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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098665
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】面木
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/10 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
E21D11/10 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002284
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001151
【氏名又は名称】あいわ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】巽 義知
(72)【発明者】
【氏名】関根 一郎
(72)【発明者】
【氏名】若竹 亮
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155BB02
2D155CA03
2D155DA08
2D155KB09
2D155KB10
(57)【要約】
【課題】既設コンクリートの面取り部にノロが流出するのを抑制し、流出した場合であっても、既設コンクリートの面取り部に付着したノロを視認・剥がしやすい面木を提供すること。
【解決手段】既設コンクリート30と新設コンクリート31との打継目に用いられる面木1に関し、既設コンクリート30の面取り部300に接する面取接触部11と、新設コンクリート31の面取り部310を形成する面取形成部12とを有し、面取接触部11は凸部13を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設コンクリートと新設コンクリートとの打継目に用いられる面木であって、
前記既設コンクリートの面取り部に接する面取接触部と、
前記新設コンクリートの面取り部を形成する面取形成部と、を有し、
前記面取接触部は、凸部を備える
ことを特徴とする面木。
【請求項2】
前記凸部は前記打継目の長手方向に連続して形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の面木。
【請求項3】
前記凸部は、前記面取接触部の前記新設コンクリート側に設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の面木。
【請求項4】
前記凸部は打継方向に複数設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の面木。
【請求項5】
前記複数設けられているうちの凸部の一つは、前記面取接触部の前記新設コンクリート側に設けられている
ことを特徴とする請求項4に記載の面木。
【請求項6】
前記凸部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3に記載のうちいずれか1項に記載の面木。
【請求項7】
前記面取接触部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の面木。
【請求項8】
前記凸部は打継方向に複数設けられており、
前記複数設けられている凸部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3に記載のうちいずれか1項に記載の面木。
【請求項9】
前記面取接触部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されている
ことを特徴とする請求項8に記載の面木。
【請求項10】
前記凸部は打継方向に複数設けられており、
前記複数設けられているうちの凸部の一つは、前記面取接触部の前記新設コンクリート側に設けられており、
前記複数設けられている凸部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3に記載のうちいずれか1項に記載の面木。
【請求項11】
前記面取接触部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されている
ことを特徴とする請求項10に記載の面木。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既設コンクリートと新設コンクリートとの打継目に面取り部を形成するために用いられる面木に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの内周面に覆工コンクリートを打設するには、地山を掘り進めながら、坑口側からトンネル軸方向に順次所定スパンずつコンクリートを打ち継いでいき、角欠けを防ぐために、既設コンクリートと新設コンクリートとの打継部分を面取りして目地を形成することが多い。
【0003】
例えば、特許文献1には、トンネルの内周面と型枠体との間に形成された打設空間にコンクリートを打設し、型枠体のトンネル軸方向の一端部には、打設済みの覆工コンクリートの内周面に押し付けられるラップ部を形成し、ラップ部側の打設済みの覆工コンクリートと打設空間との間にゴム面木を配置し、打設空間にコンクリートを打ち込むことにより、打設済みの覆工コンクリートと新設の覆工コンクリートとの打継部分に面取り部を形成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-49156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コンクリートを打ち継ぐと、新設コンクリートの端部から既設コンクリートの面取り部へ、打設したコンクリートの水分やモルタル分(以下、「ノロ」という)が発生し流出することがある。上記特許文献1に開示されているようなゴム面木を用いた場合には、流れ出したノロが、既設コンクリートの面取り部と面木との間に浸入することがある。
【0006】
脱型後、既設コンクリート側へ流出して面取り部に付着したノロは平滑であり、視認しにくくて除去されずに残ったままになり、温度や湿度の変化による体積の増減等で付着したものが浮き上がり、剥落することがある。
よって、頻繁な点検が必要になるばかりか、トンネル内を通行する人や車両に当たって重大な事故を引き起こす恐れがある。
【0007】
発明者らは、ノロが、既設コンクリートの面取り部と面木との間に浸入するのは、面木の既設コンクリートの面取り部に接触する面が平滑なので、生じ得るという知見を得た。
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、既設コンクリートの面取り部にノロが流出するのを抑制し、また、流出した場合であっても、既設コンクリートの面取り部に付着したノロを視認・剥がしやすい面木を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願請求項1に係る発明は、既設コンクリートと新設コンクリートとの打継目に用いられる面木であって、前記既設コンクリートの面取り部に接する面取接触部と、前記新設コンクリートの面取り部を形成する面取形成部と、を有し、前記面取接触部は、凸部を備えることを特徴とする面木である。
【0010】
本願請求項2に係る発明は、前記凸部は前記打継目の長手方向に連続して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の面木である。
【0011】
本願請求項3に係る発明は、前記凸部は、前記面取接触部の前記新設コンクリート側に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の面木である。
【0012】
本願請求項4に係る発明は、前記凸部は打継方向に複数設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の面木である。
【0013】
本願請求項5に係る発明は、前記複数設けられているうちの凸部の一つは、前記面取接触部の前記新設コンクリート側に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の面木である。
【0014】
本願請求項6に係る発明は、前記凸部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載のうちいずれか1項に記載の面木である。
【0015】
本願請求項7に係る発明は、前記面取接触部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されていることを特徴とする請求項6に記載の面木である。
【0016】
本願請求項8に係る発明は、前記凸部は打継方向に複数設けられており、前記複数設けられている凸部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載のうちいずれか1項に記載の面木である。
【0017】
本願請求項9に係る発明は、前記面取接触部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されていることを特徴とする請求項8に記載の面木である。
【0018】
本願請求項10に係る発明は、前記凸部は打継方向に複数設けられており、前記複数設けられているうちの凸部の一つは、前記面取接触部の前記新設コンクリート側に設けられており、前記複数設けられている凸部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3に記載のうちいずれか1項に記載の面木である。
【0019】
本願請求項11に係る発明は、前記面取接触部は、前記面木の本体部より軟質な材料で形成されていることを特徴とする請求項10に記載の面木である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、既設コンクリートの面取り部にノロが流出するのを凸部で遮断して抑制することができる。
ノロが流出したとしても、面木の凸部に隣接して形成される凹部に溜まって硬化するので、既設コンクリートの面取り部にノロによる凹凸が形成され、硬化したノロを視認できて除去が可能となる。また打設後、面木の除去によってノロ(例えば比較的付着力が小さい軽微なもの)を剥がすことができる。
【0021】
加えて、凸部を打継目の長手方向に連続して形成することにより、ノロが漏れやすい凸部の切れ目を少なくし、流出抑制効果をより高めることができる。
【0022】
加えて、凸部を面取接触部の新設コンクリート側に設けると、既設コンクリートの面取り部に流出しようとするノロを早期に遮断しノロの侵入を少なくすることができる。
【0023】
加えて、凸部が打継方向に複数設けられることにより、ノロの流出を抑制することをより高めることができる。
また、新設コンクリートから流出したノロが既設コンクリートの面取り部と面取接触部との間に浸入しても、ノロが複数の凸部の間で挟まった状態で存在するので、面木を取り外す際に、凸部の間のノロが凸部に挟まれ引っ張られることになるので、ノロ(例えば比較的付着力が小さい軽微なもの)も剥がれることになり、その後の対応の負担も少なくすることができる。
【0024】
加えて、複数設けられている凸部の一つを、面取接触部の新設コンクリート側に設けると、ノロの流出を早期に確実に遮断しノロの侵入を少なくすることができる。
【0025】
加えて、凸部を面木の本体部より軟質な材料で形成すると、凸部がつぶれて既設コンクリートの面取り部に確実に凸部を圧着させることができ、これにより、ノロを遮断する効果が高まる。
また、本体部が、凸部よりも硬質であって変形しにくいので、打継目の面取り部が所定の形状に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1の実施形態に係る施工中のトンネルの斜視図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るトンネルの要部断面図(トンネル軸方向の要部断面図)である。
図3】本発明の第1の実施形態を示す面木の断面図(面木の長手方向に直交方向(トンネル軸方向)の断面図)である。
図4】本発明の第1の実施形態を示す面木の側面図(既設コンクリート側からみた側面図)である。
図5】本発明の第1の実施形態に係る覆工コンクリート打設工程を示す要部断面図(トンネル軸方向の要部断面図)である。
図6】本発明の第1の実施形態に係るトンネルの要部断面図(トンネル軸方向の要部断面図)である。
図7】本発明の第2の実施形態を示す面木の断面図(面木の長手方向に直交方向(トンネル軸方向)の断面図)である。
図8】本発明の第3の実施形態を示す面木の断面図(面木の長手方向に直交方向(トンネル軸方向)の断面図)である。
図9】本発明の第4の実施形態に係る施工中のトンネルの要部断面図(トンネル軸方向の要部断面図)である。
図10】本発明の第4の実施形態を示す面木の断面図(面木の長手方向に直交方向(トンネル軸方向)の断面図)である。
図11】本発明の第5の実施形態を示す面木の側面図(既設コンクリート側からみた側面図)である。
図12】本発明の第6の実施形態を示す面木の断面図(面木の長手方向に直交方向(トンネル軸方向)の断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照する等して説明する。
なお、本発明は、実施形態に限定されないことはいうまでもない。
【0028】
[第1の実施形態]
以下、本発明の第1の実施形態を、図1乃至図5を参照して詳細に説明する。
【0029】
第1の実施形態は、本発明をトンネルの覆工コンクリートの打設に適用したものである。
【0030】
図1は施工中のトンネルの斜視図、図2はトンネルの要部断面図、図3は面木の断面図、図4は面木の側面図、図5は覆工コンクリート打設工程を示す要部断面図である。
【0031】
面木1は、トンネル2の覆工コンクリート3において、既設コンクリート30と新設コンクリート31との打継目に用いられる(図5)。
【0032】
図1に示すように、トンネル2の覆工コンクリート3は、図示しない地山の内側においてトンネル2の軸方向に移動可能なセントル4を用いて、トンネル2の坑口から切羽側に向かって所定スパンずつ打ち継いで施工される。図1では3スパンの既設コンクリート30が打設され、4スパン目を打設すべくセントル4が配置された状態を示している。
【0033】
セントル4には、打設したコンクリートの状態を確認するための複数の点検窓40が周方向に間隔をあけて形成されている。点検窓40は、内側から開閉可能な蓋で閉鎖されている。
なお、覆工コンクリート3は図示しない地山の内側に打設しているが、地山に吹付けコンクリートを施工したり一次覆工をしたりしたものにさらに打設するようにしても良い。
【0034】
図2に示すように、地山20の内周側に打設された覆工コンクリート3の内周面において、既設コンクリート30と新設コンクリート31の打継目部分に断面二等辺三角形状の目地32が形成される。
【0035】
目地32は、既設コンクリート30の切羽側端部の角部に形成された断面が直角三角形状の面取り部300と、新設コンクリート31の坑口側端部の角部に形成された断面が直角三角形状の面取り部310とを備える。
【0036】
目地32を形成するのに用いる面木1は、従来の面木と同様にゴム等の柔軟な素材より成り、図3及び図4に示すように、目地32の断面と略同じ形状の断面、及び、覆工コンクリート3の内周面の周長と同じ長さを有する。
面木1を所定長さで分割して形成しておき連続して設けることで覆工コンクリート3の内周面の周長に相当するように設けるようにしても良い。
【0037】
面木1の底面は、セントル4の外周面に支持される被支持面10である。
また、面木1の一方の側面は、既設コンクリート30の面取り部300に接する面取接触部11を備え、他方の側面は、新設コンクリート31の面取り部310を形成する面取形成部12を備える。
【0038】
面取形成部12は、従来の面木同様に、平滑な平面で形成されている。
面取接触部11は、凸部13と凹部14を備える。
面木1の本体部1aは、従来の面木と同様の形状の部分であり、面木1としての主要な部分をなす部分である。凸部13と本体部1aの凹部14の底を形成する部分とで面取接触部11は形成される。
【0039】
凸部13は、面木1の長手方向(打継目の長手方向)に沿う方向に連続するとともに、面木1の幅方向に間隔をあけて複数列(本実施形態では3列)設けられる。
凹部14は、凸部13の間に形成される(本実施形態では複数の2列が形成される。)。
【0040】
複数列の凸部13の一つは、面取形成部12側(新設コンクリート31側)の端部に設けられる。
【0041】
凸部13は、断面が四角形であり、面取接触部11の長手方向全長に亘って設けられる。また、凸部13は、本体部1a(面木1の凸部13以外の部分)よりも軟質の材料であるポリウレタン、ポリ塩化ビニル等を素材としている。
【0042】
本実施形態では、従来の面木のように形成された本体部1aの平面に凸部13を接着して設けており、凸部13を設けることでその間に凹部14も同時に設けられ面取接触部11を形成するようにしている。
【0043】
覆工コンクリート3の目地32は、面木1を用いて以下のように形成される。
【0044】
図5(a)に示すように、目地が形成されるトンネルの坑口側において、地山20から間隔をあけた内側に、セントル4をトンネル2の軸方向の所定スパンにわたってトンネル2の周方向に沿って配置し、地山20とセントル4の間にコンクリート打設空間41を形成する。
【0045】
セントル4の切羽側の端部には、コンクリート打設空間41を閉鎖する褄型枠42がセントル4端部に沿わせて設置される。
褄型枠42の坑口側の面において、セントル4との角部には面取型枠420が設けられる。面取型枠420は、傾斜面が坑口側に面する直角三角形状の断面を有する。
【0046】
次に、コンクリート打設空間41にコンクリートを打設し、コンクリート硬化後に脱型すると、図5(b)に示すように、切羽側の端部に面取り部300を有する既設コンクリート30が形成される。
【0047】
次いで、図5(c)に示すように、セントル4を切羽側に移動させ、セントル4の坑口側の端部を既設コンクリート30の内周面の切羽側端部に重ね、セントル4と地山20との間に新設コンクリートを打設するコンクリート打設空間41’を形成する。
【0048】
コンクリート打設空間41’には、面木1が、その被支持面10をセントル4の外周面に支持させ、面取接触部11を坑口側に向け、面取形成部12を切羽側に向けて配置される。
【0049】
面木1の配置方法としては、例えば、セントル4の既設コンクリート30側に設けられた点検窓40(図1)からコンクリート打設空間41’に手を差し込んで、面木1を既設コンクリート30側へ移動させ、面取接触部11を既設コンクリート30の面取り部300に押し込んで取付ける。なお、セントル4や既設コンクリート30と面木1とを脱型後に取り外し可能な両面テープを用いて接着するようにしても良い。
【0050】
押し当てに際して、凸部13が本体部1aより軟質な材料で形成されているので、凸部13がつぶれて既設コンクリート30の面取り部300に確実に凸部13を圧着させることができ、これにより、ノロを遮断する効果が高まる。
【0051】
また、凸部13が既設コンクリート30の面取り部300に圧着されているので、十分な摩擦力は作用し面木1が既設コンクリート30の面取り部300からずれることが防止される。
【0052】
さらに、凸部13以外の本体部1a(面取接触部11の凹部14の底部や面取形成部12を含む)は、凸部13よりも硬質であって変形しにくいので、新設コンクリート31の打継目の面取り部310が所定の形状に形成される。
【0053】
次いで、図5(d)に示すように、コンクリート打設空間41’にコンクリートを打設し、新設コンクリート31を形成する。
【0054】
新設コンクリート31の坑口側の端部から既設コンクリート30の面取り部300と面木1の面取接触部11と間に向けてノロが流れ出そうとするが、面木1の面取接触部11に設けられた凸部13が面取り部300に押し付けられているので、流出したノロを凸部13が遮断され、面取り部300と面取接触部11との間に浸入するのを抑制する。
【0055】
また、凸部13が打継方向に複数(3列)設けられることにより、確実にノロの流出を抑制することをより高めることができる。
【0056】
特に、複数設けられた凸部13のうちの新設コンクリート31側に設けられた凸部13が、新設コンクリート31から流出するノロを早期に遮断することになりノロの侵入を少なくする。
【0057】
新設コンクリート31の硬化後に脱型し、面木1を取り外すと、図2に示すように、既設コンクリート30と新設コンクリート31との打継部分に断面三角形の目地32が形成される。
【0058】
このとき、新設コンクリート31から流出したノロが既設コンクリート30の面取り部300と面取接触部11との間に浸入しても、ノロは面取接触部11の凸部13の間に形成された凹部14を中心に溜まって面取り部300に凸条状に付着するので、図6の破線でノロNが示されるように、面取り部300の表面に凹凸が形成され、付着したノロを視認しやすくなる。
また、新設コンクリート31から流出したノロが既設コンクリート30の面取り部300と面取接触部11との間に浸入しても、ノロが複数の凸部13の間で挟まった状態で存在するので、面木1を取り外す際に、凸部13の間のノロが凸部13に挟まれ引っ張られることになるので、ノロ(例えば比較的付着力が小さい軽微なもの)は剥がれることになり、その後の対応の負担を少なくすることができる。
これらによって、脱型時の対処によってノロの除去率を高めることができるとともに、供用後に剥がれ落ちるノロを少なくすることで、その分の供用後の点検の負担が少なくなる。
【0059】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態を図7と共に説明する。なお、第1の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0060】
第2の実施形態では、凸部13の断面を三角形としている点が第1の実施形態と異なる。三角形の底辺が本体部側に設けられ、当該底辺に対向する頂点が既設コンクリートの面取接触部側に設けられる。
このような構成にすれば、凸部13がつぶれやすくなり既設コンクリート30の面取り部300に確実に凸部13を圧着させることができる。
【0061】
[第3の実施形態]
本発明の第3の実施形態を図8と共に説明する。なお、第1及び第2の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0062】
第3の実施形態では、凸部13の断面を半円形としている点が第1の実施形態と異なる。半円形の弧の直径部分が本体部側に設けられ、当該円弧の頂点部分が既設コンクリートの面取接触部側に設けられる。
このような構成にすれば、第2の実施形態と同様に、凸部13がつぶれやすくなり既設コンクリート30の面取り部300に確実に凸部13を圧着させることができる。
【0063】
[第4の実施形態]
本発明の第4の実施形態を図9及び図10と共に説明する。なお、第1乃至第3の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0064】
第4の実施形態では、図9及び図10に示すように、面木1、及び、この面木1を用いて既設コンクリート30と新設コンクリート31との打継部分に形成される目地32が、台形状の断面を有する点が第1の実施形態と異なる。
【0065】
面木1は、一方の側面が新設コンクリート31の面取り部310を形成する面取形成部12であり、頂面が、既設コンクリート30の面取り部300において、セントル4と平行な頂部面取り部300aに対応する頂部面取接触部11aであり、他方の側面が、既設コンクリート30の面取り部300において、傾斜面取り部300bに対応する傾斜面取接触部11bである。頂部面取接触部11aと傾斜面取接触部11bとで既設コンクリート30の面取り部300に接触する面取接触部11を構成する。
【0066】
面木1の頂部面取接触部11aには、面木1の長手方向に沿う複数列(図に示す例では3列)の凸部13が打継方向に間隔をあけて設置されている。
複数列の凸部13の一つは、頂部面取接触部11aの面取形成部12側(新設コンクリート31側)の端部に設けられる。
【0067】
なお、セントル4の褄型枠42に設けられる面取型枠420の上面及び側面を、面木1の頂部面取接触部11a及び傾斜面取接触部11bと同じ形状にすることにより、既設コンクリート30の切羽側の端部には、頂部面取り部300a及び傾斜面取り部300bが形成される。
【0068】
面木1の面取接触部11を既設コンクリート30の面取り部300に押し当て、既設コンクリート30の切羽側端部に隣接して新設コンクリート31を打設した時、万が一、新設コンクリート31から流出したノロが面取り部300と面取接触部11との間に浸入しても、ノロは既設コンクリート30の頂部面取り部300aに凸条として付着するので視認しやすい。
【0069】
[第5の実施形態]
本発明の第5の実施形態を図11と共に説明する。なお、第1乃至第4の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0070】
第5の実施形態では、面木1の面取接触部11に設けた各列の凸部13は、面木1の長手方向全長に亘って連続して形成されておらず、複数の凸部13が長手方向に間隔をおいて設置されている。
複数列の凸部13の内、隣接する二つの列の凸部13は、互い違いに配置されている。すなわち、長手方向に沿って並んだ凸部13間の間隙の打継方向には、隣の列の凸部13が設けられる。
【0071】
面木1の面取接触部11を既設コンクリート30の面取り部300に押し当て、既設コンクリート30の切羽側端部に隣接して新設コンクリート31を打設した時、もし新設コンクリート31から流出したノロが面取り部300と面取接触部11との間に浸入しても、ノロは多数の突起状に既設コンクリート30の面取り部300に付着するので視認しやすい。
【0072】
[第6の実施形態]
本発明の第6の実施形態を図12と共に説明する。なお、第1乃至第5の実施形態と同様の部分については説明を省略し、主に異なる部分について説明する。
【0073】
第6の実施形態では、面木1の凸部13と凹部14を含む面取接触部11が本体部1aより軟質な材料で形成されている点が、第1の実施形態と異なる。
【0074】
面取接触部11は、凸部13と凹部14とが一体に形成され、本体部1aの既設コンクリートの面取り部300側に接着されている。
凹部14の底部を形成する部分は、配置されたときに既設コンクリートの面取り部300に若干押圧する程度の寸法となっている。
【0075】
本体部1aは、面取接触部11を除いて被支持面10と面取形成部12とを備えている。
【0076】
凸部13だけでなく、凹部14も本体部1aより軟質な材料で形成しているので、凹部14もつぶれて既設コンクリート30の面取り部300を押圧し、凹部14にもノロが侵入しにくくなる。
【0077】
〔その他の変形例〕
本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。例えば以下のようなものも含まれる。
【0078】
本実施形態では、面木はトンネルの覆工コンクリートの打継目に用いられているが、高架橋等のスラブの下面、壁面のような露出して使用されるコンクリート構造の打継目に用いることもできる。
【0079】
本実施形態では、凸部の断面を四角形、三角形、半円形としていたがこれに限られない。例えば、基部が本体部に接続されて他端が自由端であるヒレ状の断面形状であっても良い。
【0080】
本実施形態では、凸部を打継方向に複数列設けているが、1列のみであってもよい。
【0081】
第1及び第2の実施形態では、面木の断面が左右対称の三角形であり、第3の実施形態では、左右対称の台形であるが、面取接触部と面取形成部との傾斜角度が異なるような非対称形とすることもできる。
【0082】
本実施形態では、セントルをセットした後、セントルの点検窓から打設空間に手を差し込んで、面木を既設コンクリートの面取り部に押し当てているが、面木に連結した引き込み用の紐を既設コンクリートとセントルとの間に設けてこれを引っ張ることにより、既設コンクリートの面取り部に圧着されるようにしてもよい。
【0083】
本実施形態では、凸部は、面木の本体部よりも軟質の素材にしているが、本体部分と同じ硬さにしても良い。また、本実施形態では、凸部は、別体として面取接触部に接着されているが、凸部を本体部に一体に成型するようにしても良い。
【0084】
第3の実施形態では、断面台形の面木の頂面のみに凸部を形成してあるが、面取接触部である頂面及び斜面に凸部を設けることもできる。
【0085】
面取接触部11の凹部14の底部について、第1の実施形態では既設コンクリート30の面取り部300に接触しない、第6の実施形態では接触するものであったが、これに限られない。例えば、第1の実施形態において凹部14の底部を既設コンクリート30の面取り部300に接触させ、第6の実施形態において接触させないように面木1を構成するようにしても良い。
【0086】
変形例を含むいずれの実施形態における各技術的事項を他の実施形態に適用して実施例としても良い。
【0087】
1 面木
1a 本体部
10 被支持面
11 面取接触部
11a 頂部面取接触部
11b 傾斜面取接触部
12 面取形成部
13 凸部
14 凹部
2 トンネル
20 地山
3 覆工コンクリート
30 既設コンクリート
300 面取り部
300a 頂部面取り部
300b 傾斜面取り部
31 新設コンクリート
310 面取り部
32 目地
4 セントル
40 点検窓
41 コンクリート打設空間
42 褄型枠
420 面取型枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12