IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 独立行政法人 宇宙航空研究開発機構の特許一覧 ▶ 株式会社パナソニックシステムネットワークス開発研究所の特許一覧

<>
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図1
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図2
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図3
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図4
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図5
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図6
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図7
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図8
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図9
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図10
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図11
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図12
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図13
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図14
  • 特開-断熱材、アンテナ及び物体 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098623
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】断熱材、アンテナ及び物体
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20240717BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q15/14 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002221
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】503361400
【氏名又は名称】国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構
(71)【出願人】
【識別番号】514066561
【氏名又は名称】株式会社パナソニックシステムネットワークス開発研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 修平
(72)【発明者】
【氏名】粟野 穣太
(72)【発明者】
【氏名】田中 洸輔
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健
【テーマコード(参考)】
5J020
5J045
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020AA06
5J020BA06
5J020BC13
5J045AA05
5J045AB08
5J045DA10
5J045LA03
5J045NA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両の熱リークを減少させつつ、通信効率を向上させる断熱材、アンテナ及び物体を提供する。
【解決手段】板状アンテナと共に用いられる断熱材であって、非導電性膜と、非導電性膜の表面に設けられた電波を反射する反射膜(アルミニウム膜302)と、を備える。反射膜には、板状アンテナの放射素子の端部200に沿うようにスリット303が形成されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状アンテナと共に用いられる断熱材であって、
非導電性膜と、
前記非導電性膜の表面に設けられた電波を反射する反射膜と、
を備え、
前記反射膜には、前記板状アンテナの放射素子の端部に沿うようにスリットが形成されている断熱材。
【請求項2】
前記反射膜は、導電性を有する、
請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】
前記板状アンテナは送信アンテナであり、
前記反射膜は、前記送信アンテナから放射された電波を中継する、
請求項2に記載の断熱材。
【請求項4】
請求項3に記載の断熱材と、
前記送信アンテナと、
を備え、
前記送信アンテナは、前記断熱材の表面から、nλ/2(nは整数、λは前記送信アンテナから送信される電波の波長)だけ離れた位置に配置されている、
アンテナ。
【請求項5】
請求項1に記載の断熱材を複数積層した多層断熱材であって、
前記断熱材の表面に垂直な方向から前記多層断熱材を見た場合に、隣接する断熱材間のスリットの領域が一部重なり、かつ各断熱材のスリットがすべて同じ位置で重ならないように積層されている、
多層断熱材。
【請求項6】
前記多層断熱材は、
隣接する断熱材間のスリットの領域が第1の方向に位置がずれて積層されている第1の断熱材群と、
隣接する断熱材間のスリットの領域が前記第1の方向と異なる第2の方向に位置がずれて積層されている第2の断熱材群と、
を含む請求項5に記載の多層断熱材。
【請求項7】
前記第1の断熱材群及び前記第2の断熱材群における隣接する断熱材間のスリットの領域の位置のずれは、前記板状アンテナから送信される電波の波長の1/100以下1/1000以上の距離である、
請求項6に記載の多層断熱材。
【請求項8】
前記多層断熱材において、
各断熱材のスリットの幅は同じであり、
前記各断熱材のスリットの大きさは、受信アンテナが設けられている側の断熱材のスリットほど大きい、
請求項5に記載の多層断熱材。
【請求項9】
隣接する断熱材間の前記スリットの大きさは、前記板状アンテナから送信される電波の波長の1/100以下1/1000以上の距離だけ異なる、
請求項8に記載の多層断熱材。
【請求項10】
断熱材で覆われた構体と、
前記構体に設置され、前記断熱材の反対側に存在する受信アンテナに対して電波を送信する板状アンテナと、
を備え、
前記断熱材は、
非導電性膜と、
前記非導電性膜の表面に設けられた電波を反射する反射膜と、
を備え、
前記反射膜には、前記板状アンテナの放射素子の端部に沿うようにスリットが形成されている、
物体。
【請求項11】
板状アンテナである前記受信アンテナをさらに有する、
請求項10に記載の物体。
【請求項12】
第1の板状アンテナから通信に使用する電波を送信する工程と、
断熱材を中継アンテナとして使用して、前記第1の板状アンテナに対して前記断熱材の反対側に存在する第2の板状アンテナに対して前記電波を送信する工程と、
を含み、
前記断熱材は、
非導電性膜と、
前記非導電性膜の表面に設けられた電波を反射する反射膜と、
を備え、
前記反射膜には、前記第1の板状アンテナの放射素子の端部に沿うようにスリットが形成されている、
通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、断熱材、アンテナ及び物体に関する。
【背景技術】
【0002】
ローバ等の車両は、断熱のため、主構体が多層断熱材(MLI:Multi-layer-Insulation)という膜(フィルム)で覆われている。多層断熱材は、複数の断熱フィルムを縫製等により積層して生成されている。
【0003】
月面又は火星表面等、地球以外の星の表面探査においては、ローバで越夜をすることが求められる。越夜をするためには、長期間日陰となる夜間において各搭載機器の許容温度の下限を担保し、夜が明けて日が照る昼となった際に各搭載機器が正常に動作復帰することが必要である。
【0004】
各搭載機器の許容温度下限を担保するにはヒータが用いられるが、ヒータに必要な電力をバッテリから供給する場合、膨大な量のバッテリが必要になる。そのため、従来、ラジオアイソトープヒーター(RHU:Radioisotope Heater Unit)や原子力電池(RTG:Radioisotope Thermoelectric Generator)が保温用熱源として使用されてきた(例えば、非特許文献1、2を参照。)。
【0005】
しかし、日本の宇宙分野においてラジオアイソトープヒーターや原子力電池を使用することは、原子力に関わる法規制や国内情勢、技術実績等の面から超えるべき課題が多い。越夜を想定した月面や火星表面における国際的なミッションが多く立案されているが、そのようなミッションに日本が参画するために、原子力に頼らずに越夜する技術が求められている。
【0006】
例えば、特許文献1には、ハーネスを用いてローバに給電するのではなく、断熱材を挟んだコイル間で磁界を利用してワイヤレス給電を行うことにより、ハーネスからの熱リークの問題を解消し、ローバの断熱性能を高める技術が開示されている。さらにこの技術では、断熱材に金属が蒸着されていない非蒸着部を形成することでワイヤレス給電時の渦電流の発生による効率低下を抑制し、かつ非蒸着部の位置を表裏でずらすことで断熱性を維持した断熱材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-192758号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Leopold Summer “TECHNICAL ASPECTS OF SPACE NUCLEAR POWER SOURCES VII. Radioisotope Heater Units”、ACT-RPT-2327-RHU、2006
【非特許文献2】NASA Technology Roadmaps TA3:Space Power and Energy Storage、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
越夜時にローバの内部から外部へリークする熱量は、ローバのサイズ等に依るところがあるが、電力供給線や信号線等に用いられるハーネス起因の熱リーク量が、ローバ全体の熱リーク量の約1/3程度を占めると予想される。従って、ハーネスからの熱リーク量を減少させることが、越夜に必要な高断熱化に大きく寄与する。
【0010】
ローバからの熱放射は、ローバ全体から放射される赤外線つまりTHz帯の電波の寄与が大きいので、ローバの主構体を覆う多層断熱材は、THz帯の電波を通過させないことが必要である。
【0011】
特許文献1に記載される断熱材は、表皮効果を利用して渦電流を抑制している。そして、表皮効果の程度を表す表皮深さは周波数に依存し、ワイヤレス給電に用いられるkHz~MHz程度の周波数に対しては高効率で電力を伝送することができる。したがって、給電用のハーネスを用いる必要がなくなるので、ハーネスからの熱リークを減少させることができる。
【0012】
しかし、主にGHz帯を用いる通信について、ハーネスからの熱リークを抑制しつつ通信を行う方法はこれまで検討されていなかった。地上と宇宙空間との間の通信にはGHz帯を用いており、その他の通信にも、GHz帯は広く用いられているから、GHz帯を用いる通信アンテナ間に用いる断熱材について、断熱性を担保しつつ通信特性を向上させるための更なる検討が必要である。
【0013】
本開示の非限定的な実施例は、車両の熱リークを減少させつつ、通信特性を向上させることが可能な断熱材、アンテナ及び車両の提供に資する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一実施例に係る断熱材は、板状アンテナと共に用いられる断熱材であって、非導電性膜と、前記非導電性膜の表面に設けられた電波を反射する反射膜と、を備え、前記反射膜には、前記板状アンテナの放射素子の端部に沿うようにスリットが形成されている。
【0015】
また、本開示の一実施例に係るアンテナは、前記断熱材と、前記板状アンテナと、を備え、前記反射膜は導電性を有し、前記板状アンテナは送信アンテナであり、前記反射膜は前記送信アンテナから放射された電波を中継し、前記送信アンテナは、前記断熱材の表面から、nλ/2(nは整数、λは前記送信アンテナから送信される電波の波長)だけ離れた位置に配置されている。
【0016】
また、本開示の一実施例に係る物体は、断熱材で覆われた構体と、前記構体に設置され、前記断熱材の反対側に存在する受信アンテナに対して電波を送信する板状アンテナと、を備え、前記断熱材は、非導電性膜と、前記非導電性膜の表面に設けられた電波を反射する反射膜と、を備え、前記反射膜には、前記板状アンテナの放射素子の端部に沿うようにスリットが形成されている。
【発明の効果】
【0017】
本開示の断熱材、アンテナ及び物体によれば、物体の熱リークを減少させつつ、通信特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ローバの構成の一例を示す図
図2】パッチアンテナの一例を示す図
図3】パッチアンテナのA-A’断面の電気力線を示す図
図4】パッチアンテナのB-B’断面の電気力線を示す図
図5】通信用多層断熱材に用いられる断熱フィルムの正面図
図6】通信用多層断熱材に用いられる断熱フィルムのC-C’断面図
図7】多層断熱材を用いた場合の構成の一例を示す図
図8】通信用断熱材を中継アンテナとして機能させる原理を示す図
図9】通信用断熱材と送信アンテナとの距離に応じた電波の減衰を示す図
図10】スリットのない断熱フィルムを積層した多層断熱材とスリットがある通信用断熱フィルムを積層した通信用多層断熱材を用いた場合の電波の減衰を示す図
図11】各アルミニウム膜のスリットの位置を所定の方向にずらして形成された通信用多層断熱材を用いた構成の一例を示す図
図12図11に示した通信用多層断熱材117の正面図
図13】スリットの大きさを受信アンテナ側のスリットほど大きくした通信用多層断熱材を用いた構成の一例を示す図
図14図13に示した通信用多層断熱材117の正面図
図15】放射素子が円形の場合の通信用断熱フィルムの正面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を適宜参照して、実施の形態について、詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0020】
なお、添付図面及び以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0021】
本実施の形態においては、一例として、車両が、月面又は火星表面等、地球以外の星の探査を行うローバである場合について説明する。
【0022】
(実施の形態1)
図1にローバ100の構成の一例を示す。ローバ100は、太陽電池101、インバータ102、送電コイル103、受電コイル104、整流回路105、電源制御器106、バッテリ107、電力分配器108、内部通信機109、送信アンテナ110、受信アンテナ111、外部通信機112、外部送信アンテナ113、ローバ構体114を備える。
【0023】
整流回路105、電源制御器106、バッテリ107、電力分配器108、内部通信機109は、ローバ構体114の内部に備えられている。受電コイル104と送信アンテナ110は、ローバ構体114の外部表面に設けられている。
【0024】
ワイヤレス通信に使用する送信アンテナ110には、使用する目的及び周波数帯等によって様々な形状のアンテナが用いられる。本実施の形態では、GHz帯によく用いられ、形状が平面的で機械的に安定し、衛星搭載に適しているパッチアンテナを例に挙げて説明する。
【0025】
図1に示す太陽電池101は、光のエネルギーを直流電力に変換する。インバータ102は、太陽電池101から入力された直流電力を交流電力に変換する。送電コイル103は、インバータから入力された交流電力を送信する。受電コイル104は、送電コイル103が送信した交流電力を受信する。
【0026】
整流回路105は、受電コイル104が受信した交流電力を直流電力に変換する。電源制御器106は、整流回路105から入力された直流電力を制御して、バッテリ107及び/又は電力分配器108に出力し、また、バッテリ107から入力された直流電力を制御して、電力分配器108に出力する。
【0027】
バッテリ107は、電源制御器106から入力された直流電力を蓄電し、必要により電源制御器106に対して直流電力を出力する。電力分配器108は、内部通信機109へ電力を供給する他、図示しない他の回路に電力を供給する。
【0028】
内部通信機109は、送信する信号を符号化、変調、及び増幅する。送信アンテナ110は、内部通信機109から受信した信号を電波として空間に放射する。受信アンテナ111は、送信アンテナ110が放射した電波を受信する。外部通信機112は、受信アンテナ111が受信した電波を、復調、復号、符号化、変調、及び増幅する。外部送信アンテナ113は、外部通信機112から受信した信号を電波として空間に放射することで、地球上若しくは月面上の制御装置、月若しくは火星等を周回している人工衛星、着陸機等に信号を送信する。
【0029】
ここで、受電コイル104、整流回路105、電源制御器106、バッテリ107、電力分配器108、内部通信機109、送信アンテナ110は、断熱フィルムを積層した多層断熱材115、受電用多層断熱材116、及び、通信用多層断熱材117で覆われている。
【0030】
受電用多層断熱材116は、送電コイル103と受電コイル104の間に用いられ、通信用多層断熱材117は、送信アンテナ110と受信アンテナ111の間に用いられる。多層断熱材115、及び、受電用多層断熱材116には、特許文献1に記載の断熱材を用いることができる。通信用多層断熱材117については後に詳しく説明する。
【0031】
多層断熱材115は、受電用多層断熱材116、及び、通信用多層断熱材117と縫製等により一体化されている。多層断熱材115、受電用多層断熱材116、及び、通信用多層断熱材117でローバ構体114の全体を覆うことにより、ローバが高断熱化される。
【0032】
なお、多層断熱材115、受電用多層断熱材116、及び、通信用多層断熱材117は断熱フィルムを5~40層積層して構成されるが、これらの代わりに1層の断熱フィルムを用いてもよい。断熱フィルムの積層の数は、断熱性、重量、製造の困難さ、扱いやすさ等を考慮して決定されるので、5層以下、あるいは40層以上であってもよい。
【0033】
図2は、パッチアンテナの一例を示す図である。図3は、図2に示したパッチアンテナのA-A’断面の電気力線を示す図であり、図4は、図2に示したパッチアンテナのB-B’断面の電気力線を示す図である。
【0034】
図2~4に示すように、パッチアンテナは、地導体板201、誘電体基板202、放射素子203を備える。誘電体基板202の表面と裏面には、パッチアンテナが放射する電波の波長をλとした場合に、一辺がλ/2程度の正方形をした放射素子203と地導体板201が配置されている。放射素子203は、薄膜銅板等の電気伝導体である。
【0035】
図3及び図4に示すように、パッチアンテナを用いた場合、電波は、放射素子203の端部から、放射素子203の中心に対して外側に広がるように放射されることが知られている。矢印の太さは電波の強さを示している。図4において、中央部分の矢印が細いことは、中央部分から放射される電波が弱いことを示している。2カ所から給電を行うパッチアンテナを用いた場合、電波は、放射素子203のすべての端部から、放射素子203の中心に対して外側に広がるように放射される。以下の説明においては、放射素子203のすべての端部から電波が放射されるとする。
【0036】
図5に、通信用多層断熱材117に用いられる断熱フィルムの正面図、図6に通信用多層断熱材117に用いられる断熱フィルムのC-C’断面図を示す。図5には、送信アンテナ110であるパッチアンテナの放射素子の端部200の位置を点線で示している。
【0037】
この断熱フィルムは、数~数十μmのポリエステル(PET:Poly Ethylene Terephthalate)膜301と、ポリエステル膜301の両面に50nm以上、例えば100nm前後の厚さでアルミニウムを蒸着したアルミニウム膜302で構成される。
【0038】
なお、ここではポリエステル膜301の両面にアルミニウム膜302を蒸着することとしたが、ポリエステル膜301の少なくとも片方の表面にアルミニウム膜302を蒸着することとしてもよい。
【0039】
また、ポリエステル膜301の代わりにポリイミド(PI:Polyimide)膜、あるいは他の電気的絶縁性を有する非導電性膜が用いられてもよい。さらに、アルミニウム膜302の代わりにアルミニウム以外の金属膜、又は金属以外のTHz帯の電波を反射する反射膜が用いられてもよい。
【0040】
また、アルミニウム膜は、蒸着の代わりにスパッタ、化学気相成長(CVD:Chemical Vapor Deposition)等、別の薄膜生成方法により生成されてもよい。
【0041】
アルミニウム膜302には、パッチアンテナの放射素子の端部200に沿って、アルミニウムが蒸着されていない非蒸着部であるスリット303が形成されている。すなわち、スリット303の形状は、放射素子の端部200の形状と相似である。なお、スリット303の形状は、放射素子の端部200の形状と同じであってもよい。
【0042】
アルミニウム膜302にスリット303をアンテナから電波が出力される位置に形成することで、アンテナから出力される電波を透過しつつ、スリット303以外の領域において赤外線に対応するTHz帯の電波を反射することができる。
【0043】
すなわち、この断熱フィルムは、断熱と通信を両立させるため、通信に用いるGHz帯の電波を通過させつつ、赤外線に対応するTHz帯の電波を反射するフィルムである。
【0044】
ここでスリット303を、GHz帯の電波だけでなくTHz帯の電波が通過するが、スリット303の幅はごく狭いので、ローバ内部から放射されるTHz帯の電波の殆どはアルミニウム膜302により反射される。一方、通信に用いるGHz帯の電波は、放射素子の端部200から出力され、GHz帯の電波の殆どはスリット303を通過するので、通信を効率的に行うことができる。
【0045】
また、スリット303は、ポリエステル膜301にアルミニウム膜302を蒸着する際に、スリットの形にマスキングすることで生成することができる。また、アルミニウム膜302はポリエステル膜301の片面だけに生成されてもよいし、両面に生成されてもよい。
【0046】
図7に、断熱材として通信用多層断熱材117を用いた場合の構成の一例を示す。送信アンテナ110と受信アンテナ111は、図2で説明した地導体板201、誘電体基板202、放射素子203を含むパッチアンテナである。
【0047】
通信用多層断熱材117は、図5及び図6で説明した、アルミニウム膜302にスリット303が設けられている断熱フィルムを積層した多層断熱材である。なお、図7では、ポリエステル膜301は省略されている。各断熱フィルムは、通信用多層断熱材117の表面に垂直な方向から通信用多層断熱材117を見た場合に、スリット303の領域が重なるように積層されている。
【0048】
この場合、各スリット303を通して、通信に用いるGHz帯の電波と赤外線に対応するTHz帯の電波が通過するが、各スリット303の幅はごく狭いので、ローバ全体から放射されるTHz帯の電波の殆どはアルミニウム膜302により反射される。一方、通信に用いるGHz帯の電波は、放射素子203の端部から出力されるので、GHz帯の電波の殆どは各スリット303を通過して通信を行うことができる。
【0049】
なお、図7の例では、送信アンテナ110、及び、受信アンテナ111としてパッチアンテナを用いる場合について説明したが、パッチアンテナの代わりに板状逆Fアンテナ等の板状アンテナを用いてもよい。
【0050】
また、図5及び図6に示した1層の断熱フィルムからなる通信用断熱材、または、図7に示した通信用多層断熱材117は、中継アンテナとして機能することもできる。図8に、1層の断熱フィルムからなる通信用断熱材を無給電素子として扱い、中継アンテナとして機能させる原理を示す。なお、図7では、ポリエステル膜301は省略されている。また、通信用多層断熱材117を用いる場合についても原理は同じである。
【0051】
図8に示す通信用断熱材300では、放射素子203の端部に沿って形成されたスリット303をアルミニウム膜302が有する。スリット303の大きさLは、放射素子203の端部の大きさと同じか又は若干大きい。例えば、スリット303の大きさLは、放射素子203の端部の大きさより波長の1/100だけ大きい。
【0052】
また、スリット303の幅は、波長に対して1/100以上2/100以下としてよい。例えば、放射される電波の周波数帯域がS-band(2.185GHz)の場合、波長は137.2mmであるから、スリットの幅は2mmとしてよい。スリットの大きさL及びスリットの幅は、断熱性と通信の減衰度を考慮して決定されればよい。
【0053】
放射素子203の端部から放射された電波は、スリット303を通過して通信用断熱材300の反対側に放射される。一方、電波が放射されない放射素子203の端部以外の部分は、アルミニウム膜302により覆われることで、ローバ内部から放射されるTHz帯の電波がアルミニウム膜により反射されるので、断熱性を確保することができる。
【0054】
このように、スリット303以外の部分は、アルミニウム膜302で覆われていて断熱性が保たれている一方、スリット303をGHz帯の電波が通過するので、断熱性を考慮しつつ効率よく通信を行うことが可能な通信用断熱材300が実現される。
【0055】
一方、送信アンテナ110の放射素子203の端部から放射された電波は、アルミニウム膜302のスリット303を通過して通信用断熱材300の反対側に出力される一方、スリット303以外の部分に放射された電波はアルミニウム膜302により反射される。したがって、通信用断熱材300を通過する電波は減衰する。
【0056】
しかし、放射素子203と通信用断熱材300との間の距離をnλ/2(nは整数、λは送信アンテナから送信される電波の波長)とすると、放射素子203と通信用断熱材300のアルミニウム膜302との間で定在波が発生して電波を強め合う。
【0057】
したがって、通信用断熱材300の位置を放射素子203から定在波が発生する位置であるnλ/2だけ離れた位置に設定することにより、通信用断熱材300を中継アンテナとして機能させることができ、電波の減衰が抑制される。複数の通信用断熱フィルムを積層した通信用多層断熱材117の場合は、最も送信アンテナに近い通信用断熱材300と放射素子203との間の距離をnλ/2に設定すればよい。
【0058】
これにより、断熱性を保ちつつ、電波の減衰を抑制することができる。
【0059】
図9に、通信用多層断熱材117と送信アンテナとの間の距離に応じた電波の減衰を示す。スリット303のない従来型の多層断熱材を用いた場合の実験結果を白丸で、通信用多層断熱材117を用いた場合の実験結果を黒丸で示す。また、通信用多層断熱材117を用いた場合のシミュレーションの結果を黒い三角で示す。
【0060】
図9によれば、本実施形態の通信用多層断熱材117を放射素子203からnλ/2だけ離れた位置に設定することで、通信用多層断熱材117による電波の減衰を、スリット303のない従来型の多層断熱材よりも抑えることができる。
【0061】
また、図10に、7枚のスリット303のない断熱フィルムを積層した従来型の多層断熱材と、10枚のスリット303がある断熱フィルムを積層した本実施の形態の通信用多層断熱材117を用いた場合の電波の減衰を示す。従来型の多層断熱材を用いた場合の実験結果を白丸で、本実施の形態の通信用多層断熱材117を用いた場合の実験結果を黒丸で示す。
【0062】
図10によれば、本実施の形態の通信用多層断熱材117を用いた場合であっても、多層断熱材による電波の減衰を3dB程度に抑えることが可能である。
【0063】
なお、中継アンテナとして機能するためには、スリット303以外の部分が導電性であればよい。したがって、アルミニウム膜302の代わりに、金属以外の導電性を有する材料を使用することもできる。
【0064】
(実施の形態2)
実施の形態1では、各アルミニウム膜302のスリット303の位置がそろった通信用多層断熱材117について説明したが、スリット303の位置は必ずしも一致している必要はない。
【0065】
図11に、各アルミニウム膜302a~302iのスリット303の位置を所定の方向にずらして形成された通信用多層断熱材117を用いた構成の一例を示す。また、図12は、図11に示した通信用多層断熱材117の正面図の一例を示す。図12は、通信用多層断熱材117の表面に垂直な方向から通信用多層断熱材117を見た場合の図である。
【0066】
図12には、各アルミニウム膜302a~302iに形成されたスリット303a~303iが示されている。なお、図12において、スリット303aの位置はスリット303iの位置と、スリット303bの位置はスリット303hの位置と、スリット303cの位置はスリット303gの位置と、スリット303dの位置はスリット303fの位置とそれぞれ重なっている。
【0067】
ここで、送信アンテナ110、及び、受信アンテナ111は、図2図4を用いて説明したものと同様のものである。また、通信用多層断熱材117を構成する各断熱フィルムも、図5及び図6で説明した断熱フィルムと同様のものである。なお、図11及び図12では、ポリエステル膜301は省略されている。
【0068】
図12では隣接する断熱フィルムのスリット303a~303iの領域が一部重なっている。図12では、各スリット303a~303eの位置は対角線の方向にずれている。また、各スリット303f~303iの位置は、上記対角線の方向とは反対の対角線の方向にずれている。このような構成を採用することにより、各スリット303a~303iがすべて同じ位置で重ならないようにしている。図12では、各スリット303a~303eの位置は対角線の方向にずれているが、一辺に沿ってずれてもよい。一辺に沿ってずれる場合は、途中から別の一辺に沿ってずれるようにすれば、各スリットがすべて同じ位置で重ならない。
【0069】
例えば、各スリット303a~303eの位置をずらす距離は、パッチアンテナが放射する電波の波長をλとした場合に、λ/100以下λ/1000以上とすればよい。
【0070】
電波の周波数が高くなると電波の直進性が高くなるため、THz帯の電波の直進性は極めて高い。また、電波は、アルミニウム膜で反射される。
【0071】
このため、スリット303a~303iの重なりをなくすと、THz帯の電波は一部のスリット303a~303iを通過しても、他の断熱フィルムのアルミニウム膜302a~302iにより反射される。つまり、通信用多層断熱材117全体としてみると、THz帯の電波が全てのスリット303a~303iを通過して通信用多層断熱材117の反対側に放射されることがない。また、THz帯の電波が通過しないことは、熱リークが減少することを意味する。
【0072】
一方、図11に示すように、THz帯の電波よりも低い周波数であるGHz帯の電波は、回折によって、少しずつ位置がずれているスリット303a~303iを通過して外部に放射されるので、GHz帯の電波を用いた通信を行うことができる。
【0073】
なお、図11及び図12では、各スリット303a~303eの位置が対角線の方向に、各スリット303f~303iの位置が、上記対角線の方向とは反対の対角線の方向にずれていることとしたが、各スリット303a~303eの位置がずれる方向は、各スリット303a~303iがすべて同じ位置で重ならない限り、どのような方向であってもよい。
【0074】
(実施の形態3)
実施の形態2では、各アルミニウム膜302のスリット303a~303iの位置が所定の方向にずれた通信用多層断熱材117について説明したが、スリット303の位置を実施の形態2とは異なる方法でずらすようにしてもよい。
【0075】
図13に、各アルミニウム膜302a~302iのスリット303a~303iの大きさLを受信アンテナ111が設けられている側のスリット303a~303iほど大きくした通信用多層断熱材117を用いた構成の一例を示す。
【0076】
また、図14は、図13に示した通信用多層断熱材117の正面図の一例を示す。図14は、通信用多層断熱材117の表面に垂直な方向から通信用多層断熱材117を見た場合の図である。
図14には、各アルミニウム膜302a~302iに形成されたスリット303a~303iが示されている。図14は、隣接する断熱フィルムのスリット303a~303iの領域が一部重なっている。
【0077】
ここで、送信アンテナ110、及び、受信アンテナ111は、図2図4を用いて説明したものと同様のものである。また、通信用多層断熱材117を構成する各断熱フィルムも、図5及び図6で説明した断熱フィルムと同様のものである。なお、図13及び図14では、ポリエステル膜301は省略されている。
【0078】
図13及び図14に示すように、各スリット303a~303iの大きさLは、受信アンテナ111が設けられている側のスリット303a~303iほど大きくなっている。このような構成を採用することにより、各スリット303a~303iがすべて同じ位置で重ならないようにしている。
【0079】
例えば、各スリット303a~303iの大きさLの差は、パッチアンテナが放射する電波の波長をλとした場合に、λ/100以下λ/1000以上とすればよい。
【0080】
また図13及び図14では、受信アンテナ111に近づくにつれ、各スリット303a~303iの大きさLが順に大きくなっているが、各スリット303a~303iがすべて同じ位置で重ならない限り、順に小さくなるようにしてもよいし、大きくなったり小さくなったりしてもよい。
【0081】
スリットの大きさLを順に大きくした場合、GHz帯の電波は、放射素子203の端部から放射されるので、放射の方向と各スリット303a~303iが連なる方向が同じであれば、効率的にGHz帯の電波が通過する。一方、THz帯の電波は、ローバ構体114の全体から出力されるので、スリットが連なる方向にはほとんど放射されず、アルミニウム膜302a~302iにより反射される。したがって、効率的にGHz帯の電波を通過させつつ、熱リークを減少させることができる。
【0082】
<変形例>
なお、上記実施の形態においては、パッチアンテナの放射素子203として、正方形の放射素子を用いた例を説明したが、正方形以外の放射素子が用いられてもよい。正方形以外の放射素子が用いられる場合も同様に、通信用断熱材は、放射素子の端部に沿ってアルミニウムが蒸着されていない非蒸着部であるスリットが形成されたアルミニウム膜を有する。
【0083】
すなわち、スリットの形状は放射素子の端部の形状と同じか相似である。パッチアンテナ以外のアンテナを使用する場合は、電波が放射される位置に沿うように、アルミニウム膜のスリットを形成すればよい。
【0084】
図15に、放射素子が円形の場合の通信用断熱フィルムの正面図を示す。この通信用断熱フィルムでは、図5及び図6に示した通信用断熱フィルムと同様に、ポリエステル膜の少なくとも一方の表面にアルミニウム膜501が蒸着される。そして、アルミニウム膜501は、送信アンテナであるパッチアンテナの円形の放射素子の端部400に沿って形成されたスリット502を有する。
【0085】
また、スリット502の外周の大きさは、放射素子の端部400の大きさと同じか又は若干大きい。例えば、スリット502は、その外周が放射素子の端部400の直径よりもλ/100だけ大きい直径となる円環であり、円環の幅は、例えば2mmとすればよい。
【0086】
また、上記実施の形態においては、ローバ構体114から外部への通信を行う例を説明したが、外部からローバ構体114への通信を行う場合に用いてもよい。この場合、送信アンテナ110の代わりに受信アンテナを設け、受信アンテナ111の代わりに送信アンテナを設けた構成が採用される。また、送信アンテナ110および受信アンテナ111の代わりに送受信アンテナを設け、ローバ構体114から外部への通信及び外部からローバ構体114への通信を行ってもよい。
【0087】
さらに、太陽電池101、インバータ102、送電コイル103、受信アンテナ111、外部通信機112、外部送信アンテナ113は、外部装置に設けられてもよい。そして、ローバと外部装置との間で無線による電力の伝送及び通信を行ってもよい。
【0088】
なお、外部装置が月面基地の場合、ローバと月面基地間の送電及び通信を無線により行うことができるので、ローバと月面基地をケーブル接続する必要がない。したがってケーブルを接続する人手やロボットアームを必要としないので、設備の故障リスク及び人間の外部作業に伴うリスクを低減することができる。
【0089】
さらに、月面基地の一部を本開示の断熱材で覆うことにより、月面基地のコネクタを外部に露出させる必要がなくなるので、高断熱化を行いつつ、故障リスクを低減することができる。
【0090】
また、上記実施の形態においては、月面又は火星表面等、地球以外の星の探査機に用いた例を説明したが、断熱性を維持しつつ電波による通信を行う物体、例えば月面基地、月面の貯蔵タンク、及び探査機等に本開示の断熱材を適用することができる。
【0091】
すなわち、衛星の機器間通信を行う装置、南極又は北極等の厳冬地域あるいは石油掘削現場等の高温地域で使用される装置に本開示の断熱材を適用することができる。さらに、衛星間での通信や地上との通信を行う人工衛星に本開示の断熱材を適用することもできる。
【0092】
以上、図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変形例又は修正例が容易に想到し得ることは明らかである。そのような変形例又は修正例についても、本発明に属するものと了解される。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、各実施形態の各構成要素が任意に組み合わされてもよい。
【0093】
(1)本開示の一実施例に係る断熱材は、板状アンテナと共に用いられる断熱材であって、非導電性膜と、前記非導電性膜の表面に設けられた電波を反射する反射膜と、を備え、前記反射膜には、前記板状アンテナの放射素子の端部に沿うようにスリットが形成されている。
【0094】
(2)本開示の一実施例に係る断熱材は、(1)の断熱材において、前記反射膜は、導電性を有する。
【0095】
(3)本開示の一実施例に係る断熱材は、(2)の断熱材において、前記板状アンテナは送信アンテナであり、前記反射膜は、前記送信アンテナから放射された電波を中継する。
【0096】
(4)本開示の一実施例に係るアンテナは、(3)に記載の断熱材と、前記送信アンテナと、を備え、前記送信アンテナは、前記断熱材の表面から、前記送信アンテナから送信される電波の波長のnλ/2(nは整数、λは前記送信アンテナから送信される電波の波長)だけ離れた位置に配置されている。
【0097】
(5)本開示の一実施例に係る多層断熱材は、(1)に記載の断熱材を複数積層した多層断熱材であって、前記断熱材の表面に垂直な方向から前記多層断熱材を見た場合に、隣接する断熱材間のスリットの領域が一部重なり、かつ各断熱材のスリットがすべて同じ位置で重ならないように積層されている。
【0098】
(6)本開示の一実施例に係る多層断熱材は、(5)の多層断熱材において、前記多層断熱材は、隣接する断熱材間のスリットの領域が第1の方向に位置がずれて積層されている第1の断熱材群と、隣接する断熱材間のスリットの領域が前記第1の方向と異なる第2の方向に位置がずれて積層されている第2の断熱材群と、を含む。
【0099】
(7)本開示の一実施例に係る多層断熱材は、(6)の多層断熱材において、前記第1の断熱材群及び前記第2の断熱材群における隣接する断熱材間のスリットの領域の位置のずれは、前記板状アンテナから送信される電波の波長の1/100以下1/1000以上の距離である。
【0100】
(8)本開示の一実施例に係る多層断熱材は、(5)の多層断熱材において、各断熱材のスリットの幅は同じであり、前記各断熱材のスリットの大きさは、受信アンテナが設けられている側の断熱材のスリットほど大きい。
【0101】
(9)本開示の一実施例に係る多層断熱材は、(8)の多層断熱材において、隣接する断熱材間の前記スリットの大きさは、前記板状アンテナから送信される電波の波長の1/100以下1/1000以上の距離だけ異なる。
【0102】
(10)本開示の一実施例に係る物体は、断熱材で覆われた構体と、前記構体に設置され、前記断熱材の反対側に存在する受信アンテナに対して電波を送信する板状アンテナと、を備え、前記断熱材は、非導電性膜と、前記非導電性膜の表面に設けられた電波を反射する反射膜と、を備え、前記反射膜には、前記板状アンテナの放射素子の端部に沿うようにスリットが形成されている。
【0103】
(11)本開示の一実施例に係る物体は、(10)の物体において、板状アンテナである前記受信アンテナをさらに有する。
【0104】
(12)本開示の一実施例に係る通信方法は、第1の板状アンテナから通信に使用する電波を送信する工程と、断熱材を中継アンテナとして使用して、前記第1の板状アンテナに対して前記断熱材の反対側に存在する第2の板状アンテナに対して前記電波を送信する工程と、を含み、前記断熱材は、非導電性膜と、前記非導電性膜の表面に設けられた電波を反射する反射膜と、を備え、前記反射膜には、前記第1の板状アンテナの放射素子の端部に沿うようにスリットが形成されている。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、地球以外で用いられる探査機に有効である。また、南極北極等の厳冬地域や石油掘削現場等の高温地域等、断熱性を維持しつつ電波の通信を行いたい機器に使用可能である。さらに、人工衛星、月面基地、月面の貯蔵タンク等にも使用可能である。
【符号の説明】
【0106】
100 ローバ
101 太陽電池
102 インバータ
103 送電コイル
104 受電コイル
105 整流回路
106 電源制御器
107 バッテリ
108 電力分配器
109 内部通信機
110 送信アンテナ
111 受信アンテナ
112 外部通信機
113 外部送信アンテナ
114 ローバ構体
115 多層断熱材
116 受電用多層断熱材
117 通信用多層断熱材
201 地導体板
202 誘電体基板
203 放射素子
301 ポリエステル膜
302、302a~302i、501 アルミニウム膜
200、400 放射素子の端部
303、303a~303i、502 スリット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15