(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098713
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】燃料電池車の起動制御装置
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04537 20160101AFI20240717BHJP
H01M 8/04225 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/04302 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20240717BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20240717BHJP
B60L 58/40 20190101ALI20240717BHJP
B60L 58/31 20190101ALI20240717BHJP
【FI】
H01M8/04537
H01M8/04225
H01M8/04302
H01M8/0438
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04313
B60L58/40
B60L58/31
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002351
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】小和田 稔
(72)【発明者】
【氏名】波間 惇
【テーマコード(参考)】
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
5H125AA03
5H125AC07
5H125AC12
5H125BD07
5H125BD08
5H125CA08
5H125DD05
5H125EE27
5H125EE47
5H125EE48
5H125EE49
5H125EE55
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC04
5H127BA02
5H127BA33
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB18
5H127BB39
5H127DA01
5H127DB86
5H127DB92
5H127DB99
5H127DC50
5H127FF08
5H127FF10
(57)【要約】
【課題】燃料電池車の起動時に、燃料電池からの排水及び作動音の発生を抑制することができる燃料電池車の起動制御装置を提供する。
【解決手段】起動制御装置1は、燃料電池車2の電源スイッチ30がONされた後、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があるかどうかを判定するEV走行モード要求判定部42と、EV走行モード要求判定部42によりEV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定されたときに、燃料電池車2をEV走行モードで起動させるように制御するEV走行モード許可判定部46及びEV走行制御部44とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主として燃料電池の発電電力を用いて走行する第1走行モードとバッテリの放電電力を用いて走行する第2走行モードとを切替可能な燃料電池車の起動制御装置であって、
前記燃料電池車の電源がONされた後、前記第2走行モードにおいて前記燃料電池車を起動させる要求があるかどうかを判定する要求判定部と、
前記要求判定部により前記第2走行モードにおいて前記燃料電池車を起動させる要求があると判定されたときに、前記燃料電池車を前記第2走行モードで起動させるように制御する起動制御部とを備える燃料電池車の起動制御装置。
【請求項2】
前記燃料電池車は、前記燃料電池に貯まった生成水を排水させる指示操作を行う手動操作部を有し、
前記要求判定部は、前記燃料電池車の電源が前回OFFされる直前に、前記手動操作部により前記生成水を排水させる指示操作が行われていたかどうかを判断し、前記電源が前回OFFされる直前に前記生成水を排水させる指示操作が行われていたときは、前記第2走行モードにおいて前記燃料電池車を起動させる要求があると判定する請求項1記載の燃料電池車の起動制御装置。
【請求項3】
前記要求判定部は、前記燃料電池車の電源が前回OFFされる直前に、前記燃料電池車の走行モードが前記第2走行モードに切り替わっていたかどうかを判断し、前記電源が前回OFFされる直前に前記燃料電池車の走行モードが前記第2走行モードに切り替わっていたときは、前記第2走行モードにおいて前記燃料電池車を起動させる要求があると判定する請求項1記載の燃料電池車の起動制御装置。
【請求項4】
前記燃料電池車は、前記燃料電池車を前記第2走行モードで走行させる指示操作を行う手動操作部を有し、
前記要求判定部は、前記手動操作部により前記燃料電池車を前記第2走行モードで走行させる指示操作が行われたかどうかを判断し、前記燃料電池車を前記第2走行モードで走行させる指示操作が行われたときは、前記第2走行モードにおいて前記燃料電池車を起動させる要求があると判定する請求項1記載の燃料電池車の起動制御装置。
【請求項5】
前記燃料電池車は、前記燃料電池車の走行を補助するカーナビゲーションを有し、
前記要求判定部は、前記カーナビゲーションの情報に基づいて、前記燃料電池車が前記カーナビゲーションに事前に登録された指定場所に存在しているかどうかを判断し、前記燃料電池車が前記指定場所に存在しているときは、前記第2走行モードにおいて前記燃料電池車を起動させる要求があると判定する請求項1記載の燃料電池車の起動制御装置。
【請求項6】
前記バッテリの充電率を検知する充電率検知部を更に備え、
前記起動制御部は、前記要求判定部により前記第2走行モードにおいて前記燃料電池車を起動させる要求があると判定されると共に、前記充電率検知部により検知された前記バッテリの充電率が予め決められた閾値以上であるときに、前記燃料電池車を前記第2走行モードで起動させるように制御する請求項1記載の燃料電池車の起動制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車の起動制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池車の起動制御装置としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の起動制御装置は、燃料電池車のイグニッション(IG)がONされた後、燃料電池の起動が終了するまでは、バッテリの蓄電電力を用いて走行するバッテリ走行を実施し、燃料電池の起動が終了すると、燃料電池の発電電力とバッテリの蓄電電力とを併用して走行する燃料電池発電走行を実施する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術においては、燃料電池の起動が終了した後、燃料電池の発電により生成された水(生成水)が燃料電池の貯水タンクに貯まると、貯水タンクから生成水が排水されてしまう。また、燃料電池の起動が終了するまでの燃料電池発電準備中にも、燃料及び空気が燃料電池スタックに供給されることで発電が行われるため、貯水タンクから生成水が排水されることがある。ところで、燃料電池車は、例えば工場敷地内や立体駐車場等のように排水が許容されない場所に駐車することもある。また、燃料電池が起動されると、燃料電池の作動音が発生するが、騒音が許容されない場所に燃料電池車が駐車することもある。このため、燃料電池車が駐車している場所によっては、燃料電池車の起動時に、燃料電池からの排水及び作動音の発生を抑制することが望まれている。
【0005】
本発明の目的は、燃料電池車の起動時に、燃料電池からの排水及び作動音の発生を抑制することができる燃料電池車の起動制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の一態様は、主として燃料電池の発電電力を用いて走行する第1走行モードとバッテリの放電電力を用いて走行する第2走行モードとを切替可能な燃料電池車の起動制御装置であって、燃料電池車の電源がONされた後、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があるかどうかを判定する要求判定部と、要求判定部により第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定されたときに、燃料電池車を第2走行モードで起動させるように制御する起動制御部とを備える。
【0007】
このような起動制御装置においては、燃料電池車の電源がONされた後、バッテリの放電電力を用いて走行する第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があるかどうかが判定される。そして、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定されたときは、燃料電池車が第2走行モードで起動するように制御される。このため、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があるときは、燃料電池が起動せず、燃料電池の発電が行われない。従って、燃料電池において水が生成されないため、燃料電池から生成水を排水しなくて済む。また、燃料電池が起動しないため、燃料電池から作動音が発生しない。これにより、燃料電池車の起動時に、燃料電池からの排水及び作動音の発生を抑制することができる。
【0008】
(2)上記の(1)において、燃料電池車は、燃料電池に貯まった生成水を排水させる指示操作を行う手動操作部を有し、要求判定部は、燃料電池車の電源が前回OFFされる直前に、手動操作部により生成水を排水させる指示操作が行われていたかどうかを判断し、電源が前回OFFされる直前に生成水を排水させる指示操作が行われていたときは、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定してもよい。
【0009】
燃料電池車の電源が前回OFFされる直前に、手動操作部によって燃料電池に貯まった生成水を排水させる指示操作が行われていた場合は、燃料電池車の電源がONされて燃料電池が起動されると、燃料電池に貯まった生成水が排水される可能性がある。そこで、電源が前回OFFされる直前に生成水を排水させる指示操作が行われていたときは、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定することにより、燃料電池車が自動的に第2走行モードで起動する。
【0010】
(3)上記の(1)において、要求判定部は、燃料電池車の電源が前回OFFされる直前に、燃料電池車の走行モードが第2走行モードに切り替わっていたかどうかを判断し、電源が前回OFFされる直前に燃料電池車の走行モードが第2走行モードに切り替わっていたときは、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定してもよい。
【0011】
燃料電池車の電源が前回OFFされる直前に、燃料電池車の走行モードが第2走行モードに切り替わっていた場合は、排水が許容されない場所または騒音が許容されない場所に燃料電池車が存在している可能性がある。そこで、電源が前回OFFされる直前に燃料電池車の走行モードが第2走行モードに切り替わっていたときは、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定することにより、燃料電池車が自動的に第2走行モードで起動する。
【0012】
(4)上記の(1)において、燃料電池車は、燃料電池車を第2走行モードで走行させる指示操作を行う手動操作部を有し、要求判定部は、手動操作部により燃料電池車を第2走行モードで走行させる指示操作が行われたかどうかを判断し、燃料電池車を第2走行モードで走行させる指示操作が行われたときは、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定してもよい。
【0013】
燃料電池車の電源がONされた後に、手動操作部により燃料電池車を第2走行モードで走行させる指示操作が行われた場合は、燃料電池車の運転者に第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させたい意図があると考えられる。そこで、手動操作部により燃料電池車を第2走行モードで走行させる指示操作が行われたときは、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定することにより、燃料電池車が運転者の意志により第2走行モードで起動する。
【0014】
(5)上記の(1)において、燃料電池車は、燃料電池車の走行を補助するカーナビゲーションを有し、要求判定部は、カーナビゲーションの情報に基づいて、燃料電池車がカーナビゲーションに事前に登録された指定場所に存在しているかどうかを判断し、燃料電池車が指定場所に存在しているときは、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定してもよい。
【0015】
カーナビゲーションに事前に指定場所が登録されている場合は、燃料電池車の運転者が燃料電池を起動させたくない場所を認識していると考えられる。そこで、燃料電池車がカーナビゲーションに事前に登録された指定場所に存在しているときは、第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定することにより、燃料電池車が自動的に第2走行モードで起動する。
【0016】
(6)上記の(1)~(5)の何れかにおいて、起動制御装置は、バッテリの充電率を検知する充電率検知部を更に備え、起動制御部は、要求判定部により第2走行モードにおいて燃料電池車を起動させる要求があると判定されると共に、充電率検知部により検知されたバッテリの充電率が予め決められた閾値以上であるときに、燃料電池車を第2走行モードで起動させるように制御してもよい。
【0017】
このような構成では、燃料電池車が第2走行モードで起動した後、燃料電池車がそのまま第2走行モードで走行するときに、バッテリの蓄電電力が足りなくなることを抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、燃料電池車の起動時に、燃料電池からの排水及び作動音の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る起動制御装置を備えた燃料電池車の要部を示す概略構成図である。
【
図2】
図1に示された起動制御装置を含む車両制御装置のブロック図である。
【
図3】
図2に示されたEV走行モード要求判定部により実行される要求判定処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図2に示されたEV走行モード許可判定部により実行される許可判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る起動制御装置を備えた燃料電池車の要部を示す概略構成図である。
図1において、本実施形態の起動制御装置1は、燃料電池車2の起動制御を行う装置である。起動制御装置1は、車両制御装置5に含まれている。車両制御装置5は、燃料電池車2に搭載されている。燃料電池車2は、大型トラック等の大型商用車である。
【0022】
燃料電池車2は、発電を行う燃料電池3と、充放電可能なバッテリ4とを備えている。燃料電池車2は、燃料電池3及びバッテリ4を動力源として駆動するパワートレーンとなっている。燃料電池車2は、通常走行モードとEV走行モードとを切替可能である。
【0023】
通常走行モードは、主として燃料電池3の発電電力を用いて走行する第1走行モードである。具体的には、通常走行モードは、燃料電池3の発電電力及びバッテリ4の放電電力を用いて走行する走行モードである。燃料電池3の発電電力は、燃料電池3により発電して得られた電力である。バッテリ4の放電電力は、バッテリ4に蓄えられた電力である。
【0024】
EV走行モードは、バッテリ4の放電電力を用いて走行する第2走行モードである。具体的には、EV走行モードは、燃料電池3の発電電力を用いずに、バッテリ4の放電電力のみを用いて走行する走行モードである。
【0025】
燃料電池3は、燃料電池スタック10と、燃料供給源11と、燃料供給管12と、燃料流量制御弁13と、空気供給源14と、空気供給管15と、空気流量制御弁16と、貯水タンク17と、排水管18と、排水バルブ19とを有している。
【0026】
燃料電池スタック10は、燃料(ここでは水素)と空気中の酸素とを化学反応させて発電を行うことにより、電力を作り出す。燃料電池スタック10は、複数の単セルが積層されてなる構造を有している。燃料電池スタック10では、水素と酸素とが化学反応するため、水が生成される。
【0027】
燃料供給源11は、燃料電池スタック10に燃料を供給する。燃料供給管12は、燃料供給源11と燃料電池スタック10とを接続し、燃料供給源11から燃料電池スタック10に燃料が流れる配管である。燃料流量制御弁13は、燃料供給管12に配設され、燃料電池スタック10に供給される燃料の流量を制御する電磁式の流量制御弁である。
【0028】
空気供給源14は、燃料電池スタック10に空気を供給する。空気供給管15は、空気供給源14と燃料電池スタック10とを接続し、空気供給源14から燃料電池スタック10に空気が流れる配管である。空気流量制御弁16は、空気供給管15に配設され、燃料電池スタック10に供給される空気の流量を制御する電磁式の流量制御弁である。
【0029】
貯水タンク17は、配管20を介して燃料電池スタック10と接続されている。貯水タンク17は、燃料電池スタック10により生成された水(生成水)を貯めるタンクである。排水管18は、貯水タンク17と接続され、貯水タンク17に貯められた生成水を排出する配管である。
【0030】
排水バルブ19は、排水管18に配設され、生成水の排出流路を開閉する電磁式の開閉弁である。排水バルブ19が開弁することで、貯水タンク17に貯められた生成水が排水管18を流れて、排水管18の先端に設けられた排出口18aから排出される。
【0031】
なお、生成水は、燃料電池スタック10内に溜まって貯水状態となっていてもよい。この場合、生成水の一部は、燃料電池スタック10のアノードへ透過する。アノードは、気液分離器で生成水を貯水し、貯水量が一定以上になると生成水を排出する。
【0032】
バッテリ4としては、例えばリチウムイオン二次電池等が使用される。燃料電池3の発電電力がバッテリ4に供給されることで、バッテリ4が充電される。
【0033】
また、燃料電池車2は、駆動回路21と、駆動回路22と、電力分配器23と、インバータ24と、走行モータ25とを備えている。
【0034】
駆動回路21は、燃料電池スタック10と電力分配器23との開閉を行うスイッチング回路(不図示)を有している。駆動回路22は、バッテリ4と電力分配器23との開閉を行うスイッチング回路(不図示)を有している。
【0035】
電力分配器23は、燃料電池3の発電電力及びバッテリ4の放電電力の分配を行う。具体的には、電力分配器23は、燃料電池3の発電電力及びバッテリ4の放電電力をインバータ24に供給する。また、電力分配器23は、燃料電池3の発電電力をバッテリ4に供給することで、バッテリ4を充電する。
【0036】
インバータ24は、燃料電池3及びバッテリ4からの直流電力を交流電力に変換して走行モータ25に供給する。
【0037】
走行モータ25は、燃料電池車2の駆動輪(不図示)を回転駆動させる。走行モータ25としては、例えば3相交流同期モータが使用される。
【0038】
車両制御装置5は、
図2にも示されるように、電源スイッチ30と、EV走行スイッチ31と、バッテリ状態センサ32と、カーナビゲーション36と、排水ボタン37と、ECU(ElectronicControl Unit)40とを備えている。
【0039】
電源スイッチ30は、燃料電池車2の運転席(不図示)に配置されている。電源スイッチ30は、燃料電池車2を起動(始動)するスイッチである。電源スイッチ30は、燃料電池車2の電源をON/OFFするするスイッチである。電源スイッチ30がON操作されると、燃料電池車2の電源がONとなり、燃料電池車2の各電気系にバッテリ4の蓄電電力が供給される。
【0040】
EV走行スイッチ31は、燃料電池車2の運転席(不図示)に配置されている。EV走行スイッチ31は、燃料電池車2の運転者が燃料電池車2をEV走行モードで走行させる指示操作を行う手動操作スイッチ(手動操作部)である。
【0041】
バッテリ状態センサ32は、バッテリ4の状態を検出するセンサである。バッテリ状態センサ32には、バッテリ4の電圧を計測する電圧計、バッテリ4の出力電力を計測する電力計及びバッテリ4の温度を計測する温度計等が含まれている。
【0042】
カーナビゲーション36は、燃料電池車2の運転席(不図示)に配置されている。カーナビゲーション36は、燃料電池車2の現在位置を表示したり、目的地への燃料電池車2の経路案内を行う等、燃料電池車2の走行を補助する機器である。
【0043】
排水ボタン37は、燃料電池車2の運転席(不図示)に配置されている。排水ボタン37は、運転者が燃料電池3に貯まった生成水を排水させる指示操作を行う手動操作ボタン(手動操作部)である。
【0044】
ECU40は、例えばCPU、ROM、RAM及び入出力インターフェース等から構成されている。ECU40には、記憶部41が内蔵されている。
【0045】
ECU40は、
図2に示されるように、EV走行モード要求判定部42と、通常走行制御部43と、EV走行制御部44と、バッテリ充電率推定部45と、EV走行モード許可判定部46と、情報保存部47と、排水制御部48とを有している。
【0046】
EV走行モード要求判定部42は、燃料電池車2の電源スイッチ30がON操作された直後、記憶部41に記憶された情報、EV走行スイッチ31の操作信号及びカーナビゲーション36の登録情報に基づいて、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があるかどうかを判定する。EV走行モード要求判定部42は、記憶部41と協働して、燃料電池車2の電源がONされた後、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があるかどうかを判定する要求判定部を構成する。
【0047】
通常走行制御部43は、燃料電池車2が通常走行モードで走行するように、燃料流量制御弁13、空気流量制御弁16、駆動回路21,22及び電力分配器23を制御する。
【0048】
具体的には、通常走行制御部43は、燃料流量制御弁13及び空気流量制御弁16の開度を制御して燃料電池3の発電を行うと共に、燃料電池3の発電電力及びバッテリ4の放電電力がインバータ24に供給されるように駆動回路21,22及び電力分配器23を制御する。また、通常走行制御部43は、必要に応じて燃料電池3の発電電力がバッテリ4に供給されるように駆動回路21,22及び電力分配器23を制御する。
【0049】
EV走行制御部44は、燃料電池車2がEV走行モードで走行するように、燃料流量制御弁13、空気流量制御弁16、駆動回路21,22及び電力分配器23を制御する。
【0050】
具体的には、EV走行制御部44は、燃料流量制御弁13及び空気流量制御弁16を全閉状態となるように制御することで、燃料電池3の発電を停止させると共に、バッテリ4の放電電力がインバータ24に供給されるように駆動回路21,22及び電力分配器23を制御する。
【0051】
バッテリ充電率推定部45は、バッテリ状態センサ32により検出されたバッテリ4の状態に基づいて、バッテリ4の充電率(SOC:Stateof charge)を推定する。バッテリ充電率推定部45は、例えば電圧計の計測値からバッテリ4の開放電圧を算出し、バッテリ4の開放電圧からバッテリ4の充電率を求める。なお、バッテリ4は、開放電圧が高くなるに従って充電率が高くなるような特性を有している。バッテリ充電率推定部45は、バッテリ状態センサ32と協働して、バッテリ4の充電率を検知する充電率検知部を構成する。
【0052】
EV走行モード許可判定部46は、EV走行モード要求判定部42による判定結果及びバッテリ充電率推定部45による推定結果に基づいて、EV走行モードでの走行を許可するかどうかを判定する。
【0053】
EV走行モード許可判定部46は、EV走行制御部44と協働して、EV走行モード要求判定部42によりEV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定されたときに、燃料電池車2をEV走行モードで起動させるように制御する起動制御部を構成する。
【0054】
情報保存部47は、燃料電池車2の各種情報を記憶部41に保存する。具体的には、情報保存部47は、燃料電池車2の電源スイッチ30がOFF操作される直前における排水ボタン37の操作信号及び燃料電池車2の走行モード等の情報を記憶部41に保存する。
【0055】
排水制御部48は、排水ボタン37がON操作されたときに、排水バルブ19を開くように制御する。すると、排水バルブ19が開弁するため、燃料電池3に貯められた生成水が排水される。
【0056】
以上において、記憶部41、EV走行モード要求判定部42、通常走行制御部43、EV走行制御部44、バッテリ充電率推定部45及びEV走行モード許可判定部46は、本実施形態の起動制御装置1を構成する。
【0057】
図3は、EV走行モード要求判定部42により実行される要求判定処理の手順を示すフローチャートである。本処理は、電源スイッチ30がOFF状態からON操作されると実行される。
【0058】
図3において、EV走行モード要求判定部42は、まず記憶部41に記憶された情報に基づいて、電源スイッチ30が前回OFF操作される直前に、排水ボタン37がON操作されていたかどうかを判断する(手順S101)。
【0059】
EV走行モード要求判定部42は、電源スイッチ30が前回OFF操作される直前に、排水ボタン37がON操作されていたと判断したときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定する(手順S102)。
【0060】
EV走行モード要求判定部42は、電源スイッチ30が前回OFF操作される直前に、排水ボタン37がON操作されていないと判断したときは、記憶部41に記憶された情報に基づいて、電源スイッチ30が前回OFF操作される直前に、燃料電池車2の走行モードが通常走行モードからEV走行モードに切り替わっていたかどうかを判断する(手順S103)。
【0061】
EV走行モード要求判定部42は、電源スイッチ30が前回OFF操作される直前に、燃料電池車2の走行モードがEV走行モードに切り替わっていたと判断したときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定する(手順S102)。
【0062】
EV走行モード要求判定部42は、電源スイッチ30が前回OFF操作される直前に、燃料電池車2の走行モードがEV走行モードに切り替わっていないと判断したときは、EV走行スイッチ31の操作信号に基づいて、EV走行スイッチ31がON操作されたかどうかを判断する(手順S104)。
【0063】
EV走行モード要求判定部42は、EV走行スイッチ31がON操作されたと判断したときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定する(手順S102)。
【0064】
EV走行モード要求判定部42は、EV走行スイッチ31がON操作されていないと判断したときは、カーナビゲーション36の登録情報に基づいて、燃料電池車2がカーナビゲーション36に事前に登録された指定場所に存在しているかどうかを判断する(手順S105)。指定場所は、例えば工場敷地内、自宅駐車場または立体駐車場等のように排水及び騒音が許容されない場所である。つまり、指定場所は、排水及び騒音が許容されないために、燃料電池3を起動したくない場所である。
【0065】
EV走行モード要求判定部42は、燃料電池車2がカーナビゲーション36に事前に登録された指定場所に存在していると判断したときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定する(手順S102)。
【0066】
EV走行モード要求判定部42は、燃料電池車2がカーナビゲーション36に事前に登録された指定場所に存在していないと判断したときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求がないと判定する(手順S106)。
【0067】
図4は、EV走行モード許可判定部46により実行される許可判定処理の手順を示すフローチャートである。本処理も、電源スイッチ30がOFF状態からON操作されると実行される。
【0068】
図4において、EV走行モード許可判定部46は、まずEV走行モード要求判定部42による判定結果から、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があるかどうかを判断する(手順S111)。
【0069】
EV走行モード許可判定部46は、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判断したときは、バッテリ充電率推定部45により推定されたバッテリ4の充電率が予め決められた閾値(A%)以上であるかどうかを判断する(手順S112)。閾値は、例えばバッテリ4の充電率の上限値である。バッテリ4の充電率の上限値は、バッテリ4の満充電に近い値(例えば85%~95%)である。
【0070】
EV走行モード許可判定部46は、バッテリ4の充電率が閾値以上であると判断したときは、EV走行モードでの起動を許可する(手順S113)。EV走行モードでの起動が許可されると、EV走行制御部44によって燃料電池車2がEV走行モードで起動するように制御される。
【0071】
EV走行モード許可判定部46は、手順S111でEV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求がないと判断したとき、または手順S112でバッテリ4の充電率が閾値以上でないと判断したときは、EV走行モードでの起動を許可しない(手順S114)。EV走行モードでの起動が許可されないときは、通常走行制御部43によって燃料電池車2が通常走行モードで起動するように制御される。
【0072】
以上のように本実施形態にあっては、燃料電池車2の電源スイッチ30がONされた後、バッテリ4の放電電力を用いて走行するEV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があるかどうかが判定される。そして、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定されたときは、燃料電池車2がEV走行モードで起動するように制御される。このため、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があるときは、燃料電池3が起動せず、燃料電池3の発電が行われない。従って、燃料電池3において水が生成されないため、燃料電池3から生成水を排水しなくて済む。また、燃料電池3が起動しないため、燃料電池3から作動音が発生しない。これにより、燃料電池車2の駐車場所に関わらず、燃料電池車2の起動時に、燃料電池3からの排水及び作動音の発生を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態では、燃料電池車2の電源スイッチ30が前回OFFされる直前に、排水ボタン37により生成水を排水させる指示操作が行われていたかどうかが判断され、電源スイッチ30が前回OFFされる直前に生成水を排水させる指示操作が行われていたときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定される。燃料電池車2の電源スイッチ30が前回OFFされる直前に、排水ボタン37によって燃料電池3に貯まった生成水を排水させる指示操作が行われていた場合は、燃料電池車2の電源スイッチ30がONされて燃料電池3が起動されると、燃料電池3に貯まった生成水が排水される可能性がある。そこで、電源スイッチ30が前回OFFされる直前に生成水を排水させる指示操作が行われていたときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定することにより、燃料電池車2が自動的にEV走行モードで起動する。
【0074】
また、本実施形態では、燃料電池車2の電源スイッチ30が前回OFFされる直前に、燃料電池車2の走行モードがEV第2走行モードに切り替わっていたかどうかが判断され、電源スイッチ30が前回OFFされる直前に燃料電池車2の走行モードがEV走行モードに切り替わっていたときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定される。燃料電池車2の電源スイッチ30が前回OFFされる直前に、燃料電池車2の走行モードがEV走行モードに切り替わっていた場合は、排水が許容されない場所または騒音が許容されない場所に燃料電池車2が存在している可能性がある。そこで、電源スイッチ30が前回OFFされる直前に燃料電池車2の走行モードがEV走行モードに切り替わっていたときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定することにより、燃料電池車2が自動的にEV走行モードで起動する。
【0075】
また、本実施形態では、EV走行スイッチ31により燃料電池車2をEV走行モードで走行させる指示操作が行われたかどうかが判断され、燃料電池車2をEV走行モードで走行させる指示操作が行われたときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定される。燃料電池車2の電源スイッチ30がONされた後に、EV走行スイッチ31により燃料電池車2をEV走行モードで走行させる指示操作が行われた場合は、燃料電池車2の運転者にEV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させたい意図があると考えられる。そこで、EV走行スイッチ31により燃料電池車2をEV走行モードで走行させる指示操作が行われたときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定することにより、燃料電池車2が運転者の意志によりEV走行モードで起動する。
【0076】
また、本実施形態では、カーナビゲーション36の情報に基づいて、燃料電池車2がカーナビゲーション36に事前に登録された指定場所に存在しているかどうかが判断され、燃料電池車2が指定場所に存在しているときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定される。カーナビゲーション36に事前に指定場所が登録されている場合は、燃料電池車2の運転者が燃料電池3を起動させたくない場所を認識していると考えられる。そこで、燃料電池車2がカーナビゲーション36に事前に登録された指定場所に存在しているときは、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定することにより、燃料電池車2が自動的にEV走行モードで起動する。
【0077】
また、本実施形態では、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定されると共に、バッテリ4の充電率が予め決められた閾値以上であるときに、燃料電池車2がEV走行モードで起動するように制御される。このため、燃料電池車2がEV走行モードで起動した後、燃料電池車2がそのままEV走行モードで走行するときに、バッテリ4の蓄電電力が足りなくなることを抑制できる。
【0078】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求があると判定されたときは、燃料電池車2がEV走行モードで起動するように制御され、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求がないと判定されたときは、燃料電池車2が通常走行モードで起動するように制御されているが、特にそのような形態には限られない。例えば、EV走行モードにおいて燃料電池車2を起動させる要求がないと判定されたときでも、バッテリ4の充電率が閾値以上であるときは、燃料電池車2をEV走行モードで起動させるように制御してもよい。
【0079】
また、上記実施形態では、燃料流量制御弁13及び空気流量制御弁16を全閉状態にして、燃料電池スタック10への燃料及び空気の供給を停止させることで、燃料電池3の発電を停止させているが、特にその形態には限られず、例えば燃料電池3の電源(不図示)をOFFにして、燃料電池3の運転自体を停止させることで、燃料電池3の発電を停止させてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、燃料として水素が使用されているが、使用する燃料としては、特に水素には限られず、天然ガスやメタノール等であってもよい。この場合には、燃料を改質して水素を生成する改質器が必要となる。
【0081】
また、上記実施形態では、燃料電池車2が大型商用車であるが、燃料電池車2としては特に大型商用車には限られず、小型商用車や乗用車等であってもよい。
【0082】
この場合、燃料電池車2が通常走行モードで走行するときに、燃料電池車2の負荷に応じて燃料電池車2の駆動形態を変えてもよい。例えば、軽負荷時には、燃料電池3の発電を停止させて、バッテリ4の放電電力のみを用いて燃料電池車2を駆動し、高負荷時には、燃料電池3の発電電力とバッテリ4の放電電力とを用いて燃料電池車2を駆動してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1…起動制御装置、2…燃料電池車、3…燃料電池、4…バッテリ、30…電源スイッチ(電源)、31…EV走行スイッチ(手動操作部)、32…バッテリ状態センサ(充電率検知部)、36…カーナビゲーション、37…排水ボタン(手動操作部)、41…記憶部(要求判定部)、42…EV走行モード要求判定部(要求判定部)、44…EV走行制御部(起動制御部)、45…バッテリ充電率推定部(充電率検知部)、46…EV走行モード許可判定部(起動制御部)。