(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098651
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法
(51)【国際特許分類】
B21H 1/10 20060101AFI20240717BHJP
B60B 3/04 20060101ALI20240717BHJP
B60B 21/02 20060101ALI20240717BHJP
B23P 15/00 20060101ALI20240717BHJP
B21J 9/02 20060101ALI20240717BHJP
B21K 1/38 20060101ALI20240717BHJP
B21J 13/02 20060101ALI20240717BHJP
【FI】
B21H1/10
B60B3/04 D
B60B21/02 Q
B60B3/04 A
B23P15/00 C
B21J9/02 A
B21K1/38
B21J13/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002259
(22)【出願日】2023-01-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】591037373
【氏名又は名称】三菱長崎機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090088
【弁理士】
【氏名又は名称】原崎 正
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 唯幸
(72)【発明者】
【氏名】東 龍一郎
(72)【発明者】
【氏名】森 康永
【テーマコード(参考)】
4E087
【Fターム(参考)】
4E087AA02
4E087BA04
4E087BA18
4E087CA41
4E087CB01
4E087EA49
4E087HA16
4E087HB02
(57)【要約】
【課題】軽金属製の肉厚の中空の筒状素材を用いて、熱間圧延鍛造加工でロールの金型を制御して、ホイールリムの内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を成形し、溶接によらず、ホイールディスクをホイールリムの内周側に取り付けることにある。
【解決手段】成形後のホイールリム2の側周面の板厚とディスク取付けフランジ部21の突出量とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製の筒状素材Wを用い、筒状素材Wの内周側面に、ホイールディスク3を取り付けるためのディスク取付けフランジ部21を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部52aをその側周面に形成したマンドレル52を用い、筒状素材Wを再結晶温度の範囲内の高温に加熱しその内側にマンドレル52を挿入して、主ロール51とマンドレル52との間で肉厚を減少させながら、ホイールリム2の内周側面に、ディスク取付けフランジ部21を突出成形する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法。
【請求項2】
中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のアルミニウム合金のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記アルミニウム合金の筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の300度C~480度Cの高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法。
【請求項3】
中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のマグネシウム合金のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記マグネシウム合金の筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の200度C~400度Cの高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに記載の製造方法で製造され、請求項1~請求項3の何れかのホイールリムの内周側面に、ホイールディスクを取り付けるための円環状のディスク取付けフランジ部を、当該ホイールリムの内側中央に向けて突出形成し、当該ディスク取付けフランジ部にホイールリムの軸心方向に平行な複数のボルト孔を形成したことを特徴とする軽金属製の車両用ホイールリム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、車両が走行するために必要なタイヤが外周側に嵌着される車両用ホイールリムの製造方法及び車両用ホイールリムに係り、特に、軽金属製のシームレスの肉厚の中空の筒状素材を用いて、熱間圧延鍛造加工でロールの金型を制御してホイールリムに成形する軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法及びその製造方法で製造された軽金属製の車両用ホイールリムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両が走行するために必要なタイヤを嵌着する車両用ホイールは、外周側にタイヤが装着される略円筒状のホイールリムと、該ホイールリムの内周側に嵌合されている略円盤状のホイールディスクとから構成されている。
また、この車両用ホイールの製造方法としては、鋳物タイプと塑性加工タイプとが知られている。
鋳物タイプは、車両用ホイールの素材を熔解して鋳型に流し込み、ホイールリム及びホイールディスクの形状及び寸法に仕上げる大量生産向きの製造方法である。この鋳型タイプでは車両用ホイールのホイールリムとホイールディスクが一体化された、いわゆる1ピースタイプのものがある。
これに対して、塑性加工タイプは、長方形の薄平板材を円筒に曲げ加工をおこない、短辺同士を例えば軽く突き合わせて溶接するフラッシュパット溶接し略円筒状薄板のホイールリム素材を製作して、その略円筒状薄板に冷間圧延のスピニング加工をおこない、ホイールリムの形状及び寸法に仕上げる製作方法である。
その後、略円筒状薄板のホイールリムの内部に略円盤状のホイールディスクを挿入し、両者を例えばMIG溶接やTIG溶接等によって接合して製作される、いわゆる2ピースタイプのものがあり、車両用ホイールはこの2ピースタイプのものが主流となっている。
また、自動車などの車両には軽量化が希求されていることから、ホイールリムおよびホイールディスクの双方の素材を軽金属の例えばアルミニウムとすることが主流になりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4543218
【特許文献2】特許第5967920
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記の鋳物タイプの車両用ホイールは、金属組織を圧延しないために組織密度は粗く微細な気泡が残り強度は強くない。このため、ホイールリムを厚くすることで強度を保つことになるが、どうしてもホイールリムの重量が重くなり、走行性能や燃費が悪くなる要因となっていた。
しかも、前記のように製作する鋳物タイプの車両用ホイールは、ホイールディスクとホイールリムが一体化なので個別にメンテを行うことは当然できない。
また、ホイールディスクのセット位置は鋳込んだときのゼロ・イン・アウトで固定されるので車種の変更等には対応できない。
さらに、鋳物タイプは材料として衝撃荷重に弱いために耐久性が低く、車両用ホイールとしての寿命は塑性加工タイプに比べ劣る。
【0005】
塑性加工タイプは、前述したように長方形の薄平板材を円筒に曲げ加工し、その短辺同士を溶接して円筒薄板のホイールリム素材を製作するので、製造時間を要するうえに、しごきは局部に負荷が掛かり、しわ、ひけ、座屈が発生する問題を有している。
ホイールリム素材は、前記のように長方形の薄平板材を円筒に曲げ加工し、その短辺同士を溶接するため、ホイールリムには溶接不良のリスクが常にあると共に、ホイールリムには走行中に繰り返し衝撃が作用するので、溶接部分はその衝撃によって破損し易くなるリスクも常にあった。
円筒薄板の素材を冷間圧延するので、ホイールリムの略円筒状の両端側にフランジ部を成形することは可能であるが、ホイールリムの略円筒状の内側の中間付近の内周側面にはホイールディスクの取付けフランジ部を成形することができず、ホイールリムとホイールディスクは溶接で固定する方法しかなく、ホイールには溶接不良のリスクが常にあった。
また、ホイールリムとホイールディスクは溶接で固定されているため、修理等でホイールリム部、ホイールディスク部を個別に取り外して交換することや、個別のメンテナンスができないなどの構造上の問題もある。
さらに、ホイールリムとホイールディスクは溶接で固定する必要があるため、ホイールリムが溶接に適した素材に限定されていることは、製造面で大きなネックを抱えていた。
【0006】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、軽金属製のシームレスの肉厚の中空の筒状素材を用いて、熱間圧延鍛造加工でロールの金型を制御して、ホイールリムの略円筒状の内側の中間付近の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を成形し、溶接によらず、ホイールディスクをホイールリムの内周側に取り付けることができる軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法及びその製造方法で製造された軽金属製の車両用ホイールリムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を達成するために、請求項1の発明に係る軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法は、中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその側周面に形成したマンドレルを用い、
上記筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明に係る軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法は、中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のアルミニウム合金のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記アルミニウム合金の筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の300度C~480度Cの高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明に係る軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法は、中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のマグネシウム合金のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記マグネシウム合金の筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の200度C~400度Cの高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4の発明に係る軽金属製の車両用ホイールリムは、請求項1~請求項3の何れかに記載の製造方法で製造され、請求項1~請求項3の何れかのホイールリムの内周側面に、ホイールディスクを取り付けるための円環状のディスク取付けフランジ部を、当該ホイールリムの内側中央に向けて突出形成し、当該ディスク取付けフランジ部にホイールリムの軸心方向に平行な複数のボルト孔を形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係る軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法及びその製造方法で製造された軽金属製の車両用ホイールリムによれば、次のような効果を奏することができる。
1)従来の薄板素材を用いた塑性加工タイプと異なり、成形後のホイールリムの側周面の板厚とホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のシームレスの中空の筒状素材を用いて、熱間圧延鍛造加工でロールの金型を制御することで、ホイールリムの略円筒状の内側の中間付近の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を成形することができる。これにより、このディスク取付けフランジ部を利用して、溶接によらずボルトナットにより容易に、略円盤状のホイールディスクをホイールリムの内周側に嵌合して取り付けることができる。
2)ホイールディスクはホイールリムの内周側に、溶接で固定されてなく、着脱自在なボルトナットにより取り付けられているので、ホイールリム部とホイールディスク部を個別に交換でき、デザイン性の観点からも、バリエーションが多く、デザイン性の自由度に富んだホイールリム構造でメンテナンス性も向上させることができる。
3)同じ車両用ホイールの型式でも車種によってホイールディスクのセット位置が異なり、ホイールディスクのゼロセット・インセット・アウトセットなどの取付け位置がある場合にも、ホイールリムとホイールディスクは溶接で固定されていないために、それぞれに対応したホイールディスクを自由に変更でき、対応できるようになり、実用性が良い。
4)この発明に係るホイールリムは、従来の塑性加工タイプと異なり溶接箇所が一切ないため、溶接不良のリスクや、溶接部分の衝撃による破損し易くなるリスクも皆無にすることができる。
5)この発明に係るホイールリムは、熱間鍛造で製造されるため、金属組織を圧延するために組織密度があり円周状に密な鍛流線を形成させて、力学特性の高い軽量のホイールリムを製作することができる。
6)この発明に係るホイールリムは、従来の薄板素材を用いた冷間加工の塑性加工タイプと異なり、熱間鍛造で製造されるため、シームレスの肉厚の中空筒状素材を用いて圧延加工することができ、大量生産向きでコスト安の熱間鍛造ホイールリムを製造することができる。
7)この発明に係るホイールリムは、溶接箇所が一切ないため、ホイールリムは溶接に適した素材に限定されることがなく、従来の塑性加工タイプと異なり、ホイールリムの素材が製造面で大きなネックになることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明を実施するための形態を示すホイールリムの断面図である。
【
図2】この発明を実施するための形態を示すホイールディスクのインセット時のホイールリムの断面図である。
【
図3】この発明を実施するための形態を示すホイールディスクのゼロセット時のホイールリムの断面図である。
【
図4】この発明を実施するための形態を示すホイールディスクのアウトセット時のホイールリムの断面図である。
【
図5】(A)はこの発明を実施するための形態を示すホイールリム熱間回転鍛造装置によるホイールリムの初期の製造工程の概略斜視図である。 (B)は同図(A)の概略側断面図である。
【
図6】(A)はこの発明を実施するための形態を示すホイールリム熱間回転鍛造装置によるホイールリムの中期初めの製造工程の概略斜視図である。 (B)は同図(A)の概略側断面図である。
【
図7】(A)はこの発明を実施するための形態を示すホイールリム熱間回転鍛造装置によるホイールリムの中期の製造工程の概略斜視図である。 (B)は同図(A)の概略側断面図である。
【
図8】(A)はこの発明を実施するための形態を示すホイールリム熱間回転鍛造装置によるホイールリムの終期の製造工程の概略斜視図である。 (B)は同図(A)の概略側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に記載の発明を実施するための形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
【0014】
図1~
図4において、軽金属製の車両用ホイール1は、外周側にタイヤが装着される略円筒状の軽金属製のホイールリム2と、該ホイールリム2の内周側に嵌合され自動車の車軸に取り付けられる略円盤状のホイールディスク3とから構成される。
【0015】
軽金属製の車両用ホイール1は、ホイールリム2とホイールディスク3とが一体化されていない、いわゆる2ピースタイプのものである。ホイールリム2の内周側に嵌合されるホイールディスク3は、溶接などではなく、ボルトナット4によりホイールリム2の内周側に嵌合されて取り付けられる。このため、ホイールリム2の内周側面には円環状のディスク取付けフランジ部21が突出形成されている。
【0016】
ホイールリム2は、例えばアルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽金属製で、熱間回転鍛造により製造されている。軽金属製のホイールリム2は、熱間回転鍛造により製造されるので、金属組織を圧延するために組織密度があり円周状に密な鍛流線を形成させて、力学特性の高い軽量のホイールリムになっている。
【0017】
ホイールディスク3は、ホイールリム2の内周側面に形成した円環状のディスク取付けフランジ部21を通じて、ボルトナット4により取り付けるようになっている。このため、ホイールディスク3が傷ついた場合には、ボルトナット4を取り外して傷ついたホイールディスク3を新しいホイールディスク3と容易に交換することができるようになっている。
【0018】
略円筒状のホイールリム2の内周側面には、ホイールディスク3をボルトナット4により取り付けるための円環状のディスク取付けフランジ部21が、その円周方向の全周にわたってホイールリム2の内側の中央に向けて突出した状態で形成されている。円環状のディスク取付けフランジ部21にはその円周方向に複数のボルト孔21aが穿孔形成されている。複数の各ボルト孔21aはホイールリム2の内側の中心軸CL(
図1~
図4では横軸)の方向に平行に形成されている。
【0019】
略円筒状のホイールリム2の内周側面に形成されたディスク取付けフランジ部21は、上述したようにその円周方向に複数のボルト孔21aが穿孔される。このため、円環状のディスク取付けフランジ部21のホイールリム2の内周側面からの突出量Sは、ボルト孔21aの直径よりも十分に大きい。
【0020】
この円環状のディスク取付けフランジ部21は、上述したように、ホイールリム2と一体となって、熱間回転鍛造により製造されるので、金属組織を圧延するために組織密度があり円周状に密な鍛流線が形成されて力学特性が高い。このため、ディスク取付けフランジ部21に形成されるボルト孔21aの周囲の強度も十分に高い。
【0021】
ディスク取付けフランジ部21に形成された各ボルト孔21aは、略円筒状のホイールリム2の内側の中心軸CL(
図1~
図4では横軸)に平行になるようにそれぞれ形成されている。各ボルト孔21aには、ホイールディスク3をホイールリム2のディスク取付けフランジ部21に連結するボルトナット4が挿通される。
【0022】
ボルトナット4は、ホイールディスク3の周縁に形成された図示しないボルト孔と、ディスク取付けフランジ部21に形成されたボルト孔21aとを挿通して、ホイールディスク3をホイールリム2の内周側に嵌合し締め付けて取り付け、ホイールディスク3とホイールリム2とを連結する。
【0023】
略円筒状のホイールリム2の内周側面に突出形成されたディスク取付けフランジ部21の突出形成箇所は、略円筒状のホイールリム2の横向きとなる内周側面に対して直交方向の縦中心線VCLを基準として、ホイールディスク3のインセット31、ゼロセット32、アウトセット33(
図2~
図4参照)で各々その位置が異なっている。この縦中心線VCLは略円筒状のホイールリム2の開口する両端の中央に位置する。
【0024】
図2に示すインセット31では、略円筒状のホイールリム2の外側開口端2aと縦中心線VCLより外側寄りとの間に、ディスク取付けフランジ部21は突出形成されている。このとき、略円筒状のホイールリム2の縦中心線VCLとディスク取付けフランジ部21に取り付けられるホイールディスク3の取付面31aとのインセット量pは
図2に示すようになる。
【0025】
図3に示すゼロセット32では、略円筒状のホイールリム2の縦中心線VCLより少し外側寄りに、ディスク取付けフランジ部21は突出形成されている。このとき、略円筒状のホイールリム2の縦中心線VCLとディスク取付けフランジ部21に取り付けられるホイールディスク3の取付面32aとは
図3に示すように同一位置になるので、インセット量はゼロである。
【0026】
図4に示すアウトセット33では、略円筒状のホイールリム2の内側開口端2bと縦中心線VCLより内側寄りとの間に、ディスク取付けフランジ部21は突出形成されている。このとき、略円筒状のホイールリム2の縦中心線VCLとディスク取付けフランジ部21に取り付けられるホイールディスク3の取付面33aとのアウトセット量qは
図4に示すようになる。
【0027】
次に、
図5~
図8に示すホイールリム熱間回転鍛造装置5は、例えばアルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽量な中空の円筒形の筒状素材Wを用いて、熱間回転鍛造によりホイールリム2を製造する装置である。
【0028】
中空の筒状素材Wの肉厚の厚みTは、ホイールディスク3を取り付けるためのディスク取付けフランジ部21の突出量Sと、当該ディスク取付けフランジ部21の形成箇所でのホイールリム2の内周側面の板厚tとを加えた厚み(t+S)より大きい。中空の筒状素材Wは、再結晶温度の範囲内(例えばアルミニウム合金では300度C~480度C、マグネシウム合金では200度C~400度C)の高温に加熱して柔らかい状態にして熱間鍛造で成形される。
【0029】
このホイールリム熱間回転鍛造装置5は、例えばアルミニウム合金の中空の筒状素材Wを回転させる主ロール51と、この主ロール51と対面し、主ロール51との間に筒状素材Wを挟んで加圧して径外方向に圧延するマンドレル52と、筒状素材Wの真円度を維持しつつ、この筒状素材Wが水平方向に移動しないように保持する左右のセンタリングロール53と、この筒状素材Wを上下方向から挟んでこの筒状素材Wの高さ(幅)を整えて保持する上下のアキシャルロール54とで主に構成されている。
【0030】
主ロール51は、中空の筒状素材Wの外周側面に回転自在に接触して加圧する。主ロール51は、モータなどの駆動装置が接続され回転駆動するようになっている。主ロール51が回転することによって、主ロール51と接触した中空の筒状素材Wが回転するようになる。筒状素材Wの外周側面に接触する主ロール51の外周側面の全周は、同一断面形状からなる円環状金型になっている。
【0031】
この主ロール51の外周側面の円環状金型は、その筒状素材Wの外周側面に接触する面が成形後のホイールリム2の外周側面と凹凸係合する形状になっている。つまり、主ロール51の円環状金型の凸部分に接触する成形後のホイールリム2は凹部分となり、逆に、主ロール51の円環状金型の凹部分に接触する成形後のホイールリム2は凸部分となる。
【0032】
主ロール51の外周側面の円環状金型は通常、例えば主ロール51の垂直な軸心に対して中央部より上部側と、中央部より下部側とで、異なった形状を有している。つまり、主ロール51の外周側面の円環状金型は、上下非対称の断面形状を有している。これにより、筒状素材Wから成形されたホイールリム2の外周面に上下非対称の凹凸形状が形成される。
【0033】
マンドレル52は、主ロール51より小径の円筒形状であって、主ロール51と中空の筒状素材Wの肉厚を間に挟んで対面する位置(中空の筒状素材Wの内周面側)に回転自在に設置されている。マンドレル52は、水平方向(半径方向)に移動することができ、筒状素材Wの内周側面に接触して、筒状素材Wの内周側面を挟んで向かい側にある主ロール51に向けて当該筒状素材Wの内周側面を加圧する。
【0034】
マンドレル52を筒状素材Wの内周側面に接触させると、筒状素材Wは主ロール51とマンドレル52によって内外から挟圧され、回転する主ロール51により筒状素材Wは回転し、回転する筒状素材Wにより、マンドレル52も従動回転するようになっている。接触したマンドレル52を主ロール51に向けてさらに移動させることで、筒状素材Wに対する加圧が行われ、筒状素材Wの側断面の肉厚が減少し、減少に反比例して筒状素材Wの外径は大きくなる。
【0035】
筒状素材Wの内周側面に接触するマンドレル52の外周側面の全周は、同一断面形状からなる円環状金型になっている。マンドレル52の外周側面の円環状金型には、ホイールディスク3を取り付けるためのディスク取付けフランジ部21を突出成形するために、ディスク取付けフランジ部成形用凹部52aがその側周面に形成されている。
【0036】
このマンドレル52の外周側面の円環状金型は、その筒状素材Wの内周側面に接触する面が成形後のホイールリム2の内周側面と凹凸係合する形状になっている。このように、マンドレル52の円環状金型の凸部分に接触する成形後のホイールリム2の内周側面は凹部分となり、逆に、マンドレル52の円環状金型の凹部分に接触する成形後のホイールリム2の内周側面は凸部分となる。
【0037】
特に、マンドレル52の円環状金型のディスク取付けフランジ部成形用凹部52aの凹部分に接触する成形後のホイールリム2の内周側面び全周には、ディスク取付けフランジ部21が突出形成されることになる。ホイールリム2の内周側面からのディスク取付けフランジ部21の突出量Sの大きさは、ディスク取付けフランジ部成形用凹部52aの凹部分の窪みの深さSと同じである。この窪みの深さSを調整することで、ホイールリム2の内周側面からのディスク取付けフランジ部21の突出量Sの大きさを調整することができる。
【0038】
ホイールリム2の内周側面に形成されるディスク取付けフランジ部21の位置は、インセット31、ゼロセット32、アウトセット33で異なる。このため、マンドレル52の円環状金型に形成されたディスク取付けフランジ部成形用凹部52aの位置も、インセット31、ゼロセット32、アウトセット33で異なるようになっている。
【0039】
センタリングロール53は、円筒形状であって、マンドレル52と対面するように左右一対で構成され、筒状素材Wの外周側面側に回転自在に固定されている。すなわち、筒状素材Wが、外周側面のセンタリングロール53と内周側面のマンドレル52との間を通過するようになっており、周方向に延びた筒状素材Wの側面を加圧することで、成形されるホイールリム2の真円度の調整を行っている。
【0040】
アキシャルロール54は、円錐形状であって、主ロール51と対面する位置に上下一対、傾斜状態で配置されている。上下一対のアキシャルロール54の側面は、筒状素材Wの上端面及び下端面を挟むように接触している。接触したアキシャルロール54は、筒状素材Wの回転により回転し、上下高さ方向の圧下を行うようになっている。また、筒状素材Wの上下方向の移動を抑制し、高さ方向の形状を保持している。
【0041】
続いて、上記のホイールリム熱間回転鍛造装置5を用いて、熱間回転鍛造で中空の軽金属製の筒状素材Wを圧延する熱間回転鍛造ホイールリムの製造方法(
図5~
図8参照)について説明する。
【0042】
素材として使用される軽金属製の筒状素材Wはその側断面の厚みTが、ホイールディスク3を取り付けるための円環状のディスク取付けフランジ部21の突出量Sと、当該ディスク取付けフランジ部21の形成箇所での成形後のホイールリム2の内周側面の板厚tと、を加えた厚み(S+t)<Tより大きい肉厚を有している。軽金属製の筒状素材Wにはシームレスの円筒形が使用される。シームレスのため金属同士の継ぎ目部分がなく、熱間回転鍛造で圧延されるときやホイールリム2として使用中に、継ぎ目部分の強度が低下したりクラックなどが発生することはない。
【0043】
また、筒状素材Wには、例えばアルミニウム合金、マグネシウム合金等の軽金属製が使用される。さらに、これらの軽金属製の筒状素材Wは当該筒状素材Wの再結晶温度の範囲内の高温に加熱して柔らかい状態にして使用される。例えばアルミニウム合金からなる中空の円筒形の筒状素材Wの場合では、加熱炉で所定の再結晶温度の範囲内まで加熱され、300度C~480度Cの高温で熱間鍛造される。また、マグネシウム合金からなる中空の円筒形の筒状素材Wの場合では、加熱炉で所定の再結晶温度の範囲内まで加熱され、200度C~400度Cの高温で熱間鍛造される。
【0044】
軽金属製の素材が中空の筒状素材Wでない例えば円柱素材の場合、この円柱素材を所定の再結晶温度の範囲内まで加熱し、加熱した円柱素材は上下一対に配置された金型を備えたプレス機に導入される。加熱された円柱素材は、上側にある金型の圧下によって、予め決定された外形の素材に形成される。さらに、その素材の中央部を穿孔し、予め決定された肉厚の中空の円筒形の状素材Wに加工される。
【0045】
上述したように、加熱炉で所定の再結晶温度の範囲内の高温まで加熱された中空の円筒形の軽金属製の筒状素材Wは、ホイールリム熱間回転鍛造装置5に設置される。このホイールリム熱間回転鍛造装置5では、中空の円筒形の筒状素材Wの外周側面に主ロール51を接触させ、筒状素材Wの中空の内側にマンドレル52に上方から挿入し、筒状素材Wの内周側面にマンドレル52を接触させる(
図5参照)。
【0046】
このとき、上述したように、軽金属製の筒状素材Wの外周側面に接触する主ロール51の外周側面の全周は、円環状金型になっている。また筒状素材Wの内周側面に接触するマンドレル52の外周側面の全周も、円環状金型になっている。つまり、中空の円筒形の筒状素材Wの外周側面は、主ロール51の外周側面の円環状金型に接触し、筒状素材Wの内周側面はマンドレル52の外周側面の円環状金型に接触する。
【0047】
ところで、軽金属製の筒状素材Wの内周側面に接触するマンドレル52の外周側面の円環状金型には、上述したように、ディスク取付けフランジ部成形用凹部52aが形成されている。このディスク取付けフランジ部成形用凹部52aの窪みの深さSは、ディスク取付けフランジ部21の突出量Sと同じである。
【0048】
ホイールリム熱間回転鍛造装置5に設置された中空の筒状素材Wは、主ロール51の回転駆動により回転し、主ロール51の対面に筒状素材Wを挟んで備えられたマンドレル52を主ロール51に向けて加圧移動させることで、筒状素材Wは駆動回転する主ロール51と従動回転するマンドレル52によって挟圧されて加圧され圧延が進む(
図6参照)。
【0049】
当初は肉厚な厚みTの側断面を有するの円筒形の軽金属製の筒状素材Wは、挟圧されて加圧されることにより肉厚が減少する一方で、円筒形の筒状素材Wの外径は次第に大きくなり(
図7参照)、所定のホイールリム2の形状・寸法の圧延精度になるまで、筒状素材Wを回転させながら圧延を行う(
図8参照)。この熱間回転鍛造での圧延時間は、高温に加熱して柔らかい状態にして回転鍛造されるため、1個の製品当たり1~2分程度であり、大量生産に適している。
【0050】
ところで、軽金属製の筒状素材Wの熱間回転鍛造での圧延が進み、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大するにつれて、ホイールリム2の内周側面には、マンドレル52の外周側面の円環状金型のディスク取付けフランジ部成形用凹部52aにより、所定の突出量Sを有する円環状のディスク取付けフランジ部21が内周側に向けて突出形成されることになる。
【0051】
熱間回転鍛造で所定の高さh、外径rの形状・寸法に圧延されて成形されたホイールリム2は、熱処理後、ホイールリム2の内周側面に形成された円環状のディスク取付けフランジ部21に複数のボルト孔21aが穿設された後、製品検査を経て、最終の車両用ホイールリムの製品となる。
【0052】
なお、この発明は上記発明を実施するための形態に限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1 軽金属製の車両用ホイール
2 ホイールリム
2a 外側開口端
2b 内側開口端
21 ディスク取付けフランジ部
21a ボルト孔
3 ホイールディスク
31 インセット
31a 取付面
32 ゼロセット
32a 取付面
33 アウトセット
33a 取付面
4 ボルトナット
5 ホイールリム熱間回転鍛造装置
51 主ロール
52 マンドレル
52a ディスク取付けフランジ部成形用凹部
53 センタリングロール
54 アキシャルロール
W 筒状素材
CL 中心軸
VCL 縦中心線
T 筒状素材の側断面の肉厚な厚み
S ディスク取付けフランジ部の突出量
t 成形後のホイールリムの内周側面の板厚
p インセット量
q アウトセット量
h ホイールリムの高さ
r ホイールリムの外径
【手続補正書】
【提出日】2024-03-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に断面非対称に、ホイールディスクを取り付けるための金属組織を圧延するために組織密度があり円周状に密な鍛流線が形成されたディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法。
【請求項2】
中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のアルミニウム合金のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記アルミニウム合金の筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の300度C~480度Cの高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に断面非対称に、ホイールディスクを取り付けるための金属組織を圧延するために組織密度があり円周状に密な鍛流線が形成されたディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法。
【請求項3】
中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のマグネシウム合金のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記マグネシウム合金の筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の200度C~400度Cの高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に断面非対称に、ホイールディスクを取り付けるための金属組織を圧延するために組織密度があり円周状に密な鍛流線が形成されたディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0001
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0001】
この発明は、車両が走行するために必要なタイヤが外周側に嵌着される車両用ホイールリムの製造方法に係り、特に、軽金属製のシームレスの肉厚の中空の筒状素材を用いて、熱間圧延鍛造加工でロールの金型を制御してホイールリムに成形する軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法に関するものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、軽金属製のシームレスの肉厚の中空の筒状素材を用いて、熱間圧延鍛造加工でロールの金型を制御して、ホイールリムの略円筒状の内側の中間付近の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を成形し、溶接によらず、ホイールディスクをホイールリムの内周側に取り付けることができる軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法を提供することにある。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
以上の課題を達成するために、請求項1の発明に係る軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法は、中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に断面非対称に、ホイールディスクを取り付けるための金属組織を圧延するために組織密度があり円周状に密な鍛流線が形成されたディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
請求項2の発明に係る軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法は、中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のアルミニウム合金のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記アルミニウム合金の筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の300度C~480度Cの高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に断面非対称に、ホイールディスクを取り付けるための金属組織を圧延するために組織密度があり円周状に密な鍛流線が形成されたディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項3の発明に係る軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法は、中空の筒状素材の外周側を成形する駆動の主ロールと当該筒状素材の内側に挿入されて内周側を成形する回転自在な従動のマンドレルとを使用して車両用熱間回転鍛造ホイールリムを製造するにあたり、
上記筒状素材に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量と当該ディスク取付けフランジ部の形成箇所での成形後のホイールリムの内周側面の板厚とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のマグネシウム合金のシームレスの中空の筒状素材を用い、
上記筒状素材の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を突出成形する、ディスク取付けフランジ部成形用凹部をその外周側面に形成したマンドレルを用い、
上記マグネシウム合金の筒状素材を当該筒状素材の再結晶温度の範囲内の200度C~400度Cの高温に加熱して柔らかい状態したその内側に上記マンドレルを挿入して、駆動している上記主ロールと当該筒状素材の内周側面を該主ロールに向けて加圧する回転自在な従動の当該マンドレルとの間で当該筒状素材のホイールリム肉厚を減少させながら、ホイールリム径を熱間圧延回転鍛造して拡大する過程で、当該マンドレルの側周面に形成した上記ディスク取付けフランジ部成形用凹部で、当該筒状素材のホイールリムの内周側面に断面非対称に、ホイールディスクを取り付けるための金属組織を圧延するために組織密度があり円周状に密な鍛流線が形成されたディスク取付けフランジ部を突出成形して所定のホイールリム形状・寸法にすることを特徴とする。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
この発明に係る軽金属製の車両用熱間回転鍛造ホイールリム製造方法によれば、次のような効果を奏することができる。
1)従来の薄板素材を用いた塑性加工タイプと異なり、成形後のホイールリムの側周面の板厚とホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部の突出量とを加えた厚みより大きい肉厚を有する軽金属製のシームレスの中空の筒状素材を用いて、熱間圧延鍛造加工でロールの金型を制御することで、ホイールリムの略円筒状の内側の中間付近の内周側面に、ホイールディスクを取り付けるためのディスク取付けフランジ部を成形することができる。これにより、このディスク取付けフランジ部を利用して、溶接によらずボルトナットにより容易に、略円盤状のホイールディスクをホイールリムの内周側に嵌合して取り付けることができる。
2)ホイールディスクはホイールリムの内周側に、溶接で固定されてなく、着脱自在なボルトナットにより取り付けられているので、ホイールリム部とホイールディスク部を個別に交換でき、デザイン性の観点からも、バリエーションが多く、デザイン性の自由度に富んだホイールリム構造でメンテナンス性も向上させることができる。
3)同じ車両用ホイールの型式でも車種によってホイールディスクのセット位置が異なり、ホイールディスクのゼロセット・インセット・アウトセットなどの取付け位置がある場合にも、ホイールリムとホイールディスクは溶接で固定されていないために、それぞれに対応したホイールディスクを自由に変更でき、対応できるようになり、実用性が良い。
4)この発明に係るホイールリムは、従来の塑性加工タイプと異なり溶接箇所が一切ないため、溶接不良のリスクや、溶接部分の衝撃による破損し易くなるリスクも皆無にすることができる。
5)この発明に係るホイールリムは、熱間鍛造で製造されるため、金属組織を圧延するために組織密度があり円周状に密な鍛流線を形成させて、力学特性の高い軽量のホイールリムを製作することができる。
6)この発明に係るホイールリムは、従来の薄板素材を用いた冷間加工の塑性加工タイプと異なり、熱間鍛造で製造されるため、シームレスの肉厚の中空筒状素材を用いて圧延加工することができ、大量生産向きでコスト安の熱間鍛造ホイールリムを製造することができる。
7)この発明に係るホイールリムは、溶接箇所が一切ないため、ホイールリムは溶接に適した素材に限定されることがなく、従来の塑性加工タイプと異なり、ホイールリムの素材が製造面で大きなネックになることを回避することができる。