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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098639
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】電源コンセント
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/66 20060101AFI20240717BHJP
   H01R 25/00 20060101ALI20240717BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
H01R13/66
H01R25/00 H
H01R13/46 301M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002240
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000124591
【氏名又は名称】河村電器産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(74)【代理人】
【識別番号】100140718
【弁理士】
【氏名又は名称】仁内 宏紀
(72)【発明者】
【氏名】加藤 明義
【テーマコード(参考)】
5E021
5E087
【Fターム(参考)】
5E021FA03
5E021FA16
5E021FB21
5E021FC16
5E021FC40
5E021MA04
5E021MB20
5E087EE10
5E087FF06
5E087LL05
5E087LL37
5E087MM09
5E087QQ03
5E087RR18
5E087RR43
(57)【要約】
【課題】差込プラグを抜いた状態での安全性を高め、かつ、放電検出端子を通した機器の動作検査効率を高めることができる電源コンセントを提供する。
【解決手段】電源コンセントは一対の受刃10とコンセントブロック11を備える。受刃10は差込プラグの一対の栓刃を受容して栓刃を電源回路に接続する。コンセントブロック11は受刃10を内部に収容するとともに、前部壁11Bを有する。前部壁11Bには一対の栓刃挿入口15A,15Bと当接面16と放電検出端子19とが設けられる。栓刃挿入口15A,15Bは一対の栓刃が前面側から挿入される。当接面16は差込プラグのプラグ本体の端面が当接する。放電検出端子19は当接面16の前方において生じる一対の栓刃の間の放電を検出する。放電検出端子19の端面19aは前部壁11Bの厚みを超えない範囲で当接面16から後方に窪んで配置されるとともに、その状態で室内側に露出している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差込プラグの一対の栓刃を受容して当該栓刃を電源回路に接続する一対の受刃と、
一対の前記受刃を内部に収容するとともに、前面側が室内に臨む前部壁を有するコンセントブロックと、を備え、
前記コンセントブロックの前記前部壁には、一対の前記栓刃が前面側から挿入される一対の栓刃挿入口と、前記差込プラグのプラグ本体の端面が当接する当接面と、当該当接面の前方において生じる一対の前記栓刃の間の放電を検出する放電検出端子と、が設けられ、
前記放電検出端子の端面は、前記前部壁の厚みを超えない範囲で前記当接面から後方に窪んで配置されるとともに、その状態で室内側に露出していることを特徴とする電源コンセント。
【請求項2】
一対の前記栓刃挿入口は、夫々が一方向に直線状に延びる形状に形成されるとともに、相互に平行に対向して配置され、
前記放電検出端子の室内側に露出する前記端面は、前記栓刃挿入口の延び方向と平行に直線状に延出していることを特徴とする請求項1に記載の電源コンセント。
【請求項3】
差込プラグの一対の栓刃を受容して当該栓刃を電源回路に接続する一対の受刃と、
一対の前記受刃を内部に収容するとともに、前面側が室内に臨む前部壁を有するコンセントブロックと、を備え、
前記コンセントブロックの前記前部壁には、一対の前記栓刃が前面側から挿入される一対の栓刃挿入口と、前記差込プラグのプラグ本体の端面が当接する当接面と、が設けられ、
前記当接面のうちの一対の前記栓刃挿入口の間には、当該当接面よりも誘電率が高く、一面が室内側に露出する誘電体が配置され、
前記誘電体の前記一面と相反する側の面には、前記当接面の前方において生じる一対の前記栓刃の間の放電を前記誘電体を通して検出する放電検出端子が接触していることを特徴とする電源コンセント。
【請求項4】
前記誘電体は、前記一面が前記当接面と面一に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の電源コンセント。
【請求項5】
前記放電検出端子の前記誘電体との接触面は、前記誘電体の前記一面と同面積に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の電源コンセント。
【請求項6】
一対の前記栓刃挿入口は、夫々が一方向に直線状に延びる形状に形成されるとともに、相互に平行に対向して配置され、
前記誘電体の前記一面は、前記栓刃挿入口の延び方向と平行に直線状に延出していることを特徴とする請求項3に記載の電源コンセント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラッキングによる短絡を防止する機能を備えた電源コンセントに関するものである。
【背景技術】
【0002】
通電プラグを接続した電源コンセントは、コンセントと差込プラグの間の隙間に堆積した埃が空気中の湿気を吸収し、その湿気を帯びた埃が差込プラグの栓刃間の微弱な放電を引き起こすことがある。この微弱な放電は、長期間繰り返されると、差込プラグの絶縁樹脂(電気絶縁性の樹脂)の表面を炭化(導電化)させる。こうして炭化した絶縁樹脂の表面は栓刃間に大電流が流れる(短絡する)経路となることがある。
以上は、電源コンセントで生じるトラッキング現象であるが、近年、このトラッキングによる短絡を防止する機能を備えた電源コンセントが案出されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示される電源コンセントは、差込プラグの一対の栓刃を受容して栓刃を電源回路に接続する一対の受刃がコンセントブロックの内部に収容され、コンセントブロックの室内側に臨む前部壁に一対の栓刃挿入口が形成されている。差込プラグの栓刃は、栓刃挿入口を通してコンセントブロック内の対応する受刃に受容される。
コンセントブロックの前部壁には、差込プラグのプラグ本体の端面が当接する当接面が設けられ、その当接面のうちの一対の栓刃挿入口の間に前部壁を前後に貫通する微小な貫通孔が形成されている。また、前部壁の背面側には、微小な貫通孔に臨むように放電検出端子(放電検出用のセンサ)が配置されている。
【0004】
この電源コンセントでは、栓刃の周囲に堆積した埃等に起因して一対の栓刃の間に微弱な放電が生じると、その放電電流が前部壁の微小な貫通孔を通して放電検出端子によって検出される。そして、放電検出端子によって微弱な放電が検出されると、遮断手段によって電源回路が遮断される。また、この電源コンセントの場合、放電検出端子が前部壁の背面側に配置されているため、差込プラグが抜かれた状態において、人が誤って放電検出端子に触れる不具合を無くすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4205478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に開示される電源コンセントは、コセントブロックの前部壁の背面側に配置された放電検出端子が、微小な貫通孔を通して前部壁の前面側に連通している。このため、この電源コンセントでは、差込プラグを抜いた状態において人が放電検出端子に触れる不具合を無くすことができるものの、製品の出荷前等に放電検出端子を通した機器の動作検査を行うときには、検査プローブを前部壁の微細な貫通孔に挿入しなければならない。このため、微細な貫通孔に検査プローブを挿入するための作業が難しく、放電検出端子を通した機器の動作検査に長時間を要することになる。
【0007】
そこで本発明は、差込プラグを抜いた状態での安全性を高め、かつ、放電検出端子を通した機器の動作検査効率を高めることができる電源コンセントを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る電源コンセントは、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本出願の一の発明に係る電源コンセントは、差込プラグの一対の栓刃を受容して当該栓刃を電源回路に接続する一対の受刃と、一対の前記受刃を内部に収容するとともに、前面側が室内に臨む前部壁を有するコンセントブロックと、を備え、前記コンセントブロックの前記前部壁には、一対の前記栓刃が前面側から挿入される一対の栓刃挿入口と、前記差込プラグのプラグ本体の端面が当接する当接面と、当該当接面の前方において生じる一対の前記栓刃の間の放電を検出する放電検出端子と、が設けられ、前記放電検出端子の端面は、前記前部壁の厚みを超えない範囲で前記当接面から後方に窪んで配置されるとともに、その状態で室内側に露出していることを特徴とする。
【0009】
上記の構成において、差込プラグを電源コンセントに接続するときには、差込プラグの一対の栓刃がコンセントブロックの栓刃挿入口に挿入される。栓刃挿入口に挿入された一対の栓刃は、コンセントブロック内の対応する受刃に接続される。この結果、差込プラグは電源回路に接続される。
この状態で差込プラグとコンセントブロックの間に埃が溜まり、その埃に水分が吸着される等して一対の栓刃の間に微弱な放電が生じると、その放電による電気が放電検出端子に流れる。この結果、放電が発生したことが放電検出端子によって検出される。
また、上記の構成の電源コンセントは、放電検出端子の端面が、コンセントブロックの前部壁の厚みを超えない範囲で当接面から後方に窪んでいるため、差込プラグを抜いた状態で万が一前部壁の当接面を人の指が直接触れることがあっても、内部の種々の回路に接続される放電検出端子に人の指が接触するのを回避することができる。
さらに、上記の構成の電源コンセントは、放電検出端子の端面がコンセントブロックの当接面から(前部壁の厚みを超えない範囲で)浅く窪んだ状態で室内側に露出しているため、製品出荷前等の機器の動作検査時に、放電検出端子の端面に検査プローブを容易に、かつ、確実に接触させることが可能になる。
【0010】
一対の前記栓刃挿入口は、夫々が一方向に直線状に延びる形状に形成されるとともに、相互に平行に対向して配置され、前記放電検出端子の室内側に露出する前記端面は、前記栓刃挿入口の延び方向と平行に直線状に延出していることが望ましい。
【0011】
この場合、一対の栓刃挿入口の延び方向のいずれの部位において放電が生じた場合にも、放電検出端子によって確実に放電を検出することが可能になる。また、放電検出端子を通した機器の動作検査時には、検査プローブを当接することが可能な放電検出端子の端面の面積が広くなる。このため、放電検出端子に対する検査効率がより良好になる。
【0012】
本出願の他の発明に係る電源コンセントは、差込プラグの一対の栓刃を受容して当該栓刃を電源回路に接続する一対の受刃と、一対の前記受刃を内部に収容するとともに、前面側が室内に臨む前部壁を有するコンセントブロックと、を備え、前記コンセントブロックの前記前部壁には、一対の前記栓刃が前面側から挿入される一対の栓刃挿入口と、前記差込プラグのプラグ本体の端面が当接する当接面と、が設けられ、前記当接面のうちの一対の前記栓刃挿入口の間には、当該当接面よりも誘電率が高く、一面が室内側に露出する誘電体が配置され、前記誘電体の前記一面と相反する側の面には、前記当接面の前方において生じる一対の前記栓刃の間の放電を前記誘電体を通して検出する放電検出端子が接触していることを特徴とする。
【0013】
上記の構成において、差込プラグを電源コンセントに接続するときには、差込プラグの一対の栓刃がコンセントブロックの栓刃挿入口に挿入される。栓刃挿入口に挿入された一対の栓刃は、コンセントブロック内の対応する受刃に接続される。この結果、差込プラグは電源回路に接続される。
この状態で差込プラグのプラグ本体の端面とコンセントブロックの当接面の間に埃が溜まり、その埃に水分が吸着される等して一対の栓刃の間に微弱な放電が生じると、その放電にによって流れる交流電流が誘電体を介して放電検出端子に流れる。この結果、放電が発生したことが放電検出端子によって検出される。
また、上記の構成の電源コンセントは、放電検出端子の室内側が誘電体によって覆われることになるため、差込プラグを抜いた状態で万が一前部壁の当接面を人の指が直接触れることがあっても、内部の種々の回路に接続される放電検出端子に人の指が直接接触するのを回避することができる。
さらに、上記の構成の電源コンセントは、前部壁の前面側に配置されている誘電体が放電検出端子に接触しているため、製品出荷前等の動作検査時には、導電体に検査プローブを接触させて放電検出端子を通した機器の動作検査を容易に、かつ、確実に行うことができる。
【0014】
前記誘電体は、前記一面が前記当接面と面一に配置されるようにしても良い。
【0015】
この場合、コンセントブロックの当接面と誘電体の間に段差や隙間が生じにくくなるため、当接面と誘電体の間に埃や水分が溜まりにくくなる。したがって、本構成を採用した場合には、一対の栓刃間での放電の発生を抑制することができる。
【0016】
前記放電検出端子の前記誘電体との接触面は、前記誘電体の前記一面と同面積に形成されることが望ましい。
【0017】
この場合、放電電流に対する放電検出端子での検出感度が高まり、一対の栓刃間で生じる微弱な放電を早期に検出することが可能になる。
【0018】
一対の前記栓刃挿入口は、夫々が一方向に直線状に延びる形状に形成されるとともに、相互に平行に対向して配置され、前記誘電体の前記一面は、前記栓刃挿入口の延び方向と平行に直線状に延出していることが望ましい。
【0019】
この場合、一対の栓刃挿入口の延び方向のいずれの部位において放電が生じた場合にも、誘電体と放電検出端子によって確実に放電を検出することが可能になる。また、放電検出端子を通した機器の動作検査時には、検査プローブを当接することが可能な誘電体の端面の面積が広くなる。このため、放電検出端子を通した機器の動作検査効率がより良好になる。
【発明の効果】
【0020】
本出願の一の発明に係る電源コンセントは、放電検出端子の端面が、前部壁の厚みを超えない範囲で当接面から後方に窪んで配置され、その状態で室内側に露出している。このため、差込プラグを抜いた状態で人が誤って放電検出端子に触れるのを避けることができ、かつ、放電検出端子の動作検査時に、放電検出端子の端面に検査プローブを容易に、かつ、確実に接触させることができる。
したがって、本出願の一の発明に係る電源コンセントを採用した場合には、差込プラグを抜いた状態での安全性を高め、かつ、放電検出端子を通した機器の動作検査効率を高めることができる。
【0021】
本出願の他の発明に係る電源コンセントは、コンセントブロックの当接面のうちの一対の栓刃挿入口の間に、当該当接面よりも誘電率が高く、一面が室内側に露出する誘電体が配置されている。そして、誘電体の一面と相反する側の面に、一対の栓刃の間の放電を誘電体を通して検出する放電検出端子が接触している。このため、差込プラグを抜いた状態で人が誤って放電検出端子に触れるのを避けることができ、かつ、放電検出端子を通した機器の動作検査時には、検査プローブを誘電体に接触させて、放電検出端子の動作検査を容易に、かつ、確実に行うことができる。
したがって、本出願の他の発明に係る電源コンセントを採用した場合には、差込プラグを抜いた状態での安全性を高め、かつ、放電検出端子を通した機器の動作検査効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の電源コンセントの正面図。
図2図1のII-II線に沿う断面図。
図3図2のIII部の拡大断面図。
図4】第2実施形態の電源コンセントの正面図。
図5図4のV-V線に沿う断面図。
図6図5のVI部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下で説明する各実施形態では、共通部分に同一符号を付し、重複する説明を一部省略するものとする。
【0024】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態の電源コンセント1の正面図であり、図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。
電源コンセント1は、例えば、建造物の壁の凹状の設置部に取り付けられる。本実施形態の電源コンセント1は、図示しない差込プラグの一対の栓刃を受容する受刃10の対が上下に二組併設されている。差込プラグは、電気機器に交流電力を供給するためのプラグであり、絶縁樹脂製のプラグ本体の端面から一対の栓刃が突出している。受刃10は、差込プラグの栓刃を受容し得る略U字状の導電金属板から成り、金属のばね弾性によって挿入された栓刃を挟持する。対を成す受刃10は、図示しない電源回路に電気的に接続されている。対を成す受刃10に差し込みプラグの栓刃が接続される(受容される)と、図示しない電源回路の交流電流が電気機器に供給可能となる。
なお、以下では、説明の便宜上、電源コンセント1のうちの室内に臨む側を「前」と称する。
【0025】
二組の受刃10の対は、箱型状のコンセントブロック11の内部に設置されている。コンセントブロック11は、二組の受刃10の対と回路基板12を内部に収容するブロック本体11Aと、ブロック本体11Aの前方側を閉塞する前部壁11Bと、を備えている。ブロック本体11Aと前部壁11Bはねじ5による締結によって相互に連結されている。回路基板12には、上述した電源回路を含む複数の電気回路と、電源トランスや回路遮断器等の複数の機器が実装されている。ブロック本体11Aと前部壁11Bの主要部は電気絶縁性の樹脂によって形成されている。前部壁11Bは、前面側が室内側に直接臨んで配置される。前部壁11Bは、上下方向に長い長方形状の正面視形状に形成されている。
【0026】
前部壁11Bの周域には、矩形枠状の周縁プレート13が一体に取り付けられている。周縁プレート13は、建造物の壁の凹状の設置部にねじ止めによって固定可能とされる。コンセントブロック11は、周縁プレート13を介して建造物の設置部に取り付けられる。また、周縁プレート13の前面には、矩形枠状の化粧パネル14が脱着可能に取り付けられている。化粧パネル14は、前部壁11Bの周域を取り囲むように配置され、その前面が前部壁11Bの周縁部の前面と面一となっている。
【0027】
コンセントブロック11の前部壁11Bには、差込プラグの栓刃が前面側から挿入される栓刃挿入口15A,15Bの対が、上下に離間して二組形成されている。上段と下段の各栓刃挿入口15A,15Bは、上下方向に直線状に延びる長孔状の孔である。上段と下段の対を成す栓刃挿入口15A,15Bは、正面視で左右方向に離間し、かつ、相互に平行になるように対向して配置されている。上段と下段の各栓刃挿入口15A,15Bの周域部の前面は、図示しない差込プラグのプラグ本体の端面が当接する当接面16とされている。前部壁11Bの背面側の各栓刃挿入口15A,15Bに対向する位置には、差込プラグの栓刃を受容する受刃10が配置されている。
なお、本実施形態の場合、前部壁11Bは、アース端子付きの差込プラグの接続も可能なように上段と下段の各栓刃挿入口15A,15Bの中間部の下方に略半円状のアース端子挿入口17が形成されている。ただし、アース端子挿入口17は必須ではなく、コンセントブロック11は、前部壁11Bにアース端子挿入口17のない態様のものも採用可能である。
【0028】
ところで、栓刃挿入口15A,15Bを通して対を成す受刃10に差込プラグの栓刃を差し込み、その状態が長期間続くと、差込プラグとコンセントブロック11の間の隙間に埃が堆積することがある。そして、堆積した埃が空気中の湿気を吸収すると、湿気を帯びた埃が仲介となって一対の栓刃の間に微弱な火花放電が生じることがある。この火花放電は、前部壁11Bの当接面16の前方で生じる。
コンセントブロック11の前部壁11Bのうちの、上段と下段の各栓刃挿入口15A,15Bの間には、上記の放電を検出するための放電検出端子19が配置されている。前部壁11Bの上段と下段の各栓刃挿入口15A,15Bの左右方向の中間位置には、栓刃挿入口15A,15Bと平行に上下方向に直線状に延びる長孔状の貫通孔20が形成されている。貫通孔20は、前部壁11Bを前後方向(厚み方向)に貫通している。放電検出端子19は、この貫通孔20に嵌め込まれている。なお、放電検出端子19は、必ずしも貫通孔20に嵌め込む必要はなく、貫通孔20内に配置されるだけでも良い。
【0029】
図3は、図2のIII部を拡大して示した拡大断面図である。
放電検出端子19は、導電性の金属部材から成り、正面視が縦長の長方形状に形成されている。放電検出端子19の一方の端面19aは、貫通孔20内の当接面16から僅かに窪んだ位置に位置されている。このことは、換言すれば、放電検出端子19の端面19aは、前部壁11Bの厚みを超えない範囲で当接面16から後方に窪んで配置されているものと言える。こうして貫通孔20に組付けられた放電検出端子19の端面19aは、長孔状の貫通孔20の開口を通して室内側(外側)に露出している。
【0030】
また、ブロック本体11Aの内部に臨む放電検出端子19の他方の端面19bは、導線21を介して回路基板12上の図示しない放電検出回路に接続されている。放電検出回路には、栓刃間の放電を検出したときに、警報ブザーや警報ランプを作動させるための回路や、電源回路を遮断するための遮断回路等が接続されている。
なお、図1中の符号22は、栓刃間の放電を検出したときに点灯する警報ランプであり、符号23は、警報ランプ22や警報ブザーが作動したときに、これらの作動を停止させるための停止ボタンである。
【0031】
以上の構成の電源コンセント1に差込プラグを接続するときには、差込プラグの一対の栓刃をコンセントブロック11の上段、若しくは、下段の栓刃挿入口15A,15Bに挿入する。栓刃挿入口15A,15Bに挿入された一対の栓刃は、コンセントブロック11内の対応する受刃10に受容される。これにより、差込プラグは、電源回路に電気的に接続される。
【0032】
こうして、差込プラグを電源コンセント1に接続した後に長期間が経過し、差込プラグとコンセントブロック11の間、例えば、一対の栓刃と栓刃挿入口15A,15Bの内面の間に埃が堆積することがある。この状況で埃が空気中の湿気を吸収し、差込プラグの一対の栓刃の間に微弱な火花放電が生じると、当接面16の前方を流れる放電による電流が貫通孔20内の放電検出端子19を通して検出回路によって検出される。これにより、警報ランプ22と警報ブザーが作動し、電源回路が遮断される。
この結果、電源コンセント1にトラッキングによる短絡が生じる可能性が高いことを周囲の人に知らせることが可能になる。周囲の人はこの警報を受け、差込プラグとコンセントブロック11の間の埃を取り除くことにより、トラッキングの発生を未然に防止することができる。
【0033】
また、差込プラグを電源コンセントから抜くと、放電検出端子19の端面19aは前部壁11Bの貫通孔20を通して室内側に露出する。しかし、放電検出端子19の端面19aは、前部壁11Bの厚みを超えない範囲で当接面16から後方に窪んでいるため、差込プラグを抜いた状態で万が一、前部壁11Bの当接面16を人の指が直接触れることがあっても、人の指は端面19aに触れることはない。
製品出荷前等に放電検出端子19や放電検出回路の動作検査を行う場合には、貫通孔20を通して外部に露出した放電検出端子19の端面19aに検査プローブを接触させる。このとき、放電検出端子19の端面19aは当接面16に対して浅く窪んでいるだけであるため、検査プローブを容易に接触させることができる。
【0034】
以上のように、本実施形態の電源コンセント1は、放電検出端子19の端面19aが、前部壁11Bの厚みを超えない範囲で当接面16から後方に窪んで配置され、その状態で室内側に露出している。このため、差込プラグを抜いた状態で人が誤って放電検出端子19に触れるのを避けることができ、かつ、放電検出端子19や放電検出回路の動作検査時に、放電検出端子19の端面19aに検査プローブを容易に、かつ、確実に接触させることができる。
したがって、本実施形態の電源コンセント1を採用した場合には、差込プラグを抜いた状態での安全性を高め、かつ、放電検出端子19を通した機器の動作検査効率を高めることができる。
【0035】
また、本実施形態の電源コンセント1は、各対の栓刃挿入口15A,15Bが夫々が上下方向に直線状に延びる形状に形成され、かつ、各対の栓刃挿入口15A,15Bが相互に平行に対向して配置されている。そして、放電検出端子19の端面19aは、栓刃挿入口15A,15Bの延び方向と平行に直線状に延出している。このため、各対の栓刃挿入口15A,15Bの延び方向のいずれの部位において放電が生じた場合にも、放電検出端子19を通して確実に放電を検出することができる。また、放電検出端子19を通した機器の動作検査時には、検査プローブを放電検出端子19の端面19aに容易に当接させることができる。したがって、放電検出端子19を通した機器の動作検査効率をより高めることができる。
【0036】
<第2実施形態>
図4は、本実施形態の電源コンセント101の正面図であり、図5は、図4のV-V線に沿う断面図である。
電源コンセント101は、第1実施形態と同様に、例えば、建造物の壁の凹状の設置部に取り付けられる。電源コンセント101は、第1実施形態と同様に、コンセントブロック11と、周縁プレート13と、化粧パネル14と、を備えている。コンセントブロック11は、ブロック本体11Aと前部壁11Bとを備え、ブロック本体11Aに、上下二対の受刃10と、回路基板12と、が支持されている。前部壁11Bには、第1実施形態と同様に、上段と下段に夫々一対の栓刃挿入口15A,15Bが形成されている。上段と下段の栓刃挿入口15A,15Bの周縁部には、差込プラグのプラグ本体の端面が当接する当接面16が設けられている。
【0037】
上段と下段の各栓刃挿入口15A,15Bは、上下方向に直線状に延びる長孔状に形成されている。栓刃挿入口15A,15Bは、正面視で左右方向に離間し、かつ、相互に平行になるように対向して配置されている。前部壁11Bのうちの、上段と下段の各栓刃挿入口15A,15Bの間には、放電検出端子19と、誘電体50が配置されている。前部壁11Bの上段と下段の各栓刃挿入口15A,15Bの左右方向の中間位置には、栓刃挿入口15A,15Bと平行に上下方向に直線状に延びる長孔状の貫通孔20が形成されている。貫通孔20は、前部壁11Bを前後方向(厚み方向)に貫通している。放電検出端子19と誘電体50は、この貫通孔20に嵌め込まれている。なお、放電検出端子19と誘電体50が貫通孔20に嵌め込まれることは必須ではなく、貫通孔20内に単に配置される構造であっても良い。
【0038】
図6は、図5のVI部を拡大して示した拡大断面図である。
放電検出端子19と誘電体50は、いずれも正面視が縦長の長方形状に形成されている。換言すれば、放電検出端子19と誘電体50は、上下方向に直線状に延出する形状に形成されているものと言える。誘電体50は、当接面16よりも誘電率の高いセラミック等の素材によって構成されている。誘電体50は、室内側に露出する一方の端面50aが前部壁11Bの当接面16と面一になるように、貫通孔20に取り付けられている。放電検出端子19は、誘電体50の後方側の端面50bに重ねられて貫通孔20に取り付けられている。放電検出端子19の前方側の端面19aは、誘電体50の後方側の端面50b(誘電体50の端面50aと相反する側の面)に接触している。放電検出端子19の後方側の端面19bは、導線21を通して回路基板12上の図示しない放電検出回路に接続されている。
なお、本実施形態では、放電検出端子19の誘電体50との接触面(端面19a)は、誘電体50の前方側の端面50aと同面積に形成されている。また、誘電体50の端面50a(一面)は、栓刃挿入口15A,15Bの延び方向と平行に直線状に延出している。
【0039】
以上の構成の電源コンセント101は、差込プラグとコンセントブロック11の間に堆積した埃が湿気を帯びることにより、一対の栓刃間に微弱な火花放電が生じると、その放電電流が誘電体50の前方側の端面50aを流れる。このとき、誘電体50の後方側の端面50bに接触した放電検出端子19には、誘電体50の前方側の端面50aと逆電位の電流が流れる。この結果、放電の発生が放電検出端子19を通して放電検出回路によって検出される。これにより、警報ランプ22と警報ブザーが作動し、電源回路が遮断される。
この結果、電源コンセント101にトラッキングによる短絡が生じる可能性が高いことを周囲の人に知らせることが可能になる。
【0040】
以上のように、本実施形態の電源コンセント101は、コンセントブロック11の当接面16のうちの一対の栓刃挿入口15A,15Bの間に、当接面16よりも誘電率が高く、前側の端面50aが室内側に露出する誘電体50が配置されている。そして、誘電体50の後方側の端面50bに、一対の栓刃の間の微弱な放電を誘電体50を通して検出する放電検出端子19が接触している。このため、差込プラグを抜いた状態で人が誤って放電検出端子19に触れるのを避けることができ、しかも、機器の動作検査時には、検査プローブを誘電体50に接触させることにより、放電検出端子19を通した機器の動作検査を容易に行うことができる。
したがって、本実施形態の電源コンセント101を採用した場合には、差込プラグを抜いた状態での安全性を高め、かつ、放電検出端子19を通した機器の動作検査効率を高めることができる。
【0041】
また、本実施形態の電源コンセント101は、誘電体50の前側の端面50aがコンセントブロック11の当接面16と面一になるように配置されている。このため、コンセントブロック11の当接面16と誘電体50の間に段差や隙間が生じにくくなる。したがって、本構成を採用した場合には、コンセントブロック11の当接面16と誘電体50の間に埃や水分が溜まりにくくなり、これらの滞留による栓刃間での微弱な放電の発生を抑制することが可能になる。
【0042】
また、本実施形態の電源コンセント101は、放電検出端子19の誘電体50との接触面(端面19a)が誘電体50の前側の端面50aと同面積とされている。本構成を採用した場合には、放電電流に対する放電検出端子19での検出感度が高まり、一対の栓刃間で生じる微弱な放電を早期に検出することが可能になる。
【0043】
さらに、本実施形態の電源コンセント101は、各対の栓刃挿入口15A,15Bが夫々が上下方向に直線状に延びる形状に形成され、かつ、各対の栓刃挿入口15A,15Bが相互に平行に対向して配置されている。そして、誘電体50の前側の端面50aは、栓刃挿入口15A,15Bの延び方向と平行に直線状に延出している。このため、各対の栓刃挿入口15A,15Bの延び方向のいずれの部位において放電が生じた場合にも、誘電体50と放電検出端子19を通して確実に放電を検出することができる。また、誘電体50と放電検出端子19を通した機器の動作検査時には、検査プローブを誘電体50の端面50aに容易に当接させることができる。したがって、放電検出端子19を通した機器の動作検査効率をより高めることができる。
【0044】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の各実施形態では、コンセントブロック11の前部壁11Bに上段と下段に一対ずつ(合計二対)栓刃挿入口15A,15Bが配置されているが、前部壁11Bに設ける栓刃挿入口15A,15Bの対の数はこれに限定されない。栓刃挿入口15A,15Bの対は、一対であっても三対以上であっても良い。この場合、放電検出端子19や誘電体50は、栓刃挿入口15A,15Bの対数に応じて上述の各実施形態と同様に設けるようにすれば良い。
【符号の説明】
【0045】
1,101…電源コンセント
10…受刃
11…コンセントブロック
11B…前部壁
15A,15B…栓刃挿入口
16…当接面
19…放電検出端子
19a…端面
50…誘電体
図1
図2
図3
図4
図5
図6