(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098714
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】空気処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240717BHJP
B01J 20/34 20060101ALI20240717BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20240717BHJP
F24F 8/50 20210101ALI20240717BHJP
F24F 11/65 20180101ALI20240717BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20240717BHJP
F24F 8/80 20210101ALI20240717BHJP
F24F 11/61 20180101ALI20240717BHJP
F24F 11/526 20180101ALI20240717BHJP
【FI】
B01D53/04 220
B01J20/34 D
B01J20/34 H
A61L9/014
F24F8/50
F24F11/65
F24F11/74
F24F8/80 260
F24F8/80 242
F24F11/61
F24F11/526
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002354
(22)【出願日】2023-01-11
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 利夫
(72)【発明者】
【氏名】ファン リン
(72)【発明者】
【氏名】原 聡
(72)【発明者】
【氏名】鈴村 啓
【テーマコード(参考)】
3L260
4C180
4D012
4G066
【Fターム(参考)】
3L260AB18
3L260BA09
3L260CA17
3L260CB62
3L260EA06
3L260FA02
3L260FA07
3L260FC04
3L260FC14
3L260GA17
4C180AA02
4C180BB08
4C180BB09
4C180CC04
4C180EA02X
4C180EA14X
4C180EA14Y
4C180EA22X
4C180EA26X
4C180EA64X
4C180HH05
4C180KK01
4C180LL20
4D012BA01
4D012BA02
4D012BA03
4D012CB13
4D012CB17
4D012CD05
4D012CE01
4D012CE02
4D012CF02
4D012CF05
4D012CF10
4D012CG01
4D012CG03
4G066AA02D
4G066AA05B
4G066AA05C
4G066AA50D
4G066AA61B
4G066AA72B
4G066CA02
4G066CA23
4G066CA28
4G066CA52
4G066DA03
4G066GA02
(57)【要約】
【課題】異臭の発生を抑える空気処理装置を提供する。
【解決手段】室内空気を処理する空気処理装置であって、ケーシング(10)内に形成される空気通路(P)と、空気を搬送する第1搬送部(21)と、空気中に含まれる特定物質を捕捉する第1捕捉部(31)と、第1捕捉部(31)から特定物質を脱離させる再生部(40)と、第1捕捉部(31)から脱離した特定物質を捕捉する交換可能な第2捕捉部(32)と、制御部(C)とを備え、制御部(C)は、空気通路(P)を通る空気から特定物質を第1捕捉部(31)に捕捉させる通常運転と、第1捕捉部(31)から特定物質を脱離させると共に、脱離した該特定物質を第2捕捉部(32)に捕捉させる再生運転とを実行する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内空気を処理する空気処理装置であって、
ケーシング(10)と、
前記ケーシング(10)内に形成される空気通路(P)と、
前記空気通路(P)の一端に連通し、室内の空気を吸い込む吸込口(11)と、
前記空気通路(P)の他端に連通し、室内に空気を吹き出す吹出口(12)と、
前記空気通路(P)に配置され、前記吸込口(11)から前記吹出口(12)に向かって空気を搬送する第1搬送部(21)と、
前記空気通路(P)に配置され、空気中に含まれる特定物質を捕捉する第1捕捉部(31)と、
前記第1捕捉部(31)から前記特定物質を脱離させる再生部(40)と、
前記空気通路(P)に配置され、前記第1捕捉部(31)から脱離した前記特定物質を捕捉する交換可能な第2捕捉部(32)と、
前記第1搬送部(21)及び前記再生部(40)を制御する制御部(C)とを備え、
前記制御部(C)は、
前記空気通路(P)を通る空気から前記特定物質を前記第1捕捉部(31)に捕捉させる通常運転と、
前記第1捕捉部(31)から前記特定物質を脱離させると共に、脱離した該特定物質を前記第2捕捉部(32)に捕捉させる再生運転とを実行する
空気処理装置。
【請求項2】
前記制御部(C)は、前記再生運転時の前記第1搬送部(21)の風量を前記通常運転時の前記第1搬送部(21)の風量よりも小さくする、または前記再生運転時に前記第1搬送部(21)の運転を停止する
請求項1に記載の空気処理装置。
【請求項3】
前記第2捕捉部(32)は、前記再生運転時において不可逆的に前記特定物質を吸着する素材で構成される
請求項1または2に記載の空気処理装置。
【請求項4】
前記第2捕捉部(32)による前記特定物質の捕捉許容量は、前記第1捕捉部(31)による前記特定物質の捕捉許容量よりも多い
請求項1または2に記載の空気処理装置。
【請求項5】
前記ケーシング(10)に形成される開口(13)を更に備え、
前記開口(13)は、前記第2捕捉部(32)を介して前記空気通路(P)に連通し、
前記空気通路(P)は、前記通常運転時に前記吹出口(12)へ空気が流通する第1流路(P1)と、前記再生運転時に前記開口(13)へ空気が流通する第2流路(P2)とを有する
請求項1または2に記載の空気処理装置。
【請求項6】
前記開口(13)を開閉する蓋部(15)を更に備え、
前記蓋部(15)は、前記通常運転時は閉状態となり、かつ、前記再生運転時は開状態となる
請求項5に記載の空気処理装置。
【請求項7】
前記吹出口(12)を開閉する開閉部材(14)を更に備え、
前記開閉部材(14)は、前記通常運転時は開状態となり、かつ、前記再生運転時は閉状態となる
請求項5に記載の空気処理装置。
【請求項8】
前記制御部(C)は、前記再生運転を開始する際に前記再生部(40)の運転開始時から所定の期間経過後に前記第1搬送部(21)の運転を開始する
請求項1または2に記載の空気処理装置。
【請求項9】
前記制御部(C)は、前記再生運転を終了する際に前記再生部(40)の運転停止時から所定の期間経過後に前記第1搬送部(21)の運転を停止する
請求項8に記載の空気処理装置。
【請求項10】
前記空気通路(P)に配置され、前記第2捕捉部(32)へ空気を搬送する第2搬送部(22)をさらに備え、
前記制御部(C)は、前記再生運転において前記第2搬送部(22)を運転する
請求項1または2に記載の空気処理装置。
【請求項11】
前記制御部(C)は、前記再生運転を開始する際に前記再生部(40)の運転開始時から所定の期間経過後に前記第1搬送部(21)または前記第2搬送部(22)の運転を開始させる
請求項10に記載の空気処理装置。
【請求項12】
前記制御部(C)は、前記再生運転を終了する際に前記再生部(40)の運転停止時から所定の期間経過後に前記第1搬送部(21)または前記第2搬送部(22)の運転を停止する
請求項11に記載の空気処理装置。
【請求項13】
前記第1捕捉部(31)または前記第2捕捉部(32)に捕捉される前記特定物質を検出する検出部(60)と、
所定の情報をユーザに報知する報知部(70)とをさらに備え、
前記制御部(C)は、
前記検出部(60)から受信した情報に基づいて前記第1捕捉部(31)または前記第2捕捉部(32)の前記特定物質の捕捉量を求めると共に、前記捕捉量が所定量に達すると前記報知部(70)を作動させる
請求項1または請求項2に記載の空気処理装置。
【請求項14】
前記検出部(60)は、空気中における前記特定物質の濃度を検出するセンサである
請求項13に記載の空気処理装置。
【請求項15】
前記第2捕捉部(32)は、前記特定物質が捕捉されると色が変化する素材を有する
請求項1または2に記載の空気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、臭気やVOC等の汚染ガスを吸着する吸着手段と、吸着手段を再生する加熱手段とを備えた空気清浄装置が記載されている。吸着手段には、再生時の加熱により汚染ガスの酸化、分解を促す成分が含まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような吸着手段において、汚染ガスの分解が不十分であると中間生成物が残り、異臭が発生するおそれがある。異臭を含んだ空気は室内に吹き出され、ユーザは不快を感じてしまう。
【0005】
本開示の目的は、異臭の発生を抑える空気処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、
室内空気を処理する空気処理装置であって、
ケーシング(10)と、
前記ケーシング(10)内に形成される空気通路(P)と、
前記空気通路(P)の一端に連通し、室内の空気を吸い込む吸込口(11)と、
前記空気通路(P)の他端に連通し、室内に空気を吹き出す吹出口(12)と、
前記空気通路(P)に配置され、前記吸込口(11)から前記吹出口(12)に向かって空気を搬送する第1搬送部(21)と、
前記空気通路(P)に配置され、空気中に含まれる特定物質を捕捉する第1捕捉部(31)と、
前記第1捕捉部(31)から前記特定物質を脱離させる再生部(40)と、
前記空気通路(P)に配置され、前記第1捕捉部(31)から脱離した前記特定物質を捕捉する交換可能な第2捕捉部(32)と、
前記第1搬送部(21)及び前記再生部(40)を制御する制御部(C)とを備え、
前記制御部(C)は、
前記空気通路(P)を通る空気から前記特定物質を前記第1捕捉部(31)に捕捉させる通常運転と、
前記第1捕捉部(31)から前記特定物質を脱離させると共に、脱離した該特定物質を前記第2捕捉部(32)に捕捉させる再生運転とを実行する空気処理装置である。
【0007】
第1の態様では、第1捕捉部(31)から脱離した特定物質は、第2捕捉部(32)に捕捉されるため、特定物質の室内への排出を抑制できる。このため、第1捕捉部(31)で捕捉した特定物質を触媒等により分解する必要がない。これにより、特定物質の分解により生じ得る中間生成物に起因する異臭を抑えることができる。また、このような異臭を室外に排出するための配管等を不要できる。加えて、第2捕捉部(32)は容易に交換可能であるため、第1捕捉部(31)の交換を不要にできる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、
前記制御部(C)は、前記再生運転時の前記第1搬送部(21)の風量を前記通常運転時の前記第1搬送部(21)の風量よりも小さくする、または前記再生運転時に前記第1搬送部(21)の運転を停止する。
【0009】
第2の態様では、再生運転が開始されると第1捕捉部(31)を通過する空気中には、比較的濃い濃度の特定物質が含まれる。従って、再生運転において第1搬送部(21)の風量を小さくしても、第2捕捉部(32)において十分に空気中に含まれる特定物質を捕捉できる。このように第2捕捉部(32)では比較的低い風量の空気を処理すればよいため、第2捕捉部(32)の製品サイズをコンパクト化できる。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記第2捕捉部(32)は、前記再生運転時において不可逆的に前記特定物質を吸着する素材で構成される。
【0011】
第3の態様では、再生運転時において、第2捕捉部(32)に捕捉された特定物質が脱離することを抑制できる。このことで、例えば空気処理装置から特定物質が室内に漏れだすことを抑制できる。
【0012】
第4の態様は、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記第2捕捉部(32)による前記特定物質の捕捉許容量は、前記第1捕捉部(31)による前記特定物質の捕捉許容量よりも多い。
【0013】
第4の態様では、第2捕捉部(32)の交換回数の頻度を抑えることができる。例えば、再生運転を複数回繰り返すごとに第2捕捉部(32)を交換すればよいため、第2捕捉部(32)の交換作業による煩わしさを軽減できる。
【0014】
第5の態様は、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、
前記ケーシング(10)に形成される開口(13)を更に備え、
前記開口(13)は、前記第2捕捉部(32)を介して前記空気通路(P)に連通し、
前記空気通路(P)は、前記通常運転時に前記吹出口(12)へ空気が流通する第1流路(P1)と、前記再生運転時に前記開口(13)へ空気が流通する第2流路(P2)とを有する。
【0015】
第5の態様では、再生運転時において、第1捕捉部(31)から脱離した特定物質を確実に第2捕捉部(32)へ搬送できるとともに、第2捕捉部(32)により清浄化された空気を、開口(13)を介して室内へ放出できる。
【0016】
第6の態様は、第5の態様において、
前記開口(13)を開閉する蓋部(15)を更に備え、
前記蓋部(15)は、前記通常運転時は閉状態となり、かつ、前記再生運転時は開状態となる。
【0017】
第6の態様では、通常運転時において、開口(13)から空気が漏れることを抑制できる。
【0018】
第7の態様は、第5または第6の態様において、
前記吹出口(12)を開閉する開閉部材(14)を更に備え、
前記開閉部材(14)は、前記通常運転時は開状態となり、かつ、前記再生運転時は閉状態となる。
【0019】
第7の態様では、再生運転時において、吹出口(12)から空気が漏れることを抑制できる。
【0020】
第8の態様は、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、
前記制御部(C)は、前記再生運転を開始する際に前記再生部(40)の運転開始時から所定期間の経過後に前記第1搬送部(21)の運転を開始する。
【0021】
第8の態様では、再生運転開始(再生部(40)の運転開始)直後は、第1捕捉部(31)の特定物質は十分に脱離していないことがある。そのため、再生部(40)の運転開始に遅れて第1搬送部(21)を運転することで、第1捕捉部(31)から特定物質を十分に脱離させてから第2捕捉部(32)へ搬送できる。このように、第1捕捉部(31)からの特定物質の脱離が促進されることで、再生運転時間を短縮できる。また、再生運転終了後に第1捕捉部(31)に特定物質が残ってしまうことを抑制できる。
【0022】
第9の態様は、第8の態様において、
前記制御部(C)は、前記再生運転を終了する際に前記再生部(40)の運転停止時から所定期間の経過後に前記第1搬送部(21)の運転を停止する。
【0023】
第9の態様では、第1搬送部(21)を再生部(40)の運転停止後も第1搬送部(21)は運転しているため、第1捕捉部(31)を脱離してまだ第2捕捉部(32)に到達していない特定物質も第2捕捉部(32)まで搬送できる。
【0024】
第10の態様は、第1~第9の態様のいずれか1つにおいて、
前記空気通路(P)に配置され、前記第2捕捉部(32)へ空気を搬送する第2搬送部(22)をさらに備え、
前記制御部(C)は、前記再生運転において前記第2搬送部(22)を運転する。
【0025】
第10の態様では、第2搬送部(22)により第1捕捉部(31)から脱離した特定物質を確実に第2捕捉部(32)へ搬送できる。
【0026】
第11の態様は、第10の態様において、
前記制御部(C)は、前記再生運転を開始する際に前記再生部(40)の運転開始時から所定期間の経過後に前記第1搬送部(21)または前記第2搬送部(22)の運転を開始させる。
【0027】
第11の態様では、第8の態様と同様の効果を得ることができる。
【0028】
第12の態様は、第11の態様において、
前記制御部(C)は、前記再生運転を終了する際に前記再生部(40)の運転停止時から所定期間の経過後に前記第1搬送部(21)または前記第2搬送部(22)の運転を停止する。
【0029】
第12の態様では、第9の態様と同様の効果を得ることができる。
【0030】
第13の態様は、第1~第12の態様のいずれか1つにおいて、
前記第1捕捉部(31)または前記第2捕捉部(32)に捕捉される前記特定物質を検出する検出部(60)と、
所定の情報をユーザに報知する報知部(70)とをさらに備え、
前記制御部(C)は、
前記検出部(60)から受信した情報に基づいて前記第1捕捉部(31)または前記第2捕捉部(32)の前記特定物質の捕捉量を求めると共に、前記捕捉量が所定量に達すると前記報知部(70)を作動させる。
【0031】
第13の態様では、ユーザは第1捕捉部(31)または第2捕捉部(32)に捕捉された特定物質の量を把握できる。このような報知により、ユーザは第2捕捉部(32)を交換するタイミングを把握できる。
【0032】
第14の態様は、第13の態様において、
前記検出部(60)は、空気中における前記特定物質の濃度を検出するセンサである。
【0033】
第14の態様では、センサ(60)により第1捕捉部(31)または第2捕捉部(32)の特定物質の捕捉量を確認できる。
【0034】
第15の態様は、第1~第14の態様のいずれか1つにおいて、
前記第2捕捉部(32)は、前記特定物質が捕捉されると色が変化する素材を有する。
【0035】
第15の態様では、色の変化で第2捕捉部(32)の特定物質の捕捉量を把握できる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】
図1は、実施形態の空気処理装置の構成の概略を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、空気処理装置の制御部と各種の装置との関係を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、空気処理装置の運転の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、空気通路内の空気流れを示す図である。(a)は通常運転時の空気流れを示す。(b)は再生運転時の空気流れを示す。
【
図5】
図5は、変形例1における空気処理装置の運転の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、変形例2の空気処理装置の
図1に相当する図である。
【
図7】
図7は、再生運転時の空気流れを示す図である。
【
図8】
図8は、変形例4の空気処理装置の
図1に相当する図である。
【
図9】
図9は、その他の実施形態に係る空気処理装置の
図1に相当する図である。
【
図10】
図10は、その他の実施形態に係る空気処理装置の
図1に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。また、
図4及び
図7において白抜きの矢印は空気の流れ方向を表す。
【0038】
(1)空気処理装置
図1及び
図2に示すように、本実施形態の空気処理装置(1)は、空気清浄機である。空気処理装置(1)は、室内空気を吸込んで汚染物質を取り除いた後、清浄化された空気を室内に吹き出す。汚染物質は、特定物質の一例である。例えば、汚染物質は、臭気、ホルムアルデヒド、VOC、NOx、SOxなどである。空気処理装置(1)は、室内の床面に設置される床置き型である。空気処理装置(1)は、ケーシング(10)、第1ファン(21)、ヒータ(40)、第1吸着部(31)、第2吸着部(32)、センサ(60)、報知部(70)及び制御部(C)を有する。
【0039】
(1-1)ケーシング
ケーシング(10)は縦長の箱状に形成される。具体的に、ケーシング(10)は、天板(10a)、底板(10c)及び4つの側板(10b)とを有する。ケーシング(10)には、吸込口(11)、吹出口(12)及び排気口(13)が形成される。
【0040】
吸込口(11)は、ケーシング(10)の側板の下部に設けられる。吸込口(11)は、室内の空気を吸い込む。吸込口(11)には、プレフィルタ(18)が設けられる。プレフィルタ(18)は、吸い込み空気に含まれる比較的大きな塵埃を除去する。
【0041】
吹出口(12)は、ケーシング(10)の天板(10a)に設けられる。吹出口(12)は、室内に空気を吹き出す。吹出口(12)には、複数のフラップ(14)が設けられる。フラップ(14)は、開閉部材(14)の一例である。
【0042】
複数のフラップ(14)は、概ね水平方向に並んで配置される。各フラップ(14)は、並び方向に直交する向きに延びる細長状に形成される。複数のフラップ(14)の姿勢は、吹出口(12)が開いた状態となる開位置と、吹出口(12)が閉じた状態となる閉位置とに変化させる。開位置は複数段階に調節される。開位置を調節することで吹出口(12)からの風向を調節できる。
【0043】
排気口(13)は、ケーシング(10)の側板の上部に設けられる。排気口(13)は、吹出口(12)の高さ位置よりも下方に配置される。排気口(13)は、第2吸着部(32)を通過した空気が排出される開口(13)である。排気口(13)の開口面積は、吹出口(12)の開口面積よりも小さい。排気口(13)には、蓋部(15)が設けられる。
【0044】
蓋部(15)は、排気口(13)を開閉する。本実施形態の蓋部(15)は、排気口(13)を覆う板部材であり、ケーシング(10)の外側に向かって開くように設けられる。蓋部(15)は、後述する通常運転時において閉状態となり(
図1の実線の状態)、再生運転時において、開状態となる(
図1の破線の状態)。具体的に、蓋部(15)は、上下方向に回動するように蓋部(15)の上端がケーシング(10)に支持され、後述の空気通路(P)内の空気圧に応じて開閉する。
【0045】
ケーシング(10)内には、上下方向に延びる空気通路(P)が形成される。空気通路(P)の一端(上端)には吸込口(11)が連通する。空気通路(P)の他端(下端)には吹出口(12)が連通する。空気通路(P)は、第1流路(P1)と第2流路(P2)とを有する(
図4参照)。第1流路は、吹出口(12)へ空気が流通する流路である。第2流路(P2)は、排気口(13)へ空気が流通する流路である。第2流路(P2)は、空気通路(P)の途中から排気口(13)に向かって分岐するように形成される。以下の説明において、空気通路(P)内の吸込口(11)側を上流とし、吹出口(12)側を下流側とする。
【0046】
(1-2)第1ファン
第1ファン(21)は、ケーシング(10)内の下部に配置される。第1ファン(21)は、空気通路(P)内において吸込口(11)近傍に配置される。第1ファン(21)は、シロッコファンである。第1ファン(21)は、風量調節可能である。第1ファン(21)は、制御部(C)により制御される。第1ファン(21)は、第1搬送部(21)の一例である。
【0047】
(1-3)第1吸着部
第1吸着部(31)は、空気通路(P)に配置される。第1吸着部(31)は、第1ファン(21)よりも下流側に配置される。第1吸着部(31)は、空気通路(P)の流路幅に亘るように設けられる。吸込口(11)から空気通路(P)に吸い込まれた空気は、第1吸着部(31)を通過する。
【0048】
第1吸着部(31)は、空気中に含まれる汚染物質を捕捉するフィルタである。第1吸着部(31)は、第1捕捉部(31)の一例である。第1吸着部(31)は、汚染物質を可逆的に吸着する。具体的に、第1吸着部(31)は、ファンデルワールス力や疎水性相互作用等により、汚染物質を物理的に吸着する。本実施形態において、「捕捉」は吸着と同義とする。
【0049】
第1吸着部(31)は、加熱されることで吸着した汚染物質が脱離する素材を有する。例えば、第1吸着部(31)は、活性炭、ゼオライト、セラミック等の多孔質体またはこれらの混合物である。
【0050】
第1吸着部(31)は、汚染物質を所定量まで吸着可能な吸着許容量を有する。本実施形態において吸着許容量は、捕捉許容量と同義である。第1吸着部(31)の吸着許容量は、吸着部の設計によって異なる。除去すべき汚染物質の種類に応じて適宜、吸着剤の種類や配合を選定し、捕捉したい量に応じて吸着剤の使用量などを決定する。
【0051】
(1-4)ヒータ
ヒータ(40)は、第1吸着部(31)から汚染物質を脱離させる。ヒータ(40)は、再生部(40)の一例である。第1吸着部(31)に吸着された汚染物質を該第1吸着部(31)から脱離させることを再生と呼ぶ場合がある。
【0052】
ヒータ(40)は、第1吸着部(31)を加熱する。ヒータ(40)によって第1吸着部(31)が所定の温度以上まで加熱されると、汚染物質は第1吸着部(31)から脱離した状態となる。ヒータ(40)の運転は、制御部(C)によって制御される。
【0053】
ヒータ(40)は、第1吸着部(31)の近傍に配置される。ヒータ(40)は、第1吸着部(31)の上流側に配置される。言い換えると、ヒータ(40)は、第1吸着部(31)を空気流れの上流側から加熱する。
【0054】
(1-5)第2吸着部
第2吸着部(32)は、空気通路(P)に配置される。具体的に、第2吸着部(32)は、第2流路(P2)に配置される。第2吸着部(32)は、第1吸着部(31)の下流側、かつ、排気口(13)の上流側に配置される。より具体的に、第2吸着部(32)は、排気口(13)を覆うように設けられる。
【0055】
第2吸着部(32)は、第1吸着部(31)から脱離した汚染物質を捕捉するフィルタである。第2吸着部(32)は、第2捕捉部(32)の一例である。第2吸着部(32)は、汚染物質を不加逆的に吸着する。具体的に、第2吸着部(32)は、化学結合により汚染物質を化学的に吸着する。
【0056】
第2吸着部(32)は、例えば、活性炭に化学薬品を添着させた添着活性炭である。添着活性炭は、活性炭にカリウム等のアルカリ性薬剤やリン酸等の酸性薬剤、金属成分などを添着させ、薬剤と汚染物質との化学反応(化学吸着反応)により汚染物質を吸着する。
【0057】
第2吸着部(32)は、汚染物質を所定量まで吸着可能な吸着許容量を有する。第2吸着部(32)の吸着許容量は、第1吸着部(31)の吸着許容量よりも多い。第2吸着部(32)の吸着許容量は、吸着部の設計によって異なる。除去すべき汚染物質の種類に応じて適宜、薬剤の種類や配合を選定し、捕捉したい量に応じて薬剤の使用量などを決定する。
【0058】
第2吸着部(32)は比較的小型である。第2吸着部(32)のフィルタ面は、排気口(13)を覆う程度の大きさである。第2吸着部(32)は、第1吸着部(31)よりも製品サイズが小さい。第2吸着部(32)のフィルタ面は、第1吸着部(31)のそれよりも小さい。
【0059】
第2吸着部(32)は交換可能である。例えば、第2吸着部(32)は、交換可能なカートリッジである。図示はしないが、排気口(13)には第2吸着部(32)が収容されるポケットが設けられる。第2吸着部(32)がポケットに収容されると、排気口(13)は第2吸着部(32)により塞がれる。第2吸着部(32)を交換するとき、蓋部(15)を開いてから、第2吸着部(32)をポケットから外すだけでよい。第2吸着部(32)は、例えば後述する再生運転を複数回繰り返すごとに1回の頻度で交換される。
【0060】
(1-6)センサ
センサ(60)は、汚染物質を検出する。センサ(60)は、空気通路(P)における第1吸着部(31)の上流側に配置される。センサ(60)は、第1吸着部(31)近傍の空気中に含まれる汚染物質の濃度を検出する。センサ(60)に検出された汚染物質の濃度を示す情報(信号)は、制御部(C)に出力される。
【0061】
(1-7)報知部
報知部(70)は、ディスプレイまたはスピーカである。報知部(70)は、ケーシング(10)の天板(10a)または側板(10b)に配置される。報知部(70)は、所定の情報をユーザに報知する。所定の情報は、例えば室内空気の清浄度、第1吸着部(31)に吸着された汚染物質の量(所定量)の度合い、通常運転または再生運転の開始及び終了などである。報知部(70)は、報知によって第2吸着部(32)の交換をユーザに促す。
【0062】
(1-8)制御部
制御部(C)は、空気処理装置(1)の各種の機器と無線または有線により接続される。制御部(C)は、プロセッサ(例えばマイクロコンピュータ)と、該プロセッサを動作させるためのソフトウェアを格納するメモリディバイス(例えば半導体メモリ)とを有する。制御部(C)は、空気処理装置(1)の各装置を制御する。
【0063】
制御部(C)は、空気処理装置(1)に通常運転と再生運転とを実行させる。通常運転は、空気通路(P)を通る空気から汚染物質を第1吸着部(31)に吸着させる運転である。再生運転は、第1吸着部(31)から汚染物質を脱離させると共に、脱離した汚染物質を第2吸着部(32)に吸着させる運転である。以下、空気処理装置(1)の運転の一例について
図3及び
図4を用いて説明する。
【0064】
(2)空気処理装置の運転
ステップS11では、制御部(C)は通常運転を実行する。具体的に制御部(C)は、フラップ(14)の姿勢は開位置に変化させると共に、第1ファン(21)を運転する。第1ファン(21)の風量の大きさは、ユーザの操作に基づいて設定される。
【0065】
通常運転において、室内空気は、吸込口(11)から空気通路(P)に吸い込まれた後、第1吸着部(31)を通過する際に空気中の汚染物質が取り除かれる。第1吸着部(31)により清浄化された空気は第1流路を通って吹出口(12)から室内に吹き出される。なお、フラップ(14)は開位置にあるため、空気通路(P)の空気は、第2流路(P2)よりも第1流路(P1)を優先に流れる。そのため、蓋部(15)は閉じたままである(
図4(a)参照)。
【0066】
ステップS12では、制御部(C)は、第1吸着部(31)における汚染物質の吸着量が許容量に達したか判定する。汚染物質の吸着量は、センサ(60)による検出値、通常運転の運転時間、第1ファン(21)の風量などに基づいて求められる。第1吸着部(31)における汚染物質の吸着量が許容量に達したと判断された場合(ステップS12のYES)、ステップS13が実行される。第1吸着部(31)における汚染物質の吸着量が最大許容量に達していないと判断された場合(ステップS12のNO)、ステップS12が再び実行される。
【0067】
ステップS13では、制御部(C)は報知部(70)を作動させる。報知部(70)は、第1吸着部(31)に吸着された汚染物質が許容量に達したことを報知すると共に、再生運転の実行が開始されることを報知する。
【0068】
ステップS14では、制御部(C)は、通常運転を終了する。具体的に、制御部(C)は、第1ファン(21)の運転を停止する。
【0069】
ステップS15では、制御部(C)は、再生運転を開始する。制御部(C)は、フラップ(14)の姿勢を閉位置に変化させる。
【0070】
ステップS16では、制御部(C)は、ヒータ(40)の運転を開始する。
【0071】
ステップS17では、制御部(C)は、第1ファン(21)を通常運転時における第1ファン(21)よりも小さい風量で運転する。本実施形態では、制御部(C)は、再生運転時の第1ファン(21)の風量を通常運転時における最低風量よりも低くする。第1ファン(21)の風量は比較的小さくなることで、第1吸着部(31)に吹き付けられる風の影響が小さくなって第1吸着部(31)の温度上昇の妨げを抑制できる。そのため、第1吸着部(31)は速やかに加熱されて、汚染物質の第1吸着部(31)からの脱離が促進される。第1吸着部(31)から脱離した汚染物質を含む空気は、第2流路(P2)へ流れて第2吸着部(32)を通過する際に汚染物質が除去される。ここで、フラップ(14)は閉じているため、空気通路(P)の空気は第1流路(P1)よりも第2流路(P2)を優先的に流れる。このため、蓋部(15)は開いて、第2吸着部(32)を通過した空気は排気口(13)を介して室内へ放出される(
図4(b)参照)。
【0072】
ステップS18では、制御部(C)は再生運転期間が経過したか判定する。再生運転期間は、第1吸着部(31)に吸着された汚染物質が第1吸着部(31)から全て脱離したと推測される期間である。再生運転期間が経過したと判定された場合(ステップS18のYES)、ステップS19が実行される。再生運転期間が経過していないと判定された場合(ステップS18のNO)、ステップS18が継続される。
【0073】
ステップS19では、制御部(C)は、再生運転を終了する。具体的に、制御部(C)は、ヒータ(40)の運転を停止し、第1ファン(21)の風量を通常運転時の風量に変更する。その後制御部(C)は、通常運転を再開させる(ステップS11)。
【0074】
(3)特徴
(3-1)特徴1
本実施形態の空気処理装置(1)は、空気通路(P)に配置され、空気中に含まれる汚染物質を吸着する第1吸着部(31)と、第1吸着部(31)から汚染物質を脱離させるヒータ(40)と、空気通路(P)に配置され、第1吸着部(31)から脱離した汚染物質を吸着する交換可能な第2吸着部(32)と、第1ファン(21)及びヒータ(40)を制御する制御部(C)とを備える。制御部(C)は、空気通路(P)を通る空気から汚染物質を第1吸着部(31)に捕捉させる通常運転と、第1吸着部(31)から汚染物質を脱離させると共に、脱離した汚染物質を第2吸着部(32)に捕捉させる再生運転とを実行する。
【0075】
本実施形態によると、再生運転により第1吸着部(31)から脱離した汚染物質は、装置内の第2吸着部(32)に吸着されるため、装置外に排出されることを抑制できる。このため、第1吸着部(31)で捕捉した特定物質を触媒等により分解する必要がない。このことで、特定物質の分解により生じ得る中間生成物に起因する異臭を抑えることができる。また、このような異臭を室外に排出するための配管等を不要できる。加えて、第2吸着部(32)は交換可能であるため、第1吸着部(31)の交換を不要にできる。
【0076】
加えて、第1吸着部(31)は繰り返し再生できるため、第2吸着部(32)のみ交換すればよい。これにより、空気処理装置(1)を比較的長期間使用できる。また、本実施形態の空気処理装置(1)では、第2吸着部(32)は、ケーシング(10)の側面に設けられているため、ユーザは第2吸着部(32)を手で簡便に交換できる。
【0077】
(3-2)特徴2
本実施形態の空気処理装置(1)では、制御部(C)は、再生運転時の第1ファン(21)の風量を通常運転時のそれよりも小さくする。
【0078】
再生運転時の第1ファン(21)の風量を、通常運転時の最低風量よりも小さくすることで、比較的小さい風量の空気が第2吸着部(32)を通過する。
【0079】
再生運転において、第1吸着部(31)を通過する空気は、脱離された汚染物質を比較的多く含む。言い換えると、再生運転では、高濃度の汚染物質を含む空気が第2吸着部(32)に向かう。従って、再生運転において風量を抑えても、第2吸着部(32)は十分に汚染物質を捕捉できる。このように第2捕捉部(32)では比較的低い風量の空気を処理すればよいため、第2吸着部(32)を小型化できる。
【0080】
加えて、再生運転時に第1ファン(21)の風量を通常運転時の最小風量よりも抑えることで、第1吸着部(31)に対する風量も抑えられて、ヒータ(40)による第1吸着部(31)の加熱が妨げられることを抑制できる。このことにより、第1吸着部(31)は速やかに温度上昇するため汚染物質の脱離が促される結果、再生運転時間を短縮できる。
【0081】
(3-3)特徴3
本実施形態の空気処理装置(1)では、第2吸着部(32)は、再生運転時において不可逆的に汚染物質を吸着する素材で構成される。これにより、再生運転時において第2吸着部(32)に吸着された汚染物質が脱離することが抑えられ、空気処理装置(1)から汚染物質が室内に漏れだすことを抑制できる。
【0082】
また、通常運転において、第1吸着部(31)は第1ファン(21)による比較的大きな風量を処理することになるから、圧損を抑えるために第1吸着部(31)には空隙の多い素材が選択される。しかし、空隙が多くなるとそれだけ第1吸着部(31)は大型化する。このような場合、仮に第1吸着部(31)を再生しない化学吸着の素材にすると、汚染物質を吸着する薬剤を塗布する基材の量も多くなって、製造コストが抑えることが難しくなる。これに対して、本実施形態では、比較的小型の第2吸着部(32)を化学吸着する素材にしているため、基材の使用量を抑えることができ製品のコストを抑えることができる。
【0083】
(3-4)特徴4
本実施形態の空気処理装置(1)では、第2吸着部(32)による汚染物質の吸着許容量は、第1吸着部(31)による汚染物質の捕捉許容量よりも多い。
【0084】
これにより、第2吸着部(32)の交換回数の頻度を抑えることができる。例えば、再生運転を複数回繰り返すごとに第2吸着部(32)の交換を行えばよいため、第2捕捉部(32)の交換作業による煩わしさを軽減できる。
【0085】
(3-5)特徴5
本実施形態の空気処理装置(1)では、ケーシング(10)に形成される排気口(13)(開口)を更に備える。排気口(13)は、第2吸着部(32)を介して空気通路(P)に連通する。これにより、再生運転時において、第2吸着部(32)を通過して浄化された空気は、排気口(13)から室内に放出される。
【0086】
(3-6)特徴6
本実施形態の空気処理装置(1)は、開口(13)を開閉する蓋部(15)を更に備える。蓋部(15)は、通常運転時は閉状態となり、かつ、再生運転時は開状態となる。これにより通常運転時において、開口(13)から空気が漏れることを抑制できる。
【0087】
(3-7)特徴7
本実施形態の空気処理装置では、吹出口(12)を開閉するフラップ(14)を更に備える。フラップ(14)は、通常運転時は開状態となり、かつ、再生運転時は閉状態となる。これにより再生運転時において、吹出口(12)から空気が漏れることを抑制できる。
【0088】
(4)変形例1
変形例1では、上記実施形態と異なる再生運転について説明する。変形例1の再生運転では、制御部(C)は、再生運転を開始する際にヒータ(40)の運転開始時から所定期間の経過後に第1ファン(21)の運転を開始する。また、変形例1では、再生運転を終了する際にヒータ(40)の運転停止時から所定期間の経過後に第1ファン(21)の運転を停止する。以下、変形例1の再生運転について
図5を用いて説明する。
【0089】
ステップS21では、制御部(C)は、フラップ(14)の姿勢を閉位置に変化させる。
【0090】
ステップS22では、制御部(C)は、第1ファン(21)の運転を停止する。
【0091】
ステップS23では、制御部(C)は、ヒータ(40)の運転を開始する。
【0092】
ステップS24では、制御部(C)は、所定期間が経過したか判定する。この所定期間は、ヒータ(40)の加熱によって第1吸着部(31)に吸着された汚染物質が十分に脱離するまでの期間である。所定期間が経過した判定された場合(ステップS24のYES)、ステップS25が実行される。所定期間が経過していないと判定された場合(ステップS24のNO)、ステップS24が再び実行される。
【0093】
ステップS25では、制御部(C)は、第1ファン(21)の運転を開始する。第1ファン(21)の風量は、通常運転時の最低風量よりも低い。このように、第1ファン(21)の運転開始をヒータ(40)の運転開始から遅らせることで、第1ファン(21)からの風の影響を受けずに第1吸着部(31)を十分に加熱できる。その結果、汚染物質の脱離が促進されることで、再生運転の期間を短縮できる。
【0094】
ステップS26では、制御部(C)は、再生運転期間が経過したか判定する。再生運転期間が経過したと判定された場合(ステップS26のYES)、ステップS27が実行される。再生運転期間が経過していないと判定された場合(ステップS26のNO)、ステップS26が再び実行される。
【0095】
ステップS27では、制御部(C)は、ヒータ(40)の運転を停止させる。
【0096】
ステップS28では、制御部(C)は、所定期間が経過したか判定する。この所定期間は、例えばヒータ(40)によって加熱された第1吸着部(31)が十分に冷却されるまでの期間である。所定期間が経過したと判定された場合(ステップS28のYES)、ステップS29が実行される。所定期間が経過していないと判定された場合(ステップS28のNO)、ステップS28が再び実行される。
【0097】
ステップS29では、第1ファン(21)の運転を停止する。このように、第1ファン(21)の停止をヒータ(40)の停止よりも遅らせることで、第1吸着部(31)は自然に冷却されるよりも早く冷却される。これにより、再生運転終了後、比較的速やかに通常運転を実行できる。
【0098】
(5)変形例2
図6に示すように、変形例2の空気処理装置(1)は、排気口(13)及び蓋部(15)を有しておらず、第2ファン(22)を備える。第2ファン(22)は、第2搬送部(22)の一例である。以下では、上記実施形態及び変形例1と異なる構成について説明する。
【0099】
第2ファン(22)は第2吸着部(32)へ空気を搬送する。第2ファン(22)は、空気通路(P)における、第2吸着部(32)の近傍に配置される。第2ファン(22)は、第2吸着部(32)の上流側に配置される。
【0100】
制御部(C)は、再生運転において第2ファン(22)を運転する。制御部(C)は、通常運転において第2ファン(22)を停止する。変形例2の空気処理装置(1)の再生運転では、主に上記実施形態のステップS17及びステップS19の動作が異なる。
【0101】
図7に示すように、上記実施形態のステップS17に対応するステップでは、制御部(C)は第1ファン(21)を停止して、第2ファン(22)の運転を開始する。第1ファン(21)の運転の停止により、第1吸着部(31)は十分に加熱され、汚染物質の脱離が促進される。第2ファン(22)の運転により、第1吸着部(31)から脱離した汚染物質を含む空気は、第2吸着部(32)を通過する。フラップ(14)は閉じているため、第2吸着部(32)を通過した空気は、第2ファン(22)により再び第2吸着部(32)を通過する。このように第1ファン(21)を停止し、かつ、第2ファン(22)を運転することによって第1吸着部(31)よりも下流側の機内において空気循環させながら、汚染物質を第2吸着部に捕捉することができる(
図7参照)。
【0102】
上記実施形態のステップS19に対応するステップでは、制御部(C)は、第2ファン(22)の運転を停止する。これにより再生運転は終了する。
【0103】
(5)変形例3
変形例3では、上記変形例2の空気処理装置(1)と異なる再生運転について説明する。変形例3の空気処理装置(1)の運転では、主に上記変形例1のステップS25及びステップS29の動作が異なる。
【0104】
具体的に、上記変形例1のステップS25に対応するステップでは、制御部(C)は、第1ファン(21)を停止したまま、第2ファン(22)の運転を開始する。
【0105】
上記変形例1のステップS29に対応するステップでは、制御部(C)は、第2ファン(22)の運転を停止する。
【0106】
(6)変形例4
図8に示すように、変形例4の空気処理装置(1)は、エアポンプ(22)及び空気配管(23)を有する点、及び液体捕捉部(32)を有する点において、上記変形例2の空気処理装置(1)と異なる。
【0107】
エアポンプは、第2搬送部(22)の一例である。エアポンプ(22)は空気配管(23)に接続される。エアポンプ(22)は、空気配管(23)の一端から他端に向かって空気を搬送する。空気配管(23)は、上下方向に延びる管である。空気配管(23)の一端は、空気通路(P)における第1吸着部(31)の下流側に位置する。空気配管(23)の他端は、液体捕捉部(32)内に位置する。液体捕捉部(32)は、第2捕捉部(32)の一例である。液体捕捉部(32)は、汚染物質を捕捉する溶液を有する。該溶液は、汚染物質と化学反応すると、溶液の色が変化する。これにより、ユーザは液体捕捉部(32)の交換時期を把握できる。
【0108】
(6)その他の実施形態
上記実施形態及び各変形例は、以下の構成としてもよい。
【0109】
本開示の第1捕捉部(31)は、通常運転において汚染物質を捕捉し、かつ、再生運転において汚染物質を脱離するものであればよく、汚染物質を化学吸着する素材を有していてもよい。また、第1捕捉部(31)における汚染物質を捕捉する素材は、汚染物質を吸着する素材に限られない。
【0110】
本開示の第2捕捉部(32)は、再生運転において汚染物質を捕捉すると共に、捕捉した汚染物質を脱離させないものであればよい。例えば、第1捕捉部(31)は、汚染物質を化学的な反応や結合によって溶液中に捕捉する素材を有してもよい。
【0111】
第2吸着部(32)は、比較的簡便にケーシング(10)から取り外しできる構成であればよい。例えば、第2吸着部(32)は、蓋部(15)を取り外すことなくユーザが手で取り外し及び取り付け可能に空気処理装置(1)に設けられていてもよい。
【0112】
本開示の特定物質は、空気中に含まれる二酸化炭素であってもよい。
【0113】
本開示の捕捉という用語は、吸収という意味を含んでもよい。特に、第2捕捉部(32)は、特定物質を吸収してもよい。
【0114】
本開示の開閉部材(14)は、フラップ(14)に限られず、吹出口(12)を開閉できるものであればよい。開閉部材(14)は、ユーザの操作によって手動で開閉してもよいし、空気通路(P)内の空気圧に応じて開閉するものであってもよい。
【0115】
本開示の蓋部(15)は、ケーシング(10)の側板に沿ってスライドするシャッター部材であってもよい。この場合、蓋部(15)を開方向にスライドすることで、排気口(13)は開き、蓋部(15)を閉方向にスライドすることで、排気口(13)は閉じる。また、蓋部(15)は、制御部(C)からの信号に基づいて開閉してもよいし、ユーザの操作によって手動で開閉してもよい。
【0116】
図9に示すように、排気口(13)及び蓋部(15)は、ケーシング(10)の天板に設けられてもよい。この場合、排気口(13)は、吹出口(12)と隣り合うように設けられる。このことで、空気通路(P)は、第1流路(P1)と第2流路(P2)とを確保できる。
【0117】
再生部(40)は、ヒータ(40)に限られず第1吸着部(31)を再生できるものであればよい。この場合、再生部(40)の種類に基づいて第1吸着部(31)の素材が選択される。
【0118】
上記実施形態及び上記変形例1の再生運転では、第1ファン(21)を停止してもよい。この場合、空気通路(P)内において、加熱された第1吸着部(31)による温度差によって空気は下流側に向かって流れる。これにより、第1吸着部(31)から脱離した汚染物質は、第2吸着部(32)へ流れる。
【0119】
上記変形例2及び上記変形例3の再生運転では、ステップS25に対応するステップにおいて第1ファン(21)及び第2ファン(22)の少なくとも一方を、ヒータ(40)の運転開始よりも遅れて運転開始させてもよい。
【0120】
上記変形例2及び上記変形例3の再生運転において第1ファン(21)及び第2ファン(22)を運転させる場合、ステップS29に対応するステップでは、第1ファン(21)及び第2ファン(22)の少なくとも一方を、ヒータ(40)の運転停止よりも遅れて運転停止させてもよい。
【0121】
上記変形例1のステップS29において、再生運転から通常運転に連続して切り換える場合は、第1ファン(21)を停止させてなくてもよい。
【0122】
上記変形例2において、ケーシング(10)には、取付穴(図示省略)が形成されてもよい。ユーザは、取付穴を介して、第2吸着部(32)をケーシング(10)内部に取り付け及び取り外しできる。
【0123】
空気処理装置(1)は、上記実施形態のセンサ(60)を2つ有していてもよい。一方のセンサ(60)は、第1吸着部(31)近傍に配置される。他方のセンサ(60)は、第2吸着部(32)近傍に配置される。これにより、第2吸着部(32)に吸着された汚染物質の吸着量を、センサ(60)の検出値、再生運転の運転時間、第1ファン(21)または第2ファン(22)の風量等に基づいて求めることができる。
【0124】
本開示の第1搬送部(21)または第2搬送部(22)は、空気通路(P)の空気を搬送するものであって、風量を調節できるものであればよい。
【0125】
本開示の空気処理装置(1)は、集塵フィルタを有していてもよい(図示省略)。集塵フィルタは、空気通路(P)に配置されていればよい。好ましくは、集塵フィルタは、第1捕捉部(31)よりも上流側に配置され、かつ、プレフィルタの下流側に配置される。
【0126】
本開示の検出部(60)は、汚染物質を検出するものであればよく、センサ(60)に限られない。
【0127】
ヒータ(40)は、第1吸着部(31)と一体に設けられてもよい。例えば、ヒータ(40)は、面状ヒータであり、積層された複数の第1吸着部(31)の間に配置される。これにより、第1吸着部(31)全体に亘って加熱される。
【0128】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0129】
以上説明したように、本開示は、空気処理装置について有用である。
【符号の説明】
【0130】
1 空気処理装置
10 ケーシング
11 吸込口
12 吹出口
13 開口(排気口)
14 開閉部材(フラップ)
15 蓋部
21 第1搬送部(第1ファン)
22 第2搬送部(第2ファン)
31 第1捕捉部(第1吸着部)
32 第2捕捉部(第2吸着部)
40 再生部(ヒータ)
60 検出部(センサ)
70 報知部
C 制御部
P 空気通路
P1 第1流路
P2 第2流路