(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098637
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】昇降補助装置
(51)【国際特許分類】
B66F 19/00 20060101AFI20240717BHJP
E06C 7/12 20060101ALI20240717BHJP
E06C 9/04 20060101ALI20240717BHJP
B66B 9/02 20060101ALN20240717BHJP
【FI】
B66F19/00 Z
E06C7/12
E06C9/04
B66B9/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002238
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】592131674
【氏名又は名称】櫻井技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安藤 峰之
【テーマコード(参考)】
2E044
3F301
【Fターム(参考)】
2E044BA14
2E044BB06
2E044CB01
2E044DA01
2E044DB01
2E044EE15
3F301AA03
3F301BA08
3F301BB09
(57)【要約】
【課題】昇降方向の荷重を支持する支持力の向上が図られた昇降補助装置を提供する。
【解決手段】作業者が着用する墜落制止用器具が取り付けられた状態で長手方向に一定の間隔で複数の孔R21Aが穿設された長尺昇降用レールR20に沿って昇降する、作業者の昇降を補助する昇降補助装置100であって、長尺昇降用レールR20にスライド可能となるように係合する本体部110と、複数の履板133Aから構成される輪を進退駆動させることで、長尺昇降用レールR20に沿った昇降を行う輪133と、を備え、輪133は、複数の履板133Aから突設されて、それぞれが孔R21Aと噛み合うように構成された複数のブロック133Bを備え、これらのブロック133Bのうち2つ以上が孔R21Aと噛み合った状態を維持しながら進退駆動することが可能である。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業者が着用する墜落制止用器具が取り付けられた状態で長手方向に一定の間隔で複数の孔が穿設された長尺昇降用レールに沿って昇降する、前記作業者の昇降を補助する昇降補助装置であって、
前記長尺昇降用レールにスライド可能となるように係合する本体部と、
複数の履板から構成される輪を進退駆動させることで、前記長尺昇降用レールに沿った昇降を行う履帯と、を備え、
前記履帯は、
複数の前記履板から突設されて、それぞれが前記孔と噛み合うように構成された複数のブロックを備え、
これらの前記ブロックのうち2つ以上が前記孔と噛み合った状態を維持しながら進退駆動することが可能である、
昇降補助装置。
【請求項2】
請求項1に記載の昇降補助装置であって、
前記ブロックは、前記履板から突設される側の先端部における、前記進退駆動の方向で見た縁部に、前記縁部の角が丸められた面取り部を備えている、
昇降補助装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の昇降補助装置であって、
前記墜落制止用器具のランヤードが取り付け可能な取付部と、
前記ランヤードから前記取付部に掛かる張力を検出する検出装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて前記履帯の前記進退駆動を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記検出装置が検出する前記張力の大きさが第一閾値を超えたときに前記履帯の前記進退駆動を開始させる開始制御と、
前記検出装置が検出する前記張力の大きさが前記第一閾値よりも大きい第二閾値を超えるときに前記履帯の前記進退駆動を停止させる停止制御と、を含む複数種類の制御を実行する、
昇降補助装置。
【請求項4】
請求項3に記載の昇降補助装置であって、
前記長尺昇降用レールに干渉しない非干渉状態から前記長尺昇降用レールに係止された係止状態に切り替えられることで、前記昇降をストップさせるストッパーを備え、
前記複数種類の制御には、前記検出装置が検出する前記張力の大きさが前記第二閾値以上となる第三閾値を超えたときに前記ストッパーを前記非干渉状態から前記係止状態に切り替える切り替え制御が含まれている、
昇降補助装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の昇降補助装置であって、
前記履帯は、前記本体部に取り付けられたバッテリーの電気エネルギーを使用して前記進退駆動を行う、
昇降補助装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、昇降補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄塔作業等における作業者は、その昇降に伴う疲労を軽減するため、昇降機を昇降補助装置として用いることが知られている。例えば、特許文献1には、係合面と取付部とから構成される長尺昇降用レールに装着される昇降補助装置が開示されている。ここで、当該長尺昇降用レールの係合面には、その長手方向に矩形孔が設けられており、この矩形孔に噛み合うスプロケットが昇降補助装置に備えられている。昇降補助装置は、当該スプロケットを回転させることでレール沿いに走行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記昇降補助装置は、長尺昇降用レール沿いに走行する際の昇降方向の荷重を、専らスプロケットの歯の1つ(すなわち1箇所)のみで支持している。そのため、当該昇降補助装置の支持力には、限界が存在した。
【0005】
本開示は、昇降方向の荷重を支持する支持力の向上が図られた昇降補助装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、第1の開示は、作業者が着用する墜落制止用器具が取り付けられた状態で長手方向に一定の間隔で複数の孔が穿設された長尺昇降用レールに沿って昇降する、前記作業者の昇降を補助する昇降補助装置であって、前記長尺昇降用レールにスライド可能となるように係合する本体部と、複数の履板から構成される輪を進退駆動させることで、前記長尺昇降用レールに沿った昇降を行う履帯と、を備え、前記履帯は、複数の前記履板から突設されて、それぞれが前記孔と噛み合うように構成された複数のブロックを備え、これらの前記ブロックのうち2つ以上が前記孔と噛み合った状態を維持しながら進退駆動することが可能であるものである。
【0007】
第1の開示に係る昇降補助装置によれば、長尺昇降用レールに沿った昇降を行う際に、履帯のブロックのうち2つ以上が長尺昇降用レールの孔と噛み合った状態が維持される。これにより、昇降方向の荷重を2つ以上のブロック(すなわち複数箇所)で支持して、この昇降方向の荷重を支持する支持力の向上が図られた昇降補助装置を提供することができる。
【0008】
ここで、第1の開示に係る昇降補助装置は、後述する第2の開示に係る昇降補助装置であっても良い。この第2の開示に係る昇降補助装置においては、前記ブロックは、前記履板から突設される側の先端部における、前記進退駆動の方向で見た縁部に、前記縁部の角が丸められた面取り部を備えているものである。
【0009】
第2の開示に係る昇降補助装置によれば、長尺昇降用レールの孔にブロックの先端部の縁部が引っ掛かるおそれを低減させて、履帯の進退駆動をよりスムーズにすることができる。
【0010】
ここで、第1の開示または第2の開示に係る昇降補助装置は、後述する第3の開示に係る昇降補助装置であっても良い。この第3の開示に係る昇降補助装置は、前記墜落制止用器具のランヤードが取り付け可能な取付部と、前記ランヤードから前記取付部に掛かる張力を検出する検出装置と、前記検出装置の検出結果に基づいて前記履帯の前記進退駆動を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記検出装置が検出する前記張力の大きさが第一閾値を超えたときに前記履帯の前記進退駆動を開始させる開始制御と、前記検出装置が検出する前記張力の大きさが前記第一閾値よりも大きい第二閾値を超えるときに前記履帯の前記進退駆動を停止させる停止制御と、を含む複数種類の制御を実行するものである。
【0011】
第3の開示に係る昇降補助装置によれば、作業者は、自身の昇降を昇降補助装置に補助させる際に、自身の体重の一部を取付部に預けることで、昇降補助装置を始動させることができる。また、墜落制止用器具が作動を開始する力が取付部に掛かるような場合には、昇降補助装置は、履帯の進退駆動を停止させる。これにより、当該昇降補助装置を、作業者の安全を確保する安全装置として提供することができる。
【0012】
ここで、第3の開示に係る昇降補助装置は、後述する第4の開示に係る昇降補助装置であっても良い。この第4の開示に係る昇降補助装置は、前記長尺昇降用レールに干渉しない非干渉状態から前記長尺昇降用レールに係止された係止状態に切り替えられることで、前記昇降をストップさせるストッパーを備え、前記複数種類の制御には、前記検出装置が検出する前記張力の大きさが前記第二閾値以上となる第三閾値を超えたときに前記ストッパーを前記非干渉状態から前記係止状態に切り替える切り替え制御が含まれているものである。
【0013】
第4の開示に係る昇降補助装置によれば、墜落制止用器具が作動を開始する力が取付部に掛かるような場合に、昇降補助装置は、その昇降をストッパーにより停止させる。これにより、当該昇降補助装置を、作業者のさらなる安全を確保する安全装置として提供することができる。
【0014】
ここで、第1の開示または第2の開示に係る昇降補助装置は、後述する第5の開示に係る昇降補助装置であっても良い。この第5の開示に係る昇降補助装置において、前記履帯は、前記本体部に取り付けられたバッテリーの電気エネルギーを使用して前記進退駆動を行うものである。
【0015】
第5の開示に係る昇降補助装置によれば、昇降補助装置は、給電線による外部からの電力供給によらずに昇降をすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本開示は上記各構成をもつことにより、昇降方向の荷重を支持する支持力の向上が図られた昇降補助装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】長尺昇降用レールR20に装着されている昇降補助装置100の説明図である。
【
図3】第1の実施形態の昇降補助装置100における底面図である。
【
図4】第1の実施形態の昇降補助装置100における正面図である。
【
図6】
図5の遊動輪132を説明する説明図である。
【
図8】
図5のストップ機構135を説明する説明図である。
【
図9】
図5の検出装置160を説明する説明図である。
【
図10】第1の実施形態の昇降補助装置100における、制御および電力の流れを説明する説明図である。
【
図11】第2の実施形態の昇降補助装置における検出装置360を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<第1の実施形態>
本開示の第1の実施形態に係る昇降補助装置100は、
図1に示すように、墜落制止用器具M20を着用した作業者M10が、鉄塔R10に設定された昇降経路R10A(
図1の仮想線を参照)に沿って昇降することを補助するものである。ここで、鉄塔R10は、その昇降経路R10Aに沿って付設された長尺昇降用レールR20(後述)を備えている。また、昇降補助装置100には、墜落制止用器具M20が備えるランヤードM22が取り付けられる。この状態で、昇降補助装置100は、作業者M10が昇降経路R10Aを昇降する際に、墜落制止用器具M20のランヤードM22を介して作業者M10を引っ張り上げながら、長尺昇降用レールR20に沿って昇降することで、作業者M10の昇降を補助する。
【0019】
<長尺昇降用レールの構成>
長尺昇降用レールR20は、
図2に示すように、作業者M10を支持することが可能となる厚みで、かつ、断面が長方形の支持板R21を備えている。この支持板R21には、その長手方向に一定の間隔R21Lで複数の孔R21Aが穿設されている。本実施形態においては、複数の孔R21Aは、それぞれが矩形に形成されている。
【0020】
具体的には、長尺昇降用レールR20は、断面がH字状となる金属(例えばアルミニウム)製のレールであり、
図1に示すように、作業者M10を支持することが可能な強度を有している。長尺昇降用レールR20の支持板R21は、
図2に示すように、その長手方向において一方側の端にある下端R22が鉄塔R10(
図1参照)の下方側に位置され、同じく他方側の端にある上端R23が鉄塔R10の上方側に位置されている。また、支持板R21は、下端R22の側にある孔R21Aから間隔R21Lで一方側に離れた位置に、切り欠きR21Bが設けられている。この切り欠きR21Bは、昇降補助装置100を長尺昇降用レールR20に装着するときにブロック133B(後述、
図5参照)を孔R21Aに案内するものである。同じく、支持板R21は、上端R23の側にある孔R21Aから間隔R21Lで他方側に離れた位置に、矩形の小孔R21Bが孔R21Aの代わりに3つ穿設されている。さらに、支持板R21は、上端R23の側にある小孔R21Bから間隔R21Lより大きな間隔で他方側に離れた位置に、円形の小孔R21Cが穿設されている。ここで、小孔R21Cは、ブロック133Bと噛み合うことができない大きさである。これにより、輪133(後述、
図5参照)のブロック133Bは、支持板R21における上端R23の板面と干渉し、もって輪133の駆動を制限することができる。そうすると、昇降補助装置100(
図5参照)は、その上昇を上端R23で止めることができる。
【0021】
<昇降補助装置の構成>
昇降補助装置100は、
図3および
図5に示すように、長尺昇降用レールR20にスライド可能となるように係合することで、昇降補助装置100を長尺昇降用レールR20に装着された装着状態とする本体部110を備えている。この本体部110は、その上側の端と下側の端のそれぞれ(
図5参照)に、2つ1組(
図3参照)のガイドローラー111を備える。これらガイドローラー111の組は、それぞれ、昇降補助装置100が昇降する昇降方向(
図5参照)の両方向に回転可能とされて、長尺昇降用レールR20の支持板R21をその両サイドから挟みこむ構成である。これにより、2組4つのガイドローラー111は、支持板R21の側面R21Dを転がることで昇降補助装置100の昇降をスムーズにすることができる。
【0022】
本実施形態においては、長尺昇降用レールR20の支持板R21を各ガイドローラー111は、支持板R21に対してその厚み方向の両側(
図3では上下両側)から係合する係合部111Aを備える。これらの係合部111Aは、上記装着状態において昇降補助装置100が昇降方向(
図5参照)以外の方向に移動することを抑制する。
【0023】
また、昇降補助装置100の本体部110における背面110Bには、抜け110E、および挿通孔110G(
図5参照)を備えた挿通ブロック110Fが設けられている。ここで、抜け110Eは、
図3の下から見て履帯130(後述)における輪133(後述)の一部がガイドローラー111と同じ高さで背面110Bから張り出し可能となる空間である。そして、抜け110Eから張り出される輪133の一部であるブロック133B(後述)が、
図5に示すように、装着状態の長尺昇降用レールR20の孔R21Aと噛み合い可能となる。また、挿通ブロック110Fには、ストップ機構135(後述)における筐体135E(後述)の固定部135F(後述)が固設されている。当該筐体135Eは、その収納空間135G(後述)をスライドする鍔付ストッパー135A(後述)を収納するものである。そして、この鍔付ストッパー135Aは長尺昇降用レールR20に係止させるものである。挿通ブロック110Fの挿通孔110Gは、当該鍔付ストッパー135Aのロッド135Bを孔R21Aに挿通することを可能とする孔である。
【0024】
また、昇降補助装置100は、
図5に示すように、棒状の取付部112と、この取付部112を本体部110の中へ挿通可能にする取付孔161Dとを備えている。ここで、取付部112には、その軸方向(
図9参照)における他端に被検出部114が固設されている。被検出部114は、取付部112の側面から外方に張り出された突起であり、この突起は取付部112の周方向に延びるように設けられている。そして、当該被検出部114は、取付孔161Dの縁161Eと係合する弾性部162(後述)に係止されることで、取付部112が本体部110から外れることを抑制している。また、取付部112には、その軸方向における一端にリング112Cが固設されている。このリング112Cは、墜落制止用器具M20(
図1参照)が備えるランヤードM22(
図1参照)のフックM22A(
図1参照)が取り付け可能な大きさである。なお、リング112Cの強度は、墜落制止用器具M20が作動を開始する力を受け止め可能となるように設定されている。また、作業者M10(
図1参照)は、当該ランヤードM22が延び出されるフルハーネスM21(
図1参照)を着用している。これらにより、昇降補助装置100に対する作業者M10の移動を抑制することができる。
【0025】
また、昇降補助装置100は、報知機(図示せず)を備えている。この報知機は、電源スイッチ(後述、図示せず)がオン状態であって、墜落制止用器具M20(
図1参照)が作動を開始していない状態のとき、そのことを外部に報知する報知動作を行うものである。
【0026】
<本体部の構成>
本体部110は、長尺昇降用レールR20の支持板R21を挟み込む両サイドに、種々の構成を取り付けるための側面板110C、110Dを備えている。本実施形態においては、側面板110C、110Dには、操作パネル120(
図4参照)、履帯130、回転機構140、電源150、検出装置160、および制御装置170(
図10参照)が取り付けられる。ここで、操作パネル120は、
図4に示すように、作業者M10(
図1参照)が昇降補助装置100の昇降を自動状態(後述)にしたり、手動状態(後述)にしたりするものである。また、履帯130は、
図5に示すように、複数の履板133Aから構成される輪133を備えている。履帯130は、輪133を進退駆動させることで長尺昇降用レールR20に沿った昇降を昇降補助装置100に実現させる。また、回転機構140は、輪133を進退駆動させる駆動源である。また、電源150は、昇降補助装置100において電力を必要とする種々の構成に給電するものである。また、検出装置160は、ランヤードM22(
図1参照)のフックM22A(
図1参照)から取付部112に掛かる張力を検出するものである。また、制御装置170は、検出装置160の検出結果に基づいて履帯130の輪133の進退駆動を制御するものである。本実施形態においては、制御装置170は、
図8に示す鍔付ストッパー135Aを非干渉状態と係止状態とに切り替える(後述)ことで、昇降補助装置100の昇降をストップさせるストップ機構135を備えている。以下に、操作パネル120と、履帯130と、回転機構140と、電源150と、検出装置160と、制御装置170(およびストップ機構135)とを説明する。
【0027】
<操作パネルの構成>
操作パネル120は、
図4に示すように、本体部110の正面110Aに付設されている。ここで、操作パネル120は、電源スイッチ(図示せず)と、手動切替スイッチ120Aと、上昇ボタン120Bと、下降ボタン120Cと、非常停止ボタン120Dとを備えている。電源スイッチは、本体部110の内側に取り付けられたバッテリー151(後述、
図3参照)が検出装置160(後述、
図5参照)、および報知機(図示せず)への給電をオン状態またはオフ状態に切り替えるものである。手動切替スイッチ120Aは、作業者M10(
図1参照)が操作することで自動状態と、手動状態とを切り替えるものある。ここで、自動状態は、制御装置170が検出装置160の検出結果に基づいて昇降補助装置100を昇降させる状態である。また、手動状態は、作業者M10(
図1参照)が上昇ボタン120Bまたは下降ボタン120Cを押すことで昇降補助装置100を昇降させる状態である。本実施形態の手動切替スイッチ120Aは、例えば、トグルスイッチである。上昇ボタン120Bは、手動切替スイッチ120Aが手動状態に切り替えられ、かつ当該上昇ボタン120Bが押されている間に装着状態の昇降補助装置100を上昇させる入力ボタンである。同じく、下降ボタン120Cは、手動切替スイッチ120Aが手動状態に切り替えられ、かつ当該下降ボタン120Cが押されている間に装着状態の昇降補助装置100を下降させる入力ボタンである。非常停止ボタン120Dは、装着状態のとき、鍔付ストッパー135A(後述、
図5参照)が長尺昇降用レールR20(
図5参照)に係止される係止状態と、鍔付ストッパー135Aが長尺昇降用レールR20に干渉しない非干渉状態とを切り替えるものである。本実施形態の非常停止ボタン120Dは、例えば、プッシュロック・ターンリセット式ボタンである。そのため、非常停止ボタン120Dは、これを押すことで係止状態にしたり、これを回すことで非干渉状態に切り替えたりすることができる。
【0028】
<履帯の構成>
履帯130は、
図7に示すように、起動輪131、遊動輪132、および起動輪131と遊動輪132との間を架け渡す輪133を備えている。なお、本開示の履帯130は、無限軌道とも呼ばれる。
【0029】
起動輪131は、
図3に示すように、軸131Aと、プーリー131Bと、スプロケット131Cとを有する。軸131Aは、装着状態の昇降補助装置100において支持板R21の板面に平行であり、かつ昇降補助装置100の進退方向(
図5参照)と直交する方向に延び、起動輪131を本体部110にて支持するものである。当該軸131Aは、伝達ベルト142(後述)の力を受けて回転するプーリー131Bと、このプーリー131Bに追従して回転するスプロケット131Cとを本体部110に対して回転可能に支持するものである。また、スプロケット131Cには、
図7に示すように、輪133と係合可能な歯131Dが設けられている。これらにより、起動輪131のプーリー131Bは伝達ベルト142の力を受け、もってプーリー131Bの回転が輪133と係合されるスプロケット131Cの回転を実現することができる。
【0030】
遊動輪132は、
図5に示すように、軸132Aと、スプロケット132Cとを有する。軸132Aは、起動輪131の軸131Aが延びる方向と平行な方向に延び、遊動輪132を軸受け部113Aにて支持するものである。当該軸132Aは、スプロケット132Cを張設機構113に対して回転可能に支持するものである。ここで、スプロケット132Cは、
図7に示すように、輪133と係合可能な歯132Dを備えている。また、張設機構113は、輪133がその内側で起動輪131と遊動輪132との間を架け渡すように、それぞれのスプロケット131C、132Cの歯131D、132Dと、輪133とを係合させるものである。これにより、張設機構113は、
図5に示すように、輪133がスプロケット131Cおよびスプロケット132Cから外れることを抑制するとともに、起動輪131の回転で輪133の進退駆動を実現することができる。
【0031】
張設機構113は、
図6に示すように、軸受け部113Aと、取付ブロック113Bと、弾性体113Dとを備えている。軸受け部113Aは、軸132Aが当該軸受け部113Aに対して回転可能となるようにその両端を支持するものであり、取付ブロック113Bに取り付けられている。また、取付ブロック113Bは、本体部110(
図5参照)に固設されている。取付ブロック113Bには、軸受け部113Aがスライド可能となるレーン113Cが設けられている。このレーン113Cは、装着状態の長尺昇降用レールR20(
図5参照)の長手方向と平行な方向に延びるガイドであり、その方向に伸縮可能な弾性体113Dが付設されている。また、弾性体113Dは、軸受け部113Aをレーン113Cの延びる方向に沿って軸131A(
図5参照)から離れるように付勢力でスライドさせるものである。これらにより、張設機構113(
図5参照)が、
図7に示すように、軸132Aを軸131Aから離し、もってスプロケット131Cの歯131Dおよびスプロケット132Cの歯132Dと係合される、輪133の張り具合を調整することができる。なお、レーン113Cにおけるその延びる方向の寸法は、
図5に示すように、軸受け部113Aをスライドさせることで輪133がスプロケット131Cおよびスプロケット132Cから外れにくい状態となる長さである。また、弾性体113Dには、伸縮可能であって、墜落制止用器具M20(
図1参照)が作動を開始する力を受け止めることが可能な強度となるもの(例えば圧縮バネ)が用いられる。
【0032】
輪133は、
図7に示すように、複数枚(
図7では15枚)の履板133Aと、それぞれの履板133Aから突設されて、それぞれが孔R21Aと噛み合うように構成された複数個(
図7では15個)のブロック133Bとを備えている。そして、輪133における隣り合う履板133Aの間には、リンク133Gとピン133Hとからなる揺動可能な連結構造133Fが設けられている。ここで、装着状態の輪133は、長尺昇降用レールR20に向き合う側の帯がたわむように架設されている。これにより、装着状態の輪133は、ブロック133Bの縁部133D(後述)が支持板R21の外形に沿うように、ブロック133Bの先端部133Cの向きを変えて駆動することができる。そして、輪133のブロック133Bが長尺昇降用レールR20の孔R21Aと噛み合いながら進退駆動することができる。言い換えると、輪133は、これらのブロック133Bのうち2つ以上(
図7では4つ)がそれぞれ異なる箇所の(
図7では4箇所の)孔R21Aと噛み合った状態を維持しながら進退駆動することが可能なものである。すなわち、装着状態の昇降補助装置100は、孔R21Aと噛み合った状態のブロック133Bが下方側に向かうと長尺昇降用レールR20は上昇し、当該ブロック133Bが上方側に向かうと長尺昇降用レールR20は下降する。なお、本実施形態のスプロケット131Cは、その歯131Dのうち2つ以上(
図7では4つ)が隣り合うリンク133Gの間でこれらのリンク133Gと係合されている。同じく、スプロケット132Cは、その歯132Dのうち2つ以上(
図7では4つ)が隣り合うリンク133Gの間でこれらのリンク133Gと係合されている。すなわち、起動輪131および遊動輪132は、進退駆動する輪133をそれぞれのスプロケット131C、132Cのうち2つ以上(
図7では4つ)の歯131D、132Dで支持している。
【0033】
また、ブロック133Bは、履板133Aから突設される側の先端部133Cにおける進退駆動の方向で見た縁部133Dに、この縁部133Dの角が丸められた面取り部133Eを備えている。そうすると、履板133Aが前進する際に孔R21Aから離れるように動くブロック133Bは、その面取り部133Eが孔R21Aの下方側の内面R21Eを滑るように動くことで、先端部133Cの向きが変わる。同じく、履板133Aが後退する際に孔R21Aに近づくように動くブロック133Bは、その面取り部133Eが孔R21Aの下方側の縁R21Fをこするように動くことで、先端部133Cの向きが変わる。これらにより、ブロック133Bにおける先端部133Cの縁部133Dが、長尺昇降用レールR20の孔R21Aに引っ掛かるおそれを低減させ、輪133の進退駆動をよりスムーズにすることができる。
【0034】
<回転機構の構成>
回転機構140は、
図3に示すように、原動機141と、軸141Aと、プーリー141Bと、伝達ベルト142とを備えている。ここで、原動機141は、本体部110に取り付けられた電源150(後述)の電気エネルギーを使用してプーリー141Bに固設されている軸141Aを回転させる。本実施形態の原動機141は、例えば、ブレーキ付電動モーターである。また、プーリー141Bは、その周方向の回転力を伝達ベルト142に伝えるものである。また、伝達ベルト142は、プーリー141Bの回転力がプーリー131Bに伝わるように、プーリー141Bとプーリー131Bとの間を架け渡すもの(例えば平ベルト)である。これらにより、回転機構140は、原動機141が回転させるプーリー141Bの回転を起動輪131のプーリー131Bに伝達することができる。すなわち、回転機構140は、本体部110に取り付けられた電源150の電気エネルギーを使用して、輪133が進退駆動を行うことを可能としている。
【0035】
原動機141は、
図5に示すように、プーリー141Bを正方向または逆方向に回転させるモーター141C(
図10参照)と、プーリー141Bの回転を停止状態にするブレーキ141D(
図10参照)とを有する。ここで、プーリー141Bの正方向の回転は、自動状態にある制御装置170(後述)の制御を受けたり、手動状態で作業者M10が上昇ボタン120B(
図4参照)を押したりするとき、モーター141Cが軸141Aを正方向に回転させることで実現する。同じく、プーリー141Bの回転を停止状態にすることは、自動状態にある制御装置170の制御を受けたとき、ブレーキ141Dが軸141Aの回転を停止することで実現する。これらにより、昇降補助装置100は、自動状態にある制御装置170の制御を受けて、昇降したり、停止したりすることができる。なお、プーリー141Bの逆方向の回転は、手動状態で作業者M10が下降ボタン120C(
図4参照)を押したとき、モーター141Cが軸141Aを逆方向に回転させることで実現する。
【0036】
<ストップ機構の構成>
ストップ機構135は、
図8に示すように、鍔付ストッパー135Aと、弾性体135Dと、筐体135Eとから構成されている。
【0037】
鍔付ストッパー135Aは、ロッド135Bと、鍔135Cとを備えている。ロッド135Bは、その断面が孔R21Aに挿通可能な大きさの丸形の棒であり、係止状態のとき、墜落制止用器具M20(
図1参照)が作動を開始する力をその棒の側面で受け止めるものである。鍔135Cは、ロッド135Bの根元にて、その側面から外方に張り出した突起であり、この突起が周方向に延びるように設けられ、かつ、当該根元側に内底が設けられた中空の筒をなすものである。なお、本実施形態の鍔付ストッパー135Aは、磁性体(例えば鉄)で構成される。また、ここでいう鍔付ストッパー135Aは、本開示の「ストッパー」をいう。
【0038】
弾性体135Dは、伸縮可能なものであり、ロッド135Bの延びる方向において伸縮するように鍔付ストッパー135Aに付設されている。具体的には、弾性体135Dは、ロッド135Bの延びる方向において他端が固定部135Fに係合され、一端が鍔135Cの内底と係合可能となるように位置されている。これらにより、弾性体135Dは、鍔付ストッパー135Aのロッド135Bを挿通孔110Gおよび孔R21Aに挿通することができる。なお、本実施形態の弾性体135Dは、例えば、自然状態のときにロッド135Bが挿通孔110Gおよび孔R21Aに挿通され、ロッド135Bが孔R21Aから離れる方向に引っ張られるときに鍔135Cの内底と収縮した状態の弾性体135D(例えば圧縮バネ)とが係合されるものである。言い換えると、弾性体135Dは、鍔付ストッパー135Aが長尺昇降用レールR20に係止される係止状態と、鍔付ストッパー135Aが長尺昇降用レールR20に干渉しない非干渉状態とを実現するものである。
【0039】
筐体135Eは、固定部135Fに固設される筒であり、その内側には収納空間135Gおよびソレノイド135Hを備えている。ここで、収納空間135Gは、鍔付ストッパー135Aの一部をスライド可能に収納するものである。また、ソレノイド135Hは、鍔付ストッパー135Aの一部が収納空間135Gに収納されるように鍔付ストッパー135Aに力を掛け、ロッド135Bを孔R21Aから離すものである。すなわち、ソレノイド135Hは、鍔付ストッパー135Aが長尺昇降用レールR20に干渉しない非干渉状態を実現するものである。なお、本実施形態のソレノイド135Hは、電流が流れることで磁界を形成するソレノイドコイルである。これにより、鍔付ストッパー135Aが磁性体であるとき、ソレノイド135Hは、鍔付ストッパー135Aを収納空間135Gに収納することができる。なお、ソレノイド135Hが鍔付ストッパー135Aに掛ける力は、弾性体135Dが鍔付ストッパー135Aを押す力より大きくなるように設定されている。
【0040】
これらにより、ストップ機構135は、装着状態のとき非干渉状態と係止状態とを切り替え、もって鍔付ストッパー135Aが昇降補助装置100の昇降を停止させることができる。そして、作業者M10(
図1参照)のさらなる安全を確保する安全装置として鍔付ストッパー135Aが付設された当該昇降補助装置100を提供することができる。なお、係止状態における、孔R21Aと、鍔付ストッパー135Aと、挿通孔110Gとの間のそれぞれの接触部分は、墜落制止用器具M20(
図1参照)が作動を開始する力を受け止め可能となるように設定されている。
【0041】
<電源の構成>
電源150は、
図10に示すように、バッテリー151と、変換器152とを含むものである。ここで、バッテリー151は、側面板110Dを介して本体部110に取り付けられる電気エネルギーの供給源(
図3参照)であり、昇降補助装置100において電力を必要とする種々の構成を並列にして直接給電することが可能なもの(例えば角形充電池)である。また、変換器152は、側面板110Cを介して本体部110に取り付けられ(
図5参照)、バッテリー151の電気エネルギーを昇降補助装置100(
図5参照)に用いられる電気機器の仕様に対応したエネルギーに変換するものである。本実施形態の変換器152は、例えば、直流電圧を単相交流電圧に変換するインバータ152Aと、単相交流電圧を三相交流電圧に変換するインバータ152Bとを含む構成である。これにより、バッテリー151の電気エネルギーをモーター141Cの仕様に対応したエネルギーに変換することができる。さらに、インバータ152Bとブレーキ141Dとの間には、当該原動機141に供給される電気エネルギーを直流電流に変換する整流器152Cが接続されている。これにより、原動機141に供給される電気エネルギーをブレーキ141Dの仕様に対応したエネルギーに変換することができる。
【0042】
本実施形態においては、電源150におけるバッテリー151の電気エネルギーは、履帯130の進退駆動を実現させるためにも使用される。これにより、昇降補助装置100は、給電線による外部からの電力供給によらずに昇降をすることができる。そうすると、作業者M10(
図1参照)にとって邪魔となる給電線を鉄塔R10(
図1参照)に配線する必要がなくなる。
【0043】
<検出装置の構成>
検出装置160は、
図9に示すように、取付収容部161と、弾性部162と、被検出部114と、検出部164と、を備えている。
【0044】
取付収容部161は、取付部112の被検出部114をスライド可能に収容する収容空間161Aを構成する壁である。そして、この収容空間161Aは、取付孔161Dを介して外部と連通されている。これにより、取付孔161Dを挿通する取付部112がその軸方向を動くとき、被検出部114は取付収容部161をスライドすることができる。なお、本実施形態の取付収容部161には、例えば、検出部164が検出しにくい非磁性体(例えばアルミニウム)が用いられる。
【0045】
また、取付収容部161には、検出部164を配置することが可能な検出配置部161Bが設けられている。この検出配置部161Bは、複数の検出部が一列に並んで配置することが可能なものであり、当該検出部のなす列が被検出部114が取付収容部161をスライドする方向と平行になるように配置されている。
【0046】
弾性部162は、取付部112の軸方向において伸縮することが可能なものである。そして、弾性部162は、取付孔161Dの縁161Eと被検出部114との間に挟まれるように取付部112に付設されている。これにより、弾性部162は、ランヤードM22(
図1参照)のフックM22A(
図1参照)から取付部112に掛かる張力の大きさに対応して、被検出部114を取付収容部161にスライドさせることができる。言い換えると、弾性部162は、自然状態のときに被検出部114が取付孔161Dから離れ、取付部112に張力が掛かると当該被検出部114が取付孔161Dの縁161Eに近づくように取付収容部161をスライドすることを実現するものである。なお、本実施形態の弾性部162は、例えば、非磁性体の圧縮バネである。
【0047】
ここで、取付収容部161をスライドする取付部112の被検出部114は、検出部164に近づいたときにこの検出部164が被検出部114の存在を認識できるものである。言い換えると、被検出部114は、検出部164が検出可能となる領域A16に入ることで収容空間161Aにおける被検出部114の位置を特定するものである。これにより、被検出部114が取付部112に掛かる張力の大きさに対応して取付収容部161をスライドすると、被検出部114は、検出部164が検出可能となる領域A16に入ることができる。なお、本実施形態の被検出部114は、取付収容部161の内径と略同じ外径であり、かつ取付部112の軸方向において領域A16Aと領域A16Bとを跨ぐことが可能な寸法と同じ高さの円柱である。そして、被検出部114には、検出部164が検出可能となる素材(例えば磁性体)が用いられている。
【0048】
検出部164は、被検出部114が検出可能な領域A16に入っていることを検出すると、この検出を信号として制御装置170のスイッチに送るもの(例えば磁気センサ)である。ここで、検出部164には、領域A16に相当する領域A16A、領域A16B、領域A16Cのそれぞれを検出可能な領域とする、第一検出部164A、第二検出部164B、および第三検出部164Cが含まれている。なお、本実施形態の領域A16A、領域A16B、領域A16Cは、それぞれの検出素子の表面のみならず一定の幅をもって検知することが可能な範囲をもつ。また、検出部164が制御装置170のスイッチに信号を送る信号線(図示せず)は、原動機141およびソレノイド135Hによる磁場の影響を受けにくい位置に配置されている。
【0049】
第一検出部164Aは、弾性部162が自然状態のとき、収容空間161Aにおける被検出部114の位置が第一検出部164Aの検出可能となる領域A16Aに入らないように検出配置部161Bに付設されている。これにより、被検出部114が取付部112に掛かる張力の大きさに対応して取付収容部161をスライドすると、第一検出部164Aは、当該スライドにより領域A16Aに入った被検出部114を検出することができる。
【0050】
第二検出部164Bは、作業者M10(
図1参照)があらかじめ設定した原動機141の停止条件である、ブレーキ荷重が取付部112の張力として掛かるとき、被検出部114を検出するように検出配置部161Bに付設されている。言い換えると、第二検出部164Bは、第一検出部164Aより取付孔161Dの縁161E側に位置され、かつブレーキ荷重により生ずる弾性部162のひずみに追従して被検出部114が領域A16Bに入るように位置されている。これにより、ブレーキ荷重が取付部112の張力として掛かるとき、収容空間161Aにおいて被検出部114は第二検出部164Bが検出可能となる領域A16Bに入り、もって第二検出部164Bが被検出部114を検出することができる。
【0051】
第三検出部164Cは、ブレーキ荷重以上となる、墜落制止用器具M20(
図1参照)が作動を開始する力が取付部112の張力として掛かるとき、被検出部114を検出可能となるように検出配置部161Bに付設されている。言い換えると、第三検出部164Cは、検出部164のうち最も取付孔161Dの縁161E側に位置され、かつ墜落制止用器具M20が作動を開始する力により生ずる弾性部162のひずみに追従して被検出部114が領域A16Cに入るように位置されている。これにより、墜落制止用器具M20が作動を開始するとき、収容空間161Aにおいて被検出部114は第三検出部164Cが検出可能となる領域A16Cに入り、もって第三検出部164Cは被検出部114を検出することができる。なお、本実施形態の第三検出部164Cは、被検出部114が取付部112の軸方向で領域A16Bと領域A16Cとを跨ぐように位置されている。
【0052】
これらにより、検出装置160は、ランヤードM22から取付部112に掛かる張力を検出することができる。
【0053】
<制御装置の構成>
制御装置170は、
図10に示すように、操作パネル120の操作を受けて昇降補助装置100の制御を行うものである。言い換えると、電源スイッチ(図示せず)がオン状態の制御装置170は、手動切替スイッチ120Aの出力に基づき、自動状態で昇降補助装置100の制御を行ったり、手動状態で上昇ボタン120Bまたは下降ボタン120Cを押している間に昇降補助装置100の昇降を行ったりする。また、電源スイッチがオン状態の制御装置170は、非常停止ボタン120Dを押すことで昇降補助装置100の昇降を鍔付ストッパー135A(
図5参照)により停止させる。以下に、電源スイッチがオン状態の制御装置170が自動状態で行う昇降補助装置100(
図5参照)の制御を説明する。
【0054】
制御装置170は、回転機構140を自動制御する。すなわち、制御装置170は、検出装置160の検出結果に基づいて、輪133(
図5参照)の進退駆動を制御したりするものである。ここで、制御装置170が実行する制御の種類は、検出装置160の検出結果に対応して複数設定されている。
【0055】
制御装置170は、スイッチ171Cと、判定部172Cとを備えている。スイッチ171Cは、インバータ152Bからモーター141Cへ電流が流れるようにしたり、電流を遮断したりすることを切り替えるもの(例えば半導体スイッチ)である。判定部172Cは、所定の条件を満たすと判定するとき、スイッチ171Cにインバータ152Bからモーター141Cへ電流が流れるようにさせるものである。ここで、判定部172Cは、収容空間161Aにおける被検出部114が領域A16Aに入り、かつ領域A16Bに入らないように位置されるとき、検出装置160が検出する取付部112に掛かる張力の大きさが第一閾値を超え、かつ第二閾値以下であるときと判定する。そうすると、判定部172Cは、スイッチ171Cにインバータ152Bからモーター141Cへ電流が流れるようにする。なお、本実施形態の判定部172Cには、例えば、第一検出部164Aおよび第二検出部164Bが用いられる。
【0056】
これらにより、制御装置170(
図10参照)は、
図9に示すように、収容空間161Aにおける被検出部114が領域A16Aに入り、かつ領域A16Bに入らないように位置されるとき、モーター141C(
図10参照)を駆動させる。そうすると、
図5に示すように、プーリー141Bが回転し、このプーリー141Bの回転が伝達ベルト142によりプーリー131Bに伝わる。そして、スプロケット131Cがプーリー131Bの回転に追従して回転するため、スプロケット131Cに係合される輪133は進退駆動を行う。すなわち、制御装置170は、検出装置160が検出する張力の大きさが第一閾値を超えたときに輪133の進退駆動を開始させる開始制御を実行する。この開始制御によれば、作業者M10は、
図1に示すように、自身の昇降を昇降補助装置100に補助させる際に、自身の体重の一部を取付部112に預けることで、昇降補助装置100を始動させることができる。
【0057】
また、制御装置170は、
図10に示すように、スイッチ171Dと、判定部172Dとを備えている。スイッチ171Dは、整流器152Cからブレーキ141Dへ電流が流れるようにしたり、電流を遮断したりすることを切り替えるもの(例えば半導体スイッチ)である。判定部172Dは、所定の条件を満たすと判定するとき、スイッチ171Dに整流器152Cからブレーキ141Dへ電流が流れるようにさせるものである。ここで、判定部172Dは、収容空間161Aにおける被検出部114が領域A16Bに入るように位置されるとき、検出装置160が検出する張力の大きさが第一閾値よりも大きい第二閾値を超えると判定する。言い換えると、ブレーキ荷重が取付部112に張力として掛かるとき、検出装置160が検出する張力の大きさが第一閾値よりも大きい第二閾値を超えると判定する。そうすると、判定部172Dは、整流器152Cからブレーキ141Dへ電流が流れるようにする。なお、本実施形態の判定部172Dには、例えば、第二検出部164Bが用いられる。
【0058】
これらにより、制御装置170(
図10参照)は、
図9に示すように、収容空間161Aにおける被検出部114が領域A16Bに入るように位置されるとき、ブレーキ141D(
図10参照)を駆動させる。そうすると、
図5に示すように、プーリー141Bが停止状態となり、プーリー141Bの回転停止が伝達ベルト142によりプーリー131Bに伝わる。そして、スプロケット131Cがプーリー131Bの回転停止に追従して回転停止するため、スプロケット131Cに係合される輪133は進退駆動を停止する。言い換えると、制御装置170は、検出装置160が検出する張力の大きさが第一閾値よりも大きい第二閾値を超えるときに輪133の進退駆動を停止させる停止制御を実行する。このことから、ブレーキ荷重やブレーキ荷重より大きい墜落制止用器具M20(
図1参照)が作動を開始する力が取付部112に張力として掛かるような場合には、昇降補助装置100は、輪133の進退駆動を停止させることができる。
【0059】
また、制御装置170は、
図10に示すように、スイッチ171Gと、判定部172Gとを備えている。スイッチ171Gは、バッテリー151からソレノイド135Hへ電流が流れるようにしたり、電流を遮断したりすることを切り替えるもの(例えば半導体スイッチ)である。判定部172Gは、所定の条件を満たすと判定するとき、スイッチ171Gにバッテリー151からソレノイド135Hへの電流を遮断させるものである。ここで、判定部172Gは、収容空間161Aにおける被検出部114が領域A16Cに入るように位置されるとき、検出装置160が検出する張力の大きさが第二閾値以上となる第三閾値を超えたときと判定する。言い換えると、墜落制止用器具M20(
図1参照)が作動を開始する力が取付部112に張力として掛かるとき、検出装置160が検出する張力の大きさが第二閾値以上となる第三閾値を超えたときと判定する。そうすると、判定部172Gは、バッテリー151からソレノイド135Hへ流れる電流を遮断させることができる。なお、本実施形態の判定部172Gには、例えば、第三検出部164Cが用いられる。
【0060】
これらにより、制御装置170(
図10参照)は、
図9に示すように、収容空間161Aにおける被検出部114が領域A16Cに入るように位置されるとき、ソレノイド135H(
図5参照)が鍔付ストッパー135A(
図5参照)に掛ける力は、小さくなる。そうすると、鍔付ストッパー135Aが、
図5に示すように、弾性体135Dに押される。そして、弾性体135Dは、鍔付ストッパー135Aのロッド135Bを挿通孔110Gおよび孔R21Aに挿通させる。言い換えると、制御装置170は、検出装置160が検出する張力の大きさが第二閾値以上となる第三閾値を超えたときに鍔付ストッパー135Aを非干渉状態から係止状態に切り替えることを、ストップ機構135に実現させる切り替え制御を実行する。このことから、昇降補助装置100は、その昇降を鍔付ストッパー135Aにより停止させることができる。
【0061】
また、スイッチ171G(
図10参照)は、バッテリー151(
図10参照)から報知機(図示せず)へ電流が流れるようにしたり、電流を遮断したりすることを切り替えるもの(例えば半導体スイッチ)でもある。そして、このスイッチ171Gは、判定部172Gが所定の条件を満たすと判定するとき、バッテリー151から報知機へ流れる電流を遮断させるものである。ここで、当該条件は、判定部172Gがバッテリー151からソレノイド135Hへ流れる電流を遮断させる条件と同じである。これらにより、制御装置170(
図10参照)は、
図9に示すように、収容空間161Aにおける被検出部114が領域A16Cに入るように位置されるとき、報知機(図示せず)に報知動作を行わせないようにすることができる。
【0062】
<昇降補助装置の使用手順>
上述した第1の実施形態に係る昇降補助装置100の使用方法について説明する。
【0063】
まず、作業者M10は、
図1に示すように、墜落制止用器具M20のフルハーネスM21を着用する。また、作業者M10は自身が着用するフルハーネスM21とランヤードM22とが接続されているかを確認する。また、作業者M10は、バッテリー151の充電量を確認する。
【0064】
次に、上記作業者M10は、昇降補助装置100における操作パネル120の電源スイッチ(図示せず)をオン状態にする。これにより、報知機(図示せず)は報知動作を行い、もって報知を受けた者に注意喚起することができる。
【0065】
次に、上記作業者M10は、昇降補助装置100を長尺昇降用レールR20に装着する。ここで、作業者M10は、ガイドローラー111が支持板R21の側面R21Dを転がるように当て、かつブロック133Bが切り欠きR21Bに係合するように昇降補助装置100を長尺昇降用レールR20に装着する。そして、作業者M10は、操作パネル120の手動切替スイッチ120Aを手動状態に切り替え、上昇ボタン120Bを押す。これらにより、昇降補助装置100は、当該上昇ボタン120Bが押されている間、長尺昇降用レールR20の延びる方向に沿って上昇する。なお、装着状態の昇降補助装置100は、作業者M10の手前側から見た支持板R21の下端R22がその長手方向において約50cmで露出されるように上昇させる。
【0066】
次に、上記作業者M10は、ランヤードM22のフックM22Aを取付部112のリング112Cに取り付ける。
【0067】
次に、上記作業者M10は、操作パネル120の手動切替スイッチ120Aを自動状態に切り替える。
【0068】
次に、上記作業者M10は、自身の体重の一部を取付部112に預ける。そうすると、自動状態にある制御装置170は、検出装置160が検出する取付部112に掛かる張力の大きさが第一閾値を超え、かつ第二閾値以下である判定するとき、インバータ152Bからモーター141Cへ電流が流れるようにする。そうすると、プーリー141Bが正方向に回転し、プーリー141Bの回転が伝達ベルト142によりプーリー131Bに伝わる。そして、スプロケット131Cがプーリー131Bの回転に追従して正方向に回転するため、スプロケット131Cに係合される輪133は前進駆動を開始する。これにより、昇降補助装置100は、取付部112に掛かる張力で輪133の前進駆動を開始させ、もって作業者M10の昇りを補助することができる。
【0069】
ここで、装着状態の輪133は、ブロック133Bの縁部133Dが支持板R21の外形に沿うように、ブロック133Bの先端部133Cの向きを変えて前進駆動する。そして、輪133のブロック133Bが長尺昇降用レールR20の孔R21Aと噛み合いながら前進駆動する。言い換えると、輪133は、これらのブロック133Bのうち4個が4箇所の孔R21Aと噛み合った状態を維持しながら前進駆動することができる。すなわち、装着状態の昇降補助装置100は、孔R21Aと噛み合った状態のブロック133Bが下方側に向かうと長尺昇降用レールR20を上昇することとなる。また、履板133Aが前進する際に孔R21Aから離れるように動くブロック133Bは、その面取り部133Eが孔R21Aの下方側の内面R21Eを滑るような動きで向きを変えるため、輪133の前進駆動はスムーズである。
【0070】
また、上記作業者M10がブレーキ荷重を取付部112の張力として掛けるとき、検出装置160は、その張力の大きさが第二閾値を超えると判定する。そのため、制御装置170は、整流器152Cからブレーキ141Dへ電流が流れるようにする。そして、ブレーキ141Dが駆動すると、プーリー141Bが停止状態となり、プーリー141Bの回転停止が伝達ベルト142によりプーリー131Bに伝わる。そうすると、スプロケット131Cがプーリー131Bの回転停止に追従して回転を停止するため、スプロケット131Cに係合される輪133は進退駆動を停止する。これにより、ブレーキ荷重やブレーキ荷重以上となる、墜落制止用器具M20が作動を開始する力が取付部112に掛かるような場合には、昇降補助装置100は、輪133の進退駆動を停止させることができる。このことから、当該昇降補助装置100を、作業者M10の安全を確保する安全装置として提供することができる。
【0071】
ところで、墜落制止用器具M20が作動を開始すると、墜落制止用器具M20に掛かる力がフックM22Aを介して取付部112に掛けられる。このとき、取付部112に掛かる張力の大きさは、第二閾値以上となる第三閾値である。そのため、制御装置170は、制御装置170は、バッテリー151からソレノイド135Hに流れる電流を遮断する。そうすると、ソレノイド135Hが鍔付ストッパー135Aに掛ける力は、小さくなる。これにより、鍔付ストッパー135Aが、弾性体135Dに押される。そして、弾性体135Dは、鍔付ストッパー135Aのロッド135Bを挿通孔110Gおよび孔R21Aに挿通させる。すなわち、制御装置170は、鍔付ストッパー135Aを非干渉状態から係止状態に切り替える切り替え制御を実行する。これにより、昇降補助装置100は、その昇降を鍔付ストッパー135Aにより停止させることができる。
【0072】
また、墜落制止用器具M20が作動を開始すると、制御装置170は、報知機(図示せず)報知動作を行わせないようにする。
【0073】
次に、上記作業者M10は、鉄塔R10の作業を終えたとき、操作パネル120の手動切替スイッチ120Aを手動状態に切り替え、下降ボタン120Cを押す。これにより、昇降補助装置100は、当該下降ボタン120Cが押されている間、長尺昇降用レールR20の延びる方向に沿って下降する。
【0074】
<作用・効果>
上述した昇降補助装置100によれば、長尺昇降用レールR20に沿った昇降を行う際に、輪133のブロック133Bのうち2つ以上が長尺昇降用レールR20の孔R21Aと噛み合った状態が維持される。これにより、昇降方向の荷重を2つ以上のブロック133B(すなわち4箇所)で支持して、この昇降方向の荷重を支持する支持力の向上が図られた昇降補助装置100を提供することができる。
【0075】
上述した昇降補助装置100によれば、長尺昇降用レールR20の孔R21Aにブロック133Bの先端部133Cの縁部133Dが引っ掛かるおそれを低減させて、輪133の進退駆動をよりスムーズにすることができる。
【0076】
上述した昇降補助装置100によれば、作業者M10は、自身の昇降を昇降補助装置100に補助させる際に、自身の体重の一部を取付部112に預けることで、昇降補助装置100を始動させることができる。また、墜落制止用器具M20が作動を開始する力が取付部112に掛かるような場合には、昇降補助装置100は、輪133の進退駆動を停止させる。これにより、当該昇降補助装置100を、作業者M10の安全を確保する安全装置として提供することができる。
【0077】
上述した昇降補助装置100によれば、墜落制止用器具M20が作動を開始する力が取付部112に掛かるような場合に、昇降補助装置100は、その昇降を鍔付ストッパー135Aにより停止させる。これにより、当該昇降補助装置100を、作業者M10のさらなる安全を確保する安全装置として提供することができる。
【0078】
上述した昇降補助装置100は、給電線による外部からの電力供給によらずに昇降をすることができる。
【0079】
<第2の実施形態>
続いて、本開示の第2の実施形態にかかる昇降補助装置(図示せず)の構成について、
図11を用いて説明する。第2の実施形態にかかる昇降補助装置は、第1の実施形態にかかる昇降補助装置100を変形した実施形態である。したがって、上記第1の実施形態にかかる昇降補助装置100の各構成と共通する構成については、第1の実施形態にかかる昇降補助装置100の各構成に付した符号の数字に「200」を加えた符号を付して対応させ、その詳細な説明を省略する。
【0080】
<検出装置の構成>
検出装置360は、
図11に示すように、取付収容部361と、弾性部362と、被検出部314と、リミットスイッチ364と、を備えている。
【0081】
取付収容部361は、取付部312の被検出部314をスライド可能に収容する収容空間361Aを構成する壁である。そして、この収容空間361Aは、取付孔312Aを介して外部と連通されている。また、取付収容部361には、被検出部314の突出部314B(後述)がスライド可能となるようにスリット361Cが設けられている。これにより、取付孔312Aを挿通する取付部312がその軸方向を動くとき、被検出部314の突出部314Bは、取付部312の動きに追従してスリット361Cをスライドすることができる。
【0082】
また、取付収容部361には、リミットスイッチ364を配置することが可能なスイッチ配置部361Bが設けられている。このスイッチ配置部361Bは、複数のリミットスイッチが一列に並んで配置することが可能なものであり、当該リミットスイッチのなす列が被検出部314が取付収容部361をスライドする方向と平行になるように配置されている。
【0083】
弾性部362は、取付部312の軸方向において伸縮することが可能なものである。そして、弾性部362は、取付孔361Dの縁361Eと被検出部314との間に挟まれるように取付部312に付設されている。これにより、弾性部362は、ランヤードM22から取付部312に掛かる張力の大きさに対応して、被検出部314を取付収容部361にスライドさせることができる。
【0084】
ここで、被検出部314には、その側面から外方にさらに張り出された突出部314Bと、張り出されていない非突出部314Aとが設けられている。この突出部314Bは、取付部312の軸方向に延びるとともに、その軸方向の両端にて非突出部314Aと連なる2つの傾斜面314D、314E、およびこれらの傾斜面314D、314Eの間を繋ぐ平坦面314Cを有している。ここで、突出部314Bは、被検出部314が取付収容部361をスライドしているときの平坦面314Cがリミットスイッチ364を接触状態にするように、平坦面314Cの張り出し高さが設定されている。当該接触状態は、アクチュエータB36が平坦面314Cに押されることで、リミットスイッチ364における、アクチュエータB36と接点部C36とが接触している状態である。これにより、被検出部314が取付部112に掛かる張力の大きさに対応して取付収容部361をスライドする際、突出部314Bの平坦面314CがアクチュエータB36を押すことでリミットスイッチ364の接触状態が実現される。なお、本実施形態の平坦面314Cは、取付部312の軸方向において第一接点部C36Aと第二接点部C36Bとを跨ぐことが可能となるように設定されている。そして、被検出部314には、取付収容部361と同じ素材が用いられている。
【0085】
リミットスイッチ364は、このアクチュエータB36が突出部314Bの平坦面314Cに押されることで接触状態となっていることを信号として制御装置(図示せず)のスイッチに送るものである。言い換えると、リミットスイッチ364は、その接触状態から収容空間361Aにおける平坦面314Cの位置を検出することができる。そして、リミットスイッチ364には、接触状態をそれぞれ実現可能な第一リミットスイッチ364A、第二リミットスイッチ364B、および第三リミットスイッチ364Cが含まれている。第一リミットスイッチ364A、第二リミットスイッチ364B、および第三リミットスイッチ364Cは、アクチュエータB36に相当する、第一アクチュエータB36A、第二アクチュエータB36B、および第三アクチュエータB36Cをそれぞれ備えている。同じく、第一リミットスイッチ364A、第二リミットスイッチ364B、および第三リミットスイッチ364Cは、接点部C36に相当する、第一接点部C36A、第二接点部C36B、および第三接点部C36Cをそれぞれ備えている。
【0086】
ここで、第一リミットスイッチ364Aは、突出部314Bが所定の距離をスライドする際にこの平坦面314Cが第一アクチュエータB36Aを押すことで接触状態が実現可能となるように位置されている。同じく、第二リミットスイッチ364Bは、突出部314Bが所定の距離をスライドする際にこの平坦面314Cが第二アクチュエータB36Bを押すことで接触状態が実現可能となるように位置されている。同じく、第三リミットスイッチ364Cは、突出部314Bが所定の距離をスライドする際にこの平坦面314Cが第三アクチュエータB36Cを押すことで接触状態が実現可能となるように位置されている。言い換えると、リミットスイッチのアクチュエータのそれぞれが突出部314Bがスライドするスリット361Cの延びる方向と平行な方向に配置されている。また、第一アクチュエータB36A、第二アクチュエータB36B、および第三アクチュエータB36Cは、突出部314Bがスライドする際に平坦面314Cおよび傾斜面314D、314Eを転がることが可能なローラー365をそれぞれ備えている。これにより、第一アクチュエータB36A、第二アクチュエータB36B、および第三アクチュエータB36Cが突出部314Bをこすることで、突出部314Bにキズが生じるおそれを低減することができる。
【0087】
第一リミットスイッチ364Aは、弾性部362が自然状態のとき、被検出部314の平坦面314Cが第一アクチュエータB36Aを押すことで接触状態とならないようにスイッチ配置部361Bに付設されている。これにより、被検出部314が取付部312に掛かる張力の大きさに対応して取付収容部361をスライドすると、突出部314Bの平坦面314Cが第一アクチュエータB36Aを押すことで接触状態を実現することができる。そして、第一リミットスイッチ364Aは、被検出部314がスライドすることで実現される接触状態を信号として制御装置(図示せず)のスイッチに送ることができる。言い換えると、第一リミットスイッチ364Aは、被検出部314の平坦面314Cが第一アクチュエータB36Aを押す位置にあることを信号として制御装置(図示せず)のスイッチに送ることができる。
【0088】
第二リミットスイッチ364Bは、第一リミットスイッチ364Aより取付孔361Dの縁361E側に位置されている。そして、第二リミットスイッチ364Bは、作業者M10(
図1参照)があらかじめ設定した原動機(図示せず)の停止条件である、ブレーキ荷重が取付部312の張力として掛かるとき、被検出部314を検出するようにスイッチ配置部361Bに付設されている。言い換えると、第二リミットスイッチ364Bは、当該ブレーキ荷重により生ずる弾性部362のひずみに追従して変位された被検出部314の平坦面314Cが第二アクチュエータB36Bを押すことで接触状態を実現する。これにより、ブレーキ荷重が取付部312の張力として掛かるとき、被検出部314は第二リミットスイッチ364Bを接触状態とし、もって被検出部314の平坦面314Cが第二アクチュエータB36Bを押す位置にあることを検出することができる。
【0089】
第三リミットスイッチ364Cは、リミットスイッチ364のうち最も取付孔361Dの縁361E側に位置されている。そして、第三リミットスイッチ364Cは、ブレーキ荷重以上となる、墜落制止用器具M20が作動を開始する力が取付部312の張力として掛かるとき、被検出部314を検出可能となるようにスイッチ配置部361Bに付設されている。言い換えると、第三リミットスイッチ364Cは、墜落制止用器具M20が作動を開始する力による弾性部362のひずみに追従して変位された被検出部314の平坦面314Cが第三アクチュエータB36Cを押すことで接触状態を実現する。これにより、墜落制止用器具M20が作動を開始するとき、被検出部314は第三リミットスイッチ364Cを接触状態とし、もって被検出部314の平坦面314Cが第三アクチュエータB36Cを押す位置にあることを検出することができる。なお、本実施形態の第三リミットスイッチ364Cは、被検出部114の平坦面314Cが取付部312の軸方向において第二接点部C36Bと第三接点部C36Cとを跨ぐように位置されている。
【0090】
これらにより、検出装置360は、ランヤードM22から取付部312に掛かる張力を検出することができる。
【0091】
<作用・効果>
上述した昇降補助装置(図示せず)によれば、検出装置360は取付部312に掛かる張力をリミットスイッチ364で検出することができる。
【0092】
上述した各実施形態に係る昇降補助装置は、上記各構成をもつことにより、昇降方向の荷重を支持する支持力の向上が図られた昇降補助装置100を提供することができる。
【0093】
<他の実施形態>
以上、本発明を実施するための形態について、上述した実施形態によって説明した。しかしながら、当業者であれば、本発明の目的を逸脱することなく種々の代用、手直し、変更が可能であることは明らかである。すなわち、本発明の目的を実施するための形態は、本明細書に添付した請求の範囲の精神および目的を逸脱しない全ての代用、手直し、変更を含みうるものである。例えば、本発明を実施するための形態として、以下のような各種の形態を実施することができる。
【0094】
本開示に係る昇降補助装置において、本体部の昇降方向に付設されているガイドローラーは3個以上あっても良い。係る場合、昇降補助装置はガイドローラーを付設した数の分、長尺昇降用レールに係合する係合部の接触面が広くなり、もってこれらの接触面が昇降補助装置を長尺昇降用レールにより強固に支持することができる。また、長尺昇降用レールの支持板と係合するガイドローラーの鍔は、付設されているガイドローラーの数に合わせて大きさや厚みを適当に設定しても良い。
【0095】
本開示に係る昇降補助装置は、装着状態における、起動輪の位置と、遊動輪の位置とを逆となるように配置しても良い。係る場合、張設機構の弾性体の位置は、墜落制止用器具が作動を開始する力が掛かりにくい位置となる。そうすると、昇降補助装置は、墜落制止用器具が作動を開始しても遊動輪が起動輪に近づきにくくなり、輪のたわみを抑制することができる。
【0096】
本開示に係る昇降補助装置において、履帯は、起動輪と遊動輪との間に位置される2つ1組のローラーを備えても良い。また、このローラーの組は、履帯が進退する進退方向の両方向に回転可能とされ、装着状態のときの輪において長尺昇降用レールと向き合う側と反対側の帯を当該輪の内側と外側から挟み込む構成であっても良い。係る場合、ローラーの組は、輪が起動輪のスプロケットおよび遊動輪スプロケットからより外れにくくすることができる。
【0097】
本開示に係る昇降補助装置において、ブロックは、履板から突設される側の先端部における、進退駆動の方向で見た縁部に、面取り部を備えていなくても良い。
【0098】
本開示に係る昇降補助装置は、ストップ機構を備えていなくても良い。
【0099】
本開示に係る昇降補助装置において、本体部には、複数のストップ機構が付設されても良い。また、これらのストップ機構におけるそれぞれのストッパーは、対応するそれぞれの孔に挿通されても良い。係る場合、昇降補助装置は、複数箇所でストッパーと孔とが係止され、もってこれらの係止が昇降補助装置を昇降長尺昇降用レールにより強固に支持することができる。
【0100】
本開示に係る昇降補助装置において、ストップ機構の筐体は、その外側に放熱フィンを設けても良い。係る場合、放熱フィンは、電流が流れることで発熱するソレノイドを冷却することができる。そうすると、ソレノイドの発熱による鍔付ストッパーに掛けられる力の低下を抑制することができる。これにより、装着状態のときの鍔付ストッパーは、非干渉状態を長時間、維持することができる。
【0101】
本開示に係る昇降補助装置には、バッテリーの充電量を検知する検知器と、この検知を作業者に伝えるアラームとが付設されても良い。また、検知器は、作業者が降りる際に必要となる昇降補助装置の電気エネルギーにバッテリーの充電量が達したことを検知したとき、アラームが当該検知を作業者に伝えても良い。係る場合、鉄塔を降りる作業者は、バッテリーの電気エネルギーを用いて昇降補助装置を下降させることができる。
【0102】
本開示に係る昇降補助装置において、取付部には、その軸方向において被検出部が取付収容部をスライドすることを補助する摺動部が設けられても良い。また、この摺動部は、取付部の径方向における寸法が被検出部より大きく設定されても良い。また、摺動部には、取付収容部より軟らかい素材が用いられても良い。係る場合、取付収容部は、被検出部がスライドすることによりキズが形成されるおそれを低減することができる。また、摺動部は、取付孔の縁に対して被検出部より離れた位置で取付収容部をスライドするようにしても良い。係る場合、摺動部は、弾性部にキズを付けられるおそれを低減することができる。
【0103】
本開示に係る昇降補助装置において、第二閾値と第三閾値とは、同じであっても良い。すなわち、制御装置が備えている判定部は、収容空間における被検出部が第二検出部の領域に入るように位置されるとき、検出装置が検出する張力の大きさが第二閾値以上となる第三閾値を超えたときと判定しても良い。係る場合、制御装置は、鍔付ストッパーを非干渉状態から係止状態に切り替えることを、第三検出部を用いることなくストップ機構に実現させることができる。
【0104】
本開示に係る昇降補助装置は、取付収容部において第一検出部と第二検出部との中間に第四検出部が付設されても良い。また、被検出部は、取付収容部の内径と略同じ外径であり、かつ取付部の軸方向において第一検出部が検出可能となる領域と、第四検出部が検出可能となる領域とを跨ぐことが可能な寸法と同じ高さの円柱であっても良い。また、モーターは、プーリーが回転するトルクを変更可能とするものであっても良い。また、制御装置は、第四検出部が送る信号を受けてプーリーが回転するトルクを大きくするようにモーターの出力を変更しても良い。係る場合、昇降補助装置は、作業者が取付部に預ける自身の体重に応じて適当な力で作業者を引っ張ることができる。
【符号の説明】
【0105】
100 昇降補助装置
110 本体部
110A 正面
110B 背面
110C 側面板
110D 側面板
110E 抜け
110F 挿通ブロック
110G 挿通孔
111 ガイドローラー
111A 係合部
112 取付部
112C リング
113 張設機構
113A 軸受け部
113B 取付ブロック
113C レーン
113D 弾性体
114 被検出部
120 操作パネル
120A 手動切替スイッチ
120B 上昇ボタン
120C 下降ボタン
120D 非常停止ボタン
130 履帯
131 起動輪
131A 軸
131B プーリー
131C スプロケット
131D 歯
132 遊動輪
132A 軸
132C スプロケット
132D 歯
133 輪
133A 履板
133B ブロック
133C 先端部
133D 縁部
133E 面取り部
133F 連結構造
133G リンク
133H ピン
135 ストップ機構
135A 鍔付ストッパー
135B ロッド
135C 鍔
135D 弾性体
135E 筐体
135F 固定部
135G 収納空間
135H ソレノイド
140 回転機構
141 原動機
141A 軸
141B プーリー
141C モーター
141D ブレーキ
142 伝達ベルト
150 電源
151 バッテリー
152 変換器
152A インバータ
152B インバータ
152C 整流器
160 検出装置
161 取付収容部
161A 収容空間
161B 検出配置部
161D 取付孔
161E 縁
162 弾性部
164 検出部
164A 第一検出部
164B 第二検出部
164C 第三検出部
170 制御装置
171C スイッチ
171D スイッチ
171G スイッチ
172C 判定部
172D 判定部
172G 判定部
312 取付部
314 被検出部
314A 非突出部
314B 突出部
314C 平坦面
314D 傾斜面
314E 傾斜面
360 検出装置
361 取付収容部
361A 収容空間
361B スイッチ配置部
361C スリット
361D 取付孔
361E 縁
362 弾性部
364 リミットスイッチ
364A 第一リミットスイッチ
364B 第二リミットスイッチ
364C 第三リミットスイッチ
365 ローラー
A16 領域
A16A 領域
A16B 領域
A16C 領域
B36 アクチュエータ
B36A 第一アクチュエータ
B36B 第二アクチュエータ
B36C 第三アクチュエータ
C36 接点部
C36A 第一接点部
C36B 第二接点部
C36C 第三接点部
M10 作業者
M20 墜落制止用器具
M21 フルハーネス
M22 ランヤード
M22A フック
R10 鉄塔
R10A 昇降経路
R20 長尺昇降用レール
R21 支持板
R21A 孔
R21B 小孔
R21C 小孔
R21D 側面
R21E 内面
R21F 縁
R21L 間隔
R22 下端
R23 上端