(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098646
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/06 20060101AFI20240717BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B60W30/06
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002250
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】乾 陽司
(72)【発明者】
【氏名】古川 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】今井 規夫
(72)【発明者】
【氏名】小林 和也
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA22
3D241BB03
3D241BC01
3D241CA06
3D241CA08
3D241CD12
3D241CE05
3D241DA13Z
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3D241DA39Z
3D241DA52Z
3D241DB03Z
3D241DB05Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC50Z
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC11
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC24
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181LL17
(57)【要約】
【課題】近隣車両等との接触を抑制しつつ後側方確認部を安全にクローズすることができる運転支援装置を提供する。
【解決手段】実施形態の運転支援装置は、車両に設けられた複数のセンサが収集した周辺情報に基づいて、車両の駐車支援を行う運転支援装置であって、駐車支援を行う場合に、演算部は、車両が駐車領域へと進入するための駐車領域の間口が所定の閾値以下である場合、車両を基準とする駐車領域の手前位置であって、車両の車速と、後側方確認部のクローズに要する時間と、から得られる距離に基づく位置で、開閉制御部により後側方確認部のクローズを開始させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に設けられた複数のセンサが収集した周辺情報に基づいて、前記車両の駐車支援を行う運転支援装置であって、
前記複数のセンサのうち第1のセンサが設けられた後側方確認部を開閉させる開閉制御部と、
前記駐車支援を行う場合に、前記車両が駐車領域へと進入するための前記駐車領域の間口の大きさに基づいて、前記後側方確認部をクローズさせるか否かを決定する演算部と、を備え、
前記演算部は、
前記間口が所定の閾値以下である場合、前記車両を基準として、前記駐車領域の手前位置であって、前記車両の車速と、前記後側方確認部のクローズに要する時間と、から得られる距離に基づく位置で、前記開閉制御部により前記後側方確認部のクローズを開始させる、
運転支援装置。
【請求項2】
前記演算部は、
前記車両の車速と、前記後側方確認部のクローズ時間と、に基づいて、前記後側方確認部のクローズ開始からクローズ完了までに前記車両が移動すると予測される予測移動距離を算出し、
前記駐車支援により移動中の前記車両の位置が、前記後側方確認部から前記間口までの距離が前記予測移動距離と等しくなるまでの間に、前記後側方確認部のクローズを開始させる、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記駐車領域に前記車両を移動させる移動制御部を更に備え、
前記移動制御部は、
前記後側方確認部のクローズ開始前に、前記第1のセンサにより検出された前記駐車領域を示す対象物に基づいて、前記駐車領域の幅方向における前記車両の駐車位置を調整する、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記駐車領域を示す前記対象物は、前記駐車領域の幅方向の端部を示す目標物である、
請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記移動制御部は、
前記後側方確認部のクローズが開始された後は、前記複数のセンサのうち前記車両の進行方向に設けられた第2のセンサが収集した前記周辺情報に基づいて、前記車両の移動経路を調整する、
請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項6】
前記移動制御部は、
前記車両の乗員が降車した後、前記車両の移動を開始する、
請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項7】
前記移動制御部は、
前記車両を前進または後退させて、前記間口から前記駐車領域へと前記車両を進入させる、
請求項3に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
駐車領域への車両の駐車を自動で行う運転支援装置がある。駐車領域の間口が狭い場合、車両のサイドミラー等の後側方確認部が、近隣に駐車されている他の車両等と干渉してしまう恐れがある。例えば特許文献1の技術では、駐車領域の間口が所定の閾値を下回った場合、駐車の最終段階において駐車領域への進入経路が直進経路となった時点で、サイドミラーをクローズする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、駐車の最終段階でサイドミラーのクローズを開始するので、サイドミラーが完全にクローズするまでに、他の車両等と接触してしまう恐れがある。また、経路修正等を伴う駐車支援において、駐車領域への経路は必ずしも直進経路とはならず、特許文献1の技術が適用不可能な場面が多々生じることが想定される。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、近隣車両等との接触を抑制しつつ後側方確認部を安全にクローズすることができる運転支援装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、実施形態の運転支援装置は、車両に設けられた複数のセンサが収集した周辺情報に基づいて、前記車両の駐車支援を行う運転支援装置であって、前記複数のセンサのうち第1のセンサが設けられた後側方確認部を開閉させる開閉制御部と、前記駐車支援を行う場合に、前記車両が駐車領域へと進入するための前記駐車領域の間口の大きさに基づいて、前記後側方確認部をクローズさせるか否かを決定する演算部と、を備え、前記演算部は、前記間口が所定の閾値以下である場合、前記車両を基準として、前記駐車領域の手前位置であって、前記車両の車速と、前記後側方確認部のクローズに要する時間と、から得られる距離に基づく位置で、前記開閉制御部により前記後側方確認部のクローズを開始させる。
【0007】
この構成によれば、近隣車両等との接近を抑制しつつ後側方確認部を安全にクローズすることができる。
【0008】
また、上述の運転支援装置において、前記演算部は、前記車両の車速と、前記後側方確認部のクローズ時間と、に基づいて、前記後側方確認部のクローズ開始からクローズ完了までに前記車両が移動すると予測される予測移動距離を算出し、前記駐車支援により移動中の前記車両の位置が、前記後側方確認部から前記間口までの距離が前記予測移動距離と等しくなるまでの間に、前記後側方確認部のクローズを開始させる。この構成によれば、後側方確認部が駐車領域の間口に到達する前に、より確実に後側方確認部のクローズ動作を完了させることができる。
【0009】
また、上述の運転支援装置において、前記駐車領域に前記車両を移動させる移動制御部を更に備え、前記移動制御部は、前記後側方確認部のクローズ開始前に、前記第1のセンサにより検出された前記駐車領域を示す対象物に基づいて、前記駐車領域の幅方向における前記車両の駐車位置を調整する。この構成によれば、後側方確認部のクローズ開始前まで、第1のセンサの検出結果に基づき車両の駐車位置を調整するので、運転支援装置による駐車支援の精度をよりいっそう高めることができる。
【0010】
また、上述の運転支援装置において、前記駐車領域を示す前記対象物は、前記駐車領域の幅方向の端部を示す目標物である。この構成によれば、後側方確認部に設けられた第1のセンサから検出が容易な対象物を目標として車両の駐車位置を調整するので、運転支援装置による駐車支援の精度をよりいっそう高めることができる。
【0011】
また、上述の運転支援装置において、前記移動制御部は、前記後側方確認部のクローズが開始された後は、前記複数のセンサのうち前記車両の進行方向に設けられた第2のセンサが収集した前記周辺情報に基づいて、前記車両の移動経路を調整する。この構成によれば、例えば駐車領域の奥行方向における車両位置が把握しやすく、運転支援装置による駐車支援の精度をよりいっそう高めることができる。
【0012】
また、上述の運転支援装置において、前記移動制御部は、前記車両の乗員が降車した後、前記車両の移動を開始する。この構成によれば、運転者等が降車した状態でのリモート駐車が可能となり、駐車後の車両からの乗員の乗り降りが必要ないので、ごく狭い駐車領域に車両を駐車することが可能である。
【0013】
また、上述の運転支援装置において、前記移動制御部は、前記車両を前進または後退させて、前記間口から前記駐車領域へと前記車両を進入させる。このように、上述の各種構成を前進駐車および後退駐車のいずれにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態にかかる運転支援装置が搭載された車両の上面図である。
【
図2】
図2は、実施形態にかかる運転支援システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態にかかる運転支援装置の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、実施形態にかかる運転支援装置による駐車支援の動作の一例について説明する模式図である。
【
図5】
図5は、実施形態にかかる運転支援装置による駐車支援の動作の一例について説明する模式図である。
【
図6A】
図6Aは、実施形態にかかる運転支援装置による駐車支援の動作の一例について説明する模式図である。
【
図6B】
図6Bは、実施形態にかかる運転支援装置による駐車支援の動作の一例について説明する模式図である。
【
図7】
図7は、実施形態にかかる運転支援装置による駐車支援の動作の一例について説明する模式図である。
【
図8】
図8は、実施形態にかかる運転支援装置による駐車支援の動作の一例について説明する模式図である。
【
図9】
図9は、実施形態にかかる運転支援装置による駐車支援の動作の他の例について説明する模式図である。
【
図10】
図10は、実施形態にかかる運転支援装置による駐車支援の動作の他の例について説明する模式図である。
【
図11】
図11は、実施形態にかかる運転支援装置による運転支援処理の手順の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の例示的な実施形態等の同様の構成要素には共通の符号を付与して、重複する説明を適宜省略する。
【0016】
(車両の構成例)
図1は、実施形態にかかる運転支援装置20が搭載された車両10の上面図である。
図1における車両10の前後左右は、車両10の運転席から見た場合の方向を示す。
【0017】
実施形態の車両10は、例えば内燃機関を駆動源とする内燃機関自動車であってもよいし、電動機を駆動源とする電気自動車または燃料電池自動車等であってもよいし、それらの双方を駆動源とするハイブリッド自動車であってもよい。
【0018】
また、車両10は、種々の変速装置を搭載することができ、内燃機関または電動機を駆動するために必要な種々のシステム、部品等の装置を搭載することができる。また、車両10における車輪13の駆動に関わる装置の方式、個数、及びレイアウト等は、種々に設定することができる。
【0019】
図1に示すように、車両10は、車体12、複数の車輪13、1対のサイドミラー15a,15b、複数の測距部14a~14l、及び複数の撮像部16a~16dを備える。なお、サイドミラー15a,15bを区別する必要が無い場合には単にサイドミラー015と記載する。また、測距部14a~14lを区別する必要がない場合には単に測距部14と記載する。また、撮像部16a~16dを区別する必要がない場合には単に撮像部16と記載する。
【0020】
車体12は、乗員が乗車する車室を構成する。車体12には、複数の車輪13、複数のサイドミラー15a,15b、複数の測距部14、及び複数の撮像部16が取り付けられている。
図1の例では、車体12は、4個の車輪13と、左右1対のサイドミラー15a,15bと、12個の測距部14と、4個の撮像部16とを備えている。ただし、車体12に取り付けられるサイドミラー15、測距部14、及び撮像部16の個数は任意である。
【0021】
1対の後側方確認部としてのサイドミラー15a,15bは、車体12前部の左右のドアにそれぞれ設けられたドアミラー等である。ドアミラー等であるサイドミラー15a,15bの他、車体12の前端部にフェンダーミラー等が設けられていてもよい。
【0022】
4個の車輪13は、車体12の前後左右に設けられている。前側の2個の車輪13は例えば転舵輪として機能し、後側の2個の車輪13は例えば駆動輪として機能する。
【0023】
測距部14は、例えば車両10の外周部に設けられ、超音波等の音波を検出波として送信して、車両10の周辺に存在する障害物等の対象物が反射した検出波を捉えるソナーである。なお、測距部14は、レーザ光等の検出波を送信するレーダー、またはミリ波レーダー等であってもよい。
【0024】
測距部14は、車両10の周辺の情報である周辺情報を収集して運転支援装置20に出力する。測距部14は、例えば検出波を送信してから受信するまでの時間である応答時間を、対象物と車両10との距離を特定するための周辺情報として収集する。運転支援装置20は、測距部14が収集した周辺情報に基づいて、車両10の周辺の障害物等の有無、及びその障害物までの距離を検出することができる。
【0025】
なお、測距部14は、1回の検出波の送信に対して、対象物の複数の個所が反射した複数の検出波を受信した場合には、最も早く受信した検出波の応答時間のみを周辺情報に含めてもよい。
【0026】
測距部14a~14dは車体12の前部に設けられている。これらの測距部14a~14dのうち、測距部14b,14cはフロントソナーとも呼ばれ、車両10の前端部に設けられている。測距部14b,14cは、車両10の前方の対象物を検出して、車両10の前方の周辺情報を収集する。また、測距部14a,14dはコーナーソナーとも呼ばれ、車両10前部のコーナー部分に設けられている。測距部14a,14dは、車両10の前方外側の対象物を検出して、車両10の前方外側の周辺情報を収集する。
【0027】
測距部14e~14hは車体12の後部に設けられている。これらの測距部14e~14hのうち、測距部14f,14gはリアソナーとも呼ばれ、車両10の後端部に設けられている。測距部14f,14gは、車両10の後方の対象物を検出して、車両10の後方の周辺情報を収集する。また、測距部14e,14hはコーナーソナーとも呼ばれ、車両10後部のコーナー部分に設けられている。測距部14e,14hは、車両10の後方外側の対象物を検出して、車両10の後方外側の周辺情報を収集する。
【0028】
測距部14i~14lはサイドソナーとも呼ばれ、車体12の側部に設けられている。測距部14i~14lのうち、測距部14i,14jは車両10の前部側方に設けられている。測距部14k,14lは車両10の後部側方に設けられている。測距部14i~14lは、車両10の側方の対象物を検出して、車両10の側方の周辺情報を収集する。
【0029】
センサとしての撮像部16は、例えばCCD(Charge Coupled Device)、またはCIS(CMOS Image Sensor)等の撮像素子を内蔵するデジタルカメラである。撮像部16は、所定のフレームレートで撮影される複数のフレーム画像を含む動画、または静止画の撮像画像を生成する。
【0030】
撮像部16は、車体12の外周部に設けられ、それぞれ広角レンズまたは魚眼レンズを有しており、例えば水平方向の140°~190°の範囲を撮影することができる。撮像部16の光軸は、斜め下方に向けて設定されている。
【0031】
これにより、撮像部16は、路面を含む車両10の周辺を撮像した周辺情報を収集して運転支援装置20に出力する。運転支援装置20は、撮像部16が収集した周辺情報に基づいて、車両10の周辺の障害物等の有無、及びその障害物の位置を検出することができる。また、運転支援装置20は、撮像部16が収集した周辺情報に基づいて、車両10の周辺の駐車領域、及びその駐車領域の位置を検出することができる。
【0032】
撮像部16aは、車体12の左端部の前後方向の中央部であって、例えば左側のサイドミラー15aの下面に設けられている。撮像部16aは、車両10の左下方を撮像した撮像画像を周辺情報として収集する。撮像部16bは、車体12の右端部の前後方向の中央部であって、例えば右側のサイドミラー15bの下面に設けられている。撮像部16bは、車両10の右下方の周辺を撮像した撮像画像を周辺情報として収集する。撮像部16a,16bは、第1のセンサの一例である。
【0033】
撮像部16cは、車体12の前端部の左右方向の中央部であって、例えばフロントバンパーに設けられている。撮像部16cは、車両10の前方を撮像した撮像画像を周辺情報として収集する。撮像部16dは、車体12の後端部の左右方向の中央部であって、例えばリアバンパーに設けられている。撮像部16dは、車両10の後方を撮像した撮像画像を周辺情報として収集する。撮像部16c,16dは、第2のセンサの一例である。
【0034】
(運転支援システムの構成例)
図2は、実施形態にかかる運転支援システム200の全体構成の一例を示すブロック図である。運転支援システム200は、例えば車両10に搭載されて、運転者が車両10からから降車した状態で、車両10の駐車領域への入庫または駐車領域からの出庫等の運転支援をリモートで行う。
【0035】
図2に示すように、運転支援システム200は、運転支援装置20、モニタ装置30、制動システム40、加速システム50、操舵システム60、変速システム70、車速センサ83、ミラー駆動部90、測距部14、及び撮像部16を備える。これらの構成は、車内ネットワークNTによって互いに情報の送受信が可能に接続されている。
【0036】
車内ネットワークNTは、例えばCAN(Controller Area Network)及びLIN(Local Interconnect Network)等を含んで構成される。車内ネットワークNTを運転支援システム200の一部に含めてもよい。
【0037】
運転支援装置20は、ECU(Electronic Control Unit)等のマイクロコンピュータとして構成されており、車両10の運転支援を行なう。
【0038】
運転支援装置20は、CPU(Central Processing Unit)21、表示制御回路23、SSD(Solid State Drive)24、ROM(Read Only Memory)25、及びRAM(Random Access Memory)26を備える。CPU21、ROM25、及びRAM26は同一パッケージ内に集積されていてもよい。
【0039】
CPU21は、ハードウェアプロセッサの一例であって、ROM25等の不揮発性の記憶装置に記憶されたプログラムを読み出し、このプログラムにしたがって各種の演算処理および制御を実行する。
【0040】
ROM25は、各種プログラム及びプログラムの実行に必要なパラメータ等を記憶する。RAM26は、CPU21による演算で用いられる各種のデータを一時的に記憶する。SSD24は、書き換え可能な不揮発性の記憶装置であって、運転支援装置20の電源がオフされた場合にあってもデータを維持する。
【0041】
表示制御回路23は、運転支援装置20で行われる演算処理のうち、主として撮像部16で得られた画像の画像処理、モニタ装置30が備える後述の表示部31に表示させる表示用の画像のデータ変換等を実行する。
【0042】
制動システム40は、制動部41、制動制御部42、及び制動部センサ43を有し、車両10の減速を制御する。
【0043】
制動部41は、例えばブレーキ及びブレーキペダル等を含む装置であり、車両10を減速させる。制動制御部42は、例えばCPU等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータである。制動制御部42は、運転支援装置20からの指示に基づいて制動部41を制御して、車両10の減速を制御する。制動部センサ43は、例えば位置センサであって、制動部41に含まれるブレーキペダルの位置を検出する。制動部センサ43は、検出したブレーキペダル位置を車内ネットワークNTに出力する。
【0044】
加速システム50は、加速部51、加速制御部52、及び加速部センサ53を有し、車両10の加速を制御する。
【0045】
加速部51は、例えばアクセルペダル等を含む装置であり、車両10を加速させる。加速制御部52は、例えばCPU等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータである。加速制御部52は、運転支援装置20からの指示に基づいて、加速部51を制御して、車両10の加速を制御する。加速部センサ53は、例えば位置センサであって、加速部51に含まれるアクセルペダルの位置を検出する。加速部センサ53は、検出したアクセルペダルの位置を車内ネットワークNTに出力する。
【0046】
操舵システム60は、操舵部61、操舵制御部62、及び操舵部センサ63を有し、車両10の進行方向を制御する。
【0047】
操舵部61は、例えばハンドルまたはステアリングホイール等を含む装置であり、車両10の転舵輪を転舵させて、車両10の進行方向を操舵する。操舵制御部62は、例えばCPU等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータである。操舵制御部62は、運転支援装置20からの指示に基づいて、操舵部61を制御して、車両10の進行方向を制御する。操舵部センサ63は、例えばホール素子等を含む角度センサであって、操舵部61の回転角である操舵角を検出する。操舵部センサ63は、検出した操舵部61の操舵角を車内ネットワークNTに出力する。
【0048】
変速システム70は、変速部71、変速制御部72、及び変速部センサ73を有し、車両10の変速比を制御する。
【0049】
変速部71は、例えばシフトレバー等を含む装置であり、車両10の変速比を変更させる。変速制御部72は、例えばCPU等のハードウェアプロセッサを有するマイクロコンピュータである。変速制御部72は、運転支援装置20からの指示に基づいて、変速部71を制御して、車両10の変速比を制御する。変速部センサ73は、例えば位置センサであって、変速部71に含まれるシフトレバーの位置を検出する。変速部センサ73は、検出したシフトレバーの位置を車内ネットワークNTに出力する。
【0050】
車速センサ83は、例えば車両10の車輪13の近傍に設けられたホール素子を有し、車輪13の回転量または単位時間当たりの回転数を検出する。車速センサ83は、検出した回転量または回転数を示す車輪速パルス数を、車両10の速度(車速)を算出するためのセンサ値として、車内ネットワークNTへ出力する。運転支援装置20は、車速センサ83から取得したセンサ値に基づいて車両10の速度および移動量等を算出することができる。
【0051】
開閉制御部としてのミラー駆動部90は、例えばサイドミラー15を駆動させるアクチュエータ等である。ミラー駆動部90のアクチュエータを作動させることにより、サイドミラー15が開閉される。
【0052】
ここで、サイドミラー15の開位置は、車両10の運転者等が後方を視認可能なサイドミラー15の使用位置である。また、サイドミラー15に設けられる撮像部16による撮像画像のうち、サイドミラー15が開位置にあるときに撮像された画像が、車両10の周辺情報を示すものとして車両10の運転支援等に用いられる。
【0053】
サイドミラー15の閉位置は、車両10が走行を終えて停車状態にある場合のサイドミラー15の格納位置である。サイドミラー15が閉位置にあるとき、サイドミラー15に設けられる撮像部16による撮像画像は運転支援等において参照されず、あるいは、撮像部16による撮像はそもそも行われない。
【0054】
モニタ装置30は、車両10の車室内のダッシュボード等に設けられ、表示部31及び入力部32を有する。
【0055】
表示部31は、例えば液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)、または有機ELディプレイ(OELD:Organic Electroluminescent Display)等の表示装置である。表示部31は、例えば運転支援装置20が送信した画像データに基づく画像、及び自動運転と手動運転との切り替えを指示する操作指示を受け付ける画像等を表示する。
【0056】
入力部32は、例えば表示部31の表示画面に設けられているタッチパネルである。入力部32は、表示部31が表示画面に表示する内容を透過可能に構成されている。これにより、入力部32は、表示部31の表示内容を乗員に視認させることができる。
【0057】
入力部32は、表示部31の表示内容に対応した位置を乗員が触れることによって入力した指示を受け付けて、車内ネットワークNTを介して運転支援装置20へ送信する。なお、入力部32は、タッチパネルに限らず、押しボタン式等のハードスイッチであってもよい。
【0058】
図3は、実施形態にかかる運転支援装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、運転支援装置20は、表示制御部201、演算部202、ミラー制御部203、取得部204、検出部205、経路算出部206、移動制御部207、及び記憶部208を機能部として備える。
【0059】
これらの機能部は、例えば上述のCPU21がROM25等の記憶装置に記憶されたプログラムを読み出して、それを実行することにより実現される。または、プログラムにしたがうCPU21の制御下で、表示制御回路23、SSD24、ROM25、及びRAM26等が動作することにより実現される。
【0060】
なお、これらの機能部の一部または全部は、ASIC(Applocation Specific Integrated Circuit)を含む回路等のハードウェアによって構成されてもよい。
【0061】
取得部204は、車両10の周辺情報として、測距部14から音波の送受波情報および撮像部16から車両10周辺の撮像画像をそれぞれ取得する。
【0062】
検出部205は、取得部204によって取得された周辺情報に基づいて、車両10周辺の障害物、駐車区画、及び駐車領域等を検出する。
【0063】
障害物は、例えば他の車両、壁、柱、柵、突起、段差、輪留め等の種々の物体である。また、障害物は、例えば駐車場内を歩く人等であり得る。
【0064】
駐車区画は、車両10を駐車するように設けられ、例えば区画線、枠線、直線、帯、段差等によって区画された領域である。駐車領域は、車両10が駐車可能な駐車区画、つまり、車両10の駐車に障害となる他の車両等の障害物が存在しない駐車区画である。上記の区画線、枠線、直線、帯、段差等は、駐車領域を示す対象物の一例であり、運転支援装置20が駐車領域に対する車両10の入出庫を支援する際、車両10を駐車領域へと進入させたり、駐車領域から出庫させたりするときの目標物となる。
【0065】
検出部205は、車両10の運転者等から運転支援の開始指示があると、例えば測距部14の検出結果に基づいて、障害物の有無、車両10から障害物までの距離等を検出する。また、検出部205は、例えば撮像部16が撮像した画像に基づく画像処理によって、障害物の有無および駐車区画、並びに車両10に対するこれらの位置(方位)、及びこれらの形状、大きさ、高さ等を検出する。
【0066】
検出部205は、これらの検出結果を組み合わせることで、車両10周辺に障害物があるか否か、その障害物が車両10の走行に支障を及ぼし得るか否か、車両10周辺に駐車区画があるか否か、その駐車区画に車両10を駐車することが可能か否か、つまり、駐車領域として使用しうるか否か等の情報を抽出する。
【0067】
経路算出部206は、検出部205による検出結果に基づいて、車両10を誘導する目標位置を算出し、目標位置まで車両10を移動させる移動経路を算出する。
【0068】
車両10を駐車(入庫)する場合であれば、検出部205によって検出された駐車領域が目標位置となる。車両10を出庫する場合であれば、複数の駐車区画間に設けられた通路上等、それ以降、車両10が安全に走行を開始できる所定の場所が目標位置となる。
【0069】
また、経路算出部206が、必要に応じて切り返し位置の算出を行う場合もある。切り返し位置は、1回の後退または前進等によって駐車または出庫が困難であるような場合に1つ以上設定される。
【0070】
経路算出部206は、上記のように算出した目標位置に車両10を誘導すべく、車両10の現在位置から目標位置へと至る車両10の移動経路を算出する。移動経路には、上記のように切り返し位置が含まれる場合もある。この場合、経路算出部206は、車両10の現在位置から切り返し位置を経て、目標位置へと至る移動経路を算出する。
【0071】
このように、経路算出部206により、例えば後退駐車、または前進駐車等の駐車のための移動経路が算出される。また、経路算出部206により、例えば前進出庫または後退出庫等の出庫のための移動経路が算出される。
【0072】
移動制御部207は、車両10の運転支援の際、車両10の各部を制御して車両10の移動を行う。具体的には、移動制御部207は、制動システム40、加速システム50、操舵システム60、及び変速システム70の全部または一部を制御することにより、上記の移動経路にしたがって車両10を目標位置に移動させる。このとき、移動制御部207は、制動部センサ43、加速部センサ53、操舵部センサ63、変速部センサ73、及び車速センサ83等の各センサからのフィードバックを受けながら車両10の移動を行う。
【0073】
なお、移動制御部207が車両10の移動を開始した後も、検出部205は、測距部14及び撮像部16からの周辺情報の取得を継続する。これにより、移動制御部207は、移動経路にしたがう車両10の移動中に、車両10の移動経路上の移動を妨げる位置に障害物が検出された場合には、車両10を一旦停止させる。
【0074】
また、経路算出部206は、検出部205による検出結果に基づいて、適宜、移動経路の再計算を行う。移動制御部207は、移動経路が再計算されると、それにしたがって、車両10の位置を微調整するよう、車両10の移動を継続する。
【0075】
表示制御部201は、モニタ装置30の表示部31に表示する内容を生成し、表示部31に表示させる。つまり、表示制御部201は、例えば車両10を駐車可能な駐車領域が検出されたことの通知画面、運転支援の開始、中断、または中止等の選択画面、運転支援中の車両10の周辺画像等を表示部31に表示させる。
【0076】
演算部202は、例えば車両10を所定の駐車領域に駐車させる駐車支援を行う際、車両10の進入口となる駐車領域の間口が所定の閾値以下である場合、駐車領域の手前の所定位置で、ミラー制御部203によりサイドミラー15をクローズさせることを決定する。
【0077】
また、演算部202は、駐車領域の手前位置であって、移動制御部207の制御下で移動中の車両10の車速と、サイドミラー15のクローズに要する時間と、から得られる位置を、サイドミラー15のクローズ開始位置とする。
【0078】
ミラー制御部203は、駐車支援等の運転支援中、演算部202からの指示を受信すると、ミラー駆動部90を作動させてサイドミラー15をクローズさせる。これにより、駐車領域の間口が狭い場合に、例えば近隣の駐車車両等へのサイドミラー15の接触が抑制される。
【0079】
記憶部208は、例えば運転支援装置20のCPU21が実行するプログラム、及び運転支援装置20の動作に必要な各種制御パラメータ等を記憶する。また、記憶部208は、例えばミラー駆動部90のアクチュエータ等の仕様、及びサイドミラー15のクローズに要する時間、駐車支援中の車両10の車速設定値等のデータを記憶している。また、記憶部208は、サイドミラー15のクローズ開始からクローズ完了までに車両10が移動すると予測される予測移動距離のデータを記憶している。予測移動距離は、駐車支援中の車両10の車速と、サイドミラー15のクローズに要する時間とから求まる距離である。
【0080】
(運転支援装置の動作例)
次に、
図4~
図10を用いて、実施形態の運転支援装置20の動作例について説明する。
【0081】
図4~
図8は、実施形態にかかる運転支援装置20による駐車支援の動作の一例について説明する模式図である。
図4~
図8では、車両10が後退駐車する場合の例について説明する。
【0082】
図4に示すように、複数の駐車区画PApが並ぶ駐車場内等で、他の車両91,92が駐車された駐車区画PApに挟まれて、1つの駐車区画PApが空車の状態であったとする。
【0083】
なお、
図4の例では、各々の駐車区画PApは、直線状の仕切り線LNa,LNb,LNc,LNd・・・により区画されているものとする。これらの仕切り線LNa,LNb,LNc,LNd・・のうち、空車となっている駐車区画PApと、車両91が駐車された駐車区画PApとは仕切り線LNbで仕切られている。また、空車となっている駐車区画PApと、車両92が駐車された駐車区画PApとは仕切り線LNcで仕切られている。車両91が駐車された駐車区画PApのもう一方側は仕切り線LNaで仕切られており、車両92が駐車された駐車区画PApのもう一方側は、仕切り線LNdで仕切られている。
【0084】
車両10が空車状態の駐車区画PApに対して横づけされるなど、所定位置に停車されると、車両10に搭載された運転支援装置20の検出部205は、複数の駐車区画PApの中から、例えば空車となっているこの駐車区画PApを、車両10の駐車が可能な駐車領域PAとして検出する。運転支援装置20の表示制御部201は、検出された駐車領域PAをモニタ装置30の表示部31に表示させる。
【0085】
その駐車領域PAへの駐車を希望する場合、運転者を含む車両10の乗員は、車両10から降車し、その後、例えば携帯端末または車両10に付属するスマートキー等を用いて、車両10の外部から運転支援の実行を運転支援装置20に指示する。これにより、運転支援装置20による車両10の駐車支援が開始される。
【0086】
図5に示すように、運転支援装置20の経路算出部206は移動経路TRを算出する。移動経路TRは、例えば乗員が降車した車両10の停車位置PPから、車両10の前進方向にあたる切り返し位置SPを経て、切り返し位置SPにおける車両10の後退方向にあたり、駐車領域PA内に位置する目標位置DPに至る。
【0087】
運転支援装置20の移動制御部207は、経路算出部206の算出結果にしたがって、移動経路TR上において車両10の移動を開始する。この間、運転者は車両10の動きを監視し、必要があれば、車両10を一時停止させるなどの指示を、携帯端末またはスマートキー等から運転支援装置20に送信することができる。
【0088】
一方、運転支援装置20の演算部202は、駐車支援が開始されると、例えば経路算出部206による移動経路TRの算出等と並行して、駐車領域PAの間口Wが所定の閾値以下であるか否かを算出する。
【0089】
駐車領域PAの間口Wは、上述のように、車両10の駐車領域PAへの進入口となる部分であり、
図4の例では、例えば駐車領域PAの幅方向両側の仕切り線LNb,LNc等を基準に定めることができる。
【0090】
すなわち、駐車領域PAの間口Wは、例えば仕切り線LNbの幅方向中央位置から仕切り線LNcの幅方向中央位置までの距離とすることができる。あるいは、駐車領域PAの間口Wを、仕切り線LNb,LNcの幅方向の内側、つまり、駐車領域PAを向いた側の端部間の距離、またあるいは、仕切り線LNb,LNcの幅方向の外側、つまり、駐車領域PAの外に向いた側の端部間の距離などとすることができる。
【0091】
また、駐車領域PAの奥行方向における間口Wの位置は、駐車領域PA両側に隣接して駐車された車両91,92の前端部の位置、つまり、間口W側の端部位置を基準に定めることができる。あるいは、駐車領域PAの奥行方向における間口Wの位置を、仕切り線LNb,LNcの延伸方向先端部の位置、つまり、車両10の進入口側の端部位置としてもよい。またあるいは、駐車領域PAの奥行方向における間口Wの位置を、車両91,92の前端部と、仕切り線LNb,LNcの進入口側端部との間の位置などと定めてもよい。
【0092】
駐車領域PAの間口Wは、近隣の車両91,92と車両10との距離が充分に確保でき、車両10を安全に駐車可能であれば、上記のように種々に設定することが可能である。
【0093】
演算部202は、駐車領域PAの間口Wが所定の閾値以下であった場合、サイドミラー15をクローズさせるため、サイドミラー15のクローズ開始からクローズ完了までに車両10が移動すると予測される予測移動距離を記憶部208から読み出す。
【0094】
図6Aに示すように、移動制御部207は、移動経路TR上における車両10の移動を継続中である。これにより、駐車領域PAの手前位置であって、車両10に設けられたサイドミラー15が、サイドミラー15に設けられた撮像部16により駐車領域PAの幅方向の端部を示す仕切り線LNb,LNcを撮像可能、かつ、その撮像画像から検出部205による仕切り線LNb,LNcの検出が可能な位置に、車両10が到達する。
【0095】
なお、
図6Aの例では、これらの仕切り線LNb,LNcが、駐車領域PAの幅方向の端部を示す目標物に相当する。また、駐車領域PAの手前位置に車両10が到達した状態とは、車両10の車体12の少なくとも半分以上、好ましくは大半部分あるいは全体が、駐車領域PAへの移動経路TR上の、駐車領域PAの外側に位置していることを指す。
【0096】
ここで、車両10は後退駐車を試みているところであるから、車両10左側のサイドミラー15aに設けられた撮像部16aは、駐車領域PAの左側端部の仕切り線LNbを撮像可能な状態となる。
【0097】
また、これに遅れて、車両10右側のサイドミラー15bに設けられた撮像部16bが、駐車領域PAの右側端部の仕切り線LNcを撮像可能な状態となる。
図6Aの例で、サイドミラー15bによる仕切り線LNcの検出が、サイドミラー15aによる仕切り線LNbの検出に遅れるのは、車両10が、駐車領域PAの左前方に設定された切り返し位置SPから旋回しつつ、仕切り線LNb,LNcに対して若干曲がった状態で駐車領域PAへと進入してくるためである。この場合、同じ車両10位置であれば、仕切り線LNbから撮像部16aまでの距離より、仕切り線LNcから撮像部16bまでの距離のほうが離れることとなる。
【0098】
図6A中、仕切り線LNcが撮像部16bにより撮像可能かつ検出部205により検出可能な車両10位置における、仕切り線LNcから撮像部16bまでの距離を円Dmの直径で示す。また、
図6Bには、参考までに、車両10の後端部に設けられた撮像部16dが撮像した画像IMの一例を示す。なお、車両10後端部の撮像部16dによる撮像画像は左右反転画像となっている。
【0099】
さらには、
図6A中、撮像部16bが仕切り線LNcを撮像可能な車両10の位置における、サイドミラー15aから駐車領域PAの間口Wまでの距離を円Dwの直径で示す。また、車両10の予測移動距離を、サイドミラー15a,15bをそれぞれ起点とする円Dtの直径で示す。つまり、予測移動距離分、車両10が移動すると、サイドミラー15a,15bはそれぞれ、円Dtで規定される範囲内を移動することとなる。
【0100】
図6Aの例では、撮像部16bが仕切り線LNcを撮像可能な車両10位置における、サイドミラー15aから駐車領域PAの間口Wまでの円Dwの直径で示される距離が、サイドミラー15aを起点とする円Dtの直径で示す予測移動距離よりも長い。
【0101】
また、サイドミラー15bから駐車領域PAの間口Wまでの距離は、サイドミラー15aから駐車領域PAの間口Wまでの距離よりも遠いので、サイドミラー15bから駐車領域PAの間口Wまでの距離もまた、上記のように算出された予測移動距離よりも長くなる。
【0102】
なお、本発明者らによれば、仕切り線LN等の駐車領域PAの幅方向を示す目標物から遠い側のサイドミラー15に設けられた撮像部16が目標物を撮像可能な車両10位置における、より駐車領域PAの間口Wに近い側のサイドミラー15から間口Wまでの距離は、車両10の車速とサイドミラー15のクローズ時間とから算出した車両10の予測移動距離と略等しくなることが試算されており、これらの距離の大小関係は、専ら上記要件を満たすことが確認されている。
【0103】
演算部202は、駐車支援により移動中の車両10の位置が、サイドミラー15a,15bから駐車領域PAの間口Wまでの距離が車両10の予測移動距離と等しくなるまでの間に、車両10の上記到達位置にてサイドミラー15a,15bのクローズを開始するよう、ミラー制御部203に指示をする。より詳細には、サイドミラー15a,15bのクローズ開始位置は、例えばサイドミラー15a,15bから駐車領域PAの間口Wまでの距離が、少なくとも車両10の予測移動距離以上であって、サイドミラー15a,15bを近接する車両91等に接近させすぎることなく安全に閉じ切ることが可能な距離以上残されている位置に設定される。
【0104】
図7に示すように、運転支援装置20のミラー制御部203は、演算部202からの指示にしたがって、ミラー駆動部90を制御してサイドミラー15a,15bのクローズを開始する。移動制御部207は、その間にも、移動経路TR上における車両10の移動を継続する。
【0105】
上記のように、サイドミラー15a,15bから駐車領域PAの間口Wまでの距離が車両10の予測移動距離と等しくなるまでにサイドミラー15a,15bのクローズを開始した場合には、サイドミラー15a,15bを閉じながら車両10の移動を継続しても、例えばサイドミラー15a,15bが駐車領域PAの間口Wに到達する前に、サイドミラー15a,15bを閉じ切ることが可能である。
【0106】
一方、検出部205は、サイドミラー15a,15bのクローズ開始前に撮像部16a,16bによってそれぞれ撮像された仕切り線LNb,LNc等の駐車領域PAの左右方向の幅を示す目標物を検出する。経路算出部206は、これらの目標物に基づいて、駐車領域PAの幅方向に対する車両10の進入位置が適切であるか否かを判定する。
【0107】
駐車領域PAの幅方向に対して車両10の位置が曲がっている等、適切ではない場合、経路算出部206は、車両10の現在位置から目標位置DPまでの移動経路TRを再計算し、移動制御部207は、新たに得られた移動経路TRに沿って車両10の位置を微調整する。
【0108】
一方、サイドミラー15a,15bのクローズが開始されると、経路算出部206及び移動制御部207等は、サイドミラー15a,15bに設けられた撮像部16a,16bからの画像を除外して、専ら車両10の前後に設けられた撮像部16c,16dからの画像に基づき車両10の制御を継続する。
【0109】
より具体的には、
図7の例のように、車両10が後退駐車中である場合、経路算出部206及び移動制御部207等は、例えば車両10の進行方向に相当する後部に設けられた撮像部16dの画像に基づき、駐車領域PAの奥行方向における車両10の前後位置を微調整する。
【0110】
図8に示すように、運転支援装置20の上記制御により、車両10が駐車領域PA内の目標位置DPに駐車され、運転支援装置20の駐車支援が終了する。
【0111】
次に、
図9及び
図10を用いて、車両10が前進駐車する場合の例について説明する。
【0112】
図9及び
図10は、実施形態にかかる運転支援装置20による駐車支援の動作の他の例について説明する模式図である。
図9及び
図10の例のように、車両10が前進駐車する場合においても、検出部205により駐車領域PAが検出され、運転者等の指示により駐車支援が開始されると、経路算出部206が、車両10の前進方向の駐車領域PA内に至る移動経路TRを算出し、移動制御部207が、算出された移動経路TRに沿って車両10の移動を開始する。
【0113】
図9に示すように、移動制御部207が車両10の移動を継続することで、サイドミラー15が、駐車領域PAの幅方向の端部を示す仕切り線LNb,LNcを撮像部16により撮像可能かつ検出部205により検出可能な位置に、車両10が到達する。
【0114】
このとき、車両10は前進駐車を試みているところであるから、車両10左側のサイドミラー15aに設けられた撮像部16aは、車両10から見て駐車領域PAの左側端部の仕切り線LNcを撮像可能な状態となる。
【0115】
また、これに遅れて、車両10右側のサイドミラー15bに設けられた撮像部16bが、車両10から見て駐車領域PAの右側端部の仕切り線LNbを撮像可能な状態となる。
図9の例で、サイドミラー15bによる仕切り線LNbの検出が、サイドミラー15aによる仕切り線LNcの検出に遅れるのは、車両10が、駐車領域PAの左側後方から旋回しつつ、仕切り線LNb,LNcに対して若干曲がった状態で駐車領域PAへと進入してくるためである。この場合、同じ車両10位置であれば、仕切り線LNcから撮像部16aまでの距離より、仕切り線LNbから撮像部16bまでの距離のほうが離れることとなる。
【0116】
図9においても、仕切り線LNbが撮像部16bにより撮像可能であって、かつ、検出部205により検出可能な車両10位置における、仕切り線LNbから撮像部16bまでの距離を円Dmの直径で示す。
【0117】
図9の例では、撮像部16bが仕切り線LNbを撮像可能な車両10位置における、サイドミラー15aから駐車領域PAの間口Wまでの円Dwの直径で示される距離が、サイドミラー15aを起点とする円Dtの直径で示す予測移動距離よりも長い。
【0118】
また、サイドミラー15bから駐車領域PAの間口Wまでの距離は、サイドミラー15aから駐車領域PAの間口Wまでの距離よりも遠いので、サイドミラー15bから駐車領域PAの間口Wまでの距離もまた、上記の予測移動距離よりも長くなる。
【0119】
演算部202は、駐車支援により移動中の車両10の位置が、サイドミラー15a,15bから駐車領域PAの間口Wまでの距離が車両10の予測移動距離と等しくなるまでの間に、車両10の上記到達位置にてサイドミラー15a,15bのクローズを開始するよう、ミラー制御部203に指示をする。
【0120】
図10に示すように、運転支援装置20のミラー制御部203は、演算部202からの指示にしたがって、ミラー駆動部90を制御してサイドミラー15a,15bのクローズを開始する。移動制御部207は、その間にも、移動経路上TRにおける車両10の移動を継続する。この場合でも、例えばサイドミラー15a,15bが駐車領域PAの間口Wに到達する前に、サイドミラー15a,15bのクローズ動作が完了する。
【0121】
経路算出部206は、サイドミラー15a,15bのクローズ開始前に撮像部16a,16bによってそれぞれ撮像された仕切り線LNc,LNb等の目標物を参照し、必要に応じて移動経路TRの再計算を行い、移動制御部207は、駐車領域PAの幅方向における車両10の位置を微調整する。
【0122】
また、サイドミラー15a,15bのクローズ開始後、サイドミラー15a,15bに設けられた撮像部16a,16bからの画像が除外され、例えば車両10の進行方向に相当する前部に設けられた撮像部16cの画像に基づき車両10の制御が継続される。
【0123】
以上により、車両10が駐車領域PA内の目標位置に駐車され、運転支援装置20の駐車支援が終了する。
【0124】
(運転支援装置の処理例)
次に、
図11を用いて、実施形態の運転支援装置20による運転支援処理の例について説明する。
図11は、実施形態にかかる運転支援装置20による運転支援処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0125】
図11に示すように、例えば検出部205が駐車領域PAを検出した後、運転支援装置20は、車両10を降車した運転者等からの駐車支援開始の指示を待ち受ける(ステップS101)。
【0126】
運転者等から駐車支援開始の指示を受信すると(ステップS101:Yes)、その指示が、運転者等の乗員が車両10から降車後のものであることが確認された後(ステップS102:Yes)、運転支援装置20による駐車支援が開始される(ステップS103)。運転支援装置20は、駐車支援開始の指示が受信されるまで、また、車両10から乗員が降車するまで待機する(ステップS101,S102:No)。
【0127】
駐車支援の開始後、経路算出部206は、その時点における車両10の停車位置から駐車領域PA内の目標位置DPへと至る移動経路TRを算出し、算出された移動経路TRにしたがって、移動制御部207が車両10の移動を開始する。
【0128】
また、演算部202は、検出部205により検出された駐車領域PAの間口Wが所定の閾値以下であるか否かを判定する(ステップS104)。駐車領域PAの間口Wが所定の閾値を超えていた場合(ステップS104:No)、演算部202がサイドミラー15のクローズを指示することなく、駐車支援が継続される。
【0129】
駐車領域PAの間口Wが所定の閾値以下であった場合(ステップS104:Yes)、演算部202は、サイドミラー15のクローズ開始から完了までの間の車両10の予測移動距離を記憶部208から読み出す(ステップS105)。
【0130】
また、演算部202は、左右両側のサイドミラー15a,15bと駐車領域PAの間口Wまでの距離が予測移動距離と等しくなるまでの間の所定位置に、車両10が到達したか否かを判定する(ステップS106)。演算部202は、車両10が上記位置に到達するまで待機する(ステップS106:No)。
【0131】
車両10が上記位置に到達すると(ステップS106:Yes)、演算部202は、その位置においてミラー制御部203に指示を出し、ミラー制御部203はサイドミラー15a,15bのクローズを開始する(ステップS107)。これにより、例えばサイドミラー15a,15bが駐車領域PAの間口Wに到達する前に、サイドミラー15a,15bのクローズ動作が完了する。
【0132】
移動制御部207は、サイドミラー15a,15bのクローズ動作中、及び動作完了後も車両10の制御を継続し、駐車領域PA内の目標位置DPに車両10を駐車させる(ステップS108)。
【0133】
以上により、実施形態の運転支援装置20による運転支援処理が終了する。
【0134】
(概括)
運転支援装置は、測距部および撮像部等の各種センサからの車両の周辺情報に基づいて、車両の運転支援を行う。運転支援装置による駐車支援によれば、ごく狭い駐車領域への駐車も容易に行うことができる。ただし、幅の狭い駐車領域への駐車を試みる場合、車両に設けられたサイドミラーが、近隣の駐車車両等と干渉してしまう恐れがある。
【0135】
上述の特許文献1の技術によれば、入庫の最終段階である直進経路で駐車領域の幅が所定の閾値以下であるか否かを判定し、閾値以下であればサイドミラーをクローズする。しかしながら、入庫の最終段階である直進経路でサイドミラーのクローズを開始しても、サイドミラーが完全に閉じ切るまでに近隣の駐車車両等と接近しすぎてしまい、サイドミラーが接触する恐れがある。また、駐車領域への車両の移動経路によっては、入庫の最終段階で必ずしも直進経路とならない場合があり、そのようなケースには上記技術を適用することが困難である。
【0136】
実施形態の運転支援装置20によれば、駐車領域PAの間口Wが所定の閾値以下である場合、車両10を基準として、駐車領域PAの手前位置であって、車両10の車速と、サイドミラー15のクローズに要する時間と、から得られる位置で、ミラー制御部203によりサイドミラー15のクローズを開始させる。
【0137】
このように、駐車領域PAの手前位置でサイドミラー15のクローズを開始させるので、例えばサイドミラー15が駐車領域PAの間口Wに到達する前に、サイドミラー15のクローズ動作を完了させることができる。したがって、近隣車両等との接触を抑制しつつサイドミラー15を安全にクローズすることができる。
【0138】
実施形態の運転支援装置20によれば、駐車支援により移動中の車両10の位置が、サイドミラー15から駐車領域PAの間口Wまでの距離が予測移動距離と等しくなるまでの間に、サイドミラー15のクローズを開始させる。
【0139】
このように、サイドミラー15から駐車領域PAの間口Wまで、サイドミラー15のクローズ開始からクローズ完了までに車両10が移動する距離が残された状態で、サイドミラー15のクローズを開始させるので、例えばサイドミラー15が駐車領域PAの間口Wに到達する前に、より確実にサイドミラー15のクローズ動作を完了させることができる。
【0140】
実施形態の運転支援装置20によれば、サイドミラー15のクローズ開始前に、サイドミラー15の撮像部16a,16bにより検出された仕切り線LNb,LNc等の目標物に基づいて、駐車領域PAの幅方向における車両10の駐車位置を調整する。
【0141】
このように、サイドミラー15のクローズ開始直前まで、サイドミラー15の撮像部16a,16bによって、駐車領域PAの幅方向端部を示す仕切り線LNb,LNc等の目標物を捉え、それらの検出結果に基づき車両10の駐車位置を調整するので、運転支援装置20による駐車支援の精度を高めることができる。
【0142】
実施形態の運転支援装置20によれば、サイドミラー15のクローズが開始された後は、複数の撮像部16a~16dのうち車両10の進行方向に設けられた撮像部16c,16dが収集した周辺情報に基づいて、車両10の移動経路を調整する。
【0143】
このように、サイドミラー15のクローズが開始され、また、車両10が駐車領域PA内への進入を開始した後は、専ら車両10の進行方向の撮像部16c,16dを用いて車両10の制御を行うことで、例えば駐車領域PAの奥行方向における車両10位置が把握しやすく、運転支援装置20による駐車支援の精度をよりいっそう高めることができる。
【0144】
実施形態の運転支援装置20によれば、車両10の両側の撮像部16a,16bが共に、駐車領域PAの幅方向両側の上記目標物のいずれかをそれぞれ検出可能な位置に車両10が到達すると、サイドミラー15のクローズを開始させる。
【0145】
車両10の駐車領域PAへの進入経路が曲がっている場合等には、車両10両側の撮像部16a,16bが、それぞれ目標物を撮像可能な位置にはずれが生じうる。撮像部16a,16bが共に目標物の一方をそれぞれ撮像可能となるまで待つことで、駐車領域PAの幅方向における車両10の位置をより正確に把握することができ、運転支援装置20による駐車支援の精度をよりいっそう高めることができる。
【0146】
なお、上述の実施形態においては、運転支援装置20が車両10に搭載されていることとしたが、運転支援装置20は必ずしも車両10に搭載されていなくともよい。例えば、運転支援装置が車両から離れた位置で、各種センサから車両の周辺情報を取得して、リモートで車両の運転支援を行ってもよい。
【0147】
また、上述の実施形態においては、車両10の後側方を確認するための後側方確認部がサイドミラー15であることとした。しかし、上述の実施形態が適用可能な構成はサイドミラー15に限られない。例えば、後側方確認部は、車体12前部の左右のドア等に設けられた可倒式のカメラ等であってもよい。この場合、運転者は、可倒式カメラからの後側方を撮像した画像を車室内に設置されたモニタ等で確認することができる。
【符号の説明】
【0148】
10…車両
14…測距部
15…サイドミラー
16…撮像部
20…運転支援装置
201…表示制御部
202…演算部
203…ミラー制御部
204…取得部
205…検出部
206…経路算出部
207…移動制御部
208…記憶部
LNa~LNd…仕切り線
TR…移動経路
PA…駐車領域
W…間口