(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098626
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】管理システムおよび管理方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04664 20160101AFI20240717BHJP
H01M 8/04694 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/04537 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240717BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20240717BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240717BHJP
B60L 50/70 20190101ALI20240717BHJP
B60L 58/30 20190101ALI20240717BHJP
B60P 1/04 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
H01M8/04664
H01M8/04694
H01M8/04537
H01M8/249
H01M8/00 Z
B60L3/00 N
B60L15/20 J
B60L50/70
B60L58/30
B60P1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002226
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戎崎 英世
【テーマコード(参考)】
5H125
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA12
5H125AC07
5H125EE35
5H125EE36
5H125EE38
5H125EE51
5H126AA21
5H127AB04
5H127AB11
5H127AB29
5H127AC14
5H127BA02
5H127BA22
5H127BB02
5H127DB49
5H127DB53
5H127DB63
5H127DC49
5H127EE04
5H127FF14
(57)【要約】
【課題】燃料電池の劣化を予測する。
【解決手段】状態特定部は、運搬車両に搭載される燃料電池の劣化状態を特定する。タイミング推定部は、運搬車両の燃料電池の劣化状態に基づいて、運搬車両の燃料電池のメンテナンスを開始するメンテナンス開始タイミングを推定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業現場を走行する燃料電池を備える複数の作業車両を管理する管理システムであって、
前記作業車両に搭載される前記燃料電池の劣化状態を特定する状態特定部と、
前記作業車両の前記燃料電池の前記劣化状態に基づいて、前記作業車両の前記燃料電池のメンテナンスを開始するメンテナンス開始タイミングを推定するタイミング推定部と
を備える管理システム。
【請求項2】
前記状態特定部は、前記作業車両に搭載される前記燃料電池が出力する電圧の大きさと電流の大きさの関係に基づいて、前記燃料電池の劣化状態を特定する
請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記作業現場における走行ルートごとに、前記作業車両の前記走行ルートの走行による前記燃料電池の劣化速度を特定する劣化速度特定部を備え、
前記タイミング推定部は、前記作業車両の前記燃料電池の前記劣化状態と、前記作業車両の走行ルートから特定される前記燃料電池の前記劣化速度とに基づいて、前記メンテナンス開始タイミングを推定する
請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記劣化速度特定部は、前記作業現場における走行ルートごとに、当該走行ルートを走行する前記作業車両について複数のタイミングにおいて特定された前記燃料電池の前記劣化状態に基づいて、前記走行ルートの走行による前記燃料電池の劣化速度を特定する
請求項3に記載の管理システム。
【請求項5】
前記複数の作業車両それぞれの走行ルートを決定するルート決定部を備え、
前記タイミング推定部は、前記メンテナンス開始タイミングから前記メンテナンスを終了するメンテナンス終了タイミングまでのメンテナンス期間を推定し、
前記ルート決定部は、前記複数の作業車両のうち一部の作業車両同士の前記メンテナンス期間に重複が生じる場合に、前記一部の作業車両のうち少なくとも1つの作業車両の走行ルートを変更する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の管理システム。
【請求項6】
前記状態特定部は、前記燃料電池が所定の大きさの電流を出力しているときの電圧の大きさに基づいて、前記劣化状態を特定する
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の管理システム。
【請求項7】
前記劣化速度特定部は、作業車両ごとに、前記走行ルートそれぞれについての劣化速度を特定し、
前記タイミング推定部は、
前記劣化速度特定部が特定した前記劣化速度を用いて前記メンテナンス開始タイミングを推定し、
前記複数の作業車両の一つである第一作業車両について前記劣化速度が特定されていない場合、前記複数の作業車両のうち前記劣化速度がすでに特定されている第二作業車両の前記走行ルートに係る劣化速度を用いて前記第一作業車両の前記メンテナンス開始タイミングを推定する
請求項3に記載の管理システム。
【請求項8】
作業現場を走行する燃料電池を備える複数の作業車両を管理する管理方法であって、
前記作業車両に搭載される前記燃料電池の劣化状態を特定するステップと、
前記作業車両の前記燃料電池の前記劣化状態に基づいて、前記作業車両の前記燃料電池のメンテナンスを開始するメンテナンス開始タイミングを推定するステップと、
を備える管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、管理システムおよび管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを燃料として用いる燃料電池を搭載する作業車両が検討されている。燃料電池は使用に伴って劣化が進むため、燃料電池の劣化に応じて燃料電池のメンテナンスを行う必要がある。メンテナンスの例としては、燃料電池の交換が挙げられる。
【0003】
特許文献1には、複数の車両のメンテナンスを効率良く行い、生産性を維持するためのメンテナンススケジュールの計画方法に関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料電池のメンテナンス時期を推定するにあたって、燃料電池の劣化を予測することが求められている。本開示の目的は、燃料電池の劣化に応じたメンテナンス時期を推定することができる管理システム及び管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、管理システムは、作業現場を走行する燃料電池の劣化状態を特定する状態特定部と、前記作業車両の前記燃料電池の前記劣化状態に基づいて、前記作業車両の前記燃料電池のメンテナンスを開始するメンテナンス開始タイミングを推定するタイミング推定部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、管理装置は燃料電池の劣化に応じたメンテナンス時期を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態に係る管理装置を備える運搬システムの構成を示す図である。
【
図2】第一実施形態に係る運搬車両を模式的に示す斜視図である。
【
図3】第一実施形態に係る運搬車両が備える動力系および駆動系の構成を示す概略ブロック図である。
【
図4】第一実施形態に係る運搬車両が備える制御系の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】第一実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図6】第一実施形態に係るメンテナンス期間の確認処理を示すフローチャートである。
【
図7】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第一実施形態〉
《運搬システム1の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第一実施形態に係る管理装置50を備える運搬システム1の構成を示す図である。運搬システム1は、複数の運搬車両10を用いて採掘された砕石等を運搬するために用いられる。運搬車両10は、水素ガスを燃料とする燃料電池によって駆動する。管理装置50は、運搬車両10を走行させるための制御データを送信し、運搬車両10の運行を制御する。運搬車両10は作業車両の一例である。
【0010】
鉱山には、採掘場P1と排土場P2とが設けられる。運搬車両10は、採掘場P1にて積込機械30によって砕石を積み込まれ、砕石を排土場P2まで運搬し、排土場P2にて砕石を排出する。積込機械30は、例えば油圧ショベルやホイルローダであってよい。運搬車両10は、排土場P2にて砕石を排出すると、再度採掘場P1へ移動し、採石を積載する。鉱山には、運搬車両10が走行するコースCが設けられる。コースCは、
図1に示すように対面通行道路であってもよいし、一方通行道路であってもよい。
【0011】
《運搬車両10の構成》
図2は、第一実施形態に係る運搬車両10を模式的に示す斜視図である。運搬車両10は、ダンプボディ11と、車体12と、走行装置13とを備える。
【0012】
ダンプボディ11は、積荷が積載される部材である。ダンプボディ11の少なくとも一部は、車体12よりも上方に配置される。ダンプボディ11は、ダンプ動作及び下げ動作する。ダンプ動作及び下げ動作により、ダンプボディ11は、ダンプ姿勢及び積載姿勢に調整される。ダンプ姿勢とは、ダンプボディ11が上昇している姿勢をいう。積載姿勢とは、ダンプボディ11が下降している姿勢をいう。
【0013】
ダンプ動作とは、ダンプボディ11を車体12から離隔させてダンプ方向に傾斜させる動作をいう。ダンプ方向は、車体12の後方である。実施形態において、ダンプ動作は、ダンプボディ11の前端部を上昇させて、ダンプボディ11を後方に傾斜させることを含む。ダンプ動作により、ダンプボディ11の積載面は、後方に向かって下方に傾斜する。
【0014】
下げ動作とは、ダンプボディ11を車体12に接近させる動作をいう。実施形態において、下げ動作は、ダンプボディ11の前端部を下降させることを含む。
【0015】
排土作業を実施する場合、ダンプボディ11は、積載姿勢からダンプ姿勢に変化するように、ダンプ動作する。ダンプボディ11に積荷が積載されている場合、積荷は、ダンプ動作により、ダンプボディ11の後端部から後方に排出される。積込作業が実施される場合、ダンプボディ11は、積載姿勢に調整される。
【0016】
車体12は、車体フレームを含む。車体12は、ダンプボディ11を支持する。車体12は、走行装置13に支持される。
【0017】
走行装置13は、車体12を支持する。走行装置13は、運搬車両10を走行させる。走行装置13は、運搬車両10を前進又は後進させる。走行装置13の少なくとも一部は、車体12よりも下方に配置される。走行装置13は、一対の前輪と一対の後輪とを備える。前輪は操舵輪であり、後輪は駆動輪である。なお、操舵輪と駆動輪の組み合わせはこれに限られず、走行装置13は、四輪駆動、四輪操舵であってもよい。
【0018】
図3は、第一実施形態に係る運搬車両10が備える動力系14および駆動系15の構成を示す概略ブロック図である。動力系14は、水素タンク141、水素供給装置142、燃料電池143、バッテリ144、DCDCコンバータ145、リターダグリッド146を備える。
水素供給装置142は、水素タンク141に充填された水素ガスを燃料電池143に供給する。燃料電池143は、水素供給装置142から供給される水素と外気に含まれる酸素とを電気化学反応させて電力を発生する。バッテリ144は、燃料電池143において発生した電力を蓄える。DCDCコンバータ145は、制御系16(
図4参照)からの指示に従って接続される燃料電池143またはバッテリ144から電力を出力させる。リターダグリッド146は、バッテリ144への充電ができない場合に、駆動系15からの回生電力を熱エネルギーに変換する。
【0019】
動力系14が出力した電力は、母線Bを介して駆動系15へ出力される。駆動系15は、インバータ151と、ポンプ駆動モータ152と、油圧ポンプ153と、ホイストシリンダ154と、インバータ155と、走行駆動モータ156とを有する。インバータ151は、母線Bからの直流電流を三相交流電流に変換してポンプ駆動モータ152に供給する。ポンプ駆動モータ152は、油圧ポンプ153を駆動する。油圧ポンプ153から吐出された作動油は、図示しない制御弁を介してホイストシリンダ154に供給される。作動油がホイストシリンダ154に供給されることにより、ホイストシリンダ154が作動する。ホイストシリンダ154は、ダンプボディ11をダンプ動作又は下げ動作させる。インバータ155は、母線Bからの直流電流を三相交流電流に変換して走行駆動モータ156に供給する。走行駆動モータ156が発生した回転力は、走行装置13の駆動輪に伝達される。
【0020】
運搬車両10は、動力系14および駆動系15を制御する制御系16を備える。
図4は、第一実施形態に係る運搬車両10が備える制御系16の構成を示す概略ブロック図である。制御系16は、計測装置161、通信装置162、制御装置163、操作装置164、モニタ165を備える。
【0021】
計測装置161は、燃料電池143の稼働状態に関するデータを収集する。計測装置161は、燃料電池143が出力する電流の大きさ(電流値)および電圧の大きさ(電圧値)を計測する。
【0022】
通信装置162は、移動体通信網などを介して管理装置50との通信を行う。通信装置162は、計測装置161によって計測された各種計測値を格納した計測データを管理装置50に送信する。通信装置162は、管理装置50から運搬車両10を制御するための制御データを受信する。
【0023】
制御装置163は、通信装置162が管理装置50から受信した制御データおよび操作装置164の操作量に従って、運搬車両10を駆動させる。
操作装置164は、運転室に設けられ、オペレータによる操作を受け付ける。操作装置164は、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイール、ダンプレバーなどを備える。
モニタ165は、運転室に設けられ、走行ルートなどをオペレータに表示する。
【0024】
制御装置163は、データ取得部171、発電電力設定部172、車体制御部173、燃料電池制御部174、必要電力算出部175、バッテリ制御部176、表示制御部177を備える。
【0025】
データ取得部171は、通信装置162から制御データを取得し、計測装置161から計測データを取得する。
発電電力設定部172は、データ取得部171が取得した制御データに基づいて、燃料電池143に出力させる電力の目標値である目標発電電力を決定する。発電電力設定部172は、決定した目標発電電力を燃料電池制御部174に設定する。第1の実施形態に係る発電電力設定部172は、走行ルートごとに一意の目標発電電力を設定する。つまり、目標発電電力は、走行ルートの走行中一定の値である。
車体制御部173は、操作装置164の操作量により、運搬車両10を制御するための制御信号を生成する。例えば車体制御部173は、走行装置13のステアリング、アクセル、ブレーキ、ダンプボディ動作などを制御する制御信号を生成する。
【0026】
燃料電池制御部174は、燃料電池143が発電電力設定部172が設定した目標発電電力を出力するように、水素供給装置142による水素の供給量を制御する。なお、第1の実施形態では、目標発電電力として時間によらず一定の値が設定されるため、走行ルートの走行中、燃料電池制御部174は一定の電力を出力するように、水素供給装置142による水素の供給量を制御する。
必要電力算出部175は、車体制御部173が生成する制御信号に基づいて動力系14において必要とされる必要電力を算出する。
バッテリ制御部176は、燃料電池143の発電電力と必要電力との差分を算出する。バッテリ制御部176は、発電電力が必要電力より大きい場合に、差分に係る電力をバッテリ144に充電させ、発電電力が必要電力より小さい場合に、差分に係る電力をバッテリ144から放電させるように、バッテリ144に接続されたDCDCコンバータ145を制御する。
表示制御部177は、制御データに含まれる走行ルートをモニタ165に表示させる。
【0027】
《管理装置50の構成》
図5は、第一実施形態に係る管理装置50の構成を示す概略ブロック図である。
管理装置50は、計測データ取得部51、履歴記憶部52、状態特定部53、劣化速度特定部54、劣化速度記憶部55、タイミング推定部56、ルート決定部57、制御データ送信部58を備える。
【0028】
計測データ取得部51は、複数の運搬車両10から、燃料電池143の電圧および電流の計測データを取得する。
履歴記憶部52は、計測データ取得部51が取得した計測データと、計測データの受信時刻と、当該運搬車両10の走行ルートとを関連付けて記憶する。
【0029】
状態特定部53は、計測データ取得部51が取得した電圧および電流の計測データに基づいて、燃料電池143の劣化状態を特定する。燃料電池143は、劣化に伴う内部抵抗の増加により、電流電圧特性が変化する。具体的には、燃料電池143の劣化に伴って出力される電圧が低下する。第一実施形態においては、状態特定部53は、燃料電池143が出力する電流の大きさが所定の範囲内にあるときの電圧値に基づいて、劣化状態が特定される。つまり、第一実施形態においては、劣化状態は電圧値によって表される。所定の範囲は、例えば運搬車両10の平地運転時の平均的な電流値の範囲など、鉱山運用時に使用頻度が高い電流値の範囲であることが好ましい。当該範囲は、範囲の上限および下限の間における電圧値の変化が十分に小さい範囲であることが好ましい。
【0030】
劣化速度特定部54は、状態特定部53が特定した劣化状態に基づいて燃料電池143の劣化速度を特定する。具体的には、劣化速度特定部54は、運搬車両10が継続して同じ走行ルートを走行している間の複数のタイミングにおいて特定された劣化状態から、走行時間と劣化状態の関係を特定し、劣化速度を算出する。つまり第一実施形態において、劣化速度は、走行時間と劣化状態(電圧値)の関数の傾きによって表される。なお、鉱山の走行ルートはそれぞれ斜面を多く含み、斜面の勾配や距離が走行ルートによって異なるため、走行のために必要な電力が異なる。そのため、走行ルートによって燃料電池143の劣化速度は異なる。また、運搬車両10ごとに重量や運転の特性が異なることから、運搬車両10によっても燃料電池143の劣化速度は異なる。
【0031】
劣化速度記憶部55は、運搬車両10と走行ルートの組み合わせごとに、燃料電池143の劣化速度を記憶する。
【0032】
タイミング推定部56は、各運搬車両10の燃料電池143の劣化状態と、劣化速度記憶部55が記憶する劣化速度とに基づいて、各運搬車両10のメンテナンス期間を推定する。メンテナンス期間は、燃料電池143の劣化状態が所定の閾値以下となるメンテナンス開始タイミングから、燃料電池143の載せ替え等の処置が終了するメンテナンス終了タイミングまでの期間である。
【0033】
ルート決定部57は、鉱山の稼働状況に基づいて運搬車両10の走行ルートを決定する。また、ルート決定部57は、一部の運搬車両10のメンテナンス期間に重複が生じる場合に、重複に係る運搬車両10の少なくとも一方の走行ルートを変更する。
【0034】
制御データ送信部58は、ルート決定部57が決定した走行ルート、ならびに当該走行ルートを走行するための走行負荷および所要時間を示す制御データを運搬車両10に送信する。
【0035】
《管理装置50の処理》
運搬車両10の制御装置163は、所定のタイミングで燃料電池143に係る計測データを管理装置50に送信する。制御装置163が計測データを送信するタイミングは、例えば週ごとの所定時刻や、稼働開始時などが挙げられる。管理装置50の計測データ取得部51は、複数の運搬車両10それぞれから計測データを受信する。計測データ取得部51は、運搬車両10ごとに、受信した計測データと、受信時刻と、当該運搬車両10の走行ルートとを関連付けて履歴記憶部52に記録する。
【0036】
図6は、第一実施形態に係るメンテナンス期間の確認処理を示すフローチャートである。管理装置50は、所定の周期ごとに、複数の運搬車両10のメンテナンス期間の確認処理を行う。メンテナンス期間の確認処理を行う周期は、計測データの取得の周期より長くてよい。管理装置50は、複数の運搬車両10を1つずつ選択し(ステップS1)、各運搬車両10について以下のステップS2からステップS10の処理を行う。
【0037】
管理装置50の状態特定部53は、履歴記憶部52を参照し、ステップS1で選択された運搬車両10の走行ルートが、現在を起点とする過去の一定期間(例えば、1か月間)以内に変化したか否かを判定する(ステップS2)。運搬車両10の走行ルートが一定期間以内に変化していない場合(ステップS2:NO)、状態特定部53は、履歴記憶部52から当該運搬車両10が現在の走行ルートを走行している間に取得された計測データのうち電流値が所定範囲内のものを抽出し、抽出された各計測データの電圧値を、当該計測データの取得時における燃料電池143の劣化状態として特定する(ステップS3)。このとき、状態特定部53は、最後に取得された電流値が所定範囲内の計測データに基づいて現在の燃料電池143の劣化状態を特定する。
【0038】
劣化速度特定部54は、抽出した計測データの計測時刻と電圧値とに基づいて、電圧値の時間に対する変化量を、劣化速度として特定する(ステップS4)。劣化速度特定部54は、例えば直近の2回の計測結果に基づいて、電圧値の差を時刻の差で除算することで劣化速度を求めてよい。また劣化速度特定部54は、例えば最小二乗法などを用いて、複数回の計測結果から劣化速度を求めてもよい。劣化速度特定部54は、特定した劣化速度を、当該運搬車両10と走行ルートの組み合わせに関連付けて劣化速度記憶部55に記録する(ステップS5)。なお、当該運搬車両10と当該走行ルートの組み合わせが、劣化速度記憶部55に既に記録されている場合、劣化速度特定部54は記録されている劣化速度を更新する。
運搬車両10の走行ルートが一定期間以内に変化した場合(ステップS2:YES)、劣化速度特定部54は、劣化速度の特定および記録をしない。
【0039】
次に、タイミング推定部56は、劣化速度記憶部55に、ステップS1で選択された運搬車両10と当該運搬車両10の現在の走行ルートの組み合わせに関連付けられた燃料電池143の劣化速度が記憶されているか否かを判定する(ステップS6)。運搬車両10の現在の走行ルートの組み合わせに関連付けられた劣化速度が記憶されている場合(ステップS6:YES)、タイミング推定部56は、劣化速度記憶部55からその劣化速度を読み出し、運搬車両10の燃料電池143の劣化速度として特定する(ステップS7)。他方、運搬車両10の現在の走行ルートの組み合わせに関連付けられた劣化速度が記憶されていない場合(ステップS6:NO)、タイミング推定部56は、ステップS1で選択された運搬車両10の現在の走行ルートに関連付けられた、他の運搬車両10に係る劣化速度の平均値を、運搬車両10の燃料電池143の劣化速度として特定する(ステップS8)。なお、全ての運搬車両10について走行ルートに係る劣化速度が記録されていない場合、タイミング推定部56は、当該走行ルートについて予め特定された基準の劣化速度を、運搬車両10の燃料電池143の劣化速度として特定してよい。
【0040】
タイミング推定部56は、ステップS3で特定した、ステップS1で選択された運搬車両10の燃料電池143の現在の劣化状態と、ステップS7またはステップS8で特定した劣化速度とに基づいて、メンテナンス開始タイミングを推定する(ステップS9)。メンテナンス開始タイミングは、燃料電池143の劣化状態が所定の閾値(例えば、初期の電圧値の90%)以下となるタイミングである。タイミング推定部56は、ステップS9で特定したメンテナンス開始タイミングから、燃料電池143の載せ替え等に必要な所定の時間だけ後のタイミングを、メンテナンス終了タイミングとして推定する(ステップS10)。これにより、タイミング推定部56は、ステップS1で選択した運搬車両10のメンテナンス期間を推定することができる。
【0041】
管理装置50がすべての運搬車両10についてメンテナンス期間を推定すると、ルート決定部57は、メンテナンス期間が重複する運搬車両10が存在するか否かを判定する(ステップS11)。ルート決定部57は、メンテナンス期間が重複する運搬車両10が存在する場合(ステップS11:YES)、重複に係る運搬車両10の1つについて、メンテナンス期間が重複に係る他の運搬車両10のメンテナンス期間と重複しなくなるように、走行ルートを変更する(ステップS12)。以下、重複に係る運搬車両10のうち、メンテナンス期間を変更する運搬車両10を第一運搬車両とよび、重複に係る運搬車両10のうち、メンテナンス期間を変更しない運搬車両10を第二運搬車両とよぶ。例えば、ルート決定部57は、第一運搬車両のメンテナンス期間が第二運搬車両のメンテナンス期間の前に終わるように、劣化速度の大きい走行ルートに変更してもよい。また例えば、ルート決定部57は、第一運搬車両のメンテナンス期間が第二運搬車両のメンテナンス期間の後に始まるように、劣化速度の小さい走行ルートに変更してもよい。ルート決定部57が走行ルートの変更を決定すると、制御データ送信部58は、決定した変更後の走行ルートを示す制御データを運搬車両10に送信する(ステップS13)。これにより、運搬車両10の制御装置163は、受信した制御データに基づいて、燃料電池143の発電電力を設定する。なお、走行ルートの変更に係る制御データの送信は、運搬車両10が走行ルートを一巡したタイミング、例えば排土場への到着のタイミングになされてもよい。
【0042】
ルート決定部57は、1つの運搬車両10について走行ルートを変更すると、ステップS11に処理を戻し、再度メンテナンス期間が重複する運搬車両10が存在するか否かを判定する。ステップS11においてンテナンス期間が重複する運搬車両10が存在しなくなったら(ステップS11:NO)、管理装置50はメンテナンス期間の確認処理を終了する。
【0043】
《作用・効果》
このように、第一実施形態に係る管理装置50は、状態特定部53、タイミング推定部56を備える。状態特定部53は、運搬車両10に搭載される燃料電池143の劣化状態を特定する。タイミング推定部56は、運搬車両10の燃料電池143の劣化状態に基づいて、運搬車両10の燃料電池143のメンテナンスを開始するメンテナンス開始タイミングを推定する。これにより、管理装置50は、鉱山の走行による燃料電池143の劣化に応じたメンテナンス時期を推定することができる。
【0044】
また、第一実施形態に係る管理装置50は、更に以下の構成を有する。管理装置50は、劣化速度特定部54を備える。状態特定部53は、運搬車両10に搭載される燃料電池143が出力する電圧の大きさと電流の大きさの関係に基づいて、燃料電池143の劣化状態を特定する。劣化速度特定部54は、作業現場における走行ルートごとに、運搬車両10の走行ルートの走行による燃料電池143の劣化速度を特定する。タイミング推定部56は、運搬車両10の燃料電池143の劣化状態と、運搬車両10の走行ルートから特定される燃料電池143の劣化速度とに基づいて、メンテナンス開始タイミングを推定する。これにより、管理装置50は、鉱山の走行による燃料電池143の将来の劣化を予測し、将来の劣化に応じたメンテナンス時期を推定することができる。なお、上記実施形態に係る劣化速度特定部54は、作業現場における走行ルートごとに、当該走行ルートを走行する運搬車両10について複数のタイミングにおいて特定された燃料電池143の劣化状態に基づいて、走行ルートの走行による燃料電池143の劣化速度を特定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては劣化速度は、予め実地試験などによって求められたものであってもよい。
【0045】
また、第一実施形態に係る管理装置50は、更に以下の構成を有する。管理装置50は、複数の運搬車両10それぞれの走行ルートを決定するルート決定部57を備える。管理装置50のタイミング推定部56は、メンテナンス開始タイミングからメンテナンス終了タイミングまでのメンテナンス期間を推定する。ルート決定部57は、複数の運搬車両10のうち一部の運搬車両10同士のメンテナンス期間に重複が生じる場合に、一部の運搬車両10のうち少なくとも1つの運搬車両10の走行ルートを変更する。これにより、管理装置50は、メンテナンス期間が重複しないように、複数の運搬車両10の走行ルートを調整することができる。したがって、管理装置50は、複数の運搬車両10のメンテナンスが同時期に発生することによる作業遅延が生じることを防ぐことができる。
なお、第一実施形態に係る管理装置50は、同時にメンテナンスを行う運搬車両10が1台以下となるように走行ルートを決定するが、これに限られない。例えば、管理装置50は、予め同時メンテナンス許容台数を定めておき、メンテナンス期間が重複する運搬車両10の数が同時メンテナンス許容台数を超える場合に走行ルートの変更を行うものであってもよい。
【0046】
また、第一実施形態に係る管理装置50の劣化速度特定部54は、運搬車両10ごとに、複数の走行ルートそれぞれについての劣化速度を特定する。タイミング推定部56は、劣化速度特定部54が特定した劣化速度を用いてメンテナンス開始タイミングを推定する。これにより、管理装置50は、運搬車両10ごとに燃料電池143の劣化特性の際に鑑みて精度よくメンテナンス開始タイミングを推定することができる。
複数の運搬車両10の一つである第一運搬車両について劣化速度が特定されていない場合、タイミング推定部56は、複数の運搬車両10のうち劣化速度がすでに特定されている第二運搬車両の走行ルートに係る劣化速度を用いて、第一運搬車両のメンテナンス開始タイミングを推定する。これにより、管理装置50は、劣化特性が未知の走行ルートについても、メンテナンス開始タイミングを推定することができる。
なお、他の実施形態においては、管理装置50は、運搬車両10によらず、走行ルートごとに平均的な劣化速度を特定するものであってもよい。
【0047】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
【0048】
上述した実施形態に係る管理装置50は、一定周期ごとに、すべての運搬車両10についての燃料電池143の劣化速度の特定および走行ルートの変更を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る管理装置50は、運搬車両10ごとに、当該運搬車両10が走行ルートを一巡したタイミングで、当該運搬車両10の劣化速度の特定および走行ルートの変更を行ってもよい。また他の実施形態に係る管理装置50は、一定周期ごとに、すべての運搬車両10についての燃料電池143の劣化速度の特定を行い、運搬車両10ごとに、当該運搬車両10が走行ルートを一巡したタイミングで、当該運搬車両10の走行ルートの変更を行ってもよい。
【0049】
上述した実施形態に係る管理装置50および制御装置163は、それぞれ単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、管理装置50または制御装置163の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで管理装置50または制御装置163として機能するものであってもよい。このとき、制御装置163を構成する一部のコンピュータが運搬車両10の内部に搭載され、他のコンピュータが運搬車両10の外部に設けられてもよい。
【0050】
上述した実施形態に係る運搬車両10は、オペレータによって操作される有人車両であるが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る運搬車両10は、自動走行する無人車両であってもよい。この場合、運搬車両10の制御系16は操作装置164およびモニタ165を備えなくてもよい。また車体制御部173は、走行ルートと計測装置161の計測値によるPID制御などによって、制御信号を生成すればよい。
【0051】
また、上述した実施形態では、作業車両として運搬車両10を例に説明したが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、管理装置50は、油圧ショベル、ホイルローダ、ダンプトラックなどの他の作業車両を管理してもよい。
【0052】
また、上述した実施形態では、運搬車両10が、燃料電池143から常に一定の電力を出力させ、運搬車両10の駆動に必要な電力と燃料電池143が出力する電力との差分を、バッテリ144の充電または放電で賄うレンジエクステンダ方式で駆動するが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、運搬車両10は、運搬車両10の負荷に応じて燃料電池143から出力する電力を変動させるプライムムーバ方式で駆動してもよい。この場合、発電電力設定部172は、走行ルートの走行中に燃料電池143が出力する電力が、運搬車両10の駆動に要する必要電力の変動範囲よりも狭い範囲で変動するように、目標発電電力を決定する。例えば、発電電力設定部172は、ステアリング、アクセル、ブレーキ、ダンプボディ動作ごとに、燃料電池143が出力すべき電力を設定する場合、必要電力より小さい電力を目標発電電力として設定するものであってよい。また例えば、発電電力設定部172は、必要電力に対する目標発電電力の割合として、100%未満の値を設定するものであってもよい。また例えば、発電電力設定部172は、目標発電電力の時系列を設定するものであってもよい。
【0053】
〈コンピュータ構成〉
図7は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ93、ストレージ95、インタフェース97を備える。
上述の管理装置50および制御装置163は、それぞれコンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ95に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ95から読み出してメインメモリ93に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ93に確保する。プロセッサ91の例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0054】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ90は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ91によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0055】
ストレージ95の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ95は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース97または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ93に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ95は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0056】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ95に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0057】
1…運搬システム 10…運搬車両 11…ダンプボディ 12…車体 13…走行装置 14…動力系 141…水素タンク 142…水素供給装置 143…燃料電池 144…バッテリ 145…DCDCコンバータ 146…リターダグリッド 15…駆動系 151…インバータ 152…ポンプ駆動モータ 153…油圧ポンプ 154…ホイストシリンダ 155…インバータ 156…走行駆動モータ 16…制御系 161…計測装置 162…通信装置 163…制御装置 164…操作装置 165…モニタ 171…データ取得部 172…発電電力設定部 173…車体制御部 174…燃料電池制御部 175…必要電力算出部 176…バッテリ制御部 177…表示制御部 30…積込機械 50…管理装置 51…計測データ取得部 52…履歴記憶部 53…状態特定部 54…劣化速度特定部 55…劣化速度記憶部 56…タイミング推定部 57…ルート決定部 58…制御データ送信部 90…コンピュータ 91…プロセッサ 93…メインメモリ 95…ストレージ 97…インタフェース