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  • 特開-先端チップおよび医療用デバイス 図1
  • 特開-先端チップおよび医療用デバイス 図2
  • 特開-先端チップおよび医療用デバイス 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098709
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】先端チップおよび医療用デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/221 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
A61B17/221
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002344
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】花田 尚也
(72)【発明者】
【氏名】村上 友朗
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE22
4C160EE30
(57)【要約】
【課題】安価に製造可能な先端チップおよび医療用デバイスを提供する。
【解決手段】複数のワイヤ43から構成され径方向に拡縮可能なバスケット41の先端に設けられる医療用の先端チップ51であって、複数のワイヤ43の先端部を内部に保持する第1パイプ53と、第1パイプ53の外周を覆うように設けられた第2パイプ54と、第1パイプ53と第2パイプ54とを互いに接合する接合部55と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワイヤから構成され径方向に拡縮可能なバスケットの先端に設けられる医療用の先端チップであって、
前記複数のワイヤの先端部を内部に保持する第1パイプと、
前記第1パイプの外周を覆うように設けられた第2パイプと、
前記第1パイプと前記第2パイプとを互いに接合する接合部と、を備える先端チップ。
【請求項2】
前記第2パイプの径方向の厚さは、前記第1パイプの径方向の厚さよりも厚い、請求項1に記載の先端チップ。
【請求項3】
前記接合部は、前記第2パイプの端部と、前記第1パイプの外周面とを接合し、前記第2パイプの端部から前記第1パイプの外周面に向かって先細るテーパ面を有する、請求項1または請求項2に記載の先端チップ。
【請求項4】
前記接合部は、前記第2パイプの両端部のうち少なくとも一方の端部に形成され、前記少なくとも一方の端部と、前記第1パイプの外周面とを接合している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の先端チップ。
【請求項5】
前記接合部は、前記第2パイプの端部と前記第1パイプの外周面とが溶着されて形成されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の先端チップ。
【請求項6】
前記第1パイプは、その一部が外側に突出して前記第2パイプの内周面に当接する複数の突起部を有し、
前記複数の突起部により前記第2パイプが前記第1パイプに支持された状態で、前記第1パイプの中心軸と前記第2パイプの中心軸は同軸上に位置する、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の先端チップ。
【請求項7】
複数のワイヤから構成され径方向に拡縮可能なバスケットと、
前記バスケットの先端に設けられる請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の先端チップと、を備える、医療用デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療用デバイスの先端に設けられる医療用の先端チップに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、複数のバスケットワイヤの先端側を一体に纏めて結合する先端チップと、先端チップに装着されガイドワイヤを挿通するためのガイドワイヤ挿通手段とを有するバスケット型内視鏡用処置具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-036663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の先端チップは、金属により構成され、基端側に細径筒状部分を有し、先端側に半球状部分を有するキノコ状に形成されている。当該先端チップは、削り出しにより形成されるため、その製造にはコストがかかる。
【0005】
本開示の目的は、例えば、安価に製造可能な先端チップおよび医療用デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決するために、本開示の一態様である先端チップは、複数のワイヤから構成され径方向に拡縮可能なバスケットの先端に設けられる医療用の先端チップであって、前記複数のワイヤの先端部を内部に保持する第1パイプと、前記第1パイプの外周を覆うように設けられた第2パイプと、前記第1パイプと前記第2パイプとを互いに接合する接合部と、を備える。
【0007】
前記第2パイプの径方向の厚さは、前記第1パイプの径方向の厚さよりも厚くてもよい。
【0008】
前記接合部は、前記第2パイプの端部と、前記第1パイプの外周面とを接合し、前記第2パイプの端部から前記第1パイプの外周面に向かって先細るテーパ面を有してもよい。
【0009】
前記接合部は、前記第2パイプの両端部のうち少なくとも一方の端部に形成され、前記少なくとも一方の端部と、前記第1パイプの外周面とを接合してもよい。
【0010】
前記接合部は、前記第2パイプの端部と前記第1パイプの外周面とが溶着されて形成されてもよい。
【0011】
前記第1パイプは、その一部が外側に突出して前記第2パイプの内周面に当接する複数の突起部を有し、前記複数の突起部により前記第2パイプが前記第1パイプに支持された状態で、前記第1パイプの中心軸と前記第2パイプの中心軸は同軸上に位置してもよい。
【0012】
本開示の一態様である医療用デバイスは、複数のワイヤから構成され径方向に拡縮可能なバスケットと、前記バスケットの先端に設けられる上記に記載の先端チップと、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、安価に製造可能な先端チップおよび医療用デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る医療用デバイスの部分縦断面図である。
図2】(a)は、先端チップの側面図であり、(b)は、先端チップの断面図である。
図3】(a)は、変形例に係る先端チップの断面図であり、(b)は、(a)のVb-Vb線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の先端チップおよび医療用デバイスについて説明する。医療用デバイスは、バスケット型の医療用デバイスであり、胆管等の体腔内に挿入され、結石等の異物を破砕したり回収したりするために用いられる医療用デバイスである。
【0016】
図1は、本開示の医療用デバイス1の部分縦断面図であり、バスケット41がシース10の外部に露出し、拡張した状態を示す図である。図1において、先端部50側が、体内に挿入される先端側であり、把持部33側が、医師等の手技者によって操作される基端側である。医療用デバイス1およびその各構成部材について、先端側の端部を「先端」といい、先端およびその近傍を「先端部」といい、基端側の端部を「基端」といい、基端およびその近傍を「基端部」という。
【0017】
医療用デバイス1は、シース10と、操作ワイヤ20と、操作部30と、バスケット部40とを備える。
【0018】
シース10は、ルーメン11を形成する長尺の管状部材であり、可撓性を有する材料により構成されている。シース10は、例えば樹脂や金属により構成された可撓性のチューブ12と、チューブ12の先端に接合され、例えば金属(ステンレス鋼等)により構成された略円環状のシースチップ13とを有する。操作ワイヤ20は、長尺のワイヤ部材であり、シース10のルーメン11に、シース10の長軸方向に沿って進退可能に配置されている。
【0019】
操作部30は、本体部31と、操作パイプ32と、把持部33とを有する。操作パイプ32は、操作ワイヤ20の基端に接続された棒状の部材である。把持部33は、操作パイプ32の基端に接続され、手技者により把持される部材である。本体部31は、シース10の基端に接続された略円筒状の部材であり、ルーメン34を形成する。本体部31のルーメン34は、シース10のルーメン11と連通しており、ルーメン34には、操作パイプ32が長軸方向に進退可能に収容されている。なお、本体部31には、図示しない注射器等を取り付けてシース10のルーメン11内に薬液等を送液するための送水口35が設けられている。
【0020】
バスケット部40は、先端部50と、バスケット41と、基端チップ42とを備える。バスケット41は、複数のワイヤ43により構成されている。各ワイヤ43は、例えば金属により構成されている。複数のワイヤ43の先端は、先端部50によりまとめて保持されている。複数のワイヤ43の基端は、基端チップ42によりまとめて保持されている。バスケット部40は、基端チップ42を介して操作ワイヤ20の先端に接続されている。基端チップ42は、例えば金属(ステンレス鋼等)により形成されている。
【0021】
複数のワイヤ43は、湾曲して外側に向けて膨らむように自己付勢されている。そのため、操作ワイヤ20が基端側の位置にあるときには、バスケット部40は、シース10のルーメン11内に収容され、シース10の内周面によって押圧されて縮径した状態となる。図1に示すように、手技者による操作部30の操作に伴い操作ワイヤ20が先端側に移動すると、バスケット41がシース10の先端から突出し、複数のワイヤ43はそれらの自己付勢力によって拡径し、籠状になる。このように、医療用デバイス1は、操作ワイヤ20の進退に伴い、バスケット41が縮径した状態でシース10内のルーメン11に収容された縮径状態と、バスケット41がシース10の先端から突出して拡径した拡径状態と、の間を切り替え可能に構成されている。
【0022】
先端部50は、先端チップ51と、ガイドチップ52とを備える。
図2の(a)は、先端チップ51の側面図であり、(b)は、先端チップ51の断面図である。
【0023】
先端チップ51は、第1パイプ53と、第2パイプ54と、接合部55とを有する。第1パイプ53は、貫通孔53aを有し、当該貫通孔53aに複数のワイヤ43の先端部を保持する。第2パイプ54は、貫通孔54aを有し、第1パイプ53は、当該貫通孔54aを貫通している。すなわち、第2パイプ54の内径は、第1パイプ53の外径よりも大きく、第2パイプ54は、第1パイプ53の外周を覆うように設けられている。第2パイプ54の軸方向の長さは、第1パイプ53の軸方向の長さよりも短く構成されている。
【0024】
第1パイプ53の中心軸C1と第2パイプ54の中心軸C2とは同軸上に位置している。第1パイプ53の軸方向の中心部と第2パイプ54の軸方向の中心部とは一致している。第2パイプ54の径方向の厚さは、第1パイプ53の径方向の厚さよりも厚く構成されている。第1パイプ53の外径は、第2パイプ54の内径よりも小さく構成されているので、第1パイプ53と第2パイプ54との間には隙間Gが形成されている。第1パイプ53および第2パイプ54は、例えば金属(ステンレス鋼等)により構成されている。
【0025】
接合部55は、第1パイプ53と第2パイプ54とを接合する。接合部55は、第2パイプ54の両端に形成されている。各接合部55は、第2パイプ54の端部と、第1パイプ53の外周面53Bとを接合し、第2パイプ54の端部(外周面54B)から第1パイプ53の外周面53Bに向かって先細るテーパ面55Aを有する。各接合部55は、第2パイプ54の端部と第1パイプ53の外周面53Bとが溶着されて形成されている。
【0026】
接合部55は、以下のように形成される。まず、第1パイプ53と第2パイプ54とを治具にはめて、第1パイプ53の中心軸C1と第2パイプ54の中心軸C2とを同軸にし、第1パイプ53の軸方向の中心部と第2パイプ54の軸方向の中心部とを一致させた状態で、レーザ溶接により第1パイプ53と第2パイプ54と仮止めする。仮止めした第1パイプ53および第2パイプ54を治具から外し、第2パイプ54の端部にレーザ(例えば、YAGレーザ等)を当てながら、第1パイプ53および第2パイプ54を一周回す。この結果、第2パイプ54の端部と第1パイプ53の外周面53Bとが溶着され、接合部55が形成される。
【0027】
図1に示すように、ガイドチップ52は、略円柱状をなし、先端チップ51の先端側に設けられている。ガイドチップ52は、凹部52aと、貫通孔52bとを有する。凹部52aは、ガイドチップ52の基端面に開口する。凹部52aに第1パイプ53の先端部が挿入され、ガイドチップ52は、例えば、接着剤等により先端チップ51に固着されている。貫通孔52bは、中心軸C1(図2)に対して傾斜する方向に沿って形成されている。貫通孔52bには、図示せぬガイドワイヤが挿通される。ガイドチップ52の基端面は、略半球形状に形成されている。ガイドチップ52は、例えば樹脂により構成されている。
【0028】
本実施形態の先端チップ51によれば、第1パイプ53と、第1パイプ53の外周を覆うように設けられた第2パイプ54と、第1パイプ53と第2パイプ54とを互いに接合する接合部55とを備える。このように、先端チップ51は、2部品により構成されるので、容易且つ安価に先端チップ51を製造することができる。
【0029】
第2パイプ54の径方向の厚さは、第1パイプ53の径方向の厚さよりも厚く構成されている。これにより、第1パイプ53と第2パイプ54とをレーザ溶接により接合する場合には、第2パイプ54にレーザを当てることにより、第1パイプ53が薄くても第1パイプに穴が開くのを抑制することができ、接合作業を容易に行うことができる。
【0030】
接合部55は、第2パイプ54の端部と、第1パイプ53の外周面53Bとを接合し、第2パイプ54の端部から第1パイプ53の外周面53Bに向かって先細るテーパ面55Aを有する。これにより、医療用デバイス1が生体内に挿入または抜去される際に、先端チップ51が生体管腔の内壁に引っ掛かるのを抑制することができる。
【0031】
接合部55は、第2パイプ54の端部と第1パイプ53の外周面53Bとが溶着されて形成されている。このたた、第2パイプ54の端部の角部が取れる(溶ける)ので、先端チップ51が生体管腔の内壁を傷つけるのを防止することができる。
【0032】
本開示は、上述した実施形態の構成に限定されるものではない。特許請求の範囲によって示される本発明は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0033】
図3(a)は、変形例に係る先端チップ51の断面図であり、(b)は、(a)のVb-Vb線に沿った断面図である。
【0034】
図3に示すように、第1パイプ53は、その一部が外側に突出して第2パイプ54の内周面54Cに当接する複数の突起部53Cを有する。第1パイプ53が第2パイプ54に嵌合し、複数の突起部53Cにより第2パイプ54が第1パイプ53に支持された状態で、第1パイプ53の中心軸C1と第2パイプ54の中心軸C2は同軸上に位置する。このため、先端チップ51の製造時に、第1パイプ53に対する第2パイプ54のずれを抑制することができ、第1パイプ53と第2パイプ54との接合を容易に行うことができる。なお、複数の突起部53Cの数は、本変形例では、4個であったが、3個であってもよいし、5個以上であってもよい。
【0035】
第1パイプ53および第2パイプ54は、樹脂により構成されてもよい。接合部55の形成は、YAG溶接により行ったが、抵抗溶接等の他の溶接方法で形成してもよい。第1パイプ53と第2パイプ54とを接着剤またはロウ材により接合して、接合部55を形成してもよい。第1パイプ53の軸方向の中心部と第2パイプ54の軸方向の中心部とは一致していたが、一致していなくてもよい。
【符号の説明】
【0036】
1:医療用デバイス、 41:バスケット、 43:ワイヤ、 51:先端チップ、 53:第1パイプ、 53B:外周面、 53C:突起部、 54:第2パイプ、 55:接合部、 55A:テーパ面
図1
図2
図3