(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098712
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】画像検査装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240717BHJP
【FI】
B41J2/01 301
B41J2/01 451
B41J2/01 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002350
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】林 民鴻
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EB27
2C056EC06
(57)【要約】
【課題】生産性に影響を及ぼすことなく高速で印刷される印刷用紙に含まれるコードを読み取ることが可能な画像検査装置を提供する。
【解決手段】コードを撮像する撮像部53と、印刷装置2から送信される印刷ジョブデータに含まれる、印刷解像度、色情報、印刷装置のインクジェットヘッドが印刷用紙に向けて吐出するインクのドロップ数、印刷用紙の種類情報、を取得する情報取得部51と、情報取得部にて取得された各情報に基づいて、撮像部53がコードを撮像する撮像条件を、印刷装置2による印刷前に調整する調整部52を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置で印刷された印刷用紙に印刷されたコードを読み取って、印刷結果を検査する画像検査装置であって、
前記コードを撮像する撮像部と、
前記印刷装置における印刷ジョブデータに含まれる、印刷解像度、色情報、前記印刷装置のインクジェットヘッドが前記印刷用紙に向けて吐出するインクのドロップ数、前記印刷用紙の種類情報、を取得する情報取得部と、
前記情報取得部にて取得された各情報に基づいて、前記撮像部が前記コードを撮像する撮像条件を、前記印刷装置による印刷前に調整する調整部と、
を備えた画像検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置で印刷された印刷用紙に含まれるバーコード、QRコード(登録商標)などのコード情報を読み取るために、画像検査装置が用いられている。画像検査装置はカメラを備えており、印刷用紙のコード情報をカメラにて撮像してデコードする。
【0003】
インクジェット印刷装置で印刷されたコードは、印刷用紙自体の濃度、印刷したコードの滲み具合及び濃度が同一でないため、カメラで撮像される画像の画像調整を実施している。
【0004】
印刷装置から高速で排出される印刷用紙のコードを読み取るためには、画像調整を高速で処理する必要があり、高速画像処理が可能な高価なカメラが必要になる。
【0005】
特許文献1には、複数のパラメータに基づいて基準バンクを設定して、チューニング(画像調整)することが開示されている。この方法を用いることにより、高価なカメラを要することなく印刷用紙の排出速度の影響を軽減することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に開示された技術では、印刷実行時に徐々にコードの濃度が薄くなる、或いは、外光が入射する環境において外光の影響が時刻に応じて変化することがあり、このような場合には読取条件の再チューニングが必要となる。このため、製造ラインを停止させる必要が生じ、生産性に大きな影響を及ぼすという問題があった。
【0008】
本発明は、このような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、生産性に影響を及ぼすことなく高速で印刷される印刷用紙に含まれるコードを読み取ることが可能な画像検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願発明は、印刷装置で印刷された印刷用紙に印刷されたコードを読み取って、印刷結果を検査する画像検査装置であって、前記コードを撮像する撮像部と、前記印刷装置における印刷ジョブデータに含まれる、印刷解像度、色情報、前記印刷装置のインクジェットヘッドが前記印刷用紙に向けて吐出するインクのドロップ数、前記印刷用紙の種類情報、を取得する情報取得部と、前記情報取得部にて取得された各情報に基づいて、前記撮像部が前記コードを撮像する撮像条件を、前記印刷装置による印刷前に調整する調整部とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、生産性に影響を及ぼすことなく高速で印刷される印刷用紙に含まれるコードを読み取ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、実施形態に係る画像検査装置を含む印刷システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す調整部の詳細な構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る画像検査装置の処理手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、撮像部の撮像条件と、露光値及びゲインの関係を示す対応テーブルである。
【
図5】
図5は、モノクロ及びカラーの、複数のドロップ数によるコード情報の例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して、本発明の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、部材ないし部分の縦横の寸法や縮尺は実際のものとは異なることに留意すべきである。従って、具体的な寸法や縮尺は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0013】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものではない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
図1は、実施形態に係る画像検査装置を含む印刷システムの構成を示すブロック図である。
図1に示すように、印刷システム100は、給紙台1と、印刷装置2と、入力端末3と、画像処理サーバ4と、画像検査装置5と、排紙台6、を備えている。
【0015】
給紙台1は、複数の印刷用紙を積層して蓄積し、印刷装置2に印刷用紙を搬送する。印刷用紙は、インクジェット用紙、マルチ用紙、及びその他の用紙を含む。
【0016】
入力端末3は、印刷ジョブデータを入力する端末である。印刷ジョブデータは、印刷用紙、印刷解像度、印刷速度を含んでもよい。入力端末3は、印刷ジョブデータを画像処理サーバ4に出力する。
【0017】
画像処理サーバ4は、印刷ジョブデータに基づいて印刷用紙、印刷解像度、印刷速度を設定し、印刷装置2及び画像検査装置5に出力する。印刷用紙は、上述したようにインクジェット用紙、マルチ用紙などである。印刷解像度は例えば、300dpi、600dpi等のドロップ数である。
【0018】
印刷装置2は、例えば給紙台1から搬送された印刷用紙にインクを吐出して画像を形成するインクジェット方式の印刷装置である。印刷装置2は、画像処理サーバ4から出力される印刷用紙、印刷解像度、印刷速度の情報に基づいて、給紙台1から搬送される印刷用紙に印刷処理を実行する。印刷装置2は、印刷用紙にバーコード、QRコードなどのコードを印刷する。
【0019】
画像検査装置5は、情報取得部51と、調整部52と、撮像部53を備えており、印刷装置2で印刷された印刷用紙に含まれるコードを読み取る。コードの読み取り後の印刷用紙は排紙台6に搬送される。
【0020】
情報取得部51は、印刷装置2における印刷ジョブデータに含まれる、印刷解像度、色情報、印刷装置2のインクジェットヘッドが印刷用紙に向けて吐出するインクのドロップ数、印刷用紙の種類情報を取得する。
【0021】
撮像部53は、印刷用紙に印刷されているコード情報を撮像して読み取る。撮像部53は、例えばCIS(Contact Image Sensor)、エリアカメラである。撮像部53はまたLED(図示省略)を備えており、コード情報が印刷された印刷用紙に光を照射する。LEDは、明るさ、露光値、及びゲインを調整可能である。
【0022】
調整部52は
図2に示すように、コードパターン取得部521と、LED調整部522と、露光値調整部523と、ゲイン調整部524を備えている。
【0023】
コードパターン取得部521は、撮像部53で読み取られたコード情報を取得する。
【0024】
LED調整部522は、印刷用紙の種類、印刷装置2の印刷速度、印刷解像度に応じたドロップ数に基づいてLEDの明るさを設定する。
【0025】
図4は、用紙種類、印刷解像度、ドロップ数、LEDの明るさ(以下、これらを総称して「印刷条件」という)と、露光値及びゲインとの対応関係を示す対応テーブルである。LED調整部522は、
図4に示す対応テーブルを参照し、印刷条件に基づいてLEDの明るさを設定する。なお、例えば印刷解像度が300dpiの場合は印刷速度130ppm、印刷解像度が600dpiの場合は印刷速度160ppmに設定される。
【0026】
また、LED調整部522は、後述する露光値が所定の閾値を超えた場合、及び、ゲインが所定の閾値を超えた場合に、LEDの明るさを再設定する。
【0027】
露光値調整部523は、印刷条件に基づき、
図4に示した対応テーブルを参照して露光値を算出する。露光値調整部523は、算出された露光値が所定の閾値の範囲内であるか否かを判定する。
【0028】
ゲイン調整部524は、印刷条件に基づき、
図4に示した対応テーブルを参照して、ゲインを算出する。ゲイン調整部524は、算出されたゲインが所定の閾値の範囲内であるか否かを判定する。
【0029】
即ち、調整部52は、情報取得部51にて取得された各情報に基づいて、撮像部53がコードを撮像する撮像条件を、印刷装置2による印刷前に調整する。
【0030】
上述した情報取得部51及び調整部52は、例えば中央演算ユニット(CPU)や、RAM、ROM、ハードディスク等の記憶手段からなる一体型のコンピュータとして構成することができる。
【0031】
次に、上述のように構成された本実施形態に係る画像検査装置5の処理手順を、
図3に示すフローチャートを参照して説明する。この処理ではコードを検査する前段階で、画像検査装置5の調整部52がLEDの明るさを調整する。
【0032】
初めに
図3のステップS11において情報取得部51は、画像処理サーバ4から印刷ジョブデータを取得する。
【0033】
ステップS12においてLED調整部522は、受信した印刷ジョブデータに基づき、印刷装置2で印刷される印刷用紙の種類を認識する。印刷用紙は、例えばインクジェット用紙、マルチ用紙などである。
【0034】
ステップS13においてLED調整部522は、印刷ジョブデータに基づき印刷解像度を認識する。
【0035】
ステップS14においてLED調整部522は、ドロップ数を取得する。
【0036】
ステップS15においてLED調整部522は、
図4に示す対応テーブルを参照し、用紙種類、印刷解像度、及びドロップ数に基づいて、LEDの明るさレベルを設定する。
【0037】
ステップS16において露光値調整部523は、LEDの明るさレベルに応じた適正な露光値を算出し、ゲイン調整部524は、LEDの明るさレベルに応じた適正なゲインを算出する。例えば、
図4に示したように、印刷用紙がインクジェット用紙、印刷解像度が300dpi、ドロップ数が「7」、LEDの明るさのレベルが「1」である場合には、露光値が「1/160」、ゲインが「1」となる。
【0038】
ステップS17において、露光値調整部523は、ステップS15の処理で算出した露光値は所定の閾値の範囲内であるか否かを判定する。閾値の範囲内である場合には(S17;YES)、ステップS19に処理を進め、そうでなければ(S17;NO)、ステップS18に処理を進める。
【0039】
ステップS18において、ゲイン調整部524は、露光値が閾値の範囲内となるようにゲインを調整する。
【0040】
ステップS19において、ゲイン調整部524は、ステップS16の処理で算出したゲインが所定の閾値範囲内であるか否かを判定する。閾値の範囲内である場合には(S19;YES)、本処理を終了し、そうでなければ(S19;NO)、ステップS20に処理を進める。
【0041】
ステップS20において、LED調整部522は、LEDの明るさを最終調整する。即ち、調整部52は印刷ジョブデータの情報に基づき、露光値が所定の閾値を超えないように適切なゲイン値を算出する。更に、調整部52は、ゲインが所定の閾値を超えないように適切なLED明るさのレベルを自動調整する。
【0042】
その結果、例えば
図5に示すように印刷用紙に印刷されているコード情報がモノコード、カラーコードで、ドロップ数が「7」、「5」、「4」、「2」のように変化して濃淡が変化した場合でも、これらの状況に応じてLEDの明るさを適切なレベルに自動調整することができる。
【0043】
このように本実施形態に係る画像検査装置5では、印刷装置2がコード情報を印刷する前の段階で、印刷条件を含む印刷ジョブデータを画像検査装置5に入力し、画像検査装置5に設けられるLEDの明るさレベルを調整する。このため、撮像部53として、リアルタイム画像処理能力の低いカメラなどを用いる場合であっても、コード情報の誤検出を抑制し、検査信頼性を向上させつつ、生産性を維持することが可能になる。
【0044】
また、印刷開始前に、印刷用紙の色、印刷解像度、ドロップ数、LEDの明るさの情報を取得するので、多数パラメータの組み合わせで、2次階層だけではなく、カラーの3次階層の色深さ、明るさの自動チューニングを適用することができる。
【0045】
また、印刷開始前に、コード情報の印刷色を認識するので、印刷用紙の色とコード情報の印刷色を区別することができ、コード情報の印刷解像度、濃度、カラープロファイルの変化に基づいて初期的なチューニングを実行した上で、露光値、ゲインの自動調整により、LEDの明るさを設定することができる。
【0046】
また、メーリングフィニッシャーのような厚紙と普通紙が連続で混在するケースでは、検査の前に認識可能な範囲で最適な読み取り条件を反映するので、厚紙と普通紙が連続で混在する場合においてもコード情報の読み取り精度を高めることが可能になる。
【0047】
また、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0048】
[付記1]
印刷装置で印刷された印刷用紙に印刷されたコードを読み取って、印刷結果を検査する画像検査装置であって、
前記コードを撮像する撮像部と、
前記印刷装置における印刷ジョブデータに含まれる、印刷解像度、色情報、前記印刷装置のインクジェットヘッドが前記印刷用紙に向けて吐出するインクのドロップ数、前記印刷用紙の種類情報、を取得する情報取得部と、
前記情報取得部にて取得された各情報に基づいて、前記撮像部が前記コードを撮像する撮像条件を、前記印刷装置による印刷前に調整する調整部と、
を備えた画像検査装置。
【符号の説明】
【0049】
1 給紙台
2 印刷装置
3 入力端末
4 画像処理サーバ
5 画像検査装置
6 排紙台
51 情報取得部
52 調整部
53 撮像部
100 印刷システム
521 コードパターン取得部
522 LED調整部
523 露光値調整部
524 ゲイン調整部