(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024098715
(43)【公開日】2024-07-24
(54)【発明の名称】粉末床溶融結合装置用のデータ作成方法及びデータ作成装置
(51)【国際特許分類】
B29C 64/393 20170101AFI20240717BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240717BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240717BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240717BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240717BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20240717BHJP
B22F 10/80 20210101ALI20240717BHJP
【FI】
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/153
B22F10/28
B22F10/80
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023002359
(22)【出願日】2023-01-11
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-07-19
(71)【出願人】
【識別番号】398018962
【氏名又は名称】株式会社アスペクト
(74)【代理人】
【識別番号】100159547
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴谷 裕二
(74)【代理人】
【識別番号】100154357
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】大坪 由貴
(72)【発明者】
【氏名】熊坂 充弘
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AP05
4F213AP11
4F213AP12
4F213AR12
4F213AR13
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL43
4F213WL85
4F213WL92
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】粉末床溶融結合装置に適用される造形物のテータを、その装置の機体特性及び深さ方向の収縮を考慮して補正することを可能にする構成を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る粉末床溶融結合装置用のデータ作成方法は、粉末床溶融結合装置1で作製する造形物の基本データを取得する工程と、粉末床溶融結合装置又は粉末床溶融結合装置の同種機体で作製したテストパーツの深さ方向の寸法情報を含む生データの寸法情報と、そのテストパーツ作製用の基本データの寸法情報とに基づいて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する工程とを含む。
【選択図】
図33
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末床溶融結合装置用のデータ作成方法であって、
前記粉末床溶融結合装置で作製する造形物の基本データを取得する工程と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記粉末床溶融結合装置の同種機体で作製したテストパーツの深さ方向の寸法情報を含む生データの寸法情報と、前記テストパーツ作製用の基本データの寸法情報とに基づいて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する工程と
を含む、データ作成方法。
【請求項2】
前記補正する工程は、
前記テストパーツの前記生データの前記寸法情報と前記テストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との関係値及び、前記テストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正することを含む、
請求項1に記載のデータ作成方法。
【請求項3】
前記テストパーツは、第1のテストパーツと、第2のテストパーツとを含み、
前記第1のテストパーツは、前記第2のテストパーツと肉厚の異なる箇所を有し、
前記補正する工程は、
前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第1のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第1のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第1の関係値及び、前記第1のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第2のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第2のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第2の関係値及び、前記第2のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報と
を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正することを含む、請求項1に記載のデータ作成方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ作成方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項5】
粉末床溶融結合装置用のデータ作成装置であって、
前記粉末床溶融結合装置で作製する造形物の基本データを取得する取得部と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記粉末床溶融結合装置の同種機体で作製したテストパーツの深さ方向の寸法情報を含む生データの寸法情報と、前記テストパーツ作製用の基本データの寸法情報とに基づいて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する補正部と
を備える、データ作成装置。
【請求項6】
前記補正部は、
前記テストパーツの前記生データの前記寸法情報と前記テストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との関係値及び、前記テストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する、
請求項5に記載のデータ作成装置。
【請求項7】
前記テストパーツは、第1のテストパーツと、第2のテストパーツとを含み、
前記第1のテストパーツは、前記第2のテストパーツと肉厚の異なる箇所を有し、
前記補正部は、
前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第1のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第1のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第1の関係値及び、前記第1のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第2のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第2のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第2の関係値及び、前記第2のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報と
を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する、
請求項5又は6に記載のデータ作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉末床溶融結合装置用のデータ作成方法及びデータ作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
層状に敷設された粉末材料にビーム光を照射して積層造形を行うことにより三次元造形物を製造する三次元積層造形技術が知られている。つまり、三次元積層造形技術では、粉末材料の層つまり薄層を形成し、その薄層に作製目的の造形物のスライス形状に応じてビーム光を照射することを、複数層にわたって繰り返すことでその造形物を得ることができる。その技術を具現化した装置の一例である、粉末焼結積層造形法を採用する粉末床溶融結合装置を特許文献1は開示する。特許文献1のその装置は、粉末材料を収納する2つの収納容器と、それらの間に設けられた作製容器と、粉末材料を作製容器に運搬して供給するようにそれら収納容器の上側を繰り返し移動されるリコータと、作製される造形物に応じて作製容器の粉末材料にレーザ光を照射するレーザ光出射部とを備える。
【0003】
一方で、レーザ光を造形物の任意のスライス形状つまり立体断面形状に走査・照射して、その熱源により樹脂や金属粉末などを逐次溶融焼結し、積層させて3次元構造を成形していくとき、このレーザ光の照射により、粉末材料が瞬時に溶融しその後凝固するときに、又は、粉末材料が焼結するときに収縮が生じる。この収縮による精度低下を改善することが種々研究され、提案されている。
【0004】
例えば、特許文献2は、収縮率を踏まえて全体的に少し大きめの範囲でレーザを照射する単純な補正でなく、部分的な収縮が生じた場合においても期待する精度を得る為の技法を提案する。特許文献2の記載によれば、この技法は、レーザ照射で形成される3次元構造物の寸法と当該3次元構造物のスキャンパス(レーザ・スキャンライン)の設計値との差を最小化するためのデータを作成する技法であり、当該技法は、上記3次元構造物の製造プロセスをモデル化し、当該製造プロセスで使用される材料の収縮の定式化を行うこと、及び上記定式化した収縮モデルを用いて、上記材料の収縮後の3次元構造物の寸法と上記設計値との差を最小化する最適化計算を行ない、当該差を最小化するスキャン長さxを算出することを含み、上記定式化を行うことは、上記レーザのスキャンパスのスキャン長さxiに応じて上記材料が収縮する場合に収縮関数を定式化することを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-177503号公報
【特許文献2】特開2015-58678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2の技法は、製造プロセスで使用される材料の単位長さ当たりの収縮率を考慮してモデル化するコンピュータシミュレーションであり、また、レーザのスキャンパスのスキャン長さを算出するものであり、3次元構造物のスライスデータの2次元の収縮のみを扱うものである。つまり、この技法は、3次元構造物つまり造形物を作製する装置における実際の機体特性を考慮したものではなく、また、粉末材料の積層方向つまり深さ方向の収縮を考慮したものでもない。
【0007】
本開示の目的は、粉末床溶融結合装置に適用される造形物のテータを、その装置の機体特性及び深さ方向の収縮を考慮して補正することを可能にする構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
開示の技術の第1態様は、
粉末床溶融結合装置用のデータ作成方法であって、
前記粉末床溶融結合装置で作製する造形物の基本データを取得する工程と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記粉末床溶融結合装置の同種機体で作製したテストパーツの深さ方向の寸法情報を含む生データの寸法情報と、前記テストパーツ作製用の基本データの寸法情報とに基づいて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する工程と
を含む、データ作成方法
を提供する。
【0009】
好ましくは、前記補正する工程は、前記テストパーツの前記生データの前記寸法情報と前記テストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との関係値及び、前記テストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正することを含む。
【0010】
好ましくは、前記テストパーツは、第1のテストパーツと、第2のテストパーツとを含み、前記第1のテストパーツは、前記第2のテストパーツと肉厚の異なる箇所を有し、前記補正する工程は、前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第1のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第1のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第1の関係値及び、前記第1のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報と、前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第2のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第2のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第2の関係値及び、前記第2のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報とを少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正することを含むとよい。
【0011】
本開示の技術は、前述のデータ作成方法をコンピュータに実行させるプログラムにも存する。
【0012】
開示の技術の第2態様は、
粉末床溶融結合装置用のデータ作成装置であって、
前記粉末床溶融結合装置で作製する造形物の基本データを取得する取得部と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記粉末床溶融結合装置の同種機体で作製したテストパーツの深さ方向の寸法情報を含む生データの寸法情報と、前記テストパーツ作製用の基本データの寸法情報とに基づいて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する補正部と
を備える、データ作成装置
を提供する。
【0013】
好ましくは、前記補正部は、前記テストパーツの前記生データの前記寸法情報と前記テストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との関係値及び、前記テストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する。
【0014】
好ましくは、前記テストパーツは、第1のテストパーツと、第2のテストパーツとを含み、前記第1のテストパーツは、前記第2のテストパーツと肉厚の異なる箇所を有し、前記補正部は、前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第1のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第1のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第1の関係値及び、前記第1のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報と、前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第2のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第2のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第2の関係値及び、前記第2のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報とを少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正するとよい。
【発明の効果】
【0015】
上記第1態様及び第2態様によれば、上記構成を備えるので、粉末床溶融結合装置に適用される造形物のテータを、その装置の機体特性及び深さ方向の収縮を考慮して補正することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係る粉末床溶融結合装置の構成の一例を説明する図である。
【
図2】
図2は、
図1の粉末床溶融結合装置の粉末材料の搬送及び供給の主要構成の斜視図である。
【
図3】
図3は、粉末床溶融結合装置の筐体以外の構成を示す上面図である。
【
図4】
図4は、
図3のIV-IV線に沿った断面図であり、一部を省略した図である。
【
図5】
図5は、レーザ光出射部の構成を説明するブロック図である。
【
図6A】
図6Aは、
図1の粉末床溶融結合装置の制御部のハードウェア構成図である。
【
図7】
図7は、作製する造形物を4つの層に分割した場合における、造形物の下から第1層目(最下層)のスライスデータの構成の一例を説明する図である。
【
図8】
図8は、作製する造形物を4つの層に分割した場合における、造形物の下から第2層目(中間層)のスライスデータの構成の一例を説明する図である。
【
図9】
図9は、作製する造形物を4つの層に分割した場合における、造形物の下から第3層目(中間層)のスライスデータの構成の一例を説明する図である。
【
図10】
図10は、作製する造形物を4つの層に分割した場合における、造形物の下から第4層目(最上層)のスライスデータの構成の一例を説明する図である。
【
図11A】
図11Aは、レーザ光の走査方法の一例としてのジグザグ走査の方法を説明するための図である。
【
図11B】
図11Bは、レーザ光の走査方法の一例としてのジグザグ走査の方法を説明するための図である。
【
図12】
図12は、
図4に相当する図であり、粉末材料の薄層の形成途中の断面図である。
【
図13】
図13は、
図4に相当する図であり、粉末材料の薄層の形成途中の断面図である。
【
図14】
図14は、
図4に相当する図であり、粉末材料の薄層の形成途中の断面図である。
【
図15】
図15は、
図4に相当する図であり、粉末材料の薄層の形成途中の断面図である。
【
図16】
図16は、
図4に相当する図であり、粉末材料の薄層の形成途中の断面図である。
【
図17】
図17は、
図4に相当する図であり、粉末材料の薄層の形成途中の断面図である。
【
図18】
図18は、
図4に相当する図であり、粉末材料の薄層の形成途中の断面図である。
【
図28】
図28は、3次元造形物の作成工程を示すフローチャートである。
【
図30】
図30は、
図1の粉末床溶融結合装置の作製容器内の空間を示し、その空間を三次元立体的に区分けした各領域のうちの1つの領域に、テストパーツを配置したところを示す図である。
【
図31】
図31は、テストパーツの生データ、基本データ及び造形条件を、機械学習に用い、学習済みモデルを生成する流れを示す図である。
【
図32】
図32は、
図1の粉末床溶融結合装置の制御部での、学習済みモデルを用いての、造形物の基本データの補正、及び、その作成された補正データの出力の流れを示す図である。
【
図33】
図33は、
図1の粉末床溶融結合装置の制御部での、造形物のデータ作成方法のフローチャートである。
【
図35A】
図35Aは、別の造形物の基本データの3次元モデル・データの一例である。
【
図36】
図36は、
図1の粉末床溶融結合装置の制御部の変形例を示す機能ブロック図である。
【
図37】
図37は、
図1の粉末床溶融結合装置の制御部の更なる変形例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
まず、本開示の一実施形態に係る粉末床溶融結合装置1を以下説明する。なお、以下の構成を備える粉末床溶融結合装置1は、本開示の粉末焼結積層造形法を採用する三次元構造物製造機械の一種である粉末床溶融結合装置の一例に過ぎない。本開示の粉末焼結積層造形法を採用する粉末床溶融結合装置は種々の構成を有することができる。
【0019】
図1は、粉末床溶融結合装置1の概略構成を示す図である。また、
図2は、粉末床溶融結合装置1の粉末材料の供給の主要構成の斜視図である。更に、
図3は、粉末床溶融結合装置の筐体以外の構成を示す上面図であり、
図4は、
図3のIV-IV線に沿った断面図であり、両端の一部の構成を省略して示す図である。
【0020】
図1に示すように、粉末床溶融結合装置1は、その筐体2内に、粉末材料を収納する2つの収納容器3、4と、収納容器3、4の粉末材料を使用して造形物44が作製される作製容器5とが収容される。作製容器5は、収納容器3と収納容器4とに挟まれるように、それら収納容器3、4の間に位置付けられている。なお、収納容器3、4は第1及び第2収納容器にそれぞれ相当するが、これらの組み合わせは逆であってもよい。
【0021】
使用される粉末材料の種類は特に限定されない。ここでは、特に、粉末材料は、フッ素樹脂の1つであるペルフルオロアルコキシアルカン(PFA;四フッ化エチレンとパーフルオロアルコキシエチレンとの共重合体)であり、その融点が約280℃から320℃である。しかし、粉末材料は、このPFA粉末に限定されず、例えば、粉末材料として、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ナイロン6、ナイロン11、及びナイロン12(ナイロンは登録商標)等のポリアミド(PA)、ポリプロピレン(PP)、及びエラストマ(EL)などの熱可塑性の樹脂粉末、金属材料粉末又はセラミック粉末が使用されてもよい。
【0022】
図3に示すように、これらの容器3~5のうち、収納容器3、4は、例えば、鋼板を曲げ及び溶接等の加工を行うことによって形成され、上から見たときに矩形状に開口した筒状の容器である。
【0023】
収納容器3、4の内側には、それぞれ供給用テーブル6、7が配置されている。その供給用テーブル6、7の上に外部から粉末材料8が供給される。また、供給用テーブル6、7の下面には、図示しないドライバに接続された支持棒9、10が取り付けられている。これらのドライバによって支持棒9、10を駆動することにより、支持棒9、10を介して供給用テーブル6、7が収納容器3、4の内側を昇降する。
【0024】
作製容器5は、例えば、鋼板を曲げ及び溶接等の加工を行うことによって形成される。作製容器5は、上から見たときに矩形状に、ここでは正方形状に開口した筒状の容器であるが、上から見たときに他の形状、例えば楕円状の開口を有してもよい。
【0025】
作製容器5の内側には、造形用テーブル11が配置されている。その造形用テーブル11の上に収納容器3、4の粉末材料8が供給される。また、造形用テーブル11の下面には、図示しないドライバに接続された支持棒12が取り付けられている。このドライバによって支持棒12を駆動することにより、支持棒12を介して造形用テーブル11が作製容器5の内側を昇降する。
【0026】
更に、
図1に示すように、粉末床溶融結合装置1は、その筐体2内に、貯留容器3E、4Eが収容される。貯留容器3E、4Eは、過剰に送られてくる余剰の粉末材料8を収納するために設けられる。貯留容器3E、4EはそれぞれEPC(Excess Powder Cartridge)と称され得るものである。貯留容器3Eは収納容器3の隣に、特にその外側に設けられ、貯留容器4Eは収納容器4の隣に、特にその外側に設けられている。貯留容器3E、4Eは、容器3~5を挟むようにそれらの両脇に位置付けられている。
【0027】
貯留容器3E、4Eは、例えば、鋼板を曲げ及び溶接等の加工を行うことによって形成され、上から見たときに矩形状に開口した容器である。
【0028】
収納容器3、4、作製容器5及び貯留容器3E、4Eの上には、運搬板13が設置されている。その運搬板13の上にはリコータ14が設けられている。
【0029】
運搬板13は、上面13a及び下面13bが平坦な鋼板であり、容器3~5の貫通孔13c~13e及び貯留容器3E、4Eの貫通孔13f、13gが設けられている。なお、
図4では、貯留容器3E、4E及び貫通孔13f、13gは省略する。
【0030】
これらの貫通孔13c~13gはそれぞれ対応する容器3~5、3E、4Eの上側の開口又は形状に対応する形状及び大きさとなっている。このため、例えば、貫通孔13c、貫通孔13d、及び貫通孔13eが、それぞれ収納容器3の上側の開口、作製容器5の上側の開口、及び収納容器4の上側の開口に連通するようになる。
【0031】
また、リコータ14は、
図2に示すようにローラを備えて構成され、図示しないドライバに接続されている。このドライバによってリコータ14を駆動することにより、リコータ14は運搬板13の上面13a上を、つまり収納容器3の上側と収納容器4の上側とにわたって、左方向又は右方向に移動することができる。このリコータ14の移動範囲は、
図1~
図3に示すように、貯留容器3E、収納容器3、作製容器5、収納容器4及び貯留容器4Eの全ての開口部をカバーする。なお、リコータ14は、他の構成、例えば細長い金属板のような板状部材などであってもよい。
【0032】
粉末床溶融結合装置1では、作製容器5に粉末材料8の層つまり薄層を形成するとき、供給用テーブル6、7及び造形用テーブル11をそれぞれ昇降させると共に、リコータ14を左右に移動させる。これにより、収納容器3又は収納容器4の粉末材料8が運搬板13の上面13a及び貫通孔13c~13eを介して作製容器5に運搬される。このようにして、収納容器3、4の粉末材料8を作製容器5に供給する。なお、容器3~5に収納しきれなかった粉末材料8は、リコータ14の移動により、貯留容器3E又は貯留容器4Eに至り、そこに入り、貯留される。
【0033】
このため、主に収納容器3、4、供給用テーブル6、7、運搬板13、及びリコータ14によって粉末材料8の供給部が構成されていると言える。
【0034】
図1に示すように、運搬板13の上方の筐体2内の空間には、上部加熱部15~17及び反射板18、19が設けられている。
【0035】
図3及び
図4に示すように、上部加熱部15~17のうち、上部加熱部15は、収納容器3の上方に配置され、2本の棒状のヒータ20、21を備えている。また、上部加熱部16は、収納容器4の上方に配置され、2本の棒状のヒータ22、23を備えている。
【0036】
これらのヒータ20~23は、赤外線ヒータ又は抵抗加熱型ヒータであり、上から見たときに収納容器3、4の長手側の側部の内側においてこれらの側部の各々と平行に配置されている。ヒータ20~23により、収納容器3、4の供給用テーブル6、7上の粉末材料8は上から加熱される。
【0037】
一方、上部加熱部17は、作製容器5の上方に配置され、4本の棒状のヒータ24~27を備えている。
【0038】
これらのヒータ24~27は、赤外線ヒータ又は抵抗加熱型ヒータであり、上から見たときに作製容器5の全ての側部の内側においてこれらの側部の各々と平行に設置されている。これにより、作製容器5の造形用テーブル11上の粉末材料8は上から加熱される。
【0039】
また、反射板18、19は、図示しない筐体2内の支柱に取り付けられ、運搬板13の上面13aに対して垂直な方向に立てられた金属板であり、収納容器3と作製容器5との間、及び作製容器5と収納容器4との間に配置されている。
【0040】
また、
図3及び
図4では左側の反射板18は、作製容器5側の表面(右側の表面)が鏡面仕上げされ、右側の反射板19は、作製容器5側の表面(左側の表面)が鏡面仕上げされている。
【0041】
これにより、反射板18、19はヒータ24~27の熱(赤外線)を反射して、作製容器5の粉末材料8をより効果的に加熱することができる。このため、上部加熱部17は、少ない消費電力で作製容器5の粉末材料8を所定の温度まで昇温させると共に、その温度を維持することができる。
【0042】
また、反射板18、19は、前述の筐体2内の支柱に固定された上部18a、19aと、蝶番18b、19bを介して上部18a、19aに接続され、左右にスイング可能となっている下部18c、19cとを備える。このような反射板18、19の構造により、リコータ14は下部18c、19cを介して反射板18、19を通過可能となっている。なお、反射板18、19は省略されてもよい。
【0043】
なお、図示していないものの、粉末床溶融結合装置1には、上部加熱部15~17とは別の加熱部も設けられている。
【0044】
例えば、作製容器5の側部には、横から作製容器5の粉末材料8を加熱する側部加熱部が設けられている。更に、造形用テーブル11と支持棒12との間には、下から作製容器5の粉末材料8を加熱する下部加熱部が設けられている。また、運搬板13の下面13bには、運搬板13に接する粉末材料8を加熱する運搬板加熱部が設けられている。これらの加熱部は、いずれも温度センサ付きの板状の抵抗加熱型ヒータを備えている。
【0045】
以上の収納容器3、4、作製容器5、貯留容器3E、4E、運搬板13、リコータ14、上部加熱部15~17、及び反射板18、19等が筐体2内に配置されている。
【0046】
一方、
図1に示すように、筐体2の上部には、4つのガラスの窓2a、2b、2c、2dが嵌め込まれている。これらの窓2a~2dのうち、窓2aの上方には温度検出部28aが設けられていて、窓2cの上方には温度検出部28bが設けられていて、窓2dの上方には温度検出部28cが設けられている。
【0047】
温度検出部28a、28b、28cはそれぞれ、赤外線によって温度を検出する機器であり、具体的にはここでは赤外線センサ(IRセンサ)である。つまり、温度検出部28a、28b、28cはそれぞれ非接触式の温度検出装置である。温度検出部28aは上から見たときに作製容器5の側部の内側に配置されていて、温度検出部28bは上から見たときに収納容器3の側部の内側にここでは概ね中央に配置されていて、温度検出部28cは上から見たときに収納容器4の側部の内側にここでは概ね中央に配置されている。これにより、温度検出部28aは、作製容器5の開口と連通する運搬板13の貫通孔13d内の粉末材料8の表面温度を検出することが可能となっていて、温度検出部28bは、収納容器3の開口と連通する運搬板13の貫通孔13c内の粉末材料8の表面温度を検出することが可能となっていて、温度検出部28cは、収納容器4の開口と連通する運搬板13の貫通孔13e内の粉末材料8の表面温度を検出することが可能となっている。
【0048】
なお、温度検出部を更に複数用意して、これらの温度検出部の各々が、上から見たときに作製容器5の側部の内側において互いに異なる位置に配置されていてもよい。これにより、粉末材料8の表面温度をより高精度に検出することができる。これは、収納容器3、4のそれぞれにおいても同様である。
【0049】
なお、残りの窓2bの上方にはレーザ光出射部29が設けられている。
【0050】
レーザ光出射部29は、レーザ光(ビーム光)を出射して走査する機器であり、上から見たときに作製容器5の側部の内側に配置されている。そのレーザ光出射部29の構成は以下のようになっている。
【0051】
図5は、レーザ光出射部29の構成を説明するブロック図である。
図5に示すように、レーザ光出射部29は、光源30、ミラー31、レンズ32、及びドライバ33を備えている。これらの部分30~33のうち、光源30は、例えば、波長10.6μmのレーザ光を出射するCO
2レーザ光源である。なお、光源30は、CO
2レーザ光源に限定されず、例えば波長1.07μmのレーザ光を出射するファイバレーザ光源であってもよい。
【0052】
ミラー31は、Xミラー31aとしてのガルバノメータミラーと、Yミラー31bとしてのガルバノメータミラーとを有し、Xミラー31a及びYミラー31bの角度を変えることによって光源30から出射されたレーザ光の角度を変える。
【0053】
レンズ32は、光源30から出射されたレーザ光の動きに従って移動して、レーザ光の焦点距離を変える。
【0054】
そして、ドライバ33は、Xミラー31a及びYミラー31bの角度を変えると共に、レンズ32を移動させる。
【0055】
レーザ光出射部29において、光源30から出射されたレーザ光は、レンズ32、Xミラー31a、及びYミラー31bをこの順序で通過する。このとき、ドライバ33の駆動によってXミラー31a及びYミラー31bの角度を変えることにより、レーザ光がx軸方向及びy軸方向に走査されて、貫通孔13d内のつまり作製容器5の粉末材料8の表面の特定の領域に照射されるようになる。更に、ドライバ33の駆動によってレンズ32を移動させることにより、レーザ光の焦点が作製容器5の粉末材料8の表面つまり造形面で合うようになる。
【0056】
また、
図1に示すように、筐体2の外には制御部(制御装置)34が配置されている。制御部34は、所謂コンピュータであり、
図6Aに示すハードウェア構成を有する。
【0057】
図6Aは、制御部34のハードウェア構成図である。制御部34は、CPU34a、ROM34b、RAM34c、操作部34d、通信部34e、表示部34f、及び外部記憶制御部34gを有する。制御部34は、外部記憶制御部34gにより、メモリ34hに記憶されたプログラム(コンピュータプログラム)を読み込んで動作することが可能である。プログラムは、ROM34b及びRAM34cにも保存され得る。制御部34は、プログラムを実行するCPU34aの管理のもとに動作する。プログラムは、粉末床溶融結合装置1の種々の機器を制御するプログラムを含み、ROM34b、RAM34c及び/又はメモリ34hに記憶されているデータを利用することができる。なお、操作部34dは、キーボード等の操作者等が入力操作する入力装置を含む。表示部34hはここではモニタである。
【0058】
なお、CPU34aは、所謂プロセッサの一例であり、処理部341に対応する。また、ROM34b、RAM34c、及び、メモリ34hは、記憶部342に対応する。つまり、制御部34は、制御部34としての機能を実質的に担うCPU34aつまり処理部341が、ROM34b、RAM34c及びメモリ34hを含む記憶部342に記憶されているプログラムを実行することで、各種機能モジュールを実現する。
【0059】
図6Bに、上記構成を有する制御部34の機能ブロック図を示す。制御部34の処理部341は、機能モジュールとして、情報取得部3411、運搬制御部3412、レーザ部3413、温度制御部3414及びデータ作成部3415を有する。これらの機能部は相互に連携する。なお、機能モジュールの一部は、他のプロセッサ、ディジタル回路、またはアナログ回路等のハードウェアであってもよい。
【0060】
情報取得部3411は、各種センサからの出力情報を取得する。例えば情報取得部3411はリコータ14の位置情報を取得する。リコータ14の位置情報はここではリコータ14の支持部に設けられている位置センサPSから入力されるが、位置センサPSは他の箇所に設けられてもよく、他の制御値などに基づいて推定されてもよい。また情報取得部3411は温度検出部28a、28b、28cからの温度情報を取得する。さらに、情報取得部3411は、粉末床溶融結合装置1の操作者等が操作部34dの入力装置を介して入力した種々の情報、例えば粉末材料の情報(種類、融点など)、作製する造形物に関する情報を取得して、連携する機能モジュールに取得した情報の全部または一部を送ったり、記憶部342に記憶したりする。例えば、情報取得部3411は、粉末床溶融結合装置1の操作者等が入力装置を介して入力した作製する造形物のデータ(造形物データ)3421の1つである基本データ(元データ)3421aを取得して、それを記憶部342に記憶させる。また、情報取得部3411は、粉末床溶融結合装置1の操作者等が入力装置を介して入力した補正指示を取得し、その補正指示をデータ作成部3415に送り、データ作成部3415に基本データ3421a及び造形条件3421bに基づいて補正データ3421cを作成させ、作成された補正データ3421cを記憶部342に記憶させる。そして、情報取得部3411は、粉末床溶融結合装置1の操作者等が入力装置を介して入力した造形物の作製指示を取得し、運搬制御部3412及びレーザ部3413に造形物の作製指令を送る。なお、造形物の作製指示は、利用データの種別を含み、この利用データの種別は、造形物データ3421として、造形物の基本データ3421a及び補正データ3421cのうちいずれを用いるのかを選択する指示を含む。
【0061】
運搬制御部3412は、作製容器5への粉末材料8の運搬を行うように各種装置又は部材の作動を、具体的にはテーブル6、7、11の各々の昇降を制御し、リコータ14の移動を制御する。データ処理部3412aは造形物データ3421を処理してスライスデータを用意して記憶部342に記憶したり、造形物データ3421のスライスデータを読み込んだりする。造形物データ3421及びスライスデータに基づいて造形物44を作製するために、テーブル制御部3412bは上記ドライバに制御信号を出力し、それによりテーブル6、7、11の各々の昇降を制御し、リコータ制御部3412cは上記ドライバに制御信号を出力し、それによりリコータ14の移動を制御する。
【0062】
レーザ部3413はレーザ光出射部29の作動を制御する。レーザ部3413は、スライスデータに基づいて、運搬制御部3412が作製容器5に運搬した粉末材料8の層つまり造形面にレーザ光出射部29からのレーザ光の照射を制御する。
【0063】
温度制御部3414は、情報取得部3411で取得した温度情報に基づいて各加熱部15~17の各種ヒータの作動を制御する。
【0064】
データ作成部3415は、後述するように、作製される造形物の造形物データ3421のうち補正データ3421cを作成する。造形物データ3421は、造形物の基本データ3421aと、補正データ3421cとを含む。データ作成部3415は、機械学習された学習済みモデル3422を用いて、基本データ3421aに基づいて、補正データ3421cを作成し出力する。データ作成部3415は取得部3415aと、補正部3415bとを備える。取得部3415aは、上記補正指示により作動し、記憶部342に記憶されている造形物の基本データ3421aを読み込むことで取得する。そして、補正部3415bは、取得部3415aが取得した基本データ3421aを補正する。ここでは、後述するように、補正部3415bは、取得した基本データ3421aを、学習済みモデル3422を用いて補正し、その補正されたデータを記憶部342に記憶する又は出力する。このデータ作成部3415は制御部34に備えられ、制御部34は、データ作成装置の機能を実質的に担う。
【0065】
補正部3415bにおける造形物の基本データ3421aの補正では、前処理部3415ba及び積分部3415bbが機能する。前処理部3415ba及び積分部3415bbによる各演算については、後述する。
【0066】
前述のデータ処理部3412aは、造形物データ3421を処理してスライスデータを用意して記憶部342に記憶したり、造形物データ3421のスライスデータを読み込んだりするが、その造形物データ3421は造形物の基本データ3421aであるときと、補正データ3421cであるときとがある。これは、操作者等からの入力装置を介して入力された上記作製指示に基づき、この指示は、情報取得部3411を介して運搬制御部3412に送られる。
【0067】
上記構成を有する制御部34によれば、以下のような制御が実行される。
【0068】
例えば、制御部34は、支持棒9、10、12のドライバに制御信号を出力して、収納容器3、4の供給用テーブル6、7及び作製容器5の造形用テーブル11を昇降させる。更に、制御部34は、リコータ14のドライバに制御信号を出力して、リコータ14を運搬板13の上面13a上を左右に移動させる。
【0069】
また、制御部34は、造形物の作製で使用する粉末材料8の種類と、温度検出部28a、28b、28c及びその他の温度検出部から出力された運搬板13の貫通孔13c、13d、13e内の粉末材料8の温度情報とに基づいて、上部加熱部15~17のヒータ20~27に制御信号を出力して、貫通孔13c、13d、13e内の粉末材料8の温度、特に貫通孔13c内の造形面となる表面の温度をそれぞれ調整する。
【0070】
更に、制御部34は、その他の加熱部については、ヒータの温度センサから出力された温度のデータに基づいて、そのヒータに制御信号を出力して、作製容器5内の粉末材料8の温度、及び運搬板13上の粉末材料8の温度を調整する。
【0071】
更にまた、制御部34は、前述した粉末材料8の種類と、作製する3次元造形物のスライスデータ(描画パターン)とに基づいて、レーザ光出射部29に制御信号を出力して、貫通孔13d内の粉末材料8の表面の薄層のうちのレーザ光を照射する領域、及びレーザ光のエネルギー密度を調整する。
【0072】
ここで、造形物のスライスデータについて説明する。
【0073】
スライスデータは、作製する3次元造形物を深さ方向つまり高さ方向(z軸方向)に所定の間隔(例えば、0.1mm)でスライスして複数の層に分割したときの、各層の平面方向(x軸方向及びy軸方向)の位置等を含むデータである。なお、ここでは、作製容器5の造形用テーブル11の表面、より具体的には造形用テーブル11の粉末材料8の第1層が積層される平面のz軸方向がゼロであり、造形用テーブル11が下がるほど、深さ方向つまり高さ方向の大きさが大きくなる。例えば、作製容器5の上側の開口から10mmの位置まで造形用テーブル11が下がったとき、作製容器5の粉末材料8の表面つまり造形面13dのz軸方向の値は+10mmである。このようにここではz軸方向の正方向を上向きにしているが、z軸方向の正方向は下向きであってもよい。
【0074】
図7~
図10は、作製する造形物を4つの層に分割した場合における各層のスライスデータの構成の一例を説明する図である。
図7~
図10のうち、
図7のスライスデータは造形物の下から第1層目(最下層)のスライスデータであり、
図8のそれは第2層目(中間層)のスライスデータであり、
図9のそれは第3層目(中間層)のスライスデータであり、
図10のそれは第4層目(最上層)のスライスデータである。
【0075】
例えば、
図7に示すように、第1層目のスライスデータSD
1は、造形物の第1層目となる造形領域ma
1のデータを含んでいる。その造形領域ma
1を含めてスライスデータSD
1内の点の位置はx軸方向及びy軸方向の座標で表される。なお、スライスデータSD
1の外周は運搬板13の貫通孔13d(又は、作製容器5の開口)の外周に対応している。
【0076】
残りの第2層目~第4層目のスライスデータSD2~SD4についても、第1層目のスライスデータSD1と同様の構成となっている。つまり、スライスデータSD2~SD4は、造形物の造形領域ma2~ma4のデータをそれぞれ含んでいる。
【0077】
また、レーザ光の走査方法について説明する。
図11A及び
図11Bは、レーザ光の走査方法の一例としてのジグザグ走査方法を説明する図である。
【0078】
ジグザグ走査方法では、まず、
図11Aに示すように、スライスデータSDの造形領域maの外周線olよりも若干内側の部分に対して、レーザ光の移動距離及び移動方向を示す走査線sc
1~sc
9をジグザグ状に配置する。具体的には、x軸方向に伸びる奇数本目の走査線sc
1、sc
3、sc
5、sc
7、sc
9を間隔をおいて平行に配置し、更にx軸方向に対して鋭角の角度の方向に伸びる偶数本目の走査線sc
2、sc
4、sc
6、sc
8を間隔を置いて平行に配置する。そして、走査線sc
1~sc
9の端点同士を接続する。
【0079】
更に、
図11Bに示すように、スライスデータSDの造形領域maの外周線ol上に走査線sc
10~sc
13を配置する。そして、走査線sc
10~sc
13の端点同士を接続する。
【0080】
制御部34は、前述したスライスデータSD1~SD4及びジグザグ走査方法に基づいて、レーザ光出射部29を制御して、スライスデータSD1~SD4の造形領域ma1~ma4に対応する運搬板13の貫通孔13d内の粉末材料8の薄層の領域(造形領域)に、レーザ光を出射させ走査させる。このようにして、粉末材料8の薄層の造形領域にレーザ光を照射する。
【0081】
レーザ光の走査方法はジグザグ走査方法に限定されない。
【0082】
例えば、レーザ光の走査方法として、スライスデータSDの造形領域maに対して、同じ方向(例えば、x軸方向やy軸方向)に伸びる走査線scを間隔をおいて平行に配置するラスター走査方法や、走査線scを外周線olに沿って間隔をおいて渦巻き状に配置する走査方法を使用してもよい。
【0083】
また、レーザ光のエネルギー密度について説明する。そのエネルギー密度は以下の式(1)で表される。
【0084】
E=P/(V・SS・e) (1)
式(1)において、Eはレーザ光のエネルギー密度(J/m3)であり、Pはレーザ光の出力(W)であり、Vはレーザ光の走査速度(m/s)であり、SSはレーザ光の走査間隔(m)であり、eは粉末材料8の薄層の厚さ(m)である。
【0085】
式(1)から分かるように、例えば、粉末材料8の薄層の厚さeが同じである場合には、出力Pを大きくする、走査速度Vを遅くする、又は走査間隔SSを狭くすることにより、粉末材料8の薄層の造形領域にレーザ光を照射するときに、その造形領域が受けるレーザ光のエネルギー密度Eを高くすることができる。
【0086】
エネルギー密度Eのパラメータのうち、粉末材料8の薄層の厚さe以外のレーザ光の出力P、走査速度V、及び走査間隔SSは、レーザ光出射部29を制御することによって変更可能なパラメータである。
【0087】
制御部34は、レーザ光出射部29を制御して、レーザ光の出力P、走査速度V、及び走査間隔SSのいずれかを変えることにより、粉末材料8の薄層の造形領域が受けるレーザ光のエネルギー密度Eを調整する。
【0088】
粉末床溶融結合装置1は以上のように構成されている。
【0089】
次に、粉末床溶融結合装置1を使用した造形物の作製方法を説明する。
【0090】
ここでは、説明を簡単にするために、粉末床溶融結合装置1の筐体2内に作製容器5、及び粉末材料8が供給された収納容器3、4が収容された後に、粉末床溶融結合装置1が
図4に示す状態となっているものとする。
【0091】
すなわち、収納容器3、4の粉末材料8の上面が運搬板13の上面13aと同じ高さになっている。また、作製容器5の造形用テーブル11の上面が運搬板13の上面13aと同じ高さになっている。そして、リコータ14が運搬板13の上面13aのうちの収納容器3の左側に配置されている。
【0092】
粉末床溶融結合装置1がこのような状態となっているときに、まず、制御部34は、装置1の外部から入力された造形物44の3次元モデル・データつまり造形物データ3421に基づいて造形物のスライスデータSDを作成し、記憶部342に記憶する。具体的には、造形物の3次元モデル・データは、例えばSTL(Standard Triangulated Language)データであり、この造形物のスライスデータSDの作成は、データ処理部3412aによって行われる。なお、前述のように、このとき利用される造形物データ3421は、造形物の基本データ3421aであるときと、その補正データ3421cであるときとがある。
【0093】
次に、制御部34は、収納容器3の支持棒9のドライバ、収納容器4の支持棒10のドライバ、作製容器5の支持棒12のドライバ、及びリコータ14のドライバを制御して、作製容器5の造形用テーブル11の上に粉末材料8のバッファ層つまり薄層を形成する。ただし、薄層とは、相対的に薄い層であり、当明細書の記載から明らかなように所定厚さを有する粉末材料の層を意図するものである。なお、この処理は、テーブル制御部3412b及びリコータ制御部3412cによって行われる。
【0094】
粉末床溶融結合装置1では、作製容器5で作製される造形物が造形用テーブル11の上面に固着しないようにするために、造形物の作製を開始する前に、造形用テーブル11の上に粉末材料8の薄層を形成しておく。
【0095】
その薄層の形成方法について説明する。
図12~
図18は、薄層の形成途中の断面図である。
【0096】
まず、
図12に示すように、制御部34は、左側の収納容器3の支持棒9のドライバを制御して、供給用テーブル6を上昇させる。これにより、収納容器3の粉末材料8を貫通孔13cを介して運搬板13の上面13aよりも上に突出させる。
【0097】
更に、制御部34は、作製容器5の支持棒12のドライバを制御して、造形用テーブル11を粉末材料8の薄層の一層分の厚さ、例えば0.1mmだけ下降させると共に、右側の収納容器4の支持棒10のドライバを制御して、供給用テーブル7を下降させる。
【0098】
続いて、
図13に示すように、制御部34は、リコータ14のドライバを制御して、リコータ14を運搬板13の上面13a上を右方向に移動させる。これにより、リコータ14に上面13aから突出した収納容器3の粉末材料8を掻き取らせ、上面13a及び貫通孔13dを介して作製容器5に運搬させる。
【0099】
このようにして、収納容器3の粉末材料8を作製容器5に供給して、造形用テーブル11の上に第1層目の粉末材料8の薄層35を形成する。
【0100】
更に、
図14に示すように、制御部34は、リコータ14を右方向に移動させる。これにより、リコータ14に、薄層35の形成に使用されずに残った粉末材料8を上面13a及び貫通孔13eを介して収納容器4に運搬させる。
【0101】
このようにして、残った粉末材料8を収納容器4に収納する。
【0102】
そして、制御部34は、リコータ14を収納容器4の右側の位置で停止させる。なお、
図14などには示さないが、このとき、収納容器4に収容しきれなかった余剰の粉末材料8があるときは、その余剰の粉末材料8は貯留容器4Eに入り、そこに貯留される。
【0103】
次に、
図15に示すように、制御部34は、収納容器4の供給用テーブル7を上昇させる。これにより、収納容器4の粉末材料8を貫通孔13eを介して運搬板13の上面13aよりも上に突出させる。
【0104】
更に、制御部34は、作製容器5の造形用テーブル11を前述した粉末材料8の薄層の一層分の厚さだけ下降させると共に、収納容器3の供給用テーブル6を下降させる。
【0105】
続いて、
図16に示すように、制御部34は、リコータ14を運搬板13の上面13a上を左方向に移動させる。これにより、リコータ14に上面13aから突出した収納容器4の粉末材料8を掻き取らせ、上面13a及び貫通孔13dを介して作製容器5に運搬させる。
【0106】
このようにして、収納容器4の粉末材料8を作製容器5に供給して、造形用テーブル11の上に第2層目の粉末材料8の薄層36を形成する。
【0107】
更に、
図17に示すように、制御部34は、リコータ14を左方向に移動させる。これにより、リコータ14は、薄層36の形成に使用されずに残った粉末材料8を上面13a及び貫通孔13cを介して収納容器3に運搬する。
【0108】
このようにして、残った粉末材料8を収納容器3に収納する。
【0109】
そして、制御部34は、リコータ14を収納容器3の左側で停止させる。なお、
図17などには示さないが、このとき収納容器3に収容しきれなかった余剰の粉末材料8があるときは、その余剰の粉末材料8は貯留容器3Eに入り、そこに貯留される。
【0110】
その後、作製容器5において、第1層目の薄層35の形成と同じようにして、第2層目の薄層36の上に第3層目の粉末材料8の薄層37を形成し、更に第2層目の薄層36の形成と同じようにして、第3層目の薄層37の上に第4層目の粉末材料8の薄層38を形成する。
【0111】
このような粉末材料8の薄層の形成を所定回繰り返すことにより、
図18に示すように、作製容器5の造形用テーブル11の上に粉末材料8の薄層35~38を積層していき、所定の厚さ(例えば、10mmの厚さ)のバッファ層39を形成する。
【0112】
なお、
図18では、便宜上、4層の粉末材料8の薄層35~38をバッファ層39として示しているが、実際の粉末材料8の薄層の層数は層39の厚さに応じた層数となる。
【0113】
次に、制御部34は、上部加熱部15~17のヒータ20~27を制御して、収納容器3、4の粉末材料8と作製容器5の粉末材料8とを予備加熱する。
【0114】
粉末床溶融結合装置1では、後述するように粉末材料8の薄層の造形領域にレーザ光を照射することにより、粉末材料8を溶融結合し、固化して、固化層を形成する。このとき、粉末材料8の薄層つまり造形面のうちのレーザ光が照射される造形領域とその周辺の領域との温度差が大きいと、レーザ光を照射した後に固化層に過度な収縮が生じて、固化層に反りが生じることがある。
【0115】
このような固化層の反りを抑制するために、造形物の作製を開始する前に、収納容器3、4の粉末材料8と作製容器5の粉末材料8とを予備加熱しておく。その予備加熱の方法を説明する。
【0116】
まず、制御部34は、薄層39の形成開始と同時に、上部加熱部15~17のヒータ20~27と、その他の加熱部(側部加熱部、下部加熱部、及び運搬板加熱部)のヒータとをオンにする。
【0117】
次に、制御部34は、粉末材料8の種類と、温度検出部28a、28b、28c及びその他の温度検出部から出力された運搬板13の貫通孔13c、13d、13e内の粉末材料8の温度情報、例えば表面の温度のデータとに基づいて、ヒータ20~27の発熱量を調整する。更に、制御部34は、その他の加熱部については、ヒータの温度センサから出力された温度のデータに基づいて、ヒータの発熱量を調整する。
【0118】
これらにより、運搬板13の貫通孔13c、貫通孔13d、及び貫通孔13e内の粉末材料8の表面は所定温度まで上げられ、その温度に維持される。
【0119】
特に、作製容器5の開口に連通する貫通孔13d内の粉末材料8の表面つまり造形面は、造形物の作製を開始するのに適した温度、ここでは、粉末材料8の融点よりも10℃~15℃程度低い温度に維持される。
【0120】
一方、収納容器3、4の開口に連通する貫通孔13c、13e内の粉末材料8の表面は、作製容器5の開口に連通する貫通孔13d内の粉末材料8の表面の温度よりも低い所定温度に維持される。このように、収納容器3、4のうちの一方である収納容器3に収納される粉末材料8のうちその表面部分は第1所定温度にまで加熱されて維持され、収納容器3、4のうちの他方である収納容器4に収納される粉末材料8のうちその表面部分は第2所定温度にまで加熱されて維持され、作製容器5に収納される粉末材料8のうちその表面部分は第1所定温度よりも高くかつ第2所定温度よりも高い第3所定温度にまで加熱されて維持される。なお、ここでは、第1所定温度は、第2所定温度と同じ温度であるが、第2所定温度と異なってもよい。
【0121】
つまり、上述のように、粉末材料8は、熱可塑性の樹脂粉末であるPFA粉末である。そこで、作製容器5の粉末材料8の表面つまり造形面は、その粉末材料8の融点から10℃~15℃低い第3所定温度(例えば約270℃)に加熱される。そして、その作製容器5に供給される粉末材料8が収容される収納容器3、4の粉末材料8は、その第3所定温度よりも20℃~30℃低い第1所定温度又は第2所定温度に加熱される。これら容器3、4、5の粉末材料の各温度を対応する所定温度に安定的に保つことにより、作製容器5の造形面へのレーザ光の照射により溶融した粉末材料が再凝固する際に徐々に冷却され、その結果、歪みのない造形物44を得ようとする。なお、歪みのない造形物を得ようとしているが、上記第1から第3所定温度の温度差などに起因して造形物に歪が生じるので、本開示は、後述するデータ作成装置DP及びそのデータ作成方法に向けられている。
【0122】
このようにして、粉末材料8に対する予備加熱を行う。そして、このような予備加熱を、薄層39を形成する間だけでなく、後述する薄層39の上で造形物を作製する間も継続して行う。
【0123】
なお、予備加熱を行うために、薄層39の形成開始と同時に粉末床溶融結合装置1の全てのヒータをオンにしているが、薄層39の形成開始よりも前に粉末床溶融結合装置1の全てのヒータをオンにしてもよい。例えば、粉末床溶融結合装置1の筐体2内に収納容器3、4及び作製容器5が収容された直後に、粉末床溶融結合装置1の全てのヒータをオンにしてもよい。
【0124】
なお、例えば、収納容器3に対するその加熱維持される温度(目標温度)と収納容器4に対するその加熱維持される温度(目標温度)は多少差があってもよく、例えば約10℃の差があってもよく、より具体的には1℃~3℃異なってもよい。このような収納容器3に対するその加熱維持される温度と、収納容器4に対するその加熱維持される温度とにおける差は、温度検出部28bと温度検出部28cとの間の個体差、及び/又は、上部加熱部15と上部加熱部16との間の個体差つまり上部加熱部15のヒータと上部加熱部16のヒータとの間の個体差を考慮して、設定されるとよい。
【0125】
続いて、造形物の作製方法について説明する。
図19~
図27は、造形物の作製途中の断面図である。
【0126】
薄層39の形成、及び粉末材料8に対する予備加熱を行った後、
図19に示すように、制御部34は、左側の収納容器3の供給用テーブル6を上昇させる。これにより、収納容器3の粉末材料8を貫通孔13cを介して運搬板13の上面13aよりも上に突出させる。
【0127】
更に、制御部34は、造形用テーブル11を前述した粉末材料8の薄層の一層分の厚さ(例えば0.1mm)だけ下降させると共に、右側の収納容器4の供給用テーブル7を下降させる。
【0128】
続いて、
図20に示すように、制御部34は、リコータ14を運搬板13の上面13a上を右方向に移動させる。これにより、リコータ14に上面13aから突出した収納容器3の粉末材料8を掻き取らせ、上面13a及び貫通孔13dを介して作製容器5に運搬させる。
【0129】
このようにして、薄層39の上に造形物作製用としては第1層目の粉末材料8の薄層40を形成する。
【0130】
更に、
図21に示すように、リコータ14を右方向に移動させることにより、リコータ14に、薄層40の形成に使用されずに残った粉末材料8を上面13a及び貫通孔13eを介して収納容器4に運搬させる。
【0131】
このようにして、残った粉末材料8を収納容器4に収納する。
【0132】
そして、制御部34は、リコータ14を収納容器4の右側で停止させる。これにより、前述のように、収納容器4に入りきらない余剰の粉末材料8があるときには、その余剰の粉末材料8は貯留容器4Eに入れられる。
【0133】
次に、
図22に示すように、制御部34は、第1層目のスライスデータSD
1に基づいてレーザ光出射部29を制御して、スライスデータSD
1の造形領域ma
1に対応する第1層目の薄層40の領域(造形領域)にレーザ光を出射させ走査させる。
【0134】
このようにして、第1層目の薄層40の造形領域にレーザ光を照射する。これにより、この造形領域の粉末材料8を溶融結合し、固化して、第1層目の固化層40aを形成する。
【0135】
そして、制御部34は、レーザ光の出射及び走査を停止させる。
【0136】
次に、
図23に示すように、制御部34は、右側の収納容器4の供給用テーブル7を上昇させる。これにより、収納容器4の粉末材料8を貫通孔13eを介して運搬板13の上面13aよりも上に突出させる。
【0137】
更に、制御部34は、造形用テーブル11を粉末材料8の薄層の一層分の厚さだけ下降させると共に、左側の収納容器3の供給用テーブル6を下降させる。
【0138】
続いて、
図24に示すように、制御部34は、リコータ14を運搬板13の上面13a上を左方向に移動させる。これにより、リコータ14に上面13aから突出した収納容器4の粉末材料8を掻き取らせ、上面13a及び貫通孔13dを介して作製容器5に運搬させる。
【0139】
このようにして、固化層40aが形成された第1層目の薄層40の上に第2層目の粉末材料8の薄層41を形成する。
【0140】
更に、
図25に示すように、制御部34は、リコータ14を左方向に移動させることにより、リコータ14に、薄層41の形成に使用されずに残った粉末材料8を上面13a及び貫通孔13cを介して収納容器3に運搬させる。
【0141】
このようにして、残った粉末材料8を収納容器3に収納する。
【0142】
そして、制御部34は、リコータ14を収納容器3の左側で停止させる。これにより、前述のように、収納容器3に入りきらない余剰の粉末材料8があるときには、その余剰の粉末材料8は貯留容器3Eに入れられる。
【0143】
次に、
図26に示すように、制御部34は、第2層目のスライスデータSD
2に基づいてレーザ光出射部29を制御して、スライスデータSD
2の造形領域ma
2に対応する第2層目の薄層41の領域(造形領域)にレーザ光を出射させ走査させる。
【0144】
このようにして、第2層目の薄層41の造形領域にレーザ光を照射する。これにより、この造形領域の粉末材料8を溶融結合し、固化して、第2層目の固化層41aを形成する。
【0145】
そして、制御部34は、レーザ光の出射及び走査を停止させる。
【0146】
その後、作製容器5において、第1層目の薄層40及び固化層40aの形成と同じようにして、第2層目の薄層41及び固化層41aの上に第3層目の粉末材料8の薄層42及び固化層42aを形成し、更に第2層目の薄層41及び固化層41aの形成と同じようにして、第3層目の薄層42及び固化層42aの上に第4層目の粉末材料8の薄層43及び固化層43aを形成する。
【0147】
このような粉末材料8の薄層の形成、及びこの薄層での固化層の形成を繰り返すことにより、
図27に示すように、作製容器5において、薄層39の上に固化層40a~43aを積層していき、3次元造形物44を作製する。
【0148】
以上説明した3次元造形物44の作成工程を、
図28のフローチャートに基づいて再度簡単に説明する。
【0149】
ステップS2801では、リコータ14の位置情報が取得される。この位置情報の取得は情報取得部3411により行われる。
【0150】
ステップS2803では、造形物44のデータ、例えばスライスデータが取得される。この取得は、データ処理部3412aにより行われる。
【0151】
ステップS2805では、ステップS2801で取得されたリコータ14の位置情報に基づいて所定位置にあるか否かが判定される。ここでは、
図1~
図4に示すように、収納容器3及び貯留容器3Eよりも外側の左側の位置が所定位置として定められている。
【0152】
ステップS2805でリコータ14が所定位置にあると判定されたとき(ステップS2805で肯定判定)、ステップS2807では、リコータ14の所定位置側の第1収納容器である収納容器3のテーブル6を上昇させて、そこに収納されている粉末材料8を作製容器5に運搬するようにする。なお、このとき、作製容器5及び収納容器4の各テーブル11、7が上記のように下降される。
【0153】
一方、ステップS2805でリコータ14が所定位置にないと判定されたとき(ステップS2805で否定判定)、ステップS2809では、リコータ14の所定位置と反対側の第2収納容器である収納容器4のテーブル7を上昇させて、そこに収納されている粉末材料8を作製容器5に運搬するようにする。なお、このとき、作製容器5及び収納容器3の各テーブル11、6が上記のように下降される。なお、ステップS2805~ステップS2809の処理はテーブル制御部3412bにより行われる。
【0154】
そして、ステップS2811では、リコータ14が現在ある作製容器5の一方側の位置から作製容器5の他方側に向けて、移動される。このリコータ14の移動はリコータ制御部3412cにより行われる。
【0155】
そして、ステップS2813では、上記のごとく、造形物44のスライスデータに応じてレーザ光の照射が必要なとき、レーザ光の照射の制御が実行される。このレーザ光の照射の制御は、レーザ部3413つまり照射制御部により行われる。
【0156】
そして、ステップS2815では、更なる薄層形成が不要であるか否かが判定される。つまり、造形物44が完成したか否かが判定される。これはデータ処理部3412aにより行われる。
【0157】
更なる薄層形成が必要であるとき(ステップS2815で否定判定)、ステップS2801に戻る。一方、更なる薄層形成が不要であるとき(ステップS2815で肯定判定)、当該処理は終了し、造形物44は取り出される。
【0158】
さて、造形物は、レーザ光の照射により、粉末材料が瞬時に溶融しその後凝固すること、又は、粉末材料が焼結することを繰り返すことで作製される。この凝固又は焼結の際、収縮が生じる。これは、1つには、前述のように、上記第1から第3所定温度の温度差などに起因するものであるといわれている。特に、本発明者らの経験上、造形物の深さ方向つまり高さ方向(z軸方向)の長さが長いとき、その造形物の下部(より初めに作製した部分)ほど大きな収縮が生じる傾向にあった。これは、造形物の各部それ自体の重みも影響し、造形物のうちの新規に作製した部分はよりはじめに作製した部分に向けて沈降するように収縮するためと思われる。そこで、この収縮による精度低下を改善するべく、本実施形態では、粉末床溶融結合装置1又はそれと同種機体で作製したテストパーツの寸法等、特に深さ方向つまり高さ方向(z軸方向)の寸法データ(寸法情報)を含むデータ(生データ)と、そのテストパーツの作製に関する基本データとに基づいて、造形物の基本データ3421aを補正する。特にここでは、テストパーツ作製用の基本データとテストパーツの生データとの関係値及び、作製容器5内でのテストパーツの作製位置を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、造形物の基本データを補正する。そして、補正されたデータつまり補正データを造形物データ3421として用いて、今まで説明したように造形物を作製することで、作製された造形物をより基本データに近い形状とすることが可能になる。以下では、テストパーツの特性をまず説明し、その後、それに基づいて作製される学習済みモデルについて説明する。
【0159】
ここでは、テストパーツTPとして、2種類のテストパーツTP1、TP2が作製される。一方のテストパーツである第1のテストパーツTP1は、他方のテストパーツである第2のテストパーツTP2と肉厚の異なる箇所を有する。このように肉厚の異なる箇所を有する複数のテストパーツを用いる理由の1つは、肉厚に応じて収縮率が変化し得、例えば肉厚が厚い箇所ほど大きな収縮が生じる傾向にあり、その影響を上記補正に反映させるためである。
【0160】
第1のテストパーツTP1を
図29Aに示し、第2のテストパーツTP2を
図29Bに示す。各テストパーツTP1、TP2は、略立方体であり、8個の頂点に位置付けられる球体部TPAと、球体部TPA間に延びる12本の辺部TPBとを有する。各テストパーツTP1、TP2の球体部TPAは同じ寸法を有する。一方、第1のテストパーツTP1の辺部TPB(以下、符号「TPB1」)は、第2のテストパーツTP2の辺部TPB(以下、符号「TPB2」)と太さが異なり、第2のテストパーツTP2の辺部TPB2よりも細い。これらの辺部TPB1、TPB2はそれぞれ肉厚部であり、第1のテストパーツTP1の各辺部TPB1は第1肉厚部となり、第2のテストパーツTP2の各辺部TPB2は第1肉厚部と肉厚の異なる第2肉厚部となる。
【0161】
テストパーツTP、TP1、TP2は、作製容器5内において造形用テーブル11が下方の所定位置に下がったときのその作製容器5内の空間(以下、作製可能空間)5Sを三次元立体的に区分けした各領域で作製されるのが好ましい。
図30では、作製可能空間5Sは、ここではxyz直交座標系を有して定められていて、x軸方向に3分割、y軸方向に3分割、z軸方向に3分割されていて、27の領域に分けられている。27の領域は、それぞれ同じサイズを有し、それぞれ直方体の領域であるが、異なるサイズを有してもよく、また、直方体以外の形状を有してもよい。もちろん、作製可能空間5Sを27の領域に分けることに限定されず、分割数はいくつであってもよい。作製可能空間5Sにおける種々の箇所でテストパーツを造形するように、その分割領域の数、形状などは定められるとよい。
図30では、27の領域のうちの、1つの領域A1に、テストパーツTP、ここでは特にテストパーツTP1を配置したところを示す。ここでは、それぞれの領域で、テストパーツTPを作製し、個別にテストパーツTP1、TP2を作製するのが好ましく、作製されるが、27の領域のうちの27よりも少ない数の領域でのみ作製することも可能である。また、27の領域のうち、任意の2以上の領域で、同時に、テストパーツTP、TP1、TP2が作製されてもよい。ここでは、各領域での作製では、テストパーツTP、TP1、TP2の辺部TPB、TPB1、TPB2がその基本データが対応する軸つまりx軸方向、y軸方向、z軸方向のそれぞれに平行になるように、テストパーツTP、TP1、TP2は作成可能空間5Sに配置されて、スライスデータが作成されて、そのスライスデータをもとに実際に作製される。しかし、少なくともテストパーツTP、TP1、TP2の辺部TPB、TPB1、TPB2の少なくとも1つが対応する軸つまりx軸方向、y軸方向、z軸方向のいずれかに平行になるように、テストパーツTP、TP1、TP2は作成可能空間5Sに配置されてもよい。ただし、このテストパーツTP、TP1、TP2の作製は、実際に作製されることが意図される作製物つまり造形物と同じ材料の粉末材料を用いて、作製する粉末床溶融結合装置1又はそれと同種機体で行われるとよい。
【0162】
そして、作製したテストパーツTP、TP1、TP2を実測することで、テストパーツTP、TP1、TP2の生データが計測される。生データの計測は、人間が行ってもよく、機械が行ってもよい。生データの計測では、各辺部の長さが測定される。
図29A、
図29Bに示すように、作製したテストパーツTP、TP1、TP2の各辺部TPB、TPB1、TPB2の長さは、その両端の球体部TPAの中心TPAc間の長さであるとよい。これにより、各辺部TPB、TPB1、TPB2の長さを一定の基準で測定し、対比することが可能になる。
図29Aにおいて、テストパーツTP1のx軸方向に延びるある辺部TPB1の長さはL1xであり、そのテストパーツTP1のy軸方向に延びるある辺部TPB1の長さはL1yであり、そのテストパーツTP1のz軸方向に延びるある辺部TPB1の長さはL1zであり、この辺部の長さの測定は全ての辺部に対して行われるとよい。特にこの測定は、x軸、y軸、z軸のいずれかに平行である辺部TPB1に対して行われるとよく、例えばそのような平行な辺部TPB1に対してのみ行うこともできる。同様に、
図29Bにおいて、テストパーツTP2のx軸方向に延びるある辺部TPB2の長さはL2xであり、そのテストパーツTP2のy軸方向に延びるある辺部TPB2の長さはL2yであり、そのテストパーツTP2のz軸方向に延びるある辺部TPB2の長さはL2zであり、この辺部の長さの測定は全ての辺部に対して行われるとよい。なお、長さL1x、L2xは、テストパーツのx軸方向の寸法情報であり、長さL1y、L2yは、テストパーツのy方向の寸法情報であり、これらは平面方向(x-y方向)の寸法情報である。そして、長さL1z、L2zは、テストパーツの深さ方向つまりz軸方向の寸法情報である。
【0163】
そして、このように作製されたテストパーツTP、TP1、TP2の生データ(テストパーツの深さ方向つまりz軸方向の寸法情報を含む。)は、テストパーツTP、TP1、TP2の基本データとともに、機械学習に用いられる。生データは、z軸方向の寸法情報だけでなく、x軸方向の寸法情報及びy軸方向の寸法情報も含む。この生データは実際に作製したテストパーツTP、TP1、TP2の寸法情報であり、これに対応するのは、基本データのうちの寸法情報である。テストパーツTP、TP1、TP2に関する生データの寸法情報と基本データの寸法情報とは、それらの関係値(生データと基本データとの関係値)が予め算出されて、その関係値が機械学習の目的変数として用いられる。例えば、関係値としては、「テストパーツ作製用の基本データの寸法情報」/「テストパーツの生データの寸法情報」で表される、単位長さ当たり収縮率の逆数(以下、スケール値)などが用いられるとよい。
【0164】
ここでは、
図6A及び
図6Bに基づいて説明した制御部34と同様の構成を備えるコンピュータ50で、機械学習が行われて、学習済みモデル3422が生成される。機械学習は、従来の既知のアルゴリズム及び/又は手法で行われるが、他のアルゴリズム及び/又は手法で行われてもよい。なお、機械学習では、テストパーツTP、TP1、TP2の生データ及び基本データ(元データ)だけでなく、テストパーツTP、TP1、TP2の粉末材料の種類等の情報、作製可能空間5Sでの作製位置、温度条件等の作製条件つまり造形条件も、教師データとして用いられる。
【0165】
作製可能空間5Sでの作製位置は、作製容器5内でのテストパーツTP、TP1、TP2の作製位置であり、それらの各々の作製容器5内での位置情報である。作製容器5内でのテストパーツTP、TP1、TP2の位置情報は、テストパーツTP、TP1、TP2の作製可能空間5Sでのxyz座標系に関する情報、より具体的には、作製可能空間5SでのテストパーツTP、TP1、TP2の対応する座標データであり、例えば、テストパーツTP、TP1、TP2の重心の座標、テストパーツTP、TP1、TP2の測定した各辺部TPB、TPB1、TPB2の中点の座標の少なくともいずれか一方を含むとよい。
【0166】
テストパーツTP、TP1、TP2の基本データ(元データ)は、生データの寸法情報に対応するテストパーツTP、TP1、TP2の寸法情報(例えば、x軸方向の寸法であるLbx、y軸方向の寸法であるLby、z軸方向の寸法であるLbz)の他に、テストパーツTP、TP1、TP2の肉厚情報を含む。テストパーツTP、TP1、TP2の肉厚情報は、例えば各辺部TPB、TPB1、TPB2の厚さそのもの、又は、厚さなどの造形物の形状に関連する値、例えば表面積及び/又は体積であってもよい。テストパーツTP、TP1、TP2の肉厚情報は、造形物の形状情報として立方体、三角錐などの形状を特定する情報、つまり、カテゴリデータを含んでもよい。このカテゴリデータは、粉末床溶融結合装置1の操作者等により直接的に入力されても、コンピュータ、例えば人工知能(AI)により識別されてもよい。
【0167】
このように、テストパーツTP、TP1、TP2の基本データ及び造形条件を説明変数、及びテストパーツTP、TP1、TP2の生データの寸法情報と基本データの寸法情報との関係値を目的変数とした教師データとして機械学習させることで、作製可能空間5Sでの対応する座標でのテストパーツTP、TP1、TP2の収縮率、特にテストパーツTP、TP1、TP2の深さ方向つまりz軸方向の収縮率を反映した学習済みモデル3422が生成される。
【0168】
ここでは、テストパーツTP、TP1、TP2の基本データの寸法情報と生データの寸法情報との関係値が予め算出されて教師データとして用いられる。例えば、作製したテストパーツTP1の辺部TPB1における、生データのz軸方向の寸法情報L1zと、同テストパーツTP1の辺部TPB1の基本データの寸法情報(Lb1x、Lb1y、Lb1z)のうちz軸方向の寸法情報Lb1zとの比を予め算出して教師データの目的変数として用いてもよい。この場合、教師データは、例えば、x軸方向に関する「Lb1x/L1x」、y軸方向に関する「Lb1y/L1y」、及び、z軸方向に関する「Lb1z/L1z」であり、それぞれ無次元のデータである。なお、Lb1x/L1x、Lb1y/L1y、Lb1z/L1zのそれぞれは、生データの寸法情報に対する基本データの寸法情報(つまり、「テストパーツ作製用の基本データの寸法情報」/「テストパーツの生データの寸法情報」)であり、テストパーツTP1の収縮率を表す指標となり得、上記スケール値である。同様に、テストパーツTP2に関しても、テストパーツTP2の辺部TPB2の基本データの寸法情報(Lb2x、Lb2y、Lb2z)と作製したテストパーツTP2の生データの寸法情報との比、つまりx軸方向に関する「Lb2x/L2x」、y軸方向に関する「Lb2y/L2y」、及び、z軸方向に関する「Lb2z/L2z」が算出されて教師データの目的変数として用いられることができる。
【0169】
図31に、コンピュータ50において、作製したテストパーツTP、TP1、TP2、・・・の生データと、そのテストパーツTP、TP1、TP2、・・・の作製用の基本データと、各造形条件とを、機械学習に用い、学習済みモデル3422を生成するところを示す。こうして作成された学習済みモデル3422は、制御部34の記憶部342に記憶されている。このとき、前述のように、上記基本データの寸法情報と生データの寸法情報との関係値である上記スケール値が、教師データの目的変数として用いられることができる。このスケール値は、コンピュータ50において、テストパーツTP、TP1、TP2、・・・の生データと、そのテストパーツTP、TP1、TP2、・・・の作製用の基本データとに基づいて演算されて機械学習に用いられても、予め算出されて、コンピュータ50に入力されて、機械学習に用いられてもよい。
【0170】
図31に示すように、機械学習では、n個のテストパーツの基本データ、生データ及び造形条件が教師データとして用いられる。各造形条件は、対応するテストパーツの作製時の条件である。また、nは正の整数である。ただし、nは2以上の整数であるが、好ましくは1000以上の整数である。なお、
図31の各テストパーツは、テストパーツTP、TP1、TP2のいずれかであってもよく、それ以外であってもよい。
【0171】
上記説明の通り、各テストパーツの基本データは次に例示されるものであるとよい。各テストパーツTPの基本データは、そのテストパーツTPの寸法情報、及び、そのテストパーツTPの肉厚情報を含むとよい。
【0172】
また、上記説明の通り、各テストパーツの生データは次に例示されるものであるとよい。各テストパーツTPの生データは、そのテストパーツTPの寸法情報を含むとよい。
【0173】
そして、上記説明の通り、各テストパーツの造形条件は、次に例示されるものであるとよい。各テストパーツの造形条件は、粉末材料の種類、作製容器5内でのテストパーツTPの位置情報、温度条件及び造形機械の種類を含むとよい。作製容器5内でのテストパーツTPの位置情報には、テストパーツ及びその各部のそれぞれの配置の向き、つまり、方向情報、より具体的にはxyz座標系における方向情報も含まれている。
【0174】
前述のように、制御部34は、機能モジュールとしてデータ作成部3415を有し、記憶部342は、粉末床溶融結合装置1で作製する造形物の造形物データ3421に含まれる基本データ3421aと、学習済みモデル3422を有している。データ作成部3415の取得部3415aは、補正指示により作動し、記憶部342に記憶されている造形物の基本データ3421aを読み込むことで取得する。更に、取得部3415aは、記憶部3421に記憶されている造形物の造形条件3421bを読み込むことで取得する。そして、補正部3415bは、取得部3415aが取得した基本データ3421aを、造形条件3421bにも基づいて、学習済みモデル3422を用いて補正し、その補正されたデータつまり補正データ3422bを記憶部342に記憶する又は出力する。制御部34での、この学習済みモデル3422を用いての、基本データ3422aの補正、及び、その作成された補正データ3422bの出力を、
図32に示す。学習済みモデル3422に入力されるのは、造形物の基本データ3421a及び造形条件3421bである。
【0175】
まず、学習済みモデル3422を用いて補正する前に、前処理部3415baが造形物の基本データ3421aを解析し、肉厚情報TPtを算出する。造形物の肉厚情報TPtは、造形物に関するパラメータである。制御部34には、この肉厚情報TPtを算出するためのプログラムが記憶されていて、このプログラムは肉厚情報TPtを算出する際に読み込まれて実行される。なお、造形物の形状情報、例えば立方体、三角錐などの形状が入力されているとき、それは、前処理部3415baにより肉厚情報TPtの算出に用いられてもよい。
【0176】
そして、
図32に示すように、補正部3415bにより、肉厚情報TPtを伴う造形物の基本データ3421aと、造形条件3421bとを基に、説明変数であるパラメータP(ベクトル)が生成される。パラメータP(ベクトル)を生成するときに、補正部3415bにより方向情報も付与される。ここでは、この方向情報は、作製可能空間5Sにおけるxyz座標系における各軸に沿ったつまり各軸に平行な情報になる。このとき、補正部3415bにより、適切な座標が定められる。ここでは造形物の基本データ(元データ)の3次元モデル・データはメッシュデータのうちのSTL(Standard Triangulated Language)データであるので、造形物の基本データ3421aを構成する全頂点に関して、座標が定められる。このパラメータP(ベクトル)を、局所的造形環境パラメータと称することにする。この局所的造形環境パラメータPを説明変数として学習済みモデル3422に入力することで、学習済みモデル3422は、目的変数である造形物の関係値つまりスケール値を作製可能空間5Sにおける任意の座標に関して出力することができる。つまり、学習済みモデル3422は、造形物の基本データ3421aと、造形条件3421bとの入力を受けて、特に基本データ3421aから算出された肉厚情報と、造形条件3421bとの入力を受けて、作製可能空間5Sにおける任意の座標に応じたスケール値を出力することができる。
【0177】
局所的造形環境パラメータPの方向情報を変更し、都度学習済みモデル3422に入力することで、任意の座標に関して変数x、y、zの各々についてのスケール値を出力することができる。ここで、学習済みモデル3422を関数とみなし、学習済みモデル3422と、この学習済みモデル3422に入力される局所的造形環境パラメータP(ベクトル)との関係を、スケール関数SAI(P(ベクトル))と表す。
【0178】
ところで、このように学習済みモデル3422から出力されるスケール値は、「造形物作製用の基本データの寸法情報」/「造形物の生データの寸法情報」であり、無次元である。例えば造形物の基本データのある点Pi(xi、yi、zi)のz座標「zi」に関して、学習済みモデル3422はスケール値を出力することができる。造形物を作製したとき、基本データの3次元モデル・データよりもz軸方向に収縮した造形物が得られ、点Piにおいても同じ収縮が生じるとすると、この点Piのz軸方向のスケール値は例えば1.1のような1よりも大きな値になる。しかし、これは、点Piのz軸方向のスケール値に過ぎない。ここで、作成可能空間5Sでの基準点Pc(xc、yc、zc)を定めると、この基準点Pcからある点Piまでの各微小区間の収縮の影響を点Piは受けることになる。点Pcの隣の点P+1のスケール値が1.02であり、更に隣の隣の点P+2のスケール値が1.05であり、その隣の点が点Piだと仮定するととともに、各点が微小幅Δzを有するとすると、点Piは、基準点Pcから(1.02×Δz+1.05×Δz+1.1×Δz)離れた位置に補正されることで、基準点Pcからの収縮後の位置が(1.0×Δz+1.0×Δz+1.0×Δz)に位置することができる。これは、各点において、各軸方向に関して、補正データを導くためには、基準点Pcからの各点までの間の「スケール値×点間距離である微小長さ(例えばΔz)」の総和を求めることに相当する。この総和を求めるために、積分部3415bが機能する。dz(Δz)は小さいほどより高精度な補正が可能となるが、演算負荷が増大してしまう。そのため、例えば、dz(Δz)は、0.1mmなどであるとよい。
【0179】
上記のように出力されたスケール関数SAI(P(ベクトル))に関して、積分部3415bbにより演算が行われる。その演算の一例を式(2)に示す。式(2)はz軸方向に関する演算式であり、付与された方向情報のうちz軸方向に関しての演算式である。同様に、x軸方向に関する演算式を用いて付与された方向情報のうちx軸方向に関しての演算が行われ、y軸方向に関する演算式を用いて付与された方向情報のうちy軸方向に関しての演算が行われる。
【0180】
【0181】
式(2)において、zcは基準点Pcでのz軸方向の座標つまりz座標に対応し、ziは点Piの補正前z座標、zi´は点Piの補正後z座標である。この式(2)の演算では、深さ方向つまりz軸方向の収縮について演算が行われる。ここでは、造形物の基本データの任意の点Pi(xi、yi、zi)のz座標「zi」に関して、z軸方向の収縮率の補正を式(2)に基づいて行うが、前述のように、x軸方向及びy軸方向のそれぞれの収縮率の補正についても同様に行われる。なお、基準点Pcは、作製可能空間5Sにおいて任意に定められ得、作製可能空間5Sにおいて配置される造形物の基本データの幾何学的中心点、重心などであるとよいが、例えば造形物の基本データのうちz軸方向で最もゼロに近い箇所に定められるとよい。ただし、この場合にも、基準点Pcのx座標「xc」、y座標「yc」はそれぞれ造形物の内側の点であるとよく、例えばzcでのx-y平面において、造形物の重心であるとよい。なお、基準点Pcでのz座標「zc」は、z軸方向のみでは基準面と称されてもよく、これは基準点Pcのx座標「xc」、y座標「yc」においても同様である。
【0182】
そして、造形物の基本データ3421aであるSTLデータの全頂点に関して、積分部3415bbでの式(2)などを用いた積分処理がx軸方向,y軸方向,z軸方向それぞれに行われ、それらの結果がまとめられて補正データ3421cが作成される。
【0183】
なお、
図32では、基本データ3421aなどの取得、肉厚情報の算出、P(ベクトル)の導出、スケール関数S
AI(P(ベクトル))の算出、積分処理及び補正データ3421cの作成を一方向の流れで示している。しかし、肉厚情報の算出、P(ベクトル)の導出、スケール値S
AI(P(ベクトル))の算出及び積分処理の一部又は全部はループ処理されるとよい。これにより、演算負荷を軽減することができる。例えば、z軸方向に並ぶ2つの点Pi-1と点Piとについては、点Pi-1に関して積分処理により算出されたz´i-1に、点Piでの「スケール値×Δz」を加算することで、点Piの補正後座標z´iが算出されるとよい。
【0184】
基本データ3421aからの補正データ3421cの生成、出力つまり記憶部342への記憶までの流れを、
図33のフローチャートに示す。制御部34のデータ作成部3415が作動すると、取得部3415aにより、記憶部342に記憶されている造形物の基本データ3421a及び造形条件3421bは取得される(ステップS3301)。
【0185】
そして、補正部3415bにより、取得した基本データ3421aは、造形条件3421bにも基づいて、学習済みモデル3422を用いて補正される(ステップS3303)。この学習済みモデル3422は、粉末床溶融結合装置1又はその同種機体で作製したテストパーツTP、TP1、TP2の深さ方向つまりz軸方向の寸法情報を含むそのテストパーツTP、TP1、TP2の上記生データと、テストパーツTP、TP1、TP2の上記基本データと、造形条件とを少なくとも教師データとして機械学習されたものである。したがって、補正部3415bによる造形物の基本データ3421aの補正は、粉末床溶融結合装置1又はその同種機体で作製したテストパーツTP、TP1、TP2の深さ方向つまりz軸方向の寸法情報を含むそのテストパーツTP、TP1、TP2の生データと、テストパーツTP、TP1、TP2の基本データとに基づく、その造形物の基本データ3421aの補正である。なお、機械学習の教師データは、テストパーツの生データと基本データとの関係値を少なくとも有するとよいが、造形条件の一部は、粉末床溶融結合装置1が所定の造形条件での専用機である場合、省略可能である。
【0186】
この補正により補正された基本データつまり補正データ3421cが生成され、この補正データ3421cは、補正部3415bにより、記憶部342に出力されて記憶される(ステップS3305)。こうして、補正データ3421cは作成される。
【0187】
図34Aに、基本データ3421aの3次元モデル・データの一例を示し、
図34Bに、その基本データ3421aに対する補正データ3421cの3次元モデル・データの一例を示す。
図34Aの基本データ3421aの3次元モデル・データは、矩形断面を有する筒体のデータであり、そのz軸方向に延びる4つの稜線部は同じ寸法(80.00mm)を有している。これに対して、
図34Bの補正データ3421cの3次元モデル・データは、
図34Aの基本データ3421aの3次元モデル・データに対して歪んでいて、そのz軸方向に延びる4つの稜線部は異なる寸法(84.16mm、84.04mm、84.10mm、84.18mm)を有しているが、3次元立体的に連続的な筒体となっている。このような滑らかな補正は、機械学習した学習済みモデル3422を用いることで実現できる。
【0188】
図35A及び
図35Bに造形物の他の例の基本データ3421aの3次元モデル・データ及び補正データ3421bの3次元モデル・データを示す。
図35Bの補正データ3421cの3次元モデル・データは、
図35Aの基本データ3421aの3次元モデル・データを、x-y方向にも拡張したような立体形状を有するが、それに加えて、深さ方向つまりz軸方向に展伸したような立体形状を有している。
図35Cに、
図35Aの造形物の基本データ3421aの3次元モデル・データと、
図35Bの造形物の補正データ3421bの3次元モデル・データとを重ねた図を示し、
図35Dに
図35Cの重ねた3次元モデル・データを異なる角度から見た図を示す。
図35C及び
図35Dより、学習済みモデル3422を用いた補正により造形物のデータが3次元立体的に滑らかに補正することができていることがより理解できる。このように3次元立体的に滑らかに補正した補正データ3421cを造形物データ3421として用いて造形することで、造形物を作製する過程で上記収縮が生じ得るが、この収縮を経た造形物の形状は、基本データ3421aの3次元モデル・データの形状に非常に近くすることが可能になる。
【0189】
以上説明したように、粉末床溶融結合装置1における、データ作成部3415を有する制御部34はデータ作成装置DP(
図6B参照)として機能する。データ作成装置DPは、粉末材料を収容する収容容器3、4と、深さ方向つまりz軸方向に移動可能である造形用テーブル11を備える作製容器5であって収納容器3、4内の粉末材料が造形用テーブル11上に1層ずつ供給されて積層される作製容器5と、作製容器5内の粉末材料を加熱する加熱装置、例えば加熱部17と、造形用テーブル11上の粉末材料にレーザ光を出射するレーザ光出射部29とを備えた粉末床溶融結合装置1用のデータを作成する。そのデータ作成では、粉末床溶融結合装置1で作製する造形物の基本データ3421aを取得する工程(
図33のステップS3301)と、粉末床溶融結合装置1又は粉末床溶融結合装置1の同種機体で作製したテストパーツTP、TP1、TP2の深さ方向の寸法データつまり寸法情報を含むテストパーツTP、TP1、TP2の生データと、テストパーツTP、TP1、TP2作製用の基本データとに基づいて、より詳しくは、作製したテストパーツTP、TP1、TP2の生データの寸法情報と、テストパーツTP、TP1、TP2作製用の基本データの寸法情報とに基づいて、取得した造形物の基本データ3421aを補正する工程(
図33のステップS3303)とを含む。造形物の基本データ3421aを取得する工程は、制御部34のデータ作成部3415の取得部3415aにより実行され、基本データ3421aを補正する工程は、データ作成部3415の補正部3415bにより実行される。これにより、粉末床溶融結合装置1に適用される造形物のテータを、その装置1の機体特性及び深さ方向(z軸方向)の収縮を考慮して補正することが可能になる。
【0190】
そして、この補正は、テストパーツTPの生データの寸法情報とテストパーツTPの作製用の基本データの寸法情報との関係値である上記スケール値と、テストパーツTPの作製用の基本データの位置情報を教師データとして用いて機械学習された学習済みモデル3422を用いて行われ、実際の造形プロセスにおける単位長さ当たりの収縮率の連続的な変動を考慮したものとなる。したがって、特許文献2の上記方法での単位長さ当たりの収縮率が造形パラメータから決定される単なる定数であるのに対して、上記実施形態によれば、より連続的な補正が可能になり、3次元立体的なより滑らかな補正が可能になる。そして、上記補正では、上記学習済みモデル3422を用いて行われ、特に造形物の3次元モデル・データの全頂点に対して上記式(2)などを用いて積分処理が行われる。したがって、造形物の3次元モデル・データを、より連続的に、つまりより滑らかに補正することができる。
【0191】
更に、本実施形態では、機械学習に、テストパーツのx座標の寸法、y座標の寸法及びz座標の寸法をそれぞれ含む基本データ及び生データが用いられるので、テストパーツのz軸方向の収縮のみならず、テストパーツのx軸方向の収縮及びy軸方向の収縮を考慮した上記補正が実行される。したがって、作製したい造形物の基本データの3次元モデル・データをより滑らかな3次元モデル・データに補正して、その補正後のデータつまり補正データ3421cをベースに、上記の如くスライスデータを作成して、造形物を作製することができる。
【0192】
そして、その補正は、粉末床溶融結合装置1又はそれと同種機体で作製されたテストパーツTPのデータを教師データとして学習された学習済みモデル3422を用いて行われる。したがって、粉末床溶融結合装置1の特性を考慮した補正が可能になり、実際に作製される造形物の形状に柔軟に対応したその造形物の滑らかな補正が可能になる。
【0193】
以上、本開示に係る実施形態及び変形例について説明したが、本開示はそれらに限定されない。例えば、粉末床溶融結合装置1において各種の造形物の基本データ及び造形条件に基づいてその造形物を作製し、その造形物の基本データと、生データと、造形条件とを更なる教師データとして、更に学習済みモデルが学習されてもよい。こうすることで、粉末床溶融結合装置1の購入者又は操作者により更に学習済みモデルの能力を高めることが可能になる。
【0194】
図36に、
図6Bの粉末床溶融結合装置1の制御装置である制御部34に、更に学習処理部3415c及び測定装置MDを付加した機能ブロック図を示す。
図36の制御部34の処理部341のデータ作成部3415は、取得部3415a及び補正部3415bに加えて、学習処理部3415cを備える。そして、測定装置MDは3次元スキャナなどの3次元測定装置であり、作製した造形物の寸法を測定することができる。測定装置MDが測定した造形物の生データ3421dは、深さ方向つまりz軸方向の寸法情報を含み、ここではx軸方向の寸法情報、y軸方向の寸法情報及びz軸方向の寸法情報を含み、記憶部342に造形物データに記憶される。学習処理部3415cは、所定期間経過する度、又は、所定量の基本データ3421a、造形条件3421b及び生データ3421dが記憶されたとき、それらの基本データ3421a、造形条件3421b及び生データ3421dを教師データとして更に機械学習させて、学習済みモデル3422の精度を維持・成長させることができる。
【0195】
また、上記粉末床溶融結合装置1では、制御部34にデータ作成装置DPが統合された。しかし、データ作成装置DPは、制御部34から独立した又は通信可能な装置とされてもよい。この場合、データ作成装置DPは、制御部34の
図6Aに基づいて説明されたような上記構成を同様に備え、上記データ作成部3415の機能と、学習済みモデル3422を有するとよい。
【0196】
図37に、粉末床溶融結合装置1の制御装置である制御部34と、データ作成装置DPとがネットワークNWを介して接続されている機能ブロック図を示す。データ作成装置DPは、上記データ作成部3415及び学習済みモデル3422を備える。データ作成装置DPでは、処理部341Aの取得部3415aは造形物データ3421の基本データ3421a及び造形条件3421bを取得して記憶部342Aに、造形物データ3421として記憶する(
図33のステップS3301に相当)。そして、処理部341Aの補正部3415bは、前処理部3415ba及び積分部3415bbの実行を伴って、造形条件3421bにも基づいて基本データ3421aを記憶部342Aの学習済みモデル3422を用いて補正する(
図33のステップS3303に相当)。これにより生成した補正データ3421cは、処理部341Aの出力部3415cにより記憶部342Aに記憶される又は出力される。ここでは、こうして生成された補正データ3421cはネットワークNWを介して制御部34に送信されて、制御部34の記憶部342に記憶される。これにより、粉末床溶融結合装置1は、その補正データ3421cの3次元モデル・データをベースに造形物を造形することができる。
【0197】
なお、データ作成装置DPは、ネットワークNWを介して、制御部34又はその他のコンピュータから、造形物の基本データ3421a及び造形条件3421bを取得して、補正データ3421cを作成してもよい。この場合、データ作成装置DPは、更に、作成した補正データ3421cを、ネットワークNWを介して制御部34又はその他のコンピュータに送信してもよい。ただし、本開示は、データ作成装置DPが作成した補正データ3421cが、各種記憶媒体などを介して人の手により、制御部34又はその他のコンピュータに移動されることを許容する。
【0198】
また、上記積分部3415bbでの上記式(2)での演算処理は、造形物の3次元モデル・データの全ての頂点などに対して行われる。よって、造形物の形状が複雑であったり、造形物が大きかったりするとき、その演算負荷は非常に大きくなる。そこで、造形物の要求精度が所定レベルよりも低いとき、その造形物の3次元モデル・データの複数の点又は要素は統合されてもよい。具体的には、
図38Aに示す3次元モデル・データが造形物の基本データ3421aである場合、コンピュータの処理により、その3次元モデル・データの複数の点又は要素は1つのボクセル(体積要素)にまとめられるとよい。こうして演算要素が減らされた3次元モデル・データ3421a1の一例を
図38Bに示す。そして、
図38Bの全ボクセルを、造形物の基本データ3421aを構成する全頂点として、上記演算(例えば式(2)の積分処理)などが行われて、補正データ3421cが生成されるとよい。
【0199】
また、上記学習済みモデル3422は、肉厚の異なる箇所を有する第1のテストパーツのデータと、第2のテストパーツのデータとを用いて学習された。しかし、単一のサイズ及び形状のテストパーツのデータのみを用いて、学習済みモデルが作成されてもよい。しかし、より好ましくは、肉厚の異なる箇所を有する複数のテストパーツを作製可能空間5Sの種々の箇所で作製し、それらのデータを教師データとして、学習済みモデルが作成されるとよい。
【0200】
また、上記実施形態では、テストパーツの形状及び寸法は、粉末床溶融結合装置1で作製されることが意図される造形物の形状及び寸法に関わりなく定められた。しかし、テストパーツの形状又は寸法は、粉末床溶融結合装置1で作製される造形物の形状又は寸法に応じて定められるとなおよい。例えば、粉末床溶融結合装置1で作製される造形物と同じ形状及び寸法を有するテストパーツ又はその造形物と相似形のテストパーツを作製して、作製したテストパーツの生データを測定して、その生データ及びその基本データを用いて、より好ましくは更に造形条件をも用いて上記機械学習が行われてもよい。
【0201】
上記データ作成装置DPでのデータ作成方法では、学習済みモデル3422を用いて3次元モデル・データの補正が行われた。しかし、本開示は、造形物の3次元モデル・データの補正に学習済みモデル3422が用いられることに、つまり人工知能(AI)が用いられることに限定されない。テストパーツの基本データ及び生データ、好ましくは更に造形条件に基づいて、それらの関係式を導き出して、その関係式を用いて、造形物の3次元モデル・データの補正が行われてもよい。
【0202】
なお、本開示の実施態様に従う上記コンピュータプログラムは、圧縮し、又は複数に分割して、単一又は複数の記録媒体に格納することもできる。また、様々な形態で、本開示の実施態様に従うコンピュータプログラム製品を提供することももちろん可能である。本開示の実施態様に従うコンピュータプログラム製品は、例えば、上記コンピュータプログラムを記録した記憶媒体を包含し得る。
【0203】
以上、本開示に係る実施形態及び変形例について説明したが、本開示はそれらに限定されない。本願の特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。上記実施形態及び変形例などは、上記に限定されず、矛盾しない範囲で種々の組み合わせなどが可能である。
【符号の説明】
【0204】
1 粉末床溶融結合装置
2 筐体
3、4 収納容器
3E、4E 貯留容器
5 作製容器
6、7 供給用テーブル
8 粉末材料
9、10、12 支持棒
11 造形用テーブル
13 運搬板
14 リコータ
15~17 上部加熱部
18、19 反射板
20~27 ヒータ
28a、28b、28c 温度検出部
29 レーザ光出射部
34 制御部
DP データ作成装置
【手続補正書】
【提出日】2023-04-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末床溶融結合装置用のデータ作成方法であって、
前記粉末床溶融結合装置で作製する造形物の基本データを取得する工程と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記粉末床溶融結合装置の同種機体で作製したテストパーツの深さ方向の寸法情報を含む生データの寸法情報と、前記テストパーツ作製用の基本データの寸法情報とに基づいて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する工程と
を含み、
前記テストパーツは、第1のテストパーツと、第2のテストパーツとを含み、
前記第1のテストパーツは、前記第2のテストパーツと肉厚の異なる箇所を有し、
前記補正する工程は、
前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第1のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第1のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第1の関係値及び、前記第1のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第2のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第2のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第2の関係値及び、前記第2のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報と
を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正することを含む、
データ作成方法。
【請求項2】
粉末床溶融結合装置用のデータ作成方法であって、
前記粉末床溶融結合装置で作製する造形物の基本データを取得する工程と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記粉末床溶融結合装置の同種機体で作製したテストパーツの深さ方向の寸法情報を含む生データの寸法情報と、前記テストパーツ作製用の基本データの寸法情報とに基づいて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する工程と
を含み、
前記補正する工程は、
前記テストパーツの前記生データの前記寸法情報と前記テストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との関係値、前記テストパーツ作製用の前記基本データの肉厚情報、及び、前記テストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正することを含む、
データ作成方法。
【請求項3】
前記肉厚情報は、前記テストパーツのカテゴリーデータを含む、
請求項2に記載のデータ作成方法。
【請求項4】
前記関係値は、前記テストパーツの収縮率を表す指標である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のデータ作成方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載のデータ作成方法をコンピュータに実行させるプログラム。
【請求項6】
粉末床溶融結合装置用のデータ作成装置であって、
前記粉末床溶融結合装置で作製する造形物の基本データを取得する取得部と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記粉末床溶融結合装置の同種機体で作製したテストパーツの深さ方向の寸法情報を含む生データの寸法情報と、前記テストパーツ作製用の基本データの寸法情報とに基づいて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する補正部とを備え、
前記テストパーツは、第1のテストパーツと、第2のテストパーツとを含み、
前記第1のテストパーツは、前記第2のテストパーツと肉厚の異なる箇所を有し、
前記補正部は、
前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第1のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第1のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第1の関係値及び、前記第1のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記同種機体で作製した前記第2のテストパーツの生データの前記寸法情報と前記第2のテストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との第2の関係値及び、前記第2のテストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報と
を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する、
データ作成装置。
【請求項7】
粉末床溶融結合装置用のデータ作成装置であって、
前記粉末床溶融結合装置で作製する造形物の基本データを取得する取得部と、
前記粉末床溶融結合装置又は前記粉末床溶融結合装置の同種機体で作製したテストパーツの深さ方向の寸法情報を含む生データの寸法情報と、前記テストパーツ作製用の基本データの寸法情報とに基づいて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する補正部とを備え、
前記補正部は、
前記テストパーツの前記生データの前記寸法情報と前記テストパーツ作製用の前記基本データの前記寸法情報との関係値、前記テストパーツ作製用の前記基本データの肉厚情報、及び、前記テストパーツの前記粉末床溶融結合装置の作製容器内での位置情報を少なくとも教師データとして機械学習された学習済みモデルを用いて、取得した前記造形物の前記基本データを補正する、
データ作成装置。
【請求項8】
前記肉厚情報は、前記テストパーツのカテゴリーデータを含む、
請求項7に記載のデータ作成装置。
【請求項9】
前記関係値は、前記テストパーツの収縮率を表す指標である、
請求項6から8のいずれか一項に記載のデータ作成装置。