用品の需要拡大は、無機抗菌剤の高性能化を促進する原動力となり、その開発が進められてきた結果、多数の無機抗菌剤が商品化されてきた。従来は、抗菌化学種である銀イオン等の金属イオンを溶出する、金属イオンを配位させて担持した各種無機担体、又は、抗菌化学種を溶出しない、光触媒酸化チタン粒子等を無機抗菌剤として利用されることが一般的であった(例えば、特許文献1、非特許文献1及び5)。その後、多岐多様に亘る技術分野において数々の潜在的可能性を秘めているナノテクノロジーの特徴の一つであり、この分野で極めて重要な役割を果たす比表面積を追求し、微粒子化、更には、ナノ粒子化した抗菌性金属を無機抗菌剤として利用する技術が着目されると共に、金属微粒子及び金属ナノ粒子の製造方法が検討されてきた(例えば、特許文献2~9)。金属微粒子及び金属ナノ粒子も、金属イオンを配位させて担持した各種無機担体同様、抗菌化学種を溶出する無機抗菌剤の範疇に入るが、粒子径が小さい程比表面積が大きくなり、金属イオンの溶出量が増加するが、金属イオンを担持した各種無機単体よりも単位時間当たりの溶出量が少ないため、抗菌効果を損なうことなく寿命が長いという特長を有している。
【0004】
そして、このような無機抗菌剤の抗菌メカニズムは、抗菌化学種を配位させて担持した各種無機担体の場合のように、抗菌化学種を溶出する場合と、光触媒二酸化チタンの場合のように、固体で機能して抗菌化学種を溶出しない場合とでは、プロセスが異なっているものの、最終的な抗菌作用は、活性酸素及びヒドロキシラジカルが、有機物である微生物を酸化分解することにおいては一致しているものと考えられている(例えば、非特許文献3)。
【0005】
一方、抗菌作用の寿命に関する情報は極めて少ないが、一般的に、抗菌化学種を配位させて担持した各種無機担体のような抗菌化学種を溶出する無機抗菌剤の抗菌性を持続する寿命は短く、固体で機能する光触媒二酸化チタンのような抗菌化学種を溶出しない無機抗菌剤の抗菌性を持続する寿命は長いと考えられている(例えば、非特許文献5)。このことは、抗菌化学種を溶出しない無機抗菌剤の寿命が半永久的であることを意味していると考えられる。また、抗菌化学種を溶出する無機抗菌剤にしても、抗菌化学種の単位時間当たりの溶出量は極めて少なく、抗菌化学種を溶出しない無機抗菌剤よりも寿命が短いとはいえ、有機抗菌剤よりも遥かに長い期間に亘って抗菌性を発現することができるという無機抗菌剤の特徴を損なうものではない。そして、金属微粒子及び金属ナノ粒子は、金属イオンを溶出する範疇の無機抗菌剤であるが、金属イオンを配位しているものではなく、固体として機能するため、金属イオンの単位時間当たりの溶出量は、抗菌化学種を配位させて担持した各種無機担体よりも少なく、抗菌化学種を溶出しない無機抗菌剤と匹敵する寿命を有していると考えることができる。
【0006】
しかしながら、無機抗菌剤の寿命において留意しなければならないことは、抗菌化学種を配位させて担持した各種無機担体、光触媒二酸化チタン、並びに、金属微粒子及び金属ナノ粒子の抗菌性を持続する寿命が、無機抗菌剤自体の脱離や脱落等の物理的要因によって支配されるということである(例えば、特許文献2~4、6、7、及び、9、並びに、非特許文献6)。いずれの無機抗菌剤も、成形加工される抗菌用品に適用する場合、微生物を含む環境と接触して抗菌作用を発揮する必要があるため、抗菌用品の表面近傍に固定されている無機抗菌剤が効果的であるが、環境との接触条件によっては、簡単に脱離する可能性がある(特許文献2、4、及び、7)。また、高温高湿、温度変化、及び、太陽光等へ長期間に亘って曝露される厳しい環境条件では、抗菌用品の劣化によって、無機抗菌剤の脱落の可能性もある(例えば、非特許文献6)。特に、金属微粒子及び金属ナノ粒子が担持された担体の無機抗菌剤は、担体からの脱離を懸念する必要がある(例えば、特許文献3、6)。段落0005に示したように、無機抗菌剤自体には、有機抗菌剤と比較して、優れた安定性及び安全性を有しているが、このような無機抗菌剤の脱離や脱落による抗菌効果の消失に対する関心は低く、上記無機抗菌剤自体の寿命よりも極度に短いにもかかわらず、抗菌用品の使用者が、抗菌効果の消失を知覚できる技術は開示されていない(例えば、特許文献2~9、並びに、非特許文献1~6)。
【0007】
例えば、家庭用品で抗菌効果が求められる洗濯ボールに係る特許文献を調査しても、洗剤量削減、型崩れ防止、選択効率向上、及び、抗菌作用の均質化等の改良に関する記載は認められるものの、洗濯ボールの使用者が、その抗菌効果が消失する時期を知覚できる技術は全く開示されていない(例えば、特許文献10~13)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2000-001621号公報
【特許文献2】特開平11-181327号公報
【特許文献3】特表2009-511754号公報
【特許文献4】特開2010-047862号公報
【特許文献5】特開2011-195931号公報
【特許文献6】特開2012-201623号公報
【特許文献7】特開2015-120896号公報
【特許文献8】特開2017-000969号公報
【特許文献9】特開2018-135440号公報
【特許文献10】特開2004-238602号公報
【特許文献11】特開2008-142492号公報
【特許文献12】特表2015-505504号公報
【特許文献13】特開2020-069370号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】山本則幸、杉浦晃治、「銀系無機抗菌剤「ノバロン」の特長と応用」、東亜合成研究年報、TREND 1998 創刊号、pp.28-33.
【非特許文献2】菊地靖志,「抗菌性金属材料の現状と課題」,まてりあ,第39巻,第2号,pp. 146-150(2000).
【非特許文献3】石田恒雄,「抗菌剤の特性と抗菌メカニズム」,マテリアルライフ学会誌,23巻,1号,pp.21-32(2011).
【非特許文献4】平沼進,「抗菌・防カビ・抗ウイルス・抗バイオフィルム加工製品普及のための認証機関としてのSIAAの取り組み消臭抗菌繊維と表面処理」,表面技術,Vol.72,No.5,pp.265-268(2021).
【非特許文献5】今井茂雄,久野裕明,山田剛,前田拓也,高麗寛紀,「銀添加セラミックスの抗菌作用機構」,無機マテリアル,Vol.6,Nov.,283号,pp.451-456(1999).
【非特許文献6】天野良三,宮本博幸,「樹脂系人造大理石の抗菌加工」,無機マテリアル,Vol.6,Nov.,283号,pp.541-546(1999).
【非特許文献7】塚根永芳,「高分子の熱的特性」,[on line],[2022年12月26日検索],インターネット<http://www.chem.eng.osaka-u.ac.jp/sangaku_polymer/pdf/B/B-01.pdf>.
【非特許文献8】神戸博太郎,「高分子の熱的性質と分子構造」,高分子,Vol.17,No.196,pp.650-655(1965),[on line],[2022年12月26日検索],インターネット<https://www.jstage.jst.go.jp/article/kobunshi1952/17/7/17_7_650/_pdf>.
【非特許文献9】瑞穂化成工業株式会社,「プラスチックの物性一覧表」,[on line],[2022年12月26日検索],インターネット<http://mizuhokasei.co.jp/pdf/resin.pdf>.
【非特許文献10】華陽物産株式会社,「プラスチック物性一覧表(熱可塑性)」,[on line],[2022年12月26日検索],インターネット<https://kayo-corp.co.jp/common/pdf/pla_propertylist01.pdf>.
【非特許文献11】「砥石」と「研削・研磨」の総合情報サイト,「プラスチックの種類と用途、物性について」,[on line],[2022年12月26日検索],インターネット<https://www.toishi.info/sozai/plastic/>.
【非特許文献12】株式会社ミスミグループ本社,「樹脂のガラス転移温度Tg」,[on line],[2022年12月26日検索],インターネット<https://jp.misumi-ec.com/tech-info/categories/plastic_mold_design/pl09/c0840.html>.
【非特許文献13】DIC株式会社,「DIC.PPSの基本的性質」,[on line],[2022年12月26日検索],インターネット<https://www.dic-global.com/pdf/products/catalog/dic_pps_property.pdf>.
【非特許文献14】株式会社KDA,「プラスチックの基礎知識 プラスチックの物性」,[on line],[2022年12月27日検索],インターネット<https://www.kda1969.com/materials/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
背景技術で説明したように、無機抗菌剤を使用した抗菌用品が多岐に亘り使用されているが、抗菌用品の使用者が、その抗菌効果が消失したことを知覚できる抗菌用品は認められず、使用できる抗菌用品を廃棄する、逆に、使用できない抗菌用品を繰り返し使用するということが生じる。取扱説明書に頼ることもできるが、それを廃棄する使用者も多い。
【0011】
本発明は、このような無機抗菌剤を使用した抗菌用品の利便性の悪さを解消することを目的として、抗菌用品の使用者が、抗菌効果が消失したことを知覚することができる抗菌剤及びそれを用いて抗菌効果が消失したことを知覚することができる抗菌用品、すなわち、期限切れ表示機能を有する抗菌剤及びそれを用いた期限切れ表示機能を有する抗菌用品を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、長年に亘り、物理蒸着法を用い、被蒸着体である各種担体上に抗菌性を有する金属ナノ粒子を生成する技術開発を行ってきた(特許文献8及び9)。その過程で、被蒸着体である担体として合成樹脂を用いた場合、蒸着条件と担体の熱的性質との間に、抗菌性金属ナノ粒子と担体との付着力を制御可能な関係があることを見出し、熱的性質の異なる各種合成樹脂担体上に、様々な蒸着条件で抗菌性金属ナノ粒子を生成することによって本発明の完成に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、物理蒸着が、抗菌性を有する金属を蒸着源として用いると共に、粒状合成樹脂を被蒸着体として用い、連続して蒸着する蒸着時間を0.01secから0.2secの範囲に制御すると同時に、蒸着雰囲気温度を25℃から被蒸着体である粒状合成樹脂の融点(Tm)の範囲に制御して行われ、蒸着源からの蒸発物質が、粒状合成樹脂表面上へ間欠的に到達し、粒状合成樹脂表面上で生成して粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される抗菌性を有する金属のナノ粒子が、粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤である。
【0014】
ここで、連続して蒸着する蒸着時間とは、蒸着源からの蒸発物質が被蒸着体に所定の時間の間隔を持って間欠的に蒸着されることである。また、Tmは、示差走査熱量測定(DSC、Differential Scanning Calorimetry)を用いた測定値とする。なお、以下、本発明を説明するために使用する高分子のガラス転移温度(Tg)及び熱変形温度(HDT,Heat Distortion Temperature)は、次の方法によって求められる測定値とする。Tgは、Tm同様、DSCを用いた測定値である。HDTは、荷重たわみ温度(Temperature of Deflection under Load)とも称され、JIS K7191又はASTM D648に基づいて測定される温度である。この測定方法を簡単に説明すると、JIS K7191及びASTM D648共に、特定の長さの試験片の三点曲げ試験において、一定の荷重を設定して試験片に負荷し、120℃/hrの速度で昇温し、曲げ歪の増加分が0.2%となる時の温度である。ここで、その荷重が微妙に異なっており、JIS K7191の荷重が、1.80MPa及び0.45MPaであり、それらに対応するASTM D648の荷重が、18.5kgf/cm2(1.82MPa)及び4.6kgf/cm2(0.46MPa)である。
【0015】
また、本発明の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、抗菌性金属ナノ粒子の抗菌効果の期限切れを表示できるのは、抗菌性金属ナノ粒子が担持されている粒状合成樹脂は抗菌性金属ナノ粒子固有の色に着色しているが、抗菌性金属ナノ粒子が粒状合成樹脂から脱離することによって、粒状合成樹脂固有の色に近づくことに基づいている。
【0016】
ここで重要な点が、抗菌性金属ナノ粒子と粒状合成樹脂の付着力であり、この付着力が、本発明の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤を、流体と接触して使用する場合、例えば、洗濯ボールや水洗トイレ清浄用品等の水を清浄にし、清潔に保つことを目的に使用する場合、抗菌効果の持続力と密接な関係がある。金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤と流体との適度な接触時間が経過すると、抗菌性金属ナノ粒子が粒状合成樹脂から脱離して変色し、抗菌効果の期限切れを表示するのである。この適度な接触時間は、流体の流量や流速等によって変化するため、特定することはできないが、色変化という視認可能な手段によって使用者に期限切れを知らせることができるので、極めて分かり易く、どのような用途においても、色変化という同一基準で期限切れが認識することができる。しかも、この適度な接触時間の間に、脱離した抗菌性金属ナノ粒子が、本発明の抗菌用品が使用される、例えば、洗濯機や水洗トイレ等の排水系を清潔に保つ効果も奏するので、抗菌性金属ナノ粒子が半永久的に粒状合成樹脂に付着していないことが好ましく、期限切れ表示機能は、排水系の抗菌効果の期限切れ表示機能を兼備している。
【0017】
そして、抗菌性金属ナノ粒子と粒状合成樹脂との付着力に大きな影響を及ぼすのが、被蒸着体が蒸着物質に曝露されて蒸着物質が被蒸着体上に連続して蒸着する時間と定義される連続蒸着時間と蒸着雰囲気温度であることを見出した。これは、この付着力が、被蒸着体である合成樹脂の熱的性質と関連が深いためである。合成樹脂は、温度上昇に伴って、合成樹脂を構成する高分子の分子運動が活発になり、剛性を有する弾性体から粘性を有するゴムのような粘弾性体へと状態及び物性が変化する。このため、連続蒸着時間が長くなるに従って発生する熱による粒状合成樹脂表面近傍の状態変化及び物性変化、並びに、蒸着雰囲気温度の上昇に従って蒸着雰囲気と接触する粒状合成樹脂表面近傍の状態変化及び物性変化が、抗菌性金属の蒸発物質が粒状合成樹脂上に間欠的に到達して生成する抗菌性金属ナノ粒子と粒状合成樹脂との付着力に影響を及ぼすものと考えられる。
【0018】
更に、合成樹脂の表面自由エネルギーの大きさもこの付着力と関係があり、表面自由エネルギーが小さい程、すなわち、疎水性(撥水性)である程、金属ナノ粒子との付着力が乏しくなることも見出した。一般的な金属粒子表面が、酸化された親水性であることと対応しているものと考えられる。
【0019】
まず、連続蒸着時間については、既に、特許文献9に示されているように、金属ナノ粒子を生成するために重要な因子であるが、その後の連続蒸着時間をパラメーターとした実験において、抗菌性金属ナノ粒子と粒状合成樹脂の付着力にも関係しており、0.01secから0.2secの範囲に制御することが好ましいことが分かった。連続蒸着時間が0.01sec未満であると付着力が小さくなり、抗菌性金属ナノ粒子の粒状合成樹脂からの脱離が激しくなり、抗菌効果が長く持続するという無機抗菌剤の特徴に反した期限切れとなり、期限切れ表示機能を果たすことができない。逆に、連続蒸着時間が0.2secを超えると付着力が大きくなり、抗菌性金属ナノ粒子の粒状合成樹脂からの脱離が困難になり、排水系に対する抗菌効果を発現できないことが分かった。この現象の明確な原因は定かではないが、このように、連続蒸着時間が長い場合、抗菌性金属の蒸発物質の熱が、蒸着時間が長くなるに従って粒状合成樹脂表面近傍の温度を上昇させ、蒸発物質が粒状合成樹脂表面で生成するナノ粒子が、粒状合成樹脂表面に埋もれるように担持され、接着技術の分野で接着に寄与する力学的効果、すなわち、アンカー効果(投錨効果)が発現するためであると考えられる。逆に、連続蒸着時間が短い場合は、アンカー効果が期待できず、抗菌性金属ナノ粒子の粒状合成樹脂に対する接着力が弱いためであると考えられる。この考え方の基本には、異種材料接着は極めて困難であり、この接着にファンデルワールス(Van der Waals)力、水素結合力、イオン結合力、及び、共有結合力等の化学的効果が期待できないということがある。
【0020】
次に、蒸着雰囲気温度が付着力に及ぼす影響であるが、蒸着雰囲気温度を25℃から粒状合成樹脂のTmの範囲に制御することが好ましいことが分かった。蒸着雰囲気温度が、25℃以下であると、抗菌性金属ナノ粒子の粒状合成樹脂からの脱離が激しくなり、Tmに近づくに従って、抗菌性金属ナノ粒子の粒状合成樹脂からの脱離が困難になるためであり、連続蒸着時間と同様の原因に基づいているものと考えられる。また、後述するように、特許文献9と同様、本発明の抗菌性金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤の製造は、粒状合成樹脂を循環させながら抗菌性金属の物理蒸着を行うため、粒状合成樹脂の特性にも依存するが、Tmを超えた物理蒸着は厳しくなる。
【0021】
この場合は、蒸着雰囲気温度から、粒状合成樹脂表面近傍の温度がおよそ推測できるため、連続蒸着時間では困難であった、金属ナノ粒子と粒状合成樹脂との付着力に及ぼす粒状合成樹脂の状態及び物性の影響を詳しく解析することができる。
【0022】
多くの汎用的な合成樹脂のTg及びTgと関連性が深いHDTは、通常、25℃から粒状合成樹脂のTmの範囲にあり、このTg及びHDT以上の蒸着雰囲気温度とすることによって、抗菌性金属ナノ粒子と粒状合成樹脂との適度な付着力となることが実験的に認められたので、Tg及びHDTが関係しているものと推察される。合成樹脂のTgとは、合成樹脂を構成する高分子は、同じ分子の繰り返しから成り、高分子の重心移動はないが、高分子を構成する複数の同じ分子の繰り返しであるセグメントの主鎖及び/又は側鎖の回転や振動等の分子運動が開始される温度であると定義される。従って、Tg以上においては、合成樹脂が強固な弾性体ではなく、ゴムのような粘弾性的な性質を帯びてくるため、蒸発物質が、粒状合成樹脂表面に衝突して生じるアンカー効果が、適度な付着力を持ってナノ粒子として形成されるのであるが、それ以下では、粒状合成樹脂が硬く、アンカー効果による付着力が生起しないものと考えられる。また、HDTは、このようなTg付近から生起する分子運動によるゴムのような粘弾性的な性質に基づく合成樹脂試験片のマクロな変形開始温度であるため、Tgと同様又はTg以上に、付着力とHDTとの関連性を考えることができる。このことは、
図1の表1各種粒状合成樹脂の熱的性質から明らかなように、例えば、ポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂は、0℃以下のTgであるが、30~120℃にHDTを有し、25℃未満よりも、25℃以上の方が好ましい付着力であることが示している。しかし、粒状合成樹脂のTmに近づくと、高分子の重心移動は勿論のこと、分子レベルだけではなく、合成樹脂の形態の変化が認められる場合もあるので、蒸発物質が、粒状合成樹脂表面に衝突して生じるアンカーが深く、アンカー効果が大きくなり、強固な付着力を持って金属ナノ粒子として形成され、粒状合成樹脂表面からの金属ナノ粒子の脱離が困難となるものと考えられる。なお、25℃以上の蒸着雰囲気温度としたのは、生産技術的観点から、蒸着装置の温度制御が容易であるということも要因の一つとして含まれる。このように、蒸着雰囲気温度と付着力との関連性は、連続蒸着時間と付着力との関連性を示唆しているものと考えられる。
【0023】
このように、本発明の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤は、金属ナノ粒子と粒状合成樹脂抗菌剤との付着力によって定義されるべきものであるが、付着力を測定する技術は存在しない。つまり、本発明の期限切れ表示機能を有することを特徴とする金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤は、その特性により直接特定することが相応しい物の発明であるが、この特定が出願時において不可能であり、これらを特定するためには、高度な技術開発のための多大な労力を要し、特許権が先願主義であるという実情にそぐわない、およそ実際的でないという事情が存在するため、物の発明ではあるが、段落0013のように、本発明を特定された条件で製造された期限切れ表示機能を有することを特徴とする金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤と記載する請求項1とした。以下の説明に係る、物の発明に関する請求項についても、その物の製造方法が記載されているが、不可能・非実際的事情が存在し、請求項1と全く同様の理由で物の発明とした。
【0024】
さて、本発明の抗菌性金属としては、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、コバルト(Co)、及び、ニッケル(Ni)、並びに、これらから選択される二種以上の金属を含む合金が好ましく、粒状合成樹脂としては、高分子セグメントの回転や振動の分子運動が生起し易い熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、物理蒸着法としては、金属ナノ粒子を製造し易い、蒸着法、イオンプレーティング法、及び、スパッタリングが好ましく用いられる。すなわち、本発明は、物理蒸着が、蒸着源である抗菌性を有する金属として、Ag、Cu、Au、Pt、Co、及び、Niから選択されるいずれか一つ以上の金属、又は、Ag、Cu、Au、Pt、Co、及び、Niから選択される二種以上の金属を含む合金を用いると共に、被蒸着体である粒状合成樹脂として、熱可塑性樹脂を用い、蒸着法、イオンプレーティング法、及び、スパッタリング法から選択されるいずれかの方法で行われ、粒状合成樹脂表面上で生成し、粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される上記金属のナノ粒子が、粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤である。
【0025】
特に、文献値である
図1の表1各種粒状合成樹脂の熱的性質として、Tg及びHDT、特に、荷重1.80MPa又は18.5kgf/cm
2におけるHDT、を指標として、粒状合成樹脂を検討した結果、次に示す熱可塑性樹脂が好ましい。すなわち、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリフッ化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択されるいずれか一つ以上を用いて、上記抗菌性金属の物理蒸着が行われることが好ましい。
【0026】
このように、汎用的な熱可塑性合成樹脂が本発明には好ましく、分子運動が束縛され、耐熱性に優れた熱硬化性樹脂や耐熱性に優れたエンジニアリングプラスチックは、金属ナノ粒子との付着力が乏しくなる。逆に、0℃より低い温度にTgを有する、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、及び、シリコーン系樹脂は、それらのTmに蒸着雰囲気温度を近づけて、抗菌性金属ナノ粒子を粒状合成樹脂上に生成すると、付着力が強くなる傾向があり、抗菌効果の期限切れが長くなり過ぎる場合がある。そのため、蒸着雰囲気温度は、25℃から150℃の範囲に制御することがより好ましい。
【0027】
更に、熱可塑性樹脂の中でも、表面自由エネルギーの小さい、すなわち、疎水性の粒状合成樹脂である、ポリフッ化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、及び、シリコーン系樹脂と抗菌性金属ナノ粒子との接着性がやや弱いため、蒸着雰囲気温度を25℃から150℃の範囲に制御しても、合成樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からから選択されるいずれか一つ以上を用いることがより更に好ましい。これは、一般に、異種材料の接着が、力学的には、アンカー効果、化学的には、ファンデルワールス力、水素結合力、イオン結合力、及び、共有結合力等によって決定され、本発明においては、アンカー効果が支配的であるが、一般的な金属粒子表面が、酸化された親水性であることと対応し、ファンデルワールス力及び水素結合力が期待できない疎水性粒状合成樹脂と抗菌性金属ナノ粒子との付着力が多少弱くなるものと考えられるためである。
【0028】
特に、物理蒸着が、抗菌性を有する金属として、Ag、Cu、Au、Pt、Co、及び、Niから選択されるいずれか一つ以上の金属、又は、又は、Ag、Cu、Au、Pt、Co、及び、Niから選択される二種以上の金属を含む合金を用いると共に、連続して蒸着する連続蒸着時間を0.01secから0.2secの範囲に制御すると同時に、蒸着雰囲気温度を40℃から130℃の範囲に制御し、粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択される一つ以上を用いて行われ、粒状合成樹脂表面上で生成して粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される金属のナノ粒子が、粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が最も好ましい。これは、金属ナノ粒子と粒状合成樹脂との付着力が、Tgよりも、HDTという実際的でマクロな熱的性質によって決定されるためと考えられ、
図1の表1各種粒状合成樹脂の熱的性質に示されているHDTが、40℃から130℃の蒸着雰囲気温度範囲内に包含されている粒状合成樹脂において、最も良好な結果が得られた。また、偶然であるが、連続蒸着時間との最適化も図られたものと推測している。
【0029】
一方、物理蒸着によって粒状合成樹脂上に生成される抗菌性金属のナノ粒子の平均粒子径は、約1~50nmとなるように制御されることが好ましい。ナノテクノロジーの技術的特徴によれば、抗菌性金属ナノ粒子の抗菌効果は、その比表面積に伴って大きくなると考えられ、その平均粒子径は小さい程好ましい。しかし、本発明のように、抗菌性金属ナノ粒子が粒状合成樹脂表面上で生成して、粒状合成樹脂に適度な付着力で担持される場合、単純に比表面積だけに依存するのではなく、適度なアンカー効果による付着力が求められると共に、粒状合成樹脂表面上で均一に分散して存在することによって、比表面積の低減を防止する必要がある。また、粒子径が小さすぎる金属ナノ粒子は着色力、言い換えれば、粒状合成樹脂の隠蔽力に劣る。以上の観点から、抗菌性金属のナノ粒子の平均粒子径は、約1~50nmであることが好ましいが、約5~50nmであることがより好ましく、約10~50nmであることがより更に好ましい。
【0030】
更に、物理蒸着による粒子粒状合成樹脂に対する抗菌性金属ナノ粒子の付着量は、粒状合成樹脂表面上に均一に分散して存在すると共に、粒状合成樹脂を隠蔽する必要があり、粒状合成樹脂に対して、約0.005~0.5重量%の抗菌性金属ナノ粒子が付着するように制御することが好ましく、約0.01~0.5重量%であることがより好ましく、約0.02~0.5重量%であることがより更に好ましい。特に、段落0029に示した平均粒子径の抗菌性金属ナノ粒子が、このような付着量にあることが好ましい。
【0031】
このような本発明の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤は、本明細書で説明した抗菌性金属及び粒状合成樹脂のいずれを用いても、制御された連続蒸着時間及び蒸着雰囲気温度の下で製造されたものであれば、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入して、期限切れ表示機能を有する幅広い抗菌用品として使用することができる。すなわち、本発明の抗菌用品は、本発明の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品である。
【0032】
内部を視認することができ、通液可能な収容部材は、本発明の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、通液可能な収容部材から漏出されなければ、特に限定されるものではなく、各種産業分野で使用されている技術を用いることができる。例えば、通液可能な所定数以上の開孔部が備えられている透明なプラスチック容器及びプラスチック袋、通液可能な所定数以上の開孔部が備えられていると共に透明なプラスチック窓が設けられている不透明なプラスチック容器及びプラスチック袋、並びに、透明なプラスチック窓が設けられている通液可能な不織布、織布、及び、編布等の袋体等が好ましい。更に、収容部材は、金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤を入替え可能な構造であって、嵌合及び螺合等による組立式の容器、開口部が開閉可能に備えられている容器及び袋体等であることが好ましく、その開口部は、プラスチック容器の場合、ネジ式キャップ及び嵌合蓋等、袋体の場合、ファスナー及び面ファスナー等で設けられることができる。
【0033】
そして、本発明は、本明細書で説明した金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤の製造方法を提供するものでもある。すなわち、本発明は、物理蒸着が、抗菌性を有する金属を蒸着源として用いると共に、粒状合成樹脂を粒状合成樹脂として用い、蒸着雰囲気温度を25℃から前記粒状合成樹脂の融点の範囲に制御すると同時に、連続して蒸着する蒸着時間を0.01secから0.2sec以下に制御して行われ、蒸着源からの蒸発物質が、粒状合成樹脂表面上へ間欠的に到達し、金属のナノ粒子が、粒状合成樹脂表面上で生成して粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持されることを特徴とする、金属のナノ粒子が、粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有する金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤の製造方法である。
【0034】
本発明の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤の製造方法は、上記金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤について記載されている、抗菌性金属、粒状合成樹脂、及び、蒸着雰囲気温度から選択して適宜使用することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤及びそれを用いた抗菌用品を、家屋をはじめ、病院、映画館、及び、学校等の公共施設、並びに、自動車、車両、及び、航空機等の交通手段等における、トイレ、洗面所、浴槽、及び、アクアリウム等の水を中心とする液体及びそれらの排水系に利用することによって、抗菌性金属ナノ粒子が、徐々に脱離していくため、使用液及び排液を清潔に保つだけでなく、排液系を含む設備全体を清潔に保持することができるという効果を奏する。そして、抗菌効果の有効期限が抗菌剤の色変化で表示されるため、誰もが、時期を誤ることなく、容易かつ正確に抗菌剤を交換することができるので、無機抗菌剤の特徴である、長期間に亘る安定した抗菌効果を持続すると共に、取替えることによって半永久的に抗菌効果を継続することができるという効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤を検討するにあたって、粒状合成樹脂の選択の指標とした粒状合成樹脂の熱的性質の文献値である。
【
図2】本発明一実施形態に係る、物理蒸着によってAgナノ粒子が担持されている、期限切れ表示機能を有するAgナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤を製造し、それを用いて構成される期限切れ表示機能を有する抗菌用品に至る概要図である。
【
図3】本発明一実施形態に係る、Agナノ粒子が担持されている、期限切れ表示機能を有する粒状ポリエチレンテレフタレート(PET)抗菌剤を製造するイオンプレーティング装置の概要模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る、Agナノ粒子が担持されている、期限切れ表示機能を有する粒状PET抗菌剤を用いた、期限切れ表示機能を有する抗菌用品である洗濯ボールの概要模式図である。
【
図5】
図3に示す洗濯ボールをドラム式洗濯機で使用する方法を示す概要模式図である。
【
図6】
図4に示す洗濯ボールを
図5に示す洗濯機で使用した洗濯回数と、Agナノ粒子の担持率及びAgナノ粒子担持粒状PET抗菌剤の色相との関係を示している。
【
図7】本発明の一実施形態に係る、Agナノ粒子が担持されている、期限切れ表示機能を有する粒状ポリプロピレン(PP)抗菌剤を用いた、期限切れ表示機能を有する抗菌用品である水洗トイレ用排水清浄用品の概要模式図である。
【
図8】
図7に示す水洗トイレ用排水清浄用品を水洗トイレで使用する状況を示す概要模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面に示した実施形態を用い、本発明をより具体的に説明することによって、その技術思想を明確にすることを意図しているが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想によってのみ限定されるものである。
【0038】
図2は、本発明一実施形態に係る、物理蒸着によってAgナノ粒子が担持されている、期限切れ表示機能を有するAgナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤を製造し、それを用いて構成される期限切れ表示機能を有する抗菌用品に至る概要図である。まず、物理蒸着を行う真空系に悪影響を及ぼさない程度に乾燥させた粒状合成樹脂を用意する(1)。次いで、この粒状合成樹脂に、抗菌性金属としてAgを用い、物理蒸着法によりAgナノ粒子を担持させる(2)。このようにして、Agナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤を得る(3)。そして、この抗菌剤を、内部を視認でき、通液可能な容器に封入して抗菌用品を作製する(4)。
【0039】
図2に示した抗菌用品を作製する一連の工程において、最も重要な工程は、本発明の期限切れ表示機能を発現するように、抗菌性金属ナノ粒子を粒状合成樹脂表面上に生成する物理蒸着工程である。抗菌性金属ナノ粒子と粒状合成樹脂表面との付着力を制御することによって、金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤から、金属ナノ粒子を適度な速度で脱離させ、金属ナノ粒子の色相から粒状合成樹脂の色相への色変化で期限切れを表示するためである。
【0040】
図3には、一例として、本発明一実施形態に係る、抗菌性を有するAgナノ粒子が担持されている、期限切れ表示機能を有する粒状ポリエチレンテレフタレート(PET)抗菌剤を製造するイオンプレーティング装置の概要模式図を示した。このイオンプレーティング装置では、イオン源102、抗菌性金属であるAg蒸着源103、不活性ガス導入系108、真空排気系109を少なくとも有する蒸着槽101において、Ag蒸着源103とAg蒸着源103の下部に設けられた、Ag蒸着物質107が堆積する被蒸着物質である粒状PET110との間に、回転モーター106で精密に回転するスリット105が設けられたシャッター104を設置することによって、イオン源102によってAg蒸着源103から叩き出されるAg蒸着物質107が、間欠的に粒状PET110表面上に蒸着される。しかも、粒状PET110が均等にAg蒸着物質7に暴露されるように、スクリュー111が製造装置底部の撹拌モーター112に連結されている。この撹拌モーター112で回転されるスクリュー111によって、粒状PET110は、その移動経路114に従って循環する。すなわち、製造装置の底にある粒状PET110-1が、粒状PET110-2のように持ち上げられ、粒状PET110-3で間欠的に蒸着され(描かれていない)金属ナノ粒子が付着し、その後、一定の時間蒸着源に暴露されない粒状PET110-4に至る。
図3には、シャッター機構が配設されているが、必ずしもシャッター機構である必要はなく、精度よく粒状PET110上に金属ナノ粒子が堆積されるように、粒状PET110がAg蒸着物質107に暴露される時間を制御できる機構であれば、どのような方法でも採用することができる。例えば、イオン源102から放出されるイオンビームを直接制御する方法が挙げられる。そして、蒸着槽101全体の温度が、温度制御装置113によって管理される。
【0041】
金属ナノ粒子が、被蒸着物質である粒状合成樹脂表面上に生成する機構は定かではないが、次のように推測されている。一般的な蒸着やスパッタリング等の成膜機構の一様式であるVolmer-Weber(VW)成長、つまり、成長の初期段階から三次元的な島状の核が形成され,それらが蒸着量の増加とともに成長して合体しやがて連続的な膜となる「島状成長(Island Growth)様式」であって、蒸着物質と被蒸着物質の表面エネルギー、温度等様々なパラメーターによって、形成される膜の構造に差が生じる(特非特許文献5)。上記金属ナノ粒子の製造装置は、VW成長の成膜初期に着目し、蒸着物質が粒状合成樹脂上に連続して蒸着する蒸着時間が少なくとも0.2sec以下となるように制御し、粒状合成樹脂を撹拌しながら蒸着を行えば、常に新しい粒状合成樹脂の表面が蒸着物質に対して向けられるため、連続的な膜に至らず、3次元の海-島構造、すなわち、金属ナノ粒子が粒状合成樹脂表面上に次々と生成していくものと考えられる。
【0042】
本発明の期限切れ表示機能を有する金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤の製造においては、特に、被蒸着体が蒸着物質に曝露されて蒸着物質が被蒸着体上に連続して蒸着する時間であると定義される連続蒸着時間と、温度制御装置によって制御される蒸着雰囲気温度とが重要であり、粒状合成樹脂の熱的性質、特に、Tg及びHDTに応じて制御される必要がある。
【0043】
そこで、粒状PETとして、Tmが233℃、Tgが82℃のPETペレット(クラレ製クラペット(登録商標))を用いた場合について、
図3に示したイオンプレーティング装置を用いたAgナノ粒子担持PET抗菌剤を製造する方法をより具体的に説明する。蒸着槽101内に、PETペレットを投入し、Ag蒸着源103を備え付ける。次いで、蒸着槽101の真空度が1×10
-4~1torrになるように真空排気系109から排気しながら、不活性ガス導入系108から不活性ガスArを10蒸着槽1内に導入する。真空度が安定したら、回転モーター106及び撹拌モーター102でシャッター104及びスクリュー111を回転させながら、Ag蒸着源103のAg蒸発物質をPETペレットに対し、0.04重量%となるまで単位面積当たり1Å~10μm/分の速度で蒸発させ、Agナノ粒子をPETペレット上に生成する。この蒸発速度は、固定された平面基板上において蒸発させ、一般的な重量法で予め予備実験において求められている。そして、このようなAg金属ナノ粒子の蒸着条件として、この蒸発速度に対し、Ag蒸着物質107がPETペレット110上に連続して蒸着する連続蒸着時間が約0.15secであるようにシャッター104のスリット105の形状に応じた回転速度と設定すると共に、温度制御装置113で蒸着槽101内の蒸着雰囲気温度を85℃に設定する。
【0044】
このようにして製造されたAgナノ粒子担持PETペレット抗菌剤のAgナノ粒子は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用い、JIS H 7804:2005に準拠して、撮影倍率500,000倍で観察した約500個の粒子から平均粒子径を求めた結果、平均粒子径が約6.2nmであった。
【0045】
また、粒状合成樹脂として、Tmが162℃、HDT(ASTM D648,荷重:4.6kgf/cm2)が104℃のポリプロピレン(PP)ホモポリマーペレット(LOTTE CHEMICAL製HOPELEN FI-150)を用いた場合についても、PETペレット同様に、Agナノ粒子担持PPペレット抗菌剤を製造した。この場合、上記PPの物性力、荷重が18.5kgf/cm2のHDT(ASTM D648,荷重:18.5kgf/cm2)が50~60℃であると推定されるので、蒸着雰囲気温度だけを60℃に設定すること以外は上記PETペレットと全く同様にAgナノ粒子をPPペレット表面上に生成して、Agナノ粒子担持PPペレット抗菌剤を製造した。この場合のAgナノ粒子の平均粒子径は、約5.9nmであった。
【0046】
このようにして製造されたAgナノ粒子担持PETペレット抗菌剤11は、
図4に示すように、洗濯ボール用抗菌剤として用いられた。洗濯ボール10は、多数の通水孔15を形成した、窓付き容器上部12と容器下部13が嵌合部14で分解及び組立て可能な構成となっている。この洗濯ボールを
図5に示すドラム式洗濯機200のドラム202に投入して、繰返し選択を行った。その結果の一例を
図6に示した。
【0047】
図6は、
図4に示す洗濯ボールを
図5に示すドラム式洗濯機200で使用した洗濯回数と、Agナノ粒子の担持率及びAgナノ粒子担持PETペレット抗菌剤の色相との関係を示している。
図6から明らかなように、使用前のAgナノ粒子担持PETペレット抗菌剤は、Agナノ粒子の色相を呈しているが、洗濯回数と共に色相が変化し、次第に、PETペレットの色相に近づくが、洗濯に使用する前のAgナノ粒子の担持率を100%とした場合の担持率が約20%となると、使用者が、効果的な抗菌性が損なわれる可能性があることを視認できる程度の色相まで変化しているので、期限切れであることが分かる。この洗濯を繰り返し使用する間に、脱離したAgナノ粒子が、洗濯機の排水系に流入して清潔に保つことができる。
【0048】
一方、Agナノ粒子担持PPペレット抗菌剤21については、
図7に示すように、内部を視認可能な窓23及び抗菌剤を交換可能なファスナー24を備えている不織布袋体22に封入し、
図8に示すように、水洗トイレ300のロータンク303内や、手洗い吐水口305下でロータンク蓋304上に配備して、排水清浄用品として用いている例を示した。この場合も、Agナノ粒子担持PPペレット抗菌剤が、水洗トイレ300のロータンク303に貯留される水を清浄化すると共に、Agナノ粒子の脱離によって、水洗トイレ300の排水系も清浄化され、その期限切れを視認することができる。この場合のテスト結果を示していないが、約60回の水洗トイレ300の使用で期限切れの色相変化が視認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤及びそれを用いた抗菌用品は、抗菌性金属ナノ粒子が、徐々に脱離していくため、使用液及び排液を清潔に保つだけでなく、排液系を含む設備全体を清潔に保持することができると共に、抗菌効果の有効期限が抗菌剤の色変化で表示されるため、誰もが、時期を誤ることなく、容易かつ正確に抗菌剤を交換することができるので、無機抗菌剤の特徴である、長期間に亘る安定した抗菌効果を持続し、更に、交換することによって半永久的に抗菌効果を継続することができるため、家屋をはじめ、病院、映画館、及び、学校等の公共施設、並びに、自動車、車両、及び、航空機等の交通手段等における、トイレ、洗面所、浴槽、及び、アクアリウム等の水を中心とする液体及びそれらの排水系に利用することができるだけでなく、更に活用範囲が広がると考えられ、その産業上の利用可能性は極めて高い。また、本発明の粒状合成樹脂に金属ナノ粒子を担持させる、蒸着条件を制御する物理蒸着ナノテクノロジーは、抗菌剤だけでなく、各種無機/有機複合材料の製造技術として活用できる可能性があるという観点からも産業上の利用可能性が期待される。
【符号の説明】
【0050】
10 期限切れ表示機能を有する洗濯ボール
11 期限切れ表示機能を有するAgナノ粒子担持粒状PET抗菌剤
12 窓付き容器上部
13 容器下部
14 上下容器嵌合部
15 通水孔
16 窓
20 期限切れ表示機能を有する水洗トイレ清浄用品
21 期限切れ表示機能を有するAgナノ粒子担持粒状PP抗菌剤
22 窓付き不織布袋体
23 窓
24 ファスナー
100 イオンプレーティング装置
101 蒸着槽
102 イオン源
103 Ag蒸着源
104 シャッター
105 スリット
106 回転モーター
107 Ag蒸着物質
108 不活性ガス導入系
109 真空排気系
110 粒状PET
111 スクリュー
112 撹拌モーター
113 温度制御装置
114 粒状PETの移動経路
200 ドラム式洗濯機
201 ドア
202 ドラム
203 操作パネル
204 前面パネル
300 水洗トイレ
301 便器本体
302 便蓋
303 ロータンク
304 ロータンク蓋
305 手洗い吐水口
【手続補正書】
【提出日】2023-01-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理蒸着が、抗菌性を有する金属を蒸着源として用いると共に、粒状合成樹脂を被蒸着体として用い、連続して蒸着する蒸着時間を0.01secから0.2secの範囲に制御すると同時に、蒸着雰囲気温度を25℃から前記粒状合成樹脂の融点の範囲に制御して行われ、
前記蒸着源からの蒸発物質が、前記粒状合成樹脂表面上へ間欠的に到達し、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項2】
前記物理蒸着が、前記抗菌性を有する金属として、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、コバルト(Co)、及び、ニッケル(Ni)から選択されるいずれか一つ以上の金属、又は、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、コバルト(Co)、及び、ニッケル(Ni)から選択される二種以上の金属を含む合金を用いると共に、前記粒状合成樹脂として、熱可塑性樹脂を用い、蒸着法、イオンプレーティング法、及び、スパッタリング法から選択されるいずれかの方法で行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項1に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項3】
前記物理蒸着が、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリフッ化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択されるいずれか一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項4】
前記物理蒸着が、前記蒸着雰囲気温度を25℃から150℃の範囲に制御し、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリフッ化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択されるいずれか一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項5】
前記物理蒸着が、前記蒸着雰囲気温度を25℃から150℃の範囲に制御し、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からから選択されるいずれか一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項6】
前記物理蒸着が、前記蒸着雰囲気温度を40℃から130℃の範囲に制御し、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択される一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項7】
前記物理蒸着が、前記金属のナノ粒子の平均粒子径が1~50nmとなるように制御して行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項8】
前記物理蒸着が、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂に対して、0.005~0.5重量%付着するように制御して行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項9】
前記物理蒸着が、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂に対して、0.005~0.5重量%付着するように制御して行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項7に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項11】
請求項7に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項12】
請求項8に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項13】
請求項9に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項14】
物理蒸着が、抗菌性を有する金属を蒸着源として用いると共に、粒状合成樹脂を粒状合成樹脂として用い、蒸着雰囲気温度を25℃から前記粒状合成樹脂の融点の範囲に制御すると同時に、連続して蒸着する蒸着時間を0.01secから0.2sec以下に制御して行われ、
前記蒸着源からの蒸発物質が、前記粒状合成樹脂表面上へ間欠的に到達し、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持されることを特徴とする、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有する金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤の製造方法。
【手続補正書】
【提出日】2024-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理蒸着が、抗菌性を有する金属を蒸着源として用いると共に、粒状合成樹脂を被蒸着体として用い、連続して蒸着する蒸着時間を0.01secから0.2secの範囲に制御すると同時に、蒸着雰囲気温度を25℃から前記粒状合成樹脂の融点の範囲に制御して行われ、
前記蒸着源からの蒸発物質が、前記粒状合成樹脂表面上へ間欠的に到達し、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項2】
前記物理蒸着が、前記抗菌性を有する金属として、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、コバルト(Co)、及び、ニッケル(Ni)から選択されるいずれか一つ以上の金属、又は、銀(Ag)、銅(Cu)、金(Au)、白金(Pt)、コバルト(Co)、及び、ニッケル(Ni)から選択される二種以上の金属を含む合金を用いると共に、前記粒状合成樹脂として、熱可塑性樹脂を用い、蒸着法、イオンプレーティング法、及び、スパッタリング法から選択されるいずれかの方法で行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項1に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項3】
前記物理蒸着が、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリフッ化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択されるいずれか一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項4】
前記物理蒸着が、前記蒸着雰囲気温度を25℃から150℃の範囲に制御し、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリフッ化ビニル系樹脂、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択されるいずれか一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項5】
前記物理蒸着が、前記蒸着雰囲気温度を25℃から150℃の範囲に制御し、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂からから選択されるいずれか一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項6】
前記物理蒸着が、前記蒸着雰囲気温度を40℃から130℃の範囲に制御し、前記粒状合成樹脂として、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂、酢酸セルロース系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、エチレン-酢酸ビニル系樹脂、エチレン-ビニルアルコール共重合体系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン系樹脂、アクリロニトリル-スチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ乳酸系樹脂、及び、ポリフェニレンスルフィド系樹脂から選択される一つ以上を用いて行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項2に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項7】
前記物理蒸着が、前記金属のナノ粒子の平均粒子径が1~50nmとなるように制御して行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項8】
前記物理蒸着が、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂に対して、0.005~0.5重量%付着するように制御して行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項9】
前記物理蒸着が、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂に対して、0.005~0.5重量%付着するように制御して行われ、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持される前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有することを特徴とする請求項7に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか一項に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項11】
請求項7に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項12】
請求項8に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項13】
請求項9に記載の金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤が、内部を視認することができ、通液可能な収容部材に封入されていることを特徴とする期限切れ表示機能を有する抗菌用品。
【請求項14】
物理蒸着が、抗菌性を有する金属を蒸着源として用いると共に、粒状合成樹脂を被蒸着体として用い、蒸着雰囲気温度を25℃から前記粒状合成樹脂の融点の範囲に制御すると同時に、連続して蒸着する蒸着時間を0.01secから0.2sec以下に制御して行われ、
前記蒸着源からの蒸発物質が、前記粒状合成樹脂表面上へ間欠的に到達し、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂表面上で生成して前記粒状合成樹脂表面上に適度な付着力で担持されることを特徴とする、前記金属のナノ粒子が、前記粒状合成樹脂から脱離することによって発現する期限切れ表示機能を有する金属ナノ粒子担持粒状合成樹脂抗菌剤の製造方法。