(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098706
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】排気管、及び排気管の製造方法
(51)【国際特許分類】
F01N 13/08 20100101AFI20240717BHJP
【FI】
F01N13/08 A
F01N13/08 F
F01N13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002339
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】垣見 優花
【テーマコード(参考)】
3G004
【Fターム(参考)】
3G004AA01
3G004BA04
3G004BA05
3G004DA11
3G004DA14
3G004EA03
3G004FA04
3G004GA06
(57)【要約】
【課題】排気管の破損を抑制する。
【解決手段】排気管は、内管、中管、外側部材、内側溶接部、及び外側溶接部を備える。中管は内管の外周面を囲み、外側部材は中管の外周面を囲む。内側溶接部は内管と中管とを接合し、外側溶接部は中管と外側部材とを接合する。外側溶接部は、外側部材及び中管のうちの少なくとも一方の端面に位置し、中管と外側部材と間の隙間を塞ぎ、内管に対面する。内側溶接部は、内管及び中管のうちの少なくとも一方の端面に位置し、少なくとも1つの連通部が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管であって、
排ガスを流下させるよう構成された内管と、
前記内管の外周面を囲むように配置された中管と、
前記中管の外周面を囲むように配置された外側部材と、
前記内管と前記中管とを接合する部位であって、溶接により形成された部位である内側溶接部と、
前記中管と前記外側部材とを接合する部位であって、溶接により形成された部位である外側溶接部と、を備え、
前記外側溶接部は、前記外側部材及び前記中管のうちの少なくとも一方の端面に位置し、前記中管を周回するように設けられていると共に、前記中管と前記外側部材と間の隙間を塞ぎ、前記内管に対面し、
前記内側溶接部は、前記内管及び前記中管のうちの少なくとも一方の端面に位置し、少なくとも1つの連通部が形成されている
排気管。
【請求項2】
請求項1に記載の排気管であって、
前記中管の厚さは、前記内管の厚さ及び前記外側部材の厚さよりも薄い
排気管。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排気管であって、
前記中管は、ベローズ状の部位を有しており、
前記外側部材は、フランジ状の部材である
排気管。
【請求項4】
排気管の製造方法であって、
排ガスを流下させるよう構成された内管と、前記内管の外周面を囲むように配置された中管とを溶接することで、少なくとも1つの連通部が設けられた状態で、前記内管と前記中管とを接合する内側溶接部を形成することと、
前記内側溶接部により前記内管が接合された前記中管と、前記中管の外周面を囲むように配置された外側部材とを溶接することで、前記中管と前記外側部材とを接合する外側溶接部を形成することと、を備え、
前記外側溶接部は、前記外側部材及び前記中管のうちの少なくとも一方の端面に、前記中管を周回するように設けられていると共に、前記中管と前記外側部材と間の隙間を塞ぎ、前記内管に対面し、
前記内側溶接部は、前記内管及び前記中管のうちの少なくとも一方の端面に位置する
排気管の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、排気管等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、内管と、外管と、内管と外管との間に配置され、蛇腹管としての構成を有する中管とを有する排気管が知られている。該排気管では、内管、外管、及び中管を有する三重管構造が形成されており、該排気管の一端では、これらの管の各端部が全周溶接により接合されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このような三重管構造を有する排気管においては、各管同士を全周溶接により接合する溶接部の位置は、例えば、各管の形状、長さ、位置等に応じて適宜定められ得る。このため、例えば、内管と中管とを接合する内側溶接部の排気管の長さ方向の位置と、外管と蛇腹管(換言すれば、中管)とを接合する外側溶接部の該長さ方向の位置とが異なる可能性がある。このような場合には、外側溶接部を形成する際に中管の溶け落ちが生じ、外側溶接部の内側にて内管と中管との隙間が塞がれると、内管と中管との間に、外側溶接部と内側溶接部とにより密閉された空間が形成される恐れがある。そして、例えば、排気管の製造工程における溶接や、排気管を流下する高温のガス等によりこのような密閉空間が加熱されると、該密閉空間内の物体が膨張し、該密閉空間の周辺の部位が破損する恐れがある。
【0005】
本開示の一態様では、排気管の破損を抑制するのが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、排気管であって、内管と、中管と、外側部材と、内側溶接部と、外側溶接部と、を備える。内管は、排ガスを流下させるよう構成される。中管は、内管の外周面を囲むように配置される。外側部材は、中管の外周面を囲むように配置される。内側溶接部は、内管と中管とを接合する部位であって、溶接により形成された部位である。外側溶接部は、中管と外側部材とを接合する部位であって、溶接により形成された部位である。また、外側溶接部は、外側部材及び中管のうちの少なくとも一方の端面に位置し、中管を周回するように設けられていると共に、中管と外側部材と間の隙間を塞ぎ、内管に対面する。内側溶接部は、内管及び中管のうちの少なくとも一方の端面に位置し、少なくとも1つの連通部が形成されている。
【0007】
上記構成によれば、内側溶接部には少なくとも1つの連通部が形成されているため、中管と内管との間における外側溶接部と内側溶接部との間の空間が密封されない。このため、該空間の物体が加熱により膨張したとしても、該空間の周辺の部位の破損を抑制できる。したがって、排気管の破損を抑制できる。
【0008】
本開示の一態様では、中管の厚さは、内管の厚さ及び外側部材の厚さよりも薄くてもよい。
上記構成によれば、中管の溶け落ち(換言すれば、外側溶接部が内管まで溶け込むこと)が生じやすくなるため、外側溶接部を形成する際に中管と内管との間の空間が溶融物により塞がれる可能性が高くなる。このため、少なくとも1つの連通部を設けることで、効果的に排気管の破損を抑制できる。
【0009】
本開示の一態様では、中管は、ベローズ状の部位を有していてもよい。外側部材は、フランジ状の部材であってもよい。
上記構成においても、排気管の破損を抑制できる。
【0010】
本開示の一態様は、排気管の製造方法であって、排ガスを流下させるよう構成された内管と、内管の外周面を囲むように配置された中管とを溶接することで、少なくとも1つの連通部が設けられた状態で、内管と中管とを接合する内側溶接部を形成することと、内側溶接部により内管が接合された中管と、中管の外周面を囲むように配置された外側部材とを溶接することで、中管と外側部材とを接合する外側溶接部を形成することと、を備える。外側溶接部は、外側部材及び中管のうちの少なくとも一方の端面に、中管を周回するように設けられていると共に、中管と外側部材と間の隙間を塞ぎ、内管に対面する。内側溶接部は、内管及び中管のうちの少なくとも一方の端面に位置する。
【0011】
上記構成によれば、少なくとも1つの連通部が形成されているため、中管と内管との間における外側溶接部と内側溶接部との間の空間が密封されない。このため、該空間の物体が加熱により膨張したとしても、該空間の周辺の部位の破損を抑制できる。したがって、排気管の破損を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図3】第1実施形態における排気管の第1端の正面図である。
【
図4】第1実施形態における排気管の製造工程の説明図である。
【
図5】第2実施形態における排気管における軸線を含む断面図である。
【
図6】第3実施形態における排気管の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0014】
[1.第1実施形態]
[(1)全体構成]
第1実施形態の排気管1は、排ガスを流下させるよう構成されている(
図1~3参照)。一例として、排気管1は、車両に搭載され、車両のエンジンからの排ガスの流路を構成するために用いられても良い。なお、車両とは、例えば、自動車であっても良いし、農業、土木工事、建築等に用いられる車両であっても良い。また、排気管1は、発電機等からの排ガスの流路を構成するために用いられても良い。
【0015】
排気管1は、第1端10から第2端11にわたって軸線Aに沿って真っすぐに延びており、内管2と、中管3と、第1及び第2フランジ部4、5と、内側溶接部12と、連通部13と、第1及び第2外側溶接部14、15とを備える。なお、排気管1の形状は、真っすぐに限らず、曲がった形状を有していても良い。また、排ガスは、第1端10から第2端11に向かって排気管1の内部を流下しても良いし、第2端11から第1端10に向かって排気管1の内部を流下しても良い。
【0016】
[(2)内管]
内管2は、円筒状の部位であり、排ガスがその内部を流下する(
図1~3参照)。内管2における軸線Aに直交する断面は、一例として円形となっている。内管2は、第1端10側に位置する第1端部20と、第2端11側に位置する第2端部21とを有する。
【0017】
[(3)中管]
中管3は、内管2の外周面を囲むように配置され、中管3と内管2との間には、内管2の外周面を囲む空間が形成される(
図1、2参照)。中管3における軸線Aに直交する断面は、一例として円形となっている。中管3は、第1及び第2端部30、31と、ベローズ状の部位であるベローズ部32とを有する。第1及び第2端部30、31は、ベローズ部32の両端に設けられ、それぞれ、中管3における第1端10側の開口と、第2端11側の開口とを形成する。
【0018】
そして、内管2の第1端部20の第1開口20Bを囲む第1端面20Aと、中管3の第1端部30の開口を囲む第1端面30Aとは、排気管1の径方向(以後、単に径方向と記載)に並ぶ。一方、内管2の第2端部21は、ベローズ部32における第2端部31の付近の部分に位置する。
【0019】
また、一例として、中管3の厚さは、内管2の厚さ、及び、第1及び第2フランジ部4、5における径方向の厚さよりも薄い。しかし、これに限らず、中管3と、内管2と、第1及び第2フランジ部4、5の径方向の厚さは、適宜定められ得る。
【0020】
[(4)第1及び第2フランジ部]
第1及び第2フランジ部4、5は、リング状の部位であり、当該部位の中央を貫通する円形の穴42、52を有する(
図1、2参照)。第1及び第2フランジ部4、5は、それぞれ、中管3の第1及び第2端部30、31の外周面を囲むように配置される。第1フランジ部4と第1端部30との間には、第1端部30の外周面を囲む空間が形成され、第2フランジ部5と第2端部31との間には、第2端部31の外周面を囲む空間が形成される。
【0021】
第1及び第2フランジ部4、5は、それぞれ、軸線Aの方向(換言すれば、厚さ方向)に対面する第1端面40、50と第2端面41、51とを有する。第1フランジ部4の第1端面40は、排気管1の第1端10に位置し、内管2の第1端面20A、及び、中管3の第1端面30Aは、第1フランジ部4の穴42の内部に位置する。また、第2フランジ部5の第1端面50は、排気管1の第2端11に位置し、中管3における第2端部31の開口を囲む第2端面は、第2フランジ部5の穴52の内部に位置する。
【0022】
なお、第1及び第2フランジ部4、5は、排気管1を他の部材と接続するために用いられても良い。
[(5)第1及び第2外側溶接部]
第1外側溶接部14は、溶接により第1フランジ部4の第2端面41に形成され、第2端面41と中管3の第1端部30の外周面とを接合する(
図2、3参照)。すなわち、第1外側溶接部14は、第1フランジ部4の第2端面41と中管3の第1端部30の外周面において、隅肉溶接された部分である。第1外側溶接部14は、第1端部30と第2端面41との間の隙間を塞ぐ。より詳しくは、第1外側溶接部14は、第1端部30の外周面を周回し、第1フランジ部4と第1端部30との間の空間を第2端面41側から封止する。これにより、排気管1を通過する排ガスが、該空間を通過して外部に流出するのが阻止される。また、第1外側溶接部14は、中管3の第1端部30を挟んで内管2に対面する。
【0023】
さらに、一例として、第1フランジ部4の第2端面41と中管3の第1端部30の外周面の溶接により、第1外側溶接部14は、内管2まで達している。そして、第1外側溶接部14により、第1フランジ部4の第2端面41と中管3の第1端部30と内管2の第1端部の外周面が連結して一体となっている。すなわち、第1外側溶接部14によって、中管3の第1端部30と内管2の第1端部との間の隙間も塞がれた状態となる。なお、「塞がれる」とは、「実質的に塞がれる」ことを意味し、例えば、意図せず隙間が形成されたり、クラック等により隙間が形成されたりする場合もある。
【0024】
無論、これに限らず、第1外側溶接部14は、内管2まで達しておらず、第1外側溶接部14の内側において、中管3と内管2との間に隙間が形成されていても良い。
第2外側溶接部15は、第1外側溶接部14と同様、溶接により第2フランジ部5の第2端面51に形成され、第2端面51と中管3の第2端部31の外周面とを接合する。つまり、第2外側溶接部15は、第2端部31と第2端面51との間の隙間を塞いでおり、第2フランジ部5と第2端部31との間の空間を第2端面51側から封止する。
【0025】
[(6)内側溶接部及び連通路]
内側溶接部12は、内管2の第1端面20Aと、中管3の第1端面30Aとに溶接により形成され、これらの第1端面20A、30Aを接合する(
図2、3参照)。内側溶接部12は、これらの第1端面20A、30Aの間の隙間を塞ぐように設けられる。
【0026】
一方、連通部13は、内管2の第1端面20Aと、中管3の第1端面30Aとの間に設けられた通路であり、内管2と中管3との間の空間と、内管2及び中管3の外部の空間とを連通する。内側溶接部12は、内管2の第1開口20Bを周回せず、内管2の第1端面20Aと、中管3の第1端面30Aとの間の隙間には、内側溶接部12により塞がれていない部分が存在しており、該部分が連通部13に相当する(
図3参照)。つまり、連通部13は、内側溶接部12よりも排ガスの流れ方向の上流側の領域13Aと、内側溶接部12よりも排ガスの流れ方向の下流側の領域13Bとを連通する。
【0027】
第1実施形態では、一例として、内側溶接部12は、第1端面20A、30Aの間の上記隙間の大部分を塞ぐ。また、排気管1が車両等に搭載された際、連通部13は、第1端面20A、30Aにおける最下部に位置する(
図3参照)。これにより、連通部13を介して、内管2と中管3との間の空間に溜まった凝縮水等の流体を外部に排出できる。他にも、板状部材を巻いて端部同士を突き合わせて溶接して内管2が形成される場合、この突き合わせ部分に連通部13が位置するようにしてもよい。しかし、これらに限らず、連通部13の位置及び大きさは適宜定められ得る。
【0028】
また、連通部13は、内管2のビード部及び中管3のビード部とは異なる位置に設けられていても良い。これにより、内管2及び中管3における脆弱な箇所が加熱されるのを抑制できる。なお、ビード部とは、管状部材を形成するための溶接がなされた箇所を意味する。一例として、湾曲させた板材の端部同士を溶接することで形成された管状部材であれば、溶接されたこれらの端部にビード部が形成される。
【0029】
また、第1実施形態では、一例として、連通部13の数は1つとなっており、これにより、高温の排ガスにより加熱された箇所を一箇所に絞ることができる。無論、これに限らず、排気管1には、複数の連通部13が設けられても良い。
【0030】
[(7)排気管の製造方法]
排気管1の製造方法は、内管2と中管3とを溶接する第1溶接工程と、中管3と第1及び第2フランジ部4、5とを溶接する第2溶接工程とを備える(
図4参照)。
【0031】
第1溶接工程では、内管2の第1端面20Aと、中管3の第1端面30Aとが径方向に並んだ状態で、内管2の外周面を囲むように中管3が配置される。そして、内管2の第1端面20Aと、中管3の第1端面30Aとを溶接することで、内側溶接部12が形成される。この時、これらの第1端面20A、30Aの間の隙間が完全に塞がれないように、内管2の第1開口20Bを周回しない円弧状の経路に沿って溶接が行われる。これにより、連通部13が形成される。
【0032】
なお、内側溶接部12は、一例としてTIG溶接により形成される。しかし、これに限らず、内側溶接部12は、他の種類の溶接により形成されても良い。また、第1溶接工程では、第1端面20A、30Aの間の隙間の大部分を通過する1つの溶接経路が設定される。しかし、これに限らず、内側溶接部12及び連通部13の数や大きさ等に応じて、溶接経路や溶接の種類は適宜定められ得る。
【0033】
第1溶接工程に続く第2溶接工程では、内側溶接部12により内管2が接合された中管3の外周面を囲むように、第1及び第2フランジ部4、5が配置される。すなわち、第1フランジ部4は、中管3の第1端面30Aが穴42の内側に位置すると共に、第2端面41が中管3の第1端部30の外周面に対面するように配置される。この時、第1フランジ部4の第2端面41は、中管3の第1端部30を挟んで内管2に対面する。そして、中管3の第1端部30の外周面を周回する経路に沿って全周溶接(すなわち、隅肉溶接)を行うことで、第1フランジ部4の第2端面41と第1端部30とが溶接される。これにより、第1外側溶接部14が形成され、第1端部30と第2端面41との間の隙間が封止される。
【0034】
ここで、例えば、中管3の厚さが薄い場合等には、第1外側溶接部14を形成するための全周溶接により中管3が溶け落ち(換言すれば、第1外側溶接部14が内管2まで溶け込み)、中管3と内管2との間の空間が溶融物により塞がれる恐れがある。つまり、第1外側溶接部14は、第1フランジ部4の第2端面41と第1端部30との間だけでなく、中管3と内管2との間の空間にまで到達し、該空間を塞ぐ可能性がある。さらに、第1外側溶接部14は、第1端部30の内周面と内管2の外周面との間の空間を全周に渡って塞ぐ可能性がある。このような場合には、第1端部30と内管2との間の空間が第1外側溶接部14により封止され、該空間において、流体が第1外側溶接部14を通過できなくなる可能性がある。
【0035】
換言すれば、第1フランジ部4の第2端面41と中管3の第1端部30の外周面の溶接において、第1外側溶接部14が内管2まで達し、第1フランジ部4の第2端面41と中管3の第1端部30と内管2の第1端部の外周面が連結して一体となる場合がある。すなわち、第1外側溶接部14によって、中管3の第1端部30と内管2との間の隙間も封止される場合がある。
【0036】
また、第2フランジ部5は、中管3の第2端11側の開口を囲む第2端面が穴52の内側に位置すると共に、第2端面51が中管3の第2端部31の外周面に対面するように配置される。そして、第1フランジ部4と同様、中管3の第2端部31の外周面を周回する経路に沿って全周溶接を行うことで、第2フランジ部5の第2端面51と第2端部31とが溶接される。これにより、第2外側溶接部15が形成され、第2端部31と第2端面51との間の隙間が封止される。
【0037】
なお、第1及び第2外側溶接部14、15は、一例としてTIG溶接により形成される。しかし、これに限らず、第1及び第2外側溶接部14、15は、他の種類の溶接により形成されても良い。
【0038】
つまり、第1実施形態の製造方法は、第1及び第2溶接工程を有する。該製造方法では、排ガスを流下させるよう構成された内管2と、内管2の外周面を囲むように配置された中管3と、中管3の外周面を囲むように配置された第1フランジ部4(換言すれば、外側部材)と、を有する排気管1が製造される。
【0039】
第1溶接工程では、内管2を中管3に挿入し、内管2の一方の端面と、中管3の一方の端面とを、周方向における一部を除いて溶接して中間品を製造する。
続く第2溶接工程では、中間品を外側部材に挿入し、中間品と外側部材とを、周方向全体にわたって溶接し、内管2の一方の端部と中管3の一方の端部との隙間を塞ぎ、かつ、外側部材の一方の端部と中管3の一方の端部との隙間を塞ぐ。
【0040】
[2.第2実施形態]
[(1)概要]
第2実施形態の排気管1は、第1実施形態と同様の構成を有しているが、第1フランジ部4の位置において第1実施形態と相違している(
図5参照)。以下では、第2実施形態の排気管1における第1実施形態との相違点について説明する。
【0041】
第2実施形態の第1フランジ部4は、第1実施形態と同様に構成されており、第1実施形態と同様、中管3の第1端部30の外周面を囲むように配置される。しかし、第1フランジ部4は、軸線Aの方向の位置において、第1実施形態と相違する。
【0042】
すなわち、第2実施形態では、第1フランジ部4は、内管2の第1端面20A、及び、中管3の第1端面30Aが、第1端面40の穴42から第1端10側に突出した状態となるように配置される。つまり、第2実施形態では、内管2及び中管3の第1端面20A、30Aが、排気管1の第1端10に位置する。
【0043】
[(2)排気管の製造方法]
第2実施形態の排気管1の製造方法は、第1実施形態と同様の第1溶接工程を有する。また、第2実施形態の製造方法における第2溶接工程は、第1実施形態と同様であるが、第1フランジ部4の配置態様において相違する。すなわち、第2溶接工程では、第1フランジ部4は、内管2が接合された中管3の第1端面30Aが穴42から突出した状態となり、且つ、第2端面41が中管3の第1端部30の外周面に対面するように配置される。そして、第1実施形態と同様にして中管3の第1端部30の外周面の全周溶接を行うことで、第1外側溶接部14が形成される。
【0044】
[3.第3実施形態]
[(1)概要]
第3実施形態の排気管1は、第1実施形態と同様の構成を有しているが、第1及び第2フランジ部4、5に替えて、第1及び第2外管6、7が用いられている点において第1実施形態と相違する(
図6、7参照)。なお、第3実施形態においても、一例として、中管3の厚さは、内管2の厚さ、並びに、第1及び第2外管6、7の厚さよりも薄い。しかし、これに限らず、中管3、内管2、並びに、第1及び第2外管6、7の厚さは、適宜定められ得る。
【0045】
[(2)第1及び第2外管]
第1及び第2外管6、7は、軸線Aに沿って延びる円筒状の部位であり、その断面は、一例として円形となっている(
図6、7参照)。無論、第1及び第2外管6、7の断面は、円形に限らず、適宜定められる。第1及び第2外管6、7は、それぞれ、中管3の第1及び第2端部30、31の外周面を囲むように配置される。第1外管6と第1端部30との間には、第1端部30の外周面を囲む空間が形成され、第2外管7と第2端部31との間には、第2端部31の外周面を囲む空間が形成される。
【0046】
このため、中管3及び内管2の第1端面20A、30Aは、第1外管6の内側に位置する。つまり、内側溶接部12及び連通路13は、第1外管6の内側に位置する。また、第1外管6は、その両端の開口をそれぞれ囲む第1及び第2端面60、61を有する。第1外管6の第1端面60は、排気管1の第1端10に位置し、第2端面61は、第1端部30の外周面に対面する。また、第2外管7は、その両端の開口をそれぞれ囲む第1及び第2端面70、71を有する。第2外管7の第1端面70は、排気管1の第2端11に位置し、第2端面71は、第2端部31の外周面に対面する。
【0047】
[(3)第1及び第2外側溶接部]
第3実施形態では、第1外側溶接部14は、溶接により第1外管6の第2端面61に形成され、第2端面61と中管3の第1端部30の外周面とを接合する(
図6、7参照)。第1外側溶接部14は、第1実施形態と同様、第1端部30と第2端面61との間の隙間を塞ぐ。つまり、第1外側溶接部14は、第1端部30の外周面を周回し、第1外管6と第1端部30との間の空間を第2端面61側から封止する。
【0048】
第2外側溶接部15は、第1実施形態と同様、溶接により第2外管7の第2端面71に形成され、第2端面71と中管3の第2端部31の外周面とを接合すると共に、第2端部31と第2端面71との間の隙間を塞ぐ。
【0049】
[(4)排気管の製造方法]
第3実施形態の排気管1の製造方法は、第1実施形態と同様の第1溶接工程を有する。また、第3実施形態の製造方法における第2溶接工程は、第1及び第2フランジ部4、5に替えて、第1及び第2外管6、7が、内管2が接合された中管3に溶接される。
【0050】
第2溶接工程では、内側溶接部12により内管2が接合された中管3の外周面を囲むように、第1及び第2外管6、7が配置される。すなわち、第1外管6は、中管3の第1端面30Aが内側に位置すると共に、第2端面61が中管3の第1端部30の外周面に対面するように配置される。この時、第1外管6の第2端面61は、中管3の第1端部30を挟んで内管2に対面する。そして、中管3の第1端部30の外周面を周回する経路に沿って全周溶接を行うことで、第1外管6の第2端面61と第1端部30とが溶接される。これにより、第1外側溶接部14が形成され、第1端部30と第2端面61との間の隙間が封止される。
【0051】
なお、第1実施形態と同様、第1外側溶接部14は、中管3と内管2との間の空間にまで到達し、該空間を塞ぐ可能性がある。
また、第2外管7は、中管3の第2端11側の開口を囲む第2端面が内側に位置すると共に、第2端面71が中管3の第2端部31の外周面に対面するように配置される。そして、第1外管6と同様、中管3の第2端部31の外周面を周回する経路に沿って全周溶接を行うことで、第2外管7の第2端面71と第2端部31とが溶接される。これにより、第2外側溶接部15が形成され、第2端部31と第2端面71との間の隙間が封止される。
【0052】
なお、第1実施形態と同様、第1及び第2外側溶接部14、15は、一例としてTIG溶接により形成される。しかし、これに限らず、第1及び第2外側溶接部14、15は、他の種類の溶接により形成されても良い。
【0053】
[4.効果]
(1)第1~第3実施形態によれば、内管2及び中管3の第1端面20A、30Aには連通部13が形成されている。このため、仮に、第2溶接工程にて第1外側溶接部14を形成する際に中管3の溶け落ちが生じたとしても、中管3と内管2との間における第1外側溶接部14と内側溶接部12との間の空間が密封されない。このため、例えば、排気管1を流れる高温の排ガスや、排気管1の製造工程における溶接の影響により該空間にある物体が膨張したとしても、該物体は連通部13を通過して外部に流出するため、該空間の周辺の部位の破損を抑制できる。したがって、排気管1の破損を抑制できる。
【0054】
(2)また、連通部13は、内側溶接部12を形成する際の溶接経路を円弧状の経路とし、第1開口20Bに非溶接部を設けることで形成される。また、第1外側溶接部14を形成する際、内管2と中管3との間が閉塞されないように中管3の溶融度合いを調整する必要が無くなる。このため、作業負荷を抑制できる。
【0055】
(3)また、中管3の厚さは、内管2の厚さや、第1及び第2フランジ部4、5の厚さや、第1及び第2外管6、7の厚さよりも薄い。このため、中管3の溶け落ちが生じやすく、第2溶接工程にて第1外側溶接部14を形成する際に、中管3と内管2との間の空間が溶融物により塞がれる可能性が高くなる。このため、連通部13を設けることで、効果的に排気管1の破損を抑制できる。
【0056】
(4)また、第1溶接工程では、内側溶接部12はTIG溶接により形成されるため、内管2及び中管3にひずみが生じ難くなる。このため、第2溶接工程において、中管3と、第1フランジ部4又は第1外管6との間の全周溶接が容易になる。
【0057】
[5.他の実施形態]
(1)第1~第3実施形態における中管3は、ベローズ部32を有する。しかし、ベローズ部を有さない管が中管3として用いられても良い。
【0058】
(2)第1~第3実施形態では、内管2の第1端面20Aと中管3の第1端面30Aとは、軸線Aの方向における位置が一致しており、排気管1の径方向に並んでいる。しかし、これに限らず、中管3の第1端面30Aは、内管2の外周面に対面するように配置されていても良い。そして、このような場合には、中管3の第1端面30Aと内管2の外周面とを接合するように内側溶接部が形成される。また、第1~第3実施形態と同様にして、中管3と内管2との間における内側溶接部12により塞がれていない部分により、少なくとも1つの連通部が形成される。また、内管2の第1端面20Aは、中管3の内周面に対面するように配置されていても良い。そして、このような場合には、内管2の第1端面20Aと中管3の内周面とを接合するように内側溶接部が形成される。また、第1~第3実施形態と同様にして、中管3と内管2との間における内側溶接部12により塞がれていない部分により、少なくとも1つの連通部が形成される。
【0059】
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0060】
[6.文言の対応関係]
第1フランジ部4及び第1外管6が、外側部材の一例に相当する。
【符号の説明】
【0061】
A…軸線、1…排気管、10…第1端、11…第2端、12…内側溶接部、13…連通部、14…第1外側溶接部、15…第2外側溶接部、2…内管、20…第1端部、20A…第1端面、20B…第1開口、21…第2端部、3…中管、30…第1端部、30A…第1端面、31…第2端部、32…ベローズ部、4…第1フランジ部、40…第1端面、41…第2端面、42…穴、5…第2フランジ部、6…第1外管、60…第1端面、61…第2端面、7…第2外管。